特許第5949815号(P5949815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5949815
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20160630BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20160630BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20160630BHJP
   C07F 7/30 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618A
   H01L29/78 618B
   C07F7/08 W
   C07F7/30 E
   C07F7/30 Z
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-56245(P2014-56245)
(22)【出願日】2014年3月19日
(62)【分割の表示】特願2013-243352(P2013-243352)の分割
【原出願日】2006年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-168064(P2014-168064A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】竹村 千代子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康
(72)【発明者】
【氏名】尾関 秀謙
(72)【発明者】
【氏名】北 弘志
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−010541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/28
H01L 51/00−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)〜(g)の何れかで表される化合物を有機半導体層に含有し、製作直後の移動度が0.01(cm/V・s)以上であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【化1】

(式中、Xは、S、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表し、R3、R4は水素原子または置換基を表すが、Xはそれぞれ異なってもよい。芳香族縮合環にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい。)
【請求項2】
前記化合物は、下記一般式()で表されることを特徴とする請求項記載の有機薄膜トランジスタ。
一般式(
【化2】

(式中、Xは、S、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表し、R3、R4は水素原子または置換基を表すが、Xはそれぞれ異なってもよい。芳香族縮合環にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい。)
【請求項3】
少なくとも1つの前記Xが、S又はSeで表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
少なくとも1つの前記Xが、N(R3)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が5以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が12以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が18以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記芳香族縮合環に、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が18以上であることを特徴と する請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記芳香族縮合環に、アルキル基又はアルキルシリルエチニル基を有することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記有機半導体層が、蒸着又は塗布により形成されたことを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記有機半導体層が、アルキル基またはアルキル基を有する置換基を有する前記化合物からなる前記有機半導体材料を少なくとも0.1%溶解してなる溶液を用いて塗布形成されたことを特徴とする請求項10記載の有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、更に情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては、液晶、有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機ELともいう)、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたアクティブ駆動素子を用いる技術が主流になりつつある。
【0004】
ここでTFT素子は、通常、ガラス基板上に主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体薄膜や、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の金属薄膜を基板上に順次形成していくことで製造される。このTFTを用いるフラットパネルディスプレイの製造には、通常CVD、スパッタリング等の真空系設備や高温処理工程を要する薄膜形成工程に加え、精度の高いフォトリソグラフ工程が必要であり、設備コスト、ランニングコストの負荷が非常に大きく、更に近年のディスプレイの大画面化のニーズに伴い、それらのコストは非常に膨大なものとなっている。
【0005】
近年、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている。
【0006】
上記有機TFT素子は低温プロセスで製造可能であるため、軽く、割れにくい樹脂基板を用いることができ、更に樹脂フィルムを支持体として用いたフレキシブルなディスプレイが実現できると言われている。
【0007】
大気圧下で印刷や塗布等のウェットプロセスで製造できる有機半導体材料を用いることで、生産性に優れ、非常に低コストのディスプレイが実現できる。また、有機半導体による種々の有機薄膜トランジスタが提案されており、印刷やインクジェット法により簡便な方法で作製できることが一般的に知られている。
【0008】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体材料としてこれまでに検討されてきたのは、ペンタセンやテトラセンといったアセン類(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照。)や、α−チエニルもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照。)、更にはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物でしかなく、高いキャリア移動度を示す新規な電荷輸送性材料を用いた有機半導体組成物の開発が待望されていた。
【0009】
また、5員複素環と置換基を有してもよい芳香環からなる2または3環の縮合環の繰り返し単位として有する液晶性高分子化合物を有機半導体材料として用いる技術(例えば、特許文献4参照。)、置換基を有してもよいアントラジチオフェン、2,8−ジアルキルアントラジチオフェン(例えば、特許文献5参照。)、更にベンゼン環とN−アルキルピロール環が交互に縮合したラダーポリマーが知られているが、いずれもキャリア移動度が小さく、また形成した有機半導体膜の経時保存性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平4−167561号公報
【特許文献3】特開平8−264805号公報
【特許文献4】特開2004−43544号公報
【特許文献5】特開平11−195790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、トランジスタ特性に優れ、大気中あるいは高温、高湿度下においても経時安定性に優れた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.
