(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路側通信機からの無線送信専用のタイムスロットが時分割で割り当てられ、そのタイムスロット以外の時間帯だけ移動通信機が無線送信するのを許容する無線通信システムであって、
前記移動通信機は、前記タイムスロットに関するスロット情報を受信する受信手段と、
前記タイムスロットの開始時刻が揃えられている異なる前記路側通信機から受信した複数の前記スロット情報から抽出した前記タイムスロットのスロット長が揃っていない場合に、最長の前記スロット長を自身の送信が許容されていない時間帯とする送信制御手段と、を有することを特徴とする無線通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記高度道路交通システムにおいては、車車間通信をはじめ、路車間通信や路路間通信及び路歩間通信も含め、これらの各通信の共存を図るに当たって、帯域を有効利用してどのような通信制御を行うかが課題となる。
そこで、限られた周波数帯域内で路路間、路車間及び車車間の各通信を行うべく、マルチアクセス(Multiple Access)が用いられることが検討されている。
【0006】
このマルチアクセス方式としては、周波数分割多重(FDMA:Frequency Division Multiple Access )や符号分割多重(CDMA:Code Division Multiple Access)があるが、山間部などで少数の車載通信機のみでの通信も想定される車車間通信のマルチアクセス方式としては、例えばCSMA(Carrier Sense Multiple Access )に代表される自律的なランダムアクセス方式を採用するのが好ましい。
しかし、路側通信機が存在するエリアでは、路車間通信、路路間通信及び車車間通信が共存する。
【0007】
この場合、インフラ側である路側通信機が取り扱う情報の優先度が高いのが一般的であることから、車車間通信よりも路車間通信や路路間通信が優先的に行われる仕組みが必要である。
このように、路側通信機の情報送信を優先的に行うためには、通信を行う時間を分割して路側通信機の送信専用の時間スロットを設ける、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access)によるマルチアクセスが有効となる。
【0008】
従って、例えば、交差点ごとに設置された複数の路側通信機群で構成される通信システムを想定すると、路側通信機が無線送信する路側からの無線送信専用のタイムスロットをTDMA方式で割り当て、残ったタイムスロットをCSMA方式による車車間通信に使用させるのが、合理的な通信システムになると考えられる。
なお、この場合、各路側通信機からの送信タイミングを制御するため、各路側通信機は他の路側通信機との時刻同期機能を有している必要がある。
【0009】
上記のような路側の送信制御のためのTDMA方式と、車車間でのマルチアクセスのためのCSMA方式が混在する高度道路交通システムでは、各路側通信機の送信タイミングに関するスロット情報(タイムスロットの開始時刻やスロット長等)を、車載通信機に通知する必要がある。
その通知方式の1つとしては、路側通信機がスロット情報をダウンリンク信号に含めてブロードキャスト送信する方式が考えられ、この場合、車載通信機は各路側通信機のダウンリンクエリアにおいて個別にスロット情報を取得することになる。
【0010】
一方、隣接する複数の交差点に路側通信機を設置する場合には、ダウンリンクエリアの重複範囲にある車載通信機に対する電波干渉(以下、「直接干渉」ということがある。)が生じないよう、当該直接干渉が発生する位置関係にある路側通信機同士については、その送信時間を異なるタイムスロットに割り当てる必要がある。
逆に、上記直接干渉が生じない位置関係にある路側通信機同士については、スロット数を少なくして出来るだけ車載通信機の送信時間帯を確保するため、基本的に同じ開始時刻のタイムスロットに割り当てて送信タイミングを重複させることが好ましい。
【0011】
しかし、路側通信機が設置される交差点の規模によって必要な送信データ量が変化するので、同じ開始時刻のタイムスロットに重複して割り当てられた複数の路側通信機についてのスロット長が揃っていないことがあり得る。
この場合、長い方のスロット長に従う特定の車載通信機に対して、そのスロット長を採用する路側通信機のダウンリンク信号と、短い方のスロット長に従う他の車載通信機からの送信信号との電波干渉(以下、「間接干渉」ということがある。)が発生し、当該特定の車載通信機がダウンリンク信号を適切に受信できない場合がある。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み、路側通信機用のタイムスロットが時分割で割り当てられ、そのタイムスロット以外の時間帯で移動通信機が無線送信する無線通信システムにおいて、移動通信機による無線送信を介した間接干渉を有効に防止すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の無線通信システムは、路側通信機からの無線送信専用のタイムスロットが時分割で割り当てられ、そのタイムスロット以外の時間帯だけ移動通信機が無線送信するのを許容する無線通信システムであって、前記移動通信機は、前記タイムスロットに関するスロット情報を受信する受信手段と、
