(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる前記工程において、前記第1の基材の積層方向に直交する方向から前記半導体装置の断面をみたときに、前記接合面が前記第1の端子または前記第2の端子の表面の長さに対して90%以上の長さで形成されている、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる前記工程において、前記接合面は、前記半田層を構成する半田成分と、前記第1の端子または前記第2の端子を構成する金属成分との合金が含まれる、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる前記工程において、前記第1の基材の積層方向に直交する方向から前記半導体装置の断面をみたときに、前記接合面が前記第1の端子または前記第2の端子の表面の長さに対して90%以上の長さで形成されている、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。なお、本明細書中において「〜」は特に断りがなければ、「以上から以下」を表す。
【0016】
まず、本実施形態の半導体装置の製造方法を説明するのに先立ち、本実施形態によって得られる半導体装置を搭載した電子部品の例について説明する。
【0017】
図1および
図2は、本実施形態の電子部品の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図の上側を「上」、図の下側を「下」ということもある。
【0018】
図1に示す電子部品20は、Chip On Chip(COC)型の半導体パッケージであり、2つの半導体チップ21と、半導体チップ21を支持する基板40と、所定のパターンに形成された配線パターン24と、複数の導電性を有するバンプ60とを有している。半導体チップ21と基板40上の配線パターン24は、ワイヤ26を介して電気的に接続されており、半導体チップ21は接着剤25により基板40に接着されている。また、半導体チップ21の接続部23間は絶縁部22により絶縁性が保たれている。
【0019】
図2に示す電子部品30は、Chip On Chip(COC)型の半導体パッケージであり、2つの半導体チップ31と、半導体チップ31を支持する基板40と、所定のパターンに形成された配線パターン32と、複数の導電性を有するバンプ60とを有している。半導体チップ31と基板40上の配線パターン32は、導電部33および導電部34を介して電気的に接続されており、また、接続部間は絶縁部35により絶縁性が保たれている。
【0020】
基板40は、絶縁基板であり、例えばポリイミド樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)等の各種有機樹脂を含有する材料、あるいは、ガラス繊維基材などの無機材料と上述の有機樹脂を含有する材料からなる複合材料で構成されている。この基板の平面視構造は、通常、正方形、長方形等の四角形である。
【0021】
基板40上の上面には、例えば、銅などの導電性金属材料にて構成される配線パターン24、32が所定形状で設けられている。また、基板40には、その厚さ方向に、図示しない複数のビアが貫通して形成されている。
【0022】
各バンプ60は、上記ビアを介して、配線パターン24、32の一部に電気的に接続され、基板40の下面から突出している。バンプ60の基板40から突出する部分は、略球状形をなしている。
【0023】
このバンプ60は、たとえば、半田、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうのようなろう材を主材料として構成されている。
【0024】
図1に示す電子部品20の半導体チップ21と、基板40は、たとえばエポキシ系樹脂等の各種樹脂材料で構成される接着剤25により接続され、ワイヤ26を介して電気的に接続されている。また、
図2に示す電子部品30の半導体チップ31と配線パターン32とは電気的に接続されている。
【0025】
上述した電子部品においては、半導体チップと半導体チップ、または半導体チップと基板とが積層した構造を有しており、これらの連結部周辺には絶縁部が設けられ、絶縁信頼性を確保している。
【0026】
すなわち、上記のような電子部品を作製するにあたっては、効率的に各層を電気的に接続する技術の開発をすることが重要であるものといえる。
このような技術背景のなか、本発明者らが鋭意検討した結果、以下に示す半導体装置の製造方法が効率的に各層を電気的に接続できることを知見した。
以下、各実施形態について詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
本実施形態の半導体装置の製造方法は、
第1の端子を備えた第1の基材と、第2の端子を備えた第2の基材と、を準備する工程と、
前記第1の基材の前記第1の端子を備える面上に、樹脂組成物の層を設ける工程と、
前記第2の基材に対して、前記樹脂組成物の層を介して、前記第1の端子と前記第2の端子とを対向させるように、前記第1の基材を積層する工程と、
第1の温度で加熱することで半田を介して前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる工程と、
さらに加熱することで半田リフローを行う工程と、
を含む、半導体装置の製造方法であって、
前記第1の端子と前記第2の端子の少なくともいずれか一方が、当該端子表面に半田層を備えるものであり、
前記第1の温度は、前記半田層を構成する半田成分の融点よりも20℃以上40℃以下低い温度であり、
前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる前記工程は、前記第1の端子と前記第2の端子とを接触させた後、さらに、前記半田層を変形させて前記第1の端子と前記第2の端子とを接近させることにより前記第1の端子と前記第2の端子との間の接合面を形成する工程を含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0028】
以下、このように、基材と他の基材とが積層した構造を有する半導体装置を形成する方法について、
図3、
図4および
図5を示しながら説明する。
【0029】
<第1の製造方法>
図3は本実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための図である。
当該<第1の製造方法>において、半導体チップ103には半田層104を備える端子102が設けられており、この端子102が設けられた面に樹脂組成物の層110が設けられている。この半導体チップ103は、半導体ウエハ100に対し、端子102と半導体ウエハ100の備える端子101を樹脂組成物の層110を介して対向させるように配置され、その後加熱することにより半導体ウエハ100との電気的な接続が図られる。
すなわち、当該<第1の製造方法>においては、本発明における「第1の基材」が「半導体チップ103」に、「第2の基材」が「半導体ウエハ100」に相当する。しかしながら、各種基材としては、発明の目的を損なわない限り設定することができ、リジッド有機基板、フレキシブル有機基板のような有機基板、シリコン基板等の無機基板、シリコンチップ、シリコンウエハなども同様に用いることができ、作製する半導体装置の構造に合わせて、適宜基材を組み合わせることができる。
【0030】
また、本<第1の製造方法>においては、半導体チップ103に樹脂組成物の層110が設けられているが、この代わりに半導体ウエハ100の端子101が設けられている面側に樹脂組成物の層110が設けられていてもよい。さらに、半導体チップ103の端子102が設けられている面側と、半導体ウエハ100の端子101が設けられている面側の両方に樹脂組成物の層110が設けられていてもよい。このような態様であっても、本<第1の製造方法>と同様の効果を発揮できる。
以下、本<第1の製造方法>における各工程について順を追って説明する。
【0031】
まず、
図3 a)に示すように、端子101を備えた半導体ウエハ100を準備する。
この端子101を構成する部材としては、電気的な接続を十分に図れる部材であれば特に制限なく公知の材料から選択することができる。その具体的な例としては例えば、銅や金、ニッケル、アルミ、鉄、ステンレス等が挙げられる。
【0032】
次に、
図3 b)に示すように、樹脂組成物の層110を備えた半導体チップ103を準備する。ここで、半導体チップ103は端子102を備えており、また、端子102の先端部に半田層104を備えている。さらに、これら端子102と半田層104とを被覆するように樹脂組成物の層110が設けられている。
このような半導体チップ103を用意するには、例えば以下のような方法を採用することができる。
