(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボス部(20)の柱状突出部(22)に形成された駆動軸嵌合穴(23)と前記駆動モータ(9)の駆動軸(92)とは、少なくとも部分的に非円形断面に形成された箇所において嵌合するように構成されている
請求項1又は請求項2に記載の空気調和機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動モータを断熱材で覆うという方法は、部品点数が増加するばかりでなく、駆動モータを断熱材で覆う作業者に熟練度が要求されるとともに、作業工数が増加するため、空気調和機のコストアップの要因となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み成されたものであって、駆動モータの結露を抑制するための対策費を軽減した空気調和機を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決する空気調和機は、熱交換された空気を吹き出す吹出口と、前記吹出口に配置された吹出空気の風向を可変とするための風向変更板と、前記風向変更板の風向姿勢を変更制御する駆動モータとを備え、前記風向変更板は、前記駆動モータの側部に駆動軸を嵌合するボス部を有し、前記ボス部は、前記風向変更板の側端部から前記吹出口を構成する風路形成壁の方向に突出する柱状突出部と、この柱状突出部内に形成された前記駆動軸を嵌合する駆動軸嵌合穴とを有し、前記風路形成壁は、前記ボス部と前記駆動軸との結合部を貫通させる貫通部を有し、前記貫通部は、前記柱状突出部の外周側面を囲うように前記風路形成壁の平面部から前記駆動モータ側に突出して形成された円筒状突出部と、前記柱状突出部の外周面と前記円筒状突出部の内周面との間に形成される円筒状隙間の前記駆動モータ側を覆う、前記円筒状突出部の先端に形成された内鍔部とを有し、前記内鍔部は、前記駆動モータから突出する前記駆動軸の軸受部を貫通させる貫通孔を有
し、前記駆動モータは、前記軸受部が前記貫通孔内に位置するように風路形成壁に固定され、前記貫通孔の内周面と前記軸受部の外周面との隙間は、前記円筒状隙間より小さくなるように構成されているものである。
【0008】
このような構成によれば、風路形成壁の貫通部において、ボス部の柱状突出部の外周面と円筒状突出部の内周面との間に円筒状隙間が形成されるが、この円筒状隙間は円筒状突出部の先端に形成された内鍔部により覆われる。したがって、風向変更板と吹出口側方の駆動モータとを接続するために風路形成壁に貫通部が設けられるが、この貫通部における吹出口内から吹出口側方の駆動モータへの冷気の漏れは、この内鍔部により遮蔽され、緩和される。
【0010】
また、このような構成によれば、駆動モータが風路形成壁の側面に固定されているので、駆動モータの軸心位置と風路形成壁に形成される貫通部の軸心位置との公差を小さくすることができる。これにより、貫通孔の内周面と前記駆動軸の外周面との隙間を小さくすることができる。したがって、吹出口の風路形成壁の貫通部における駆動モータへの冷気の流れは、前記の内鍔部の表面部による遮蔽効果に加え、この内鍔部の貫通孔における冷気漏れに対する抵抗を大きくすることができるため、より一層冷気の漏れを緩和することができる。
【0011】
前記駆動モータは、風路形成壁の側面に固定され、前記駆動モータの前記駆動軸側の側面は、前記内鍔部の表面部に対し当接又は製作公差程度の隙間を残して取り付けられていることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、駆動モータが風路形成壁の側面に固定されているので、駆動モータの駆動軸側の側面と内鍔部の平面部との間隔公差を小さくすることができる。したがって、駆動モータの駆動軸側の側面を内鍔部の表面部に対し当接又は製作公差程度の隙間を残して取り付けることができ、これにより冷気の駆動モータ側への漏れをさらに少なくすることができる。
【0013】
前記ボス部の円筒状突出部に形成された駆動軸嵌合穴と前記駆動モータの駆動軸とは、少なくとも部分的に非円形断面に形成された箇所において嵌合するように構成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、ボス部
の円筒状突出部に形成された駆動軸嵌合穴に対し駆動モータの駆動軸を挿入することのみにより、駆動モータと風向変更板とを回り止めを行いながら連結することができる。したがって、駆動モータと風向変更板との連結構造を簡略化することができるとともに、連結作業を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記発明によれば、風向変更板と吹出口外部の駆動モータと
