(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の信号経路に設けられて前記送信信号の高調波を発生する高調波発生源または高調波を反射する高調波反射源を、さらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記複数の接続切替端のいずれかに接続されており、前記送信信号の周波数帯域の逓倍近傍の周波数帯域を有する受信信号が前記スイッチ回路から入力される、第2の信号経路をさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の高周波モジュールでは、スイッチICやデュプレクサなどの高調波発生源で発生した高調波が、送信信号とともにアンテナに伝わることになるが、高調波の周波数帯域が他の通信システムで利用されている場合、他の通信システムにおける受信感度などを低下させて問題となることがある。例えば、LTE(Long Term Evolution)方式のBand13の送信信号帯域は、777MHzから787MHzであり、その二次高調波の帯域は、1554MHz〜1574MHzである。この二次高調波の帯域は、GPS(Global Positioning System)で使用されている帯域(1574.42MHz〜1576.42MHz)と非常に近いため、GPS受信機に設けられる受信フィルタでは、LTE−Band13の二次高調波を十分に減衰させることは困難である。したがって、LTE−Band13を利用する携帯電話機などにGPS受信機を設けると、LTE−Band13の二次高調波がGPS受信機に回り込んで、GPS受信機の受信感度が低下することがある。
【0007】
そのため、アンテナから送出される高調波は低い信号レベルで安定していることが望まれるが、従来の高周波モジュールでは、アンテナから送出される高調波の信号レベルが高くなる場合があった。例えば、スイッチICのような高調波発生源からアンテナに直接伝わる高調波と、デュプレクサのような高調波を反射する高調波反射源で反射されてからアンテナに伝わる高調波との位相が一致している場合には、信号レベルの足し合わせにより、アンテナから送出される高調波の信号レベルが高くなる。
【0008】
また、高調波を発生する高調波発生源や、高調波を反射する高調波反射源が、外部回路として接続されている場合、外部回路からアンテナに伝わる高調波の信号経路の電気長が、外部回路の構成によって変わってしまう。このため、外部回路からアンテナに伝わる高調波の位相が、外部回路の構成によって変わってしまう。一方、高周波モジュールの内部を伝わってアンテナに到達する高調波の信号経路および位相は一定である。したがって、アンテナから送出される高調波の信号レベル、即ち、高周波モジュールの高調波特性は、位相の異なる高調波の足し合わせにより、外部回路の構成に応じて変動することになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、アンテナから送出する高調波を低い信号レベルにすることができ、高調波発生源や高調波反射源が外部回路として高周波モジュールに接続される場合でも、高調波特性が安定な、高周波モジュールおよび通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の高周波モジュールは、アンテナ接続端と複数の接続切替端とを有するスイッチ回路と、前記複数の接続切替端のいずれかに接続されており、所定の周波数帯域を有する送信信号をスイッチ回路に対して出力する第1の信号経路と、第1の信号経路に接続されており、外部回路が接続される外部回路接続部と、前記第1の信号経路に設けられており、前記送信信号の高調波をグランドに逃がす高調波分岐回路と、を備えている。
【0011】
この構成では、スイッチ回路や外部回路などの高調波発生源や高調波反射源から第1の信号経路を伝わる送信信号の高調波を、高調波分岐回路を介してグランドに逃がすので、第1の信号経路からスイッチ回路に出力される高調波を抑制できる。したがって、スイッチ回路からアンテナに伝わる送信信号の高調波が、高調波同士の足し合わせによって高い信号レベルとなることを抑制できる。これにより、アンテナから送出する高調波を低い信号レベルで安定させることができる。
【0012】