前記タイムスロットの開始時刻が揃えられている異なる前記路側通信機から受信した複数の前記スロット情報から抽出した前記タイムスロットのスロット長が揃っていない場合に、最長の前記スロット長を自身の送信が許容されていない時間帯とする送信制御手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の無線通信システムによれば、上記受信手段が、タイムスロットに関するスロット情報を受信し、上記送信制御手段が、
タイムスロットの開始時刻が揃えられている異なる路側通信機から受信した複数のスロット情報から抽出した前記タイムスロットのスロット長が揃っていない場合に、最長のスロット長を自身の送信が許容されていない時間帯とするので、各路側通信機が使用するタイムスロットのスロット長が路側通信機ごとに異なっていても、そのスロット長が揃っていないことに起因する、移動通信機による無線送信を介した間接干渉を有効に防止することができる。
【0015】
本発明の無線通信システムでは、具体的には、各々の前記路側通信機が使用する前記タイムスロットの開始時刻が揃えられている。
その理由は、複数の路側通信機から取得したタイムスロットのうちのどれが最長であるかをスロット長から判断するには、各路側通信機が使用するタイムスロットの開始時刻が揃っていることが前提となるからである。
【0016】
(
2) また、本発明の無線通信システムにおいて、周期的に繰り返す複数の前記タイムスロットのうちのどの前記タイムスロットかを表すスロット番号が含まれる場合には、前記送信制御手段は、前記スロット番号が同じである前記タイムスロットのスロット長が揃っていない場合に、最長の前記スロット長を自身の送信が許容されていない時間帯とすればよい。
その理由は、スロット番号が異なるタイムスロットの場合には、そもそも路側通信機の送信時間が重複しないので、間接干渉が生じないからである。
【0020】
(
3)〜(
4) 本発明の移動通信機は、本発明の無線通信システムの構成要素となる移動通信機であって、本発明の無線通信システムと同じ技術的特徴を有する。従って、本発明の移動通信機は、本発明の無線通信システムと同様の作用効果を奏する。
(
5) 本発明の送信制御方法は、本発明の移動通信機についての送信制御方法であって、本発明の移動通信機と同じ技術的特徴を有する。従って、本発明の送信制御方法は、本発明の移動通信機及び無線通信システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、移動通信機による無線送信を介した間接干渉を有効に防止することができるので、移動通信機が路側通信機からのダウンリンク信号をより確実に受信できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。なお、本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(
図2及び
図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0024】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0025】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、感知情報S4や画像データS5は通信回線7を介して中央装置4に送信される。
なお、
図1及び
図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0026】
〔中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点Jiの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0027】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令S1や、渋滞情報等を含む交通情報S2を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している(
図1参照)。
信号制御指令S1は、前記系統制御や広域制御を行う場合の信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は、例えば5分ごとに送信される。
【0028】
