(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給電部側に接続される第1ポートとアンテナ側に接続される第2ポートとの間に接続された第1インダクタと、グランドに接続される第3ポートと前記第2ポートとの間に接続された第2インダクタとを備え、第1インダクタと第2インダクタとが結合するオートトランス回路と、
前記オートトランス回路の第1ポートに第1端が接続された第1移相器と、
前記第1移相器の第2端と前記給電部との間に直列接続されたインダクタと、
前記インダクタに対して直列で、且つ、前記第1移相器の第2端と前記給電部との間に直列接続されたキャパシタと、
を備え、
前記インダクタと前記キャパシタとの間に第2移相器が接続されたことを特徴とするインピーダンス変換回路。
極座標における反射係数の実数部が正で虚数部が正の領域を第1象限、前記反射係数の実数部が負で虚数部が正の領域を第2象限、前記反射係数の実数部が負で虚数部が負の領域を第3象限、前記反射係数の実数部が正で虚数部が負の領域を第4象限と表すとき、
前記オートトランス回路は、前記第1ポートから前記第2ポート側を見た反射係数の、周波数スイープすることによって得られる軌跡のうち、ローバンドでの軌跡である第1軌跡の中心を、第1象限または第2象限に移動させ、且つ、ハイバンドでの軌跡である第2軌跡の中心を第1象限または第4象限に移動させ、
前記第1移相器は、前記第1軌跡の中心が第1象限にあり、且つ前記第2軌跡の中心が第4象限にあるように回転させ、
前記キャパシタは、前記第1軌跡の中心を前記極座標の中心へ近づけ、
前記インダクタは、前記第2軌跡の中心を前記極座標の中心へ近づける、
請求項1に記載のインピーダンス変換回路。
前記第1軌跡の中心は、この第1軌跡について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を実数部、虚数部の最大値と最小値との平均値を虚数部とする極座標上の位置であり、前記第2軌跡の中心は、この第2軌跡について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を実数部、虚数部の最大値と最小値との平均値を虚数部とする極座標上の位置である、請求項2に記載のインピーダンス変換回路。
前記第1軌跡の中心は、ローバンドの下限周波数での反射係数と上限周波数での反射係数との極座標上の中間点であり、前記第2軌跡の中心は、ハイバンドの下限周波数での反射係数と上限周波数での反射係数との極座標上の中間点である、請求項2に記載のインピーダンス変換回路。
前記第1軌跡の中心は、前記ローバンドでの軌跡を等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値に相当する位置であり、前記第2軌跡の中心は、前記ハイバンドでの軌跡を等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値に相当する位置である、請求項2に記載のインピーダンス変換回路。
前記オートトランス回路による、前記第1軌跡の移動および前記第2軌跡の移動は、前記オートトランス回路の、等価回路上で並列に発生するインダクタンスおよび直列に発生するインダクタンスにより生じさせる、請求項2〜5のいずれかに記載のインピーダンス変換回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されるような、チップコンデンサやチップインダクタを用いた整合回路においては、周波数の異なる通信システム(特に周波数の離れた通信システム)に対してそれぞれ最適なマッチングを得ることは困難である。また、インピーダンスを大きく動かす場合は、大きな素子値のチップ素子を用いる必要があるため、チップ素子で生じる損失の影響で通信特性が劣化する問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、使用周波数の離れた通信システムにおいてそれぞれ最適なアンテナマッチングが得られるインピーダンス変換回路、それを備えたアンテナ装置および無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインピーダンス変換回路は次のように構成される。
【0008】
給電部側に接続される第1ポートとアンテナ側に接続される第2ポートとの間に接続された第1インダクタと、グランドに接続される第3ポートと前記第2ポートとの間に接続された第2インダクタとを備え、第1インダクタと第2インダクタとが結合するオートトランス回路と、
前記オートトランス回路の第1ポートに第1端が接続された第1移相器と、
前記第1移相器の第2端と前記給電部との間に直列接続されたインダクタと、
前記インダクタに対して直列で、且つ、前記第1移相器の第2端と前記給電部との間に直列接続されたキャパシタと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、オートトランス回路によりスミスチャート上のインピーダンス軌跡の範囲が小さくなって、第1移相器による位相回転量が少なくて済む。
【0010】
また、極座標における反射係数(複素反射係数ρ)の実数部が正で虚数部が正の領域を第1象限、前記反射係数の実数部が負で虚数部が正の領域を第2象限、前記反射係数の実数部が負で虚数部が負の領域を第3象限、前記反射係数の実数部が正で虚数部が負の領域を第4象限と表すとき、