すなわち、複数の端子102および半田層104が設けられた半導体ウエハに対し、樹脂組成物の層110を形成し、その後、当該半導体ウエハを所定の大きさにダイシングすることにより、所望の半導体チップ103を得ることができる。ここで、端子102は前述の端子101と同様の公知の材料を採用することができる。
【0033】
本実施形態において用いられる半田層104を構成する半田成分は公知の成分の中から適宜選択すればよいが、その例としては、SnやIn、もしくはSn、Ag、Cu、Zn、Bi、Pd、Sb、Pb、In、Auの少なくとも二種からなる半田を挙げることができる。
これらの中でも、環境に配慮する観点から鉛フリー半田を用いることが好ましい。
【0034】
半田成分の融点は、半導体装置を適用する電子部品の種類等により適宜設定することができるが、たとえば210℃以上、より好ましくは220℃以上の半田成分を用いることができる。これにより、端子同士をより堅固に接続することができる。
この例として、錫−銀半田(たとえば融点:221℃)等が挙げられる。
【0035】
樹脂組成物の層110を形成する方法としては、公知の方法を採用することができ、樹脂組成物が25℃にて液状である場合には、印刷による方法、ディスペンスによる塗布方法等が挙げられ、樹脂組成物が25℃で固形状の場合には、たとえば、樹脂組成物を溶剤に溶解・分散し、半導体ウエハ上にスピンコートして塗工した後、溶剤を除去して樹脂層を形成する方法が挙げられる。
また、樹脂組成物をフィルム成形する場合は、樹脂組成物をポリエステル等の他基材面上に塗布し、乾燥させてフィルムとし、その後剥離して半導体ウエハに積層させることもできる。
【0036】
上記の中でも、樹脂組成物が25℃にて液状である場合には、ディスペンスによる塗布方法が好ましく、これにより半導体ウエハとの界面に気泡を巻き込むことを防止できる。
なお、フィルムとして成形した上で、半導体ウエハ上に積層させる方法においては、ラミネートによる方法、熱圧着による方法を採用することができる。これらの方法によれば、半導体ウエハとの界面に気泡を巻き込むことを防止できるだけでなく、絶縁層の厚さを調整しやすくなるため好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物について具体的に説明する。
本実施形態の半導体装置の製造方法においては、後述するように、用いられる半田成分の融点よりも20℃以上低い温度にて加熱を行い、第1の基材と第2の基材の電気的な接続を行う。このような観点から、当該樹脂組成物はフラックス機能を有していることが好ましい。
より具体的な態様としては、樹脂組成物は、例えば、(a)熱硬化性樹脂、(b)フラックス機能を有する化合物、(c)成膜性樹脂、(d)硬化促進剤、(e)充填材、(f)その他の添加剤を含ませることで調製することができる。
【0038】
以下、本発明に適用できる樹脂組成物を構成する各成分について記載する。
【0039】
(a)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。特に、これらの中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基が2個以上であるものを使用することができる。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、o−アリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、3,3',5,5'−テトラメチル4,4'−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、4,4'−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールD型エポキシ樹脂,1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテル、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いても良い。また、信頼性の優れた樹脂組成物を得るために、エポキシ樹脂のNa
+、Cl
−等のイオン性不純物はできるだけ少ないものが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂は、25℃で液状のものを含んでいるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の端子付近における充填性を向上させることができる。また、基材同士を接合する際に、基材上の複数の端子等によって生じる凹凸(ギャップ)をより効果的に埋め込むことができる。また、樹脂組成物をフィルム状にした場合、フィルムに柔軟性および屈曲性を付与することができるため、ハンドリング性に優れたフィルムを得ることができる。また、基材同士の電気的接続をより良好なものとすることができる。
【0042】
25℃において液状のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、o−アリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、3,3',5,5'−テトラメチル4,4'−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、4,4'−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテル、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテル、エポキシ基を分子内に一つ有するモノエポキシ化合物等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の基材に対する密着性、さらに、樹脂組成物の硬化後の機械特性を優れたものとすることができる。
【0044】
また、25℃で液状であるエポキシ樹脂としては、より好ましくは、25℃における粘度が、500mPa・s以上50,000mPa・s以下であるもの、さらに好ましくは、800mPa・s以上40,000mPa・s以下であるものが挙げられる。25℃における粘度を上記範囲内とすることで、作製したフィルムが適度な可撓性を有し、ハンドリング性に優れる。
【0045】
樹脂組成物全固形分中における熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、10質量%以上75質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上45質量%以下であるのがより好ましい。これにより、硬化後の耐熱性、機械的特性を特に優れたものとすることができる。
【0046】
(b)フラックス機能を有する化合物
本実施形態に係る樹脂組成物は、フラックス機能を有する化合物を含有することが好ましい。これにより、端子の備える半田層の表面酸化膜を除去することができ、電気的な接続を容易に行うことができる。
後述するように、本実施形態の半導体装置の製造方法においては、比較的低い温度にて端子同士の接続を行うこととなる。このように低い温度にて半田層表面の酸化膜を除去するため、当該フラックス機能を有する化合物を含ませ、さらに適切な配合および適切な化合物を選択することが特に好ましい態様であるといえる。
【0047】
フラックス機能を有する化合物としては、半田表面の酸化膜を除去する働きがあれば、特に限定されるものではないが、カルボキシル基、あるいは、カルボキシル基およびフェノール性水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
また、カルボキシル基を有さなくても、同様の効果を発現できる化合物として、酸無水物化合物を挙げることができる。
【0048】
樹脂組成物全固形分中におけるフラックス機能を有する化合物の配合量は、特に限定されないが、1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、3質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。フラックス機能を有する化合物の配合量が、上記範囲であることにより、フラックス機能を向上させることができるとともに、樹脂組成物を硬化した際に、未反応のエポキシ樹脂やフラックス機能を有する化合物が残存するのを防止することができ、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0049】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、フラックス機能を有する化合物が存在する(以下、このような化合物を、フラックス機能を有する硬化剤とも記載する。)。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス機能も有している。本実施形態では、このような、フラックス機能を有する化合物としても作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用するようなフラックス機能を有する硬化剤を、好適に用いることもできる。
