(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような架台の固定方法だと、木材の設置や取り外しを行う際に、ケーシング内の狭いスペースで作業を行う必要があり、作業時間が増加しがちである(すなわち作業効率が悪い)。また、木材を外すためにケーシング前面のパネルを外す必要があり、この点においても作業効率が悪化する。また、上記木材を外し忘れた場合には、空気調和装置の運転中に大きな振動が発生する。
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、ケーシング内に弾性支持された送風ファンを備えた空気調和装置において、輸送時や設置時に、架台の固定や固定の解除を容易にできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
空気の流入口(21)と流出口(22)とが設けられたケーシング(2)と、
上記流入口(21)から上記流出口(22)への空気の流れを形成する送風ファン(7)と、
上記流入口(21)から流入する空気が通過する熱交換器(4,5)と、
上記送風ファン(7)を固定する架台(12)と、
上記ケーシング(2)に取り付けられて、上記架台(12)を弾性支持する振動吸収機構(14)と
、
上記熱交換器(4,5)と上記送風ファン(7)との間において、上記ケーシング(2)内を仕切る仕切板(70)を備え、
上記架台(12)の上部には、輸送時に該架台(12)を上記ケーシング(2)に固定するための固定部(90)が形成され
、
上記仕切板(70)には、扉(80)で開閉される開口部(71)が形成され、
上記固定部(90)は、上記開口部(71)から、固定及び固定解除の作業が可能であることを特徴とする。
【0008】
この構成では、固定部(90)が架台(12)の上部に設けられているので、比較的広い場所で、架台(12)の固定や固定の解除を行うことが可能になる
。
【0009】
また、この構成では、作業者は、第2仕切板(70)の開口部(71)から手を入れて、架台(12)の固定や固定の解除を行うことが可能になる。
【0010】
また、第
2の発明は、
第
1の発明において、
上記扉(80)は、上記架台(12)が上記固定部(90)において固定されている場合に、開状態であることを特徴とする。
【0011】
この構成では、架台(12)の固定解除を忘れた場合に、空気調和装置を運転すると、扉(80)が開いたままなので、送風ファン(7)によって正常な送風ができない。
【0012】
また、第
3の発明は、
第1
又は第
2の発
明において、
上記固定部(90)は、固定用治具(100)を介して上記ケーシング(2)に固定されることを特徴とする。
【0013】
この構成では、輸送時には、固定用治具(100)が用いられて架台(12)が固定される。
【0014】
また、第
4の発明は、
第
2の発明において、
上記固定部(90)は、固定用治具(100)を介して上記ケーシング(2)に固定されるものであり、
上記扉(80)は、上記固定用治具(100)によって開状態に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、比較的広い場所で、架台の固定や固定の解除を行うことができるので、空気調和装置の輸送時や設置時に、架台の固定や固定の解除を容易にできる。
【0016】
また、第
1の発明によれば、開口部から架台の固定や固定の解除を行うことが可能になるので、例えばケーシング前面のパネルを一々外す等の余分な作業が不要になる。
【0017】
また、第
2の発明によれば、扉の開閉状態を目視することで、架台の固定解除忘れを確認できる。また、架台の固定解除を忘れた場合に、送風ファンによって正常な送風ができないので、固定用治具の外し忘れに容易に気づくことができる。
【0018】
また、第
3の発明によれば、固定用治具の脱着によって、架台の固定、及びその解除を容易に行うことができる。
【0019】
また、第
4の発明によれば、扉の開閉状態を目視することで、架台の固定解除忘れを確認できる。また、架台の固定解除を忘れた場合に、送風ファンによって正常な送風ができないので、固定用治具の外し忘れに容易に気づくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
《発明の実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和装置(1)の斜視図である。また、
図2は、
図1の空気調和装置(1)の内部構造を示すと共に、後述の点検扉(80)が閉姿勢を採る状態を表す図である。
図1及び
図2に示すように、空気調和装置(1)は、ケーシング(2)の内部に、エアフィルタ(3)、冷水コイル(4)、温水コイル(5)(冷水コイル(4)及び温水コイル(5)は熱交換器に相当)、加湿器(6)、及び送風ファン(7)が設けられた所謂エアハンドリングユニットを構成している。