上述の高周波モジュールにおいて、高調波分岐回路は、第1のフィルタと第2フィルタとを備えるダイプレクサであって、ダイプレクサの共通接続端をスイッチ回路側に向けて第1の信号経路に接続されていてもよい。このような高周波モジュールにおいて、第1のフィルタは送信信号の周波数帯域の逓倍を通過帯域としており、第2のフィルタは送信信号の周波数帯域を通過帯域としていると好適である。また、この高周波モジュールにおいて、第2のフィルタは送信信号の周波数帯域の逓倍を阻止帯域としていると好適である。
【0013】
上述の高周波モジュールにおいて、高調波分岐回路は、第1の信号経路に対して並列に設けられてグランドに接続されているフィルタであって、送信信号の周波数帯域の逓倍を通過帯域としてもよい。
【0014】
上述の高周波モジュールにおいて、第1の信号経路に設けられて前記送信信号の高調波を発生する高調波発生源または高調波反射源をさらに備えてもよい。このような高周波モジュールにおいて、高調波発生源や高調波反射源は、前記高調波分岐回路を介して前記スイッチ回路に接続されているフィルタ回路であってもよい。
【0015】
上述の高周波モジュールは、第2の信号経路をさらに備えていてもよい。第2の信号経路は、前記複数の接続切替端のいずれかに接続されており、前記送信信号の周波数帯域の逓倍近傍の周波数帯域を有する受信信号がスイッチ回路から入力される。
【0016】
この構成では、第2の信号経路を介して受信する受信信号が、前述の送信信号の高調波と近接する周波数帯域を有していても、送信信号の高調波が第2の信号経路に回り込んで受信されることを抑制でき、受信信号に対する受信感度を向上させることができる。
【0017】
この発明の通信装置は、上述の高周波モジュールと、受信機とを備えていてもよい。受信機は、固有のアンテナから、前記送信信号の周波数帯域の逓倍近傍の周波数帯域を有する受信信号を受信する。
【0018】
この構成では、高周波モジュールとは別に通信装置に設けられるGPS受信機などの受信機が、前述の送信信号の高調波と近接する周波数帯域を有する受信信号を受信するものであっても、送信信号の高調波が受信機に回り込んで受信されることを抑制でき、受信機における受信感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、信号経路を伝わる送信信号の高調波をグランドに逃がすことで、アンテナから送出される送信信号の高調波を低い信号レベルで安定させることができる。したがって、送信信号の高調波の周波数帯域に近接する周波数帯域を有する他の通信方式の受信機や受信経路が設けられていても、高調波の回り込みによって受信感度が低下することを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールおよび通信装置について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態に係る通信装置の模式的な回路図である。
【0023】
図1に示す通信装置10は、高周波モジュール11とGPS受信機12とデュプレクサ13と、図示していない複数の送受信回路と、を備えている。
【0024】
通信装置10は、複数の通信方式での無線通信を行うものである。高周波モジュール11は、図示していない後段の送信回路や受信回路と単一のアンテナとの間に接続され、単一のアンテナを共用して、複数の通信方式に対応する送信信号と受信信号とを送受波する機能を有している。GPS受信機12は、固有のアンテナを有し、GPS衛星から送信されてくる1574.42MHz〜1576.42MHzのGPS信号を受信するものであり、GPS信号を処理する受信回路に接続される。
【0025】
高周波モジュール11は、アンテナ接続ポートPmAと、モジュールポートPmTRX1,Pm800/950TX,PmTRX2,Pm1800/1900TX,PmTRX3,PmTRX4,PmTRX5,PmTRX6と、を有している。
【0026】
アンテナ接続ポートPmAは、アンテナに接続される。モジュールポートPm800/950TXは、800/950MHz帯域の送信信号を出力する送信回路に接続される。モジュールポートPm1800/1900TXは、1800/1900MHz帯域の送信信号を出力する送信回路に接続される。なお、モジュールポートPmTRX2,PmTRX3,PmTRX4,PmTRX5,PmTRX6は、上述した通信方式の他の通信方式で通信信号を処理する送受信回路に接続されてもよく、送受信回路に接続されていなくてもよい。
【0027】
また、高周波モジュール11は、アンテナ整合回路1と、スイッチIC2と、高調波分岐回路3と、送信フィルタ回路7と、送信フィルタ回路8と、を備えている。
【0028】
