(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の物体出現判定部は、前記前後の物体出現予定領域のいずれかに前記物体が出現すると、前記物体が出現した物体出現領域において当該物体が出現してから消失するまでの第一の出現時間が閾時間未満であるか否かを判定し、
前記第二の物体出現判定部は、前記第一の出現時間が前記閾時間未満である場合に、前記残りの物体出現予定領域に前記物体が出現したか否かを判定する
請求項1又は2に記載のボール飛弾検知装置。
前記第二の物体出現判定部は、前記残りの物体出現予定領域に前記物体が出現すると、前記ボール存在領域において前記物体が通過してから消失するまでの第二の出現時間が閾時間未満であるか否かを判定し、
前記ボール消失判定部は、前記第二の出現時間が前記閾時間未満である場合に、前記ボール存在領域のボールが消失したか否かを判定する
請求項1−3のいずれか一項に記載のボール飛弾検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
本発明に係るボール飛弾検知装置1は、
図1Aに示すように、平坦な面Sに置かれ、電源投入に対応して検知領域Zを構成する。検知領域Zは、ボール飛弾検知装置1の前方付近で、略直方形状に形成される。ボールBは、検知領域Z内に置かれ、静止すると、ボール飛弾検知装置1は、検知領域Z内における反射光の強度の変化に基づいて、ボールBが静止したことを検知する。又、ボールBが、ゴルフクラブ等の飛弾器具Eで打ち出されると、ボール飛弾検知装置1は、検知領域Z内における反射光の強度の変化に基づいて、ボールBが打ち出されたことを検知する。このように、本発明では、ボールBの前方にボール飛弾検知装置1を置く必要は無く、ボールBの飛弾方向と直角方向において、ボール飛弾検知装置1の真横に載置すれば、ボールBが飛弾される瞬間を直接検知することができる。
【0015】
検知領域Zの形成方法に特に限定は無いが、例えば、
図1Bに示すように、ボール飛弾検知装置1は、外装10に複数の長方形状のスリット11を有し、スリット11の内側に、赤外線を光源とするLED(発光素子)を設け、LEDにより照射される赤外線がスリット11を通過して、長方形状の赤外線領域IRZを形成する。ここでは、5本のスリット11が設けられている。各スリット11毎にそれぞれ形成された複数の赤外線領域IRZは、隣接して、全体として略直方形状となり、検知領域Zを構成する。赤外線領域IRZのサイズは、適宜設定されるものの、例えば、LEDの発光方向のサイズが40cm、LEDの発光方向と直角方向のサイズが8cmである。検知領域ZにボールBが置かれた場合に、複数の赤外線領域IRZのうち、いずれか一つの赤外線領域IRZにのみボールBが存在するように、赤外線領域IRZのサイズは設定されている。又、ボール飛弾検知装置1は、各スリット11毎の直下に孔12を有し、孔12の内側に、赤外線の反射光を受光するフォトダイオード(受光素子)を設け、いずれか一つの赤外線領域IRZにボールBが置かれると、この赤外線領域IRZの反射光の強度は、ボールBの存在により変化する。その変化を孔12を介してフォトダイオードが検出することで、複数の赤外線領域IRZのうち、いずれの赤外線領域IRZにボールBが存在するかを判定することができる。
【0016】
次に、本発明に係るボール飛弾検知装置1の構成について説明する。本発明に係るボール飛弾検知装置1は、
図2に示すように、電源供給部20と、発振回路21と、発光回路22と、LED23と、フォトダイオード24と、受光回路25と、バンドパスフィルタ26と、ピーク検出回路27と、ADC(Analog To Digital Conversion)モジュール28と、マイクロプロセッサ29と、データベース30と、を備えている。電源供給部20は、各部に電力を供給する。
【0017】
発振回路21と、発光回路22と、LED23とは、ボール飛弾検知装置1の発光モジュールを担う。発振回路21は、周期的な振動電気信号を発振する。振動電気信号は、例えば、矩形波、正弦波を含み、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号である。発振回路21は、例えば、周期が低周期の特定値(例えば、10kHz)である矩形波を発振して、発光回路22へ入力する。周期を低周期に設定することで、屋外での太陽光や屋内での天井光等の外乱に基づいた、高周期(低周波数)の自然のノイズ信号を避けることが出来る。発光回路22は、入力された振動電気信号に基づいてLED23の発光を制御する。LED23は、発光回路22の制御に基づいて赤外線をスリット11に向けて照射する。これにより、赤外線領域IRZが形成される。
【0018】