【0050】
なお、カルボキシル基を備えるフラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、カルボキシル基およびフェノール性水酸基を備えるフラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基およびフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。
【0051】
これらのうち、カルボキシル基を備えるフラックス機能を有する化合物としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0052】
カルボキシル基を備えるフラックス機能を有する化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
HOOC−(CH
2)
n−COOH (1)
(式(1)中、nは、1以上20以下の整数を表す。)
【0053】
カルボキシル基を備えるフラックス機能を有する化合物に係る芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0054】
これらのカルボキシル基を備えるフラックス機能を有する化合物のうち、フラックス機能を有する化合物が有する活性度、樹脂組成物の硬化時におけるアウトガスの発生量、および硬化後の樹脂組成物の弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(1)で示される化合物が好ましい。そして、前記一般式(1)で示される化合物のうち、nが3〜10である化合物が、硬化後の樹脂組成物における弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、半導体チップ、基板等の回路部材同士の接着性を向上させることができる点で、好ましく用いることができる。
【0055】
前記一般式(1)で示される化合物のうち、nが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH
2)
3−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH
2)
4−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH
2)
5−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH
2)
8−COOH)およびn=10のHOOC−(CH
2)
10−COOH等が挙げられる。
また、これらの誘導体についてもフラックス機能を有する化合物として有用であり、たとえば、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、メチルピメリン酸、ジメチルピメリン酸、メチルセバシン酸、ジメチルセバシン酸等の誘導体も同様に用いることができる。
【0056】
上述したようなカルボキシル基、あるいは、カルボキシル基およびフェノール水酸基の両方を備える化合物は、エポキシ樹脂との反応で三次元的に取り込まれる。
そのため、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、フラックス機能を有する化合物としては、フラックス作用を有し且つエポキシ樹脂の硬化剤として作用するフラックス活性を有する硬化剤を用いるのが好ましい。フラックス活性を有する硬化剤としては、例えば、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる水酸基と、フラックス作用(酸化膜除去作用)を示すカルボキシル基とを備える化合物が挙げられる。
【0057】
このようなフラックス機能を有する硬化剤としては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられ、これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、フラックス活性の高さと、熱硬化性樹脂に対する適度な反応性とのバランスから、フラックス機能を有する化合物として、分子内にカルボキシル基と水酸基とを1つずつ有する化合物を用いることが好ましい。
これにより、比較的低温での加熱条件においても、効果的に半田層の表面酸化膜を除去することができる。
【0058】
特に好ましい化合物としては、分子内にフェノール性水酸基とカルボキシル基とを1つずつ有する化合物が挙げられ、具体的には、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。
これら化合物は、比較的入手容易であり、また、極めて高いフラックス活性を有することから、本実施形態に特に好ましく用いることができる。
【0059】
また、樹脂組成物全固形分中における、フラックス機能を有する硬化剤の配合量は、特に限定されないが、1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、3質量%以上20質量%以下であるのが特に好ましい。樹脂組成物中のフラックス機能を有する硬化剤の配合量が、上記範囲であることにより、樹脂組成物のフラックス活性を向上させることができるとともに、安定的に熱硬化性樹脂内に取り込まれる。
【0060】
また、フラックス機能を有する酸無水物としては、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物等またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0061】
フラックス機能を有する化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0062】
フラックス機能を有する化合物に係る芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0063】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂とフラックス機能を有する化合物との配合比(質量比)は、特に限定されないが、(エポキシ樹脂/フラックス機能を有する化合物)が0.5以上12以下であることが好ましく、2以上10以下であることが特に好ましい。(エポキシ樹脂/フラックス機能を有する化合物)を上記範囲とすることで、安定的に樹脂組成物を硬化させることができ、耐マイグレーション性を向上させることができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、これらのフラックス機能を有する化合物のなかでも、前述のヒドロキシ安息香酸、セバシン酸およびグルタル酸またはこれらの誘導体、無水フタル酸または無水フタル酸誘導体からなる群から一つ以上を選択することが好ましい態様である。
【0065】
(c)成膜性樹脂
本実施形態においては、熱硬化性樹脂と成膜性樹脂とを併用することが好ましい。このような成膜性樹脂としては、有機溶媒に可溶であり、単独で成膜性を有するものであれば特に制限はない。熱可塑性または熱硬化性のいずれの性質を有するものも使用することができ、また、これらを併用することもできる。
【0066】
成膜性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、成膜性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0067】
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体、または(メタ)アクリル酸およびその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで例えば、「(メタ)アクリル酸」と表記するときは、「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。
【0068】
成膜性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1万以上が好ましく、より好ましくは2万以上100万以下、さらに好ましくは3万以上90万以下である。重量平均分子量が前記範囲であると、樹脂組成物の成膜性をより向上させることができる。
【0069】