また、中央装置4の通信部は、各交差点Jiに対応する路側通信機2から、その通信機2が車載通信機3から受信した車両5の現在位置等を含む車両情報S3、車両通過時に生じるパルス信号よりなる車両感知器(図示せず)の感知情報S4、及び、監視カメラが撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データS5等を受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
【0029】
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えた無線通信システムとしても機能している。
【0030】
図1及び
図2の例では、複数の路側通信機2は、それぞれ路側の交差点Jiごとに設置されていて、交通信号機1の支柱に取り付けられている。一方、車載通信機3は、道路を走行する車両5の一部又は全部に搭載されている。
車両5に搭載された各車載通信機3は、路側通信機2からのダウンリンク信号の到達範囲であるダウンリンクエリアAにおいてダウンリンク信号を受信可能である。
【0031】
また、本実施形態では、車載通信機3の送信信号の到達距離は、路側通信機2のダウンリンク信号の到達距離以下であるとする。従って、各路側通信機2は、自装置のダウンリンクエリアAの範囲内を走行する車載通信機3との無線通信が可能である。
このように、本実施形態ITSでは、車載通信機3同士(車車間通信)の通信と、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)の通信については、無線通信が用いられている。
【0032】
また、隣接する路側通信機2同士の設置位置が比較的近く、互いのダウンリンクエリアAが重複(一部重複でも全部重複でもよい。)する場合には、その路側通信機2同士での無線通信(路路間通信)が可能である。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能であるが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0033】
路側通信機2は、自身が無線送信するための専用のタイムスロット(
図4の第1スロットT1)をTDMA方式で割り当てており、このタイムスロット以外の時間帯(
図4の第2スロットT2)には無線送信を行わない。
すなわち、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
【0034】
また、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。
この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS衛星から取得した時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0035】
〔路側通信機〕
図3は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20が接続された無線通信部(送受信部)21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、それらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
【0036】
路側通信機2の記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
路側通信機2の制御部23は、上記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部として、無線通信部21の送信タイミングを制御する送信制御部23Aと、各通信部21,22の受信データの中継処理を行うデータ中継部23Bとを有する。
【0037】
路側通信機2のデータ中継部23Bは、有線通信部22が受信した中央装置4からの交通情報S2等を、いったん記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21にブロードキャスト送信させる。
また、データ中継部23Bは、無線通信部21が受信した車両情報S3を、いったん記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送する。
【0038】
路側通信機2の送信制御部23Aは、他装置との間で送信タイミングを同期させつつ、自装置に割り当てられた所定のスロット番号iのタイムスロットT1(
図4参照:以下、「スロットi」ということがある。)内において、所定の送信時間だけ無線送信を行う。
すなわち、路側通信機2の記憶部24は、例えば次のa)及びb)の情報を含むスロット情報S6を記憶している。このスロット情報S6は路側通信機2ごとに個別に設定されている。
a) 自装置が使用中のスロット番号i(
図4参照)
b) スロット番号iの第1スロットT1(
図4参照)の開始時刻及び継続時間
