(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、ガス発生装置及びエアバッグ装置の第1実施形態について、
図1〜
図13を参照して説明する。
【0043】
ここでのエアバッグ装置は、乗物としての車両に装備されるものである。また、ガス発生装置は、上記エアバッグ装置の一部を構成するものとして用いられるものである。
図11は、上記ガス発生装置10を有するエアバッグ装置60を示している。この
図11に示すように、エアバッグ装置60は、衝突等により車両に衝撃が加わった場合に、ガス発生装置10から膨張用のガスを発生させ、乗物用シートとしての車両用シートに着座している乗員に接近した箇所でエアバッグ50を展開膨張させて、乗員を衝撃から保護する装置である。
【0044】
ガス発生装置10は、エアバッグ50に係止されるリテーナ30と、リテーナ30に組付けられ、かつ膨張用のガスを噴出するインフレータ20とを備えている。次に、ガス発生装置10の各構成部材について説明する。
【0045】
<インフレータ20>
図8及び
図9に示すように、インフレータ20は長尺状としての円柱状をなしており、その内部には、膨張用のガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ20の軸線L1に沿う方向についての一部、ここでは一方(
図8の右方)の端部には、他の箇所よりも小径のガス噴出部21が形成されている。ガス噴出部21の外周面には、複数のガス噴出孔22が設けられている。また、インフレータ20の軸線L1に沿う方向についての他方(
図8の左方)の端部には、同インフレータ20への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0046】
上記のようにガス発生剤を用いたインフレータ20は「パイロタイプ」と呼ばれる。なお、インフレータ20としては、こうしたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0047】
インフレータ20の外面であって、ガス噴出部21とは反対側(
図8の左側)の端部には、取付け突起24が設けられている。取付け突起24は、インフレータ20をリテーナ30とともに乗物構成部材としての車両構成部材11(例えば、車両用シートのフレーム:
図12参照)に対し、締結により固定されるものである。取付け突起24は、インフレータ20の外面から上記軸線L1に交差する方向、ここでは直交する方向(径方向外方:
図8の下方)へ突出するボルトによって構成されている。
【0048】
第1実施形態では、この取付け突起24(ボルト)は、インフレータ20のリテーナ30に対する位置決めを行なうための位置決め突起を兼ねている。このボルトは、一般的なボルトの軸部と同様、円形の断面形状を有し、外周面に雄ねじを有している。
【0049】
<リテーナ30>
リテーナ30は主に次の機能を有する。
・リテーナ30が車両構成部材11に締結されることで、インフレータ20及びエアバッグ50を同車両構成部材11に締結する機能。
【0050】
・エアバッグ50が折り畳まれることにより、後述するコンパクトな流通用中間形態(中間組付け体61:
図7(A)参照)にされたエアバッグ装置60において、インフレータ20を挿入して配置するための空間(後述する収納部51:
図8参照)を輸送時等にも確保し、同空間(収納部51)の型崩れを抑制する機能。
【0051】
上記機能のために、リテーナ30は、
図1、
図2及び
図6に示すように、上記軸線L1に沿う方向についての一部(ここでは、略中央部)を覆う保持部31を有している。第1実施形態では、保持部31が、上記軸線L1に沿う方向へ延び、かつ両端が開放された略筒状(略円筒状)に形成されている。保持部31の上部には、上記軸線L1に沿う方向に延びる切れ目31Aが、同保持部31の全長にわたって設けられている。切れ目31Aは、保持部31の形成時(板材の曲げ加工時)に形成されるものである。ここでは、切れ目31Aは幅の狭いものとされている。保持部31の形状及び大きさは、インフレータ20(取付け突起24(ボルト)を除く)の挿通が可能であり、かつそのインフレータ20を軸線L1の周りで回転し得る形状及び大きさに設定されている。保持部31は、これに挿通されたインフレータ20が軸線L1に沿って移動される際に、その移動をガイドする機能を有する。また、保持部31は、これに挿通されたインフレータ20が回転される際に、その回転をガイド(軸線L1のぶれを規制)する機能を有する。
【0052】
保持部31の一方(
図1、
図2の各右方)の端部であって、周方向についての一部からは、上記軸線L1に沿う方向へ取付け板部32が延びている。取付け板部32において保持部31に繋がっていない側(
図1、
図2の各右側)の端部には、取付け突起33が設けられている。取付け突起33は、リテーナ30をエアバッグ50とともに上記車両構成部材11(
図12参照)に対し、締結により固定するためのものである。取付け突起33は、取付け板部32から軸線L1に交差する方向、ここでは、直交する方向(
図1では下方)へ突出するボルトによって構成されている。
【0053】
図4及び
図5に示すように、保持部31の他方(
図4、
図5の各左方)の端部からは、係合基部34及び舌片36が上記軸線L1に沿う方向へ延設されている。舌片36は、係合基部34から保持部31の周方向(
図5では上方)へ離間した1箇所に設けられている。係合基部34は、略平板状をなしており、上記取付け板部32とは略平行の関係にある。
【0054】
舌片36は、インフレータ20の回転に伴い軸線L1の周りを旋回する上記取付け突起24により押圧された場合に、係合基部34から保持部31の周方向へ遠ざかる側へ弾性変形するように構成されている。そのために、舌片36は、係合基部34に対し、保持部31の周方向に僅かに離間した位置から延びる弾性変形予定部37を有している。弾性変形予定部37は略平板状をなし、上記係合基部34に対し略直交している。従って、弾性変形予定部37の面に直交する方向(厚み方向)は、係合基部34の面に沿う方向に略合致することとなる。そのため、係合基部34の面に沿う方向に力が加わった場合、係合基部34の同方向の弾性変形量が僅かであるのに対し、舌片36は、弾性変形予定部37の保持部31との境界部分37Aを支点として、同方向へ、係合基部34よりも多く弾性変形しやすい。
【0055】
弾性変形予定部37は、上記軸線L1に沿う方向について上記取付け突起33から遠ざかる側へは、上記係合基部34よりも長く形成されている。弾性変形予定部37の係合基部34側(
図1の下側)の側縁であって、取付け突起33から遠ざかる側(
図5の左側)の端部には、作用部38が曲げ形成されている。作用部38は、係合基部34と略同一平面上において略平板状に形成されている。作用部38は、係合基部34から上記軸線L1に沿う方向へ離間している。
【0056】
係合基部34は、軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側の端部に第1係合部35を有している。また、舌片36は、上記作用部38に第2係合部39を有している。これらの第1係合部35及び第2係合部39は、リテーナ30にインフレータ20が組付けられる際に、取付け突起24(ボルト)が係合される箇所である。
【0057】
両係合部35,39は、上記軸線L1に沿う方向に相対向しており、取付け突起24(ボルト)を同方向についての両側から挟み込む機能を担っている。また、両係合部35,39によって挟まれる空間は、一部を保持部31により覆われたインフレータ20が軸線L1の周りで回転されることにより、取付け突起24(ボルト)が入り込んで係合される平面略円形の係合空間41となっている。こうしたインフレータ20の回転に伴う取付け突起24(ボルト)の係合を可能とするために、係合空間41の入口部42は、同係合空間41において、保持部31の周方向についての一側(
図2の略上側)に設定されている。
【0058】
図3に示すように、第1係合部35は、上記軸線L1に沿う方向について、第2係合部39から遠ざかる側(
図3の右側)へ凹む凹部によって構成されている。凹部は、取付け突起24(ボルト)の曲率と略同一の曲率を有する円弧状をなしている。第2係合部39は、上記軸線L1に沿う方向について第1係合部35に向けて突出する突部によって構成されている。
【0059】
取付け突起24が第1係合部35及び第2係合部39によって挟み込まれていない状態、すなわち、舌片36(弾性変形予定部37)が弾性変形していない状態では、係合空間41の入口部42の幅W1が、上記取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭くなるように設定されている。
【0060】
さらに、第2係合部39(突部)の上記入口部42側(
図3の上側)の側縁39Aは、第1係合部35(凹部)の中心C1に向けて延びるように、上記軸線L1に対し傾斜している。
【0061】
上記の構成を有するリテーナ30の大部分は、金属板等の板材を切削加工、曲げ加工等することによって形成されている。特に、保持部31については、平らな板材を略筒状となるように湾曲させることにより形成されている。上述した切れ目31Aは、この曲げ加工の際に形成される。
【0062】
次に、上記ガス発生装置10とともにエアバッグ装置60(
図11参照)を構成するエアバッグ50について説明する。
<エアバッグ50>