スイッチIC2は、アンテナ接続ポートPsAと、スイッチポートPs1,Ps2,Ps3,Ps4,Ps5,Ps6,Ps7,Ps8と、を有している。スイッチIC2のアンテナ接続ポートPsAは、特許請求の範囲に記載のアンテナ接続端に相当する。また、スイッチIC2の各スイッチポートPs1〜Ps8は、特許請求の範囲に記載の接続切替端に相当する。スイッチIC2は、スイッチポートPs1〜Ps8のいずれかを切り替えてアンテナ接続ポートPsAに接続する機能を有している。
【0029】
高周波モジュール11のアンテナ接続ポートPmAと、スイッチIC2のアンテナ接続ポートPsAとは、信号経路L0を介して接続されている。モジュールポートPmTRX1と、スイッチポートPs1とは、信号経路L1を介して接続されている。モジュールポートPm800/950TXと、スイッチポートPs2とは、信号経路L2を介して接続されている。モジュールポートPmTRX2と、スイッチポートPs3とは、信号経路L3を介して接続されている。モジュールポートPm1800/1900TXと、スイッチポートPs4とは、信号経路L4を介して接続されている。モジュールポートPmTRX6と、スイッチポートPs5とは、信号経路L5を介して接続されている。モジュールポートPmTRX5と、スイッチポートPs6とは、信号経路L6を介して接続されている。モジュールポートPmTRX4と、スイッチポートPs7とは、信号経路L7を介して接続されている。モジュールポートPmTRX3と、スイッチポートPs8とは、信号経路L8を介して接続されている。
【0030】
アンテナ整合回路1は、信号経路L0に設けられており、アンテナとスイッチIC2との間でインピーダンスを整合させる。送信フィルタ回路7は、信号経路L2に設けられており、所定の通信システムの送信帯域の信号を通過させる。送信フィルタ回路8は、信号経路L4に設けられており、所定の通信システムの送信帯域の信号を通過させる。
【0031】
高調波分岐回路3は、信号経路L1に設けられており、ダイプレクサ4を備えている。この高調波分岐回路3は、送信信号の高調波をグランドに逃がす機能を有している。そのため、ダイプレクサ4は、低域通過型SAWフィルタ5と高域通過型SAWフィルタ6とを備える。低域通過型SAWフィルタ5と高域通過型SAWフィルタ6とは共通接続端で互いに接続されており、共通接続端をスイッチIC2側に向けて、信号経路L1に接続されている。また、低域通過型SAWフィルタ5は、共通接続端とモジュールポートPmTRX1との間に接続されている。高域通過型SAWフィルタ6は、共通接続端に接続されているとともに50Ωの終端抵抗を介してグランドに接続されている。即ち、高域通過型SAWフィルタ6は、低域通過型SAWフィルタ5と並列に接続されてグランドに接続されている。なお、低域通過型SAWフィルタ5は、特許請求の範囲に記載の第2のフィルタに相当している。高域通過型SAWフィルタ6は、特許請求の範囲に記載の第1のフィルタに相当している。
【0032】
低域通過型SAWフィルタ5は、信号経路L1の一端に位置するモジュールポートPmTRX1を介して、デュプレクサ13の共通接続端に接続されている。デュプレクサ13は、高周波モジュール11に対する外部回路であり、デュプレクサ13が接続されているモジュールポートPmTRX1は、特許請求の範囲に記載の外部回路接続部に相当する。また、デュプレクサ13は、LTE−Band13の送信信号と受信信号とを通過させる2つの帯域通過型SAWフィルタ14,15を備え、LTE−Band13の送受信回路に接続されている。
【0033】
ここで、高域通過型SAWフィルタ6は、LTE−Band13の送信信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域を通過帯域としている。即ち、高域通過型SAWフィルタ6は、LTE−Band13の送信信号の周波数帯域の逓倍を通過帯域としている。一方、低域通過型SAWフィルタ5は、LTE−Band13の送信信号の周波数帯域を通過帯域としており、LTE−Band13の送信信号の周波数帯域よりも高い周波数帯域を阻止帯域としている。即ち、低域通過型SAWフィルタ5は、LTE−Band13の送信信号の周波数帯域の逓倍を阻止帯域としている。
【0034】
このような回路構成の高周波モジュール11に、LTE−Band13の送信信号がデュプレクサ13を介して入力されることで、スイッチIC2やデュプレクサ13が高調波発生源となり、LTE−Band13の送信信号の二次高調波や三次高調波が発生する。