フォトダイオード24と、受光回路25と、バンドパスフィルタ26と、ピーク検出回路27とは、ボール飛弾検知装置1の受光モジュールを担う。フォトダイオード24は、孔12を介して、赤外線領域IRZから反射された反射光を電流信号に変換し、電流信号を受光回路25に入力する。赤外線領域IRZにおけるボールBの存否により反射光の強度が変化する。受光回路25は、入力された電流信号に基づいて電圧信号に変換し、バンドパスフィルタ26に入力する。バンドパスフィルタ26は、入力された電圧信号のうち、特定の範囲内の周期の電圧信号を通過させ、範囲外の周期の電圧信号を通過させない。この範囲は、特定値(例えば、10kHz)を中心周期としている。これにより、上述した外乱による誤動作を確実に防止する。バンドパスフィルタ26は、通過させた電圧信号をピーク検出回路27に入力する。ピーク検出回路27は、入力された電圧信号からピーク値を検出して、ADCモジュール28に入力する。
【0019】
ここで、発光モジュール及び受光モジュールは、スリット11及び孔12毎に設けられるため、各赤外線領域IRZにおける反射光の強度の変化を監視することで、ボールBの存在する赤外線領域IRZ(位置)を検知することが出来る。
【0020】
ADCモジュール28と、マイクロプロセッサ29と、データベース30とは、ボール飛弾検知装置1の検知モジュールを担う。ADCモジュール28は、入力されたピーク値をデジタル値に変換し、デジタル値をマイクロプロセッサ29に入力する。マイクロプロセッサ29は、入力されたデジタル値を監視し、デジタル値をデータベース30のサンプル値と比較し、後述する実行手順により、トリガ信号を出力する。トリガ信号の出力により、ボールBの飛弾が検知される。
【0021】
尚、マイクロプロセッサ29は、例えば、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで当該各部を実現する。
【0022】
次に、
図3、
図4を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、ユーザ(プレイヤ)がボール飛弾検知装置1の電源を投入すると、ボール飛弾検知装置1が第一状態に移行し、ボール飛弾検知装置1のボール存在判定部301が、初期化処理を実行する(
図4:S101)。例えば、一時記憶された値の消去やデータベース30のデフォルト値の取得がなされる。
【0023】
次に、ボール飛弾検知装置1が第一状態に移行し、ボール存在判定部301が、隣接した複数の赤外線領域IRZにおけるそれぞれの反射光の強度Uに基づいて、当該複数の赤外線領域IRZのうち、停止したボールBが存在する特定の赤外線領域IRZをボール存在領域として判定する。
【0024】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、ボール存在判定部301が、所定のLED23を特定の周期で発光し、これに対応するフォトダイオード24で赤外線領域IRZからの反射光を受光し、赤外線領域IRZにおける反射光の強度Uを取得する。ボール存在判定部301が、複数のLED23を順番に発光し、それぞれのフォトダイオード24で受光することで、
図5Aに示すように、一方の端の赤外線領域IRZから他方の端の赤外線領域IRZまで反射光の強度Uを監視(スキャン)する(
図4:S102)。
【0025】
ここで、全ての赤外線領域IRZにおける反射光の強度Uを監視する必要は無く、例えば、5つ存在する赤外線領域IRZを一方の端から他方の端まで順番に、S1、S2、、、S5と称すれば、複数の赤外線領域IRZのうち、真ん中の赤外線領域IRZのS3を中心として、その前後のS2,S4を含めて、所定数の赤外線領域IRZ(S2、S3、S4)に対応する反射光の強度U2、U3、U4を監視すれば良い。又、特定の赤外線領域IRZにおける反射光の強度Uを取得するためには、所定の時間(例えば、1.5sec〜6.0sec)が掛かるため、一方の赤外線領域IRZにおける反射光の強度Uを取得してから次の赤外線領域IRZにおける反射光の強度Uを取得するまでの監視速度は、例えば、周期0.5Hz〜2.0Hzと低く設定される。
【0026】
次に、ボール存在判定部301は、監視した各赤外線領域IRZ毎の反射光の強度Uと、データベース30に予め記憶されたボール閾値Uiとを比較し、反射光の強度Uがボール閾値Ui以上であるか否かを各赤外線領域IRZ毎に判定する(
図4:S103)。
【0027】
ここで、ボール閾値Uiは、赤外線領域IRZにボールBが存在する場合と存在しない場合とで取得した反射光の強度に基づいて製造者が予め設定した値であり、ボールの種類やサイズに合わせて適宜設計される。
【0028】
判定の結果、全ての赤外線領域IRZにおいて反射光の強度Uがボール閾値Ui未満である場合(