下記一般式(a)〜(g)の何れかで表される化合物を有機半導体層に含有し、製作直後の移動度が0.01(cm/V・s)以上であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0014】
【化1】
【0018】
(式中、Xは、S、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表し、R3、R4は水素原子または置換基を表すが、Xはそれぞれ異なってもよい。芳香族縮合環にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい。)
【0019】
2.
前記化合物は、下記一般式()で表されることを特徴とする前記記載の有機薄膜トランジスタ。
一般式(
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Xは、S、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表し、R3、R4は水素原子または置換基を表すが、Xはそれぞれ異なってもよい。芳香族縮合環にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい。)
【0022】

少なくとも1つの前記Xが、S又はSeで表されることを特徴とする前記1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0023】
4.
少なくとも1つの前記Xが、N(R3)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0024】
5.
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が5以上であることを特徴とする前記1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0025】
6.
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が12以上であることを特徴とする前記1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0026】
7.
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が18以上であることを特徴とする前記1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0027】
8.
前記芳香族縮合環に、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が18以上であることを特徴とする前記1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0028】
9.
前記芳香族縮合環に、アルキル基、アルキルシリルエチニル基又はアルキルアリールエチニル基から選ばれた置換基を有し、全ての置換基の総炭素数が18以上であることを特徴とする前記1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0029】
10.
前記有機半導体層が、蒸着又は塗布により形成されたことを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【0030】
11.
前記有機半導体層が、アルキル基またはアルキル基を有する置換基を有する前記化合物からなる前記有機半導体材料を少なくとも0.1%溶解してなる溶液を用いて塗布形成されたことを特徴とする請求項10記載の有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、トランジスタ特性に優れ、大気中あるいは高温、高湿度下においても経時安定性に優れた有機薄膜トランジスタ(以下、TFTともいう。)を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の有機薄膜トランジスタの構成例を示す図である。
図2】本発明の有機薄膜トランジスタの概略等価回路図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0034】
《有機半導体材料》
本発明の有機半導体材料は、少なくとも一つのベンゼン環とこれに隣接した少なくとも2つの環からなる芳香族複素環が縮合した少なくとも3環以上の芳香族縮合環を部分構造として有し、且つ該芳香族縮合環にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい化合物であることを特徴とする。ここで、少なくとも一つのベンゼン環とこれに隣接した少なくとも2つの環からなる芳香族複素環が縮合した少なくとも3環以上の芳香族縮合環としては、具体的には下記一般式(1)で表される。
【0035】
【化4】
【0036】
一般式(1)において、XはS、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表し、R3、R4は水素原子または置換基を表すが、Xはそれぞれ異なってもよい。Zは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、nは0〜7の整数を表す。nの合計が2以上のとき、複数のZは同じでも異なってもよい。
【0037】
XがN(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4であるとき、R3、R4で表される置換基としては、置換可能な基であれば特に制限はないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、複素環基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基などを好ましい置換基として挙げることができる。XはSまたはSeであることが好ましく、Sであることがより好ましい。Xはそれぞれが異なってもよい。
【0038】
Zで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、フルオレン、フェナントレン、インデン、ピレン等が挙げられ、芳香族複素環としては、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、キナゾール等が挙げられる。
【0039】
前記一般式(1)で表される部分構造を有し、且つ該部分構造にアルキル基またはアルキル基を有する置換基を有してもよい化合物は、更に下記一般式(2)で表される。
【0040】