【0039】
また、路側通信機2の記憶部24は、自装置からダウンリンク送信すべき情報量(送信データ量)に対応する送信時間と、その送信開始時刻とを記憶している。この送信開始時刻と送信時間は、自装置に割り当てられたタイムスロットT1内に収まるように、路側通信機2ごとに個別に設定される。
送信制御部23Aは、設定された送信時間長のダウンリンク信号を生成して、このダウンリンク信号を設定された送信開始時刻に無線通信部21に送信させる。
【0040】
路側通信機2の送信時間は、自装置に割り当てられたタイムスロットT1の継続時間(スロット長)の最大限に設定してもよいが、他の通信機2,3との同期ずれや受信側の情報処理時間等を考慮して、所定のマージン(例えば10μsオーダーのガードタイム)をもってスロット長よりもやや短めに設定されることが好ましい。
また、路側通信機2の送信時間は、自装置に割り当てられたスロット長の範囲内で任意の時間長さに設定可能であり、そのスロット長よりも大幅に短い時間(例えば、1/3や1/2)に設定することもできる。
【0041】
なお、ダウンリンク信号の送信開始時刻と送信時間のうち、送信開始時刻については、自装置のスロット情報S6に含まれるスロットiの開始時刻に基づいて、各路側通信機2の送信制御部23Aが自律的に生成するようにしてもよい。
路側通信機2の送信制御部23Aは、上記スロット情報S6を含むダウンリンク信号に、現在時刻のタイムスタンプを付して無線通信部21にブロードキャスト送信させる。
【0042】
車載通信機3は、上記スロット情報S6とタイムスタンプを含むダウンリンク信号を受信すると、そのタイムスタンプの現在時刻を基準として、スロット情報S6に記されたスロット番号iの第1スロットT1以外の時間帯(
図4の第2スロットT2)に無線送信を行う。
なお、後述するメイン周期Cmをスロット情報S6に含めるようにすれば、スロットiの開始時刻やタイムスタンプの現在時刻をメイン周期Cm内の相対時刻で表現することができる。この場合、それらの時刻を絶対時刻で表現する場合に比べて、スロット情報S6のビット数を低減することができる。
【0043】
上記スロット情報S6には、少なくとも、自装置が使用するスロットiの時間が含まれていればよいが、路路間通信や中央装置4との通信によって他の路側通信機2のスロット情報S6が分かっている場合は、他装置のスロット情報S6を自装置から送信することにしてもよい。
【0044】
〔タイムスロットの内容〕
図4は、路車間通信のタイムスロットの一例を示す概念図である。
図4に示すように、路車間通信のタイムスロットは、第1スロットT1と第2スロットT2とを含み、これらの合計期間が一定のスロット周期Csで繰り返ようになっている。各スロット周期Csの第1スロットT1は、路側通信機2用のタイムスロットであり、この時間帯では路側通信機2による無線送信が許容される。
【0045】
第1スロットT1にはスロット番号iが付されており、このスロット番号iは周期的にインクリメント(デクリメントであってもよい。)される。
また、第2スロットT2は、車載通信機3用のタイムスロットであり、この時間帯は車載通信機3による無線送信用として開放するため、路側通信機2の送信制御部23Aは第2スロットT2では無線送信を行わない。
【0046】
スロット番号iは、予め定められた所定数nとなると当初番号(図例ではi=1)に戻る。従って、n回分のスロット周期Csをメイン周期Cmとすると、各スロット番号i〜nの第1スロットT1はそのメイン周期Cmごとに1回ずつ生じる。
なお、各周期Cs,Cmの時間長やスロット周期Csの総数nについては、システム事業者が適宜設定することができるが、本実施形態では、一例として、Cs=10ms、Cm=100ms及びn=10とする。
【0047】
図4において、スロット番号i=1〜3の第1スロットT1に記したドット●は、当該スロット番号iの第1スロットT1に無線送信する路側通信機2を示し、ドット●が複数あるスロット1,2は、複数の路側通信機2の送信タイミングが重複しており、当該スロット番号iを複数の路側通信機2が共用していることを示す。
すなわち、
図4の例では、スロット1を、交差点J1と交差点J11に設置された2つの路側通信機2が共用しており、スロット2を、交差点J2、交差点J9、交差点J10に設置された3つの路側通信機2が共用している。
【0048】
その理由は、例えば
図1の交差点J1と交差点J11のように、距離が離れた路側通信機2同士はダウンリンクエリアAが重複しておらず、1つの車載通信機3が複数の路側通信機2から同時にダウンリンク信号を受ける直接干渉(
図6(a)参照)が生じないか、或いはその可能性が極めて低いことから、これらに同じスロットiを設定して各路側通信機2の送信時間が重複しても、車載通信機3が各路側通信機2からダウンリンク信号を適切に受信できるからである。
【0049】
一方、1つの車載通信機3について上記直接干渉が発生し得る、比較的近い位置関係にある路側通信機2同士の場合は、スロット番号iを同じに設定して送信時間を重複させることはできない。