図4:S103NO)、この場合は、全ての赤外線領域IRZにボールBが存在しないことを意味するから、ボール存在判定部301は、所定時間(例えば、0.5sec)経過後に、S102へ移行し、監視を繰り返す。
【0029】
一方、S103において、判定の結果、特定の赤外線領域IRZ(例えば、S3)において反射光の強度Uがボール閾値Ui以上である場合(
図4:S103YES)、この場合は、ユーザがボールBを特定の赤外線領域IRZ(例えば、S3)に置いたことを意味する。そのため、ボール存在判定部301は、特定の赤外線領域IRZをボール存在領域Sbとして判定し、ボール飛弾検知装置1は、次の第三状態に移行する。
【0030】
ここで、第三状態では、ボール存在判定部301が、ボール存在領域SbのボールBが停止したか否かを判定する。
【0031】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、ボール存在判定部301は、反射光の強度Uの監視対象をボール存在領域Sbに限定し、他の赤外線領域IRZにおけるLED23を低消費電力モードのアイドル状態に移行する。次に、ボール存在判定部301は、経過回数を1回とカウントし、所定時間(例えば、0.5sec)の経過を待つ(
図4:S104)。そして、所定時間経過後に、ボール存在判定部301は、
図5Bに示すように、再度、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubを取得して、この反射光の強度Ubがボール閾値Ui以上であるか否かを判定する(
図4:S105)。
【0032】
判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubがボール閾値Ui未満である場合(
図4:S105NO)、この場合は、所定時間経過後にボールBが移動してボール存在領域Sbから無くなったことを意味する。そのため、ボール存在判定部301は、S102へ移行し、ボール存在領域の判定からやり直す。
【0033】
一方、判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubがボール閾値Ui以上である場合(
図4:S105YES)、この場合は、ボールBがボール存在領域Sbに停止している可能性がある。そのため、次に、ボール存在判定部301は、先ほどカウントした経過回数(「1回」)が、データベース30に予め記憶された閾回数(例えば、「6回」)以上であるか否かを判定する(
図4:S106)。
【0034】
判定の結果、経過回数が閾回数未満の場合(
図4:S106NO)、この場合は、ボールBがボール存在領域Sbに停止してから十分に時間が経過していないため、ボール存在判定部301は、S104へ移行し、経過回数に1回を加算して、経過回数を2回とカウントし、所定時間の経過を待つ(
図4:S104)。このように、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubがボール閾値Ui以上であるという判定を繰り返すことで、ボールBがボール存在領域Sbに所定時間停止したことを確実に検知することが可能となる。尚、所定時間は、閾回数により適宜設定されるものの、例えば、3sec〜5secとされる。
【0035】
S105YESの判定が繰り返されて、S106において、判定の結果、経過回数が閾回数以上の場合(
図4:S106YES)、この場合は、ボールBが完全にボール存在領域Sbに停止していると推定される。そのため、ボール存在判定部301は、ボール存在領域SbのボールBが停止したと判定し、ボール飛弾検知装置1は、次の第四状態に移行する。
【0036】
尚、第三状態は、ボール存在領域Sbを精度高く確定するための処理であり、特に必要が無ければ、第三状態を省略しても構わない。
【0037】
第四状態では、第一の物体出現判定部302が、ボール存在領域Sbに隣接する前後の赤外線領域IRZをそれぞれ前後の物体出現予定領域Sbf、Sbeとして、前後の物体出現予定領域Sbf、Sbeにおけるそれぞれの反射光の強度Ubf、Ubeに基づいて、当該前後の物体出現予定領域Sbf、Sbeのいずれかに、ボールBを打ち出すための物体が出現したか否かを判定する。
【0038】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、第一の物体出現判定部302は、ボール存在領域Sb(例えば、S3)に対して前後の赤外線領域IRZ(S2、S4)を選択し、赤外線領域IRZの順番のうち、最初の順番の赤外線領域IRZ(S2)を前の物体出現予定領域Sbfとし、最後の順番の赤外線領域IRZ(S4)を後の物体出現予定領域Sbeとして決定する。次に、第一の物体出現判定部302は、
