特許第5949647号(P5949647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949647
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】電線スプライス具及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 31/08 20060101AFI20160630BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20160630BHJP
   H01R 24/84 20110101ALI20160630BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01R31/08 Q
   H01R13/639 Z
   H01R24/84
   H01B7/00 301
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-82676(P2013-82676)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-207071(P2014-207071A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平能 勝之
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037819(JP,A)
【文献】 特開2000−294352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/08
H01R 13/639
H01R 24/84
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電線の端部が挿入される複数のキャビティと他の電線スプライス具の導体が挿入される差込孔とが形成された非導電性の電線保持部と、
前記電線保持部から突出して形成された接点導体と、
前記電線保持部に内包され前記キャビティ各々に挿入される前記電線各々と前記接点導体と前記差込孔に挿入される他の電線スプライス具の導体とを電気的に接続する短絡導体と、
前記電線保持部と一体に形成され前記接点導体を囲う非導電性の囲い部と、
前記接点導体が他の電線スプライス具の孔に挿入された状態及び他の電線スプライス具の導体が前記差込孔に挿入された状態のうちの少なくとも一方の状態で他の電線スプライス具の一部と係り合うことにより他の電線スプライス具連結状態維持するロック機構と、を備え
前記差込孔は前記電線保持部の四方の側面のうちの前記キャビティ各々の入口が形成された側面に対し反対側の側面に形成されており、
前記接点導体は前記電線保持部における前記差込孔が形成された側面から突出して形成されている、電線スプライス具。
【請求項2】
それぞれ複数の電線を含む第一電線群及び第二電線群と、
前記第一電線群の端部に取り付けられ前記第一電線群の複数の電線を電気的に接続する第一電線スプライス具と、
前記第二電線群の端部に取り付けられ前記第二電線群の複数の電線を電気的に接続し前記第一電線スプライス具と同じ構造を有する第二電線スプライス具と、を備え、
前記第一電線スプライス具及び前記第二電線スプライス具各々は、
それぞれ前記電線の端部が挿入された複数のキャビティと導体が挿入される差込孔とが形成された非導電性の電線保持部と、
前記電線保持部から突出して形成された接点導体と、
前記電線保持部に内包され前記キャビティ各々に挿入された前記電線各々と前記差込孔に挿入された相手側の電線スプライス具の前記接点導体とを電気的に接続する短絡導体と、
前記電線保持部と一体に形成され、前記接点導体を、前記差込み孔が形成された部分を避けて3方から囲う非導電性の囲い部と、
前記第一電線スプライス具の前記接点導体が前記第二電線スプライス具の孔に挿入された状態及び前記第二電線スプライス具の前記接点導体が前記第一電線スプライス具の前記差込孔に挿入された状態の両方の状態で前記第一電線スプライス具及び前記第二電線スプライス具のうち相手側の一部と係り合うことにより前記第一電線スプライス具と前記第二電線スプライス具とを連結状態に保持するロック機構と、を備えるワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を電気的に接続する電線スプライス具及びそれを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、複数の電線が電気的に接続されたスプライス部が形成される場合がある。例えば、ワイヤハーネスが複数の要素ワイヤハーネスの組み合わせにより構成される場合に、要素ワイヤハーネス各々の一部の電線の芯線どうしを接続するスプライス部が形成される。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるスプライス部は、溶接又は端子金具の圧着によって複数の電線の芯線どうしが接合された部分である。また、特許文献2には、コネクタを用いてスプライス部を形成するアース機構が示されている。このアース機構において、コネクタは複数の電線の端部を保持し、コネクタと合体したバスバーが、複数の電線を電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−77834号公報
