【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」共同研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来、導電膜において、基材上に導電層を形成する塗布液としては、導電性及び透過率を両立させるために、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンポリスルホネート(PEDOT/PSS)等の水分散性導電性ポリマーとバインダー樹脂とを含有する組成物が開発されてきた。
【0019】
また、バインダー樹脂としては、水分散性導電性ポリマーとの相溶性の観点から、親水性のバインダー樹脂が検討されてきた。しかし、基材に対してフレキシブル性の要求が高まっていることから、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを基材として使用すると、フィルム変形を避ける観点から、基材としてガラス基板を使用した場合と比べて、乾燥温度を低温とする必要がある。また、PEDOT/PSSと相溶することが知られている水酸基含有バインダー樹脂は、酸性条件下で水酸基が脱水反応を起こしポリマー鎖間で架橋するが、低温で乾燥させた場合には架橋不良が起こり、その結果、保存中に架橋反応が進行し水が発生するばかりか、膜中に残存する水の影響で導電膜及び導電膜を用いた素子性能が著しく劣化するおそれがあった。この問題を解決するために、従来の導電膜においては、バインダーの主骨格と水との相互作用を低減する必要があった。
【0020】
水等の溶媒との相互作用が小さいバインダー樹脂として、ポリマーエマルジョンが知られている。ポリマーエマルジョンのうち、ポリエステルエマルジョン、アクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン等には、ポリマー主鎖及び側鎖に親水性部位であるエステル基及びウレタン基が多く導入されているばかりでなく、溶剤への分散性を高めるために、スルホン酸、カルボン酸、水酸基、アンモニウム等の親水性基が存在する。ポリマー中に親水性部位が多く存在すると、低温かつ短時間の乾燥では水を放出しにくく、導電膜及び導電膜を用いた有機EL素子の性能が劣化するおそれがあるという問題があった。すなわち、導電膜の乾燥性を向上させるためには、導電膜を構成するメインバインダー樹脂の疎水性を高める、又は、使用量を減量することが必要不可欠となる。
【0021】
本発明者らは、これらの現象を改良すべく鋭意検討した結果、導電性高分子化合物を有機溶媒中で分散した分散体を用いるとともに、乾燥温度付近で水等の求核剤と反応するイソシアナートを放出するブロックイソシアナートを用いることにより、乾燥時の水等の求核剤揮発性を大きく低減させ、乾燥後の膜中の水等の求核剤残留を極力抑えることができるとともに膜の耐水性及び膜強度も大きく向上させる本発明の構成を想到するに至った。ブロックイソシアネートの効果は、所望の乾燥条件中に徐々にブロック基が脱離し、溶媒又は溶媒中の水等の求核剤と反応し、不動化させることにある。ブロックしていないイソシアネートを使用した場合、塗布液停滞中や乾燥初期にイソシアネートが溶媒又は溶媒中の水等の求核剤と反応し、結果として溶媒又は溶媒中の水等の求核剤が膜中に残留し、導電膜及び当該導電膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の諸性能を劣化させてしまう。すなわち、本発明の課題が、導電性高分子化合物を有機溶媒中で分散した分散体を用いるとともに、乾燥温度付近で水等の求核剤と反応するイソシアナートを放出するブロックイソシアナートを用いることにより解決できることが判明し、本発明者らが本発明の構成を得るに至った。
【0022】
本発明は、導電性高分子化合物を有機溶媒中で分散した分散体を用いるとともに、乾燥温度付近で水と反応するイソシアナートを放出するブロックイソシアナートを用いることによって、導電膜の透明性と導電性を両立し、かつ膜強度に優れ、さらに高温、高湿度環境下における環境試験後でも高い導電性と透明性及び良好な膜強度を併せ持ち、バインダー樹脂由来の水の発生を抑制することで、安定性の優れた導電膜及び当該導電膜を用いた高寿命の有機EL素子が得られることを見出したものである。
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る導電膜の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のX矢視断面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る導電膜1は、基材11と、第1導電層12と、第2導電層13と、を備える。第1導電層12は、パターン状に形成された金属材料からなり、第2導電層13は、導電性高分子化合物及びポリオレフィン系共重合体を含有する有機化合物層であり、本実施形態では第1導電層12と電気的に接続されている。本発明の特徴は、第2導電層13がポリオレフィン系共重合体を含有することである。なお、第1導電層12は省略可能である。
【0025】
<導電性高分子化合物>
本発明において、「導電性」とは、電気が流れる状態を指し、JIS K 7194の「導電電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が1×10
8Ω/□よりも低いことをいう。
【0026】
本発明において、導電性高分子化合物とは、カチオン性π共役系導電性高分子とポリアニオンとを有してなる導電性高分子化合物である。こうした導電性高分子化合物は、後記するカチオン性π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤及び酸化触媒と後記するポリアニオンとの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造することができる。
【0027】
(カチオン性π共役系導電性高分子)
本発明において、カチオン性π共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、又は、ポリチアジル類の鎖状導電性高分子化合物を利用することができる。カチオン性π共役系導電性高分子としては、導電性、透明性、安定性等の観点から、ポリチオフェン類又はポリアニリン類が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
【0028】
(カチオン性π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
本発明において、カチオン性π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーとは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。かかる前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0030】
(ポリアニオン)
本発明において、導電性高分子化合物に用いられるポリアニオンは、置換又は未置換のポリアルキレン、置換又は未置換のポリアルケニレン、置換又は未置換のポリイミド、置換又は未置換のポリアミド、置換又は未置換のポリエステル、及び、これらの共重合体のいずれかであって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0031】
このポリアニオンは、カチオン性π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、カチオン性π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、カチオン性π共役系導電性高分子の導電性及び耐熱性を向上させる。また、ポリアニオンは、カチオン性π共役系高分子化合物に対し過剰量が用いられることで、カチオン性π共役系高分子化合物とポリアニオンとからなる導電性高分子化合物粒子の分散性及び製膜性を向上させる機能も有している。
【0032】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよい。かかるアニオン基としては、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、かかるアニオン基としては、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基、又は、カルボキシ基がより好ましい。
【0033】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、ポリアニオンは、これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0034】
また、ポリアニオンは、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するものであってもよい。かかるポリアニオンとして、具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0035】
これらのうち、ポリアニオンとしてスルホン酸を有する化合物を用いた場合には、塗布及び乾燥によって導電性高分子化合物含有層を形成した後に、さらに100〜120℃で5分以上の加熱乾燥処理を施してからマイクロ波、近赤外光等の照射をしてもよい。また、場合によっては加熱乾燥処理を省きマイクロ波、近赤外光等の照射のみでもよい。
【0036】
さらに、スルホン酸を有する化合物の中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、又は、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。
【0037】
ポリアニオンの重合度は、導電性高分子化合物の分散性の観点からは、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の観点からは、モノマー単位が50〜10000個の範囲であることがより好ましい。
【0038】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有しないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法等が挙げられる。