図8に示すように、エアバッグ50は、基布55(パネル布とも呼ばれる)を袋状に縫合することによって形成されている。基布55としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0063】
エアバッグ50は、
図7(A),(D)及び
図8に示すように、ガス発生装置10の一部が配置される空間である収納部51を有している。収納部51には挿入口54が開口されている。挿入口54は、保持部31及びインフレータ20(取付け突起24を除く部分)が通過できる大きさを有している。収納部51において、挿入口54から収納部51の内側へ離れた箇所には、上記リテーナ30の取付け突起33(ボルト)よりも僅かに大径の挿通孔53が形成されている。
【0064】
上記エアバッグ装置60は、その製造(組付け)過程において、ガス発生装置10のうち、リテーナ30のみがエアバッグ50(収納部51)に係止される中間の形態を採る。このときのエアバッグ装置60の形態を、組付けの完了したものと区別するために、中間組付け体61というものする(
図7(A)参照)。この中間組付け体61は、エアバッグ装置を異なる2つの製造拠点(第1の製造拠点、第2の製造拠点)間で輸送等する際の、輸送に適した形態(流通用中間形態)として設定されている。
【0065】
次に、第1実施形態の作用を、上述した各構成部品を用いてエアバッグ装置60を組付ける方法とともに、
図7〜
図11を参照して説明する。この組付け方法の実施に際しては、準備工程、挿入工程及び装着工程が順に行なわれる。準備工程については第1の製造拠点で行なわれ、挿入工程及び装着工程については第2の製造拠点で行なわれる。次に、各工程での実施内容について説明する。
【0066】
<準備工程>
図7(A)及び
図8に示すように、準備工程では、エアバッグ装置60の中間組付け体61が準備される。この中間組付け体61では、リテーナ30の一部(取付け板部32の全体と、保持部31の大部分)がエアバッグ50の内部(収納部51)に配置されている。保持部31の一部、係合基部34及び舌片36の一部は、エアバッグ50(収納部51)の外部で露出している。また、取付け突起33が、基布55の挿通孔53に対し、収納部51の内側から外側(
図8の上側から下側)へ挿通されることで、同取付け突起33を通じ、リテーナ30がエアバッグ50(収納部51)に係止されている。
【0067】
こうした状態は、例えば、エアバッグ50の縫製の途中で、リテーナ30の取付け突起33(ボルト)を挿通孔53に挿通することで、リテーナ30を基布55に係止し、この状態でエアバッグ50の残りの縫製を行なうことで得られる。この場合、挿入口54を小さく形成することができるメリットがある。挿入口54は、取付け突起33が通過できる大きさを有していなくてもよく、少なくとも保持部31の外形形状よりも大きければよいからである。
【0068】
また、上記の状態は、エアバッグ50の縫製後に、リテーナ30の上記一部(取付け突起33、取付け板部32及び保持部31)を挿入口54から収納部51に挿入し、取付け突起33(ボルト)を挿通孔53に挿通することで、リテーナ30を基布55に係止することによっても得られる。ただし、この場合には、挿入口54が取付け突起33(ボルト)を有するリテーナ30が通過できる大きさを有している必要がある。挿入口54は、上述したエアバッグ50の縫製の途中でリテーナ30が係止される場合よりも大きくなる。リテーナ30に加え取付け突起33も挿入口54を通過させなければならないからである。
【0069】
上記中間組付け体61において、エアバッグ50の収納部51を除いた大部分は折り畳まれている。エアバッグ50において、収納部51及び折り畳まれた部分は、ラッピングシート(図示略)等の包装手段によって包まれている。ただし、挿入口54は露出させられている。
【0070】
上記中間組付け体61では、リテーナ30により、インフレータ20を挿入して配置するための空間(収納部51)が確保され、同空間(収納部51)の型崩れが抑制される。特に、保持部31により、挿入口54が開口された状態に保持される。
【0071】
<挿入工程>
挿入工程では、エアバッグ50の外部においてインフレータ20の一部が、
図7(B)において矢印で示すように、軸線L1に沿う方向の一端部(ガス噴出部21)から上記挿入口54を通じて、中間組付け体61におけるエアバッグ50の内部(収納部51)に挿入される。この際、上述したように、挿入口54が、保持部31により、開口された状態に保持されているため、インフレータ20を挿入口54に挿入しやすい。インフレータ20の上記挿入は、取付け突起24(ボルト)が、取付け突起33(ボルト)に対し交差する方向(
図7(B)では直交する方向)へ突出する姿勢で行なわれる。上記取付け突起24(ボルト)は、車両構成部材11に取付けられる箇所として機能するほかに、インフレータ20のリテーナ30に対する位置決めを行なうための位置決め突起としても機能する。
【0072】
<装着工程>
装着工程では、挿入口54に挿入された上記インフレータ20の一部が、リテーナ30の保持部31に挿入される。保持部31が挿入口54の内外にわたって配置された第1実施形態では、挿入口54への挿入と略同時にインフレータ20の一部が保持部31に挿入される。この挿入は、
図7(C)に示すように、インフレータ20における取付け突起24が収納部51(挿入口54)に近づくまで行なわれる。
【0073】
次に、
図7(C)及び
図9において矢印で示すように、取付け突起24(ボルト)により係合空間41の入口部42の幅W1を広げる側(反時計回り側)へ、インフレータ20を軸線L1の周りで回転させようとする力が同インフレータ20に加えられる。この際、保持部31は、インフレータ20の回転をガイド(軸線L1のぶれを規制)する機能を発揮する。また、この際には、
図10(A)において実線で示すように、取付け突起24(ボルト)は、入口部42を通じて係合空間41へ入り込むことを規制される。これは、
図3に示すように、係合空間41の入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭いからである。
【0074】
インフレータ20を回転させようとする上記力は、取付け突起24(ボルト)及び傾斜した側縁39Aを通じて第2係合部39(突部)に伝達される。ここで、インフレータ20の回転方向が、舌片36の弾性変形予定部37の厚み方向と略同じである。このことから、舌片36は、第2係合部39の設けられていない側の端部(弾性変形予定部37の保持部31との境界部分37A)を支点として、
図10(A)において実線の矢印で示すように、保持部31の周方向のうち、入口部42の幅W1を広げる側(
図2の略下側)へ多く弾性変形しやすい。
【0075】
上記弾性変形に伴い、
図10(B)に示すように、第2係合部39(突部)が第1係合部35(凹部)から保持部31の周方向へ遠ざかり、入口部42の幅W1が広がる。また、上記側縁39Aが、第1係合部35(凹部)の中心C1に向けて延びるように上記軸線L1に対し傾斜していることから、取付け突起24(ボルト)は、インフレータ20の上記回転に伴い側縁39A上を滑ることで、第1係合部35(凹部)に導かれる。入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも広げられると、係合空間41へ取付け突起24(ボルト)を入り込ませることが可能となる。
図10(C)に示すように、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)が係合空間41に入り込んだ状態では、同取付け突起24(ボルト)の一部が、その曲率と略同一の曲率を有する円弧状の第1係合部35(凹部)に対し、隙間のない又は少ない状態で係合する。
【0076】
この際、両係合部35,39が、エアバッグ50(収納部51)から露出していることから、上記取付け突起24(ボルト)の両係合部35,39に対する係合が、エアバッグ50(収納部51)の外部で行なわれる。そのため、両係合部35,39が、エアバッグ50(収納部51)の内部(取付け突起33(ボルト)よりも奥を含む)に位置しているものに比べ、視認性がよく、取付け突起24(ボルト)を両係合部35,39に係合させる作業がしやすい。
【0077】
なお、上記インフレータ20は係合基部34の面に沿って回転することから、仮に取付け突起24によって係合基部34が押されても、同係合基部34の面に沿う方向の弾性変形量は僅かである。
【0078】
また、上記のように取付け突起24が係合空間41に入り込むと、上記弾性変形させられていた舌片36が、自身(弾性変形予定部37)の弾性復元力により、
図10(B)において二点鎖線の矢印で示すように、保持部31の略周方向であって、入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元しようとする。この弾性復元により、舌片36の第2係合部39(突部)が取付け突起24(ボルト)を上記軸線L1に沿う方向について第1係合部35(凹部)側へ押圧する。
図7(D)及び
図10(C)に示すように、取付け突起24(ボルト)が第1係合部35(凹部)及び第2係合部39(突部)によって、上記軸線L1に沿う方向についての両側から挟み込まれた状態となる。この際、上述したように、弾性復元の方向が弾性変形予定部37の厚み方向と略同じである。そのため、舌片36の弾性復元量が多く、各係合部35,39と取付け突起24(ボルト)との間は、隙間がない又は少ない状態となる。軸線L1に沿う方向についての取付け突起24(ボルト)の位置決めがなされ、インフレータ20の同方向についてのがたつきが抑制される。