【0035】
ここで、LTE−Band13の送信信号を、基本周波数foの送信信号Txとして
図1中に矢印で示している。また、スイッチIC2で発生するLTE−Band13の送信信号の二次高調波であって、アンテナ接続ポートPsAから出力されるものを、周波数2foの高調波Hm1として
図1中に矢印で示している。また、スイッチIC2で発生する、または反射するLTE−Band13の送信信号の二次高調波であって、スイッチポートPs1から出力されるものを、周波数2foの高調波Hm2として
図1中に矢印で示している。また、デュプレクサ13で発生する、または反射するLTE−Band13の送信信号の二次高調波であって、モジュールポートPmTRX1から出力されるものを、周波数2foの高調波Hm3として
図1中に矢印で示している。
【0036】
これらの高調波のうち、スイッチIC2のアンテナ接続ポートPsAから出力される高調波Hm1は、LTE−Band13の送信信号Txとともに、アンテナから送出される。一方、スイッチIC2のスイッチポートPs1から出力される高調波Hm2は、高調波分岐回路3のダイプレクサ4において、低域通過型SAWフィルタ5の通過が阻止され、高域通過型SAWフィルタ6を通過する。高域通過型SAWフィルタ6は終端抵抗を介してグランドに接続されているため、高調波Hm2はグランドに逃げることになり、高調波分岐回路3からスイッチIC2側に反射することが抑制される。また、デュプレクサ13からモジュールポートPmTRX1に出力される高調波Hm3は、高調波分岐回路3のダイプレクサ4において、低域通過型SAWフィルタ5の通過が阻止され、デュプレクサ13側に反射され、デュプレクサ13で減衰する。
【0037】
したがって、この高周波モジュール11では、スイッチIC2のスイッチポートPs1からスイッチIC2に入力される高調波が低減する。これにより、従来であれば生じていた、高調波Hm1と高調波Hm2との信号レベルの足し合わせによる、アンテナから送出される高調波の信号レベル増大が生じず、アンテナから送出される高調波の信号レベルを抑制することができる。
【0038】
また、アンテナまでの電気長が不定な外部回路であるデュプレクサ13からの高調波Hm3が、高調波分岐回路3を通過してスイッチIC2に到達することが抑制されるので、電気長が不定な経路でアンテナから送出される高調波が低減され、アンテナから出力される高調波の信号レベルが安定することになる。即ち、高周波モジュール11における高調波特性が安定することになる。
【0039】
図2は、第1の実施形態に係る実施例における高調波特性と、ダイプレクサ4(高調波分岐回路3)を設けない場合の比較例における高調波特性とを示す図である。図示する横軸は、スイッチIC2と、外部回路であるデュプレクサ13との間の電気長に対応している。また、図示する縦軸は、アンテナから送出される二次高調波の信号レベルに対応している。
【0040】
ダイプレクサ4を設ける実施例に係る高調波特性では、外部回路であるデュプレクサ13との間の電気長の変化に対して、二次高調波の信号レベルが約−55±3dBmで安定している。一方、ダイプレクサ4を設けない比較例に係る高調波特性では、外部回路であるデュプレクサ13との間の電気長の変化に応じて、二次高調波の信号レベルの足し合わせと相殺が生じるため、約−57±7dBmと大きく変動している。
【0041】
以上に説明したように第1の実施形態に係る高周波モジュール11では、アンテナから送出されるLTE−Band13の送信信号の高調波の信号レベルが足し合わせにより増大することを抑制でき、高調波特性が安定して抑制される。したがって、高周波モジュール11とともに通信装置10に設けられるGPS受信機12が、LTE−Band13の送信信号の二次高調波の周波数帯域(1554MHz〜1574MHz)と非常に近いGPS信号の周波数帯域(1574.42MHz〜1576.42MHz)を受信するものであっても、GPS受信機12にLTE−Band13の送信信号の二次高調波が回り込んで受信されることを抑制して、GPS受信機12の受信感度の劣化が生じることを防ぐことができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、高調波発生源または高調波反射源となる外部回路として、デュプレクサ13を高周波モジュール11に接続する例を説明したが、高調波発生源または高調波反射源は、デュプレクサに限られず、その他のフィルタ回路や、送受信回路、パワーアンプなどであってもよい。