【化5】
【0041】
一般式(2)において、R1、R2は水素原子、アルキル基またはアルキル基を有する置換基を表す。m1、m2は0〜4の整数を表す。但し、m1+m2は1以上の整数である。m1が2以上のとき、複数のR1は同じでも異なってもよく、m2が2以上のとき、複数のR2は同じでも異なってもよい。A1、A2は水素原子または置換基を表し、m3、m4は0〜4の整数を表す。XはS、Se、SO2、O、N(R3)、Si(R3)R4またはC(R3)R4を表すが、それぞれ異なってもよい。R3、R4は水素原子または置換基を表し、Zは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、nは0〜7の整数を表す。nが2以上のとき、複数のZは同じでも異なってもよい。
【0042】
1、R2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
1、R2で表されるアルキル基を有する置換基としては、例えば、アルキル基が置換したシリルエチニル基、アルキル基が置換したアリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等)、アルキル基が置換した芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アルキル基が置換したアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アルキル基が置換したアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アルキル基が置換したアリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アルキルスルファモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルカルバモイル基、アルキルウレイド基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキル基が置換したアリールスルホニル基、アルキルアミノ基、フルオロアルキル基、トリフルオロアルキル基、ペンタフルオロアルキル基、アルキルシリル基等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
1、A2で表される置換基としては、置換可能な基であれば特に制限はないが、例えば、アリール基、芳香族複素環基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。中でも、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0045】
1、R2としては、アルキル基、アルキルシリルエチニル基、アルキル基が置換したアリール基、アルキルシリルエチニル基が置換したアリール基であることが好ましく、トリアルキルシリルエチニル基、トリアルキルシリルエチニル基が置換したフェニル基であることがより好ましい。
【0046】
Xは一般式(1)のXと同義であり、Zもまた一般式(1)のZと同義である。
【0047】
下記一般式(3)において、R1、R2、A1、A2、X、Zは一般式(2)のそれらと同義である。lは1〜5の整数を表す。lは1〜4の整数であることが好ましい。
【0048】
【化6】
【0049】
本発明の有機半導体材料は、前記一般式(2)または(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0050】
これらの例としては下記の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化7】


【0052】
【化5】
【0053】
【化6】
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】


【0061】
【化14】



【0062】
《有機溶媒》
本発明に係る有機溶媒は、本発明の有機半導体材料を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。
【0063】
本発明に係る有機溶媒は、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素がより好ましい。
【0064】
芳香族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルナフタレン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
芳香族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、o−ジヨードベンゼン、m−ジヨードベンゼン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、ジフルオロトルエン、クロロキシレン、ブロモキシレン、ヨードキシレン、クロロエチルベンゼン、ブロモエチルベンゼン、ヨードエチルベンゼン、ジクロロエチルベンゼン、ジブロモエチルベンゼン、クロロシクロペンタジエン、クロロシクロペンタジエン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
脂肪族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、デカン、2,2,3,3−テトラメチルヘキサン、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン、3,3,5−トリメチルヘプタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、4−エチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、ドデカン、ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p−メンタン、デカリン、シクロヘキシルベンゼン等の環状脂肪族炭化水素等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明に用いられる脂肪族炭化水素としては、環状脂肪族炭化水素が好ましい。
【0067】
脂肪族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
また、本発明で用いられるこれらの有機溶媒は、1種類あるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0069】
《有機薄膜トランジスタ》