もっとも、直接干渉が発生し得る路側通信機2同士でも、第1スロットT1内において時分割で送信時間をスケジューリングすれば、同じスロット番号iを共用することもできる。なお、直接干渉が生じないために同じスロット番号iを使用する路側通信機2同士でも、
図6(b)に示す間接干渉が生じる場合があるが、この点については後述する。
【0050】
〔車載通信機〕
図3に戻り、車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部(送受信部)31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信装置2,3の通信機ID等を記憶している。
【0051】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものであり、路側通信機2のような時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0052】
車載通信機3の制御部32は、前記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部として、通信部31の無線送信タイミングを制御する送信制御部32Aと、通信部31の受信データの中継処理を行うデータ中継部32Bとを有する。
車載通信機3の送信制御部32Aは、路側通信機2から取得したスロット情報S6の開始時刻とスロット情報S6に従って、自身に許容された無線送信の時間帯を設定し、この時間帯だけ通信部31に無線送信を行わせる。
【0053】
すなわち、送信制御部32Aは、路側からのダウンリンク信号や車側からの受信フレームから路側通信機2のスロット情報S6を抽出するともに、ダウンリンク信号に含まれるタイムスタンプの時刻を基準として、スロット情報S6に記されたスロット番号iのタイムスロットT1以外の時間帯(
図4の第2スロットT2)においてのみ、キャリアセンス方式による無線送信を通信部31に行わせる。
なお、車載通信機3の送信制御部32Aは、複数の路側通信機2の送信タイミングが重複して割り当てられたスロットiの場合は、複数のスロット情報S6に基づいて間接干渉を回避するための送信可能時間の設定処理を実行するが、その詳細については後述する。
【0054】
また、車載通信機3の送信制御部32Aは、車両5(車載通信機3)の現時の位置、方向及び速度等を含む車両情報S3を送信フレームに格納し、この送信フレームを、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信させる。
車載通信機3のデータ中継部32Bは、通信部31が受信した受信フレームから所定のデータを抽出し、抽出したデータを送信フレームに含めて同通信部31に送信させる中継処理を行うことができる。
【0055】
例えば、データ中継部32Bは、路側通信機2のダウンリンク信号から交通情報S3や他の車両5の車両情報S3を抽出し、抽出したデータを含む送信フレームを生成して通信部31に送信させる。
また、データ中継部32Bは、路側通信機2のダウンリンク信号や他の車両5から受信した受信フレームにスロット情報S6が含まれている場合には、そのスロット情報S6を抽出して記憶部33に一時的に記憶させるとともに、そのスロット情報S6を送信フレームに格納して通信部31に送信させる。
【0056】
本実施形態では、車載通信機3の送信フレームに中継回数のフィールドが定義されており、データ中継部32Bは、スロット情報S6を自身が送信する送信フレームに格納する場合には、受信フレームでのフィールド値を1つインクリメントした送信フレームを生成して、このフレームを通信部31に送信させる。
従って、路側通信機2から直接受信したスロット情報S6を自身が送信する送信フレームに含める場合には、中継回数のフィールド値は「1」となる。また、他車両5から受信した中継回数が「1」の受信フレームから抽出したスロット情報S6を自身が送信する送信フレームに含める場合には、中継回数のフィールド値は「2」となる。
【0057】
また、車載通信機3の送信制御部32Aは、スロット情報S6を含むダウンリンク信号や他の車両5からの受信フレームを受信すると、その受信時点からの経過時間をカウントするようになっている。
なお、本実施形態では、車載通信機3の制御部32は、他の車両5(車載通信機3)から直接受信した車両情報S3や、路側通信機2から受信した他の車両5の車両情報S3に含まれる、位置、速度及び方向に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避する安全運転支援制御を行うことができる。
【0058】
〔車載通信機の送信フレーム〕
図5は、車載通信機3の送信フレームのフォーマットの一例を示す図である。
図5に示すように、車載通信機3の送信フレームには、プリアンブル、ヘッダ、データ、CRC(Cyclic Redundancy Check)が含まれている。