前記オートトランス回路は、前記第1ポートから前記第2ポート側を見た反射係数の、周波数スイープすることによって得られる軌跡のうち、ローバンドでの軌跡である第1軌跡の中心を、第1象限または第2象限に移動させ、且つ、ハイバンドでの軌跡である第2軌跡の中心を第1象限または第4象限に移動させ、
第1移相器は、前記第1軌跡の中心が第1象限にあり、且つ前記第2軌跡の中心が第4象限にあるように回転させ、
前記キャパシタは、前記第1軌跡の中心を前記極座標の中心へ近づけ、
前記インダクタは、前記第2軌跡の中心を前記極座標の中心へ近づける構成であることが好ましい。
【0011】
上記構成により、オートトランス回路によるスミスチャート上のインピーダンス軌跡は第1移相器による少ない位相回転後に比較的小さな値のインダクタおよびキャパシタで整合をとることができる。
【0012】
前記第1軌跡の中心は、この第1軌跡について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を実数部、虚数部の最大値と最小値との平均値を虚数部とする極座標上の位置であり、前記第2軌跡の中心は、この第2軌跡について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を実数部、虚数部の最大値と最小値との平均値を虚数部とする極座標上の位置であることが好ましい。
【0013】
上記構成により、前記ローバンドでの軌跡が円状であるとき、第1軌跡の代表位置を的確に捉えることができる。また、前記ハイバンドでの軌跡が円状であるとき、第2軌跡の代表位置を的確に捉えることができる。
【0014】
前記第1軌跡の中心は、ローバンドの下限周波数での反射係数と上限周波数での反射係数との極座標上の中間点であり、前記第2軌跡の中心は、ハイバンドの下限周波数での反射係数と上限周波数での反射係数との極座標上の中間点であることが好ましい。
【0015】
上記構成により、前記ローバンドでの軌跡が円の所定周長に満たないとき(例えば周長の1/2に満たないとき)、第1軌跡の代表位置を的確に捉えることができ、前記ハイバンドでの軌跡が円の所定周長に満たないとき、第2軌跡の代表位置を的確に捉えることができる。
【0016】
また、前記第1軌跡の中心は、前記ローバンドでの軌跡を等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値に相当する位置であり、前記第2軌跡の中心は、前記ハイバンドでの軌跡を等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値に相当する位置であることが好ましい。
【0017】
上記構成により、第1軌跡および第2軌跡の代表位置をより的確に捉えることができる。
【0018】
前記オートトランス回路による、前記第1軌跡の移動および前記第2軌跡の移動は、前記オートトランス回路の、等価回路上で並列に発生するインダクタンスおよび直列に発生するインダクタンスにより生じさせるものであることが好ましい。
【0019】
上記構成により、オートトランス回路のインピーダンス変換の周波数特性を利用して、少ない素子数でインピーダンス変換回路を構成できる。
【0020】
前記インダクタと前記キャパシタとの間に第2移相器が接続されてもよい。これにより、上記インダクタまたはキャパシタによるインピーダンス整合をより効果的に行える。
【0021】
前記第2移相器は伝送線路で構成されることが好ましい。これにより、第2移相器の周波数特性を軽減することができる。
【0022】
前記第1移相器は伝送線路で構成されることが好ましい。これにより、第1移相器の周波数特性を軽減することができる。
【0023】
本発明のアンテナ装置は、上記インピーダンス変換回路と、当該インピーダンス変換回路のオートトランス回路の第2ポートに接続されたアンテナとを備える。この構成により、広帯域に亘ってインピーダンス整合する、小型で高利得なアンテナ装置が得られる。
【0024】
本発明の無線通信装置は、上記インピーダンス変換回路と、当該インピーダンス変換回路の前記オートトランス回路の第2ポートに接続されたアンテナと、前記給電部である通信回路とを備える。この構成により、アンテナ部が小型化されたマルチバンドの無線通信装置が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、オートトランス回路により、スミスチャート上のインピーダンス軌跡の範囲が小さくなって、第1移相器による位相回転量が少なくて済むので、小型に構成できる。また、付加するリアクタンス素子の素子値も小さくて済むので、低損失化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係るインピーダンス変換回路101を備えたアンテナ装置201の回路図である。
【
図2】
図2はオートトランス回路25の回路図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したインピーダンス変換回路101の給電ポートPfからアンテナ側を見たインピーダンスの軌跡をスミスチャート上に示す図である。
【
図4A】
図4Aはインピーダンス変換回路101を設けない場合の回路図である。
【
図4B】