【0043】
また、デュプレクサ13のような高調波発生源や高調波反射源は、高周波モジュール11の構成要素として設けられていてもよい。その場合であっても、デュプレクサ13およびデュプレクサ13の後段に接続される送信回路が、高調波発生源または高調波反射源となって送信信号の高調波の発生や反射が生じるので、高調波分岐回路を設けることで、やはり高調波特性の安定化と抑制を実現することができる。
【0044】
また、ここでは、高周波モジュールとともに通信装置に設ける受信機として、GPS受信機を用いる例を説明したが、受信機は、GPS受信機に限られず、高調波分岐回路がグランドに逃がす高調波と近接する周波数帯域を有する通信方式の受信信号を受信するものであれば、どのような受信機であってもよい。
【0045】
また、ここでは、高調波分岐回路に設けるダイプレクサを、低域通過型のフィルタと高域通過型のフィルタとで構成したが、このダイプレクサは、帯域通過型のフィルタなどで構成してもよい。また、SAWフィルタに限らず、どのような構成のフィルタ回路であってもよい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュールについて、高周波モジュールが対応する送信信号の周波数帯域に対して、高周波モジュールが対応する受信信号の周波数帯域が逓倍の関係にある場合を例に説明する。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュールの模式的な回路図である。
【0048】
図3に示す高周波モジュール21は、モジュールポートPmTRX1に、デュプレクサ25の共通接続端が接続されており、デュプレクサ25が、LTE−Band17の送信信号と受信信号とを通過させる2つの帯域通過型SAWフィルタを備え、LTE−Band17の送受信回路に接続されている点で、第1の実施形態に係る高周波モジュールと相違している。
【0049】
また、モジュールポートPmTRX2に、デュプレクサ26の共通接続端が接続されている点でも、第1の実施形態に係る高周波モジュールと相違している。デュプレクサ26は、LTE−Band4の送信信号と受信信号とを通過させる2つの帯域通過型SAWフィルタを備え、LTE−Band4の送受信回路に接続される。
【0050】
なお、LTE−Band17の送信信号の三次高調波の周波数帯域は、LTE−Band4の受信信号の周波数帯域と近接する関係にある。したがって、このような場合にも、LTE−Band17の送信信号が伝わる信号配線L1に高調波分岐回路を設けることで、LTE−Band17の送信信号の三次高調波が、信号配線L1からスイッチIC2に流れることが抑制され、その三次高調波がLTE−Band4の受信回路に回り込んで信号レベルの増大や不安定化を招くことを抑制できる。これにより、LTE−Band4の受信感度が低下することを防ぐことができる。
【0051】
また、高周波モジュール21は、第1の実施形態で示した高調波分岐回路3に替えて、高調波分岐回路23を備えている。高調波分岐回路23は、信号経路L1に設けられており、帯域通過型SAWフィルタ24を備えている。この高調波分岐回路23も、送信信号の高調波をグランドに逃がす機能を有している。そのため、帯域通過型SAWフィルタ24は、送信信号の高調波に対応する通過帯域を備え、信号経路L1に対して並列に接続されて、50Ωの終端抵抗を介してグランドに接続されている。
【0052】
このような回路構成では、LTE−Band17の送信信号が、デュプレクサ25を介して入力されることで、スイッチIC2やデュプレクサ25が高調波発生源となり、LTE−Band17の送信信号の二次高調波や三次高調波が発生する。
【0053】
ここで、LTE−Band17の送信信号を、基本周波数foの送信信号Txとして
図3中に矢印で示している。また、スイッチIC2で発生するLTE−Band17の送信信号の三次高調波であって、アンテナ接続ポートPsAから出力されるものを、周波数3foの高調波Hm1として
図3中に矢印で示している。また、スイッチIC2で発生する、または反射するLTE−Band17の送信信号の三次高調波であって、スイッチポートPs1から出力されるものを、周波数3foの高調波Hm2として
図3中に矢印で示している。また、デュプレクサ25で発生する、または反射するLTE−Band17の送信信号の三次高調波であって、モジュールポートPmTRX1から出力されるものを、周波数3foの高調波Hm3として
図1中に矢印で示している。
