(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)と、アルカリ化合物(A)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
0.06≦P<0.32・・・・・・・(1)
4.30≦M≦26.1・・・・・・・・(2)
20≦M/P≦200・・・・・・・・・(3)
(式中、Pはポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度(μmol/g)を表し、Mは、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(μmol/g)を表す。)
前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位70〜99モル%及びイソフタル酸単位1〜30モル%を含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、セバシン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記工程(a)において、重縮合が、リン原子含有化合物(B)及びアルカリ金属化合物(C)の存在下で行われる、請求項6に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
前記工程(b)が、(b1)前記ポリアミド(X)90〜99質量部と前記アルカリ化合物(A)10〜1質量部とを押出機により溶融混練してポリアミドマスターバッチ(Y)を得る工程、及び(b2)前記工程(b1)で得られた前記ポリアミドマスターバッチ(Y)0.5〜20質量部と前記ポリアミド(X)99.5〜80質量部とを溶融混練する工程を含む、請求項6又は7に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
前記ポリアミドマスターバッチ(Y)が、ポリアミドマスターバッチ(Y)1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和が12μmol/g以上900μmol/g以下を満たし、かつアルカリ化合物(A)が以下の条件(i)及び(ii)を満たすものである、請求項8に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(i)炭酸塩、炭酸水素塩、又は炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であること
(ii)アルカリ化合物(A)の融解温度Tmが溶融混練温度K以下であること
請求項8又は9に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いられるポリアミドマスターバッチであって、リン原子含有化合物(B)及びアルカリ金属化合物(C)の存在下で、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)90〜99質量部と、アルカリ化合物(A)10〜1質量部とを溶融混合して得られるものであり、ポリアミドマスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和が12μmol/g以上900μmol/g以下を満たし、かつアルカリ化合物(A)が以下の条件(i)及び(ii)を満たす、ポリアミドマスターバッチ。
(i)炭酸塩、炭酸水素塩、又は炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であること
(ii)アルカリ化合物(A)の融解温度Tmが溶融混練温度K以下であること
最外層及び最内層、並びに前記の最外層と最内層との間に少なくとも1層のガスバリア層を有する多層成形体であって、前記の最外層及び最内層が、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位と、エチレングリコール単位を80モル%以上含むジオール単位とからなるポリエステル樹脂により構成されており、前記ガスバリア層が、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物により構成されている、多層成形体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)と、アルカリ化合物(A)とを含み、以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
0.03≦P<0.32・・・・・・・(1)
2.2≦M≦26.1・・・・・・・・(2)
5<M/P≦200・・・・・・・・・(3)
(式中、Pはポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度(μmol/g)を表し、Mは、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(μmol/g)を表す。)
【0013】
アルカリ化合物は、前記のように、重合時に添加されるリン系化合物の中和剤として使用されている。しかしながら、リン系化合物とのバランスの観点から、ポリアミドの重合時における使用量は制限されている。この点につき、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリアミドの重合後、成形加工時にアルカリ化合物を添加して高濃度化することで、成形加工時におけるゲルの生成を抑制することができ、ポリアミドの溶融滞留状態が長期間続いても、生成するゲル量が少なく、かつ得られた成形品はゲルや着色の少ない外観の良好なものとなることを見出した。本発明は、このような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0014】
<ポリアミド(X)>
ポリアミド(X)を構成するジアミン単位は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む。ジアミン単位中のメタキシリレンジアミン単位が70モル%以上であることで、ポリアミド(X)は優れたガスバリア性を発現することができる。また、ポリアミド(X)は、ポリエステル樹脂(主にポリエチレンテレフタレート)との共射出成形性、共延伸ブロー成形性において優れた特性を発揮し、賦形性が良好である。
【0015】
メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
ポリアミド(X)を構成するジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもアジピン酸とセバシン酸が好ましい。
【0017】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(X)として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドを例示できる。ジカルボン酸単位中にアジピン酸単位が70モル%以上含まれると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができる。アジピン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数4〜20のα,ω−直鎖状脂肪族ジカルボン酸のうち1種以上が好ましく使用される。
【0018】
また、本発明で好ましく利用できるポリアミド(X)として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位70〜99モル%及びイソフタル酸単位1〜30モル%を含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドを例示することもできる。ジカルボン酸単位としてイソフタル酸単位を加えることで融点が低下し、成形加工温度を下げることができるため、ポリアミド樹脂組成物の成形中における熱履歴を減らし、ゲルやコゲの生成を抑制することができる。
【0019】
また、本発明で好ましく利用できるポリアミド(X)として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、セバシン酸単位を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドを例示することもできる。ジカルボン酸単位中にセバシン酸単位が70モル%以上含まれると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができるほか、融点が低く成形加工温度を下げることができ、ゲルやコゲの生成を抑制することができる。セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数4〜20のα,ω−直鎖状脂肪族ジカルボン酸のうち1種以上が好ましく使用される。
【0020】
前記のジアミン及びジカルボン酸以外にも、ポリアミド(X)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類;p−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸も共重合成分として使用できる。
【0021】
ポリアミド(X)の数平均分子量は、多層成形体を成形する際の成形性の観点から、好ましくは10000〜50000、より好ましくは15000〜45000、更に好ましくは20000〜40000であり、ポリアミド樹脂組成物の用途や成形方法により適宜選択される。製造時にある程度の流動性が求められる場合、例えばフィルム等の用途の場合には、ポリアミド(X)の数平均分子量は20000〜30000程度が好ましい。製造時に溶融強度が必要とされる場合、例えばシート等の用途の場合には、ポリアミド(X)の数平均分子量は30000〜40000程度が好ましい。
【0022】
ポリアミド(X)の数平均分子量については、下式(4)から算出される。
数平均分子量=2×1000000/([COOH]+[NH
2])・・・・・(4)
(式中、[COOH]はポリアミド(X)中の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)を表し、[NH
2]はポリアミド(X)中の末端アミノ基濃度(μmol/g)を表す。)
本発明では、末端アミノ基濃度は、ポリアミドをフェノール/エタノール混合溶液に溶解したものを希塩酸水溶液で中和滴定して算出した値を用い、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミドをベンジルアルコールに溶解したものを水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して算出した値を用いる。
【0023】
<アルカリ化合物(A)>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形加工時に生じるゲルやコゲを防止する観点からアルカリ化合物(A)を含有する。
本発明に用いられるアルカリ化合物(A)の好ましい具体例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、アルコキシド、炭酸塩、炭酸水素塩又はカルボン酸塩が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の好ましい具体例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
【0024】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物としては、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドとしては、炭素数1〜4のアルコキシドが好ましく、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、リチウム−t−ブトキシド、マグネシウム−t−ブトキシド、カルシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、さらにこれらの無水塩、含水塩が使用できる。
