【文献】
Bioresource technology,2010年 8月11日,Vol. 102,pp.1528-1536
【文献】
Protein Engineering, Design & Selection,2008年,Vol. 21, No. 11,pp. 673-680
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
以下の(a)または(b)のアミノ酸配列を含む、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ[NAD(P)+GDH]活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、以下の(1)〜(10)からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列
(1)A159C+E170K+Q252L
(2)A159C+E170K+A246V+Q252L
(3)A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(4)Q31G+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(5)G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(6)K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(7)A159C+E170K+K179Y+Y217R+I218L+Q252L
(8)A159C+E170K+Y217R+I218L+A246V+Q252L
(9)G64A+K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(10)Q31G+G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
(b)前記(a)のアミノ酸配列において、前記170番目、252番目、31番目、64番目、111番目、159番目、179番目、217番目、218番目および246番目のアミノ酸以外の位置で、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
【発明を実施するための形態】
【0028】
配列表を除いた本明細書におけるアミノ配列中の20種類のアミノ酸残基は、一文字略記で表現している。すなわち、グリシン(Gly)はG、アラニン(Ala)はA、バリン(Val)はV、ロイシン(Leu)はL、イソロイシン(Ile)はI、フェニルアラニン(Phe)はF、チロシン(Tyr)はY、トリプトファン(Trp)はW、セリン(Ser)はS、スレオニン(Thr)はT、システイン(Cys)はC、メチオニン(Met)はM、アスパラギン酸(Asp)はD、グルタミン酸(Glu)はE、アスパラギン(Asn)はN、グルタミン(Gln)はQ、リジン(Lys)はK、アルギニン(Arg)はR、ヒスチジン(His)はH、プロリン(Pro)はPである。
【0029】
本明細書における「A159C」等の表現は、アミノ酸置換の表記法である。例えば「A159C」とは、ある特定のアミノ酸配列におけるN末端側から159番目のアミノ酸Aを、アミノ酸Cに置換することを意味する。
【0030】
また、本明細書における「Y217R+I218L」等の表現は、Y217RおよびI218Lのアミノ酸置換をアミノ酸配列に同時に導入していることを意味する。
【0031】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、以下の(a)のアミノ酸配列を含む、NAD(P)
+GDH活性を有するタンパク質である。該タンパク質は、無機塩の非存在下において70℃以上で熱安定性である。
(a)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、170番目のグルタミン酸および252番目のグルタミンが他のアミノ酸に置換され、さらに31番目のグルタミン、64番目のグリシン、111番目のリジン、159番目のアラニン、179番目のリジン、217番目のチロシン、218番目のイソロイシンおよび246番目のアラニンからなる群より選択される少なくとも1以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
【0032】
前記他のアミノ酸としては、例えば、各アミノ酸を下記のアミノ酸に置換することが好ましい。
(i)170番目のグルタミン酸:リジン、アルギニンまたはイソロイシンへの置換が好ましく、リジンへの置換がより好ましい。
(ii)252番目のグルタミン:ロイシンへの置換が好ましい。
(iii)31番目のグルタミン:グリシンまたはアラニンへの置換が好ましく、グリシンへの置換がより好ましい。グリシンは、31番目のグルタミンの後述する祖先型アミノ酸である。
(iv)64番目のグリシン:アラニン、メチオニン、ロイシンまたはシステインへの置換が好ましく、アラニンへの置換がより好ましい。アラニンは、64番目のグリシンの後述する祖先型アミノ酸である。
(v)111番目のリジン:アルギニン、ロイシン、グリシンまたはグルタミン酸への置換が好ましく、アルギニンへの置換がより好ましい。アルギニンは、111番目のリジンの後述する祖先型アミノ酸である。
(vi)159番目のアラニン:システイン、グリシン、スレオニンまたはセリンへの置換が好ましく、システインへの置換がより好ましい。システインは、159番目のアラニンの後述する祖先型アミノ酸である。
(vii)179番目のリジン:チロシン、アルギニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、アスパラギン酸またはアラニンへの置換が好ましく、チロシンへの置換がより好ましい。チロシンは、179番目のリジンの後述する祖先型アミノ酸である。
(viii)217番目のチロシン:アルギニン、リシンまたはヒスチジンへの置換が好ましく、アルギニンへの置換がより好ましい。アルギニンは217番目のチロシンの後述する祖先型アミノ酸である。
(ix)218番目のイソロイシン:ロイシン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、プロリンまたはメチオニンへの置換が好ましく、ロイシンへの置換がより好ましい。ロイシンは、218番目のイソロイシンの後述する祖先型アミノ酸である。
(x)246番目のアラニン:バリンまたはイソロイシンへの置換が好ましく、バリンへの置換がより好ましい。バリンは、246番目のアラニンの後述する祖先型アミノ酸である。
【0033】
下記(1)170番目のグルタミン酸および252番目のグルタミンを他のアミノ酸に置換するアミノ酸置換に加えて、さらに下記(2)〜(9)からなる群より選択される少なくとも1以上のアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列を含む改変型NAD(P)
+GDHは、無機塩の非存在下において、NAD(P)
+GDHの高い比活性を維持したまま、幅広い温度域で安定して機能し、従来のNAD(P)
+GDHに比べて、顕著に高い熱安定性および/または有機溶媒耐性を示す。
【0034】
前記(a)のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、以下の(1)のアミノ酸置換がなされ、且つ、(2)〜(9)からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列であることが好ましい。
(1)E170K+Q252L
(2)Q31G
(3)G64A
(4)K111R
(5)A159C
(6)K179Y
(7)Y217R
(8)I218L
(9)A246V
【0035】
配列番号1に示されるアミノ酸配列において(1)E170K+Q252Lのアミノ酸置換をするだけでは、得られる変異体は無機塩非存在下において70℃以上における熱処理後の残存活性が非常に低く、80℃以上の熱処理では失活するため、幅広い温度域で安定して機能することができない。
【0036】
しかしながら、配列番号1に示されるアミノ酸配列において(1)E170K+Q252Lのアミノ酸置換に加えて、さらに前記(2)〜(9)からなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸置換がなされることにより、得られる改変型NAD(P)
+GDHは、無機塩非存在下において、NAD(P)
+GDHの高い比活性を維持したまま、70℃以上の熱処理後も安定して機能し、および/またはアセトンのような有機溶媒に対する耐性も持ち合わせることができる。
【0037】
なお、無機塩非存在下における有機溶媒に対する耐性を向上させるためには、配列番号1に示されるアミノ酸配列において(1)E170K+Q252Lのアミノ酸置換に加えて、さらに前記(5)、(7)および(8)からなる群より選択される少なくとも1以上のアミノ酸置換がなされることが特に好ましい。
【0038】
前記(a)のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、(1)E170K+Q252L+(5)A159Cのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(2)Q31Gのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(3)G64Aのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(4)K111Rのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(6)K179Yのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(9)A246Vのアミノ酸置換または(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218Lのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218L+(2)Q31Gのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218L+(3)G64Aのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218L+(4)K111Rのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218L+(6)K179Yのアミノ酸置換または(1)E170K+Q252L+(7)Y217R+(8)I218L+(9)A246Vのアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列であることがより好ましく、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218Lのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(2)Q31Gのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(3)G64Aのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(4)K111Rのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(6)K179Yのアミノ酸置換、(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(9)A246Vのアミノ酸置換または(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(3)G64A+(4)K111Rのアミノ酸置換または(1)E170K+Q252L+(5)A159C+(7)Y217R+(8)I218L+(2)Q31G+(3)G64Aが導入されたアミノ酸配列であることがより好ましい。