樹脂組成物を接着フィルムとして用いる場合、成膜性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全固形分中の0.5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上40質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。含有量が前記範囲内であると、樹脂組成物の流動性を抑制することができ、接着フィルムの取り扱いが容易になる。
【0070】
(d)硬化促進剤
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化促進剤を含むものであることが好ましい。硬化促進剤を添加することによって、端子同士を接続した後、樹脂組成物を容易に硬化することができる。
【0071】
硬化促進剤は硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。硬化促進剤としては、例えば融点が150℃以上のイミダゾール化合物を使用することができる。使用される硬化促進剤の融点が150℃以上であると、樹脂組成物の硬化が完了する前に、半田層を構成する半田成分が半導体チップに設けられた内部電極表面に移動することができ、内部電極間の電気的接続を良好なものとすることができる。融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
樹脂組成物全固形分中の前記硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、0.005質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、硬化促進剤としての機能を更に効果的に発揮させて、樹脂組成物の硬化性を向上させることができるとともに、半田層を構成する半田成分の溶融温度における樹脂の溶融粘度が高くなりすぎず、良好な半田接合構造が得られる。また、樹脂組成物の保存性を更に向上させることができる。
これらの硬化促進剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
(e)充填材
本実施形態に係る樹脂組成物は、充填材を更に含んでも良い。これにより、樹脂組成物の線膨張係数を低下させること、また、樹脂組成物の最低溶融粘度を調整することが容易となり、端子の電気的な接続を安定的に行うことができる。
【0074】
本発明に適用できる樹脂組成物に配合される充填材としては特に限定されないが、例えば、有機樹脂成分を含む樹脂粒子、ゴム成分を含むゴム粒子等の有機材料による有機充填材のほか、無機充填材を挙げることができる。
これらの中でも、半導体装置の信頼性の向上という観点からは、無機充填材が好ましい。無機充填材を含有することで、樹脂組成物層の線膨張係数を低下することができ、これにより、上記信頼性を向上させることができる。
また、耐衝撃性の向上という観点からは、有機充填材と無機充填材を併用することが好ましい。この場合に用いる有機充填材としては、アクリルゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴム等のゴム成分を含むゴム粒子がより好ましい。有機充填材を含むことで、無機充填材を用いる上記効果に加えて、樹脂組成物の硬化物の靱性を高めることができ、これにより、半導体装置の耐衝撃性を向上させることができる。
【0075】
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、これらを複数種含めることもできる。このように無機充填材は複数種から選択することができるが、コスト等の観点からシリカを好ましく用いることができる。これにより、硬化後の樹脂組成物の熱特性に優れたものとすることができる。また、樹脂組成物を基材に付与した際の基材の接合箇所の視認性を良好なものとすることができる。その結果、位置合わせをより容易に行うことができる。シリカの形状としては、破砕シリカと球状シリカがあるが、球状シリカが好ましい。
また、熱伝導性等の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、窒化珪素、窒化ホウ素、等を用いることもできる。
【0076】
また、充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が500nm以下のものであるのが好ましく、300nm以下のものであるのがより好ましい。充填材の平均粒子径の下限値としては、特に限定されないが、たとえば5nmである。
このような平均粒子径の充填材を含むことにより、基材同士の接合時の樹脂組成物の粘度をより適度なものとすることができ、接合を良好に行うことができる。また、樹脂組成物内で充填材の凝集を抑制し、外観を向上させることができる。また、樹脂組成物を光が透過する際に、可視光の透過を充填材が阻害するのを低減することができ、その結果、樹脂組成物を基材に付与した際の端子部分の接合箇所の視認性がさらに良好なものとなり、位置合わせがさらに容易になるとともに、フラックス機能により、基材同士を良好に電気的に接続することができる。
【0077】
充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全固形分に対して0.1質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、樹脂組成物を基材に付与した際の端子部分の接合箇所の視認性を良好なものとしつつ、硬化後の樹脂組成物の熱特性に優れたものとすることができる。また、上記範囲とすることで、硬化後の樹脂組成物と基材との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、基材の剥離をさらに確実に抑制することができる。さらに、硬化後の樹脂組成物の弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができるため、半導体装置の信頼性が上昇する。
【0078】
(f)その他の添加剤
また、本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、本実施形態の樹脂組成物は、重量平均分子量が300以上2500以下であるフェノール系硬化剤を含んでいてもよい。これにより、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を高めることができ、さらに、耐イオンマイグレーション性を向上させることが可能となる。また、樹脂組成物に適度な柔軟性を付与することができる。また、基材同士の電気的接続をより良好なものとすることができる。
【0079】
フェノール系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールAF型ノボラック樹脂等が挙げられる。中でも、上述した特性を有し、効果を発現できるという観点から、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂を用いるのが好ましい。
【0080】
樹脂組成物全固形分中におけるフェノール系硬化剤の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、3質量%以上25質量%以下であるのがより好ましい。フェノール系硬化剤の含有量を上記範囲とすることで、樹脂組成物によって、基材上の複数の端子等によって生じる凹凸(ギャップ)をより効果的に埋め込むことができる。また、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
【0081】
フェノール系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、300以上2500以下であることが好ましく、400以上2300以下であることが特に好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を高めることができ、さらに耐イオンマイグレーション性を効率よく向上させることができる。また、樹脂組成物に適度な柔軟性を付与することができる。また、基材同士の電気的な接続をより良好なものとすることができる。ここで、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラム)により測定することができる。
【0082】
また、本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤を更に含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、半導体チップ、半導体ウエハ、シリコン基板、ガラス基板、有機基板などのような基材に対する樹脂組成物の密着性を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が使用できる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤の配合量は、適宜選択すればよいが、樹脂組成物全固形分に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0083】