【特許文献2】特開2012−115019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線群のスプライス部どうしをさらに電気的に接続したいというニーズがある。例えば、複数の上流工程各々において一次スプライス部を含む要素ワイヤハーネスが製造され、下流工程において、複数の要素ワイヤハーネス各々の一次スプライス部どうしが接続された二次スプライス部が形成される場合が考えられる。
【0006】
一方、電線群のスプライス部を形成するために必要な工数及び部品の種類は少ないことが望ましい。例えば、特許文献2に示されるコネクタ及びバスバーを含むスプライス具が採用されることが考えられる。この場合、電線群のスプライス部を形成するための工数は少なくて済む。しかしながら、特許文献2には、複数のスプライス部をさらに電気的に接続するための構造は示されていない。
【0007】
また、2つの一次スプライス部各々を構成するコネクタどうしを連結するとともに各コネクタのバスバーどうしを電気的に接続する中継コネクタが採用されることも考えられる。この場合、中継コネクタが必要となるため部品の種類が増えてしまう。
【0008】
本発明は、電線群のスプライス部を形成すること及び必要に応じてスプライス部どうしを接続することを少ない工数及び少ない部品の種類で可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1態様に係る電線スプライス具は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、それぞれ電線の端部が挿入される複数のキャビティと他の電線スプライス具の導体が挿入される差込孔とが形成された非導電性の電線保持部である。
(2)第2の構成要素は、上記電線保持部から突出して形成された接点導体である。
(3)第3の構成要素は、上記電線保持部に内包され上記キャビティ各々に挿入される上記電線各々と上記接点導体と上記差込孔に挿入される他の電線スプライス具の導体とを電気的に接続する短絡導体である。
(4)第4の構成要素は、上記電線保持部と一体に形成され上記接点導体を囲う非導電性の囲い部である。
(5)第5の構成要素は、上記接点導体が他の電線スプライス具の孔に挿入された状態及び他の電線スプライス具の導体が上記差込孔に挿入された状態のうちの少なくとも一方の状態で他の電線スプライス具の一部と係り合うことにより他の電線スプライス具連結状態維持するロック機構である。
【0010】
また、第1の態様に係る電線スプライス具は、上記差込孔は上記電線保持部の四方の側面のうちの上記キャビティ各々の入口が形成された側面に対し反対側の側面に形成されている。さらに、上記接点導体は上記電線保持部における上記差込孔が形成された側面から突出して形成されている。
【0012】
また、上記課題を解決するための第態様に係るワイヤハーネスは、それぞれ複数の電線を含む第一電線群及び第二電線群と、上記第一電線群の端部に取り付けられ上記第一電線群の複数の電線を電気的に接続する第一電線スプライス具と、上記第二電線群の端部に取り付けられ上記第二電線群の複数の電線を電気的に接続し上記第一電線スプライス具と同じ構造を有する第二電線スプライス具と、を備えている。そして、上記第一電線スプライス具及び上記第二電線スプライス具各々は、それぞれ上記電線の端部が挿入された複数のキャビティと導体が挿入される差込孔とが形成された非導電性の電線保持部と、上記電線保持部から突出して形成された接点導体と、上記電線保持部に内包され上記キャビティ各々に挿入された上記電線各々と上記差込孔に挿入された相手側の電線スプライス具の上記接点導体とを電気的に接続する短絡導体と、上記電線保持部と一体に形成され、上記接点導体を、上記差込み孔が形成された部分を避けて3方から囲う非導電性の囲い部と、上記第一電線スプライス具の上記接点導体が上記第二電線スプライス具の孔に挿入された状態及び上記第二電線スプライス具の上記接点導体が上記第一電線スプライス具の上記差込孔に挿入された状態の両方の状態で上記第一電線スプライス具及び上記第二電線スプライス具のうち相手側の一部と係り合うことにより上記第一電線スプライス具と上記第二電線スプライス具とを連結状態に保持するロック機構とを備える。
【発明の効果】
【0013】
上記の各態様によれば、複数の電線の端部が電線保持部のキャビティに挿入されるだけで、各電線の端部が電線保持部に内包された短絡導体によって電気的に接続される。これにより、電線群の端部にスプライス部が形成される。この場合、スプライス部が電線群の端部に対する溶接又は圧着金具の圧着によって形成される場合に比べ、スプライス部を形成するための工数は少なくて済む。