図4Bは給電ポートPfからアンテナ素子10を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
【
図5A】
図5Aはオートトランス回路25を設けた状態の回路図である。
【
図5B】
図5Bは
図5Aにおいて給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
【
図5C】
図5Cは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図5D】
図5Dは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図6B】
図6Bは
図6Aにおいて給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
【
図6C】
図6Cは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図6D】
図6Dは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図7A】
図7Aは信号線に対して直列接続のインダクタ23および信号線に対して直列接続のキャパシタ21をさらに付加した状態の回路図である。
【
図7B】
図7Bは
図7Aにおいて給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
【
図7C】
図7Cは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図7D】
図7Dは第1軌跡T1の中心CP1および第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【
図8】
図8はオートトランス回路25の等価回路図である。
【
図9】
図9はオートトランス回路25の各種導体パターンの斜視図である。
【
図10】
図10はオートトランス回路25の、積層素体内における1次コイルおよび2次コイルの配置関係を考慮して表した回路図である。
【
図11A】
図11Aは、アンテナ装置を備えた携帯電話端末等の無線通信装置の構成を示す図である。
【
図12A】
図12Aは第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路102Aを備えたアンテナ装置202Aの回路図である。
【
図12B】
図12Bは第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路102Bを備えたアンテナ装置202Bの回路図である。
【
図13】
図13は、回路基板に設けられた、第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路の構成を示す図である。
【
図14A】
図14Aは複素反射係数ρの極座標およびその4つの象限を示す図である。
【
図14B】
図14Bは複素反射係数に対応するインピーダンスをスミスチャート上に表した図である。
【
図15A】
図15Aは理想トランス35をアンテナ素子10と給電回路30との間に接続した例を示す図である。
【
図17A】
図17Aは信号線に対して並列接続のインダクタ45を設けた状態の回路図である。
【
図19A】
図19Aは信号線に対して直列接続のインダクタ43および信号線に対して直列接続のキャパシタ41をさらに付加した状態の回路図である。
【
図20】
図20はインピーダンス軌跡の中心の定義について、その一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、周波数スイープすることによって得られる反射係数の極座標における軌跡の位置を表現するために、象限を定義する。
図14Aに複素反射係数ρの極座標およびその4つの象限を示す。ここで、横軸uの値は反射係数の実数部の値、縦軸vの値は反射係数の虚数部の値である。複素反射係数ρはこの極座標上のある点としてプロットできる。反射係数の絶対値(中心0,0からの半径)Γは反射係数の大きさ、横軸uからの角度φが反射信号の位相角である。このような極座標上の反射係数の実数部が正で虚数部が正の領域を第1象限、極座標上の反射係数の実数部が負で虚数部が正の領域を第2象限、極座標上の反射係数の実数部が負で虚数部が負の領域を第3象限、極座標上の反射係数の実数部が正で虚数部が負の領域を第4象限と表す。
【0029】
図14Bは上記複素反射係数に対応するインピーダンスをスミスチャート上に表した図である。極座標上で反射係数を表す点ρ(u+jv)は、スミスチャート上でのインピーダンスを表す点z(r+jx)である。すなわち、極座標上の反射係数を表す点の位置とスミスチャート上のインピーダンスを表す点の位置は対応していて、周波数スイープしたときの極座標上の反射係数の軌跡はスミスチャート上のインピーダンスの軌跡でもある。なお、
図14Bには、回路にリアクタンス素子を接続したときのインピーダンスの変化についても表している。例えば、インピーダンスが第1象限の中央あたりにあるとき、キャパシタを直列に接続することにより、インピーダンスはスミスチャートの中心に近づく。また、インピーダンスが第2象限の中央あたりにあるとき、キャパシタを並列に接続することにより、インピーダンスはスミスチャートの中心に近づく。また、インピーダンスが第3象限の中央あたりにあるとき、インダクタを並列接続することにより、インピーダンスはスミスチャートの中心に近づき、インピーダンスが第4象限の中央あたりにあるとき、インダクタを直列に接続することにより、インピーダンスはスミスチャートの中心に近づく。