その他、本実施形態に係る樹脂組成物には、可塑剤、安定剤、粘着付与剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤や顔料等の添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0084】
本実施形態において、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物は、上記各成分を混合・分散させることによって調製することができる。各成分の混合方法や分散方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合、分散させることができる。
【0085】
また、本実施形態においては、前記各成分を溶媒中でまたは無溶媒下で混合して液状の樹脂組成物を調製してもよい。
このとき用いられる溶媒としては、各成分に対して不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)などのケトン類;ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、二塩基酸エステル(DBE)、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。また、溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分濃度が10〜80質量%となる量であることが好ましい。
【0086】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂をフィルム形状とする場合の厚みは、特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。また、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。樹脂組成物の厚みが前記範囲内にあると隣接する端子間の間隙に樹脂組成物を十分に充填することができる。また、樹脂組成物の硬化後の機械的接着強度および対向する端子間の電気的接続を十分に確保することができる。
【0087】
次に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態に用いる樹脂組成物が25℃で液状の場合は、例えば、熱硬化性樹脂、その他の成分を秤量し、次いで、3本ロールや攪拌機等により各成分が均一に分散するように混合することにより樹脂組成物を作製することができる。
【0088】
また、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物が25℃で固形状の場合は、例えば、熱硬化性樹脂、その他の成分を秤量し、充填材を用いる場合においては溶剤可溶成分を溶剤に溶解させた後、これを混合分散する方法や、マスターバッチとして各成分を調合する方法等によりワニスを作製することができる。
次いで、上記で得られたワニスをポリエステルシート等の剥離基材上に塗布し、所定の温度で乾燥し溶剤を揮散させることにより作製することができる。
【0089】
続いて、
図3 c)に示すように、樹脂組成物の層110が設けられた半導体チップ103と、端子101を備えた半導体ウエハ100とを、端子101と端子102とが樹脂組成物の層110を介して対向するように積層させる。
より具体的には、端子101と端子102とが対応するように位置決めして、
図3 c)に示すように、樹脂組成物の層110を介して半導体ウエハ100と、半導体チップ103とが積層された積層体を形成する。
【0090】
続いて、
図3 d)に示す接合工程にて、上記積層体を加熱し、端子同士の接合を行う。
【0091】
ここで、本明細書において、「接合」とは具体的に以下のような態様となることを指す。
すなわち、本明細書において、「接合」とは、
図7に示されるように、端子の表面に半田が濡れ拡がり、接合面を形成することを指す。
【0092】
なお、先述の特許文献2においては、段落0055に示される接触工程において、比較的高温である170℃にて、20Nで2秒間荷重し、半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接触させて実装体を得る態様が開示されている。
ここで、当該文献の段落0043には、半田の溶融点として、225〜235℃程度の鉛フリーの半田が開示されているところ、この特許文献2における接触工程においては、半田溶融点と加熱温度とが十分に離れていることから、上述のような半田層の濡れ拡がりが起こらず、接合面が形成されることもない。
図8に示されるように半田層が変形されず、半田層が端子に対して部分的に接触するにとどまる。本明細書においては、このような態様を「接触」あるいは「当接」として表記する。
【0093】
なお、本実施形態においては、接合工程が半田の融点以下の温度で行われるが、この操作を行うにあたっては、適切なフラックス機能を有する樹脂組成物を選択することが重要であり、とりわけ、適切なフラックス機能を有する化合物を樹脂組成物として、適切量配合し、同時に、組み合わせる樹脂成分についても十分な制御を行った上で配合することが重要となる。
たとえば、国際公開第2011/007531号パンフレットの実施例3においては、接続用金属電極と、接続用半田電極とを当接させる第2の工程を180℃の温度で実施しているが、この系においては、本願明細書の実施例項に示されるフラックス機能を有する化合物よりも活性の低い化合物が用いられている。このため、上記特許文献2と同様、半田層の濡れ拡がりが起こらず、接合面が形成されることもない。
図8に示されるように半田層が変形されず、半田層が端子に対して部分的に接触するにとどまる。
【0094】
なお、国際公開第2011/007531号パンフレットの実施例3においては、フリップチップボンダーを用いてまず端子同士を「当接」させる工程を実施している。この工程においては、フリップチップボンダーの位置制御も「当接」するように条件設定される。したがって、当接の状態よりもさらに端子同士が近接して半田層の変形や濡れ拡がりが起こることはない。
【0095】
また、本実施形態の一態様においては、たとえば、
図7に示されるように、基材の積層方向に直交する方向から半導体装置をみたときに、接合面が第1の端子または第2の端子の表面の長さに対して90%以上の長さで形成されている。これにより、より高度な接続信頼性を発揮することができる。
なお、この基材の積層方向に直交する方向は、たとえば任意に選んだ方向のいずれかでよく、接合面が端子に対して平行に形成されていない場合においては、弧長として、この接合面の長さを定義することができる。
この接合面は第1の端子または第2の端子の表面の長さに対して95%以上の長さで形成されていることがより好ましく、100%の長さで形成されていることがさらに好ましい。
【0096】
また、本実施形態の一態様においては、前述の接合面は、半田層を形成する半田成分と、第1の端子または第2の端子を構成する金属成分との合金が含まれることとすることができ、これにより、端子間における接続性が一段と向上する。
たとえば、銅製のバンプから構成される端子に対し、錫を含む半田層を用いて接合面を形成する場合、この銅と錫とを含む合金がこの接合面に含まれる。
本実施形態においては、たとえば、フラックス機能を有する化合物の種類と配合量を適切に選択することにより、このような合金が含まれる接合面を形成することができる。
【0097】
本実施形態において、加熱温度は端子102が有する半田層104を構成する半田成分の融点よりも20℃以上低い温度で行う。なお、本明細書中において「加熱温度」とは、昇温の際、端子近傍の樹脂組成物の温度を指す。
このように、半田成分の融点よりも20℃以上低い温度で加熱を行うことにより、樹脂成分の劣化を抑制することができる。また、加熱温度条件を半田成分の融点よりも25℃以上低い温度に設定することが好ましく、30℃以上低い温度に設定することがより好ましい。このような温度条件を採用することによって、さらに樹脂成分の劣化を抑制することができるとともに、樹脂のはみ出しを抑制することができる。
また、特にTSV構造の半導体チップを用いる場合は、チップ表面の回路保護用のパッシベーション膜と半導体チップとの線膨張係数との差に起因する反りの発生を小さなものとすることができる。