【0039】
前記(a)のアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、配列表の配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39および41のいずれか1で示されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0040】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHには、下記(b)のアミノ酸配列を含む、NAD(P)
+GDH活性を有するタンパク質が含まれる。該タンパク質は、無機塩の非存在下において70℃以上で熱安定性である。
(b)前記(a)のアミノ酸配列において、前記170番目、252番目、31番目、64番目、111番目、159番目、179番目、217番目、218番目および246番目のアミノ酸以外の位置で、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列。
【0041】
前記(b)のアミノ酸配列において、アミノ酸改変がなされるアミノ酸残基の個数は、1個乃至20個であることが好ましく、1個乃至10個であることがより好ましく、1個乃至6個であることがさらに好ましく、数個(1から2または3個)であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
【0042】
なお、既に報告されているNAD(P)
+GDHのアミノ酸配列の145番目のセリン、158番目のチロシン、162番目のリジンがNAD(P)
+GDH活性に必要であることが知られている[Keizo Yamamoto et al.J.Biochem.129(2)303−312(2002)]。したがって、(b)のアミノ酸配列において、これらのアミノ酸は保持されていることが好ましい。
【0043】
さらに、本発明の改変型NAD(P)
+GDHには、前記(a)のアミノ酸配列に相同性を有するアミノ酸配列を含む、NAD(P)
+GDH活性を有し、かつ無機塩の非存在下において70℃以上で熱安定性であるタンパク質を含む。該相同性は、例えば、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
【0044】
ここで、「相同性」とは、BLAST PACKAGE〔sgi32 bit edition,Version 2.0.12;available from the National Center for Biotechnology Information [NCBI]〕のbl2seq program(Tatiana A.Tatsusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,Vol.174,247−250,1999)により得られる同一性の値を示す。パラメーターとしては、Gap insertion Cost value:11、Gap extension Cost value:1が例示される。
【0045】
NAD(P)
+GDHは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼである。NAD(P)
+GDHは、補酵素に水素を添加する反応と共役してβ−D−グルコース(ブドウ糖)の脱水素反応を触媒する酵素であり、EC1.1.147に分類される酵素である。
【0046】
〔NAD(P)
+GDHの活性の測定〕
本発明において、NAD(P)
+GDHの活性は下記試薬を用いて、下記測定条件で測定する。
【0047】
(試薬)
100mM トリス−塩酸緩衝液 pH8.0
100mM NAD(P)
+水溶液
1M D−グルコース水溶液
酵素活性測定試薬:上記トリス−塩酸緩衝液を17.5mL、NAD(P)
+水溶液を0.5mL、グルコース水溶液を2mL、を混合して酵素活性測定試薬とする。
酵素活性測定溶液:酵素[NAD(P)
+GDH]を所望の濃度に希釈するための溶液(以下、「酵素希釈液」ともいう)として、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を使用し、以下の活性値が5〜15U/mLとなるように酵素の原液(以下、「酵素原液」ともいう)を希釈して酵素活性測定溶液とする。
【0048】
(測定条件)
酵素活性測定試薬0.9mLを分光光度計用セルに入れ、37℃で5分間以上プレインキュベートする。酵素活性測定溶液0.005mLを添加してよく混合し、37℃で予めインキュベートされた分光光度計で、340nmの吸光度変化を40秒間記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔOD/分)を計算する。ブランクは、酵素活性測定溶液の代わりに水を酵素活性測定試薬に混合して上記のように1分間あたりの吸光度変化(ΔODblank/分)を計算する。これらの値から、下記の計算式にしたがって活性値を求める。
【0049】
(式)活性(U/mL)=(ΔOD/分−ΔODblank/分)×905×希釈倍率/(6.22×5×1.0)
【0050】
なお、上記計算式の905は酵素活性測定試薬と酵素活性測定溶液の液量、6.22は本測定条件におけるNAD
+の分子吸光係数(cm
2/マイクロモル)、5は酵素活性測定溶液の液量、1.0は酵素活性測定に使用するセルの光路長(cm)を示す。
【0051】
〔NAD(P)
+GDHの比活性の測定〕
比活性値とは、酵素の活性をタンパク質重量当たりの活性値で表現した値である。本発明において、NAD(P)
+GDHの比活性値は下記試薬を用いて、下記測定条件で測定する。
【0052】
(試薬)
酵素希釈液:20mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
酵素活性測定試薬:上記の酵素活性測定試薬
【0053】
(測定条件)
必要であれば酵素原液を酵素希釈液で希釈し、上記活性測定法により活性を求める。酵素原液のタンパク質濃度を、280nmの吸光度において、1OD=1mg/mlとして計算する。
【0054】
上記計算式により、酵素原液の活性(U/mL)を求め、酵素原液のタンパク質濃度(mg/ml)を求める。これらの値から、以下の計算式にしたがって、比活性を求める。
【0055】
(式)比活性(U/mg)=(活性)/(タンパク質濃度)
【0056】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHの比活性(U/mg)は、500U/mg−タンパク質以上であることが好ましく、600U/mg−タンパク質以上であることがより好ましく、800U/mg−タンパク質以上であることがさらに好ましい。
【0057】
〔無機塩の非存在下における熱安定性〕
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、無機塩の非存在下において70℃以上で熱安定性を示す。ここで、無機塩としては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムおよびホウ酸ナトリウム等が挙げられ、中でも塩化ナトリウムが好ましい。
【0058】
無機塩の非存在下における改変型NAD(P)
+GDHの熱安定性は、例えば、下記(1)および(2)の手順で測定する残存活性率に基づいて評価する。
(1)酵素希釈液により、酵素原液を特定の濃度に希釈して酵素活性測定溶液を得る。酵素活性測定溶液における酵素のタンパク質濃度は、1〜1000μg/mLとすることが好ましい。ここで、酵素希釈液、酵素原液および酵素活性測定溶液のいずれも無機塩を含まない条件とする。
(2)無機塩を含まない条件において、酵素活性測定溶液を、任意の温度で特定の時間熱処理し、熱処理前後の酵素活性を求める。熱処理時間は30分〜1時間が好ましい。熱処理前の活性値を100としたときの熱処理後の残存活性率(%)を求める。
【0059】
無機塩の非存在下における熱安定性は、具体的には、例えば、実施例において後述する方法により測定する。実施例において後述するように、酵素活性を測定するための酵素活性測定試薬も塩化ナトリウムを含まないことが好ましい。
【0060】
「無機塩の非存在下において70℃以上で熱安定である」とは、70℃以上で加熱処理後の残存活性率(%)が、20%以上であることをいう。本発明の改変型NAD(P)
+GDHの70℃、30分の加熱処理後の残存活性は、20%以上であり、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0061】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHの80℃、30分の加熱処理後の残存活性は、1%以上であることが好ましく、20%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0062】
さらに、本発明の改変型NAD(P)
+GDHの84℃、30分の加熱処理後の残存活性は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHの70℃、30分の加熱処理後の残存活性は、配列表の配列番号79に示されるアミノ酸配列において、I165M+E170K+P194T+A197K+K204E+K206R+E222D+S237Cのアミノ酸置換がなされたタンパク質に比べて高いことが好ましい。
【0064】
配列表の配列番号79に示されるアミノ酸配列と配列番号1に記載のアミノ酸配列とは、3アミノ酸異なるが、両者は共に同じBacillus subtilis菌由来であり実質的に同一のアミノ酸配列である。
【0065】
ここで、配列表の配列番号79に示されるアミノ酸配列において、I165M+E170K+P194T+A197K+K204E+K206R+E222D+S237Cのアミノ酸置換がなされたタンパク質とは、米国特許第7816111号明細書の配列番号164に記載の変異体である。