【0030】
本実施形態および比較例において、ローバンドは824MHz〜960MHz、ハイバンドは1.71GHz〜2.17GHzである。
【0031】
図16Aは、インピーダンス整合回路を設けない場合の回路図、
図16Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図16Bにおいて、マーカーm11はローバンドの中心周波数、m21はハイバンドの中心周波数にそれぞれ対応する。以降に示す他の図についても同じである。
【0032】
図17Aは、信号線に対して並列接続のインダクタ45を設けた状態の回路図、
図17Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。信号線に対して並列接続のインダクタ45の作用により、インピーダンス軌跡は第2象限へ移動する。
【0033】
図18Aは伝送線路による移相器44を付加した状態の回路図、
図18Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図17Bから
図18Bへの変化に表れているように、移相器44により、インピーダンス軌跡はスミスチャートの中心を中心として右回りに回転する。
図17Bに表れているように、位相回転前のインピーダンス軌跡は第2象限にあるので、必要な位相回転量は大きい。ここで、1GHzで52°回転させようとすると、
300mm(@1GHzの波長) × 0.67(基板の比誘電率) × 52/360(角度)
≒29mm
であるので、約30mmもの長い伝送線路が必要である。
【0034】
なお上記係数0.67は、比誘電率が3程度の基板の実効比誘電率による波長短縮効果による値である。
【0035】
また、伝送線路の電気長は周波数に比例するので、ローバンドの位相回転量を適正にすると、ハイバンドの位相は回りすぎる。
【0036】
図19Aは信号線に対して直列接続のインダクタ43および信号線に対して直列接続のキャパシタ41をさらに付加した状態の回路図、
図19Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図18Bに示した状態から、信号線に対して直列接続のインダクタおよび信号線に対して直列接続のキャパシタでインピーダンス軌跡を移動させた場合、例えばローバンドを適正にするとハイバンドの整合が難しくなる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係るインピーダンス変換回路について示す。
【0038】
図1は本発明の第1の実施形態に係るインピーダンス変換回路101を備えたアンテナ装置201の回路図である。アンテナ装置201はインピーダンス変換回路101とアンテナ素子10とで構成され、このアンテナ装置201に給電回路30が接続される。
【0039】
アンテナ素子10は、ローバンドでは基本波(1/4波長)モードで共振し、ハイバンドでは高調波(例えば3/4波長)モードで共振する広帯域アンテナである。このアンテナ素子10の給電端にインピーダンス変換回路101が接続される。すなわちインピーダンス変換回路101の給電ポートPfに給電回路30が接続され、アンテナポートPaにアンテナ素子10が接続される。また、グランドポートPgはグランドに接続される。
【0040】
インピーダンス変換回路101は、オートトランス回路25、移相器24、インダクタ23、およびキャパシタ21を備えている。
【0041】
図2は上記オートトランス回路25の回路図である。オートトランス回路25は、給電部側に接続される第1ポートP1とアンテナ側に接続される第2ポートP2との間に接続された第1インダクタL1と、グランドに接続される第3ポートP3と第2ポートP2との間に接続された第2インダクタL2とを備えている。第1インダクタL1と第2インダクタL2とは結合する。
【0042】
図1に示したように、オートトランス回路25の第1ポートP1に移相器24の第1端が接続されていて、移相器24の第2端にインダクタ23が直列に接続されている。そしてインダクタ23と給電ポートPfとの間にキャパシタ21が直列に接続されている。
【0043】
移相器24は、例えばストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路のような所定の電気長を有する高周波伝送線路であって、インピーダンス変換回路を一体化してなる積層体に組み込まれていてもよいが、その調整のしやすさの点で、積層体を実装するための回路基板に形成されていることが好ましい。
【0044】
図3は、
図1に示したインピーダンス変換回路101の給電ポートPfからアンテナ側を見たインピーダンスの軌跡をスミスチャート上に示す図である。ここで、周波数スイープ範囲は700MHz〜2.3GHzである。各マーカーと周波数との関係は次のとおりである。
【0045】
m10:824MHz
m11:892MHz
m12:960MHz
m20:1.71GHz
m21:1.94GHz
m22:2.17GHz
上述のとおり、マーカーm11はローバンドの中心周波数、m21はハイバンドの中心周波数にそれぞれ対応する。