図6Aに示すように、前の物体出現予定領域Sbf、ボール存在領域Sb、後の物体出現予定領域Sbeの順番に、それぞれの反射光の強度Ubf、Ub、Ubeを監視する(
図4:S107)。このように、監視する対象を限定することで、無駄な反射光の強度Uを取得せずに済む。
【0039】
ここでの監視速度は、ボールBが打ち出される飛弾速度に対応して設定される。例えば、ゴルフクラブでゴルフボールBが打ち出される瞬間の最大飛弾距離は、250μsecで2.0cmと考えると、ゴルフボールBの最大飛弾速度は、210mphと換算することが出来る。この最大飛弾速度に対して、反射光の強度Ubf、Ub、Ubeのサンプリング数を5個〜10個確保するためには、一つの反射光の強度Uから次の反射光の強度Uを取得するまでの監視速度は、例えば、周期20Hz〜40Hzと高く設定される。
【0040】
次に、第一の物体出現判定部302は、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubを判定値Ub0として所定のメモリに一時保存する(
図4:S108)。そして、第一の物体出現判定部302は、前の物体出現予定領域Sbfにおける反射光の強度Ubf、又は後の物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeが、データベース30に予め記憶された物体閾値Uc以上であるか否かを判定する(
図4:S109)。
【0041】
ここで、物体閾値Ucは、赤外線領域IRZに物体が存在する場合と存在しない場合とで取得した反射光の強度に基づいて製造者が予め設定した値であり、飛弾検知のボールの種類に応じて適宜設計される。例えば、ボールがゴルフボールであれば、物体はゴルフクラブとなり、ボールが野球ボールであれば、物体はバットとなり、ボールがテニスボールであれば、物体はラケットとなり、ボールがサッカーボールであれば、物体はプレイヤの脚となり、ボールがアイスホッケのパックであれば、物体はスティックとなる。
【0042】
判定の結果、前の物体出現予定領域Sbfにおける反射光の強度Ubfと、後の物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeのいずれもが物体閾値Uc未満である場合(
図4:S109NO)、この場合は、未だ物体がボールBに向かって出現していない(ボールBの飛弾が開始されていない)ことを意味する。そのため、第一の物体出現判定部302は、所定時間(例えば、250μsec)経過後に、S107へ移行し、監視を繰り返す。
【0043】
一方、判定の結果、前の物体出現予定領域Sbfにおける反射光の強度Ubf、又は後の物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeのいずれかが物体閾値Uc以上である場合(
図4:S109YES)、例えば、
図6Bに示すように、プレイヤがボールBに向かってゴルフクラブEを振って、ゴルフクラブEが物体として前の物体出現予定領域Sbfに入った場合には、前の物体出現予定領域Sbfにおける反射光の強度Ubfが物体閾値Uc以上となる。この場合は、物体EがボールBに向かって出現した(ボールBの飛弾が開始される)ことを意味するため、第一の物体出現判定部302は、前後の物体出現予定領域Sbf、Sbeのいずれかに物体Eが出現したと判定する。
【0044】
ここで、出現した物体EがボールBを打ち出すための物かを精度高く検知するために、下記の処理を行っても良い。即ち、第一の物体出現判定部302は、物体が出現した物体出現領域Sbfにおいて当該物体Eが出現してから消失するまでの第一の出現時間Δt1が、データベース30に予め記憶された閾時間tc(例えば、250μsec)未満であるか否かを判定する。
【0045】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、第一の物体出現判定部302は、特定の物体出現予定領域Sbfにおける反射光の強度Ubfが物体閾値Uc以上となると、その第一の出現時点t1からの経過時間の計時を開始する。次に、第一の物体出現判定部302は、物体Eが出現した物体出現領域Sbfにおける反射光の強度Ubfを監視して、物体出現領域Sbfにおける反射光の強度Ubfが物体閾値Uc未満となるか否かを判定する。物体EはボールBに向かって出現するため、
図7Aに示すように、物体EはボールBに衝突し、物体出現領域Sbfから消失する。すると、第一の物体出現判定部302は、物体出現領域Sbfにおける反射光の強度Ubfが物体閾値Uc未満となったと判定し、その消失時点t2を用いて消失時点t2から第一の出現時点t1を減算した第一の出現時間Δt1を算出する(