【0066】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、アミノ酸置換前(以下、「改変前」ともいう)の配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるNAD(P)
+GDH(以下、「野生型NAD(P)
+GDH」ともいう)と比較して、無機塩の非存在下かつ70℃以上における熱安定性が向上していることが好ましい。
【0067】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、170番目のグルタミン酸および252番目のグルタミンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含むNAD(P)
+GDHの変異体と比較して、無機塩の非存在下かつ70℃以上における熱安定性が向上していることがより好ましい。
【0068】
さらに、本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、E170K+Q252Lのアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列を含むNAD(P)
+GDHの変異体と比較して、無機塩の非存在下かつ70℃以上における熱安定性が向上していることが更に好ましい。
【0069】
〔無機塩の非存在下における有機溶媒耐性〕
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、アミノ酸置換前(以下、「改変前」ともいう)の配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるNAD(P)
+GDH(以下、「野生型NAD(P)
+GDH」ともいう)と比較して、無機塩の非存在下における有機溶媒耐性が向上したポリペプチドであることが好ましい。
【0070】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、無機塩の非存在下における有機溶媒処理後の残存活性が、配列表の配列番号79に示されるアミノ酸配列において、I165M+E170K+P194T+A197K+K204E+K206R+E222D+S237Cのアミノ酸置換がなされたタンパク質に比べて高いことが好ましい。
【0071】
前記無機塩としては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムおよびホウ酸ナトリウム等が挙げられ、中でも塩化ナトリウムが好ましい。
【0072】
また、有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、1、2-プロパンジオール、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトンおよび1、4-ジオキサン等が挙げられ、中でもアセトンが好ましい。
【0073】
本発明における無機塩の非存在下における有機溶媒耐性は、例えば、下記(1)〜(3)の手順で測定する残存活性率に基づいて評価する。
(1)酵素希釈液により、酵素原液を特定の濃度に希釈して酵素活性測定溶液を得る。ここで、酵素希釈液、酵素原液、酵素活性測定溶液のいずれも無機塩を含まない条件とする。酵素活性測定溶液における酵素のタンパク質濃度は、1〜1000μg/mLとすることが好ましい。
(2)無機塩を含まない条件において、酵素活性測定溶液を有機溶媒中に投入して攪拌した後、熱乾燥によりすべての溶媒を除去する。熱乾燥の条件は有機溶媒の種類により異なるが、通常、温度は、20〜80℃とすることが好ましく、時間は5分〜1時間とすることが好ましい。
(3)乾燥終了後の酵素を酵素希釈液で再懸濁し、有機溶媒/熱乾燥前後の酵素活性を求める。有機溶媒/熱乾燥前の活性値を100としたときの、有機溶媒/熱乾燥後の残存活性率(%)を求める。
【0074】
無機塩の非存在下における有機溶媒耐性は、具体的には、例えば、実施例において後述する方法により測定する。実施例において後述するように、酵素活性を測定するための酵素活性測定試薬も無機塩を含まないことが好ましい。
【0075】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、170番目のグルタミン酸および252番目のグルタミンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含むNAD(P)
+GDHの変異体と比較して、無機塩の非存在下における有機溶媒耐性が向上していることがより好ましい。
【0076】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、E170K+Q252Lのアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列を含むNAD(P)
+GDHの変異体と比較して、無機塩の非存在下における有機溶媒耐性が向上していることが更に好ましい。
【0077】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、外来タンパク質又はペプチドと連結された融合タンパク質とすることができる。ここで、外来タンパク質又はペプチドとは、本発明の改変型NAD(P)
+GDHに対して外因的なタンパク質又はペプチドを意味する。
【0078】
前記外来タンパク質又はペプチドとしては、例えば、タンパク質精製に使用されるタンパク質又はペプチド(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、ストレプトアビジン結合ペプチドおよびヒスチジンタグ等)が挙げられる。
【0079】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHに対して外来タンパク質又はペプチドを連結する位置は、本発明の改変型NAD(P)
+GDHと外来タンパク質又はペプチドとがそれぞれの機能又は活性を有するように適宜選択することができる。
【0080】
〔野生型NAD(P)
+GDHへの変異導入部位の決定方法〕
本発明の改変型NAD(P)
+GDHは、一般的に用いられる進化工学的な手法を利用したランダム変異導入法ではなく、以下の(1)マルチプルアライメント図に基づくコンセンサス法に加えて、さらに(2)系統学的手法に基づいた祖先型アミノ酸導入法を併用することにより決定されるアミノ酸置換を、配列表の配列番号1で示される野生型NAD(P)
+GDHのアミノ酸配列に導入することにより得られる。
【0081】
(1)マルチプルアライメント図に基づくコンセンサス法
マルチプルアライメント図に基づくコンセンサス法とは、本来は抗体の機能改変を目的として利用され始め、酵素の熱安定性の向上を目的として利用された実績もあるDNA配列あるいはアミノ酸配列における部位特異的変異導入法(配列上のどの位置にどの変異を導入するか部位特異的に決定する方法)である。詳細についてはB.Steipe,et al.,J.Mol.Biol.,240,188−192,1994に記述されている。
【0082】
マルチプルアライメント図に基づくコンセンサス法の材料としては、既知のアミノ酸配列を公知のデータベースに対して相同性検索することで得られる複数のアミノ酸配列を、公知のアライメントプログラムなどを利用してマルチプルアライメントさせた図を使用する。マルチプルアライメント図のすべての座位は、コンピュータープログラムにより挿入、欠失または置換等が最小となるように並べられる。
【0083】
例えば、アミノ酸配列の欠失等により候補タンパク質に活性がない場合には、候補タンパク質のアミノ酸配列の特定の座位が欠失し、候補遺伝子以外のアミノ酸配列には何らかのアミノ酸が配置されている状況が観察される。その座位において候補タンパク質以外のアミノ酸残基に例えばメチオニン(M)が多く配列していれば、該欠失部位にMを挿入する。同様にセリン(S)が多く配置していれば、該欠失部位にSを挿入する。このような多数決的な決定による変異導入法をコンセンサス法と呼ぶ。
【0084】
コンセンサス法は、酵素の様々な性能の改変または向上に利用できる。しかしながら、その反面、コンセンサス法は、単独で用いた場合、必ずしも無機塩の非存在下におけるNAD(P)
+GDHの熱安定性の向上を図る手法とは言えない。本発明者らは、コンセンサス法に加えて、以下に示す系統学的手法に基づいた祖先型アミノ酸導入法を併用することによって、無機塩の非存在下における熱安定性の向上した改変型NAD(P)
+GDHを得られることを見出した。
【0085】
(2)系統学的手法に基づいた祖先型アミノ酸導入法
系統学的手法に基づいた祖先型アミノ酸導入法は、ある特定の酵素についての複数の生物種における共通祖先のアミノ酸配列を推定し、該共通祖先のアミノ酸配列の一部あるいは全部をもとの酵素に変異として導入することにより共通祖先の酵素の機能を推察する目的で開発された手法である。
【0086】
一般的に共通祖先型の酵素はもとの酵素に対して熱安定化することが示されており、全生物の共通祖先が超好熱菌であるとの仮説を支持するものであるが、本発明における利用のように、産業用酵素の機能改変にも利用されている方法である。詳細については、Hisako,I.,et al.,FEMS Microbiology Letters,243,393−398,2005;Keiko,W.,et al.,FEBS Letters,580,3867−3871,2006;日本国特開2002−247991号公報;日本国特開2011−139677号公報に記載されている。
【0087】
祖先型アミノ酸導入法において共通祖先のアミノ酸配列を推定する際には、前述のコンセンサス法でも用いた特定の候補遺伝子のアミノ酸配列をデータベースに対して相同性検索することにより得られた複数の相同アミノ酸配列とそのマルチプルアライメント図に加えて、それらの相同アミノ酸配列群を基に作成した分子系統樹(以下、系統樹とも表記する)、および系統樹作成のためのアルゴリズム、並びにマルチプルアライメント図を材料として利用する。
【0088】
系統樹を作成するためのいくつかのアルゴリズムには、例えば、最大節約原理に基づくアルゴリズム等が知られており、それを実現するコンピュータープログラムも利用または入手することができる。例えば、TREE PUZZLE、MOLPHYおよびPHYLIP等の種々の系統樹推定プログラムが利用できる。
【0089】
また、例えば、最尤原理に基づくアルゴリズム等が知られており、それを実現するコンピュータープログラムも利用または入手することができる。例えば、ModelTest、PHYML、PHYLIPおよびTreeFinder等の種々の系統樹推定プログラムが利用できる。それらを用いて系統樹を作成することができるが、より簡便には、既に公表されている系統樹を利用することもできる。
【0090】
このような系統樹においては、分子進化的に近い位置の生物種は、系統樹中で近い位置に現れる。また、系統樹中で根元に近い位置にある生物種はより祖先に近いと考えられる。
【0091】