【0039】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法としては、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは、溶媒によって一定の濃度に調整される。なお、この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0040】
なお、得られたポリマーがポリアニオンの塩である場合には、ポリアニオンの酸に変質させることが好ましい。ポリアニオンの塩をポリ陰イオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0041】
導電性高分子化合物に含まれるカチオン性π共役系導電性高分子と導電性高分子化合物を構成するポリアニオンとの比率、すなわち、カチオン性π共役系導電性高分子に対するポリアニオンの重量比は、導電性及び分散性の観点から、0.5以上25未満が好ましい。
【0042】
カチオン性π共役系導電性高分子に対するポリアニオンの重量比が25未満であれば、導電性が向上するのに加えて、親水性であるポリアニオン又は導電性高分子化合物が保持している水分量が少なくなり、導電膜及び導電膜を用いた有機EL素子等の保存性が向上する。また、重量比が0.5以上であれば、ドーパントの増加に伴い、導電性高分子化合物の抵抗が低くなるのに加えて、保護コロイドとして作用しているポリアニオンの効果が強まり粒子の安定性が向上し、粒径が抑えられる。このように、導電性、粒子安定性、導電膜及び導電膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子等の保存性の観点から、カチオン性π共役系導電性高分子に対するポリアニオンの重量比は、0.5以上25未満が好ましい。
【0043】
カチオン性π共役系導電性高分子に対するポリアニオンの重量比を所望の値にする方法としては、導電性高分子化合物合成時に使用するポリアニオン量を調節する方法が挙げられる。この方法において、ポリアニオン量をカチオン性π共役系導電性高分子に対して1.0以下の重量比とすれば、導電性高分子化合物粒子が大きくなる傾向があるため、導電性高分子化合物合成時に他の高分子化合物を併用することができる。併用可能な高分子化合物としては、導電性高分子化合物粒子を安定化し、かつ、透過率及び導電性を劣化させなければ特に限定は無いが、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のポリアクリル、又は、解離性基含有自己分散型ポリマー等の水系分散ポリマーが好ましい。また、市販のPEDOT/PSS中の水を乾燥除去、トルエンで共沸除去、又は、凍結乾燥等公知の方法で粉末化した後に、水洗し、PSSを除去する方法、限外ろ過によりPSSを除去しながら水で置換する方法等が利用可能である。
【0044】
カチオン性π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性高分子化合物を得る際に使用される酸化剤としては、例えば、J.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤が挙げられる。かかる酸化剤としては、実際的な理由のために、安価かつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩(例えばFeCl
3、Fe(ClO
4)
3、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩)、過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)、アンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、又は、銅塩(例えば四フッ化ホウ酸銅)を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として、随時触媒量の金属イオン(例えば鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、モリブデンイオン、バナジウムイオン)の存在下における空気又は酸素も使用することができる。これらの中でも、過硫酸塩、有機酸を含む無機酸の鉄(III)塩又は有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が、腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0045】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては、炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩(例えばラウリル硫酸)、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸(例えばメタン、ドデカンスルホン酸)、脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸(例えば2−エチルヘキシルカルボン酸)、脂肪族パーフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタノン酸)、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸)、殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸(例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩)が挙げられる。
【0046】
こうした導電性高分子化合物としては、市販の材料も好ましく利用することができる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる導電性高分子化合物(PEDOT−PSSと略す)が、ヘレオス社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も導電性高分子化合物として好ましく用いることができる。
【0047】
導電性高分子化合物は、第2ドーパントとして有機化合物を含有してもよい。本発明で第2ドーパントとして用いることができる有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種が用いられることが好ましい。
【0048】
前記化学酸化重合により得られた導電性高分子化合物及び前記市販品は、いずれもπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性高分子化合物の水分散液である。このような導電性高分子化合物の水分散体から本発明の有機溶剤分散型の導電性高分子化合物分散液を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)前記導電性高分子化合物の水分散体を濃縮し、濃縮された水分散体に有機溶媒を添加することを繰り返すことにより水を有機溶媒に置換することによって分散処理する方法。
(2)前記導電性高分子化合物の水分散体を噴霧乾燥し、得られた乾燥固体と有機溶媒とを混合することによって分散処理する方法。適宜、乾燥固体と有機溶媒との混合物に分散剤を添加してもよい。
(3)前記導電性高分子化合物の水分散体を凍結乾燥し、凍結乾燥された水分散体に有機溶媒を加えることによって分散処理する方法。
(4)前記導電性高分子化合物の水分散体に沈殿剤を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、水が取り除かれたゲル状膨潤体に有機溶媒を加えることによって分散処理する方法。
【0049】
分散処理の方法については特に制限はないが、例えば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、振とう機等の装置を使用して行うことができる。なお、高度な処理が必要な場合には、高圧ホモジナイザー、ビーズミル、砥石回転型解砕機等の処理を追加してもよい。
【0050】
高圧ホモジナイザーとは、加速された高流速によるせん断力、急激な圧力降下(キャビテーション)及び高流速の粒子同士が微細オリフィス内で対面衝突することによる衝撃力によって磨砕を行う装置であり、市販されている装置としては、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等を用いることができる。高圧ホモジナイザーによる分散の程度は、高圧ホモジナイザーへ圧送する圧力と高圧ホモジナイザーに通過させる回数(パス回数)に依存する。
【0051】
ビーズミルには湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式コボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等がある。これらの中で例えば湿式ビーズミルとは、金属製、セラミック製等の媒体を容器に内蔵し、これを強制撹拌することによって湿式磨砕する装置であり、例えば市販されている装置としては、アペックスミル(コトブキ技研工業株式会社製)、パールミル(アシザワ株式会社製)、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)等を用いることができる。
【0052】
砥石回転型解砕機とは、コロイドミル或いは石臼型解砕機の一種であり、例えば、粒度が16〜120番の砥粒からなる砥石をすりあわせ、そのすりあわせ部に分散液を通すことで、対象物を解砕処理する装置のことである。砥石回転型解砕機は、必要に応じて、複数回処理を行うことができ、砥石は適宜変更可能である。砥石回転型解砕機は、「短繊維化」と「微細化」の両作用を有しており、かかる両作用は、砥粒の粒度に影響を受ける。短繊維化を目的とする場合は、46番以下の砥石が有効であり、微細化を目的とする場合は、46番以上の砥石が有効である。46番の砥石は、いずれの作用も有する。砥石回転型解砕機の具体的な装置としては、ピュアファインミル(グラインダーミル)(株式会社栗田機械製作所)、セレンディピター、スーパーマスコロイダー、スーパーグラインデル(以上、増幸産業株式会社)等が挙げられる。
【0053】
前記分散処理においては、適宜、界面活性剤及び分散剤の少なくとも一方を添加してもよい。
【0054】
(有機溶剤)