また、加熱温度の下限値について、本実施形態の態様においては半田成分の融点よりも40℃低い温度以上に設定され、より好ましくは半田成分の融点よりも35℃低い温度以上、さらに好ましくは半田成分の融点よりも33度低い温度以上に設定される。このような加熱温度に制御することで端子に対する半田の濡れ拡がり性をさらに向上させることができ、半導体装置を得たときに、一段と高い接続信頼性を発揮することができる。
【0098】
本実施形態においては、上記のように、従来の接合工程よりも低い温度条件でこれを実施することができる。したがって、加熱装置の寿命を延長させることができ、電子部品の製造コストを低減できる。また、使用する樹脂組成物の可使時間も延ばすことができる。
また、低温で接合するため、樹脂組成物は硬化等の熱変性が起こりにくく、流体による加圧雰囲気下での加圧条件を適宜設定することで、効果的に樹脂組成物内のボイドを低減させることができる。
また、基材として半導体チップを用いる場合、半導体チップ単体の反りを小さくすることができる。
さらに、端子同士を接合する際の温度から融点の値が離れた半田成分であっても半導体装置製造プロセスに適用できることから、当該プロセスに用いることのできる半田材料の制限を緩和することができる。
【0099】
上記接合工程を実施する方法としては、特に限定されないが、圧着装置、フリップチップボンダー等を用いて行うことができる。接合する条件は、特に限定されないが、温度条件は上述した温度域で実施することが好ましい。時間は0.1秒間以上60秒間以下が好ましく、1秒間以上60秒間以下が特に好ましい。圧力は5N以上とすることが好ましく、10N以上とすることがさらに好ましい。また、100N以下とすることが好ましく、50N以下とすることがさらに好ましい。これにより、より信頼性の高い電気的接合を行うことができる。なお、上記圧力は5mm角のチップを加圧した場合の圧力を示す。
【0100】
なお、この積層体を加熱する工程においては、積層体を流体で加圧しながら加熱することもできる。これにより、樹脂組成物の層110におけるボイド発生を抑制することができ、また、精度高く端子同士を接合させることができる。
なお、流体で加圧しながら加熱する方法により実施する場合、具体的な加圧力としては、0.1MPa以上、10MPa以下の条件を採用することができ、より好ましくは0.5MPa以上、5MPa以下の条件を採用することができる。
【0101】
そして、
図2のb)からd)までの工程を繰り返すことにより、
図2のe)に示したように、基板(半導体ウエハ100)上に複数の半導体チップ103が接合された構造体を得ることができる。
このようにして接合工程を経た構造体は、さらに、上記接合工程の後、樹脂組成物の層110を硬化させるキュア工程を実施することができる。
キュア工程における温度条件としては特に限定されないが、例えば100℃以上であり、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上とすることができる。また、例えば300℃以下であり、好ましくは280℃以下、さらに好ましくは250℃以下とすることができる。
キュア工程に要する時間としては、たとえば10分間以上であり、好ましくは30分間以上であり、より好ましくは60分間以上である。このような時間条件を採用することにより、確実に樹脂組成物を硬化させることができる。キュア工程に要する時間の上限値は特に制限されないが、たとえば8時間以下である。
上記キュア工程は、流体により積層体を加圧しながら実施することもできる。加圧する条件としては例えば、0.1MPa以上、10MPa以下の条件を採用することができ、より好ましくは0.5MPa以上、5MPa以下の条件を採用することができる。
流体として使用できるものとしては、空気、窒素のような不活性ガスであることが好ましい。
【0102】
以上のようにして、端子101と端子102とを接合部105を介して接合することができ、あわせて、
図3 d)に示すように樹脂組成物の層110を硬化させて、絶縁層120を形成することができる。
結果として、絶縁層120を介して、半導体ウエハ100と半導体チップ103とを固着させることができ、また、半導体ウエハ100と半導体チップ103とを、接合部105を介して、電気的に接続することができる。
【0103】
また、本実施形態においては、
図3 e)の工程を行った後、さらに加熱を行うことにより、半田リフロー工程を行う。これにより、端子間の接続をより強固なものとし、基材間の接続信頼性を一層向上させることができる。
この工程の温度条件としては、たとえば半田層104を構成する半田成分の融点よりも10℃低い温度以上とすることができ、より好ましくは半田層104を構成する半田成分の融点よりも5℃低い温度以上とすることができる。採用する温度条件の上限値はとくに制限されないが、たとえば半田層104を構成する半田成分の融点よりも60℃高い温度以下である。
たとえば、この工程の温度条件としては、200℃以上の条件を採用することができ、210℃以上の条件を採用することができる。また、採用する温度条件の上限値はとくに制限されないが、たとえば280℃以下とすることができる。
【0104】
最後に
図3 f)に示すように、上記で得られた積層体を個片化することにより半導体装置150を得ることができる。
【0105】
<第2の製造方法>
続いて、<第1の製造方法>とは異なった態様の半導体装置250の製造方法について
図4および
図5を参照しながら説明する。
【0106】
まず、
図4 a)に示すように、それぞれ図示しない複数の個別回路が形成された接続部204を有する半導体チップ200と、接続部205を有する半導体チップ203とを用意する。本実施形態では、半導体チップ200は接続部204に連結する端子201を備え、半導体チップ203は接続部205に連結する端子202を備えている。
端子201および端子202を構成する部材は<第1の製造方法>にて示した端子の部材の中から適宜選択することができる。
【0107】
本実施形態では、半導体チップ203は接続部205に連結する端子202を備えており、その端子202の先端部に半田層206を備えている。さらに、これら端子202と半田層206とを被覆するように樹脂組成物の層210が設けられている。
樹脂組成物の層210を形成する方法は、前記<第1の製造方法>と同様の方法を採用することができ、また、樹脂組成物も前述と同様のものを採用することができる。
【0108】
次に、
図4 b)に示すように、樹脂組成物の層210が設けられた半導体チップ203と、端子201を備えた半導体チップ200とを、端子201と端子202とが樹脂組成物の層210を介して対向するように配置させる。
そして、端子201と端子202とが対応するように位置決めして、樹脂組成物の層210を介して半導体チップ200と、半導体チップ203とが積層された積層体を形成する。
【0109】
続いて、
図4 c)に示す工程にて上記積層体を加熱する。この加熱条件についても<第1の製造方法>と同様の条件を採用することができる。
この加熱を行うことにより、
図4 c)に示すように半導体チップ200と半導体チップ203とが接合部207を介して電気的に接続されることとなり、また、樹脂組成物の層210を硬化させることにより絶縁層220を形成することができる。
また、この
図4 c)においては、<第1の製造方法>同様、「接合工程」と「キュア工程」とを組み合わせて行うこともでき、これらの工程は上述した加圧条件を採用することができる。さらに、
図4 c)の工程を行った後、半田リフロー工程が行われる。これにより基材間の接続信頼性を一層向上させることができる。
【0110】
なお、後述するように本<第2の製造方法>においては、別の半導体チップ203をさらに積層させることができる。このことから、半導体チップ200と、1枚の半導体チップ203が積層された
図4 c)に示される段階においては、上記のような接合工程や半田リフロー工程を行わず、半導体チップ200と、2枚の半導体チップ203が積層された後述の
図5 g)に示される段階、または、3枚以上の半導体チップ203が積層された段階にて、上記のような接合工程や半導体リフロー工程を行うこともできる。
【0111】
続いて、
図5 d)に示すように、半導体チップ203が有する接続部205上に端子208を設ける。この端子208は端子201および端子202と同様のものを用いることができる。
【0112】
続いて、
図5 e)〜g)に示す工程のように、半導体チップ203を積層・加熱することで半導体チップが3枚積層された半導体装置250を得る。この半導体チップ203は、
図4 a)に示すものと同様の構造を有するものであり、以下、
図4 a)〜 c)の工程と同様の工程を繰り返せばよい。
なお、この半導体装置250は最上位に設けられた半導体チップ203においても同様に接続部205を有しているので、同様の工程を繰り返すことによりさらに高積層化させることができる。
【0113】