【0014】
また、上記の各態様に係る電線スプライス具は、同じ構造を有する他の電線スプライス具と連結された状態を維持するロック機構も備えている。そのため、同じ構造を有する2つの電線スプライス具を連結させることも容易である。また、2つの電線スプライス具を連結させるための追加の部品は不要である。
【0015】
さらに、上記の各態様に係る電線スプライス具は、他の電線スプライス具の孔(差込孔)に挿入される接点導体と、他の電線スプライス具の導体(接点導体)が挿入される差込孔とを有している。差込孔に挿入された導体は電線保持部内の短絡導体と電気的に接続される。従って、2つの電線スプライス具を連結させるだけで、2つの電線スプライス具各々に接続された電線群どうしが電気的に接続される。
【0016】
また、上記の各態様に係る電線スプライス具は、電線保持部から突出して形成された接点導体を囲う非導電性の囲い部を備えている。そのため、電線スプライス具が他の電線スプライス具と連結されずに単独で使用された場合でも、電線保持部から突出した接点導体が周囲の物に接触して当該接点導体又は周囲の物が損傷したり、不要な電気的短絡を引き起こしたりすることは防止される。
【0017】
以上に示したことから、上記の各態様に係る電線スプライス具が採用されれば、電線群のスプライス部を形成すること及び必要に応じてスプライス部どうしを接続することを少ない工数及び少ない部品の種類で可能とすることが可能となる。
【0018】
また、第1態様に係る電線スプライス具どうしが連結される場合、2つの電線スプライス具各々に接続される2組の電線群が直列に並ぶ状態となる。従って、第1態様は、それぞれスプライス部が形成された2組の電線群が直列に並ぶ状態で各電線群のスプライス部を接続したい場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る2つの電線スプライス具1の斜視図である。
図2】電線スプライス具1の一部をなす電線保持部2の斜視図である。
図3】第1実施形態に係るワイヤハーネス10の斜視図である。
図4】第2実施形態に係る2つの電線スプライス具1Aの斜視図である。
図5】電線スプライス具1Aの斜視図である。
図6】第2実施形態に係るワイヤハーネス10Aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態において、電線スプライス具は、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、複数の電線が電気的に接続されたスプライス部を作るために用いられる。
【0024】
<第1実施形態>
まず、図1を参照しつつ、第1実施形態に係るワイヤハーネス10及びそれに含まれる第1実施形態に係る電線スプライス具1について説明する。図1には対向配置された2つの電線スプライス具1及びそれら各々に接続された2組の電線群90が示されている。
【0025】
<電線群>
電線群90は複数の電線9を含み、電線9各々は芯線と芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを有する絶縁電線である。
【0026】
<電線スプライス具>
図1に示されるように、電線スプライス具1は、電線保持部2、短絡導体4、接点導体5、囲い部3及びロック機構6を備えている。
【0027】
<電線保持部>
電線保持部2は、複数のキャビティ21と1つの差込孔22とが形成された非導電性の部材である。電線保持部2は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂などの非導電性の合成樹脂からなる成形部材である。
【0028】
電線保持部2は後述する囲い部3と一体に形成されているが、便宜上、図2には囲い部3が除かれた電線保持部2の斜視図が示されている。従って、図2は、電線保持部2と囲い部3とが分離可能に構成されていることを意味する図ではない。
【0029】
図1,2に示される例では、電線保持部2の外形は概ね直方体状である。電線保持部2は、電線群90のスプライス部を形成するためのコネクタである。
【0030】
電線保持部2において、複数のキャビティ21各々は、電線9の端部が挿入される部分である。例えば、電線9の端部には、電線9の芯線に連結された端子金具が取り付けられており、電線9における端子金具が取り付けられた部分が、電線保持部2のキャビティ21に挿入されている。
【0031】
電線保持部2は、複数のキャビティ21各々に挿入された電線9の端部がキャビティ21内から抜けるのを防ぐ不図示のリテーナを備えている。複数のキャビティ21各々に挿入された電線9の端部は、電線保持部2に組み合わされた不図示のリテーナと係り合うことによりキャビティ21内に保持される。
【0032】
差込孔22は、当該電線スプライス具1と同じ構造を有する他の電線スプライス具1の接点導体5が挿入される孔である。差込孔22は、電線保持部2の側面から電線保持部2内における短絡導体4が配置されている部分へ連通している。