本発明において導電性高分子化合物は、有機溶媒中で分散された分散体を用いることを特徴とするが、好ましい有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。本発明において使用する溶媒は、導電性高分子化合物を分散でき、所望の性能が達成できれば特に限定はないが、好ましくはエタノール、i−プロパノール、N−メチルホルムアミドである。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶剤との混合物としてもよい。有機溶剤中に存在する水を脱水する方法としては、PURIFICATION OF LABORATORY CHEMICALS(3rd Edition)に準じて実施することができる。溶媒中に存在する水分量はカールフィッシャーを用いJIS K 0068−2001に準拠して測定することができる。溶媒中に存在する水分量は、可能な限り少ない方が好ましいが、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0055】
<ブロックイソシアネート>
ブロックイソシアネートは、常温では水酸基を有する化合物、水等とは反応しないが、加熱することによりブロック剤がイソシアネートから解離し、活性なイソシアネート基が再生されて水酸基を有する化合物、水等と反応する。
【0056】
本発明のブロック剤(ブロック基)としては、活性水素を分子内に1個有する化合物が好ましく、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等が挙げられる。
【0057】
より具体的なブロック剤の例を下記に示す。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エチルヘキシルアルコール等の脂肪族アルコール類、
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノ
ール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジルが挙げられる。その中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシルが好ましい。より好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステルであり、さらに好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルであり、最も好ましくは、マロン酸ジエチルである。アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミン、2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でブロック剤として好ましいのは、活性メチレン系、オキシム系、ピラゾール系、アルコール系であり、ブロック剤としてより好ましいのは、マロン酸ジエステル、ジアルキルケトキシム、置換ピラゾール、脂肪族アルコールであり、具体的には、マロン酸ジエチル、3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトオキシム炭素数10以下の脂肪族アルコールがブロック剤として好適に用いられる。
【0058】
本発明において用いられるイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート,脂環族イソシアネート,芳香族イソシアネート等が用いられる。例えばエチルイソシアネート、2−クロロエチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、トリメチルシリルイソシアネート、3−(トリエトキシシリルプロピルイソシアネート)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4,−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネート、例えばシクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族イソシアネート、例えばフェニルイソシアネート、4−エチルフェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、4−エトキシフェニルイソシアネート、フェネチルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、メチルベンジルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、3−メトキシフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、2−メチルフェニルイソシアネート、3−メチルフェニルイソシアネート、4−メチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、2−クロロフェニルイソシアネート、3−クロロフェニルイソシアネート、4−クロロフェニルイソシアネート、2,3−ジクロロフェニルイソシアネート、2,4−ジクロロフェニルイソシアネート、2,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,6−ジクロロフェニルイソシアネート、3,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,4,6−トリクロロイソシアネート2−ブロモフェニルイソシアネート、3−ブロモフェニルイソシアネート、4−ブロモフェニルイソシアネート、2−フルオロフェニルイソシアネート、3−フルオロフェニルイソシアネート、4−フルオロフェニルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、1−イソシアナト−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−ニトロフェニルイソシアネート、3−ニトロフェニルイソシアネート、4−ニトロフェニルイソシアネート、1−(1−ナフチル)エチルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ビフェニルイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′−ジイソシアネート1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナートベンゼン、2,4,6−トリイソシアナートトルエン等の有機トリイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタン−2,2′−5,5′−テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体等が挙げられる。また、前記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビューレット、アロフアネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート等もブロックイソシアネートの一種として挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物としては、組成物の相溶性の観点から、芳香族イソシアネートが好ましく、具体的にはフェニルイソシアネート、ハロゲン置換フェニルイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが好適に用いられる。
【0059】
下記一般式(II)で表される本発明のブロックイソシアネートは、前記ブロック剤(H−Z)と下記一般式(I)で表されるイソシアネートから生成される。
【0061】
式中、Aは母核を表し、nは1以上の整数を表す。また、Zは前記ブロック剤からプロトンが外れたブロック基を表す。
【0062】
母核Aは、置換基を有してもよい直鎖、分岐のアルキル基、シクロアルキル基、脂肪族ヘテロ環基、芳香族ヘテロ環基、芳香族基又はこれらの複合体を表す。また、母核同士が結合しポリマーになってもよい。
【0063】
以下に本発明のブロックイソシアネートの一例を下記に挙げるが、本発明のブロックイソシアネートは、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明のブロックイソシアネートは、特開平10−72520号公報、特開2006−151967号公報、特開2012−12567号公報等に記載された方法に基づいて合成することができる。ブロックイソシアネートの合成方法としては、溶媒中で加熱反応してもよく、バルクのイソシアネートとブロック剤とを反応させてもよい。得られたブロックイソシアネートとしては、反応後の生成物をそのまま使用してもよく、精製後使用してもよい。ブロックイソシアネートは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ブロックイソシアネートの添加量は、組成物全重量に対し、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは0.8〜20重量%である。ブロックイソシアネートの添加量を0.5重量%以上とすることによって、本発明の目的である水との反応を十分に行うことができ、30重量%以下とすることによって、ブロック剤の拡散に伴う導電膜及び有機エレクトロルミネッセンス素子の性能劣化を防ぐことができる。また、使用する組成物の種類によって、水等との求核溶媒との反応と、ブロック剤の拡散に伴う導電膜及び有機エレクトロルミネッセンス素子の性能との両立が可能な範囲が異なるが、ブロックイソシアネートの添加量を0.8〜20重量%とすることによって、導電膜及び有機EL素子の強制劣化試験前後における各性能の変動幅を小さく抑えることができ、どの組成物を用いても導電膜及び有機エレクトロルミネッセンス素子の性能がより好適に発揮される。
【0067】
<バインダー樹脂>
本発明において、バインダー樹脂は、導電性高分子化合物と相溶又は混合分散可能であれば特に制限されず、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0068】
これらバインダー樹脂は、有機溶剤に溶解されていてもよいし、有機溶剤に分散されていてもよい。また、バインダー樹脂は、前記導電性高分子化合物分散液に固体添加されて分散処理されてもよい。
【0069】
バインダー樹脂の中でも、導電性高分子化合物との相溶性や透明性からポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂ポリビニルブチラールのいずれか1種以上が好ましい。特に、バインダー樹脂としては、導電性高分子化合物との相溶性が高くて透過率、ヘイズ等といった光学性能において有利なポリエステル、ポリビニルブチラールがより好ましい。