【0054】
この場合にも、やはり、スイッチIC2のアンテナ接続ポートPsAから出力される高調波Hm1は、LTE−Band17の送信信号Txとともに、アンテナから送出される。一方、スイッチIC2のスイッチポートPs1から出力される高調波Hm2は、高調波分岐回路23の帯域通過型SAWフィルタ24を通過し、終端抵抗を介してグランドに逃げることになり、高調波分岐回路23からスイッチIC2側に反射することを抑制できる。また、デュプレクサ25からモジュールポートPmTRX1に出力される高調波Hm3も、高調波分岐回路23の帯域通過型SAWフィルタ24を通過し、終端抵抗を介してグランドに逃げることになり、高調波分岐回路23からスイッチIC2側に通過することを抑制できる。
【0055】
したがって、スイッチIC2のスイッチポートPs1からスイッチIC2に入力される高調波が低減する。これにより、スイッチIC2から出力される高調波の信号レベルを抑制することができる。また、スイッチIC2までの電気長が不定な外部回路であるデュプレクサ25からの高調波Hm3が、スイッチIC2まで到達することを抑制でき、高周波モジュール21における高調波特性が安定することになる。
【0056】
なお、本実施形態においては、帯域通過型SAWフィルタを設けた高調波分岐回路の構成例を示したが、本実施形態においても、第1の実施形態で示したようなダイプレクサを設けた高調波分岐回路を構成してもよい。また逆に、本実施形態において示した高調波分岐回路の構成を、第1の実施形態で示した構成に採用してもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、高調波分岐回路に設けるSAWフィルタを、帯域通過型としたが、高調波分岐回路に設けるSAWフィルタは、送信信号の基本周波数の通過を阻止し、高調波を通過させることができれば、帯域通過型でなくてもよい。また、SAWフィルタとは異なる構成のフィルタ回路であってもよい。
【0058】
次に、本発明の第3の実施形態に係る高周波モジュールについて、LTE通信システムの複数の帯域を束ねて利用するキャリアアグリゲーションを利用可能な回路構成を例に説明する。
【0059】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る高周波モジュールの模式的な回路図である。
【0060】
図4に示す高周波モジュール31は、アンテナ接続ポートPmAと、モジュールポートPm11,Pm12,Pm13,Pm14,Pm15,Pm16,Pm17,Pm18,Pm21,Pm22,Pm23,Pm24,Pm25,Pm26,Pm27,Pm28と、を有している。
【0061】
アンテナ接続ポートPmAは、アンテナに接続される。モジュールポートPm11は、デュプレクサ35の共通接続端に接続される。デュプレクサ35は、LTE−Band17の送信信号と受信信号とを通過させる2つの帯域通過型SAWフィルタを備え、LTE−Band17の送受信回路に接続される。モジュールポートPm21は、デュプレクサ36の共通接続端に接続される。デュプレクサ36は、LTE−Band4の送信信号と受信信号とを通過させる2つの帯域通過型SAWフィルタを備え、LTE−Band4の送受信回路に接続される。なお、その他のモジュールポートPm12,Pm13,Pm14,Pm15,Pm16,Pm17,Pm18,Pm22,Pm23,Pm24,Pm25,Pm26,Pm27,Pm28は、上述した通信方式とは別の通信方式で通信信号を処理する送受信回路に接続されてもよく、送受信回路に接続されていなくてもよい。
【0062】
また、高周波モジュール31は、ダイプレクサ32と、2つのスイッチIC2A,2Bと、高調波分岐回路33と、を備えている。
【0063】
ダイプレクサ32は、低域通過型SAWフィルタ32Aと高域通過型SAWフィルタ32Bとを備える。低域通過型SAWフィルタ32Aと高域通過型SAWフィルタ32Bとは共通接続端で互いに接続されている。ダイプレクサ32は、共通接続端でアンテナ接続ポートPmAに接続されている。低域通過型SAWフィルタ32Aは、LTE−Band17の帯域を少なくとも通過帯域に含み、LTE−Band4の帯域を少なくとも阻止帯域に含むものである。高域通過型SAWフィルタ32Bは、LTE−Band17の帯域を少なくとも阻止帯域に含み、LTE−Band4の帯域を少なくとも通過帯域に含むものである。
【0064】