【0033】
<接点導体>
接点導体5は、電線保持部2に保持され、電線保持部2から突出して形成された導体である。接点導体5は、電線保持部2内から電線保持部2の側面を経て電線保持部2の外側へ突出している。
【0034】
接点導体5は、電線保持部2内に位置する部分において短絡導体4と電気的に接続されている。より具体的には、接点導体5は、電線保持部2内に位置する部分において、短絡導体4と接触しているもしくは短絡導体4と繋がっている。
【0035】
接点導体5は、例えば、銅などを主成分する芯金部とその芯金部の表面に形成された錫メッキなどの金属メッキとを含む金属部材である。
【0036】
<短絡導体>
短絡導体4は、電線保持部2に内包された導体である。短絡導体4は、例えば、銅などを主成分する芯金部とその芯金部の表面に形成された錫メッキなどの金属メッキとを含む金属部材である。短絡導体4は、接点導体5における電線保持部2内に位置する部分と接触しているもしくは繋がっている。
【0037】
短絡導体4は、電線保持部2のキャビティ21各々に挿入される電線9各々と接点導体5と差込孔22に挿入される他の電線スプライス具1の接点導体5とを電気的に接続する導体である。
【0038】
例えば、短絡導体4は、キャビティ21各々に挿入された電線9の端部各々における芯線に連結された端子金具と接触する。或いは、短絡導体4が、キャビティ21各々に挿入された電線9の端部各々における芯線と直接接触することも考えられる。
【0039】
また、短絡導体4の一部は、電線保持部2における差込孔22の内側の開口付近に位置している。そして、当該電線スプライス具1の短絡導体4の一部が、差込孔22に挿入された他の電線スプライス具1の接点導体5と接触する。
【0040】
短絡導体4及び接点導体5は、例えば成形された合成樹脂の電線保持部2に対して組み付けられることにより電線保持部2と合体している。或いは、電線保持部2が、短絡導体4及び接点導体5をインサート部とするインサート成形によって成形され、これにより電線保持部2、短絡導体4及び接点導体5が合体していることも考えられる。
【0041】
<囲い部>
囲い部3は、接点導体5を囲う非導電性の部分である。囲い部3は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂などの非導電性の合成樹脂からなる成形部材である。
【0042】
囲い部3は、電線保持部2と一体に形成されている。例えば、電線保持部2及び囲い部3は、一体成形された一連の部材であることが考えられる。なお、囲い部3が、成形された合成樹脂の電線保持部2に対して組み付けられることにより電線保持部2と一体に構成されてもよい。
【0043】
囲い部3は、接点導体5の突出方向に直交する四方のうちの少なくとも3方向において接点導体5を囲うことが望ましい。図1に示される例では、囲い部3は接点導体5の周囲におけ3方向において接点導体5を囲っている。
【0044】
<ロック機構>
ロック機構6は、他の電線スプライス具1のロック機構6と係り合うことにより当該電線スプライス具1と他の電線スプライス具1とを連結状態に維持する機構である。図3は連結状態にある2つの電線を含むワイヤハーネス10の斜視図である。
【0045】
図1,3に示される例では、ロック機構6は、電線保持部2に形成された突起部41と囲い部3に形成された孔部62とを含む。2つの電線スプライス具1の連結状態において、一方の電線スプライス具1の突起部61が他方の電線スプライス具1の孔部62に嵌り込む。これにより、突起部61と孔部62とが係り合い、2つの電線スプライス具1が連結状態に維持される。
【0046】
便宜上、以下の説明において、連結された2つの電線スプライス具1のそれぞれを第一電線スプライス具1X及び第二電線スプライス具1Yと称する。また、第一電線スプライス具1X及び第二電線スプライス具1Yの各々に接続された電線群90各々のことを第一電線群90X及び第二電線群90Yと称する。
【0047】
ワイヤハーネス10は、それぞれ複数の電線9を含む第一電線群90X及び第二電線群90Yと、第一電線スプライス具1X及び第二電線スプライス具1Yとを備える。第一電線スプライス具1Xは、第一電線群90Xの端部に取り付けられ第一電線群90Xの複数の電線9を電気的に接続する。同様に、第二電線スプライス具1Yは、第二電線群90Yの端部に取り付けられ第二電線群90Yの複数の電線9を電気的に接続する。第二電線スプライス具1Yは、第一電線スプライス具1Xと同じ構造を有する。
【0048】
本実施形態においては、差込孔22は電線保持部2の四方の側面のうちのキャビティ21各々の入口が形成された側面に対し反対側の側面に形成されている。さらに、接点導体5は電線保持部2における差込孔22が形成された側面から突出して形成されている。
【0049】