【0070】
(導電性高分子化合物とバインダー樹脂との比率)
本発明において、前記導電性高分子化合物とバインダー樹脂との比率は、バインダー樹脂を100質量部としたとき、導電性高分子化合物が5〜100質量部であることが好ましい。ここで、導電性高分子化合物の使用量がバインダー樹脂100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましい理由は、導電性高分子化合物の使用量がバインダー樹脂100質量部に対して5質量部以上とすることによって、導電性高分子化合物の比率が小さくなりすぎずに導電性のネットワークが十分に形成されて導電性が向上し、さらに100質量部以下とすることによって、可視光領域の光を吸収する導電性高分子化合物の影響が小さくなって可視光透過率が増加するためである。透過率の向上をできるだけ得るとともに導電性の低下を防ぐためには、導電性高分子化合物とバインダー樹脂との比率は前記の範囲であることが好ましい。
【0071】
(表面の平滑性)
本発明において、導電膜表面の平滑性を表すRyとRaは、Ry=最大高さ(表面の山頂部と谷底部との高低差)とRa=算術平均粗さを意味し、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる値である。本発明の導電膜は、導電膜上に積層する層に凹凸の影響がない方が好ましく、特に有機エレクトロルルミネッセンス素子を積層する場合、導電膜表面の平滑性がRy≦30nm、また、併せて導電膜の表面の平滑性はRa≦10nmであることが好ましい。本発明においてRyやRaの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いることができ、例えば、以下の方法で測定できる。
【0072】
AFMとして、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域80×80μmを、走査周波数1Hzで測定する。
【0073】
(金属材料)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る導電膜1は、導電性高分子化合物とポリオレフィン系共重合体とを含有する導電性層(
図1の第2導電層13)の他に、基材11上にパターン状に形成された金属材料含有導電性層(
図1の第1導電層12)を有する。
【0074】
金属材料としては、導電性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子又は金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は、導電性の観点から銀であることが好ましい。
【0075】
本発明に係る第1導電層12は、透明な導電膜1を構成するために、開口部12aを有するパターン状を呈するように基材11上に形成される。開口部12aは、基材11上に金属材料を有さない部分であり透光性窓部である。パターン形状には特に制限はないが、例えば、ストライプ状、メッシュ状又はランダムな網目状であることが好ましい。導電膜1全体の面に対して開口部12aは示す割合、すなわち、開口率は、透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、光不透過の導電部を除いた部分が全体に占める割合である。例えば、光不透過の導電部がストライプ状又はメッシュ状である場合、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、約90%である。
【0076】
パターンの線幅は、透明性及び導電性の観点から、10〜200μmが好ましい。細線の線幅が10μm以上であれば、所望の導電性が得られ、また細線の線幅が200μm以下であれば、所望の透明性が得られる。細線の高さは、0.1〜10μmが好ましい。細線の高さが0.1μm以上であれば、所望の導電性が得られ、また細線の高さが10μm以下であれば、有機電子デバイスの形成において、電流リークや機能層の膜厚の分布不良が防止される。
【0077】
ストライプ状又はメッシュ状の第1導電層12を形成する手法としては、特に、制限はなく、従来公知な手法が利用できる。例えば、基材11全面に金属層を形成し、金属層に公知のフォトリソ法を施すことによって形成できる。具体的には、基材11上の全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1又は2以上の物理的又は化学的形成手法を用いて金属層を形成する、若しくは、金属箔を接着剤で基材11に積層した後、公知のフォトリソ法を用いてエッチングすることにより、所望のストライプ状又はメッシュ状に加工された第1導電層12を得ることができる。金属種としては、通電可能であれば特に制限されず、銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から、好ましくは銀又は銅であり、より好ましくは銀である。
【0078】
別な手法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する手法、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷又はインクジェット方式で所望の形状に塗布した後にメッキ処理する手法、又は、銀塩写真技術を応用した方法が挙げられる。
【0079】
銀塩写真技術を応用した手法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]及び実施例を参考にして実施可能である。また、触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する手法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施可能である。
【0080】
また、ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載されているように、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する手法が利用可能である。また、別な手法として、例えば、特表2009−505358号公報に記載されているように、金属ナノワイヤを含有する塗布液(分散液)を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成する手法が利用可能である。
【0081】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0082】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、3〜500μmであることがより好ましい。金属ナノワイヤの長さが500μm以下であれば、一本のワイヤがうまく広がって他のワイヤと重ならずに配置され、その結果、第1導電層12の膜厚が抑えられ、薄膜化が達成されるとともに透過率が向上する。また、金属ナノワイヤの長さが3μm以上であれば、金属ナノワイヤ同士の接点が増加し、金属ナノワイヤの添加量を抑えつつ、所望のシート抵抗及び透過率が得られる。併せて、長さの相対標準偏差は、40%以下であることが好ましい。これは、長さの相対標準偏差が40%以下であれば、第1導電層12の膜厚ムラ及びシート抵抗の均一性低下が防止されるためである。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。したがって、金属ナノワイヤの平均短径は、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。これは、短径の相対標準偏差が20%以下であれば、第1導電層12の膜厚ムラの発生が抑えられるとともに、有機EL素子の輝度ムラの発生が抑えられるためである。金属ナノワイヤの目付け量は、0.02〜0.5g/m
2が好ましい。金属ナノワイヤの目付け量が0.02g/m
2以上であれば、所望のシート抵抗が得られ、目付け量が0.5g/m
2以下であれば、所望のシート抵抗及び透過率が得られる。金属ナノワイヤの目付け量は、シート抵抗及び透過率の観点から、0.03〜0.2g/m
2がより好ましい。
【0083】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金、銀等が挙げられるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化耐性、酸化耐性、及び、マイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0084】
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法、気相法等の公知の手法を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837、Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができ
る。特に、前記した文献に開示された銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に好ましく適用することができる。
【0085】
また、金属材料からなる細線部(第1導電層12)の表面比抵抗は、大面積化という観点から、100Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0086】
また、金属材料からなる細線部(第1導電層12)は、基材11にダメージを与えない範囲で加熱処理を施されることが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、金属材料からなる細線部が高導電化する。
【0087】
(基材)
基材11は、導電層12,13を担持しうる板状体であり、透明な導電膜1を得るためには、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が80%以上のものが好ましく用いられる。
【0088】
基材11としては、フレキシブル性に優れており、誘電損失係数が十分小さくて、マイクロ波の吸収が導電層12,13よりも小さい材質であるものが好ましく用いられる。
【0089】
基材11としては、例えば、樹脂基板、樹脂フィルム等が好適に挙げられるが、生産性の観点、及び、軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。透明樹脂フィルムとは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上のものをいう。