図4:S110)。尚、消失時点t2から経過時間は、継続して計時される。そして、第一の物体出現判定部302は、第一の出現時間Δt1が閾時間tc未満であるか否かを判定する(
図4:S111)。
【0046】
ここで、閾時間tcは、飛弾検知のボールの種類に応じて適宜設計される。例えば、ボールがゴルフボールであれば、ゴルフボールBの最大飛弾速度は210mphと概算出来ることから、物体出現領域Sbfを遮る物体E(ゴルフクラブ)の時間(例えば、250μsec)を第一の出現時間に設定すれば、ゴルフクラブEでゴルフボールBが打ち出されていることを精度高く検知することが出来る。尚、ベースボール、テニス、サッカー等、球技に合わせて適宜設定すれば良い。
【0047】
判定の結果、第一の出現時間Δt1が閾時間tc以上である場合(
図4:S111NO)、この場合は、物体Eの動きがゆっくりであり、この物体EがボールBを打ち出すか否か不明であることを意味する。例えば、ゴルフクラブEがゆっくりと物体出現領域Sbfを遮ることが推定される。そのため、第一の物体出現判定部302は、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubを新たに取得し、この反射光の強度Ubが、前記判定値Ub0以上であるか否かを判定する(
図4:S112)。ここで、判定値Ub0を用いることで、ボール存在領域SbにおけるボールBの存否を精度高く検知することが出来る。
【0048】
判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが判定値Ub0未満である場合(
図4:S112NO)、この場合は、
図7Bに示すように、プレイヤがゴルフクラブEをゆっくり動かしてゴルフボールBの位置をずらしたことを意味する。そのため、第一の物体出現判定部302は、消失時点t2から経過時間の計時を止めて、S102へ移行し、全ての処理をやり直す。
【0049】
一方、判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが判定値Ub0以上である場合(
図4:S112YES)、この場合は、
図8Aに示すように、プレイヤがゴルフクラブEをゆっくり動かして素振りをして、ゴルフボールBは残っていることを意味する。そのため、第一の物体出現判定部302は、消失時点t2から経過時間の計時を止めて、S107へ移行し、物体出現の判定からやり直す。
【0050】
ところで、S111において、判定の結果、第一の出現時間Δt1が閾時間tc未満である場合(
図4:S111YES)、この場合は、物体Eの動きが速く、この物体EがボールBを打ち出す可能性が高いことを意味する。そのため、第一の物体出現判定部302は、ボールBを打ち出すために物体Eが出現したと判定する。
【0051】
次に、第二の物体出現判定部303が、物体Eが出現した物体出現領域Sbf以外の残りの物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度に基づいて、当該残りの物体出現予定領域Sbeに当該物体Eが出現したか否かを判定する。
【0052】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、第二の物体出現判定部303は、前後の物体出現予定領域Sbf、Sbeのうち、物体Eが最初に出現した物体出現領域Sbf以外の物体出現予定領域Sbeを選択し、この物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeを取得する。次に、第二の物体出現判定部303は、残りの物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeが前記物体閾値Uc以上であるか否かを判定する(
図4:S113)。ここで、上述では、前の物体出現予定領域Sbfが物体出現領域となったため、後の物体出現予定領域Sbeが判定対象となる。又、物体閾値Ucを利用することで、物体Eの出現の検知精度を同等にすることが可能となる。
【0053】
判定の結果、物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeが物体閾値Uc未満である場合(
図4:S113NO)、この場合は、プレイヤがゴルフクラブEをボール存在領域Sbで止めた等、ゴルフボールBが打ち出されていない可能性が高い。そのため、第二の物体出現判定部302は、所定時間(250μsec)経過後に、消失時点t2から経過時間の計時を止めて、S107へ移行し、監視を繰り返す。
【0054】
一方、物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeが物体閾値Uc以上である場合(