【0023】
ケーシング(2)は、箱状に組み立てられた複数の外壁パネル(2a,2b,2c,2d,2e,2f)を有している。本実施形態では、前面(
図1の手前側の鉛直面)が3つの前面パネル(2a)によって構成され、背面(
図2の奥側の鉛直面)が3つの背面パネル(2b)によって構成されている。また、左側面(
図1の左側の鉛直面)が1つの左面パネル(2c)によって構成され、右側面(
図2の右側の鉛直面)が1つの右面パネル(2d)によって構成されている。さらに、上面が1つの上面パネル(2e)によって構成され、下面が1つの土台(2f)によって構成されている。
【0024】
本実施形態では、背面パネル(2b)、左面パネル(2c)、右面パネル(2d)、上面パネル(2e)、及び左側の前面パネル(2a)がそれぞれビスによって固定されている。一方、真中及び右側の前面パネル(2a)は、それぞれ蝶番によって鉛直軸回りに回動可能な扉に構成され、前面パネル(2a)を開けて内部機器のメンテナンスが行われる。
【0025】
また、上面パネル(2e)には、空気の流入口(21)と流出口(22)とが形成されている。流入口(21)は、右面パネル(2d)側に設けられ、流入口(21)には、図示しない室外又は室内に連通するダクトが接続されている。一方、流出口(22)は、左面パネル(2c)側に設けられ、流出口(22)には図示しない室内に連通するダクトが接続されている。これにより、外気又は室内の空気がダクト及び流入口(21)を介してケーシング(2)の内部に流入し、温度や湿度が調節された後、流出口(22)及びダクトを介して室内に供給される。
【0026】
上述のように、ケーシング(2)の内部には、流入口(21)側の右面パネル(2d)から流出口(22)側の左面パネル(2c)に向かって、エアフィルタ(3)、冷水コイル(4)、温水コイル(5)、加湿器(6)及び送風ファン(7)が順に設置されている。
【0027】
エアフィルタ(3)と冷水コイル(4)との間には、第1仕切板(2l)が設けられている。加湿器(6)と送風ファン(7)との間には、第2仕切板(70)(本発明の仕切板に相当)が設けられている。これらの仕切板(2l,70)によって、ケーシング(2)の内部空間は、流入口(21)側の右面パネル(2d)から左面パネル(2c)に向かって順に、流入側空間(S1)と、熱交換室(S2)と、ファン室(S3)に区画される。すなわち、熱交換室(S2)には、熱交換器である冷水コイル(4)及び温水コイル(5)が設けられ、ファン室(S3)には送風ファン(7)が設けられている。
【0028】
第1仕切板(2l)には、図示を省略するが、空気の流通口が形成され、該流通口をエアフィルタ(3)と冷水コイル(4)とによって挟み込んでいる。このような構成により、流入口(21)から流入側空間(S1)に流入した空気がエアフィルタ(3)を通過後に、第1仕切板(2l)の流通口を通って冷水コイル(4)に流入することとなる。
【0029】
エアフィルタ(3)は、プレフィルタとメインフィルタとを有し、空気中の塵埃を二段階に除去して空気を浄化する。
【0030】
冷水コイル(4)及び温水コイル(5)は、それぞれ水冷式の熱交換器によって構成されている。そして、冷水コイル(4)には機外の熱源機から冷水が供給され、該冷水によって空気が冷却される。一方、温水コイル(5)には機外の熱源機から温水が供給され、該温水によって空気が加熱される。このようにして、エアフィルタ(3)を通過した空気は、冷水コイル(4)を流れる冷水又は温水コイル(5)を流れる温水によって温度が調節され、加湿器(6)において湿度が調節(加湿)される。
【0031】
上記の通り、第2仕切板(70)は、熱交換器(4,5)と送風ファン(7)との間において、ケーシング(2)内を仕切っている。具体的には、第2仕切板(70)は、土台(2f)から上面パネル(2e)に向かって概ね鉛直に延びた板状部材である。第2仕切板(70)のうち、送風ファン(7)に対応する位置(下部)には、熱交換室(S2)の空気がファン室(S3)へと通過する空気通過口(70a)が形成されている。この空気通過口(70a)は、ネット状のファンガード(70b)で覆われている。
【0032】
また、
図2〜4に示すように、第2仕切板(70)には開口部(71)が形成されていると共に、点検扉(80)及び補強部材(72)を備える構成が採用されている。
【0033】
具体的に、
図4に示すように、開口部(71)は、送風ファン(7)の上方に位置している。すなわち、開口部(71)は、第2仕切板(70)のうち、
図3の空気通過口(70a)の上部において、矩形状に形成されている。
【0034】
補強部材(72)は、
図4に示すように、所定の幅及び厚みにて開口部(71)の周縁部を囲むように設けられており、第2仕切板(70)の開口部(71)付近を補強している。開口部(71)が第2仕切板(70)に設けられたために開口部(71)付近の剛性が弱くなり、開口部(71)が歪む虞があるためである。