従来は、このように多数の半導体チップ等を積層させる場合には半導体装置作製プロセスの全体の所要時間が長くなるため、このプロセス内で樹脂が変性してしまうなどの問題があった。しかしながら、本実施形態の製造方法は、端子同士を接合する際の温度を低くできるため、例えば、加圧キュア工程を実施する場合に効果的に樹脂組成物内のボイドを低減することができる。このような点から、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば半導体チップを多層積層させるようなプロセスにおいて、十分な優位性を発揮することができる。
【0114】
また、本<第2の製造方法>においては、半導体チップ203には接続部205が設けられているが、一般に、この接続部205の半導体チップ200と接合する面とは反対側においては、ポリイミド等で構成される回路保護膜が塗工されている。このため、従来においては、フリップチップボンダー等でチップの上面側を加熱すると、この回路保護膜が熱膨張し、半導体チップ203に凸型の反りを生じることがあった。また、このような反りが発生すると、基材間に隙間ができてしまい、電気的な接合が難しくなることがあった。
本<第2の製造方法>においては、従来よりも低い温度にて基材同士の接合を行うことができるため、上記の問題を解消することができる。
【0115】
[第2の実施形態]
続いて、先述の第1の実施形態とは異なる半導体装置の製造方法について説明する。
本実施形態における半導体装置の製造方法は以下に示されるものである。
第1の端子を備えた第1の基材と、第2の端子を備えた第2の基材とを準備する工程と、
前記第1の基材の前記第1の端子を備える面上に、樹脂組成物の層を設ける工程と、
前記第2の基材に対して、前記樹脂組成物の層を介して、前記第1の端子と前記第2の端子とを対向させるように、前記第1の基材を積層する工程と、
第1の温度で加熱することで半田を介して前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる工程と、
さらに加熱することで半田リフローを行う工程と、
を含む、半導体装置の製造方法であって、
前記第1の端子と前記第2の端子の少なくともいずれか一方が、当該端子表面に半田層を備えるものであり、
前記第1の温度は、前記半田層を構成する半田成分の融点よりも20℃以上低い温度であり、
前記第1の端子と前記第2の端子とを接合させる前記工程は、前記第1の端子と前記第2の端子とを接触させた後、さらに、前記半田層を変形させて前記第1の端子と前記第2の端子とを接近させることにより前記第1の端子と前記第2の端子との間の接合面を形成する工程を含み、
前記接合面は、前記半田層を構成する半田成分と、前記第1の端子または前記第2の端子を構成する金属成分との合金が含まれる、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0116】
本実施形態の半導体装置の製造方法においては、第1の端子と第2の端子とを接合させる工程についての温度条件の下限値については特に規定しないが、一方で、接合工程において形成される接合面に半田層を構成する半田成分と、第1の端子または第2の端子を構成する金属成分との合金が含まれることを必須の条件とする。
このような構成を採用することにより、接合工程において端子間の接続性を十分なものとすることができ、半導体装置を得た際の接続信頼性をより高いものとすることができる。
なお、本実施形態に用いられる端子、基材、樹脂組成物、半田層としては、前述の第1の実施形態と同様のものを用いることができ、各工程における条件についても、前述の第1の実施形態に記載したものと同様のものを採用することができる。
【0117】
[電子部品の製造方法]
各実施形態の半導体装置の製造方法は、電子部品の製造方法に適用することができる。
たとえば、上述のようにして得られた半導体装置150、250は基板に搭載することで、電子部品とすることができる。
【0118】
このようにして製造された電子部品は、一つのパッケージ内に搭載することができる半導体装置の集積密度を高めることができるので、電子機器の高機能化および小型化に対応することができる。
【0119】
なお、本実施形態の電子部品は、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プリンタ等に広く用いることができる。
【0120】
なお、本実施形態においては、半導体ウエハ上に半導体チップを積層させる半導体装置の製造方法について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。
すなわち、半導体ウエハと半導体ウエハとを接続して得られる半導体装置を製造する場合においても本発明の方法は適用できるものであり、同様に半導体チップ同士、半導体チップと基板とを接続して半導体装置を製造する場合においても、本発明は適用できる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
フェノールノボラック樹脂9g(住友ベークライト株式会社製、型番:PR−55617)と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂26.7g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、4−ヒドロキシ安息香酸9g(東京化成工業株式会社製)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0123】
[実装試験]
ダイシングフィルムが形成された8インチシリコンウエハを準備した。
ダイシングフィルムが形成された面とは反対側の面には、φ25μm、高さ35μmの銅バンプが2924個形成されており、その上に厚み10μmの錫−銀半田成分(融点:221℃)から構成される半田層が形成されている。
【0124】
真空ラミネーター(株式会社名機製作所製、型番:MVLP−500/600−2A)を用い、95℃/30sec/0.8MPaの条件で、銅バンプが形成された面側の8インチシリコンウエハに上記樹脂フィルムをラミネートした。
次に、ダイシング装置(株式会社ディスコ製、型番:DFD−6340)を用い、以下の条件で(ダイシングフィルム/シリコンウエハ/樹脂フィルム)積層体をダイシングし、サイズが5mm角の半導体チップを得た。
【0125】
<ダイシング条件>
ダイシングサイズ :5mm×5mm角
ダイシング速度 :10mm/sec
スピンドル回転数 :30000rpm
ダイシング最大深さ :0.07mm
ダイシングブレードの厚さ:55μm
【0126】
別途、φ25μmのパッドが形成されており、パッド表面にNi/Auめっきが形成されている所定のパターンを設けたシリコンウエハを用意し、当該シリコンウエハに対して、上記で得られた半導体チップを積層させた。このとき、シリコンウエハに設けられたパターンに対し、上記半導体チップの銅バンプが樹脂フィルムを介して対向するように配置した。
フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度220℃(実温199℃)、30N、時間10秒間の条件でシリコンウエハと半導体チップとの接合を行った。
その後、温度180℃、時間2時間、圧力0.8MPaの条件のキュア工程と、温度220℃、時間10分間の条件の半田リフロー工程を行うことで、半導体装置を得た。
【0127】
(実施例2)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度200℃(実温181℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0128】
(実施例3)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度205℃(実温186℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0129】
(実施例4)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度210℃(実温191℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0130】
(実施例5)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度215℃(実温196℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0131】
(実施例6)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