【0090】
好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。かかる透明樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0091】
前記した全光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明の基材11として用いられるフィルム基板として好ましく用いられる。かかるフィルム基板としては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの観点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム又はポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
【0092】
本発明に用いられる基材11には、塗布液(分散液)の濡れ性及び接着性を確保するために、表面処理を施したり易接着層を設けたりすることができる。
【0093】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0094】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0095】
また、フィルム基板の表面又は裏面には、無機物の被膜、有機物の被膜又はこれらの両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、かかる被膜が形成されたフィルム基板は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定した水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10
−3g/(m
2・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10
−3ml/m
2・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10
−3g/(m
2・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0096】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面又は裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分、酸素等といった素子の劣化をもたらすものの侵入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらにバリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層及び有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0097】
(塗布、加熱、乾燥)
本発明の第2導電層13は、前記した導電性高分子化合物、及び、ポリオレフィン系共重合体を含有する塗布液(分散液)を、基材11上に塗布し、加熱、乾燥することによって形成される。透明導電膜1が第1導電層11として金属材料からなる細線部を有する場合は、この金属材料からなる細線部が形成された基材11上に前記した塗布液を塗布し、加熱、乾燥することによって第2導電層13が形成される。ここで、第2導電層13は、第1導電層12である金属細線部と電気的に接続されていればよく、パターン形成された金属細線部を完全に被覆してもよいし、金属細線部の一部を被覆してもよいし、金属細線部に接触していてもよい。
【0098】
導電性高分子化合物、及び、ポリオレフィン系共重合体からなる塗布液の塗布は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法のいずれかを用いることができる。
【0099】
また、金属細線部(第1導電層12)の一部を導電性高分子化合物と水系溶剤に分散可能なポリマーとを含有する第2導電層13が被覆又は接触している導電膜1を製造する方法としては、転写フィルムに第1導電層12を前記した方法で形成し、さらに導電性高分子化合物と水系溶剤に分散可能なポリマーとを含有する第2導電層13を後記する方法で積層したしたものを、前記した基材11に転写する方法が挙げられる。
【0100】
また、導電膜1を製造する方法として、金属細線部の非導電部(開口部12a)にインクジェット法等の公知の方法で、導電性高分子化合物と水系溶剤に分散可能なポリマーとを含有する第2導電層13を形成する方法等が挙げられる。
【0101】
導電性高分子化合物と水系溶剤に分散可能なポリマーとを含有する第2導電層13は、カチオン性π共役系高分子に対するポリアニオンの重量比が0.5〜2.5未満の導電性高分子化合物を含むことが好ましい。これにより、高い導電性、高い透明性、及び、強い膜強度を得ることができる。
【0102】
このような構造を有する本発明の導電層12,13を形成することで、金属若しくは金属酸化物細線、又は、導電性高分子化合物層単独では得ることのできない高い導電性を、導電膜1の面内において均一に得ることができる。
【0103】
第2導電層13の乾燥膜厚は、表面平滑性及び透明性の観点から、30〜2000nmであることが好ましく、導電性の観点から、100nm以上であることがより好ましく、導電膜1の表面平滑性の観点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、第2導電層13の乾燥膜厚は、透明性の観点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0104】
第2導電層12は、導電性高分子化合物と水系溶剤に分散可能なポリマーとを含有する塗布液(分散液)を塗布した後、乾燥処理を施すことによって形成される。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材11及び導電層12,13が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80〜120℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。これにより導電膜1の洗浄耐性及び溶剤耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、導電膜1を備える有機EL素子においては、駆動電圧の低減及び寿命の向上といった効果が得られる。
【0105】
前記した塗布液は、添加剤として、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、硫化防止剤等)、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料等)等を含んでいてもよい。さらに、前記した塗布液は、塗布性等の作業性を高める観点から、溶剤(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶剤)を含んでいてもよい。
【0106】
本発明において、導電層である第2導電層13の表面の平滑性を表すRyとRaは、Ry=最大高さ(表面の山頂部と谷底部との高低差)とRa=算術平均粗さを意味し、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる値である。本発明に係る導電膜1は、導電性の向上という観点から、導電層である第2導電層13の表面の平滑性がRy≦50nmであり、かつ、導電層である第2導電層13の表面の平滑性がRa≦10nmであることが好ましい。本発明において、Ry及びRaの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いることができ、例えば、以下の手法で測定可能である。
【0107】
AFMとして、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域80×80μmを、走査周波数1Hzで測定する。
【0108】
本発明において、Ryの値は、導電性の向上という観点から、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。同様に、Raの値は、導電性の向上という観点から、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0109】
本発明において、導電膜1は、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。また、本発明の導電膜1における導電層である第2導電層13の電気抵抗値としては、性能向上という観点から、表面抵抗率として1000Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましい。さらには、導電膜1を電流駆動型オプトエレクトロニクスデバイスに適用するためには、電流駆動型オプトエレクトロニクスデバイスに適用した際の性能向上という観点から、表面抵抗率が50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。すなわち、表面抵抗率が10
3Ω/□以下であると各種オプトエレクトロニクスデバイスにおいて、導電膜1が電極として好適に機能することができて好ましい。前記した表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0110】
本発明に係る導電膜1の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性及び柔軟性が向上するためより好ましい。
【0111】
<有機EL素子>
本発明の実施形態に係る有機EL素子は、導電膜1を電極として備えることを特徴とするものであり、有機発光層を含む有機層と、導電膜1と、を備える。本発明の実施形態に係る有機EL素子は、導電膜1を陽極として備えることが好ましく、有機発光層及び陰極については、有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
【0112】
有機EL素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることができる。
【0113】