【0025】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩としては、炭素数1〜10のカルボン酸塩が好ましく、無水塩、含水塩が使用できる。カルボン酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコ酸、ベヘン酸、モンタン酸、トリアコンタン酸などの直鎖飽和脂肪酸;12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸誘導体;シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、メバロン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ピロメット酸、トリメリット酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるアルカリ化合物(A)は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ポリアミド(X)中への分散性の観点及びゲルやコゲの生成抑制効果の観点から、炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、経済性及びゲルやコゲの生成抑制効果の観点から、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物がより好ましい。
【0027】
<リン原子含有化合物(B)>
前記ポリアミド(X)の製造時には、溶融成形時の加工安定性を高める観点及びポリアミド(X)の着色を防止する観点からリン原子含有化合物(B)が使用される。そのため、本発明のポリアミド樹脂組成物中には、リン成分が含まれている。
リン原子含有化合物(B)の好ましい具体例としては、次亜リン酸化合物(ホスフィン酸化合物又は亜ホスホン酸化合物ともいう)や亜リン酸化合物(ホスホン酸化合物ともいう)等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。リン原子含有化合物(B)は金属塩であってもよく、アルカリ金属塩であってもよい。
【0028】
次亜リン酸化合物の具体例としては、次亜リン酸;次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩;次亜リン酸エチル、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸エチル等の次亜リン酸化合物;フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム等のフェニル亜ホスホン酸金属塩等が挙げられる。
亜リン酸化合物の具体例としては、亜リン酸、ピロ亜リン酸;亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸金属塩;亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジエチル等の亜リン酸化合物;エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム等のフェニルホスホン酸金属塩等が挙げられる。
【0029】
リン原子含有化合物(B)は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ポリアミド(X)の重合反応を促進する効果の観点及び着色防止効果の観点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0030】
<リン原子、アルカリ金属原子、及びアルカリ土類金属原子のモル濃度>
本発明のポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度Pは、溶融成形時の加工安定性を高める観点及びポリアミドの着色を防止する観点から、0.03μmol/g以上0.32μmol/g未満であり、好ましくは0.06〜0.26μmol/g、より好ましくは0.1〜0.2μmol/gである。Pが0.03μmol/g未満の場合、重合中にポリアミドが着色し易く、また成形加工時にゲルやコゲが生成する傾向がある。また、Pが高すぎると、ポリアミドの着色の改善が見られるが、成形加工時にゲルやコゲが発生したり、成形加工時にリン原子含有化合物(B)の熱変性物に起因すると考えられるフィルター目詰まりにより樹脂圧が上昇したりすることがある。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(以下、「アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度」という)Mは、成形加工時に生じるゲル化を防止する観点から、2.2〜26.1μmol/gであり、好ましくは4.3〜19.5μmol/g、より好ましくは6.5〜13.0μmol/gである。
Mを2.2μmol/g以上とすることで、ポリアミドが溶融された際に加熱によって起こる高分子量化が遅延し、ゲルやコゲの生成を抑制することができると推測される。一方、Mが26.1μmol/gを超える場合、粘度低下により成形不良を起こすことがあるほか、場合によっては着色や白化、アルカリ化合物(A)が析出することがある。
なお、上述のとおり、リン原子含有化合物(B)としてアルカリ金属塩が用いられる場合があり、また、後述するように、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造時においては、ポリアミドの重縮合の際に必要に応じてアルカリ金属化合物(C)が添加され、ポリアミドの重縮合後にアルカリ化合物(A)が添加される。したがって、Mは、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるすべてのアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和である。
【0032】
また、本発明において、本発明のポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度Mを、本発明のポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度Pで除した値(M/P)は、成形加工時に生じるゲルやコゲの生成を防止する観点、溶融成形時の加工安定性を高める観点及びポリアミドの着色を防止する観点から、5を超え200以下であり、好ましくは20〜150、より好ましくは35〜100である。M/Pが5以下の場合、アミド化反応をアルカリ化合物(A)が抑制する効果が不足することがあり、場合によっては成形加工時にゲルやコゲが発生することがある。また、M/Pが200を超える場合、粘度低下により成形不良を起こすことがあるほか、場合によっては着色や白化、アルカリ化合物(A)が析出することがある。
【0033】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、以下の工程(a)及び(b)を含む方法により製造することができる。
工程(a):リン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程。
工程(b):前記工程(a)で得られたポリアミド(X)にアルカリ化合物(A)を添加する工程。
【0034】
<工程(a)>
工程(a)は、リン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程である。リン原子含有化合物(B)の存在下でポリアミド(X)を重縮合することで、溶融成形時の加工安定性を高め、ポリアミド(X)の着色を防止することができる。
リン原子含有化合物(B)の使用量は、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度Pが前記範囲となる量である。
【0035】
ポリアミド(X)の製造方法は、リン原子含有化合物(B)の存在下であれば特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(例えばメタキシリレンジアミン)とジカルボン酸成分(例えばアジピン酸)とからなるナイロン塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミド(X)を製造することができる。
また、ジアミン成分(例えばメタキシリレンジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(例えばアジピン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド(X)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
ポリアミド(X)の重縮合時に、分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
【0036】
また、ポリアミド(X)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行ってもよい。固相重合は特に限定されず、任意の方法、重合条件により行うことができる。
【0037】
また、ポリアミド(X)の重縮合は、リン原子含有化合物(B)及びアルカリ金属化合物(C)の存在下で行われることが好ましい。重縮合中のポリアミド(X)の着色を防止するためにはリン原子含有化合物(B)を十分な量存在させる必要があるが、リン原子含有化合物(B)の使用量が多すぎるとアミド化反応速度が促進されすぎて重合の制御が困難になるだけでなく、成形加工時にゲルやコゲの生成を招くおそれがある。そのため、アミド化反応速度を調整する観点から、アルカリ金属化合物(C)を共存させることが好ましい。
【0038】
アルカリ金属化合物(C)としては特に限定されないが、好ましい具体例としてアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩を挙げることができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムを挙げることができ、アルカリ金属酢酸塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウムを挙げることができる。
【0039】
ポリアミド(X)を重縮合する際にアルカリ金属化合物(C)を使用する場合、アルカリ金属化合物(C)の使用量は、ゲルやコゲの生成を抑制する観点から、アルカリ金属化合物(C)のモル数をリン原子含有化合物(B)のモル数で除した値が、好ましくは0.5〜1、より好ましくは0.55〜0.95、更に好ましくは0.6〜0.9となる範囲が好ましい。
【0040】
<工程(b)>
工程(b)は、前記工程(a)で得られたポリアミド(X)にアルカリ化合物(A)を添加する工程である。
ポリアミド(X)をそのまま成形加工して得られる成形品は、成形開始直後は性状及び外観に優れるが、長時間の成形加工作業とともにゲルやコゲの発生が増加し、製品の品質が不安定となる場合がある。特に、フィルム等の場合には、ゲルにより破断が生じ、装置を停止せざるを得なくなるため生産効率が悪化する。これは、溶融混練部からダイス間において、ポリアミドが局所的に滞留し続けることによって過剰加熱されてゲル化し、生成したゲルが流れ出すために起こると推測される。また、ボトル成形においては、成形機の流路内部で滞留したポリアミドが過剰な加熱により劣化しコゲに至ると、流路を閉塞したり、発生したコゲが製品ボトル中に混入しボトルの品質が悪化したりする。これに対し、本発明では、成形加工時に生じるゲルやコゲの発生を防止するために、得られたポリアミド(X)に対してアルカリ化合物(A)を添加する。
【0041】