特定の酵素のアミノ酸配列をデータベースに対して相同性検索することで得られた複数の相同アミノ酸配列のデータをもとに適当なプログラムを使用してマルチプルアラインメントの結果が得られたならば、特定の系統樹における祖先型酵素のアミノ酸配列を推定することができる。
【0092】
本発明においては、特に祖先型酵素のアミノ酸配列の推定に最尤法(「根井正利『分子進化遺伝学』培風館、「根井正利、S.クマー『分子進化と分子系統学』培風館」)を用いた。
【0093】
本発明に使用し得る最尤法とは、予め決定した系統樹の樹形とアミノ酸置換モデルに基づいて、樹形の特定の位置に(主に系統樹の根にあたる部分)おけるあらゆる祖先型アミノ酸配列を推定し、最も尤度の高い配列を最も有望な祖先型アミノ配列として選択する方法である。また、最尤法に基づいて、系統樹およびアミノ酸配列のマルチプルアライメントから祖先型推定を行うためのプログラムPAML等も利用可能である。
【0094】
得られた系統樹を利用してマルチプルアラインメントしたアミノ酸残基のそれぞれの部位に関して祖先型アミノ酸を決定することができる。このようにして、マルチプルアラインメントした配列の各々の残基に関して祖先型アミノ酸残基を推定し、その結果、対応する領域の祖先型アミノ酸配列を推定することができる。
【0095】
この場合、祖先型アミノ酸配列を推定するために用いる生物種を変えると、系統樹の樹形が変化し、それと関連して異なる祖先型アミノ残基が得られる場合もあり、その位置と種類は比較に用いるアミノ酸配列にも依存する。
【0096】
従って、そのような変動が比較的少ない位置のアミノ酸残基を改変の対象とすることが考えられる。そのようなアミノ酸残基は、系統樹の作成に用いる生物種を変える、または、生物種は変えずに系統樹作成に使用するアミノ酸配列情報の一部のみを用いるなど、系統樹の作成に使用するアミノ酸配列情報を変化させた場合の樹形変化の程度を見積り、樹形への影響の少ない残基を選択することによって決定できる。
【0097】
上記のようにして祖先型アミノ酸残基が決定されたならば、解析対象とした酵素について非祖先型であるアミノ酸残基の少なくとも1つを祖先型アミノ酸残基に置換してその酵素を改変することができる。
【0098】
上記のように(1)マルチプルアライメント図に基づくコンセンサス法に、さらに(2)系統学的手法に基づいた祖先型アミノ酸導入法を併用して決定されるアミノ酸置換を野生型のアミノ酸配列に導入することにより、従来のNAD(P)
+GDHに比べて大幅に無機塩の非存在下における熱安定性および/または有機溶媒耐性を向上させた改変型NAD(P)
+GDHを得ることができる。
【0099】
前記(1)の手法に前記(2)の手法を併用することにより、従来知られているものとは異なる特定の変異、すなわち超高熱菌であったと言われている全生物の共通祖先型アミノ酸変異を効果的に野生型NAD(P)
+GDHのアミノ酸配列に対して導入することができ、得られる改変型NAD(P)
+GDHの無機塩の非存在下における熱安定性および/または有機溶媒耐性が向上するものと考えられる。
【0100】
以下、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNA、該DNAを含む組換えベクター、該ベクターを導入した形質転換体、また、該形質転換体を用いた改変型NAD(P)
+GDHの製造方法について説明する。
【0101】
〔改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNA〕
本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAは、改変前の野生型NAD(P)
+GDHのDNAに前記アミノ酸置換が導入されるように変異を導入することにより得ることができる。
【0102】
前記野生型NAD(P)
+GDHのDNAまたは改変型NAD(P)
+GDHのDNAは、遺伝子の全合成法により人工合成することもできる。その際、該DNAの塩基配列におけるコドン利用頻度を、後述する大腸菌(Escherichia coli)のコドン利用頻度に最適化したDNAを人工合成することもできる。
【0103】
ここで、野生型NAD(P)
+GDHのDNAは、例えば、配列表の配列番号2に示される塩基配列である公知のDNAであれば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)NBRC3134株からPCRを用いた定法により単離することができる。
【0104】
特定の部位に特定の変異を導入する方法として、キットなどが広く販売され当業者が容易に利用可能なDNAの部位特異的変異導入法などが利用できる。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(QuickChange Lightning Site−Directed Mutagenesis kit:Stratagene製、KOD−Plus−Mutagenesis kit:東洋紡製など)の利用などが挙げられる。
【0105】
このようにして得られたDNAは、DNAシーケンサーを用いて塩基配列を確認することができる。得られた塩基配列については、DNASIS(日立ソフトエンジニアリング社製)およびGENETYX(株式会社ゼネティックス製)等の塩基配列解析ソフトによる解析を行うことにより、DNA中のNAD(P)
+GDH遺伝子のコード領域を特定することができる。
【0106】
一旦、塩基配列が確定されると、その後は化学合成、クローニングされたプローブを鋳型としたPCR、または該塩基配列を有するDNA断片をプローブとするハイブリダイゼーションによって、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子を得ることができる。
【0107】
さらに、部位特異的突然変異誘発法等によって本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子の変異型であって変異前と同等の機能を有するものを合成することができる。なお、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法またはメガプライマーPCR法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。
【0108】
本発明のDNAは、本発明の改変型NAD(P)
+GDH又は上述の融合タンパク質をコードするDNAである。本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAの塩基配列としては、例えば、配列表の配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40および42で示される配列が挙げられる。
【0109】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAと外来タンパク質又はペプチドをコードするDNAとを連結した融合タンパク質をコードするDNAを作製する場合には、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAに外来タンパク質又はペプチドをコードするDNAを連結したDNAを準備する。
【0110】
前記DNAは、連結したDNA自体であってもよく、当該DNAを含むベクター等であってよい。本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAに外来タンパク質又はペプチドをコードするDNAを連結する方法は、それぞれ精製された本発明の改変型DNAD(P)
+GDHをコードする遺伝子及び外来タンパク質又はペプチドをコードするDNAを適当な制限酵素で切断し、連結する方法が採用される。
【0111】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAと外来タンパク質又はペプチドをコードするDNAのそれぞれ一部に相同な領域を持たせることにより、PCR等を用いたin vitro法又は酵母等を用いたin vivo法によって両者を連結する方法であってもよい。
【0112】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAは、該DNAまたは該DNAを有する細胞に変異処理を行い、これらのDNA若しくは細胞から、例えば、配列表の配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40および42の少なくとも1つで示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを選択することによって得られるDNAであって、GDH活性を有するポリペプチドをコードするDNAも含有する。
【0113】
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成されるが、非特異的なハイブリッドは形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、相同性が高い核酸同士、例えば70〜90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸同士がハイブリダイズしない条件等が挙げられる。
【0114】
また、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば以下の条件をいう。すなわち0.5%SDS、5×デンハルツ〔Denhartz’s、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400〕および100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)中で、50℃〜65℃で4時間〜一晩保温する条件をいう。
【0115】
ハイブリダイゼーションは、前記のストリンジェントな条件下で行うことができる。例えば、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーを固定化したナイロン膜を作成し、6×SSC、0.5% SDS、5×デンハルツ、100μg/mlサケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中、65℃でナイロン膜をブロッキングする。その後、32Pでラベルした各プローブを加えて、65℃で一晩保温する。このナイロン膜を6×SSC中、室温で10分間、0.1%SDSを含む2×SSC中、室温で10分間、0.1%SDSを含む0.2×SSC中、45℃で30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーをとり、プローブと特異的にハイブリダイズするDNAを検出することができる。また、洗いなどの条件を変えることによって様々な相同性を示す遺伝子を得ることができる。
【0116】
また、本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAには、該DNAに相同性を有するDNAであって、NAD(P)