を接続するために必要とされる風路形成壁の貫通孔部における吹出口から駆動モータへの冷気の漏れ
は、内鍔部の遮蔽効果に加え、貫通孔における冷気漏れに対する抵抗が大きくなるため、より一層緩和される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る空気調和機の具体例を図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本発明は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0018】
[本空気調和機の全体構成]
図1の側断面図に示すように、本実施の形態に係る空気調和機は、壁掛け型の室内機であって、室内ケーシング1の内部にクロスフローファン2と室内熱交換器3とが収納されている。
【0019】
室内ケーシング1は、背面から下方前方の吹出口にかけての壁面やこの壁面の側方に形成される側壁が一体化された底フレーム4と、前面側から見て外装ケースとして機能する前面パネル5とからなる。この底フレーム4及び前面パネル5は、樹脂成形品である。
【0020】
底フレーム4は、背面上方の背壁、背面下方部における背壁としての機能を兼用するクロスフローファンのファンケーシング4a、室内熱交換器3の吹出側の風路を形成する風路側壁(不図示)、室内熱交換器3の下方に取り付けられるドレンパン4b、ファンケーシング4aに連なる吹出口6を形成する風路形成壁10などが一体的に形成されている。
【0021】
吹出口6は、室内ケーシング1の中央部に配置されたクロスフローファン2に連通し、室内ケーシング1の下方から前方に向かって空気を吹き出す形状に形成されている。また、吹出口6には、吹出空気の上下方向の風向を駆動モータの駆動により調節する風向変更板としての水平羽根7と、吹出空気の左右方向の風向を手動にて調節する垂直羽根8とを備えている。風向変更板としての水平羽根7の風向姿勢を変更する駆動モータ9(
図3参照)は、吹出口6の風路形成壁10(
図2、
図3参照)の外側に位置する室内ケーシング1内に取り付けられ、駆動モータ9を介して水平羽根7に連結されている。
【0022】
前面パネル5は、底フレーム4の前面側に取り付けられるものであって外装ケースとしての前面、天面及び側面を備えている。そして、前面パネル5は、上面に吸込口12を備えている。また、前面パネル5の内方において、室内熱交換器3の前面にはエアフィルタ13が取り付けられている。また、前面パネル5は、前面にエアフィルタ13のメンテナンスを可能とするサービス蓋11が取り付けられている。サービス蓋11は、上方部を支点として前面を回転式に開く構造を有しており、容易にエアフィルタ13をサービスできるように形成されている。
【0023】
クロスフローファン2は、回転軸が水平方向となるように、室内ケーシング1の略中央部に配置され、前方及び上方から空気を吸込み下方向から前方の吹出口6に向かって吹き出すように形成されている。
【0024】
室内熱交換器3は、クロスフローファン2の前方に3段階に折曲した第1分割熱交換器3aと、クロスフローファン2の後方上方部に位置する第2分割熱交換器3bとから形成されている。また、第1分割熱交換器3aと第2分割熱交換器3bとは、クロスフローファン2の上部において端面がV字状を成すように連結されている。このV字状の連結部16に隙間ができないようにすることは、このような組み合わせものの構造物において困難である。そのため、この連結部16にシール部材17が取り付けられている。シール部材17は、室内空気が冷却されずに室内熱交換器をバイパスすることを抑制するものである。以上のように構成される室内熱交換器3は、底フレーム4の風路側壁、背壁、ドレンパン部分などに支持されるように取り付けられている。
【0025】
[風向変更板と駆動モータとの連結部の構造]
次に、吹出口6における水平羽根7を駆動する駆動モータ9と風向変更板、この場合水平羽根7とが、風路形成壁10を介して連結されている連結部分の構造詳細について説明する。
【0026】
図1に示すように、水平羽根7は、2点鎖線で示す全閉状態において、底フレーム4の外面と同一の外面を形成している。また、
図2、
図3に示すように、水平羽根7は、左右の端部に立ち上げられたボス部20を中心として、前面から見て右側のボス部20に連結される駆動モータ9により前端が下方向に回転移動するように軸支されている。
【0027】
次に、水平羽根7と駆動モータ9との連結部の詳細構造を説明する。
図3及び
図4に示すように、水平羽根7は、右端部においてボス部20を支持する支持壁21が水平羽根7に対し略垂直方向に立ち上げられている。そして、このボス部20は、水平羽根7から所定寸法離れた位置で駆動モータ9の駆動軸92を嵌合するように形成されている。