【0079】
また、取付け突起24(ボルト)の第1係合部35(凹部)との上記係合により、インフレータ20の周方向についての位置決めがなされ、同方向についてのがたつきが抑制される。このとき取付け突起24(ボルト)は、取付け突起33(ボルト)に対し略平行の関係となる。
【0080】
このようにして、取付け突起24がリテーナ30の両係合部35,39に係合されることにより、インフレータ20が中間組付け体61に位置決めされた状態で装着され、目的とするエアバッグ装置60が得られる。
【0081】
上記インフレータ20の装着に際しては、同インフレータ20を保持部31に挿入し、軸線L1の周りで回転させる操作を行なうだけですむ。また、取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)に係合させる前後では、インフレータ20を回転させる操作に要する荷重が変化する。すなわち、操作荷重は、取付け突起24(ボルト)の第1係合部35との係合前にはインフレータ20の回転が進むにつれて増加し、係合とともに急に減少する。そのため、節度感が付与され、操作フィーリングの向上が図られる。
【0082】
なお、リテーナ30からインフレータ20を外す場合には、上記組付け時とは逆方向、すなわち、第1係合部35から保持部31の周方向に遠ざかる側へインフレータ20が回転される。この場合のインフレータ20の回転方向は、入口部42を広げる側へ舌片36(弾性変形予定部37)を弾性変形させる際の弾性変形の方向とは異なる。そのため、インフレータ20をリテーナ30に組付けるときよりも大きな力で同インフレータ20を回転させる必要がある。このことは、第1係合部35及び第2係合部39によって一旦挟み込まれた取付け突起24(ボルト)は、係合空間41から抜け出しにくい(外れにくい)ことを意味する。
【0083】
ところで、上記のようにして得られたエアバッグ装置60の両取付け突起24,33(ボルト)は、
図12に示すように、車両構成部材11(フレーム)にあけられた挿通孔13に挿通される。これらの挿通は、両取付け突起24,33(ボルト)が挿通孔13に向けて延びるように姿勢を整えたうえで、エアバッグ装置60を車両構成部材11(フレーム)に近づけることで行なわれる。さらに、車両構成部材11に挿通された状態の両取付け突起24,33(ボルト)に対し、ナット12がそれぞれ螺合され、締付けられる。すると、
図13に示すように、リテーナ30が、取付け突起33(ボルト)及びナット12により、エアバッグ50とともに車両構成部材11に固定される。また、リテーナ30に組付けられたインフレータ20が、取付け突起24及びナット12により、リテーナ30とともに車両構成部材11に固定される。
【0084】
このように、リテーナ30についてもインフレータ20についても車両構成部材11に直接固定される。そのため、インフレータが車両構成部材に対し直接に固定されず、リテーナを介して車両構成部材に間接的に固定されるものに比べ、リテーナ30及びインフレータ20の両者がともに車両構成部材11に強固に固定される。
【0085】
また、取付け突起33についても取付け突起24についても、上記軸線L1に交差(直交)する方向へ突出している。そのため、両取付け突起33,24を車両構成部材11に固定する作業の方向は、略同じである。従って、例えばリテーナの取付け突起がインフレータの軸線に交差(直交)する方向へ突出し、インフレータの取付け突起が軸線に沿う方向へ突出する等して、両取付け突起を車両構成部材に固定する作業の方向が互いに大きく異なるものに比べ、インフレータ20及びリテーナ30を車両構成部材11に固定しやすい。
【0086】
ここで、車両構成部材11に固定される前のエアバッグ装置60(
図11参照)では、取付け突起24,33が別々の部材(インフレータ20、リテーナ30)に固定されており、しかも取付け突起33が、容易に形を変え得るエアバッグ50に挿通されている。そのため、例えば、取付け突起24を通じインフレータ20に対し、周方向に大きな力が加わった場合、同取付け突起24が係合空間41から抜け出るおそれがある。
【0087】
しかし、上述したようにエアバッグ装置60が車両構成部材11に固定された状態(
図13参照)では、両取付け突起24,33が、剛性の高い車両構成部材11(フレーム)に挿通される。そのため、上記のように取付け突起24に対し力が加わったとしても、同取付け突起24はいずれの方向にも動きにくい。従って、取付け突起24が係合空間41から抜け出ることが起こりにくい。
【0088】
なお、上記のようにエアバッグ装置60が装備された車両では、走行中に衝突等により衝撃が加わり、そのことがセンサ(図示略)によって検出されると、その検出信号に基づき、制御装置(図示略)からハーネス(図示略)を通じてインフレータ20に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ20では、ガス発生剤がガスを発生し、これを、ガス噴出部21から複数のガス噴出孔22を通じて径方向についての外方へ噴出する。このガスが供給されたエアバッグ50は、折り状態を解消(展開)しながら乗員の近傍で膨張し、衝撃を緩和して乗員を保護する。
【0089】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)インフレータ20の外面に、リテーナ30に対する位置決めを行なうための位置決め突起(取付け突起24)を突設する(
図8)。リテーナ30には、係合基部34を形成するとともに、その係合基部34から保持部31の周方向へ離間した箇所においてインフレータ20の軸線L1に沿う方向へ延びる舌片36を形成する。係合基部34及び舌片36の相対向する箇所に、上記位置決め突起(取付け突起24)の入り込む係合空間41を形成する係合部(第1係合部35及び第2係合部39)をそれぞれ設ける(
図2)。
【0090】
係合空間41の入口部42の幅W1を、取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭くする(
図3)。位置決め突起(取付け突起24)により入口部42の幅W1を広げる側へインフレータ20が回転された場合に、第2係合部39の設けられていない側の端部(保持部31との境界部分37A)を支点として舌片36を、同幅W1を広げる側へ弾性変形させるようにしている(
図2の二点鎖線)。
【0091】
そのため、インフレータ20のリテーナ30への組付けに際しては、同インフレータ20を保持部31に挿入した状態で、回転させる操作を行なうだけですむ。特許文献1とは異なり、インフレータのボルトを挿通孔の長孔部に挿通させる操作や、同ボルトを長孔部に沿ってスライドさせたり、短孔部に沿って保持部の周方向へ移動させたりする操作を不要とし、その分、組付け作業性を向上させることができる。
【0092】
また、取付け突起24を第1係合部35及び第2係合部39によって上記軸線L1に沿う方向に隙間のない又は少ない状態で挟み込むため、組付け後のインフレータ20のがたつきを抑制することができる。
【0093】
(2)インフレータ20の外面及びリテーナ30の外面に取付け突起24,33(ボルト)を設ける。そして、取付け突起24により、リテーナ30に対するインフレータ20の位置決めを行なうための位置決め突起を構成している(
図8)。
【0094】
そのため、両取付け突起24,33(ボルト)により、インフレータ20及びリテーナ30を車両構成部材11に取付けて、ガス発生装置10を車両に固定することができる(
図11)。
【0095】
また、取付け突起24(ボルト)を位置決め突起としても機能させるため、位置決め突起を取付け突起24(ボルト)とは別にインフレータ20に設けなくてもすみ、インフレータ20及びガス発生装置10の部品点数を少なくすることができる。
【0096】
(3)舌片36には、インフレータ20が回転された場合に、取付け突起24(ボルト)により厚み方向に弾性変形させられる弾性変形予定部37を設けている(
図2)。
そのため、インフレータ20の回転に伴い、舌片36を、第2係合部39の設けられていない側の端部(弾性変形予定部37の保持部31との境界部分37A)を支点として、係合空間41の入口部42の幅W1を広げる側へ大きく弾性変形させることができる。また、取付け突起24(ボルト)を係合空間41に入り込ませることで舌片36(弾性変形予定部37)を大きく弾性復元させ、取付け突起24(位置決め突起)を第1係合部35及び第2係合部39によって隙間のない又は少ない状態で挟み込むことができる。
【0097】
(4)舌片36を係合基部34から保持部31の周方向へ離間した1箇所に設ける。係合基部34に第1係合部35を設け、舌片36に第2係合部39を設ける。第1係合部35及び第2係合部39を、上記軸線L1に沿う方向に相対向させる。舌片36が、一部を保持部31で覆われた状態のインフレータ20の回転に伴い上記軸線L1の周りを旋回する取付け突起24によって押圧された場合、同舌片36を、係合基部34から保持部31の周方向へ遠ざかる側へ弾性変形させるようにしている(
図2の二点鎖線参照)。
【0098】
そのため、インフレータ20を回転させることで、舌片36を、保持部31の周方向について入口部42の幅W1を広げる側へ弾性変形させることができる。また、取付け突起24(ボルト)を係合空間41に入り込ませることで、舌片36を、保持部31の周方向について上記幅W1を狭める側へ弾性復元させることができる。