スイッチIC2Aは、アンテナ接続ポートPsA1と、スイッチポートPs11,Ps12,Ps13,Ps14,Ps15,Ps16,Ps17,Ps18と、を有している。スイッチIC2Aのアンテナ接続ポートPsA1は、特許請求の範囲に記載のアンテナ接続端に相当しており、ダイプレクサ32の低域通過型SAWフィルタ32Aを介してアンテナ接続ポートPmAに接続されている。また、スイッチIC2Aの各スイッチポートPs11〜Ps18は、特許請求の範囲に記載の接続切替端に相当し、それぞれモジュールポートPm11〜Pm18に接続されている。このスイッチIC2Aは、スイッチポートPs11〜Ps18のいずれかを切り替えてアンテナ接続ポートPsA1に接続する機能を有している。
【0065】
スイッチIC2Bは、アンテナ接続ポートPsA2と、スイッチポートPs21,Ps22,Ps23,Ps24,Ps25,Ps26,Ps27,Ps28と、を有している。スイッチIC2Bのアンテナ接続ポートPsA2は、特許請求の範囲に記載のアンテナ接続端に相当しており、ダイプレクサ32の高域通過型SAWフィルタ32Bを介してアンテナ接続ポートPmAに接続されている。また、スイッチIC2Bの各スイッチポートPs21〜Ps28は、特許請求の範囲に記載の接続切替端に相当し、それぞれモジュールポートPm21〜Pm28に接続されている。このスイッチIC2Bは、スイッチポートPs21〜Ps28のいずれかを切り替えてアンテナ接続ポートPsA2に接続する機能を有している。
【0066】
高調波分岐回路33は、スイッチIC2AのスイッチポートPs11と高周波モジュール31のモジュールポートPm11との間の信号経路L11に設けられている。高調波分岐回路33は、第2の実施形態で説明した高調波分岐回路23と同じものであり、送信信号の高調波をグランドに逃がす機能を有している。
【0067】
この第3の実施形態の回路構成においても、LTE−Band17の送信信号が、デュプレクサ35を介して入力されることで、スイッチIC2Aやデュプレクサ35が高調波発生源となり、LTE−Band17の送信信号の二次高調波や三次高調波が発生する。LTE−Band17の送信信号の三次高調波の周波数帯域は、第2の実施形態でも説明したように、LTE−Band4の受信信号の周波数帯域と近接する関係にある。
【0068】
したがって、この場合にも、LTE−Band17の送信信号が伝わる信号配線L11に高調波分岐回路33を設けることで、LTE−Band17の送信信号の三次高調波が、信号配線L11からスイッチIC2Aに流れることが抑制される。これにより、三次高調波が、ダイプレクサ32とスイッチIC2Bとを介して、LTE−Band4の受信回路に回り込んで信号レベルの増大や不安定化を招くことを抑制できる。したがって、LTE−Band4の受信感度が低下することを防ぐことができる。また、LTE−Band17の送信信号の高調波が、ダイプレクサ32を介してアンテナから送出される際の信号レベルの増大や不安定化を招くことを抑制できる。
【0069】
なお、本実施形態においては、帯域通過型SAWフィルタを設けた高調波分岐回路の構成例を示したが、本実施形態においても、第1の実施形態で示したようなダイプレクサを設けた高調波分岐回路を構成してもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、高調波分岐回路に設けるSAWフィルタを、帯域通過型としたが、高調波分岐回路に設けるSAWフィルタは、送信信号の基本周波数の通過を阻止し、高調波を通過させることができれば、帯域通過型でなくてもよい。また、SAWフィルタとは異なる構成のフィルタ回路であってもよい。
【0071】
また、第1実施形態ないし第3の実施形態において、高調波分岐回路に設ける終端抵抗を50Ωとする例を示したが、終端抵抗は50Ωに限られるものでは無い。また、終端抵抗は、高周波モジュールの外部回路として接続されるものであってもよい。
【0072】
また、第1実施形態ないし第3の実施形態において、高調波分岐回路に接続されるモジュールポートにデュプレクサを接続する例を示したが、高調波発生源や高調波反射源となりうる構成であれば、どのような回路がモジュールポートに接続されていてもよい。
【0073】
また、第1実施形態ないし第3の実施形態において、スイッチ回路としてスイッチICを採用する例を示したが、スイッチ回路として、ダイオードスイッチを積層基板に設けるようにしてもよい。また、フィルタ回路として、ダイプレクサを採用する例を示したが、フィルタ回路として、単体のSAWフィルタや、受動素子からなるフィルタを設けるようにしてもよい。