本発明者らは、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定から、ポリアミドを溶融状態で加熱し続けると、ポリアミドは低分子量化及び高分子量化の二極化が進行し、このうち特に高分子量成分が多いほどポリアミドの成形加工時にゲルやコゲの生成量が多くなることを見出した。コゲ発生のメカニズムは明らかではないが、装置内部すなわちスクリューや押出機内部、金型内、ホットランナー等の溶融樹脂の流路部において、ポリアミドが滞留し過熱されることで高分子量化することによって当該箇所の流れが悪くなるために、当該箇所にますますポリアミドが滞留しやすくなり、最終的には滞留したポリアミドが過剰な熱を受けてコゲに至ると考えられる。
これに対し、本発明者らは、ポリアミドに対してアルカリ化合物(A)を添加することで、高分子量成分が少なくなることをも見出した。この理由についてはまだ明らかにされていないが、アルカリ化合物(A)の添加により、特にポリアミド樹脂組成物の成形中に起こるアミド化の進行を遅延させ、結果的に高分子量化を抑制するとともに、装置内部での流れが良好に保たれ、ポリアミドが過剰に加熱されることを防ぐことができ、その結果としてゲルやコゲの生成を抑制するものと推測される。
【0042】
前記のように、アルカリ化合物(A)の例として、ポリアミド(X)を製造する際に添加可能なアルカリ金属化合物(C)と同じ化合物も例示される。しかし、アルカリ金属化合物(C)を溶融重合時に過剰に添加すると、リン原子含有化合物(B)のアミド化反応促進効果を抑制しすぎて重縮合の進行が遅くなり、場合によってはポリアミド製造時の熱履歴が増加してポリアミドの成形加工時にゲルやコゲが多くなることがある。そのため、ポリアミド(X)をモノマーから溶融重合する際に添加するアルカリ金属化合物(C)を増量させることでは、成形加工の際にゲルやコゲの生成を防止する役割を果たすことができない。これに対して、本発明では、得られたポリアミド(X)に対してアルカリ化合物(A)を添加することで、成形加工時におけるゲルやコゲの生成を効果的に防止することができる。
【0043】
アルカリ化合物(A)の使用量は、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度Mが前記範囲となる量であり、M/Pが前記範囲となる量である。
【0044】
ポリアミド(X)にアルカリ化合物(A)を添加する方法としては、特に限定されず任意の方法により行うことができるが、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)とを押出機により溶融混練することが好ましい。
押出機としては、バッチ式混練機、ニーダー、コニーダー、プラネタリ押出機、単軸もしくは二軸押出機等、任意の押出機を用いることができる。これらの中でも、混練能力及び生産性の観点から、単軸押出機や二軸押出機が好ましく用いられる。
【0045】
押出機にポリアミド(X)及びアルカリ化合物(A)を供給する手段としては特に限定されないが、ベルトフィーダー、スクリューフィーダー、振動フィーダー等を用いることができる。ポリアミド(X)及びアルカリ化合物(A)は、それぞれ単独のフィーダーを用いて供給してもよく、ドライブレンドして供給してもよい。
また、アルカリ化合物(A)は、樹脂組成物中に均一に分散できるのであればその形状に制限はなく、そのまま添加してもよく、加熱し融解させてから添加してもよく、溶剤に溶解してから添加してもよい。粉体をそのまま添加する場合、その粒径は、好ましくは0.01mm〜5.0mm、より好ましくは0.02〜3.0mmである。アルカリ化合物(A)を溶剤に溶解してから添加する場合、押出機に液添加用のフィーダー等の装置を用いて添加することや、タンブラー等で予めブレンドすることもできる。溶剤としては、水や任意の有機溶剤を使用することができる。
【0046】
ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)とは、成形加工時に直接混練してもよい。また、ポリアミド(X)を高濃度のアルカリ化合物(A)と共に押出機等を用いて溶融混練してペレットとした後、該ペレットをポリアミド(X)とブレンドして成形加工に供してもよい。または、前記ペレットをポリアミド(X)とブレンドして固相重合させた後、成形加工に供してもよい。
また、ドライブレンド後のポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)との分離を防止するために、粘性のある液体を展着剤としてポリアミド(X)に付着させた後、アルカリ化合物(A)を添加、混合してもよい。展着剤としては特に限定されず、界面活性剤等を用いることができる。
【0047】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい製造方法として、前記工程(b)が下記工程(b1)及び(b2)を含むことが好ましい。
工程(b1):前記ポリアミド(X)90〜99質量部と前記アルカリ化合物(A)10〜1質量部とを押出機により溶融混練してポリアミドマスターバッチ(Y)を得る工程。
工程(b2):前記工程(b1)で得られたポリアミドマスターバッチ(Y)0.5〜20質量部と前記ポリアミド(X)99.5〜80質量部とを溶融混練する工程。
この方法では、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)とを押出機により溶融混練して高濃度のアルカリ化合物(A)を含有するポリアミドマスターバッチ(Y)を得た後、得られたポリアミドマスターバッチ(Y)とポリアミド(X)とをブレンド後、溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得る。ポリアミド(X)に対してアルカリ化合物(A)を直接添加して成形加工に供した場合においてもゲル化抑制効果は得られるが、予めポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)を溶融混合したポリアミドマスターバッチ(Y)を利用することで、成形加工品へのアルカリ化合物(A)の更に十分な分散を可能とし、より安定した成形性と共に、成形品は白化やブツの発生も無い外観により優れたものを得ることが可能となる。
なお、本発明においてアルカリ化合物(A)として、アルカリ金属又はアルカリ金属土類金属の水酸化物、水素化物、アルコキシド、炭酸塩、炭酸水素塩またはカルボン酸塩が挙げられ、さらにこれらの無水塩、含水塩が用いられるが、ポリアミド(Y)を得る際のアルカリ化合物(A)とポリアミド(X)の質量比率を算出する際には、アルカリ化合物(A)が含水塩であっても、無水塩として質量比率を算出する。
【0048】
工程(b1)において、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)との配合比(ポリアミド(X)/アルカリ化合物(A))は、粘度低下を抑制する観点、ゲルやコゲの生成及び着色を抑制する観点から、好ましくは90〜99質量部/10〜1質量部、より好ましくは92〜99質量部/8〜1質量部、更に好ましくは94〜98質量部/6〜2質量部である。
また、工程(b2)において、ポリアミドマスターバッチ(Y)とポリアミド(X)との配合比(ポリアミドマスターバッチ(Y)/ポリアミド(X))は、成形性の観点、ゲルやコゲの生成を抑制する観点から、好ましくは0.5〜20質量部/99.5〜80質量部、より好ましくは0.5〜10質量部/99.5〜90質量部、更に好ましくは1〜5質量部/99〜95質量部である。
【0049】
工程(b1)で得られるポリアミドマスターバッチ(Y)は、ポリアミドマスターバッチ(Y)1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和が12μmol/g以上900μmol/g以下を満たし、かつアルカリ化合物(A)が以下の条件(i)及び(ii)を満たすものであることが好ましい。
(i)炭酸塩、炭酸水素塩、又は炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であること
(ii)アルカリ化合物(A)の融解温度Tmが溶融混練温度K以下であること
【0050】
[ポリアミドマスターバッチ(Y)]
本発明のポリアミドマスターバッチは、上記のポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いられるポリアミドマスターバッチである。本発明のポリアミドマスターバッチは、リン原子含有化合物(B)及びアルカリ金属化合物(C)の存在下で、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)90〜99質量部と、アルカリ化合物(A)10〜1質量部とを溶融混合して得られるものであり、ポリアミドマスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和が12μmol/g以上900μmol/g以下を満たし、かつアルカリ化合物(A)が以下の条件(i)及び(ii)を満たすことを特徴とする。
(i)炭酸塩、炭酸水素塩、又は炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であること
(ii)アルカリ化合物(A)の融解温度Tmが溶融混練温度K以下であること
【0051】
本発明のポリアミドマスターバッチは、ポリアミド(X)及びアルカリ化合物(A)を含有する。ポリアミド(X)及びアルカリ化合物(A)については上述のとおりである。ただし、本発明のポリアミドマスターバッチに含まれるアルカリ化合物(A)は、分散性の観点から、前記条件(i)及び(ii)を満たすことが要求される。
特に、本発明のポリアミドマスターバッチに含まれるアルカリ化合物(A)の融解温度Tmがポリアミドとアルカリ化合物(A)との溶融混練温度Kより低い温度であることで、ポリアミドの成形の際に混練機によりポリアミドに混合されやすく、アルカリ化合物(A)のポリアミドへの均一な分散を可能とし、白化やブツの無い外観や物性に優れた成形品を得ることができる。なお、アルカリ化合物(A)の融解温度Tmは、アルカリ化合物(A)の融点を表し、アルカリ化合物(A)が水和物等である場合には結晶水が融解して液状に変化する分解温度を表す。
【0052】
前記条件(i)及び(ii)を満たすアルカリ化合物(A)の好ましい具体例としては、炭酸ナトリウム十水和物、炭酸マグネシウム三水和物、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸リチウム二水和物、酢酸マグネシウム四水和物、酢酸カルシウム一水和物、シュウ酸カリウム一水和物、マレイン酸モノナトリウム三水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム一水和物、コハク酸カリウム水和物、酒石酸ナトリウム二水和物、酒石酸カリウム水和物などが挙げられるが、これに限定されない。また、本発明のポリアミドマスターバッチに用いられるアルカリ化合物(A)は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよいが、上記のうちでも経済性、常温での扱いやすさ、成形性、並びにゲル化抑制効果の観点から、炭酸ナトリウム十水和物、あるいは酢酸ナトリウム三水和物がより好ましい。
【0053】
本発明のポリアミドマスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(以下、「アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度」という)mは、ポリアミドマスターバッチを利用した成形加工品に生じる析出物を防止する観点から、12〜900μmol/gであり、好ましくは122〜600μmol/g、より好ましくは184〜450μmol/gである。ポリアミドマスターバッチ中のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度を12μmol/g以上とすることで、成形加工時においてポリアミドに対するポリアミドマスターバッチの配合量を低減させることができ、溶融粘度低下等の成形加工性を損なうことなく、ゲルの生成を抑制することができる。アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度が900μmol/gを超える場合、ポリアミドマスターバッチ自体の溶融粘度低下を招く可能性があり、ポリアミドマスターバッチの製造が困難になるおそれがあるほか、ポリアミド樹脂組成物へのポリアミドマスターバッチの分散むらが生じて、アルカリ化合物(A)がポリアミド樹脂組成物に局所的に存在する状態となるおそれがあり、十分なゲル抑制効果が得られない可能性がある。