【0099】
(5)第1係合部35を、上記軸線L1に沿う方向について第2係合部39から遠ざかる側へ凹み、かつ取付け突起24(ボルト)の一部が係合される凹部によって構成する。また、第2係合部39を、第1係合部35に向けて突出する突部によって構成している(
図3)。
【0100】
そのため、第1係合部35(凹部)に係合された取付け突起24(ボルト)を第2係合部39(突部)によって弾性的に押付けることで、同取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)及び第2係合部39(突部)によって挟み込むことができる。
【0101】
(6)取付け突起24(ボルト)として、円形の断面形状を有するものを用いる。また、第1係合部35(凹部)を、取付け突起24(ボルト)の曲率と略同一の曲率を有する円弧状に形成している(
図3)。
【0102】
そのため、取付け突起24(ボルト)の一部を第1係合部35(凹部)に係合させることで、インフレータ20が周方向にがたつくのを抑制することができる。
(7)第2係合部39(突部)の入口部42側の側縁39Aを、第1係合部35(凹部)の中心C1に向けて延びるように、上記軸線L1に対し傾斜させている(
図3)。
【0103】
そのため、インフレータ20の回転に伴い、取付け突起24(ボルト)を側縁39A上で滑らせることにより、同取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)に導くことができ、インフレータ20の組付け作業性の一層の向上を図ることができる。
【0104】
(8)エアバッグ50と、エアバッグ50内に配置されてガスを発生し、そのガスによりエアバッグ50を膨張させるガス発生装置とを備えるエアバッグ装置60にあって、ガス発生装置として、上記(1)〜(7)に記載されたガス発生装置10を用いる(
図11)。さらに、取付け突起33(ボルト)を、エアバッグ50の挿通孔53に挿通させるとともに、取付け突起24,33(ボルト)を車両構成部材11(車両用シートのフレーム)に締結させることにより、ガス発生装置10をエアバッグ50とともに車両に固定するようにしている(
図13)。
【0105】
そのため、このエアバッグ装置60においても、インフレータ20のリテーナ30に対する組付け作業性の向上を図りつつ、組付け後のインフレータ20のがたつきを抑制するといった、上記(1)の効果を得ることができる。
【0106】
また、インフレータ20の取付け突起24(ボルト)と、リテーナ30においてエアバッグ50に挿通された取付け突起33(ボルト)とを、車両構成部材11(フレーム)に締結させるといった簡単な構造で、ガス発生装置10及びエアバッグ50を備えてなるエアバッグ装置60を車両に固定することができる。
【0107】
(9)インフレータ20の一部を、エアバッグ50(収納部51)内という狭い空間でリテーナ30の一部に組付けるようにしている(
図7(A)〜(D))。
そのため、ガス発生装置として、上記(1)〜(7)に記載されたガス発生装置10を用いることにより、組付け作業性の向上効果が特に有効なものとなる。
【0108】
(第2実施形態)
次に、ガス発生装置及びエアバッグ装置の第2実施形態について、
図14〜
図17(A),(B)を参照して説明する。
【0109】
第2実施形態は、リテーナ30における係合基部34及び舌片の構成の点で第1実施形態と異なっている。次に、この第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0110】
インフレータ20は、その一部を保持部31によって覆われた状態で、軸線L1に沿う方向へ移動(直進)し得るように構成されている。
図14及び
図15に示すように、リテーナ30の保持部31からは1つの係合基部34と一対の舌片71,75とが上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33(ボルト)から遠ざかる側へ延設されている。両舌片71,75は、係合基部34に対し、保持部31の周方向についての両側となる箇所、表現を変えると、係合基部34を挟んで保持部31の周方向について互いに反対側となる箇所に設けられている。
【0111】
係合基部34は略平板状をなしている。係合基部34は、上記軸線L1に沿う方向については、取付け突起33(ボルト)から遠ざかる側へ上記保持部31よりも長く形成されている。
【0112】
各舌片71,75は、インフレータ20とともに軸線L1に沿う方向へ移動する取付け突起24によって押圧された場合に、係合基部34から保持部31の周方向について互いに遠ざかる側へ弾性変形するように構成されている。上記弾性変形のために、各舌片71,75は、係合基部34に対し、保持部31の周方向に離間した位置から延びる弾性変形予定部72,76を有している。各弾性変形予定部72,76は略平板状をなし、上記係合基部34に対し略直交している。従って、各弾性変形予定部72,76の面に直交する方向(厚み方向)は、係合基部34の面に沿う方向に略合致することとなる。そのため、係合基部34の面に沿う方向に力が加わった場合、同係合基部34の同方向の弾性変形量が僅かであるのに対し、各舌片71,75は、弾性変形予定部72,76の保持部31との境界部分72A,76A)を支点として、同方向へ、係合基部34よりも多く弾性変形しやすい。
【0113】
舌片71,75毎の弾性変形予定部72,76は、上記軸線L1に沿う方向については、取付け突起33から遠ざかる側へ上記係合基部34よりも長く形成されている。各弾性変形予定部72,76の係合基部34側(
図14の下側)の側縁であって、取付け突起33から遠ざかる側(
図15の左側)の端部には、作用部73,77が曲げ形成されている。各作用部73,77は、係合基部34と略同一平面上において略平板状に形成されている。各作用部73,77は、保持部31の周方向に相対向している。
【0114】
係合基部34は、軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側(
図15の左側)の端部であって保持部31の周方向についての中央部に、係合部として第1係合部35を有している。また、一方の舌片71は、上記作用部73に係合部として第2係合部74を有している。他方の舌片75は、上記作用部77に係合部として第2係合部78を有している。
【0115】
第1係合部35及び両第2係合部74,78は、リテーナ30にインフレータ20が組付けられる際に、取付け突起24(ボルト)が係合される箇所である。両第2係合部74,78は、保持部31の周方向に相対向している。第1係合部35と両第2係合部74,78とは、上記軸線L1に沿う方向に離間した状態で相対向しており、上記取付け突起24(ボルト)を同方向についての両側から挟み込む機能を担っている。また、第1係合部35及び両第2係合部74,78によって挟まれる空間は、一部が保持部31により覆われたインフレータ20が軸線L1に沿う方向へ移動されることにより、取付け突起24(ボルト)が入り込んで係合される平面略円形の係合空間41となっている。
【0116】
こうしたインフレータ20の移動に伴う取付け突起24(ボルト)の係合を可能とするために、係合空間41の入口部42は、同係合空間41において、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側、ここでは両第2係合部74,78間に設定されている。
【0117】
図16に示すように、第1係合部35は、軸線L1に沿う方向について、両第2係合部74,78から遠ざかる側(
図16の右側)へ凹む凹部によって構成されている。凹部は、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)の曲率と略同一の曲率を有する円弧状をなしている。
【0118】
一方の第2係合部74は、保持部31の周方向について、他方の第2係合部78に向けて突出する突部によって構成されている。他方の第2係合部78は、保持部31の周方向について、上記一方の第2係合部74に向けて突出する突部によって構成されている。
【0119】
取付け突起24が第1係合部35及び両第2係合部74,78によって挟み込まれていない状態、すなわち、両舌片71,75(弾性変形予定部72,76)がいずれも弾性変形していない状態では、係合空間41の入口部42の幅W1は、取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭く設定されている。
【0120】
各第2係合部74,78(突部)において、軸線L1に沿う方向について係合基部34から遠い側には、第1傾斜面74A,78Aが形成されている。各第1傾斜面74A,78Aは、係合基部34に近づくに従い上記軸線L1に接近するように傾斜している。従って、両第1傾斜面74A,78Aの間隔は、係合基部34に近づくに従い狭くなる。
【0121】
さらに、各第2係合部74,78(突部)において、軸線L1に沿う方向について係合基部34に近い側には、第2傾斜面74B,78Bが形成されている。各第2傾斜面74B,78Bは、係合基部34に近づくに従い上記軸線L1から遠ざかるように傾斜している。従って、両第2傾斜面74B,78Bの間隔は、係合基部34に近づくに従い広くなる。