+GDH活性を有するポリペプチドをコードするDNAも含まれる。相同性としては、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上の相同性を有する遺伝子、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上であることが好ましい。
【0117】
ここで、DNAの「相同性」とは、BLAST PACKAGE[sgi32 bit edition,Version 2.0.12;available from the National Center for Biotechnology Information(NCBI)]のbl2seq program(Tatiana A. Tatsusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,Vol.174,247−250,1999)により得られる同一性の値を示す。パラメーターとしては、Gap insertion Cost value:11、Gap extension Cost value:1が例示される。
【0118】
本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAは、コドン出現頻度を宿主に最適化したものが好ましく、コドンユーゼージを大腸菌に最適化させたDNAがより好ましい。
【0119】
コドン出現頻度を表す指標として、各コドンの宿主最適コドン使用頻度の総計を採択する。最適コドンとは、同じアミノ酸に対応するコドンのうち出現頻度が最も高いコドンと定義する。コドンユーゼージは、宿主に最適化したものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌のコドンユーゼージの一例として以下のものが挙げられる。
【0120】
F:フェニルアラニン(ttt)、L:ロイシン(ctg)、I:イソロイシン(att)、M:メチオニン(atg)、V:バリン(gtg)、Y:チロシン(tat)、終止コドン(taa)、H:ヒスチジン(cat)、Q:グルタミン(cag)、N:アスパラギン(aat)、K:リジン(aaa)、D:アスパラギン酸(gat)、E:グルタミン酸(gaa)、S:セリン(agc)、P:プロリン(ccg)、T:スレオニン(acc)、A:アラニン(gcg)、C:システイン(tgc)、W:トリプトファン(tgg)、R:アルギニン(cgc)、G:グリシン(ggc)。
【0121】
〔組換えベクター〕
本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAを含む組換えベクター(以下、本発明の組換えベクターという)は、発現ベクターに本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードするDNAを挿入することにより得ることができる。
【0122】
ここで発現ベクターとしては、宿主内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。
【0123】
ファージとしては、例えば、後述する大腸菌を宿主とする場合には、Lambda gt10およびLambda gt11などが挙げられる。
【0124】
一方、プラスミドとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、pBR322、pUC18、pUC118、pUC19、pUC119、pTrc99A、pBluescriptおよびコスミドであるSuper Cos Iなどが挙げられる。
【0125】
シュードモナスを用いる場合には、例えば、グラム陰性菌用広宿主域ベクターであるRSF1010、pBBR122およびpCN51などが挙げられる。さらに、例えば、レトロウイルスおよびワクシニアウイルス等の動物ウイルス並びにバキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターなどが挙げられる。
【0126】
宿主としては、組換えベクターが安定であり、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質を発現できるのであれば特に制限されないが、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属等に属する細菌、酵母、COS細胞等の動物細胞、Sf9等の昆虫細胞、並びにアブラナ科等に属する植物体全体、植物器官(例えば、葉、花弁、茎、根および種子等)、植物組織(例えば、表皮、師部、柔組織、木部および維管束等)および植物培養細胞等が挙げられる。これらの中でも大腸菌が好ましく、大腸菌DH5αおよび大腸菌XL−1 Blue MRがより好ましい。
【0127】
ベクターに本発明のDNAを挿入する方法は、上述した本発明の改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子に外来タンパク質又はペプチドをコードする遺伝子を連結する方法に準じて行うことができる。
【0128】
細菌への本発明の組換えベクター等の導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオン処理によるコンピテントセル用いる方法およびエレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0129】
酵母への本発明の組換えベクター等の導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、スフェロプラスト法および酢酸リチウム法等が挙げられる。
【0130】
動物細胞への本発明の組換えベクター等の導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法およびリポフェクション法等が挙げられる。
【0131】
昆虫細胞への本発明の組換えベクター等の導入方法としては、昆虫細胞にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法およびエレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0132】
植物への本発明の組換えベクター等の導入方法としては、植物にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法およびPEG法等が挙げられる。
【0133】
本発明の組換えベクター等が宿主に組み込まれたか否かを確認する方法としては、例えば、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法およびノーザンハイブリダイゼーション法等が挙げられる。
【0134】
PCR法よる場合、例えば、形質転換体から組換えベクターを分離・精製する。
【0135】
組換えベクターの分離・精製は、例えば、宿主が細菌の場合、細菌を溶菌して得られる溶菌物に基づいて行われる。溶菌の方法としては、例えばリゾチームなどの溶菌酵素により処理が施され、必要に応じてプロテアーゼおよび他の酵素並びにラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの界面活性剤が併用される。
【0136】
さらに、凍結融解およびフレンチプレス処理のような物理的破砕方法を組み合わせてもよい。溶菌物からのDNAの分離・精製は、例えば、フェノール処理およびプロテアーゼ処理による除蛋白処理、リボヌクレアーゼ処理、アルコール沈殿処理並びに市販のキットを適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0137】
DNAの切断は、常法にしたがい、例えば、制限酵素処理を用いて行うことができる。制限酵素としては、例えば、特定のヌクレオチド配列に作用するII型制限酵素が挙げられる。DNAと発現ベクターとの結合は、例えば、DNAリガーゼを用いて行う。
【0138】
その後、分離・精製したDNAを鋳型として、本発明のDNAに特異的なプライマーを設計してPCRを行う。PCRにより得られた増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウムまたはSYBR Green液等により染色し、そして増幅産物をバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認する。
【0139】
また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光および酵素反応等により増幅産物を確認する方法も採用してもよい。
【0140】
〔形質転換体〕
本発明の形質転換体は、組換えベクターにマーカーを施して、該組換えベクターを宿主に導入することにより得られる。該形質転換体から、組換えベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する遺伝子供与微生物を得る。
【0141】
改変型NAD(P)
+GDHをコードする遺伝子の塩基配列は、従来公知の方法、例えばジデオキシ法により解読できる。改変型NAD(P)
+GDHのアミノ酸配列は、当該方法により決定された塩基配列より推定できる。
【0142】
形質転換体の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、好ましくは液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
【0143】
培地の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられるものが使用され得る。炭素源としては、資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、糖蜜およびピルビン酸などが挙げられる。
【0144】
窒素源としては、資化可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物および大豆粕アルカリ抽出物などが挙げられる。
【0145】
その他に、例えば、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガンおよび亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸並びに特定のビタミンなどを必要に応じて使用する。
【0146】
培養温度は、宿主が生育し、宿主が改変型NAD(P)
+GDHを産生する範囲で適宜変更し得るが、好ましくは15〜37℃程度である。培養は、改変型NAD(P)
+GDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に完了すればよく、通常は培養時間が12〜48時間程度である。
【0147】
培地のpHは、宿主が発育し、宿主が改変型NAD(P)
+GDHを産生する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH5.0〜9.0程度の範囲である。
【0148】