このうち、ヘッダには、MACヘッダを拡張した拡張MACヘッダが定義されており、この拡張ヘッダに前記スロット情報S6やその中継回数が格納される。
【0059】
また、データには、車両5の位置、方向(進行方向)及び速度が含まれるが、路側通信機2からのダウンリンク信号を受信した場合の受信レベル等を含めることもできる。
車両5の位置や方向は、通常は、GPS等の車両5側のセンサ類が自律的に測定した情報であるが、光ビーコン等のインフラ側から取得可能な場合もある。速度は、車両5の速度センサに基づいた情報である。
【0060】
〔直接干渉と間接干渉〕
図6(a)は直接干渉の説明図であり、
図6(b)は間接干渉の説明図である。また、
図6(c)は間接干渉が発生し得るスロット割当を示すタイムチャートである。
以下、
図6を参照して、本実施形態の無線通信システムにおいて問題となる上記2種類の電波干渉の内容と、間接干渉を回避するための車載通信機3における送信制御方法について説明する。
【0061】
まず、「直接干渉」とは、1つの車載通信機3に対して複数の路側通信機2からのダウンリンク信号が同時に到達することをいう。この場合、複数のダウンリンク信号が衝突して電波干渉するため、車載通信機3がダウンリンク信号を適切に受信できなくなる可能性が高い。
かかる直接干渉は、
図6(a)に示すように、2つの路側通信機2X,2YのダウンリンクエリアA,Aが重複する範囲にある車両5に対して、各路側通信機2X,2Yが同時にダウンリンク送信する場合に発生する。
【0062】
上記直接干渉を回避するには、例えば、一方の路側通信機2Xの送信時間をスロットk(スロット番号i=kの第1スロットT1)に割り当て、他方の路側通信機2Yの送信時間をスロットk以外のスロットに割り当て、両者の送信時間をずらせばよい。
逆に言えば、上記直接干渉が生じない
図6(b)に示す位置関係にある路側通信機2X,2Y同士については、路側通信機2X,2Yからの送信信号の直接的な衝突のみを想定すれば、基本的に同じスロットkに割り当てるのが効率的である。
【0063】
これに対して、
図6(b)に示すように、第1の路側通信機2XのダウンリンクエリアAに第1の車載通信機3Xがあり、第1の路側通信機2Xと直接干渉が生じない位置関係にある第2の路側通信機2XのダウンリンクエリアAに、第2の車載通信機3Yがある場合を想定する。
この場合において、「間接干渉」とは、第1の路側通信機2Xのダウンリンク信号と、第2の車載通信機3Yの送信信号Sy、又は、この送信信号Syを契機として無線送信された他の車載通信機3Zの送信信号Szとが、第1の車載通信機3Xに対して同時に到達することをいう。
【0064】
かかる間接干渉は、
図6(c)に示すように、各路側通信機2X,2YのタイムスロットT1の継続時間(スロット長)が異なる場合に発生し得る問題である。
すなわち、
図6(c)に示すように、路側通信機2X,2Yの送信時間Tx,Tyが同じ開始時刻のスロットk(スロット番号i=kの第1スロットT1)に割り当てられているが、路側通信機2Xに割り当てられたスロット長Lxが、路側通信機2Yに割り当てられたスロット長Lyよりも長いと仮定する。
【0065】
この場合、路側通信機2X,2Yがそれぞれ相手方のスロット長を知らずに、自身のスロット情報だけをブロードキャスト送信するとすれば、路側通信機2XのダウンリンクエリアAでスロット情報を受信した第1の車載通信機3Xの場合は、長い方のスロット長Lxの範囲で無線送信が規制される。
これに対して、路側通信機2YのダウンリンクエリアAでスロット情報を受信した第2の車載通信機3Yの場合は、短い方のスロット長Lyの範囲でしか無線送信が規制されないので、スロット長Lyの経過後でかつスロット長Lxの経過前の時間帯(
図6(c)の(Lx−Ly)の時間帯)に無線送信を行うことができる。
【0066】
そして、上記時間帯(Lx−Ly)で第2の車載通信機3Yが無線送信を行うと、車載通信機3X,3Y間の距離が車載通信機3の電波到達距離以下の場合には、その時間帯(Lx−Ly)に送信された第2の車載通信機3Yの送信信号Syが、第1の車載通信機3Xに到達する。
また、車載通信機3X,3Y間の距離が電波到達距離を超える場合でも、第2の車載通信機3Yの送信信号Syを受けてデータ中継を行う第3の車載通信機3Zの送信信号Szが、第1の車載通信機3Xに到達することもあり得る。
【0067】
このように、直接干渉が生じない位置関係にあるため、路側通信機2X,2Yの送信時間Tx,Tyを同じ開始時刻のスロットkに割り当てる場合でも、各路側通信機2X,2Yのスロット長Lx,Lyが異なっている場合には、長い方のスロット長Lxの路側通信機2Xに従う第1の車載通信機3Xに対して、当該路側通信機2Xからのダウンリンク信号と、短い方のスロット長Lyの路側通信機2Yに従う第2の車載通信機3Yからの送信信号Sy(或いは、送信信号Syを契機とした別の送信信号Sz)が同時に到達する間接干渉が発生する可能性があり、かかる間接干渉が生じると、第1の車載通信機3Xが、路側通信機2Xのダウンリンク信号を適切に受信できなくなる恐れがある。