また、本発明において、有機発光層に使用できる発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、各種蛍光色素、希土類金属錯体、燐光発光材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることが好ましい。有機発光層は、前記した材料等を用いて、蒸着、塗布、転写等の公知の方法によって製造される。この有機発光層の厚みは、発光効率の観点から、0.5〜500nmが好ましく、0.5〜200nmがより好ましい。
【0114】
本発明の実施形態に係る導電膜1は、高い導電性と透明性とを併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、導電膜表面の平滑性が厳しく求められる有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子の導電膜として特に好ましく用いることができる。
【0115】
また、本発明に係る有機EL素子は、均一にムラなく発光させることができるため、照明用途で用いることが好ましいものであり、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」及び「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」及び「質量%」を表す。
【0117】
合成例1
<導電性高分子化合物を分散する有機溶媒の調製>
(溶媒S−1):本発明
脱水エタノール(関東化学社製)をカールフィッシャーを用いJIS K 0068-2001に準拠し測定した結果、水分量は47ppmであった。
【0118】
(溶媒S−2,S−3):本発明
前記S−1に水を添加し、その水分量をカールフィッシャーで定量した結果、1.2%(S−2)、4.5%(S−3)の含水エタノールを得た。
【0119】
(溶媒S−4):本発明
脱水2−プロパノール(関東化学社製)と脱水エタノール(関東化学社製)を97/3=v/vで混合し、その水分量をカールフィッシャーで定量した結果、42ppm(S−4)の含水エタノールを得た。
【0120】
(溶媒S−5):本発明
モレキュラーシーブA4(関東化学社製)を減圧下300℃で3時間加熱した後、減圧下で室温まで冷却し、N−メチルホルムアミド(関東化学社製)に添加した。得られたものを1日放置した後、水分量をカールフィッシャーで定量した結果、2.9%(S−5)の含水N−メチルホルムアミドを得た。
【0121】
(溶媒S−6):比較例
前記S−2,S−3と同様な方法により、8.1%(S−6)の含水エタノールを得た。
【0122】
合成例2
導電性高分子化合物の有機溶媒分散体の合成
<有機溶媒分散体C−1の製造>
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製)の水分散体を凍結乾燥機FDU−2200(東京理化器機社製)で凍結乾燥してPEDOT−PSSの固体を得た。この固体を水分量5ppm未満のグローブボックス中で3日調湿した。調湿後の固体に溶媒S−1を添加して、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、このエタノール分散液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を12回(12pass)行い、固形分1%の導電性高分子化合物のエタノール分散体C−1を製造した。
【0123】
<有機溶媒分散体C−2〜C−6の製造>
前記有機溶媒分散体C−1の製造において、溶媒S−1を溶媒S−2〜溶媒S−6(比較有機溶媒分散体)に変更した以外は、有機溶媒分散体C−1の製造と同様の方法で有機溶媒分散体C−2〜C−6を得た。
【0124】
合成例3
<ブロックイソシアネートの合成>
(ブロックイソシアネートB−1)
撹拌機、温度計、窒素導入管及びジムロート冷却管を備えた、100ml容量の四ッ口フラスコに、窒素ガス雰囲気下、フェニルイソシアネート10g(83.9mmol、分子量 119.12)を仕込み、水冷しながら、ジエチルマロネート12.8g(79.7mmol、分子量 160.17)を、内温を45℃以下に保ちながら、徐々に添加した。添加終了後、さらに3時間反応を続け、ブロック化ジイソシアネート反応物を得た。この反応物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ブロックイソシアネートB−1を得た。構造は1H−NMR、IR、マススペクトルにより同定した。
【0125】
(ブロックイソシアネートB−2〜B−5)
ブロックイソシアネートB−1の前記合成法において、ジエチルマロネート12.8gを3,5−ジメチルピラゾール7.7g、2−ブタノンオキシム6.9g、2−エチル−1−ヘキサノール10.4gに変更した以外は、ブロックイソシアネートB−1の合成法と同様の方法により、ブロックイソシアネートB−2〜B−5を得た。
【0126】
(ブロックイソシアネートB−6,B−7)
ブロックイソシアネートB−1の前記合成法において、フェニルイソシアネート10gを4−クロロフェニルイソシアネート12.9g、メチレンジフェニル−4,4‘−ジイソシアネート21.0gに変更した以外は、ブロックイソシアネートB−1の合成法と同様の方法により、ブロックイソシアネートB−6,B−7を得た。
【0127】
合成例4
ポリエステル系重合体分散液PO−1(ポリエステル共重合体分散液)の合成
<ポリエステルの製造例>
攪拌機、温度計及び還流用冷却器を備えた反応釜内に、テレフタル酸75g、イソフタル酸75g、5−Naスルホイソフタル酸ジメチル10g、エチレングリコール100g、ネオペンチルグリコール100g、触媒としてn−テトラブチルチタネート0.1g、重合安定剤として酢酸ナトリウム0.3g、酸化防止剤としてイルガノックス1330を2g仕込み、170〜230℃で2時間エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、反応系を230℃から270℃まで昇温する一方、系内をゆっくりと減圧にしてゆき、60分かけて270℃で5Torrとした。そしてさらに1Torr以下で30分間重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、窒素を用いて系を真空から常圧に戻し、溶融状態のポリエステル(A)を得た。ポリエステル(D)は、NMR分析の結果、ジカルボン酸成分はテレフタル酸49モル%、イソフタル酸48.5モル%、5−Naスルホイソフタル酸2.5モル%、ジオール成分はエチレングリコール50モル%、ネオペンチルグリコール50モル%で、ガラス転移温度は67℃、還元粘度0.53dl/gであった。
【0128】
<基材の作製>
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工していない面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材:OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の平均膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用して硬化条件1.0J/cm
2で硬化を行い、平滑層を形成した。
【0129】
続いて、前記平滑層を設けた試料上にガスバリア層を、以下に示す条件で形成した。
(ガスバリア層塗布液)
【0130】
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
【0131】
(第一工程;乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
【0132】
(第二工程;除湿処理)
乾燥試料をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
【0133】
(改質処理A)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
【0134】
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe 稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0135】
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm
2(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
前記のようにしてガスバリア性を有する透明電極(透明導電膜)用のフィルム基板(基材)を作製した。
【0136】
<実施例1>
(透明電極TC−101の作製)
まず、前記したように得られたガスバリア性を有する透明電極用フィルム基板上のバリアの面に、下記塗布液Aを、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、110℃、3分で加熱乾燥し、導電性高分子化合物とバインダー樹脂からなる導電層(
図1の第2導電層のみ)を形成し、得られた電極を8×8cmに切り出した。さらに得られた電極を、オーブンを用いて110℃、3分加熱処理することで透明電極TC−101を作製した。
【0137】
(塗布液A)
下記処方の塗布液を撹拌混合して使用した。
有機溶媒分散体C−1(固形分濃度1.0%) 2.0g
バインダーの有機溶媒溶解液(エスレックBL−5、積水化学工業社製、固形分濃度20%、溶媒S−1使用) 0.23g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
【0138】
(導電膜TC−102,TC−103の作製)
導電膜TC−101の作製において、有機分散体C−1を有機分散体C−2,C−3に変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−102,TC−102を作製した。
【0139】
(導電膜TC−104〜TC−108の作製)
導電膜TC−101の作製において、ブロックイソシアネートB−1をブロックイソシアネートB−2〜B−6に変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−104〜TC−108を作製した
【0140】
(導電膜TC−109,TC−110の作製)
導電膜TC−101の作製において、バインダーの有機溶媒溶解液中のバインダーをエスレックBM−S、エスレックBH−Sに変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−TC−109,TC−110を作製した。
【0141】
(導電膜TC−111の作製)