形質転換体を培養し、培養液を遠心分離などの方法により培養上清または菌体を回収し、菌体は超音波およびフレンチプレスといった機械的方法またはリゾチームなどの溶菌酵素により処理を施し、必要に応じてプロテアーゼおよび他の酵素並びにラウリル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤を併用することにより可溶化し、改変型NAD(P)
+GDHを含む水溶性画分を得ることができる。
【0149】
また、適当な発現ベクターと宿主を選択することにより、発現した改変型NAD(P)
+GDHを培養液中に分泌させることもできる。
【0150】
上記のようにして得られた改変型NAD(P)
+GDHを含む水溶性画分から該酵素を精製する方法としては、該水溶性画分から直ちに行うこともできるが、該水溶性画分中の改変型NAD(P)
+GDHを濃縮した後に行うこともできる。
【0151】
濃縮は、例えば、減圧濃縮、膜濃縮、塩析処理および親水性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールおよびアセトン)による分別沈殿法により行うことができる。改変型NAD(P)
+GDHの濃縮には、加熱処理および等電点処理も有効な精製手段である。
【0152】
濃縮液の精製は、例えば、ゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィー等の方法を適宜組み合わせることによって行うことができる。
【0153】
前記方法はすでに公知であり、適当な文献、雑誌および教科書等を参照することで進めることができる。このようにして得られた精製酵素は、例えば、凍結乾燥、真空乾燥およびスプレードライにより粉末化して市場に流通させることができる。
【実施例】
【0154】
次に、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0155】
<実施例1>NAD(P)
+GDHへの変異導入部位の決定
(1−1)NAD(P)
+GDH相同アミノ酸配列情報の取得
配列表の配列番号1で示されるバチルス・サブチリス由来NAD(P)
+GDHのアミノ酸配列を使用してBlast(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により相同性検索を行い、様々な生物種由来のアミノ酸配列情報を得た。
【0156】
具体的には、NAD(P)−dependent glucose 1−dehydrogenase(Seq01、YP_192407、Gluconobacter oxydans 621H)、glucose 1−dehydrogenase putavive(Seq02、YP_002426623、Acidithiobacillus ferrooxidans ATCC 23270)、glucose 1−dehydrogenase(Seq03、NP_393669、Thermoplasma acidophilum DSM 1728)、probable glucose 1−dehydrogenase(Seq04、ZP_01092744、Blastopirellula marina DSM 3645)、glucose 1−dehydrogenase(Seq05、YP_001228184、Synechococcus sp.RCC307)、3−oxoacyl−reductase(Seq06、ZP_00995731、Janibacter sp. HTCC2649)、short−chain dehydrogenase/reductase SDR(Seq07、YP_969459、Acidovorax avenae subsp. citrulli AAC00−1)、short−chain dehydrogenase/reductase SDR(Seq08、YP_001046841、Methanoculleus marisnigri JR1)、short−chain dehydrogenase/reductase SDR(Seq09、YP_002462956、Chloroflexus aggregans DSM 9485)、2−deoxy−D−gluconate 3−dehydrogenase(Seq10、NP_070035、Archaeoglobus fulgidus DSM 4304)、predicted protein(Seq11、XP_001415472、Ostreococcus lucimarinus CCE9901)、short−chain dehydrogenase/reductase SDR(Seq12、YP_001541201、Caldivirga maguilingensis IC−167)、short chain dehydrogenase(Seq13、YP_001012508、Hyperthermus butylicus DSM 5456)、2−deoxy−D−gluconate 3−dehydrogenase(Seq14、YP_001470653、Thermotoga lettingae TMO)のアミノ酸配列情報を得た。
【0157】
さらに、これらの配列情報に、配列番号1のバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来NAD(P)
+GDHのアミノ酸配列(Seq15)も付け加えた。
【0158】
ここで、Seq〜とは後述の
図1〜
図2などに示したアミノ酸配列の配列番号を指し、間の文字列(例えばYP_192407など)はデータベースに登録されているそれぞれのアミノ酸配列のアクセッションナンバーを指す。さらにその後に、生物種の名称および株名を示した。
【0159】
(1−2)NAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図の作成
上記のデータベースに登録されたアミノ酸配列データを、ClustalWによりアライメントし、アライメント図(
図1〜
図2)とデータファイルを得た。得られたデータは、後述の分子系統樹の作成に使用した。
【0160】
(1−3)分子系統樹の作成
NAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図のデータを使用して、公知のコンピュータープログラムを使用して最尤法により4種類の分子系統樹を作成した。WAG+Gモデルを分子置換モデルとして採用した。4種類の分子系統樹をそれぞれ
図3〜
図6に示す。
【0161】
(1−4)祖先型アミノ酸配列の推定
公知のコンピュータープログラム、NAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図のデータ、上述した4種類の分子系統樹を用いて、最尤法により、それぞれの分子系統樹の根の位置における祖先型アミノ酸配列を計算した。WAGモデルを分子置換モデルとして採用した。
【0162】
具体的には、配列番号49で示されるアミノ酸配列は、
図3の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。配列番号50で示されるアミノ酸配列は、
図4の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。配列番号51で示されるアミノ酸配列は、
図5の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。配列番号52で示されるアミノ酸配列は、
図6の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。
【0163】
(1−5)推定祖先型アミノ酸配列とNAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図の作成、および推定祖先型アミノ酸導入部位の決定
4種類の分子系統樹から推定された祖先型アミノ酸配列を、
図1〜
図2に示したマルチプルアライメント図に追加した。得られた推定祖先型アミノ酸配列とNAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図を
図7〜
図9に分割して示す。
【0164】
図7〜
図9において、Tre1Ancと示されているアミノ酸配列は、
図3の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。Tre2Ancと示されているアミノ酸配列は、
図4の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。
【0165】
Tre3Ancと示されているアミノ酸配列は、
図5の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。Tre4Ancと示されているアミノ酸配列は、
図6の系統樹の根の位置における推定祖先型アミノ酸配列である。
【0166】
推定祖先型アミノ酸配列とNAD(P)
+GDHを含むマルチプルアライメント図を観察しながら、例えば
図9に示すように、バチルス・サブチリス由来NAD(P)
+GDH(Seq15)の217番目のアミノ酸残基はチロシンであるが、その下に並んでいる祖先型アミノ酸残基はすべてアルギニンであるので、アルギニンを変異として導入すると決定した。同様にしてその他の推定祖先型アミノ酸導入部位も決定し、以下のアミノ酸置換がなされた変異体1〜変異体23を作製、評価することを決定した。
【0167】
なお、以下のE170KおよびQ252Lは先行技術文献の特許文献3、非特許文献6、非特許文献7に記載されている通り、バチルス・メガテリウム由来NAD(P)
+GDHやバチルス・サブチリス由来NAD(P)
+GDHの塩化ナトリウム存在下、非存在下における熱安定性を向上させることが示されている公知の変異であり、本発明においても推定祖先型アミノ酸とともに利用した。
【0168】
変異体21は、特許文献1および特許文献3に記載されている変異を組み合わせた変異体であり、実施例における比較例として使用した。変異体22の変異は、非特許文献7に記載されている熱安定性および有機溶媒耐性に効果が示された変異であるが、用いたバチルス属の株が異なるため、参考例として使用した。
【0169】
変異体23の変異は、非特許文献7に記載されている熱安定性および有機溶媒耐性に効果が示された変異であるが、用いたバチルス属の株が異なるため、実施例として使用した。
【0170】
変異体1:A159C+E170K+Q252L
変異体2:Q31G+A159C+E170K+Q252L
変異体3:G64A+A159C+E170K+Q252L
変異体4:K111R+A159C+E170K+Q252L
変異体5:A159C+E170K+K179Y+Q252L
変異体6:A159C+E170K+A246V+Q252L
変異体7:E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体8:Q31G+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体9:G64+AE170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体10:K111R+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体11:E170K+K179Y+Y217R+I218L+Q252L