【0068】
なお、上記の説明では、
図6(b)において、車載通信機3Xが路側通信機2Xからそのスロット情報を直接受信し、車載通信機3Yが路側通信機2Yからそのスロット情報を直接受信する場合を想定したが、車載通信機3Yが、車載通信機3Xや車載通信機3Zからの中継により、路側通信機2Yのスロット情報だけでなく、路側通信機2Xのスロット情報を間接的に取得した場合でも、スロット情報の選択方法によっては、間接干渉の問題が発生し得る。
【0069】
すなわち、例えば、車載通信機3Yが、複数のスロット情報を直接又は間接に取得した場合に、その中から中継回数が最小のスロット情報に基づいて自身の送信可能時間を設定する方法が考えられるが、この方法では、常に路側通信機2Yから直接受信したスロット情報に基づいて自身の送信可能時間(この場合、路側通信機2Yが送信しない時間帯)を車載通信機3Yが設定することになるので、結局、スロット長Lyの範囲でしか無線送信が規制されず、依然として間接干渉が発生し得る。
【0070】
〔間接干渉を避けるための送信制御方法(原理)〕
そこで、本実施形態では、移動通信機3Yの送信制御部32Aが、受信した複数のスロット情報S6に基づいて、同じスロット番号kのスロットkを使用する、送信タイミングが重複する各路側通信機2X,2Yのいずれもが許容する時間帯を、自身の送信可能時間に設定することにより、上記間接干渉を回避するようにした。
【0071】
具体的には 車載通信機3Yの送信制御部32Aは、複数の路側通信機2X,2Yの送信時間が重複して割り当てられたスロットkに関して、路側通信機2Xのスロット情報S6を他の車載通信機(例えば、
図6(b)の車載通信機3Z)から取得し、路側通信機2Yのスロット情報S6を当該通信機2Yのダウンリンク信号で直接受信すると、各スロット情報S6に含まれるスロット長Lx,Lyをそれぞれ抽出し、このスロット長Lx,Lyの最大値(この場合はスロットLx)を重複割当に係るスロットkのスロット長と見なし、当該最大スロット長Lx以外の時間帯を自身の送信可能時間に設定する。
【0072】
換言すると、車載通信機3Yの送信制御部32Aは、同じスロット番号kを使用しているために送信タイミングが重複する複数の路側通信機2X,2Yのうち、送信時間が最長の路側通信機2Xが許容する時間帯(スロットLx以外の時間帯)を、自身の送信可能時間として設定する。
【0073】
このようにすれば、スロット長Lxとスロット長Lyの差分の時間帯(Lx−Ly)において車載通信機3Yが無線送信しなくなり、同じスロットkが割り当てられる複数の路側通信機2X,2Yのスロット長Lx,Lyが揃っていないために発生する、車載通信機3X〜3Zの無線通信を介した間接干渉を有効に防止することができる。
なお、
図6(b)及び(c)では、2つの路側通信機2X,2Yの場合を例示したが、3つ以上の路側通信機2に同じスロットkが重複して割り当てられている場合も同様である。すなわち、この場合は、送信制御部32Aが、3つ以上の路側通信機2についての各スロット長の最大値以外の時間帯を、自身の送信可能時間に設定することになる。
【0074】
図6(c)の例では、スロットkの開始時刻が各路側通信機2で共通することを前提としているが、同じスロット番号kでも路側通信機2X,2Yによって開始時刻が異なる場合もあり得る。そこで、車載通信機3Yの送信制御部32Aは、同じスロット番号kのタイムスロットT1を共用する路側通信機2X,2Yについて、そのうちの最も早いスロット開始時刻から最も遅いスロット終了時刻までの最大時間以外の時間帯を、自身の送信可能時間に設定することにしてもよい。
この場合には、複数の路側通信機2の送信タイミングが重複するスロットkのスロット長だけでなく、スロット開始時刻が揃っていない場合でも、前記間接干渉を有効に防止することができる。
【0075】
〔送信可能時間の設定処理の具体例〕
図7(a)は、路側通信機2X〜2Zと車載通信機3X,3Yの位置関係を示す道路平面図であり、
図7(b)は、車載通信機3Yによる送信可能時間の設定処理の具体例を示す説明図である。
以下、
図7を参照しつつ、車載通信機3Yの送信制御部32Aが行う送信可能時間の設定処理について説明する。
【0076】
図7(a)において、南北方向の2つの道路R1,R2のうち、左側の道路R1は幹線道路(例えば、合計4車線以上の道路)であり、右側の道路R2は幹線道路よりも規模が小さい側道であり、東西方向の3つの道路Ra〜Rcのうち、最も北側の道路Raは幹線道路であり、その他の道路Rb,Rcは側道であるとする。
【0077】
また、幹線道路R1,Ra同士が交差する大規模交差点に第1の路側通信機2Xが設置され、側道R2,Rc同士が交差する小規模交差点に第2の路側通信機2Yが設置され、車載通信機3Yから遠く離れた遠方(例えば、2km以上)の交差点に第3の路側通信機2Zが設置されているとする。