【0046】
次に、インピーダンス変換回路101の各素子の作用について順に示す。
【0047】
図4Aは、インピーダンス変換回路101を設けない場合の回路図、
図4Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図4A、
図4Bは、比較例として示した
図16A、
図16Bと同じである。
【0048】
図5Aは、オートトランス回路25を設けた状態の回路図、
図5Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図5Cおよび
図5Dは、いずれも第1軌跡T1の中心CP1と第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【0049】
図5Bにおいて、マーカーm10からm12までの軌跡がローバンドでの軌跡(以降、「第1軌跡」)である。また、マーカーm20からm22までの軌跡がハイバンドでの軌跡(以降、「第2軌跡」)である。
図5Bに表れているように、アンテナ素子10はローバンドとハイバンドで、1/4波長の奇数倍で共振するので、第1軌跡T1は円C1に沿って、第2軌跡T2は円C2に沿って、それぞれほぼ円弧を描く。
【0050】
オートトランス回路25は、給電ポートPfから見たインピーダンスが高くなるようにインピーダンス比を定めるものであり、
図4Bから
図5Bへの変化で示すように、スミスチャート上のインピーダンス軌跡の範囲が縮小化されるとともに、右方へシフトされる。但し、後に述べるように、オートトランス回路25は理想トランスではなく、インピーダンス変換比に周波数特性をもっている。そのため、
図5Bにおいて第1軌跡T1の中心を第1象限または第2象限に移動させ、且つ第2軌跡T2の中心を第1象限または第4象限に移動させる。
【0051】
第1軌跡T1の中心および第2軌跡T2の中心は、次に示すように幾つかの方法で定義できる。
【0052】
図5Cに示す例では、第1軌跡T1について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を第1軌跡T1の中心CP1の実数部とし、第1軌跡T1について、虚数部の最大値と最小値との平均値を第1軌跡T1の中心CP1の虚数部とする。このようにして求めた中心CP1を第1軌跡T1の代表位置として扱う。第1軌跡T1に外接する長方形R1の中心が第1軌跡T1の中心CP1に相当する。同様に、第2軌跡T2について、反射係数の実数部の最大値と最小値との平均値を第2軌跡T2の中心CP2の実数部とし、第2軌跡T2について、虚数部の最大値と最小値との平均値を第2軌跡T2の中心CP2の虚数部とする。このようにして求めた中心CP2を第2軌跡T2の代表位置として扱う。第2軌跡T2に外接する長方形R2の中心が第2軌跡T2の中心CP2に相当する。
【0053】
図5Dに示す例では、第1軌跡の下限周波数(マーカーm10)での反射係数と上限周波数(マーカーm12)での反射係数との極座標上の中間点CP1を第1軌跡の位置(代表位置)として扱う。同様に、第2軌跡の下限周波数(マーカーm20)での反射係数と上限周波数(マーカーm22)での反射係数との極座標上の中間点CP2を第2軌跡の位置(代表位置)として扱う。
【0054】
ローバンドでの軌跡(第1軌跡)の中心およびハイバンドでの軌跡(第2軌跡)の中心の更なる他の定義については後に示す。
【0055】
図6Aは移相器24を付加した状態の回路図、
図6Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図6Cおよび
図6Dは、いずれも第1軌跡T1の中心CP1と第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【0056】
移相器24は本発明に係る「第1移相器」に相当し、この例では基準インピーダンス(50Ω)の伝送線路である。
図5Bから
図6Bへの変化に表れているように、移相器24により、第1軌跡T1および第2軌跡T2はスミスチャートの中心を中心として右回りに回転する。そして、この回転によって、第1軌跡T1の中心CP1が第1象限にあり、第2軌跡T2の中心CP2が第4象限にあるようにする。
【0057】
図5Bに示した状態で、マーカーm11で示すローバンドの中心周波数はスミスチャートの中心付近にあるので、移相器24による位相回転は特にハイバンドに作用する(第2軌跡T2参照)。
【0058】
例えば、移相器24として、1GHzのときに15°回転させる伝送線路を付加すると、第1軌跡T1は15°も回転しないので、中心CP1は第1象限にとどまり、第2軌跡T2は15°以上回転して、中心CP2は第4象限の中央まで移動する。
【0059】
300mm(@1GHzの波長) × 0.67(基板の比誘電率) × 15/360(角度)
≒8.4mm
であるので、移相器24としての伝送線路の線路長は約10mm未満で済む。
【0060】
図7Aは信号線に対して直列接続のインダクタ23および信号線に対して直列接続のキャパシタ21をさらに付加した状態の回路図、
図7Bは、給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図7Cおよび
図7Dは、いずれも第1軌跡T1の中心CP1と第2軌跡T2の中心CP2を示す図である。