【0122】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記の構成を有するリテーナ30が用いられると、エアバッグ装置60の組付けに際し実施される挿入工程及び装着工程の内容が、第1実施形態と異なったものとなる。次に、第2実施形態の作用として、挿入工程及び装着工程の各実施内容について、第1実施形態との争点を中心に説明する。
【0123】
<挿入工程>
挿入工程では、エアバッグ50の外部においてインフレータ20の一部が、軸線L1に沿う方向の一端部(ガス噴出部21)から挿入口54を通じて、中間組付け体61におけるエアバッグ50の内部(収納部51)に挿入される。この挿入は、上記第1実施形態とは異なり、取付け突起24(ボルト)が取付け突起33(ボルト)に対し平行となる方向へ突出する姿勢で行なわれる。インフレータ20は、軸線L1に沿う方向へ直線移動させられる。
【0124】
<装着工程>
装着工程では、インフレータ20の一部が、挿入口54を通じリテーナ30の保持部31に挿入される。この挿入の過程で取付け突起24(ボルト)が両第2係合部74,78(突部)に接近する。
【0125】
この際、
図17(A)において実線で示すように、取付け突起24(ボルト)は、入口部42を通じて係合空間41へ入り込むことを規制される。これは、
図16に示すように、入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭いからである。
【0126】
次に、取付け突起24(ボルト)により入口部42の幅W1を広げる側(係合基部34に近づく側:
図17(A)の右側)へ、インフレータ20を上記規制に抗して軸線L1に沿って移動させようとする力が、同インフレータ20に加えられる。この際、保持部31は、インフレータ20の軸線L1に沿う方向への移動をガイドする機能を発揮する。
【0127】
図17(B)に示すように、インフレータ20を移動させようとする上記力は、取付け突起24(ボルト)及び両第1傾斜面74A,78Aを通じて、第2係合部74,78(突部)に伝達される。ここで、取付け突起24(ボルト)が両第2係合部74,78の間隔を広げる方向は、両舌片71,75の弾性変形予定部72,76の厚み方向と略同じである。このことから、各舌片71,75は、第2係合部74,78の設けられていない側の端部(弾性変形予定部72,76の保持部31との境界部分72A,76A)を支点として、保持部31の周方向のうち、入口部42の幅W1を広げる側へ多く弾性変形しやすい。
【0128】
上記弾性変形に伴い、第2係合部74,78毎の第1傾斜面74A,78A及び第2傾斜面74B,78Bが軸線L1から保持部31の周方向へ遠ざかり、入口部42の幅W1が広がる。この際、各第1傾斜面74A,78Aが、係合基部34に近づくに従い軸線L1に接近するように傾斜していることから、取付け突起24(ボルト)は、軸線L1に沿う方向への移動に伴い第1傾斜面74A,78A上を滑ることで、第1係合部35(凹部)に導かれる。入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも広げられると、すなわち、取付け突起24(ボルト)が両第1傾斜面74A,78Aを乗り越えると、同取付け突起24(ボルト)を係合空間41へ入り込ませることが可能となる。
図16において二点鎖線で示すように、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)が係合空間41に入り込んだ状態では、同取付け突起24(ボルト)の一部が、その曲率と略同一の曲率を有する円弧状の第1係合部35(凹部)に対し、隙間のない又は少ない状態で係合する。
【0129】
なお、上記インフレータ20の移動方向は係合基部34の面に沿う方向と略同じであることから、仮に取付け突起24によって係合基部34が押されても、同係合基部34の同方向の弾性変形量は僅かである。
【0130】
また、上記のように取付け突起24が係合空間41に入り込むと、上記弾性変形させられていた両舌片71,75が、自身(弾性変形予定部72,76)の弾性復元力により、保持部31の周方向であって、入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元する。この弾性復元により、各第2係合部74,78(突部)が第2傾斜面74B,78Bにおいて取付け突起24(ボルト)に接触する。この接触を通じ、各第2係合部74,78(突部)が取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)側へ押圧する。取付け突起24(ボルト)が第1係合部35(凹部)及び両第2係合部74,78(突部)によって、軸線L1に沿う方向についての両側から挟み込まれた状態となる。この際、弾性復元の方向が弾性変形予定部72,76の厚み方向と略同じである。そのため、舌片71,75の弾性復元量が多く、第1係合部35(凹部)及び両第2係合部74,78(突部)と取付け突起24(ボルト)との間は、隙間がない又は少ない状態となる。軸線L1に沿う方向についての取付け突起24(ボルト)の位置決めがなされ、インフレータ20の同方向についてのがたつきが抑制される。
【0131】
また、取付け突起24(ボルト)の第1係合部35(凹部)との上記係合により、保持部31の周方向についての取付け突起24の位置決めがなされ、インフレータ20の同方向についてのがたつきが抑制される。このとき、取付け突起24(ボルト)は、取付け突起33(ボルト)と略平行の関係となる。
【0132】
このようにして、取付け突起24が第1係合部35(凹部)及び両第2係合部74,78(突部)に係合されることにより、インフレータ20が中間組付け体61に位置決めされた状態で装着され、目的とするエアバッグ装置60が得られる。
【0133】
上記インフレータ20の装着に際しては、上述したようにインフレータ20の一部を保持部31に挿入し、軸線L1に沿う方向へ移動させる操作を行なうだけですむ。また、取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)に係合させる前後では、インフレータ20を移動させる操作に要する荷重が変化する。すなわち、操作荷重は取付け突起24(ボルト)の第1係合部35に対する係合前(取付け突起24(ボルト)が第1傾斜面74A,78A上を滑る際)にはインフレータ20の移動が進むにつれて増加し、係合とともに急に減少する。そのため、節度感が付与され、操作フィーリングの向上が図られる。
【0134】
なお、上記のようにして得られたエアバッグ装置60は、第1実施形態と同様の作業が行なわれることで車両構成部材11(フレーム)に固定される。
従って、第2実施形態によれば、上記(1)〜(3),(6),(8),(9)と同様の効果が得られるほか、上記(4)に代えて次の(4A)の効果が得られる。また、上記(5)に代えて、次の(5A)の効果が得られる。
【0135】
(4A)舌片71,75を、係合基部34に対し、保持部31の周方向についての両側(
図15の上側及び下側)となる2箇所に設ける。係合基部34に第1係合部35を設け、舌片71に第2係合部74を設け、舌片75に第2係合部78を設ける。舌片71,75毎の第2係合部74,78を、保持部31の周方向に相対向させる。第1係合部35と両第2係合部74,78とを、上記軸線L1に沿う方向に相対向させる。舌片71,75が、一部を保持部31で覆われた状態のインフレータ20とともに軸線L1に沿う方向へ移動する取付け突起24によって押圧された場合、同舌片71,75を係合基部34から保持部31の周方向へ遠ざかる側へ弾性変形させるようにしている(
図15)。
【0136】
そのため、インフレータ20を軸線L1に沿う方向へ移動させることで、両舌片71,75を、保持部31の周方向について入口部42の幅W1を広げる側へ弾性変形させることができる。また、取付け突起24(ボルト)を係合空間41に入り込ませることで、舌片36を、保持部31の周方向について入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元させることができる。
【0137】
(5A)第1係合部35を、軸線L1に沿う方向について両第2係合部74,78から遠ざかる側へ凹み、かつ取付け突起24(ボルト)の一部が係合される凹部によって構成する。両第2係合部74,78の一方を、他方に向けて突出する突部によって構成している(
図16)。
【0138】
そのため、第1係合部35(凹部)に係合された取付け突起24(ボルト)を両第2係合部74,78(突部)によって同第1係合部35側へ弾性的に押付けることで、同取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)及び第2係合部74,78(突部)によって軸線L1に沿う方向についての両側から挟み込むことができる。
【0139】
(10)舌片を2つ(舌片71,75)設けていることから、1つのみ設けた場合に比べ、1つ当たりの舌片71,75の弾性変形量が少なくなる(
図17(B))。
そのため、弾性限界の小さな材料を用いて舌片71,75を形成することができ、リテーナ30のコスト低減を図ることができる。
【0140】
なお、弾性限界の小さな材料を用いて舌片を多く弾性変形させるには、その舌片を長くすることが必要となる。ただし、この場合には、リテーナ30が大型化し、また重量も増加する。
【0141】
この点、上記のように舌片を2つ(舌片71,75)設けることで、リテーナ30の大型化及び重量増加を招くことなく、弾性変形量を確保することができる。