更に、各路側通信機2X〜2Zは、それぞれ直接干渉の位置関係ではないので、
図7(b)に示すように、同じ開始時刻(t=10m秒)のスロットkを使用している。
【0078】
また、送信データ量が多い大規模交差点にある第1の路側通信機2Xでは、長めのスロット長(=5m秒)のスロット情報SLxとなっており、送信データ量が少ない小規模交差点にある第2の路側通信機2Yでは、短めのスロット長(=3m秒)のスロット情報SLyとなっている。
なお、第3の路側通信機2Zは、路側通信機2Xよりも更に大規模な交差点に設置されていると仮定して、三者2X〜2Zの中では最も長いスロット長(=7m秒)のスロット情報SLzとなっている。
【0079】
また、2つの車載通信機3X,3Yは道路R2を走行中の車両に搭載され、第1の車載通信機3Xが第1の路側通信機2Xのダウンリンク信号を受信可能であり、第2の車載通信機3Yが第2の路側通信機3Xのダウンリンク信号を受信可能な位置関係にある。
かかる状況下において、車載通信機3Yの送信制御部32Aは、まず、自身が取得した各スロット情報SLx〜SLzの中継回数と、その受信時から現在時刻までの経過時間とに基づいて、各スロット情報SLx〜SLzの有効性を判定する。
【0080】
具体的には、送信制御部32Aは、スロット情報SLx〜SLzの中継回数が所定の閾値(例えば、5回)以下であるか否かを判定する。また、送信制御部32Aは、スロット情報SLx〜SLzの経過時間が所定の閾値(例えば、10分)以下であるか否かを判定する。
そして、送信制御部32Aは、それらの判定結果がいずれも肯定的であるスロット情報を有効とし、いずれかの判定結果が否定的であるスロット情報については、無効として送信可能時間の設定処理の対象から除外する。
【0081】
図7(b)の例では、第1及び第2のスロット情報SLx,SLyが、各判定をいずれもクリアしているため有効なスロット情報と判定され、第3のスロット情報Szが、各判定をいずれもクリアしていないため無効なスロット情報と判定されている。
次に、車載通信機3Yの送信制御部32Aは、有効と判定されたスロット情報SLx,SLyからスロット長をそれぞれ抽出し、その中の最大値(=5m秒)を、路側通信機2X,2Yの送信タイミングが重複するスロットkのスロット長であると見なして、その最大値以外の時間帯を、自身の送信可能時間(
図7(b)のハッチング部分)に設定する。
【0082】
これにより、車載通信機3Yが、スロットkにおける13〜15m秒の時間帯に無線送信しなくなるので、路側通信機2Xのダウンリンク信号と車載通信機3Yからの送信信号とが車載通信機3Xに同時に到達しなくなり、前記した間接干渉が防止される。
また、本実施形態では、車載通信機3Yの送信制御部32Aが、スロット情報SLx〜SLzの中継回数や経過時間に基づいてその有効性を判定するので、車載通信機3Yから見て無関係な路側通信機2Zのスロット情報SLzが除外される。
【0083】
このため、第3の路側通信機2Zのスロット情報SLzを送信可能時間の設定処理の対象に含めることに伴う、当該送信可能時間の無駄な短縮を未然に防止することができる。
すなわち、
図7(b)の例では、実は第3の路側通信機3Zのスロット長が7m秒(=最大長)であるため、このスロット情報SLzを除外しないと、遠方にある路側通信機3Zのスロット長によって車載通信機3Yの送信可能時間が無駄に短縮するが、本実施形態では、第3の路側通信機2Zのスロット情報SLzが無効として除外されるので、かかる送信可能時間の短縮を未然に防止できる。
【0084】
また、本実施形態では、車載通信機3Yの送信制御部32Aが、受信した複数のスロット情報SLx〜SLzの中で有効なものについては、他の車載通信機3X,3Zから中継された路側通信機2Xのスロット情報SLxであっても、送信可能時間の設定対象に含めるようになっている。
このため、車載通信機3Yが、最小の中継回数のスロット情報SLyに基づいて送信可能時間を設定することに伴う間接干渉を有効に防止することができる。
【0085】
なお、上記の例では、車載通信機3Yの送信制御部32Aが、スロット情報SLx〜SLzの中継回数と経過時間の双方に基づいてその有効性を判定しているが、いずれか一方のみでその有効性を判定することにしてもよい。
【0086】
〔その他の変形例〕
今回開示した各実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内での全ての変更が含まれる。
【0087】
上記実施形態の高度道路交通システムおいて、車載通信機3の代わりに或いは車載通信機3に加えて、歩行者等が携帯する通信機(携帯通信端末)を用いてもよい。もっとも、この場合には、その携帯通信端末が、上記実施形態の車載通信機3の場合と同様に、路側通信機2の送信時間(第1スロットT1)中においては無線送信を行わないという規約に従う必要がある。