【0054】
また、本発明のポリアミドマスターバッチには、目的を損なわない範囲で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン66,6、ポリエステル、ポリオレフィン、フェノキシ樹脂等の他樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤;酸素捕捉能を付与する化合物であるコバルト金属、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合物等の添加剤を添加することができる。
【0055】
押出機を用いてポリアミドマスターバッチを製造する際の溶融混練温度K(℃)は、好ましくはT+5≦K≦T+60、より好ましくはT+5≦K≦T+50、さらに好ましくはT+5≦K≦T+40を満たすように設定する。ここで、Tは、ポリアミド(X)の融点(℃)を表す。
溶融混練温度KがT+5(℃)よりも低い場合、ポリアミド(X)の未溶融物が生じる場合や、アルカリ化合物(A)の分散不良が生じやすくなり、また溶融混練温度KがT+60(℃)より大きい場合、ポリアミド(X)およびアルカリ化合物(A)が、熱分解による分子量や粘度の低下を生じやすくなる。また、溶融混練時間は、分散性や熱分解防止の観点から、好ましくは0.5〜15分である。
また、前述の通り、ポリアミド(A)の融解温度Tmは、成形品の白化やブツ発生防止の観点から、溶融混練温度K以下であることが望ましい。
【0056】
以上の方法によって製造される本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミドの溶融重合時においてゲルの生成を抑制することができ、更に、得られた樹脂組成物の成形加工時においてもゲルやコゲの生成を抑制することができる。
【0057】
本発明では、ポリアミド樹脂組成物のゲル生成の抑制効果を、成形時にポリアミドが曝される状態を想定し、高圧化、溶融状態にて一定時間かつ一定温度で加熱したポリアミドのゲル分率を比較することで評価する。加圧かつ加熱した樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に24時間浸漬すると、ゲル化していない樹脂は完全に溶解するのに対し、ゲル化した樹脂は膨潤状態の不溶成分として残る。該不溶成分からゲル分率を算出する。本発明においてゲル分率とは、上記不溶成分をメンブレンフィルターにて減圧濾過後、乾燥して得られる残渣質量に対し、HFIP浸漬前に予め秤量した樹脂質量を分母として除して百分率で求めた値をいう。
【0058】
本発明のポリアミド樹脂組成物のゲル分率は、ポリアミドの重合後にアルカリ化合物(A)を添加せずに製造したポリアミド樹脂組成物のゲル分率よりも小さい。このことは、本発明のポリアミド樹脂組成物の成形加工時においてゲルの生成が抑制されていることを表す。本発明のポリアミド樹脂組成物のゲル分率は、ポリアミド樹脂組成物を、成形加工の際のポリアミド樹脂の樹脂温度となる270〜290℃にて所定時間滞留させた場合に、アルカリ化合物(A)を添加せずに製造したポリアミド樹脂組成物を同一条件で滞留させた場合のゲル分率の好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下、更に好ましくは1/5以下である。滞留時間としては、例えば、24、36又は72時間とすることができる。
【0059】
本発明のポリアミド樹脂組成物が良好な外観や物性を有していることの指標として、ポリアミド樹脂組成物をフィルム化し、フィッシュアイ検査機にてカウントしたフィッシュアイの平均発生量にて評価することができる。ポリアミド樹脂組成物中のフィッシュアイの発生原因は、例えば、成形機内にて生じたゲルの流出や、アルカリ化合物(A)の未溶解物等の析出等が考えられる。本発明では、50μm厚のポリアミドフィルム1m
2換算当たりにおいて、円相当径が20μm以上の異物カウント数が900個以下であることが好ましく、より好ましくは700個以下、更に好ましくは600個以下である。900個を超えると、目視でもフィルム表面にブツの存在が確認され外観を損ねるほか、成形時に破断が生じる可能性もあるため望ましくない。
【0060】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン66,6、ポリエステル、ポリオレフィン、フェノキシ樹脂等の他樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤;酸素捕捉能を付与する化合物であるコバルト金属、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合物等の添加剤を添加することができる。
【0061】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性や透明性に優れ、かつ安定した溶融特性を有する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、該樹脂組成物を少なくとも一部に利用して成形品とすることで、シート、フィルム、射出成形ボトル、ブローボトル、射出成形カップ等、種々の形状に加工することができ、好ましくは包装材料、包装容器、繊維材料に用いることができる。
【0062】
成形品の製造方法については特に限定されず、任意の方法で製造することができ、例えば押出成形や射出成形により製造することができる。また、押出成形や射出成形により得られた成形品を、更に一軸延伸又は二軸延伸や延伸ブロー等により成形加工してもよい。
具体的には、Tダイを備えた押出法や、インフレーションフィルム法等によりフィルムやシートに加工でき、さらに得られた原反フィルムを延伸加工することにより、延伸フィルム、熱収縮フィルムを得ることができる。また、射出成形法により射出成形カップ、ブロー成形法によりブローボトルとすることができ、また射出成形によりプリフォームを製造した後、さらにブロー成形によりボトルとすることができる。
また、押出ラミネートや共押出等の方法により、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、PETや金属箔、紙等との多層構造のフィルム、シートに加工することもできる。加工したフィルムやシートは、ラップ、あるいは各種形状のパウチ、容器の蓋材、ボトル、カップ、トレイ、チューブ等の包装容器に利用できる。また、多層射出成形法等によりPET等との多層構造のプリフォームやボトルに加工することもできる。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物を利用して得られた包装容器は、ガスバリア性に優れ、かつ透明性に優れたものである。該包装容器には、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類等に代表される高水分食品;粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、乾燥野菜、コーヒー豆、コーヒー粉、お茶、穀物を原料としたお菓子等に代表される低水分食品;その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができる。
【0064】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガソリンバリア材料として自動車、バイクなどのガソリンタンク、ホース用材料とすることもできる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、モノフィラメント等の繊維材料とすることもできる。
【0065】
[多層成形体]
本発明の多層成形体は、最外層及び最内層、並びに前記の最外層と最内層との間に少なくとも1層のガスバリア層を有し、成形加工時におけるゲルやコゲの生成を防止するために、ガスバリア層として本発明のポリアミド樹脂組成物を使用する。本発明の多層成形体は、好ましくは多層プリフォームをホットパリソン法又はコールドパリソン法にてブロー成形して得られた多層ボトルである。
【0066】
(ポリエステル樹脂)
本発明の多層成形体における最外層及び最内層は、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位と、エチレングリコール単位を80モル%以上含むジオール単位とからなるポリエステル樹脂により構成されている。また、本発明の多層成形体は必要に応じて中間層を有していてもよく、前記ポリエステル樹脂により構成されていることが好ましい。最外層、最内層及び中間層を構成するポリエステル樹脂は、同一でも異なっていてもよい。
【0067】
本発明の多層成形体における最外層、最内層及び中間層を構成するポリエステル樹脂は、テレフタル酸単位を80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸単位と、エチレングリコール単位を80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むジオール単位とからなるポリエステル樹脂である。該ポリエステル樹脂は、テレフタル酸を80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールを80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むジオール成分とを重縮合反応させることで得られる。
【0068】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好適に使用される。ポリエチレンテレフタレートの持つ透明性、機械的強度、射出成形性、延伸ブロー成形性の全てにおいて優れた特性を発揮することが可能となる。
【0069】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4又は2,6−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン−1,10−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸を使用することができる。またエチレングリコール以外のジオール成分としてはプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を使用することができる。更に、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして、p−オキシ安息香酸等のオキシ酸を使用することもできる。
【0070】
ポリエステル樹脂の固有粘度は、好ましくは0.55〜1.30、より好ましくは0.65〜1.20である。固有粘度が0.55以上であると多層プリフォームを透明な非晶状態で得ることが可能であり、また得られる多層ボトルの機械的強度も満足するものとなる。また固有粘度が1.30以下の場合、成形時に流動性を損なうことなく、ボトル成形が容易である。
【0071】
本発明の多層成形体における最外層、最内層及び中間層は、本発明の特徴を損なわない範囲でポリエステル樹脂に他の熱可塑性樹脂や各種添加剤を含有していてもよいが、90質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が例示できる。
また、前記添加剤としては、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、着色剤、プリフォームの加熱を促進し成形時のサイクルタイムを短くするための赤外吸収剤(リヒートアディティブ)などが例示できる。