導電膜TC−101の作製において、有機分散体C−1を有機分散体C−4に変更し、バインダーの有機溶媒溶解液の溶媒をS−4に変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−111を作製した。
【0142】
(導電膜TC−112の作製)
導電膜TC−101の作製において、塗布液Aを下記塗布液Bに変更し、また基板をガラス基板に変更し、さらに加熱乾燥を190℃5分に変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−111を作製した。
【0143】
(塗布液B)
有機溶媒分散体C−5(固形分濃度1.0%) 2.0g
バインダーの有機溶媒溶解液(TP−219S、日本合成化学社製、固形分濃度60%) 0.23g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
【0144】
(比較導電膜TC−113〜TC−118の作製)
導電膜TC−101の作製において、塗布液Aの有機溶媒分散体、バインダーの有機溶媒溶解液及びブロックイソシアネートを表1記載のように変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−113〜TC−118を作製した。
※C−X:Clevios PH750(固形分濃度1.0%、ヘレウス社製、PEDOT/PSSの水分散物)
【0145】
(比較導電膜TC−119の作製)
<水分散体C−Yの製造>
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製)の水分散体を凍結乾燥機FDU−2200(東京理化器機社製)で凍結乾燥してPEDOT−PSSの固体を得た。この固体8重量部にイオン交換水9重量部を添加し、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水分散液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を12回(12pass)行い、導電性高分子化合物の水分散体Zを製造した。これとは別に、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)10g、ガーリック酸メチル9g、サンエイドSI−110L(三新化学社製)0.1g、プロピレングリコール54gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液を、前記導電性高分子化合物の水分散体Zに添加し、さらに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド910gを添加し、冷却しながらホモジナイザーで9000rpmの回転速度で10〜15分間撹拌した。その後、ナノマイザーに、150MPaの圧力で5回通して微粒子化し、目開き5μmのろ紙によりろ過し、1分間脱泡させて、導電性高分子化合物の水分散体C−Yを製造した。
【0146】
導電膜TC−101の作製において、塗布液Aを塗布液Cに変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−119を作製した。
【0147】
(塗布液C)
有機溶媒分散体C−Y(固形分濃度1.0%) 2.0g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
【0148】
<透明電極の評価>
得られた透明電極の透明性、表面抵抗(導電性)、膜強度を下記に記載のように評価した。また、透明電極の安定性を評価するため、80℃、90%RHの環境下で14日間置く強制劣化試験後の透明電極試料の、透明性、表面抵抗、膜強度の評価を行った。
【0149】
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。
◎:85%以上
○:80%以上85%未満
△:75%以上80%未満
×:75%未満
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
【0150】
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。
評価基準:強制劣化前後の表面抵抗がそれぞれ500Ω/□以下、600Ω/□以下の試料が本発明として合格
【0151】
(表面平滑性(Ra,Ry))
AFM(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット)を使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を用いて前記の方法で測定した。
評価基準:強制劣化後のRy,Raがそれぞれ30nm以下、10nm以下の試料が本発明として合格
【0152】
(膜強度)
導電層の膜の強度を、テープ剥離法により評価した。
導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて圧着/剥離を10回繰り返し、導電層の脱落を目視観察し、下記基準で評価した。
◎:影響を受けている部分が3%以下
○:影響を受けている部分が3%を超えるが5%以下
△:影響を受けている部分が5%を超えるが30%以下
×:影響を受けている部分が30%を超える
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
【0153】
評価の結果を表1に示す。表1において、備考における「本発明」は本発明の実施例に該当することを表し、「比較」は比較例であることを表す。
【0154】
【表1】
【0155】
表1から、比較例の透明電極TC−113〜TC−119と比べて、本発明の透明電極TC−101〜TC−112は、高温、高湿度環境下においても導電性、光透過性及び膜強度の劣化が少なく、安定性に優れることが分かる。
【0156】
<実施例2>
(透明電極TC−201の作製)
<導電膜の作製>
<第1導電層の形成>
上記で得られたガスバリア性を有する導電膜(導電膜1)用フィルム基板(基材11)上のバリア面に、以下の方法で第1導電層を形成した。
【0157】
(細線格子)
細線格子(金属材料)については、以下に示すグラビア印刷又は銀ナノワイヤにより作製した。
【0158】
(グラビア印刷)
銀ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP:三ツ星ベルト製)をRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて線幅50μm、高さ1.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行った。
【0159】
<導電膜TC−101の作製>
ガスバリア性を有する導電膜用のフィルム基板上のバリアのない面に、下記のように調製した塗布液Aを、押し出し法を用いて、乾燥膜厚200nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、110℃、3分で加熱乾燥し、導電層を形成し、得られた電極を8×8cmに切り出した。得られた電極を、オーブンを用いて110℃、7分加熱することで導電膜TC−201を作製した。
【0160】
(塗布液A)
下記処方の塗布液を撹拌混合して使用した。
有機溶媒分散体C−1(固形分濃度1.0%) 2.0g
バインダーの有機溶媒溶解液(エスレックBL−5、積水化学工業社製、固形分濃度20%、溶媒S−1使用) 0.23g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
【0161】
(導電膜TC−202,TC−203の作製)
導電膜TC−201の作製において、有機分散体C−1を有機分散体C−2,C−3に変更した以外は導電膜TC−201の作製と同様にして、導電膜TC−202,TC−202を作製した。
【0162】
(導電膜TC−204〜TC−208の作製)
導電膜TC−201の作製において、ブロックイソシアネートB−1をブロックイソシアネートB−2〜B−6に変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、導電膜TC−204〜TC−208を作製した
【0163】
(導電膜TC−209,TC−210の作製)
導電膜TC−201の作製において、バインダーの有機溶媒溶解液中のバインダーをエスレックBM−S、エスレックBH−Sに変更した以外は導電膜TC−201の作製と同様にして、導電膜TC−209,TC−210を作製した。
【0164】
(導電膜TC−211の作製)
導電膜TC−201の作製において、有機分散体C−1を有機分散体C−4に変更し、バインダーの有機溶媒溶解液の溶媒をS−4に変更した以外は導電膜TC−201の作製と同様にして、導電膜TC−211を作製した。
【0165】
(導電膜TC−212の作製)
導電膜TC−201の作製において、塗布液Aを下記塗布液Bに変更し、また基板をガラスに変更し、更に加熱乾燥を190℃5分に変更した以外は導電膜TC−201の作製と同様にして、導電膜TC−212を作製した。
【0166】
(塗布液B)
有機溶媒分散体C−5(固形分濃度1.0%) 2.0g
バインダーの有機溶媒溶解液(TP−219S、日本合成化学社製、固形分濃度60%) 0.23g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
【0167】
(導電膜TC−213の作製)
(ランダムな網目構造)
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0168】
ランダムな網目構造については、以下に示すように銀ナノワイヤを用いて作製した。すなわち、銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/m
2となるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し、銀ナノワイヤ基板を作製した。
【0169】
銀ナノワイヤによりランダムな網目構造を形成した第1導電層上に、TC−202と同様の塗布液Aを用いて導電膜TC−202の作製と同様の方法により第2導電層を形成し、8×8cmに切り出した。得られた電極を、オーブンを用いて110℃、3分加熱することで導電膜TC−213を作製した。
【0170】
(導電膜TC−214の作製)
(銅メッシュ基板)
基板上に、補助電極として、下記の方法により、銅メッシュを作製し、金属微粒子除去液BFによるパターンニングを行い、銅メッシュ基板を作製した。
【0171】