変異体12:E170K+Y217R+I218L+A246V+Q252L
変異体13:A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体14:Q31G+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体15:G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体16:K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体17:A159C+E170K+K179Y+Y217R+I218L+Q252L
変異体18:A159C+E170K+Y217R+I218L+A246V+Q252L
変異体19:G64A+K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体20:Q31G+G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L
変異体21:E133K+E170K+Q252L
変異体22:E170K+Q252L
変異体23:P45A+N46E+F155Y+E170K+V227A+W230F+Q252L
【0171】
本明細書における「A159C」等の表現は、アミノ酸置換の表記法である。例えば「A159C」とは、ある特定のアミノ酸配列におけるN末端側から159番目のアミノ酸Aを、アミノ酸Cに置換することを意味する。
【0172】
また、本明細書における「Y217R+I218L」等の表現は、Y217RおよびI218Lのアミノ酸置換を同時に導入していることを意味する。
【0173】
<実施例2>NAD(P)
+GDHへの変異導入と発現、精製
(2−1)NAD(P)
+GDH遺伝子への部位特異的変異導入
上述した変異体1〜変異体23の遺伝子をそれぞれ合成すべく、配列番号2の野生型NAD(P)
+GDHのDNA配列に対してPCRによる部位特異的変異導入を行った。それに先立ち、PCRによる部位特異的変異導入に使用するオリゴヌクレオチドを以下に記述するように設計して合成した。
【0174】
変異1については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0175】
変異2については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号59および配列番号60で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0176】
変異3については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号61および配列番号62で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0177】
変異4については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号63および配列番号64で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0178】
変異5については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号65および配列番号66で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0179】
変異6については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号67および配列番号68で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0180】
変異7については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0181】
変異8については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号59および配列番号60、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0182】
変異9については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号61および配列番号62、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0183】
変異10については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号63および配列番号64、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0184】
変異11については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号65および配列番号66、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0185】
変異12については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号67および配列番号68、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0186】
変異13については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0187】
変異14については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号59および配列番号60、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0188】
変異15については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号61および配列番号62、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0189】
変異16については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号63および配列番号64、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0190】
変異17については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号65および配列番号66、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0191】
変異18については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号67および配列番号68、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0192】
変異19については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号61および配列番号62、配列番号63および配列番号64、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0193】
変異20については、配列表の配列番号53および配列番号54、配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号59および配列番号60、配列番号61および配列番号62、配列番号69および配列番号70で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0194】
変異21については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号71および配列番号72で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0195】
変異22については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0196】
変異23については、配列表の配列番号55および配列番号56、配列番号57および配列番号58、配列番号73および配列番号74、配列番号75および配列番号76、配列番号77および配列番号78で示される塩基配列のオリゴヌクレオチドを利用した。
【0197】
PCRによる部位特異的変異導入の鋳型には、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)NBRC3134株からPCRを用いた定法により単離した配列番号2の野生型NAD(P)
+GDHのDNAをpET-21cにクローニングしたベクターを使用した。以下、本ベクターをpETGDHとも呼ぶ。
【0198】
上記の相補的なオリゴヌクレオチドを利用して、QuickChange Lightning Site-Directed Mutagenesis kit(Stratagene製)を使用し、pETGDHを鋳型としてPCRによる部位特異的変異導入を行った。方法はキットに添付のプロトコルに準拠した。
【0199】
部位特異的変異導入実験を行ったあとのベクターにより大腸菌DH5αを形質転換してクローニングし、NAD(P)
+GDHのDNA上に所望の変異が導入できたかどうか、シーケンスにより確認した。
【0200】
得られた変異体ベクターを、変異体1から変異体23の順にそれぞれpETGDH1、pETGDH2、pETGDH3、pETGDH4、pETGDH5、pETGDH6、pETGDH7、pETGDH8、pETGDH9、pETGDH10、pETGDH11、pETGDH12、pETGDH13、pETGDH14、pETGDH15、pETGDH16、pETGDH17、pETGDH18、pETGDH19、pETGDH20、pETGDH21、pETGDH22およびpETGDH23と命名した。
【0201】
pETGDH1〜pETGDH23にクローニングされたNAD(P)
+GDHのDNA配列は、順に配列表の配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46、配列番号48のとおりであった。pETGDHにクローニングされた野生型NAD(P)
+GDHのDNA配列は配列表の配列番号2のとおりであった。
【0202】
したがって、pETGDH1〜pETGDH23にクローニングされたNAD(P)
+GDHのDNA配列にコードされたアミノ酸配列は、順に配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45および配列番号47のとおりであった。pETGDHにクローニングされた野生型NAD(P)