【0035】
点検扉(80)は、
図2〜4に示すように、開口部(71)を開閉可能に当該開口部(71)に対応して設けられている。また、点検扉(80)は、背面パネル(2b)に複数の蝶番によって開閉自在に支持されている。この例では、点検扉(80)は、ファン室(S3)側にのみ開くことができるようになっている。そして、作業者が点検扉(80)を簡単にできるように、点検扉(80)には把手(81)が取り付けられている。把手(81)は、閉姿勢を採る場合に熱交換室(S2)側を向く点検扉(80)の面に設けられている。
【0036】
なお、
図3に示すように、点検扉(80)を構成する各辺のうち、蝶番によって背面パネル(2b)に固定されていない各辺には、ネジ孔(80a)が形成されている。図示はしていないが、補強部材(72)及び第2仕切板(70)にも、点検扉(80)が閉姿勢を採る際にネジ孔(80a)と対応する位置に同じくネジ孔が形成されている。これらのネジ孔(80a)は、空気調和装置(1)の運転時に点検扉(80)が万が一にも開かないように、点検扉(80)をローレットネジによって補強部材(72)及び第2仕切板(70)に固定するためのものである。ローレットネジは、熱交換室(S2)側からファン室(S3)側へとネジ孔(80a)に挿入される。
【0037】
このような点検扉(80)は、空気調和装置(1)の運転時には、
図2及び
図3に示すように閉姿勢を採る。一方、ファン室(S3)のメンテナンス時、点検扉(80)は、
図4に示すようにファン室(S3)側にのみ開いて開姿勢を採る。これにより、開口部(71)は開放され、作業者は、ファン室(S3)に対応する前面パネル(2a)を取り外さずに、熱交換室(S2)側からファン室(S3)内の送風ファン(7)等を目視して点検することができる。
【0038】
送風ファン(7)は、ファン室(S3)の下方であって、流出口(22)の真下に設けられている。送風ファン(7)は、例えばプラグファンであって、熱交換室(S2)からの空気を、空気通過口(70a)を介して取り込み上方へと吹き出す。すなわち、送風ファン(7)は、流入口(21)から流出口(22)への空気の流れを形成する。送風ファン(7)は、架台(12)に、例えばボルトなどによって固定されている。また、架台(12)は、積層ゴムやスプリング等の振動を吸収する振動吸収機構(14)を介して土台(2f)に固定されている。
【0039】
そして、空気調和装置(1)を輸送する場合には、輸送時の振動によって振動吸収機構(14)が過大に変位しないようにするために、架台(12)は、後述の固定用治具(100)によって、第2仕切板(70)に固定される。
【0040】
〈固定用治具〉
図5は、固定用治具(100)の斜視図である。また、
図6は、固定用治具(100)を取り付けた状態を示す。固定用治具(100)は、空気調和装置(1)の輸送時に、架台(12)と第2仕切板(70)とを固定して、架台(12)の変位を規制する。
【0041】
図5及び
図6に示すように、固定用治具(100)は、取り付け状態で垂直となる面(以下、垂直面(100a))と、水平となる面(以下、水平面(100d)とを有した、断面がL字状の部材である。固定用治具(100)は、例えば鉄などの板材をプレス加工して形成する。この固定用治具(100)には、垂直面(100a)に繋がるフランジ(100f)が形成されている。このフランジ(100f)には、該固定用治具(100)を架台(12)にローレットネジによって固定できるように、貫通孔(100b)が形成されている。
【0042】
また、
図4に示すように、架台(12)には、上端に治具固定面(12a)が形成されている。治具固定面(12a)は、固定用治具(100)を架台(12)に取り付けた際に、固定用治具(100)のフランジ(100f)が載るようになっている。また、治具固定面(12a)には、フランジ(100f)の貫通孔(100b)に対応する位置に、雌ネジ(12b)が形成されている。治具固定面(12a)と雌ネジ(12b)とによって、本発明の固定部(90)の一例を構成している。
【0043】
また、固定用治具(100)の垂直面(100a)には、点検扉(80)を開状態(例えば全開)に固定できるように、扉固定ステー(100c)が設けられている。扉固定ステー(100c)は、板材を加工したものであり、垂直面(100a)に対して、概ね45°傾斜した状態で取り付けられ、固定用治具(100)を取り付けた状態でケーシング(2)の背面パネル(2b)側に向かって伸びるようになっている(
図6参照)。
【0044】