パラジウムナノ粒子を含有する森村ケミカル社製の触媒インクJIPD−7を用い、それにCabot製の自己分散型カーボンブラック溶液CAB−O−JET300を、触媒インクに対するカーボンブラック比率が10.0質量%になるように添加し、さらにサーフィノール465(日信化学工業株式会社)を添加して、25℃における表面張力が48mN/mである導電性インクを調製した。
【0172】
導電性インクを、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、基材上に線幅10μm、乾燥後膜厚0.5μm、線間隔300μmの格子状の導電性細線を形成した後、乾燥した。
【0173】
続いて、メルテックス社製の高速無電解銅メッキ液CU−5100を用い、温度55℃で10分間浸漬した後、洗浄して、無電解メッキ処理を施して、メッキ厚3μmの補助電極を作製した。
【0174】
銅メッシュを第1導電層として形成した導電膜上に、TC−202と同様の塗布液Aを用いて導電膜TC−202の作製と同様の方法により第2導電層を形成し、8×8cmに切り出した。得られた電極を、オーブンを用いて110℃、3分加熱することで導電膜
TC−214を作製した。
【0175】
(比較導電膜TC−215〜TC−220の作製)
導電膜TC−201の作製において、塗布液Aの有機溶媒分散体、バインダーの有機溶媒溶解液及びブロックイソシアネートを表2記載のように変更した以外は導電膜TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−215〜TC−220を作製した。
※C−X:Clevios PH750(固形分濃度1.0%、ヘレウス社製、PEDOT/PSSの水分散物)
【0176】
(比較導電膜TC−221の作製)
<水分散体C−Yの製造>
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製)の水分散体を凍結乾燥機FDU−2200(東京理化器機社製)で凍結乾燥してPEDOT−PSSの固体を得た。この固体8重量部にイオン交換水9重量部を添加し、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水分散液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を12回(12pass)行い、導電性高分子化合物の水分散体Zを製造した。これとは別に、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)10g、ガーリック酸メチル9g、サンエイドSI−110L(三新化学社製)0.1g、プロピレングリコール54gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液を、前記導電性高分子化合物の水分散体Zに添加し、さらに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド910gを添加し、冷却しながらホモジナイザーで9000rpmの回転速度で10〜15分間撹拌した。その後、ナノマイザーに、150MPaの圧力で5回通して微粒子化し、目開き5μmのろ紙によりろ過し、1分間脱泡させて、導電性高分子化合物の水分散体C−Yを製造した。
【0177】
導電膜TC−201の作製において、塗布液Aを塗布液Cに変更した以外は導電膜TC−201の作製と同様にして、透明電極TC−221を作製した。
【0178】
(塗布液C)
有機溶媒分散体C−Y(固形分濃度1.0%) 2.0g
ブロックイソシアネートB−1 0.05g(DMSO0.2gに溶解)
<透明電極の評価>
得られた透明電極の透明性、表面抵抗(導電性)、膜強度を下記に記載のように評価した。また、透明電極の安定性を評価するため、80℃、90%RHの環境下で14日間置く強制劣化試験後の透明電極試料の、透明性、表面抵抗、膜強度の評価を行った。
【0179】
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。
◎:85%以上
○:80%以上85%未満
△:75%以上80%未満
×:75%未満
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
【0180】
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。
評価基準:強制劣化前後の表面抵抗がそれぞれ15Ω/□以下の試料が本発明として合格
【0181】
(表面平滑性(Ra,Ry))
AFM(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット)を使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を用いて前記の方法で測定した。
評価基準:強制劣化後のRy,Raがそれぞれ30nm以下、10nm以下の試料が本発明として合格
【0182】
(膜強度)
導電層の膜の強度を、テープ剥離法により評価した。
導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて圧着/剥離を10回繰り返し、導電層の脱落を目視観察し、下記基準で評価した。
◎:影響を受けている部分が3%以下
○:影響を受けている部分が3%を超えているが5%以下
△:影響を受けている部分が5%を超えるが30%以下
×:影響を受けている部分が30%を超える
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
評価の結果を表2に示す。表2において、備考における「本発明」は本発明の実施例に該当することを表し、「比較」は比較例であることを表す。
【0183】
【表2】
【0184】
表2から、比較例の透明電極TC−215〜TC−221と比べて、本発明の透明電極TC−201〜TC−214は、高温、高湿度環境下においても導電性、光透過性及び膜強度の劣化が少なく、安定性に優れることが分かる。
【0185】
<実施例3>
<有機ELデバイスの作製>
実施例2で作製した導電膜を超純水で洗浄後、パターン辺長20mmの正方形タイル状パターン一個が中央に配置されるように30mm角に切り出し、アノード電極に用いて、以下の手順でそれぞれ有機ELデバイスを作製した。正孔輸送層以降は蒸着により形成した。導電膜TC−201〜TC−221を用い、それぞれ有機EL素子OEL−301〜OEL−321を作製した。
【0186】
市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼのそれぞれに、各層の構成材料をそれぞれ素子作製に必要量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0187】
まず、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層からなる有機EL層を順次形成した。
【0188】
<正孔輸送層の形成>
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
【0189】
<有機発光層の形成>
次に、以下の手順で各発光層を設けた。形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0190】
続いて、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0191】
<正孔阻止層の形成>
さらに、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0192】
<電子輸送層の形成>
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0193】
【化4】
【0194】
<カソード電極の形成>
形成した電子輸送層の上に、導電膜を陽極として陽極外部取り出し端子及び15mm×15mmの陰極形成用材料としてAlを5×10
−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陽極を形成した。
【0195】
さらに、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAl
2O
3を厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子を作製した。
【0196】
<有機EL素子の評価>
得られた有機EL素子について、発光ムラ及び寿命を下記のように評価した。
【0197】
(発光均一性)
発光均一性は、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。1000cd/m
2で発光させた有機EL素子OEL−201〜OEL−218について、50倍の顕微鏡でそれぞれの発光輝度ムラを観察した。また、有機EL素子OEL−201〜OEL−218をオーブンにて60%RH、80℃2時間加熱したのち、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間以上調湿した後、同様に発光均一性を観察した。
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:ほとんど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面にわたって発光ムラが見られ、許容できない
評価基準:強制劣化後◎,○と評価された試料が本発明として合格
【0198】
(寿命)
得られた有機EL素子の、初期の輝度を5000cd/m
2で連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。アノード電極をITOとした有機EL素子を上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の基準で評価した。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
◎:150%以上
○:100〜150%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
評価基準:強制劣化後◎,○と評価された試料が本発明として合格
評価の結果を表3に示す。表3において、備考における「本発明」は本発明の実施例に
該当することを表し、「比較」は比較例であることを表す。
【0199】
【表3】
【0200】
表3から、比較例の有機EL素子OEL−315〜OEL−321は、60%RH、80℃2時間の加熱後、発光均一性が著しく劣化するのに対し、本発明の有機EL素子OEL−301〜OEL−314は、発光均一性が加熱後でも安定しており耐久性に優れることが分かる。