キャビティ21、差込孔22及び接点導体5が上記の位置関係にある場合、以下のようになる。即ち、第一電線スプライス具1Xと第二電線スプライス具1Yとが連結状態にあるとき、第一電線スプライス具1Xの接点導体5が第二電線スプライス具1Yの差込孔22に挿入されており、かつ、第二電線スプライス具1Yの接点導体5が第一電線スプライス具1Xの差込孔22に挿入されている。
【0050】
従って、第一電線スプライス具1Xと第二電線スプライス具1Yとが連結状態にあるとき、第一電線群90X及び第二電線群90Yは、短絡導体4及び接点導体5を介して電気的に接続されている。
【0051】
さらに、図3に示されるように、電線スプライス具1どうしが連結される場合、2つの電線スプライス具1各々に接続される2組の電線群90が直列に並ぶ状態となる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、図4〜6を参照しつつ、第2実施形態に係るワイヤハーネス10A及びそれに含まれる第2実施形態に係る電線スプライス具1Aについて説明する。図4は2つの電線スプライス具1Aの斜視図である。図4には対向配置された2つの電線スプライス具1A及びそれら各々に接続された2組の電線群90が示されている。図5は電線スプライス具1Aの斜視図である。図4の斜視図及び図5の斜視図は、それぞれ異なる方向から見た斜視図である。図6はワイヤハーネス10Aの斜視図である。
【0053】
電線スプライス具1Aは、図1,3に示された電線スプライス具1と比較して、電線保持部2に対する囲い部3及び接点導体5の配置位置が異なっている。図4〜6において、図1〜3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線スプライス具1A及びワイヤハーネス10Aにおける電線スプライス具1及びワイヤハーネス10と異なる点についてのみ説明する。
【0054】
電線スプライス具1Aも電線スプライス具1と同様に他の電線スプライス具1Aと連結可能である。便宜上、以下の説明において、連結された2つの電線スプライス具1Aのそれぞれを第一電線スプライス具1AX及び第二電線スプライス具1AYと称する。また、第一電線スプライス具1AX及び第二電線スプライス具1AYの各々に接続された電線群90各々のことを第一電線群90X及び第二電線群90Yと称する。
【0055】
ワイヤハーネス10Aは、それぞれ複数の電線9を含む第一電線群90X及び第二電線群90Yと、第一電線スプライス具1AX及び第二電線スプライス具1AYとを備える。第一電線スプライス具1AXは、第一電線群90Xの端部に取り付けられ第一電線群90Xの複数の電線9を電気的に接続する。同様に、第二電線スプライス具1AYは、第二電線群90Yの端部に取り付けられ第二電線群90Yの複数の電線9を電気的に接続する。第二電線スプライス具1AYは、第一電線スプライス具1AXと同じ構造を有する。
【0056】
図4〜6に示される例においても、ロック機構6は、電線保持部2に形成された突起部61と囲い部3に形成された孔部62とを含む。2つの電線スプライス具1の連結状態において、一方の電線スプライス具1Aの突起部61が他方の電線スプライス具1Aの孔部62に嵌り込む。これにより、突起部61と孔部62とが係り合い、2つの電線スプライス具1Aが連結状態に維持される。
【0057】
電線スプライス具1Aにおいて、電線保持部2の差込孔22は、電線保持部2の四方の側面のうちのキャビティ21各々の入口が形成された側面に隣接する側面に形成されている。さらに、接点導体5は電線保持部2の四方の側面のうちの差込孔22が形成された側面に対し反対側の側面から突出して形成されている。
【0058】
電線保持部2の四方の側面のうち複数のキャビティ21の入口が形成された側面を基準側面とした場合に、図4〜6に示される例は以下のことを示している。即ち、差込孔22は、基準側面が向く方向に対して直交する方向を向く側面に形成されている。さらに、接点導体5は、差込孔22が形成された側面が向く方向に対して反対を向く側面に形成されている。
【0059】
電線スプライス具1Aのロック機構6において、突起部61は、当該電線スプライス具1Aの差込孔22に挿入される接点導体5を備える他の電線スプライス具1Aを連結状態に維持する。さらに、電線スプライス具1Aのロック機構6において、孔部62は、当該電線スプライス具1Aの接点導体5の挿入先となる差込孔22が形成された他の電線スプライス具1Aを連結状態に維持する。
【0060】
キャビティ21、差込孔22及び接点導体5が上記の位置関係にある場合、以下のようになる。即ち、第一電線スプライス具1AXと第二電線スプライス具1AYとが連結状態にあるとき、第一電線スプライス具1AXの接点導体5が第二電線スプライス具1AYの差込孔22に挿入されている。
【0061】
従って、第一電線スプライス具1AXと第二電線スプライス具1AYとが連結状態にあるとき、第一電線群90X及び第二電線群90Yは、短絡導体4及び接点導体5を介して電気的に接続されている。
【0062】
さらに、図6に示されるように、電線スプライス具1Aどうしが連結される場合、2つの電線スプライス具1各々に接続される2組の電線群90が並列に並ぶ状態となる。