【0072】
(多層成形体の製造方法)
本発明の多層成形体、特に多層ボトルは、例えば、2つの射出シリンダーを有する射出成形機を使用して、ポリエステル樹脂をスキン側の射出シリンダーから、ポリアミド樹脂組成物をコア側の射出シリンダーから金型ホットランナーを通して金型キャビティー内に射出して得られた多層プリフォームを、公知の方法によって更に2軸延伸ブロー成形することにより得られる。あるいは、2つの押出機を備えたブロー成形機を用いて、ポリエステル樹脂をスキン側の押出機から、ポリアミド樹脂組成物をコア側の押出機から筒状に溶融押出し、間欠的にブロー成形することで得られる。また、必要に応じて層間に接着剤樹脂層を有してもよい。
【0073】
一般に、前駆体である多層プリフォームをブロー成形する方法としては所謂コールドパリソン法やホットパリソン法などの従来公知の方法がある。例えば、多層プリフォームの表面を80〜120℃に加熱した後にコアロッドインサートで押すといった機械的手段により軸方向に延伸し、次いで、通常2〜4MPaの高圧空気をブローして横方向に延伸させブロー成形する方法、多層プリフォームの口部を結晶化させ、表面を80〜120℃に加熱した後に90〜150℃の金型内でブロー成形する方法などである。
【0074】
本発明において、プリフォーム加熱温度は90〜110℃が好ましく、95℃〜108℃がさらに好ましい。プリフォーム加熱温度が90℃より低いと、加熱が不十分となり、ガスバリア層またはPET層が冷延伸され、白化することがある。110℃より高温であるとガスバリア層が結晶化し、白化することがある。さらに、耐層間剥離性能も低下することがある。
【0075】
本発明では、ガスバリア性、成形性などが優れることから、多層ボトルはポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層の3層構造、または、ポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層の5層構造を有することが好ましい。
【0076】
3層構造あるいは5層構造の多層ボトルは、3層構造あるいは5層構造の多層プリフォームを、公知の方法によって更に2軸延伸ブロー成形することにより得られる。3層構造あるいは5層構造の多層プリフォーム製造方法に特に制限は無く、公知の方法を利用できる。たとえば、スキン側射出シリンダーから最内層および最外層を構成するポリエステル樹脂を射出し、コア側射出シリンダーからガスバリア層を構成する樹脂を射出する工程で、先ず、ポリエステル樹脂射出し、次いでガスバリア層を構成する樹脂とポリエステル樹脂を同時に射出し、次にポリエステル樹脂を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより3層構造(ポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層)の多層プリフォームが製造できる。
【0077】
また、スキン側射出シリンダーから最内層および最外層を構成するポリエステル樹脂を射出し、コア側射出シリンダーからガスバリア層を構成する樹脂を射出する工程で、先ずポリエステル樹脂を射出し、次いでガスバリア層を構成する樹脂を単独で射出し、最後にポリエステル樹脂を射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造(ポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層/ガスバリア層/ポリエステル樹脂層)の多層プリフォームが製造できる。
多層プリフォームを製造する方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0078】
多層ボトル中の、ポリエステル樹脂層の厚さは0.01〜1.0mmであるのが好ましく、ガスバリア層の厚さは0.005〜0.2mm(5〜200μm)であるのが好ましい。また、多層ボトルの厚さはボトル全体で一定である必要はなく、通常、0.2〜1.0mmの範囲である。
【0079】
多層プリフォームを2軸延伸ブロー成形して得られる多層ボトルにおいて、少なくとも多層ボトルの胴部にガスバリア層が存在していればガスバリア性能は発揮できるが、多層ボトルの口栓部先端付近までガスバリア層が延びている方がガスバリア性能は更に良好である。
【0080】
本発明の多層成形体においてガスバリア層の質量は、多層ボトル総質量に対して1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。ガスバリア層の質量を上記範囲とすることにより、ガスバリア性が良好な多層ボトルが得られるとともに、前駆体である多層プリフォームから多層ボトルへの成形も容易となる。
【0081】
本発明の多層成形体は、製品中にコゲの混入が少ない。本発明の多層ボトルは、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし等の調味料、液体スープ等の液体系食品、液状の医薬品、化粧水、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー等、種々の物品の収納、保存に好適である。本発明の多層成形体は、製造時にコゲの発生が少なく、コゲが成形機内部の流路を閉塞することを防ぎ、装置メンテナンスの手間を削減でき、安定した多層ボトル等の生産に寄与できる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
[ポリアミド樹脂組成物及びポリアミドマスターバッチの物性の測定]
以下の方法で、ポリアミド樹脂組成物の相対粘度、ポリアミド樹脂組成物中におけるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M及びリン原子のモル濃度P、並びにポリアミドマスターバッチにおけるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度mを測定した。
【0084】
(1)ポリアミド樹脂組成物の相対粘度
ポリアミド樹脂組成物1gを精秤し、96質量%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%硫酸そのものの落下時間(t
0)も同様に測定した。t及びt
0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0【0085】
(2)アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M及びリン原子のモル濃度P
ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M及びリン原子のモル濃度Pは、ポリアミド樹脂組成物を硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置(商品名:AA−6650、(株)島津製作所製)及びICP発光分析装置(商品名:ICPE−9000、(株)島津製作所製)を用いて定量した。なお、測定値は重量分率(ppm)として得られるため、原子量及び価数を用いてM及びPを算出した。
【0086】
(3)ポリアミドマスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度m
ポリアミドマスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度mは、ポリアミドマスターバッチを硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置(商品名:AA−6650、(株)島津製作所製)及びICP発光分析装置(商品名:ICPE−9000、(株)島津製作所製)を用いて定量した。なお、測定値は重量分率(ppm)として得られるため、原子量及び価数を用いてmを算出した。
【0087】
[フィルムの評価]
以下の方法で実施例又は比較例で得られたフィルムの評価を行った。
(1)フィッシュアイ数
実施例又は比較例で得られたフィルムをフィッシュアイ検査機のカメラと光源の間を通過させ、巻き取り機にて巻き取りつつ、押し出しを開始してから1時間経過した時点で、幅10cm、長さ50m、厚さ50μmのフィルムのフィッシュアイ数(円相当径が20μm以上)をカウントし、1m
2当たりのフィッシュアイ数を算出した。フィッシュアイ数は少ないほど好ましい。
【0088】
(2)押出機ヘッドの樹脂圧力
また、フィッシュアイ数のカウント終了後、巻き取り速度を調節して、幅15cm、厚み250μmのフィルムとした後、押し出しを継続し、押出し開始直後、3時間後及び6時間後における押出機ヘッドの樹脂圧力をそれぞれ測定し、その変化の有無を測定した。押出機ヘッドの樹脂圧力の変化量が少ないことが好ましい。
【0089】
(3)フィルムの外観
得られたフィルムの外観を目視で観察した。フィルムの着色やゲル等の異物が観測されないことが好ましい。
【0090】
(4)ゲル分率
(滞留サンプルの作製)
上記の250μm厚みフィルムを直径30mmの円形に切り取り、これを4枚作製した。該円形フィルムを同心円状に重ね、孔径30mmにくり抜いた孔を持つ1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシートの孔部に、前記の同心円状に重ねた円形フィルムをはめ込み、さらに該シートを、1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシート2枚の間に挟み込んだ。
次いで、中央部に深さ3mmの120mm×120mmの溝を持つ15mm厚×150mm×150mm金属板に、上述のフィルムを挟み込んだポリテトラフルオロエチレンシートを溝の中央に配置し、さらに15mm厚×150mm×150mm金属板にて上から蓋をした後、金属板同士をボルトで固定した。
続けて、予め加温した熱プレス機により50kg/cm
2以上にて該金属板を挟んだ状態で、270℃にて72時間、290℃にて24時間、又は290℃にて36時間のそれぞれの条件で加熱を行った。各時間経過後に該金属板を取り出して急冷し、室温まで十分に冷却されてから滞留サンプルを取り出した。
【0091】
(ゲル分率の算出)
次いで、上記の滞留サンプルを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥させた後、乾燥したサンプルを直ちに100mg秤量した。秤量した滞留サンプルを10mlの純度99%以上のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に24時間浸漬後、予め秤量した300μm孔径のポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを通し減圧濾過した。メンブレンフィルターに残った残渣を2mlのHFIPにて3回洗浄した後、残渣の付着したフィルターを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥した。
乾燥させた残渣及びフィルターの総質量を秤量し、予め秤量したメンブレンフィルター質量との差から、滞留サンプルのHFIP不溶成分量(ゲル量)を算出した。ゲル分率はHFIP浸漬前の滞留サンプルに対するHFIP不溶成分の質量%として求めた。
同様の操作を滞留サンプルの作製から同一条件にて3回行い、得られたゲル分率のそれぞれの条件における平均値を求めた。
【0092】
[多層成形体(プリフォーム)の評価]
以下の方法で実施例又は比較例で得られたプリフォームの評価を行った。
(1)コゲ発生本数
ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層からなる3層プリフォーム(27g)を2500ショット射出成形し、10000個のプリフォームを得た。得られたプリフォームのうち、コゲを有するプリフォームの本数を数えた。
【0093】
(2)プリフォーム(PFM)安定性