図4:S113YES)、この場合は、プレイヤがゴルフクラブEをボール存在領域Sbを遮って振った可能性が高い。そのため、第二の物体出現判定部302は、残りの物体出現予定領域Sbeに物体Eが出現したと判定する。
【0055】
ここで、残りの物体出現予定領域Sbeに出現した物体EがボールBを打ち出すための物かを精度高く検知するために、下記の処理を行っても良い。即ち、第二の物体出現判定部303は、前記残りの物体出現予定領域Sbeに前記物体Eが出現すると、前記ボール存在領域Sbにおいて前記物体Eが通過してから消失するまでの第二の出現時間Δt2が前記閾時間tc(250μsec)未満であるか否かを判定する。
【0056】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、第二の物体出現判定部303は、
図8Bに示すように、物体出現予定領域Sbeにおける反射光の強度Ubeが物体閾値Uc以上であると判定すると、消失時点t2から経過時間の計時に基づき、その第二の出現時点t3を用いて第二の出現時点t3から消失時点t2を減算した第二の出現時間Δt2を算出する(
図4:S114)。ここで、消失時点t2から経過時間の計時は停止される。そして、第二の物体出現判定部303は、第二の出現時間Δt2が閾時間tc未満であるか否かを判定する(
図4:S115)。ここで、閾時間tcを用いることで、先の物体出現予定領域Sbfでも後の物体出現予定領域Sbeでも同等以上の速度で物体Eが遮ったか否かを判定することが出来る。
【0057】
判定の結果、第二の出現時間Δt2が閾時間tc以上である場合(
図4:S115NO)、この場合は、打ち出す前の物体Eの動きは速かったものの、何らかの理由により、プレイヤが、打ち出す際の物体Eを急激に減速させたことを意味し、ボールBが正確に打ち出されていない可能性が高い。そのため、第二の物体出現判定部303は、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubを新たに取得し、この反射光の強度Ubが、前記判定値Ub0以上であるか否かを判定する(
図4:S116)。
【0058】
判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが判定値Ub0未満である場合(
図4:S116NO)、この場合は、プレイヤがゴルフクラブEでゴルフボールBの位置をずらしたことを意味する。そのため、第二の物体出現判定部303は、S102へ移行し、全ての処理をやり直す。
【0059】
一方、判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが判定値Ub0以上である場合(
図4:S116YES)、この場合は、プレイヤがゴルフクラブEで素振りをして、ゴルフボールBは残っていることを意味する。そのため、第二の物体出現判定部303は、S107へ移行し、物体出現の判定からやり直す。
【0060】
ところで、S114において、判定の結果、第二の出現時間Δt2が閾時間tc未満である場合(
図4:S114YES)、この場合は、打ち出す前後の物体Eの動きは速く、この物体EがボールBを打ち出す可能性が高いことを意味する。そのため、第二の物体出現判定部303は、ボールBを打ち出すために物体Eが出現したと判定する。
【0061】
最後に、ボール消失判定部304が、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubに基づいて、当該ボール存在領域SbのボールBが消失したか否かを判定する。
【0062】
この判定の方法に特に限定は無い。例えば、ボール消失判定部304が、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubを新たに取得して、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが前記判定値Ub0と同等であるか否かを判定する(
図4:S117)。
【0063】
判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが前記判定値Ub0と同等である場合(
図4:S117YES)、この場合は、
図9Aに示すように、プレイヤがゴルフクラブEを速く動かして素振りをして、ゴルフボールBは残っていることを意味する。そのため、ボール消失判定部304は、S107へ移行し、物体出現の判定からやり直す。
【0064】
一方、判定の結果、ボール存在領域Sbにおける反射光の強度Ubが前記判定値Ub0と同等でない場合(
図4:S117NO)、この場合は、
図9Bに示すように、プレイヤがゴルフクラブEを速く動かしてゴルフボールBを飛弾させたことを意味する。そのため、ボール消失判定部304は、ボール存在領域SbのボールBが消失したと判定し、ボール飛弾検知装置1は、最後の第五状態に移行する。