+GDHのDNA配列にコードされたアミノ酸配列は配列表の配列番号1のとおりであった。
【0203】
なお、比較例1として、配列表の配列番号79に示されるアミノ酸配列において、I165M+E170K+P194T+A197K+K204E+K206R+E222D+S237Cのアミノ酸置換がなされた変異体[米国特許第7816111号明細書(特許文献4)の配列番号164に記載の変異体]を作成した。
【0204】
表1に変異体1〜23と比較例1との塩基配列およびアミノ酸配列における相同性(%)、および野生型との塩基配列における相同性(%)を示す。
【0205】
【表1】
【0206】
pETGDH1〜pETGDH23およびpETGDHにより大腸菌DH5αをそれぞれ形質転換した形質転換体を用いて、以下の発現解析実験を行った。
【0207】
(2−2)NAD(P)
+GDH変異体遺伝子の発現
上述の6種類の形質転換体を100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天プレート培地で培養してコロニーを形成させた。それぞれの形質転換体の単一コロニーを100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地1mLに植菌し、37℃で振とう培養した。
【0208】
前培養した培養液1mLを、100μg/mLのアンピシリンおよび0.5mMのIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)含むTerrific培養液100mLに植菌し、30℃で振とう培養した。培養が完了した後、培養液を遠心分離(8000rpm、10分)してそれぞれの変異体酵素を発現させた大腸菌を回収した。回収した大腸菌は以下の精製工程で使用するまで−80℃で保存した。
【0209】
(2−3)精製
−80℃で保存した大腸菌を20mLの20mM リン酸緩衝液(pH8)に懸濁して超音波により破砕した。破砕液を遠心分離(10000×g、10分)して上清を回収した。得られた上清を、60℃で60分間、熱処理し、遠心分離(10000×g、20分)して上清を回収した。
【0210】
得られた遠心上清に氷冷下で35%飽和硫安となるように硫酸アンモニウムを添加して硫安沈殿し、遠心分離(10000×g、20分)により上清を回収した。硫安沈殿後の遠心上清を35%飽和硫安を含む20mM リン酸緩衝液で予め平衡化した6mLのRESOURCE PHEカラム(GEヘルスケア製)に吸着させ、35%から0%飽和硫安の濃度勾配で溶出した。
【0211】
回収されたNAD(P)
+GDH活性を有する画分を20mM リン酸緩衝液(pH8)で透析し、限外濾過膜により濃縮した。SDS−PAGEにより、濃縮されたNAD(P)
+GDH活性画分が単一のタンパク質まで精製されていることを確認した。20mM リン酸緩衝液(pH8)で透析して濃縮したNAD(P)
+GDH変異体酵素溶液を以下、精製酵素ともいう。
【0212】
<実施例3>NAD(P)
+GDH変異体酵素の性能評価
該変異体酵素の性能評価は、以下に示す「比活性」、「熱安定性」、「アセトン/熱乾燥耐性」に関して実施した。すべての項目は、酵素原液、酵素希釈液、酵素活性測定溶液のいずれもNAD(P)
+GDHの安定化作用のある塩化ナトリウムを全く含まない条件で実施した。実験結果は表2にまとめて示す。
【0213】
(3−1)比活性の測定
6種類のNAD(P)
+GDH変異体酵素それぞれの比活性は、上記した通りの方法により求めた。結果を表2に示す。
【0214】
(3−2)熱安定性の測定
精製酵素を酵素希釈液:20mMリン酸緩衝液(pH8)によりタンパク質濃度を30μg/mLとなるように希釈した。希釈した酵素溶液を1.5mLのプラスチックチューブに0.5mLずつ分注した。該プラスチックチューブを所定の温度に調節したウォーターバスに投入し、30分間、熱処理した。熱処理が終了したら、該プラスチックチューブを氷水に投入して急冷した。熱処理前後の活性を上記した通りの方法により求めた。
【0215】
熱処理前の活性値を100としたときの、熱処理後の残存活性(%)を求め、熱安定性の指標とした。その結果を表2に示す。
【0216】
(3−3)アセトン/熱乾燥耐性の測定
精製酵素を酵素希釈液:20mMリン酸緩衝液(pH8)によりタンパク質濃度を500μg/mLとなるように希釈した。希釈した酵素溶液10μLを1.5mLのプラスチックチューブに分注し、そこに90μLのアセトンを加えて室温で1分間よく撹拌した。
【0217】
前記プラスチックチューブを50℃に設定した遠心エバポレーターCVE-3100(EYELA製)にセットして30分間の熱乾燥によりすべての溶媒を除去した。乾燥終了後の酵素粉末を20mMリン酸緩衝液(pH8)で再懸濁し、アセトン/熱乾燥処理前後の活性を上記した通りの方法により求めた。
【0218】
熱処理前の活性値を100としたときの、熱処理後の残存活性(%)を求めたうえで、変異体22の残存活性を1.0としたときの相対値を求めてアセトン耐性の指標とした。その結果を表2に示す。
【0219】
【表2】
【0220】
表2に示すように、比活性に関しては、祖先型変異を導入した変異体1〜変異体21及び変異体23は、変異体22(E170K+Q252L)に比べて若干の比活性の低下が観察されたが、実用上の問題が生じるレベルではなかった。
【0221】
また、表2に示すように、熱安定性に関しては、変異体1(A159C+E170K+Q252L)、変異体2(Q31G+A159C+E170K+Q252L)、変異体3(G64A+A159C+E170K+Q252L)、変異体4(K111R+A159C+E170K+Q252L)、変異体5(A159C+E170K+K179Y+Q252L)、変異体6(A159C+E170K+A246V+Q252L)、変異体7(E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体8(Q31G+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体9(G64+AE170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体10(K111R+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体11(E170K+K179Y+Y217R+I218L+Q252L)、変異体12(E170K+Y217R+I218L+A246V+Q252L)、変異体13(A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体14(Q31G+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体15(G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体16(K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体17(A159C+E170K+K179Y+Y217R+I218L+Q252L)、変異体18(A159C+E170K+Y217R+I218L+A246V+Q252L)、変異体19(G64A+K111R+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252L)、変異体20(Q31G+G64A+A159C+E170K+Y217R+I218L+Q252Lが極めて高い熱安定性を有することが示された。
【0222】
また、70℃で30分間処理した後の残存活性は、変異体22(E170K+Q252L)が20%を下回ったのに対し、比較例の変異体21(E133K+E170K+Q252L)は45%、変異体23(P45A+N46E+F155Y+E170K+V227A+W230F+Q252L)は74%であった。一方、変異体1から変異体20のすべての祖先型変異体は残存活性が80%以上であり、その多くは失活が全く観察されなかった。
【0223】
同様に、80℃で30分間処理した後の残存活性は、比較例の変異体21、変異体22、変異体23は完全に失活した。一方で、変異体1、変異体2、変異体6、変異体7、変異体8、変異体9、変異体10は数%の残存活性を示した。変異体13、変異体14、変異体15、変異体16、変異体17、変異体18、変異体19、変異体20に至っては60%以上の残存活性を示した。
【0224】
同様に、84℃で30分間処理した後の残存活性は、比較例の変異体21、変異体22、変異体23は完全に失活した。一方で、変異体13、変異体14、変異体15、変異体16、変異体17、変異体18、変異体19、変異体20至っては30%以上の残存活性を示した。
【0225】
表2に示すように、アセトン耐性に関しては、変異体22に対し、比較例の変異体21および変異体23は4倍未満の耐性であったのに対し、祖先型変異を導入した変異体1から変異体20は、4倍以上の高い耐性を有していることが示された。変異体13から変異体20に至っては、7倍以上高い耐性を有していることが示された。
【0226】
これらの結果から、E170K+Q252Lのアミノ酸置換をするだけでは、得られる変異体は無機塩非存在下において70℃以上における熱処理後の残存活性が非常に低く、80℃以上の熱処理では失活するため、幅広い温度域で安定して機能することができないことが分かった。
【0227】
これに対し、配列番号1に示されるアミノ酸配列においてE170K+Q252Lのアミノ酸置換に加えて、さらにQ31G、G64A、K111R、A159C、K179Y、Y217R、I218LおよびA246Vからなる群より選択される少なくとも1のアミノ酸置換がなされることにより、得られる改変型NAD(P)
+GDHは、無機塩非存在下において、NAD(P)
+GDHの高い比活性を維持したまま、70℃以上の熱処理後も安定して機能し、アセトンのような有機溶媒に対する耐性も持ち合わせることができることがわかった。
【0228】
さらに、表2に示すように比較例1(I165M+E170K+P194T+A197K+K204E+K206R+E222D+S237C)と比較して、変異体1〜20は、顕著に優れた熱安定性、アセトン耐性、および比活性を有するとともに、アセトン耐性にも優れていた。この結果から、本発明の変異体1〜20は表1に示すように比較例1および野生型との塩基配列の相同性が95%以上と非常に高いにも関わらず、耐熱性および有機溶媒に対する耐性において顕著に優れていることがわかった。
【0229】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更および修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0230】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2011年3月30日付で出願された日本特許出願(特願2011−75449)に基づいており、その全体が引用により援用される。