フェノールノボラック樹脂9g(住友ベークライト株式会社製、型番:PR−55617)と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂26.7g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、3−ヒドロキシ安息香酸4.5g(東京化成工業株式会社製)と、フェノールフタリン4.5g(東京化成工業株式会社製)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0132】
これ以降、実施例4と同様にして、半導体チップを得て、シリコンウエハと半導体チップとの接合を行い、半導体装置を得た。
【0133】
(実施例7)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
フェノールノボラック樹脂9g(住友ベークライト株式会社製、型番:PR−55617)と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂26.7g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、セバシン酸9g(東京化成工業株式会社製)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0134】
これ以降、実施例4と同様にして、半導体チップを得て、シリコンウエハと半導体チップとの接合を行い、半導体装置を得た。
【0135】
(実施例8)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂17.5g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、ナフタレン型エポキシ樹脂18.0g(DIC株式会社製、型番:EPICLON HP−4700)と、グルタル酸9g(東京化成工業株式会社製)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0136】
これ以降、実施例4と同様にして、半導体チップを得て、シリコンウエハと半導体チップとの接合を行い、半導体装置を得た。
【0137】
(実施例9)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂13.3g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、ナフタレン型エポキシ樹脂13.4g(DIC株式会社製、型番:EPICLON HP−4700)と、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸18g(三菱化学株式会社製、型番:YH−307)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0138】
これ以降、実施例4と同様にして、半導体チップを得て、シリコンウエハと半導体チップとの接合を行い、半導体装置を得た。
【0139】
(実施例10)
[樹脂フィルム(樹脂層)の作製]
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂13.3g(DIC株式会社製、型番:EPICLON−840S)と、ナフタレン型エポキシ樹脂13.4g(DIC株式会社製、型番:EPICLON HP−4700)と、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の70/30の混合物18g(新日本理化株式会社製、型番:MH−700)と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂14.7g(新日化エポキシ製造株式会社製、型番:YP−50)と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.1g(四国化成工業株式会社製、型番:2P4MZ)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.5g(信越化学工業株式会社製、型番:KBM−403)と、球状シリカフィラー40g(株式会社アドマテックス製、型番:SC1050、平均粒径0.25μm)を、メチルエチルケトンに溶解・分散し、固形分濃度50質量%の樹脂ワニスを得た。
この樹脂ワニスを、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、型番:ルミラー)に塗布し、100℃/5minの条件で乾燥し、樹脂厚み35μmの樹脂フィルムを得た。
【0140】
これ以降、実施例4と同様にして、半導体チップを得て、シリコンウエハと半導体チップとの接合を行い、半導体装置を得た。
【0141】
(比較例1)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度230℃(実温203℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0142】
(比較例2)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度260℃(実温221℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0143】
(比較例3)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度180℃(実温165℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0144】
(比較例4)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度180℃(実温165℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例6と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0145】
(比較例5)
シリコンウエハと半導体チップとの接合を行う際に、フリップチップボンダーで、ステージ温度110℃、ツール温度180℃(実温165℃)、30N、時間10秒間の条件で実施した以外は、実施例7と同様にして樹脂フィルム、半導体チップ、半導体装置を得た。
【0146】
(評価:接続性)
以下の方法により評価を行った。
実施例3で得られた積層型の半導体装置について、電子顕微鏡写真(SEM画像)の観察により接続性を確認した。結果は
図6に示す通りであり、半田成分の融点より十分に低い温度であっても、良好な接続性が示されていることが確認された。他の実施例についても同様であった。
このように、積層体に対し、半田成分の融点より十分に低い温度で接続を試みた場合であっても、良好な接続性が示されていることが確認された。なお、各実施例においては、接合面に、バンプと半田成分とに由来する銅と錫とを含む合金が含まれていた。
なお、各実施例と比較例については、以下の評価基準に基づき、半導体装置の接続性について評価を行っている。結果は表1に示す通りである。
○:半田による端子被覆率が90〜100%であり、樹脂噛みがない。
×:半田による端子被覆率が90%未満である。
【0147】
(評価:接合信頼性)
使用装置:マルチシェーカー装置 東京理科器械株式会社製、「MULTI SHAKER MMS−210」
評価方法:フリップチップボンダーでシリコンウエハと半導体チップを接合した後、接合体を12mm×12mmのトレイ上に置き、上記装置に固定した。その後、200rpmまたは300rpmで10分間振動を与えて、接合体の接合性を確認した。結果は表1に示した。符号は以下の基準で付与した。
◎:300rpmで処理しても接合部に破断がみられない。
○:200rpmで処理しても接合部に破断がみられない。
×:200rpmで処理した後、接合部に一部破断がみられる。
【0148】
(評価:樹脂はみ出し)
上記各実施例、比較例に記載の方法で得られた半導体チップを20mm×20mm角のベアウエハに対し、フリップチップボンダーを用いて、各実施例、比較例に記載した実装条件で押し付けた際にベアウエハ上に広がった樹脂はみ出しの最大幅を測定した。
結果を表1に示した。符号は以下の基準で付与した。
◎:30μm未満
○:30μm以上100μm未満
△:100μm以上
【0149】
【表1】
【0150】
実施例1〜10においては、シリコンウエハと半導体チップとの接合したとき、銅バンプとパッドとが半田を介して「接合」していること、すなわち、半田層の濡れ拡がりが起こっていることが確認された。
これに対して、比較例3〜5においては、シリコンウエハと半導体チップとの接合したとき、銅バンプとパッドとは部分的に接触するにとどまり、「接合」ではなく「接触」の状態となっていること、すなわち、半田層の濡れ拡がりが起こらず、半田層がパッドに対して部分的に接触するにとどまっていることが確認された。