プリフォーム中にバリア層が安定して存在しているかどうかを目視にて判断した。1サイクルの射出で得られる4本のプリフォームを縦方向に切断し、断面にヨードチンキを塗布し、ポリアミド樹脂組成物層(バリア層)のみを染色し、4本のプリフォームのバリア層の存在位置が揃っているかを確認した。バリア層が安定して存在しない場合、プリフォーム首部におけるバリア層の存在位置がばらつき、得られた製品の品質が悪化する。
【0094】
(3)計量時間
プリフォーム成形時のポリアミド樹脂組成物を溶融し射出成形するシリンダーでの、所定量の樹脂組成物を計量するのに要する時間を測定した。計量時間が長すぎるのは、成形性が悪いことを意味する。
【0095】
実施例101
(ポリアミドの溶融重合)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH
2PO
2・H
2O)432.6mg(4.082mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)、酢酸ナトリウム206.4mg(2.516mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13895g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミドを得た。
【0096】
(ポリアミドの固相重合)
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミドを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30〜45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド(X101)を得た。
【0097】
(ポリアミド樹脂組成物(101)の調製)
得られたポリアミド(X101)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム400mg(ポリアミドに対して200ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(101)を調製した。
【0098】
(フィルムの製造)
次いで、25mmφ単軸押出機、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、フィッシュアイ検査機(型式:GX70W、マミヤオーピー(株)製)、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、フィルムの製造を行った。押出機からポリアミド樹脂組成物(101)を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み50μmのフィルムとした。
【0099】
実施例102
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を600mg(ポリアミドに対して300ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(102)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(102)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0100】
実施例103
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を800mg(ポリアミドに対して400ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(103)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(103)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0101】
実施例104
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を1200mg(ポリアミドに対して600ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(104)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(104)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0102】
実施例105
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を4000mg(ポリアミドに対して2000ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(105)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(105)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0103】
実施例106
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解したn−プロピオン酸ナトリウム3000mg(ポリアミドに対して1500ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(106)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(106)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0104】
実施例107
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、n−ヘキサン酸ナトリウム4000mg(ポリアミドに対して2000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(107)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(107)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0105】
実施例108
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、カプリン酸ナトリウム4000mg(ポリアミドに対して2000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(108)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(108)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0106】
実施例109
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解したアジピン酸ジナトリウム2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(109)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(109)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0107】
実施例110
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、炭酸ナトリウム十水和物2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(110)を調製し、実施例1と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(110)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0108】
実施例111
実施例101のポリアミドの調製において、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を86.5mg(0.816mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として1ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を41.3mg(0.503mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)にそれぞれ変更したこと以外は実施例101と同様にして、溶融重合及びペレット化を行い、約24kgのポリアミドを得た。次いで、実施例101と同様にして固相重合を実施してポリアミド(X102)を得た。
得られたポリアミド(X102)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム400mg(ポリアミドに対して200ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(111)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(111)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0109】
実施例112
実施例101のポリアミドの調製において、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を173.1mg(1.633mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として2ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を82.6mg(1.007mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)にそれぞれ変更したこと以外は実施例101と同様にして、溶融重合及びペレット化を行い、約24kgのポリアミドを得た。次いで、実施例101と同様にして固相重合を実施してポリアミド(X103)を得た。
得られたポリアミド(X103)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム400mg(ポリアミドに対して200ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(112)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(112)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0110】
実施例113
実施例101のポリアミドの調製において、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を778.7mg(7.343mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として9.5ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を371.6mg(4.53mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)にそれぞれ変更したこと以外は実施例101と同様にして、溶融重合及びペレット化を行い、約24kgのポリアミドを得た。次いで、実施例101と同様にして固相重合を実施してポリアミド(X104)を得た。
得られたポリアミド(X104)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム400mg(ポリアミドに対して200ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(113)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(113)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0111】