【0065】
第五状態では、ボール飛弾検知部305が、ボール存在領域SbにおけるボールBの消失に基づいて、ボールBが物体Eにより打ち出されたと検知し(
図4:S118)、物体EによりボールBが打ち出されたことを示すトリガ信号をボール飛弾検知装置1の外部装置に発信する。これにより、ボールBの飛弾を精度高く検知することが可能となる。
【0066】
ここで、トリガ信号は、例えば、下記のように利用される。ボール飛弾検知装置1にカメラ306を設け、カメラ画像撮影部307がこのカメラ306で検知領域Zを撮影する。カメラ画像撮影部307は、特定のタイミング(電源投入時等)から所定期間中にカメラ画像を複数撮影して破棄することを周期的に繰り返す。例えば、10秒等の所定の撮影期間における撮影間隔が0.03秒から2.00秒の間で選択され、カメラ画像撮影部307は、撮影期間において、選択された撮影間隔で連続してカメラ画像を複数撮影する。このような複数のカメラ画像が各撮影期間毎に生じる。例えば、カメラ画像を保持する画像保持期間が30秒であれば、10秒の撮影期間毎に複数のカメラ画像が紐付けされる。尚、撮影期間で一時的に保持する複数のカメラ画像は、メモリ容量との関係から、適宜破棄される。例えば、画像保持期間が30秒であれば、次の10秒の撮影期間が経過すると、画像保持期間の最も古い撮影期間に紐付けされた複数のカメラ画像が破棄される。そのような状況において、カメラ画像撮影部307が、ボール飛弾検知部305からのトリガ信号を受信すると、受信時点の前後における複数のカメラ画像を取得する。これにより、ボールBが打ち出された瞬間の前後のカメラ画像を取得することが可能となり、これらのカメラ画像に基づいて、ボールBが打ち出された際の打ち出し速度、打ち出し仰角、打ち出し水平角等を正確に算出することが可能となる。又、算出されるボールBの飛行パラメータも精度高く算出することが可能となる。
【0067】
ここで、
図1〜
図3に基づいて試作したボール飛弾検知装置1で、ゴルフクラブEでボールBが打ち出された瞬間のカメラ画像を実施例として示す。
図10Aに示すように、ゴルフの練習場において、高解像度・高速のカメラを搭載したボール飛弾検知装置1を置き、その横にボールBを置いてゴルフクラブEで打ち出す。
図10Bに示すように、ゴルフボールBが打ち出されて消失すると、ボール飛弾検知装置1は、トリガ信号に基づいて、
図10Cに示すように、ゴルフクラブEでボールBが打ち出された瞬間のカメラ画像を取得する。又、ボール飛弾検知装置1は、
図10Dに示すように、ゴルフクラブEでボールBが打ち出された後のカメラ画像を取得する。このように、本発明に係るボール飛弾検知装置1は、ボールの飛弾を精度高く検知することが可能であることが分かった。
【0068】
尚、本発明の実施形態では、ゴルフボールBに対応させたボール飛弾検知装置1を説明したが、これに限定する必要は無く、本発明は、停止したボールBを打ち出す球技、ベースボール、テニス、サッカー、ラグビー、アイスホッケ、ゲートボール等のボールの飛弾を検知する装置として幅広く適用することが出来る。
【0069】
又、本発明の実施形態では、スリット11を用いて赤外線領域IRZを検知領域Zとして形成したが、赤外線を含む反射光の強度を検出出来る検知領域であれば、このような構成に限定する必要は無い。
【0070】
又、本発明の実施形態では、ボール飛弾検知装置1が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを装置に読み出させ、当該装置が各部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各手段が実行するステップをハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。
【解決手段】ボール存在判定部301は、複数の赤外線領域のうち、停止したボールが存在する特定の赤外線領域をボール存在領域として判定する。第一の物体出現判定部302は、前記ボール存在領域が判定されると、当該ボール存在領域に隣接する前後の赤外線領域をそれぞれ前後の物体出現予定領域として、当該前後の物体出現予定領域のいずれかに、前記ボールを打ち出すための物体が出現したか否かを判定する。第二の物体出現判定部303は、前記前後の物体出現予定領域のいずれかに前記物体が出現すると、前記物体が出現した物体出現領域以外の残りの物体出現予定領域に当該物体が出現したか否かを判定する。ボール消失判定部304は、前記残りの物体出現予定領域に前記物体が出現すると、前記ボール存在領域のボールが消失したか否かを判定する。ボール飛弾検知部305は、前記ボールが前記物体により打ち出されたと検知する。