また、固定用治具(100)の水平面(100d)は、固定用治具(100)を架台(12)に取り付けた際に、該水平面(100d)が補強部材(72)に載るようになっている。この水平面(100d)には、該固定用治具(100)を第2仕切板(70)にローレットネジによって固定できるように、貫通孔(100e)が形成されている。この例では、第2仕切板(70)に設けられている補強部材(72)に、雌ネジ(72a)が設けられおり、貫通孔(100e)は、固定用治具(100)を補強部材(72)に取り付けた際に、該雌ネジ(72a)に対応するようになっている。
【0045】
〈空気調和装置の輸送及び設置〉
空気調和装置(1)を輸送する場合には、固定用治具(100)によって、架台(12)を固定する。具体的には、まず、点検扉(80)を開状態にし、その状態において扉固定ステー(100c)で扉を押さえつつ、固定用治具(100)のフランジ(100f)を架台(12)の治具固定面(12a)に載せる。その状態で、ローレットネジを貫通孔(100b)に通し、該ローレットネジによって固定用治具(100)を架台(12)に固定する。この際、作業者は、第2仕切板(70)の開口部(71)から手を入れて、上記ローレットネジを締結する。
【0046】
次は、固定用治具(100)(詳しくは水平面(100d))と補強部材(72)とを固定する。具体的には、作業者は、ローレットネジを貫通孔(100e)に通して、補強部材(72)の雌ネジ(72a)に締結する。この作業も、作業者は開口部(71)から手を入れて行う。勿論、ローレットネジの締結順は例示であり、例えば補強部材(72)の方を先に締結するようにしてもよい。
【0047】
以上の作業により、架台(12)は、固定用治具(100)を介して第2仕切板(70)に固定される。このように架台(12)を固定することによって、空気調和装置(1)の輸送中に該空気調和装置(1)に振動が加わったとしても、架台(12)及び振動吸収機構(14)の変位は規制される。したがって、空気調和装置(1)の輸送中の振動によって、架台(12)に搭載された送風ファン(7)や振動吸収機構(14)等が破損することはない。
【0048】
そして、輸送終了後は、固定用治具(100)を取り外すことができる。固定用治具(100)を取り外すには、中央の前面パネル(2a)を開状態にし、第2仕切板(70)の開口部(71)から作業者が手を入れて、固定用治具(100)を固定しているローレットネジを外せばよい。すなわち、本実施形態では、架台(12)(送風ファン(7))の固定を解除する場合に、ファン室(S3)の前面パネル(2a)を一々取り外す必要はない。そして、固定用治具(100)を外すと、扉固定ステー(100c)による点検扉(80)の固定が解除され、点検扉(80)を閉めることができる。
【0049】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、架台(12)の上部に固定部(90)を設けたので、容易に送風ファン(7)の固定や、その固定解除が可能になる。すなわち、狭いスペースでの作業(特にケーシングの奥の下方での作業)を強いられる従来例と比べ、本実施形態では、容易に輸送や設置など作業における効率が向上する。
【0050】
また、第2仕切板(70)に設けた開口部(71)を介して、架台(12)の固定や固定の解除ができるので、従来のように、ファン室(S3)の前面パネル(2a)を一々取り外す必要がなく、この点においても作業性が向上する。また、ファン室(S3)内は熱交換室(S2)よりも圧力が高いので気密性を担保することが重要であるが、本実施形態ではファン室(S3)の前面パネル(2a)を外す必要がないので、設置作業時に気密性に注意を払う必要がない。
【0051】
また、固定用治具(100)を外さないと、点検扉(80)を閉めることができない構造にしてあるので、固定用治具(100)の外し忘れを防止できる。固定用治具(100)を外し忘れた状態、すなわち点検扉(80)が開いたままの状態で空気調和装置(1)を運転すると、送風ファン(7)を稼働させてもファン室(S3)の圧力が上がらず、流出口(22)からの風量が低下、或いはゼロになって、正常な送風ができない。そのため、固定用治具(100)の外し忘れに容易に気づくことができるのである。
【0052】
《その他の実施形態》
なお、固定用治具(100)は必須ではない。例えば、架台(12)の上部に固定用のネジ(例えばローレットネジ)を通す貫通孔を開けておいて、架台(12)を直接的に第2仕切板(70)等に、ネジで固定するようにしてもよい。この場合は、架台(12)の上部に設けたネジ用貫通孔が固定部(90)に相当する。
【0053】
また、点検扉(80)も必須ではない。例えば、点検扉(80)を設けない場合には、前面パネル(2a)を外して、架台(12)(すなわち送風ファン(7))の固定や固定解除を行えばよい。この場合は前面パネル(2a)の取り外しや取り付けの工数は要するものの、固定部(90)が架台(12)の上部に設けられたことによって、従来のものよりも、送風ファン(7)の固定や固定の解除を容易にできる。