【0028】
図2、
図4に示すように、吹出口6の右側壁を形成する風路形成壁10は、ボス部20を支持する支持壁21と小さな間隔をあけて設けられている。
図3に示すように、風向変更板としての水平羽根7の風向姿勢を変更制御する駆動モータ9は、ステッピングモータであって、風路形成壁10の前面側から見て吹出口6の右側の冷却されない空気が漂う雰囲気中に取り付けられている。
【0029】
図3に示すように、ボス部20は、支持壁21の一面、この場合前方から見て右面から吹出口6を構成する風路形成壁10の方向に柱状突出部22を突出している。この柱状突出部22は、軸心部に駆動モータ9の駆動軸92を嵌合する駆動軸嵌合穴23が形成されている。
【0030】
図5に示すように、駆動モータ9は、駆動モータ本体の水平羽根7側の側面に、駆動軸92を軸支する軸受部91を突出させている。そして、この軸受部91から駆動軸92を水平羽根7側へ突出させている。駆動軸92は、軸受部側が断面長円形の大径軸部92aであり、その先端が断面円形の小径軸部92bとなっている。
【0031】
図3に示すように、ボス部20の柱状突出部22に形成される駆動軸嵌合穴23は、駆動モータ9の駆動軸92における大径軸部92aに嵌合する大径嵌合穴23aが柱状突出部22の先端側に形成され、駆動モータ9の小径軸部92bに嵌合する小径嵌合穴23bが大径嵌合穴23aの奥側に形成されている。
【0032】
図3及び
図6に示すように、ボス部20における柱状突出部22の大径嵌合穴23aに嵌合される駆動モータ9の大径軸部92aは、断面長円形であり、これに対する大径嵌合穴23aも断面長円形の穴であって、大径軸部92aが大径嵌合穴23aに嵌合されている。
【0033】
図3及び
図7に示すように、ボス部における柱状突出部22の小径嵌合穴23bに嵌合される駆動モータ9の小径軸部92bは、断面円形であり、これに対する小径嵌合穴23bも断面円形の穴であって、小径軸部92bが小径嵌合穴23bに嵌合されている。
【0034】
図5に示すように、駆動モータ9は一対の取付脚94を突出させている。取付脚94には取付穴95が形成されている。
この駆動モータ9は、次のように風路形成壁10に対し取り付けられている。
【0035】
図3に示すように、一方の取付脚94(
図3における上方の脚)は、風路形成壁10から突出する取付脚支持部51に当接されるとともに、取付脚94の表面規制壁52と、側面規制壁53等に囲まれている。また、他方の取付脚94は、風路形成壁10から突出する取付ねじ座部54に当接され、取付穴95を介して取付ねじ座部54にねじ止めされて風路形成壁10に固定されている。このようにして、駆動モータ9は、1本のねじにより風路形成壁10に対し精度よく取り付けられている。
【0036】
そして、風路形成壁10には、ボス部20と駆動軸92との結合部を貫通させる貫通部30が形成されている。
貫通部30は、ボス部20の柱状突出部22の外周側面を囲むように、風路形成壁10の平面部から駆動モータ9側に突出して形成された円筒状突出部31を有している。また、柱状突出部22の外周面と円筒状突出部31の内周面との間には水平羽根7を回転可能とするために隙間が円筒状に形成されている。本明細書においては、この隙間を円筒状隙間S1と称する。また、この円筒状隙間S1の駆動モータ9側の端面から漏れる冷気の通路を遮断するように、円筒状突出部31の先端を内鍔部32に形成している。
【0037】
すなわち、内鍔部32の中心部には、駆動モータ9の駆動軸側の側面96から突出する軸受部91を貫通させる貫通孔33が形成されているが、この貫通孔33の内周面と軸受部91の外周面との隙間S2が、円筒状突出部31の内周面と柱状突出部22の外周面との間に形成される円筒状隙間S1より小さくなるように構成されている。また、駆動モータ9の駆動軸側の側面96が、内鍔部32の表面部に対し当接して、又は製作公差程度の隙間を残して取り付けられている。
【0038】
[作用]
次に、上記のように構成された本空気調和機の作用として、本空気調和機の冷房運転の動作について説明する。
【0039】
空気調和機が冷房運転されると、クロスフローファン2が運転される。また、室外機(不図示)の運転に伴い、室内熱交換器3が蒸発器として作用する。一方、室内空気は、白抜き矢印Fのように、前面パネル5に形成された吸込口12から室内空気を吸い込まれる。そして、機内に吸い込まれた室内空気は、蒸発器として作用する室内熱交換器3で冷却され、冷風となって吹出口6から白抜き矢印Gのように前方に向けて吹き出される。このとき水平羽根7は、駆動モータ9としてのステッピングモータによりユーザの操作指示に従って設定された角度に移動される。
【0040】