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上に先ずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。本発明の有機薄膜トランジスタは、これらトップゲート型またボトムゲート型のいずれでもよく、またその形態を問わない。
【0070】
本発明において、有機半導体層を形成する方法としては、真空蒸着により形成する蒸着プロセス、あるいはキャストコート、ディップコート、スピンコート等の塗布法やインクジェット印刷、スクリーン印刷等の印刷法等に代表される溶液プロセス等が挙げられるが、本発明では溶液プロセスにより基板上に有機半導体膜を形成することが好ましい。中でも、ドロップキャストコートにより室温あるいは室温以上に加熱した基板上に有機半導体溶液を塗布する方法が、有機半導体の配向性向上あるいは結晶性膜成長を促進する上でより好ましい。
【0071】
また、本発明をより効果的なものとするため、有機半導体層上あるいは必要な構成要素により構成された有機薄膜トランジスタ自体に公知の無機材料あるいは有機ポリマー材料等を用いて、有機半導体膜を保護する保護膜(封止膜)を形成することが好ましい。保護膜を形成する方法としては、特表2003−525521号、同2004−506985号、特開2002−314093号、同2003−258164号の各公報に記載されているような公知の技術を適用することができる。また、後述するゲート絶縁層として用いる絶縁膜を保護膜として適用することもできるし、後述する支持体を支持体上に作製した有機薄膜トランジスタ上に更に貼り付けたり、ポリマーシートによってラミネートしたりすることで保護膜を形成してもよい。
【0072】
本発明で用いられる基板(例えば、シリコン基板上に形成された熱酸化膜等の絶縁膜)は、予め表面処理を施しておいてもよい。表面処理としては、シランカップリング剤による処理のように基板上に自己配列型の薄膜を形成するようなものがより好ましい。前記シランカップリング剤としては、オクタデシルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリクロロシラン、i−ブチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、4−フェニルブチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリクロロシラン等の公知の材料が好ましい例として挙げられるが、本発明はこれらに限らない。
【0073】
また、シランカップリング剤を用いた表面処理方法については、特開2004−327857号、同2005−32774号、同2005−158765号の各公報に開示されているような公知の方法を適用することができる。例えば、CVD法等の気相法、スピンコート法やディップコート法等の液相法、更にスクリーン印刷法、マイクロモールド法、マイクロコンタクト法、インクジェット法等の印刷法等を適用することができる。
【0074】
また、シランカップリング剤による処理を行う前に基板表面に対して酸素プラズマ処理、UVオゾン処理等の親水化処理(表面に水酸基−OHを形成する処理)を行うことが、緻密で強固な自己組織化単分子膜を形成する上で好ましいことが一般的に知られており、前述した特許文献等にも記載されている。更に、一般的によく知られたラビング等の配向処理を施しても構わない。
【0075】
本発明において形成される有機半導体層の膜厚としては特に制限はないが、得られた有機薄膜トランジスタ(TFT)の特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は有機半導体材料により異なるが一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0076】
また有機半導体層には、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基等の官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン及びテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体等のように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えば、アミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基等の官能基を有する材料、フェニレンジアミン等の置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体等のように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、所謂ドーピング処理を施してもよい。
【0077】
前記ドーピングとは電子授与性分子(アクセプター)、または電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして該薄膜に導入することを意味する。従って、ドーピングが施された薄膜は、本発明の有機半導体材料とドーパントを含有する薄膜である。本発明に用いるドーパントとしては、アクセプター、ドナーのいずれも使用可能であり、アクセプター、ドナーとしては公知の材料を用い、その導入には公知のプロセスを用いることができる。
【0078】
本発明の好ましい態様の一つである前記ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを例にとれば、有機薄膜トランジスタは支持体上にゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極、ドレイン電極がそれぞれ最適に配置されることで構成されるものである。
【0079】
従って、例えば、支持体上にゲート電極を形成した後、ゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に前記の方法にて活性層(有機半導体層(薄膜))を形成した後、それぞれソース、ドレイン電極を形成することにより本発明の有機薄膜トランジスタは形成される。
【0080】
また、例えば、ゲート絶縁膜形成後、ゲート絶縁膜上にソース、ドレイン電極パターンを形成し、該ソース、ドレイン電極間に有機半導体チャネルをパターニングにより形成してもよい。
【0081】
このように支持体上にゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層(有機半導体層)、ソース電極、ドレイン電極をそれぞれ必要な場合には適宜パターニングし、最適に配置することで、本発明の有機薄膜トランジスタは得られる。