実施例114
実施例113におけるポリアミド(X104)に対する酢酸ナトリウムの添加量を4000mg(ポリアミドに対して2000ppm)に変更したこと以外は実施例113と同様にしてポリアミド樹脂組成物(114)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(114)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0112】
実施例115
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、酢酸リチウム二水和物2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(115)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(115)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0113】
実施例116
実施例101で得られたポリアミド(X101)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸カリウム2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(116)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(116)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0114】
比較例101
実施例101で得られたポリアミド(X101)について、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド(X101)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0115】
比較例102
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を200mg(ポリアミドに対して100ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(117)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(117)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0116】
比較例103
実施例101におけるポリアミド(X101)に対する酢酸ナトリウムの添加量を6000mg(ポリアミドに対して3000ppm)に変更したこと以外は実施例101と同様にしてポリアミド樹脂組成物(118)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(118)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0117】
比較例104
実施例106におけるポリアミド(X101)に対するn−プロピオン酸ナトリウムの添加量を100mg(ポリアミドに対して50ppm)に変更したこと以外は実施例106と同様にしてポリアミド樹脂組成物(119)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(119)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0118】
比較例105
実施例107におけるポリアミド(X101)に対するn−ヘキサン酸ナトリウムの添加量を100mg(ポリアミドに対して50ppm)に変更したこと以外は実施例107と同様にしてポリアミド樹脂組成物(120)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(120)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0119】
比較例106
実施例108におけるポリアミド(X101)に対するカプリン酸ナトリウムの添加量を150mg(ポリアミドに対して75ppm)に変更したこと以外は実施例108と同様にしてポリアミド樹脂組成物(121)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(121)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0120】
比較例107
実施例101のポリアミドの調製において、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を43.3mg(0.408mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として0.5ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を20.6mg(0.252mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)にそれぞれ変更したこと以外は実施例101と同様にして、溶融重合及びペレット化を行い、約24kgのポリアミドを得た。次いで、実施例101と同様にして固相重合を実施してポリアミド(X105)を得た。
得られたポリアミド(X105)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム400mg(ポリアミドに対して200ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(122)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(122)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0121】
比較例108
比較例107におけるポリアミド(X105)に対する酢酸ナトリウムの添加量を2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)に変更したこと以外は比較例107と同様にしてポリアミド樹脂組成物(123)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(123)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0122】
比較例109
実施例113におけるポリアミド(X104)に対する酢酸ナトリウムの添加量を6000mg(ポリアミドに対して3000ppm)に変更したこと以外は実施例113と同様にしてポリアミド樹脂組成物(124)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(124)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0123】
比較例110
実施例101のポリアミドの調製において、次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を1297.8mg(12.245mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として14.5ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を619.3mg(7.549mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)にそれぞれ変更したこと以外は実施例101と同様にして、溶融重合及びペレット化を行い、約24kgのポリアミドを得た。次いで、実施例101と同様にして固相重合を実施してポリアミド(X106)を得た。
得られたポリアミド(X106)2kgに対して、5ml蒸留温水に溶解した酢酸ナトリウム2000mg(ポリアミドに対して1000ppm)を加えて撹拌混合することで、ポリアミド樹脂組成物(125)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(125)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造した。フィルム製造時には樹脂ラインのフィルターの目詰まりが発生し、樹脂圧が経時的に上昇した。得られたフィルムについて、実施例101と同様にして評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0124】
実施例117
実施例101で得られたポリアミド(X101)9.60kgに対して、350ml温水に溶解した酢酸ナトリウム400gを加えて撹拌混合したものを、二軸押出機(型式:TEM37BS、東芝機械(株)製、口径:37mmφ)にストランドダイを取り付けた押出機を使用してストランド状とした。次いで、水冷槽で冷却した後、ペレタイザーを使用してペレット状とした。その後、ペレットを真空乾燥機にて0.1Torr以下、140℃の状態で8時間乾燥してポリアミドマスターバッチ(Y101)を得た。
ポリアミド(X101)1975.0g及びポリアミドマスターバッチ(Y101)25.0gを混合することでポリアミド樹脂組成物(126)を調製し、実施例101と同様にして物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(126)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0125】
実施例118
実施例117におけるポリアミド(X101)及びポリアミドマスターバッチ(Y101)の配合量をポリアミド(X101)1950.0g、ポリアミドマスターバッチ(Y101)50.0gにそれぞれ変更したこと以外は実施例117と同様にしてポリアミド樹脂組成物(127)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(127)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0126】
実施例119
実施例117におけるポリアミド(X101)及びポリアミドマスターバッチ(Y101)の配合量をポリアミド(X101)1925.0g、ポリアミドマスターバッチ(Y101)75.0gにそれぞれ変更したこと以外は実施例117と同様にしてポリアミド樹脂組成物(128)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(128)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0127】
実施例120
二軸押出機にストランドダイを取り付けた押出機を使用して、実施例101で得られたポリアミド(X101)を吐出速度28.8kg/h、酢酸ナトリウム三水和物を吐出速度1.2kg/hでそれぞれ別フィーダーにて供給してストランド状とした。次いで、水冷槽で冷却した後、ペレタイザーを使用してペレット状とした。その後、ペレットを真空乾燥機にて0.1Torr以下、140℃の状態で8時間乾燥してポリアミドマスターバッチ(Y102)を得た。
実施例117におけるポリアミドマスターバッチ(Y101)をポリアミドマスターバッチ(Y102)に変更したこと以外は実施例117と同様にしてポリアミド樹脂組成物(129)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(129)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0128】
実施例121