【0063】
ところで、第二電線スプライス具1AYの接点導体5は、第一電線スプライス具1AXに対して反対側に位置している。そのため、第二電線スプライス具1AYの接点導体5は、第一電線スプライス具1AXの差込孔22に挿入されない。
【0064】
従って、第二電線スプライス具1AYは、その接点導体5の挿入先となる差込孔22が形成された不図示の他の電線スプライス具1Aと連結可能である。
【0065】
<効果>
電線スプライス具1,1Aが採用されれば、複数の電線9の端部が電線保持部2のキャビティ21に挿入されるだけで、各電線9の端部が電線保持部2に内包された短絡導体4によって電気的に接続される。これにより、電線群90の端部にスプライス部が形成される。この場合、スプライス部が電線群90の端部に対する溶接又は圧着金具の圧着によって形成される場合に比べ、スプライス部を形成するための工数は少なくて済む。
【0066】
また、電線スプライス具1,1Aは、同じ構造を有する他の電線スプライス具1,1Aと連結された状態を維持するロック機構6も備えている。そのため、同じ構造を有する2つの電線スプライス具1,1Aを連結させることも容易である。また、2つの電線スプライス具1,1Aを連結させるための追加の部品は不要である。
【0067】
さらに、電線スプライス具1,1Aは、他の電線スプライス具1,1Aの差込孔22に挿入される接点導体5と、他の電線スプライス具1,1Aの接点導体5が挿入される差込孔22とを有している。差込孔22に挿入された接点導体5は電線保持部2内の短絡導体4と電気的に接続される。従って、2つの電線スプライス具1,1Aを連結させるだけで、2つの電線スプライス具1,1A各々に接続された電線群90どうしが電気的に接続される。
【0068】
また、電線スプライス具1,1Aは、接点導体5における電線保持部2から突出して形成された部分を囲う非導電性の囲い部3を備えている。そのため、電線スプライス具1,1Aが他の電線スプライス具1,1Aと連結されずに単独で使用された場合でも、電線保持部2から突出した接点導体5が周囲の物に接触して当該接点導体5又は周囲の物が損傷したり、不要な電気的短絡を引き起こしたりすることは防止される。
【0069】
以上に示したことから、電線スプライス具1,1Aが採用されれば、電線群90のスプライス部を形成すること及び必要に応じてスプライス部どうしを接続することを少ない工数及び少ない部品の種類で可能とすることが可能となる。
【0070】
また、電線スプライス具1どうしが連結される場合、2つの電線スプライス具1各々に接続される2組の電線群90が直列に並ぶ状態となる(図3参照)。従って、電線スプライス具1は、それぞれスプライス部が形成された2組の電線群90が直列に並ぶ状態で各電線群90のスプライス部を接続したい場合に好適である。
【0071】
一方、電線スプライス具1Aどうしが連結される場合、複数の電線スプライス具1A各々に接続される複数組の電線群90が並列に並ぶ状態となる(図6参照)。従って、電線スプライス具1Aは、それぞれスプライス部が形成された2組の電線群90が並列に並ぶ状態で各電線群90のスプライス部を接続したい場合に好適である。
【0072】
さらに、電線スプライス具1Aが採用される場合、接点導体5は、差込孔22が形成された側面に対し反対の側面から突出している。この場合、電線スプライス具1Aは、一の側面側において当該電線スプライス具1Aの接点導体5を通じて他の1つ目の電線スプライス具1Aと連結可能であり、さらに、反対側の側面において他の2つ目の電線スプライス具1Aの接点導体5を通じて他の2つ目の電線スプライス具1Aと連結可能である。そのため、電線スプライス具1Aが採用される場合、3つ以上の電線スプライス具1Aを連結することも可能となる。
【0073】
<その他>
電線スプライス具1,1Aにおいて、囲い部3が接点導体5の四方を囲うことも考えられる。この場合、囲い部3を構成する四方の隔壁のうちの1つが嵌り込む切れ込みが電線保持部2に形成されていればよい。
【0074】
また、電線スプライス具1,1Aにおいて、ロック機構6は、図1,6に示される構造と異なる構造を有していてもよい。例えば、ロック機構6が、囲い部3に形成された突起部と電線保持部2に形成された凹部とを含むことが考えられる。この場合、2つの電線スプライス具1,1Aのうちの一方の囲い部3の突起部が他方の電線保持部2の凹部に嵌り込むことにより、2つの電線スプライス具1,1Aが連結状態に維持される。
【0075】
なお、本発明に係る電線スプライス具及びワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A 電線スプライス具
1X,1AX 第一電線スプライス具
1Y,1AY 第二電線スプライス具
2 電線保持部
3 囲い部
4 短絡導体
5 接点導体
6 ロック機構
9 電線
10,10A ワイヤハーネス
21 キャビティ
22 差込孔
61 突起部
62 孔部
90 電線群
90X 第一電線群
90Y 第二電線群
図1
図2
図3
図4
図5
図6