【0061】
図7Aは
図1に示したアンテナ装置201に相当する。信号線に対して直列接続のインダクタ23は、第4象限にあるインピーダンスを
図14Bに示したように、スミスチャートの中心方向へ移動させる。直列接続インダクタのリアクタンスは2πfLであるので、インダクタ23によるインピーダンス軌跡の移動量はローバンドよりも周波数の高いハイバンドに対して効果的に作用する。また、信号線に対して直列接続のキャパシタ21は、第1象限にあるインピーダンスを
図14Bに示したように、スミスチャートの中心方向へ移動させる。直列接続キャパシタのリアクタンスは1/2πfCであるので、キャパシタ21によるインピーダンス軌跡の移動量はハイバンドよりも周波数の低いローバンドに関して効果的に作用する。その結果、
図6Bから
図7Bへの変化に表れているように、
図6Bに示した、第2軌跡T2の中心CP2はスミスチャートの中心o方向へ移動し、第1軌跡T1の中心もスミスチャートの中心o方向へ移動する。
【0062】
このようにして
図7Bおよび
図3に示したように、ローバンド、ハイバンド共に十分に整合したインピーダンス変換回路101が構成される。
【0063】
図8は上記オートトランス回路25の等価回路図である。オートトランス回路25の等価回路は、
図8に示すように、変圧比n:1の理想トランス(破線部)、並列に接続されたインダクタンスLmおよび直列に接続されたインダクタンスLkで表される。ここで、第1インダクタL1インダクタンスをL1、第2インダクタのインダクタンスをL2、結合係数をkで表すと、インダクタンスLmの値はL1+L2+2Mである。また、インダクタンスLkの値は{(1-k
2)*L1*L2}/(L1+L2+2M)である。したがって、結合係数kが1である場合、等価回路では理想トランス部のみとなって、インピーダンス変換比に周波数依存性は表れない。上記結合係数kが1より小さいと、寄生成分であるインダクタンスLkが生じて周波数依存性が現れる。またインダクタンスLmについては、L1とL2のインダクタンス値が小さいために高周波トランスにおいて影響が大きくなる(無視できなくなる)。そこで、次に述べるように、オートトランス回路25は、トランスによるインピーダンス変換を行うとともに、上記寄生成分を利用して、ローバンドとハイバンドとで、インピーダンス軌跡の移動の態様を変える。
【0064】
図8に示したインダクタンスLmは並列接続されているインダクタであるので、ローバンドで有効に作用する。すなわち、
図5Bにおいて第1軌跡T1に示すように、信号線に対して並列接続のインダクタの作用で、第1軌跡T1の中心CP1は第1象限に移動する。また、
図8に示したインダクタンスLkは直列接続されているインダクタであるので、ハイバンドで有効に作用する。すなわち、
図5Bにおいて第2軌跡T2に示すように、信号線に対して直列接続のインダクタの作用で、第2軌跡T2の中心CP2は第4象限に移動する。
【0065】
ここで、比較例として、理想トランスを用いたインピーダンス変換について、
図15A、
図15Bを基に示す。
図15Aは理想トランス35をアンテナ素子10と給電回路30との間に接続した例、
図15Bはその場合の給電ポートPfからアンテナ素子10側を見たインピーダンスの軌跡を示す図である。
図4Bから
図15Bへの変化で示すように、スミスチャート上のインピーダンス軌跡の範囲が縮小化されるとともに、右方へシフトされる。しかし、ローバンドとハイバンドの両方についてインピーダンス変換比が同じであるため、両方のインピーダンス軌跡がスミスチャートの第1象限と第4象限に亘る範囲に位置することになる。そのため、
図15Aに示した回路に伝送線路による移相器を付加してもローバンドとハイバンドの両方を整合させることは困難である。
【0066】
比較例の
図19Bに示した各マーカーと周波数の関係は、本実施形態で
図3に示した各マーカーと周波数との関係と同じである。両図を対比すれば明らかなように、比較例の場合、ローバンドとハイバンドの一方を重視すると、他方の整合が悪化するが、本実施形態によれば、ローバンド、ハイバンド共に良好な整合が得られる。
【0067】
次に、上記オートトランス回路25の具体的な構成例を示す。
図9はオートトランス回路25の各種導体パターンの斜視図である。これらの導体パターンが形成されている誘電体の基材層は除いて描いている。
図10はオートトランス回路25の、積層素体内における1次コイルおよび2次コイルの配置関係を考慮して表した回路図である。
【0068】
図9および
図10において、導体パターンL1A,L1B,L1C,L1Dは第1インダクタ(
図2に示したL1)に相当し、導体パターンL2A,L2Bは第2インダクタ(
図2に示したL2)に相当する。
【0069】
図9に表れているように、導体パターンL1A,L1Bによる第1ループ状導体LP1、導体パターンL1C,L1Dによる第2ループ状導体LP2、導体パターンL2Aによる第3ループ状導体LP3、導体パターンL2Bによる第4ループ状導体LP4、がそれぞれ形成されている。各層の導体パターンはビア導体により層間接続されている。
【0070】
最下層の基材層の下面には第1ポート(給電ポート)P1、第2ポート(アンテナポート)P2、第3ポート(グランドポート)P3に相当する端子およびその他の実装用端子(空き端子NC)が形成されている。これらの端子は最下層の基材層の下面に形成されている。