実施例120におけるポリアミド(X101)及びポリアミドマスターバッチ(Y102)の配合量をポリアミド(X101)1950.0g、ポリアミドマスターバッチ(Y102)50.0gにそれぞれ変更したこと以外は実施例120と同様にしてポリアミド樹脂組成物(130)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(130)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0129】
実施例122
実施例120におけるポリアミド(X101)及びポリアミドマスターバッチ(Y102)の配合量をポリアミド(X101)1925.0g、ポリアミドマスターバッチ(Y102)75.0gにそれぞれ変更したこと以外は実施例120と同様にしてポリアミド樹脂組成物(131)を調製し、物性の測定を行った。また、ポリアミド樹脂組成物(131)を用いたこと以外は実施例101と同様にしてフィルムを製造し、その評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0130】
表中における略称は、それぞれ以下のものを表す。
AcNa:酢酸ナトリウム
AcNa・3H
2O:酢酸ナトリウム三水和物
PrNa:n−プロピオン酸ナトリウム
HxNa:n−ヘキサン酸ナトリウム
DecNa:カプリン酸ナトリウム(n−デカン酸ナトリウム)
AdNa:アジピン酸ジナトリウム
Na
2CO
3・10H
2O:炭酸ナトリウム十水和物
AcLi・2H
2O:酢酸リチウム二水和物
AcK:酢酸カリウム
【0131】
【表1-1】
【0132】
【表1-2】
【0133】
【表2-1】
【0134】
【表2-2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
ポリアミドの製造後にアルカリ化合物(A)を添加しなかった比較例101では、当初はフィルムのフィッシュアイ数も少なかったが、ゲル分率が高く、滞留によって過剰の熱履歴がかかるとゲルが生成していた。
これに対し、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度Pが0.03μmol/g以上0.32μmol/g未満、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度Mが2.2〜26.1μmol/g、及びM/Pが5を超え200以下である本発明のポリアミド樹脂組成物は、色調が良好で、しかも、フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、ゲル分率も低く、成形加工時においてゲルの生成が少ない。
一方、リン原子のモル濃度P、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M、及びM/Pの値が上記範囲から外れる比較例102〜109のポリアミド樹脂組成物は、フィルムの外観不良やゲル生成の問題が生じていた。また、リン原子含有化合物(B)である次亜リン酸ナトリウムを過剰に用いた比較例110では、成形加工時に次亜リン酸ナトリウムがポリリン酸化し、成形加工時に用いられるフィルターに吸着してフィルターの目詰まりを起こし、樹脂圧が上昇しており、生産性の問題が生じていた。
【0138】
製造例201
(ポリアミド(X201)の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH
2PO
2・H
2O)432.6mg(4.082mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)、酢酸ナトリウム234.3mg(2.856mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.70)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13896g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミドを得た。
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミドを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30〜45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド(X201)を得た。
【0139】
製造例202〜211
(ポリアミド(X202)〜(X211)の製造)
次亜リン酸ナトリウム一水和物及び酢酸ナトリウムを表5に記載の量に変更したこと以外は、製造例201と同様にしてポリアミド(X202)〜(X211)を合成した。製造例210は、重合時のアミド化反応が遅く重合が困難だった。
なお、以下の実施例、比較例に必要なポリアミド樹脂は、同様の製造を繰り返し必要な量を確保した。
【0140】
製造例212
(ポリアミドマスターバッチ(Y201)の製造)
ポリアミド(X211)4950gと酢酸ナトリウム三水和物82.95g(無水物として50g相当)を、二軸押出機(東芝機械(株)製、型式:TEM37B)を用い260℃にて溶融混練し、ポリアミドマスターバッチ(Y201)を得た。なお、酢酸ナトリウム三水和物の水和した水分は、溶融混練時に真空ベントにより除去した。
【0141】
製造例213〜215
(ポリアミドマスターバッチ(Y202)〜(Y204)の製造)
酢酸ナトリウム三水和物を表6に記載の量に変更したこと以外は、製造例212と同様にして、ポリアミドマスターバッチ(Y202)〜(Y204)を得た。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
実施例201
ポリアミド(X201)20kgに対して、酢酸ナトリウム3.2gを加え、撹拌混合しポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、ポリエステル層/バリア層/ポリエステル層からなる3層プリフォームを製造した。
なお、ポリエステル層としては、固有粘度(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定)が0.75のポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、商品名:RT543C)を用い、ガスバリア層としては、表7に記載のポリアミド樹脂組成物を用いた。
3層プリフォームの形状は、全長95mm、外径22mm、肉厚4.2mmであり、2本の射出シリンダーを有する射出成形機(名機製作所(株)製、型式:M200)及び金型(4個取り、(株)型システム製)を使用して製造した。
3層プリフォーム成形条件は、以下のとおりであり、樹脂の劣化を促進させるため、コア側(バリア層側)射出シリンダー温度および金型内樹脂流路温度は通常より温度を高く設定した。
スキン側射出シリンダー温度:280℃
コア側射出シリンダー温度 :290℃
金型内樹脂流路温度 :290℃
金型冷却水温度 :15℃
プリフォーム中のバリア樹脂の割合:5質量%
サイクルタイム :40s
【0145】
実施例202〜214
ポリアミド(X)及び酢酸ナトリウムを表7に記載された種類及び配合量で用いたこと以外は実施例201と同様にして多層プリフォームを製造した。
【0146】
実施例215
ポリアミド(X211)19.5kgとポリアミドマスターバッチ(Y201)0.5kgを撹拌混合しポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、多層プリフォームを製造した。
【0147】
実施例216〜221
ポリアミドマスターバッチ(Y)を表7に記載された種類及び配合量で用いたこと以外は実施例215と同様にして多層プリフォームを製造した。
【0148】
比較例201〜202
ポリアミド(X)及び酢酸ナトリウムを表7に記載された種類及び配合量で用いたこと以外は実施例201と同様にして多層プリフォームを製造した。
比較例201はプリフォームの安定性は良いものの、コゲの発生が多いものであった。比較例202は、射出成型時の計量時間が長く、プリフォーム中のバリア層存在位置がばらついており、安定したプリフォームを得ることができなかった。
【0149】
【表7】
【0150】
実施例および比較例から明らかなように、本発明の多層ボトルはコゲが少なく、生産性が良好なものであった。
【0151】
実施例301〜315及び比較例301〜305
(ポリアミドの溶融重合)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH
2PO
2・H
2O)432.6mg(4.082mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)、酢酸ナトリウム206.4mg(2.516mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13895g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミドを得た。
【0152】
(ポリアミドの固相重合)
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミドを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30〜45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド(X301)を得た。
【0153】
(ポリアミドマスターバッチ(Y301)〜(Y308)の製造)
二軸押出機(型式:TEM37BS、東芝機械(株)製、口径:37mmφ)にストランドダイを取り付けた押出機を使用して、上記のポリアミド(X301)、並びに酢酸ナトリウム三水和物又は炭酸ナトリウム十水和物をそれぞれ表8に示す配合率にて、各々別フィーダーにより供給し、260℃の押出温度にて溶融混練しストランド状とした。表8に示すように、酢酸ナトリウム三水和物及び炭酸ナトリウム十水和物の融解温度Tmは、溶融混練温度260℃以下である。
次いで、水冷槽で冷却した後、ペレタイザーを使用してペレット状とした。その後、ペレットを真空乾燥機にて0.1Torr以下、140℃の状態で8時間乾燥してポリアミドマスターバッチ(Y301)〜(Y308)を得た。
マスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度mが900μmol/gを超えるマスターバッチ(Y307)は、マスターバッチの粘度低下が激しく、ペレット成形ができなかった。
【0154】
【表8】
【0155】
(ポリアミド樹脂組成物のフィルム製造)
ポリアミドマスターバッチ(Y301)〜(Y306)又は(Y308)とポリアミド(X301)とを表9に示す配合率にて所定量混合した後、25mmφ単軸押出機(型式:PTM25、(株)プラスチック工学研究所製)、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、フィッシュアイ検査機(型式:GX70W、マミヤオーピー(株)製)、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、押出温度を260℃に保ち、フィルムの製造を行った。押出機からポリアミド樹脂組成物を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み50μmのフィルムを得た。
【0156】
【表9】
【0157】
【表10】
【0158】
ポリアミドマスターバッチを添加して得られる、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度Pが0.03μmol/g以上0.32μmol/g未満、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度Mが2.2〜26.1μmol/g、及びM/Pが5を超え200以下である本発明のポリアミド樹脂組成物は、色調が良好で、しかも、フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、ゲル分率も低く、成形加工時においてゲルの生成が少ない。