【0082】
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの活性層(有機半導体層(薄膜))以外の有機薄膜トランジスタを構成するその他の構成要素について説明する。
【0083】
本発明において、前記ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ、アンチモン、酸化インジウム−錫(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物が用いられるが、特に白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO及び炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも、有機半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0084】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いて電極形成する方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0085】
本発明においては、前記ソース、ドレイン電極は前記導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液等の流動性電極材料から形成されることが好ましく、例えば、金属等からなる導電性微粒子を好ましくは有機材料からなる分散安定剤を用いて、水や有機溶剤またはその混合物である分散媒中に分散させ、ペーストあるいはインク等の導電性微粒子分散液とし、これを塗設、パターニングすることで電極を形成することが好ましい。
【0086】
導電性微粒子の金属材料(金属微粒子)としては、白金、金、銀、コバルト、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができるが、特に仕事関数が4.5eV以上の白金、金、銀、銅、コバルト、クロム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、モリブデン、タングステンが好ましい。
【0087】
このような金属微粒子分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法等の物理的生成法や、コロイド法、共沈法等の、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは特開平11−76800号、同11−80647号、同11−319538号、特開2000−239853号の各公報に示されたコロイド法、特開2001−254185号、同2001−53028号、同2001−35255号、同2000−124157号、同2000−123634号の各公報に記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子分散物である。
【0088】
分散される金属微粒子の平均粒径としては、20nm以下であることが本発明の効果の点で好ましい。
【0089】
また、金属微粒子分散物に導電性ポリマーを含有させることが好ましく、これをパターニングして押圧、加熱等によりソース電極、ドレイン電極を形成すれば、導電性ポリマーにより有機半導体層とのオーミック接触を可能とできる。即ち、金属微粒子の表面に導電性ポリマーを介在させて、有機半導体への接触抵抗を低減させ、且つ金属微粒子を加熱融着させることで、更に本発明の効果を高めることができる。
【0090】
導電性ポリマーとしては、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーを用いることが好ましく、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が好適に用いられる。
【0091】
金属微粒子の含有量は、導電性ポリマーに対する質量比で0.00001〜0.1が好ましい。この量を超えると金属微粒子の融着が阻害されることがある。
【0092】
これらの金属微粒子分散物で電極を形成した後、加熱により前記の金属微粒子を熱融着させてソース電極、ドレイン電極を形成する。また、電極形成時に概ね1〜50000Pa、更に1000〜10000Pa程度の押圧をかけ、融着を促進することも好ましい。
【0093】
上記金属微粒子分散物を用いて電極様にパターニングする方法としては、例えば、金属微粒子分散物をインクとして用いて印刷法によりパターニング方法がある。また、インクジェット法によりパターニングする方法があり、これは金属微粒子分散物をインクジェットヘッドより吐出し、金属微粒子の分散物をパターニングする方法であり、インクジェットヘッドからの吐出方式としては、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式等のオンデマンド型や静電吸引方式等の連続噴射型のインクジェット法等公知の方法によりパターニングすることができる。
【0094】
加熱また加圧する方法としては、加熱ラミネータ等に用いられる方法をはじめ公知の方法を用いることができる。
【0095】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。
【0096】
無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。これらの内、好ましいのは酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化珪素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0097】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)、ディップコート法、キャスト法、リールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0098】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布乾燥する所謂ゾルゲル法が用いられる。
【0099】
これらの内、好ましいのは大気圧プラズマ法である。
【0100】
大気圧プラズマ法による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号の各公報に記載されている。これによって、高機能性の薄膜を生産性高く形成することができる。
【0101】