【0071】
第1インダクタL1は第1ループ状導体LP1および第2ループ状導体LP2で構成されている。第2インダクタL2は第3ループ状導体LP3および第4ループ状導体LP4で構成されている。
【0072】
第1ループ状導体LP1および第2ループ状導体LP2は第3ループ状導体LP3と第4ループ状導体LP4との間に層方向に挟み込まれている。
【0073】
第1ループ状導体LP1の一部である導体パターンL1Bおよび第2ループ状導体LP2の一部である導体パターンL1Cは並列接続されている。そして、第1ループ状導体LP1の残余部である導体パターンL1Aおよび第2ループ状導体LP2の残余部である導体パターンL1Dが前記並列回路に対してそれぞれ直列接続されている。
【0074】
導体パターンL2Aによる第3ループ状導体LP3および導体パターンL2Bによる第4ループ状導体LP4は直列接続されている。
【0075】
図10に示すように、導体パターンL1AとL1Dとの強い磁界結合(自己誘導SI)および導体パターンL1BとL1Cとの強い磁界結合(自己誘導SI)により、第1インダクタL1の大きなインダクタンス値を得ている。これにより、コイル長あたりのインダクタンスは大きく、第1インダクタL1のQ値が向上するので損失が低減される。
【0076】
また、導体パターンL1A,L1Bと導体パターンL2Bとの磁界結合(相互誘導MI)および導体パターンL1C,L1Dと導体パターンL2Aとの磁界結合(相互誘導MI)により、第1インダクタL1と第2インダクタL2との結合係数を高めている。
【0077】
このような構造にすることによって、省スペースでループ導体の開口面積を維持しながら(結合係数が高い状態を維持したまま)、インダクタンス値を任意に変更することができる。
【0078】
図11Aは、上記アンテナ装置を備えた携帯電話端末等の無線通信装置の構成を示す図である。この
図11Aでは、無線通信装置の筐体内の主要部についてのみ表している。筐体内にアンテナ素子10および回路基板が設けられていて、回路基板にはグランド導体GNDが形成されていて、インピーダンス変換回路101および給電回路30が設けられている。ローバンドにおいてアンテナ素子10の長い部分で1/4波長共振する。ハイバンドにおいては、アンテナ素子10の短い部分で1/4波長共振、またはアンテナ素子10の全体で3/4波長共振する。
【0079】
なお、アンテナ素子10としてはこのようなT分岐型のアンテナ素子以外に、モノポールアンテナや逆F型アンテナであってもよい。いずれの場合も、一般的に、基本波モードでローバンドに対応させ、高調波モードでハイバンドに対応させればよい。
【0080】
図11Bは無線通信装置の回路のブロック図である。インピーダンス変換回路101にはフロントエンド回路301が接続されている。フロントエンド回路301は、ローバンドの受信信号出力部、ハイバンドの受信信号出力部、ローバンドの送信信号入力部、およびハイバンドの送信信号入力部を備えている。フロントエンド回路301の受信信号出力部から出力される受信信号は、ローバンド用およびハイバンド用のローノイズアンプLNAで増幅され、デュアルフィルタである受信信号フィルタ302を通過して受信回路304へ入力される。送信回路305の出力信号は、デュアルフィルタである送信信号フィルタ303を通過し、ローバンド用およびハイバンド用のパワーアンプPAで増幅され、フロントエンド回路301の送信信号入力部に入力される。
【0081】
《第2の実施形態》
図12Aは第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路102Aを備えたアンテナ装置202Aの回路図である。
図12Bは第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路102Bを備えたアンテナ装置202Bの回路図である。アンテナ装置202Aはインピーダンス変換回路102Aとアンテナ素子10とで構成され、このアンテナ装置202Aに給電回路30が接続される。同様に、アンテナ装置202Bはインピーダンス変換回路102Bとアンテナ素子10とで構成され、このアンテナ装置202Bに給電回路30が接続される。
【0082】
図12A、
図12Bに示すインピーダンス変換回路102A,102Bと
図1に示したインピーダンス変換回路101との違いは、インダクタ23とキャパシタ21との間に移相器22を備えている点である。移相器22は本発明に係る「第2移相器」に相当し、この例では基準インピーダンス(50Ω)の伝送線路である。また、インピーダンス変換回路102Aと102Bとの違いは、第1移相器24側にインダクタ23を接続しているか、キャパシタ21を接続しているかである。
【0083】
図12Aに示すインピーダンス変換回路102Aの場合の第2移相器22の作用は次のとおりである。
【0084】
第1の実施形態で
図6Aに示した状態から、インダクタ23を付加すると、
図6C、
図6Dに示した、特に第2軌跡T2の中心CP2はスミスチャートの中心方向へ移動する。
【0085】
次に、
図12Aに示す第2移相器22を付加すると、インピーダンス軌跡は右回りに回転するが、このとき、上記第2軌跡T2の中心CP2はすでにスミスチャートの中心付近にあるので、第2移相器22の影響を殆ど受けない。
【0086】
次に、