(第3実施形態)
次に、ガス発生装置及びエアバッグ装置の第3実施形態について、
図18〜
図20(A),(B)を参照して説明する。
【0142】
第3実施形態は、リテーナ30における第1係合部35及び第2係合部74,78の構成の点で第2実施形態と異なっている。
各第2係合部74,78には、第2傾斜面74B,78Bに代えて、平行面74C,78Cが形成されている。取付け突起24が第1係合部35及び両第2係合部74,78によって挟み込まれていない状態、すなわち、両舌片71,75(両弾性変形予定部72,76)がいずれも弾性変形していない状態では、平行面74C,78Cは軸線L1に対し平行な状態となる。上記のように各第2係合部74,78に平行面74C,78Cが形成されることで、各第2係合部74,78において係合基部34側であり、かつ保持部31の周方向について軸線L1に最も近い箇所には角部74D,78Dが形成されている。そして、取付け突起24が第1係合部35及び両第2係合部74,78によって挟み込まれた状態では、各第2係合部74,78が角部74D,78Dにおいて取付け突起24(ボルト)を第1係合部35側へ押圧するように構成されている。また、第3実施形態では、第1係合部35(凹部)が、第2実施形態での第1係合部35(凹部)よりも深く形成されている。
【0143】
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態と同様の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記の構成を有するリテーナ30が用いられると、エアバッグ装置60の組付けに際し実施される装着工程の内容が、第2実施形態と若干異なったものとなる。次に、第3実施形態の作用として、装着工程の実施内容について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0144】
<装着工程>
装着工程において、インフレータ20の一部が、挿入口54を通じリテーナ30の保持部31に挿入される際、取付け突起24(ボルト)は、
図20(A)において実線で示すように、入口部42を通じて係合空間41へ入り込むことを規制される。これは、
図19に示すように、入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭いからである。
【0145】
次に、取付け突起24(ボルト)により入口部42の幅W1を広げる側(係合基部34に近づく側:
図20(A)の右側)へ、インフレータ20を、上記規制に抗して軸線L1に沿って移動させようとする力が同インフレータ20に加えられる。
【0146】
図20(B)に示すように、上記力は、取付け突起24(ボルト)及び両第1傾斜面74A,78Aを通じて、第2係合部74,78(突部)に伝達される。各舌片71,75は、第2係合部74,78の設けられていない側の端部(弾性変形予定部72,76の保持部31との境界部分72A,76A)を支点として、保持部31の周方向のうち、入口部42の幅W1を広げる側へ多く弾性変形する。
【0147】
上記幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも広げられると、すなわち、取付け突起24(ボルト)が両第1傾斜面74A,78Aを乗り越えると、同取付け突起24(ボルト)は平行面74C,78Cへ移る。取付け突起24(ボルト)は、軸線L1に沿う方向への移動に伴い平行面74C,78C上を滑ることで、第1係合部35(凹部)に導かれる。
【0148】
取付け突起24(ボルト)が両平行面74C,78Cを越えると、同取付け突起24(ボルト)を係合空間41へ入り込ませることが可能となる。
図20(B)において二点鎖線で示すように、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)が係合空間41に入り込んだ状態では、同取付け突起24(ボルト)の一部(略半分)が、その曲率と略同一の曲率を有する円弧状の第1係合部35(凹部)に対し、隙間のない又は少ない状態で係合する。上述したように第1係合部35が第2実施形態よりも深く形成されていることから、取付け突起24(ボルト)は、第2実施形態よりも多くの部分で第1係合部35(凹部)に係合する。
【0149】
また、上記のように取付け突起24が係合空間41に入り込むと、弾性変形させられていた両舌片71,75が、自身(弾性変形予定部72,76)の弾性復元力により、保持部31の周方向であって、入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元する。この弾性復元により、各第2係合部74,78(突部)が角部74D,78Dにおいて取付け突起24(ボルト)に接触する。この接触を通じ、各第2係合部74,78(突部)が取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)側へ押圧する。
図19において二点鎖線で示すように、取付け突起24(ボルト)が第1係合部35(凹部)及び両第2係合部74,78(突部)によって、軸線L1に沿う方向についての両側から挟み込まれた状態となる。
【0150】
このようにして、取付け突起24が第1係合部35(凹部)及び両第2係合部74,78(突部)に係合されることにより、インフレータ20が中間組付け体61に位置決めされた状態で装着され、目的とするエアバッグ装置60が得られる。
【0151】
従って、第3実施形態によれば、取付け突起24(ボルト)が第1係合部35及び両第2係合部74,78によって挟み込まれた状態で、両第2係合部74,78が取付け突起24(ボルト)を押圧する箇所が異なるものの、上記(1)〜(3),(4A),(5A),(6),(8)〜(10)と同様の効果が得られる。
【0152】
(第4実施形態)
次に、ガス発生装置及びエアバッグ装置の第4実施形態について、
図21〜
図23(A),(B)を参照して説明する。
【0153】
第4実施形態は、リテーナ30における係合基部34及び舌片の構成の点で第1実施形態と異なっている。次に、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0154】
インフレータ20は、その一部を保持部31によって覆われた状態で、軸線L1に沿う方向へ移動(直進)し得るように構成されている。
図21及び
図22に示すように、保持部31からは係合基部34と1つの舌片81とがインフレータ20の軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側へ延設されている。舌片81は、係合基部34から保持部31の周方向へ離間した1箇所に設けられている。
【0155】
係合基部34は、略平板状をなしている。係合基部34は、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側へ、上記保持部31よりも長く形成されている。
舌片81は、インフレータ20とともに軸線L1に沿う方向へ移動する取付け突起24によって押圧された場合に、係合基部34から保持部31の周方向へ遠ざかる側へ弾性変形するように構成されている。上記弾性変形のために、舌片81は、係合基部34に対し、保持部31の周方向に離間した位置から延びる弾性変形予定部82を有している。弾性変形予定部82は略平板状をなし、係合基部34に対し略直交している。従って、弾性変形予定部82の面に直交する方向(厚み方向)は、係合基部34の面に沿う方向に略合致することとなる。そのため、係合基部34の面に沿う方向に力が加わった場合、同係合基部34の同方向の弾性変形量が僅かであるのに対し、舌片81は、弾性変形予定部82の保持部31との境界部分82Aを支点として、同方向へ係合基部34よりも多く弾性変形しやすい。
【0156】
弾性変形予定部82は、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側へ、上記係合基部34と同程度の長さに形成されている。弾性変形予定部82の係合基部34側(
図21の下側)の側縁であって、取付け突起33から遠ざかる側(
図21の左側)の端部には、作用部83が曲げ形成されている。作用部83は、係合基部34と略同一平面上において略平板状に形成されている。作用部83は、後述する第1係合部35から上記軸線L1に沿う方向へも保持部31の周方向へも離間している。
【0157】
係合基部34(後述する延出部34Aを除く)は、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側(
図22の左側)の端部に、係合部として第1係合部35を有している。また、舌片81は、上記作用部83に、係合部として第2係合部84を有している。
【0158】
第1係合部35及び第2係合部84は、リテーナ30にインフレータ20が組付けられる際に、取付け突起24(ボルト)が係合される箇所である。第1係合部35と第2係合部84とは、上記軸線L1に対し傾斜する方向に相対向しており、上記取付け突起24(ボルト)を同方向についての両側から挟み込む機能を担っている。また、第1係合部35及び第2係合部84によって挟まれる空間は、一部が上記保持部31により覆われたインフレータ20が軸線L1に沿う方向へ移動されることにより、取付け突起24(ボルト)が入り込んで係合される平面略円形の係合空間41となっている。
【0159】