このような作用をする冷房運転において、水平羽根7と駆動モータ9との連結部においては、吹出口6を通過する冷気の一部が、ボス部20の柱状突出部22の外周面と円筒状突出部31の内周面との間に形成される円筒状隙間S1から駆動モータ9の収納スペースへ漏れようとする。ところが、この円筒状隙間S1の駆動モータ側の端面から漏れる冷気を遮蔽するように、円筒状突出部31の先端に内鍔部32が形成されている。すなわち、内鍔部32の貫通孔33の内周面と、貫通孔33に挿入される駆動モータ9の軸受部91の外周面との隙間S2が、前記S1より小さくなるように形成されている。したがって、柱状突出部22の外周面と円筒状突出部31の内周面との間に形成される円筒状隙間S1は、貫通孔33の内周面と軸受部91の外周面との隙間S2が小さいため行き止まり状態となる。
【0041】
さらに、駆動モータ9の側面96が内鍔部32の表面部に対し当接して、又は製作公差程度の隙間を残して取り付けられている。このため、柱状突出部22の外周面と円筒状突出部31の内周面との間に形成される円筒状隙間S1が、この構成によってもより一層厳しい行き止まり状態となる。このように、冷気漏れ通路を遮断する構成が2段階に構成されているため、円筒状隙間S1から駆動モータ9の設置空間への流れが殆ど絶たれる。これにより、駆動モータ9の冷却が緩和される。
【0042】
[実施の形態の効果]
本実施の形態に係る空気調和機は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
【0043】
(1)風路形成壁10の貫通部30において、ボス部20の柱状突出部22の外周面と円筒状突出部31の内周面との間に形成される円筒状隙間S1が円筒状突出部31の先端に形成された内鍔部32により覆われる。したがって、風路形成壁10の貫通部30における吹出口6から駆動モータ9への冷気の漏れは、この内鍔部32により遮蔽され、緩和される。
【0044】
(2)駆動モータ9が風路形成壁10の側面に固定されているので、駆動モータ9の軸心位置と風路形成壁10に形成される貫通部30の軸心位置との公差を小さくすることができ、これにより貫通孔33の内周面と駆動軸92の外周面との隙間S2を小さくすることができる。したがって、風路形成壁10の貫通部30における駆動モータ9への冷気の流れは、内鍔部32の表面部による遮蔽効果に加え、内鍔部32の貫通孔33における冷気漏れに対する抵抗を大きくすることができるため、より一層冷気の漏れを緩和することができる。
【0045】
(3)駆動モータ9が風路形成壁10の側面に固定されているので、駆動モータ9の駆動軸側の側面96と内鍔部32の平面部との間隔公差を小さくすることができる。したがって、駆動モータ9の駆動軸側の側面96を内鍔部32の表面部に対し当接又は製作公差程度の隙間を残して取り付けることができ、これにより冷気の駆動モータ9側への漏れをさらに少なくすることができる。
【0046】
(4)ボス部20の柱状突出部22に形成された駆動軸嵌合穴23と駆動モータ9の駆動軸92とは断面長円形の部分で嵌合されているので、駆動モータ9の駆動軸92を駆動軸嵌合穴23に挿入することのみにより、駆動モータ9と風向変更板としての水平羽根7とを回り止めを行いながら連結することができる。したがって、駆動モータ9と風向変更板との連結構造を簡略化することができるとともに、連結作業を簡略化することができる。
【0047】
[変形例]
上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
・前記実施の形態においては、風向変更板として水平羽根7を対象としていたが、垂直羽根8を風路形成壁10の外側に設置した駆動モータ9により左右方向に駆動する場合も同様の構造を適用することにより、駆動モータ9への結露防止を行うことができる。
【0048】
・吹出口6に水平羽根7のみを設け、この水平羽根7を駆動モータ9により駆動するものについても同様に適用することができる。
・空気調和機の例として壁掛け型の室内機を例示したが、このような空気調和機に限定されるものではない。冷房運転を行うものであれば他の形式の空気調和機についても同様に適用することができる。
【0049】
・前記実施の形態においては、駆動モータ9の駆動軸側の側面96を内鍔部32の表面部に対し当接又は製作公差程度の隙間を残して取り付けるようにしていたが、これに限定されるものではない。前記実施の形態の場合に比し冷気漏れ抑制効果は減少するが、駆動モータ9の駆動軸側の側面96が内鍔部32の表面部から離れているものでも、冷気漏れ抑制効果を発揮することができる。
【0050】
・前記実施の形態に係る空気調和機では、吹出口6の風路形成壁10が底フレーム4と一体に形成されているものであったが、そのようなものでなく底フレーム4と別体に形成されたものでもよい。