図12Aに示すキャパシタ21を付加すると、第1軌跡T1の中心はスミスチャートの中心付近へ移動する。
【0087】
このように、第2軌跡T2の中心CP2がすでにスミスチャートの中心付近にある状態(ハイバンドが整合している状態)で、第2移相器22によって位相回転すると、ローバンドの整合をより正確に行い易くなる。
【0088】
図12Bに示すインピーダンス変換回路102Bの場合の第2移相器22の作用は次のとおりである。
【0089】
第1の実施形態で
図6Aに示した状態から、キャパシタ21を付加すると、
図6C、
図6Dに示した、特に、第1軌跡T1の中心CP1はスミスチャートの中心方向へ移動する。
【0090】
次に、
図12Bに示す第2移相器22を付加すると、インピーダンス軌跡は右回りに回転するが、このとき、上記第1軌跡T1の中心CP1はすでにスミスチャートの中心付近にあるので、第2移相器22の影響を殆ど受けない。
【0091】
次に、
図12Bに示すインダクタ23を付加すると、第2軌跡T2の中心CP2はスミスチャートの中心付近へ移動する。
【0092】
このように、第1軌跡T1の中心CP1はすでにスミスチャートの中心付近にある状態(ローバンドが整合している状態)で第2移相器22によって位相回転すると、ハイバンドの整合をより正確に行い易くなる。
【0093】
図13は、回路基板に設けられた、第2の実施形態に係るインピーダンス変換回路の構成を示す図である。回路基板の上面には、上面側グランド電極GND、ストリップラインSL22,SL24等が形成されていて、回路基板の下面には下面側グランド電極が形成されている。この下面側グランド電極、上面側グランド電極GNDおよびストリップラインSL24とで、グラウンデッドコプレーナ線路による第1移相器24が構成されている。同様に、下面側グランド電極、上面側グランド電極GNDおよびストリップラインSL22とで、グラウンデッドコプレーナ線路による第2移相器22が構成されている。さらに、回路基板には、給電回路が接続される線路(グラウンデッドコプレーナ線路)26が構成されている。
【0094】
また、回路基板の上面に、オートトランス回路25の接続部とアンテナ接続部との間にストリップラインSL10が形成されている。このストリップラインSL10と下面のグランド電極とでマイクロストリップ線路が構成されている。アンテナ接続部は例えばピン端子であり、アンテナ素子の所定位置に当接する。
【0095】
回路基板の上面には、オートトランス回路25、およびチップ部品Xa,Xbを実装するパターン(ランド)が形成されている。オートトランス回路25は4端子のチップ部品であり、
図9に示した第3ポート(グランドポート)P3が回路基板上のグランド電極GNDに接続されていて、第1ポートP1がストリップラインSL24に接続されていて、第2ポートP2がストリップラインSL10に接続されている。
【0096】
図12Aに示したインピーダンス変換回路102Aを構成する場合、チップ部品Xaはチップキャパシタ(21)であり、チップ部品Xbはチップインダクタ(23)である。
図12Bに示したインピーダンス変換回路102Bを構成する場合、チップ部品Xaはチップインダクタ(23)であり、チップ部品Xbはチップキャパシタ(21)である。
【0097】
以上、各実施形態で示したように、オートトランス回路25を用いることで、伝送線路の長さは10mm弱で済み、この程度であれば実際の携帯電話で用いられる基板にも形成可能である。また、特性インピーダンス50Ωの伝送線路をマッチング部品として活用することができるので、部品点数や基板エリアの削減が可能となる。
【0098】
《他の実施形態》
以上に示した実施形態以外に、インピーダンス変換回路の構成としてその他の種々の構成を採ることができる。例えば、以上に示した各実施形態では、移相器を伝送線路で構成した例を示したが、上記移相器をディレイラインで構成してもよい。
【0099】
また、ローバンドでの軌跡(第1軌跡)の中心およびハイバンドでの軌跡(第2軌跡)の中心は上記定義以外にも種々の定義を採ることができる。例えば、ある周波数範囲に亘ってスイープして得られるインピーダンス軌跡のうち、所定周波数範囲について、等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値を、その周波数範囲でのインピーダンス軌跡の中心点(代表点)として扱ってもよい。ローバンドであれば、第1軌跡の等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値が第1軌跡の中心点(代表点)であり、ハイバンドであれば、第2軌跡の等周波数間隔で求めた、各周波数における反射係数の平均値が第2軌跡の中心点(代表点)である。
【0100】
また、第1軌跡T1の重心を第1軌跡の中心と定義し、第2軌跡T2の重心を第2軌跡の中心と定義してもよい。
【0101】
また、第1軌跡T1の各点から或る点までの距離(座標上の距離)を求めたとして、それらの距離の和が最小になるような或る点の位置を、インピーダンス軌跡の中心と定義してもよい。
【0102】
また、例えば
図20に示すように、円弧状の軌跡T1が沿う円C1の中心CP1を軌跡T1の中心と定義してもよい。
【0103】
また、ローバンドやハイバンド等の所定周波数範囲での軌跡が円(環)の1周以上に亘る範囲にあるときに、その円の中心を軌跡の中心と定義してもよい。