さらに、係合基部34は、第1係合部35から軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側へ延びる延出部34Aを有している。
こうしたインフレータ20の移動に伴う取付け突起24(ボルト)の係合を可能とするために、係合空間41の入口部42は、同係合空間41において、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側の端部、ここでは第2係合部84と延出部34Aとの間に設定されている。
【0160】
図22に示すように、第1係合部35は、軸線L1に対し傾斜する方向について、第2係合部84から遠ざかる側(
図22の斜め右上側)へ凹む凹部によって構成されている。凹部は、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)の曲率と略同一の曲率を有する円弧状をなしている。第2係合部84は、保持部31の周方向について、係合基部34の延出部34Aに向けて突出する突部によって構成されている。
【0161】
取付け突起24が第1係合部35及び第2係合部84によって挟み込まれていない状態、すなわち、舌片81(弾性変形予定部82)が弾性変形していない状態では、係合空間41の入口部42の幅W1は、取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭く設定されている。
【0162】
延出部34Aの軸線L1に近い側の側縁は、同軸線L1に対し平行に形成されている。第2係合部84(突部)において、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側(
図22の左側)には、第1傾斜面84Aが形成されている。第1傾斜面84Aは、取付け突起33に近づくに従い上記軸線L1に接近するように傾斜している。従って、延出部34Aと第1傾斜面84Aとの間隔は、取付け突起33に近づくに従い狭くなる。
【0163】
さらに、第2係合部84(突部)において、上記軸線L1に沿う方向について取付け突起33に近い側には、第2傾斜面84Bが形成されている。第2傾斜面84Bは、取付け突起33に近づくに従い上記軸線L1から遠ざかるように傾斜している。
【0164】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記の構成を有するリテーナ30が用いられると、エアバッグ装置60の組付けに際し実施される挿入工程及び装着工程の内容が、第1実施形態と異なったものとなる。次に、第4実施形態の作用として、挿入工程及び装着工程の各実施内容について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0165】
<挿入工程>
挿入工程では、エアバッグ50の外部においてインフレータ20の一部が、軸線L1に沿う方向の一端部(ガス噴出部21)から挿入口54を通じて、中間組付け体61におけるエアバッグ50の内部(収納部51)に挿入される。この挿入は、第1実施形態とは異なり、取付け突起24(ボルト)が、取付け突起33(ボルト)に対し平行となる方向へ突出する姿勢で行なわれる。インフレータ20は、上記姿勢を維持した状態で軸線L1に沿う方向について取付け突起33に近づく側へ直線移動させられる。
【0166】
<装着工程>
装着工程では、インフレータ20の一部が、挿入口54を通じリテーナ30の保持部31に挿入される。この挿入の過程で取付け突起24(ボルト)が第2係合部84(突部)及び延出部34Aに接近する。
【0167】
この際、
図23(A)において実線で示すように、取付け突起24(ボルト)は、入口部42を通じて係合空間41へ入り込むことを規制される。これは、
図22に示すように、入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも狭いからである。
【0168】
次に、取付け突起24(ボルト)により入口部42の幅W1を広げる側(取付け突起33に近づく側:
図23(A)の右側)へ、インフレータ20を上記規制に抗して軸線L1に沿って移動させようとする力が、同インフレータ20に加えられる。この際、保持部31は、上記軸線L1に沿う方向への移動をガイドする機能を発揮する。
【0169】
図23(B)に示すように、インフレータ20を移動させようとする上記力は、取付け突起24(ボルト)及び第1傾斜面84Aを通じて、第2係合部84(突部)に伝達される。ここで、取付け突起24(ボルト)が延出部34Aと第2係合部84との間隔を広げる方向は、舌片81の弾性変形予定部82の厚み方向と略同じである。このことから、舌片81は、第2係合部84の設けられていない側の端部(弾性変形予定部82の保持部31との境界部分82A)を支点として、保持部31の周方向について、入口部42の幅W1を広げる側へ多く弾性変形しやすい。
【0170】
上記弾性変形に伴い、第2係合部84の第1傾斜面84A及び第2傾斜面84Bが軸線L1から保持部31の周方向へ遠ざかり、入口部42の幅W1が広がる。この際、第1傾斜面84Aが、取付け突起33に近づくに従い軸線L1に接近するように傾斜していることから、取付け突起24(ボルト)は、軸線L1に沿う方向への移動に伴い第1傾斜面84A上を滑ることで、第1係合部35(凹部)に導かれる。入口部42の幅W1が取付け突起24(ボルト)の太さ(外径D1)よりも広げられると、すなわち、取付け突起24(ボルト)が第1傾斜面84Aを乗り越えると、同取付け突起24(ボルト)を係合空間41へ入り込ませることが可能となる。
図22において二点鎖線で示すように、円形の断面形状を有する取付け突起24(ボルト)が係合空間41に入り込んだ状態では、同取付け突起24(ボルト)の一部が、その曲率と略同一の曲率を有する円弧状の第1係合部35(凹部)に対し、隙間のない又は少ない状態で係合する。
【0171】
なお、インフレータ20の上記移動方向は係合基部34の面に沿う方向と同じであることから、仮に取付け突起24によって係合基部34が押されても、同係合基部34の同方向の弾性変形量は僅かである。
【0172】
また、上記のように取付け突起24が係合空間41に入り込むと、上記弾性変形させられていた舌片81が、自身(弾性変形予定部82)の弾性復元力により、保持部31の周方向であって、入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元する。この弾性復元により、第2係合部84(突部)が第2傾斜面84Bにおいて取付け突起24(ボルト)に接触する。この接触を通じ、第2係合部84(突部)が取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)側へ押圧する。取付け突起24(ボルト)が第1係合部35(凹部)及び第2係合部84(突部)によって、軸線L1に対し傾斜する方向についての両側から挟み込まれた状態となる。この際、上述したように、弾性復元の方向が弾性変形予定部82の厚み方向と略同じである。そのため、舌片81の弾性復元量が多く、第1係合部35(凹部)及び第2係合部84(突部)と取付け突起24(ボルト)との間は、隙間がない又は少ない状態となる。軸線L1に沿う方向についての取付け突起24(ボルト)の位置決めがなされ、インフレータ20の同方向についてのがたつきが抑制される。
【0173】
また、取付け突起24(ボルト)の第1係合部35(凹部)との上記係合により、同取付け突起24の周方向についての位置決めがなされ、インフレータ20の同方向についてのがたつきが抑制される。
【0174】
このようにして、取付け突起24が第1係合部35(凹部)及び第2係合部84(突部)に係合されることにより、インフレータ20が中間組付け体61に位置決めされた状態で装着され、目的とするエアバッグ装置60が得られる。
【0175】
上記インフレータ20の装着に際しては、上述したようにインフレータ20を保持部31に挿入し、軸線L1に沿う方向へ移動させる操作を行なうだけですむ。また、取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)に係合させる前後では、インフレータ20を移動させる操作に要する荷重が変化する。すなわち、操作荷重は係合前(取付け突起24(ボルト)が第1傾斜面84A上を滑る際)にはインフレータ20の移動が進むにつれて増加し、係合とともに急に減少する。そのため、節度感が付与され、操作フィーリングの向上が図られる。
【0176】
なお、上記のようにして得られたエアバッグ装置60は、第1実施形態と同様の作業が行なわれることで車両構成部材11(フレーム)に固定される。
従って、第4実施形態によれば、上記(1)〜(3),(6),(8),(9)と同様の効果が得られるほか、上記(4)に代えて次の(4B)の効果が得られる。また、上記(5)に代えて、次の(5B)の効果が得られる。
【0177】
(4B)舌片81を、係合基部34から保持部31の周方向へ離間した1箇所に設ける。係合基部34に第1係合部35を設け、舌片81に第2係合部84を設ける。第1係合部35と第2係合部84とを、インフレータ20の軸線L1に対し傾斜する方向に相対向させる。さらに、係合基部34に、第1係合部35から軸線L1に沿う方向について取付け突起33から遠ざかる側へ延びる延出部34Aを設ける。舌片81が、一部を保持部31で覆われた状態のインフレータ20とともに軸線L1に沿う方向について保持部31に近づく側へ移動する取付け突起24によって押圧された場合、同舌片81を係合基部34から保持部31の周方向へ遠ざかる側へ弾性変形させるようにしている(