また、有機化合物皮膜の形成法としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0102】
有機化合物皮膜の形成法としては前記ウェットプロセスが好ましい。
【0103】
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。また、これら絶縁膜の膜厚としては一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
【0104】
また、支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えば、プラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可とう性を高めることができると共に衝撃に対する耐性を向上できる。
【0105】
特にプラスチックフィルムを支持体として用いる場合は、例えば、特開2004−134694号公報に開示されているようなガスバリア層を始めとして、酸素、液体(水)、光等から有機薄膜トランジスタ素子を保護するための少なくとも一層、あるいは多層構成のバリア層を更に有することが好ましい。
【0106】
図1に本発明の有機薄膜トランジスタ(TFT)の構成例を示す。
【0107】
図1(a)は、支持体6上にマスクを用いて金等を蒸着によりパターン形成することにより、あるいは金属微粒子を含む層のパターンを形成した後、金属微粒子を含む層を加熱加圧して融着させる等して、ソース電極2、ドレイン電極3を形成し、ソース、ドレイン電極間に有機半導体材料層1を形成し、その上にゲート絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して有機TFTを形成したものである。
【0108】
図1(b)、(c)に、トップゲート型の有機薄膜トランジスタの他の構成例を示す。
【0109】
また、図1(d)〜(f)はボトムゲート型の有機TFTの構成例を示す。図1(d)は支持体6上にゲート電極4を形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上にソース電極2、ドレイン電極3を形成して、該ソース、ドレイン電極間のゲート絶縁層上に有機半導体材料層1を形成してボトムゲート型の有機TFTを形成したものである。同様に他の構成例を図1(e)、(f)に示す。中でも図1(f)は支持体6上にゲート電極4を形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上に有機半導体材料層1を形成した後、更にソース電極2、ドレイン電極3を形成して有機TFTを形成したものである。
【0110】
図2は、前記有機薄膜トランジスタを用いて、液晶、電気泳動素子等の出力素子様に構成されたTFTシートの概略等価回路図の1例である。
【0111】
TFTシート10は、マトリクス配置された多数の有機TFT11を有する。7は各有機TFT11のゲートバスラインであり、8は各有機TFT11のソースバスラインである。各有機TFT11のソース電極には、例えば、液晶、電気泳動素子等の出力素子12が接続され、表示装置における画素を構成する。画素電極は光センサの入力電極として用いてもよい。図示の例では、出力素子として液晶が抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。13は蓄積コンデンサ、14は垂直駆動回路、15は水平駆動回路である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
実施例1
《有機薄膜トランジスタ素子の作製》
図1(f)に記載の層構成を有する有機薄膜トランジスタ素子(以下、TFT素子と呼ぶ)1を作製した。
【0114】
まず、ゲート電極4としての比抵抗0.02Ω/cmのSiウエハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層5とした。以下、これを基板と呼ぶ。
【0115】
基板を窒素雰囲気下、ホットプレート上で加熱しながら、基板上に比較化合物(C−1)の0.1%トルエン溶液を滴下し、塗布膜(厚さ50nm)を形成した。更にこの膜の表面にマスクを用いて金を蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成した。ソース及びドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmのTFT素子1を作製した。
【0116】
比較化合物(C−1)を比較化合物(C−2)(ペンタセン、アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)に代えた他は、TFT素子1と同様の方法でTFT素子2を作製した。
【0117】
【化15】
【0118】
更に比較化合物(C−1)を表1に示した本発明に係る例示化合物に代えた他は、TFT素子1と同様の方法で、TFT素子3〜15を作製した。
【0119】
《TFT素子の評価》
(トランジスタ特性)
以上のように作製したTFT素子1〜15は、pチャンネルのエンハンスメント型FETの動作特性を示した。それぞれのTFT素子について、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求め、更にON/OFF比(ドレインバイアス−40Vとし、ゲートバイアス−50V及び0Vにしたときのドレイン電流値の比率)を求め、結果を表1に示した。また、25℃、湿度45%の条件下で1ヶ月放置したとき、及び50℃、湿度60%の条件下で1ヶ月放置したとき、それぞれのキャリア移動度及びON/OFF比についても評価し、表1に示した。
【0120】
【表1】

【0121】
表1より、本発明の有機半導体材料を有機半導体層に用いた有機薄膜トランジスタは、比較に比べて、移動度が高く、溶液プロセス適性に優れ、大気中での経時劣化を抑える効果、特に高温、高湿度下における経時劣化を抑える効果が大きいことが分かった。一方、比較化合物(C−1)、あるいは(C−2)を有機半導体層に用いた場合では、溶液プロセスによる均一な結晶性薄膜を形成し難く、素子作成直後においても望ましいトランジスタ特性を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0122】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
7 ゲートバスライン
8 ソースバスライン
10 TFTシート
11 有機TFT
12 出力素子
13 蓄積コンデンサ
14 垂直駆動回路
15 水平駆動回路
図1
図2