図21)。
【0178】
そのため、インフレータ20を軸線L1に沿う方向について取付け突起33に近づく側へ移動させることで、舌片81を、保持部31の周方向について係合空間41の入口部42の幅W1を広げる側へ弾性変形させることができる。また、取付け突起24(ボルト)を係合空間41に入り込ませることで、舌片81を、保持部31の周方向について入口部42の幅W1を狭める側へ弾性復元させることができる。
【0179】
(5B)第1係合部35を、上記軸線L1に対し傾斜する方向について第2係合部84から遠ざかる側へ凹み、かつ取付け突起24(ボルト)の一部が係合される凹部によって構成する。第2係合部84を、延出部34Aに向けて突出する突部によって構成している(
図22)。
【0180】
そのため、第1係合部35(凹部)に係合された取付け突起24(ボルト)を第2係合部84(突部)によって同第1係合部35側へ弾性的に押付けることで、同取付け突起24(ボルト)を第1係合部35(凹部)及び第2係合部84(突部)によって、軸線L1に対し傾斜する方向についての両側から挟み込むことができる。
【0181】
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<インフレータ20について>
・位置決め突起は、インフレータ20の取付け突起24(ボルト)とは別に設けられてもよい。その場合、位置決め突起としては、第1係合部35及び第2係合部39,74,78,84によって挟み込めることを条件に、取付け突起24(ボルト)よりも短いものが用いられてもよい。
【0182】
・インフレータ20の一部が、エアバッグ50(収納部51)内においてリテーナ30の全部に組付けられてもよい。また、インフレータ20の全部が、エアバッグ50(収納部51)内においてリテーナ30の一部に組付けられてもよい。
【0183】
<取付け突起24,33について>
・取付け突起24,33としては、インフレータ20及びリテーナ30を乗物に固定することのできるものであることを条件に、ボルトとは異なる部材が採用されてもよい。
【0184】
・取付け突起33(ボルト)は、インフレータ20の軸線L1に沿う方向について、リテーナ30の複数箇所に設けられてもよい。
・インフレータ20の取付け突起24(位置決め突起)についても、取付け突起33と同様、エアバッグ50に挿通された状態で車両構成部材11に挿通され、ナット12により同車両構成部材11に締結されてもよい。
【0185】
・リテーナ30の取付け突起33、及びインフレータ20の取付け突起24のうち、後者のみがエアバッグ50に挿通された状態で車両構成部材11に挿通され、ナット12により同車両構成部材11に締結されてもよい。この場合、前者については、車両構成部材11にのみ挿通され、ナット12により同車両構成部材11に締結される。
【0186】
・取付け突起24,33の少なくとも一方は、上記軸線L1に対し、直交とは異なる状態で交差するものであってもよい。
・取付け突起24,33は、上記軸線L1に対し交差することを条件に、互いに異なる方向へ突出するものであってもよい。
【0187】
・取付け突起24,33は、乗物において互いに異なる乗物構成部材に固定されてもよい。
<保持部31について>
・保持部31は、インフレータ20の軸線L1に沿う方向についての一部を覆うものであることを条件として、上記各実施形態とは異なる形状に形成されてもよい。例えば、保持部31は、非筒状をなすものであってもよい。具体的には、保持部31は、上記各実施形態よりも幅広の切れ目31Aを有するものであってもよい。
【0188】
・保持部31は、リテーナ30において、上記軸線L1に沿う方向についての略中央部から外れた箇所に設けられてもよい。
・保持部31は、インフレータ20において、上記軸線L1に沿う方向の複数箇所に設けられてもよい。
【0189】
・第1実施形態では、略円筒状をなす保持部31において湾曲した部分が、弾性変形予定部37の一部(境界部分37Aを含む)として利用された。この場合、湾曲部分は、弾性変形予定部37の弾性変形を抑制するように作用する。そのため、取付け突起24(ボルト)により入口部42の幅W1を広げる側へインフレータ20が回転されたときに、舌片36を大きく弾性変形させたくない場合に有効である。
【0190】
しかし、舌片36を大きく弾性変形させたい場合も起こり得る。この場合には、
図25及び
図26に示すように、保持部31において、その周方向について係合基部34に近い部分(
図25及び
図26の下部)に平面状をなす部分(以下「平板部36B」という)が形成されてもよい。そして、この平板部36Bが、弾性変形予定部37の一部(境界部分37Aを含む)として利用されてもよい。このようにすると、平板部36Bは湾曲しているもの(第1実施形態)よりも弾性変形しやすいため、上記の要求に応えることができる。
【0191】
・保持部31は、
図25及び
図26に示すように、切れ目31Aを有しないものであってもよい。例えば、切れ目31A部分で保持部31が溶接されることで、保持部31は切れ目31Aを有しない状態となる。
【0192】
この場合、エアバッグ50が展開したときに保持部31がインフレータ20を保持する強度(保持強度)を、切れ目31Aを有するものよりも高くすることができる。
なお、切れ目31Aを有する保持部31は、切れ目31Aを有しないものよりも弾性変形しやすい。そのため、インフレータ20を保持部31に挿入しやすい。
【0193】
従って、保持部31に切れ目31Aを設けるか設けないかについては、保持部31の保持強度を高めることと、インフレータ20を挿入しやすくすることとのいずれを優先させるかによって決定されてもよい。
【0194】
なお、図示はしないが、上述した第1〜第4実施形態のリテーナ30についても、保持部31が切れ目31Aを有しないものであってもよい。
<係合基部34について>
・係合基部34は、リテーナ30において保持部31とは異なる箇所からインフレータ20の軸線L1に沿う方向へ延出されてもよい。
【0195】
・係合基部34は、上記軸線L1に沿う方向へ延出しないものであってもよい。例えば、保持部31の一部(端部)が係合基部34として機能させられてもよい。
<舌片36について>
・舌片36は、リテーナ30において保持部31とは異なる箇所からインフレータ20の軸線L1に沿う方向へ延出されてもよい。この場合であっても、舌片36は、第2係合部39の設けられていない側の端部を支点として弾性変形するように構成される。
【0196】
<係合部について>
・
図24に示すように、第1実施形態の第2係合部39(突部)において、取付け突起24(ボルト)に弾性的に当接する箇所39Bは、同取付け突起24(ボルト)の断面形状に合わせて円弧状に凹む形状に形成されてもよい。このようにすると、取付け突起24(ボルト)は、第1係合部35及び第2係合部39に対し、より広い面で係合することになるため、同取付け突起24(ボルト)が保持部31の周方向に移動するのをより抑制することができる。
【0197】
・上記第1実施形態とは逆に、第2係合部39が凹部によって構成され、第1係合部35が突部によって構成されてもよい。
・各実施形態において、第2係合部39,74,78,84(突部)は、舌片36,71,75,81において、端部とは異なる箇所(軸線L1に沿う方向についての中間部分)に設けられてもよい。
【0198】
<係合空間41について>
・係合空間41の入口部42は、幅狭の箇所がある程度の長さをもって続くものであってもよい。
【0199】
<中間組付け体61について>
・第1係合部35及び第2係合部39,74,78,84が収納部51内に位置するように、リテーナ30がエアバッグ50に配置及び係止されたものが中間組付け体61とされてもよい。
【0200】
・保持部31の全部が収納部51から露出するように、リテーナ30がエアバッグ50に配置及び係止されたものが中間組付け体61とされてもよい。また、保持部31の全部が収納部51内に位置するように、リテーナ30がエアバッグ50に配置及び係止されたものが中間組付け体61とされてもよい。
【0201】
<その他>
・前記各実施形態では、エアバッグ50の収納部51に対し、リテーナ30とは別に挿入口54を通じインフレータ20が挿入されて、同収納部51内でインフレータ20の一部がリテーナ30の一部に組付けられる構成とされた。これに代えて、エアバッグ50の外部でインフレータ20がリテーナ30に組付けられ、この状態で、挿入口54から収納部51内に挿入配置される構成に変更されてもよい。この場合であっても、インフレータ20のリテーナ30への組付け作業性の向上を図りつつ、組付け後のインフレータ20のがたつきを抑制する効果は得られる。
【0202】
・上記エアバッグ装置は、サイドエアバッグ装置を始めとする種々のタイプのエアバッグ装置に適用可能である。
・上記ガス発生装置は、エアバッグ装置以外の装置にガスを供給するものであってもよい。
【0203】
・上記エアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記エアバッグ装置は、車両とは異なる乗物、例えば航空機、船舶等に装備されるエアバッグ装置にも適用可能である。この場合、リテーナの取付け突起が、適用対象となる乗物に取付けられるとともに、インフレータの取付け突起が上記乗物に取付けられることでガス発生装置が同乗物に固定される。