【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ICT機器内ハーネスのワイヤレス化の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による無線通信システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による無線通信システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信システムは、情報機器の筐体内において、漏洩同軸ケーブルと、無線通信デバイスとの間において、無線による信号の授受を行うものである。
【0018】
図1は、本実施の形態による無線通信システム100の構成を示す図である。本実施の形態による無線通信システム100は、ケーブル2と、通信装置3と、漏洩同軸ケーブル11と、無線通信デバイス13とを備える。なお、漏洩同軸ケーブル11と、無線通信デバイス13とは、情報機器1の筐体10内に存在する。
【0019】
情報機器1は、何らかの情報処理を行うものであれば、どのような機器であってもよい。情報機器1は、ICT(Information and Communication Technology)機器であってもよい。また、情報機器1は、例えば、銀行のATM機や、コピー機、プリンタ、飲料等の自動販売機、交通機関の券売機等であってもよく、あるいは、その他の機器であってもよい。また、情報機器1は、例えば、独立した装置であってもよく、または、他の装置等の一部分であってもよい。後者の情報機器1としては、例えば、半導体製造装置等の大型の装置に含まれる情報機器1(例えば、制御ユニット等)や、移動体(例えば、自動車や電車、船舶、飛行機等)に含まれる情報機器1(例えば、制御ユニットや、情報処理系等)などがある。情報機器1の筐体10は、例えば、金属の筐体であってもよく、少なくとも一部が金属の筐体であってもよく、あるいは、金属でない筐体であってもよい。なお、情報機器1が他の装置等の一部分である場合には、その情報機器1を囲う隔壁が、その情報機器1の筐体10であると考えてもよい。また、情報機器1は、筐体10内において、漏洩同軸ケーブル11と、複数の基板12と、その複数の基板12にそれぞれ設けられた複数の無線通信デバイス13とを備える。
【0020】
漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky Coaxial Cable)11は、通信装置3から入力された信号を放射し、受信した信号を通信装置3に渡すアンテナとして用いられる。なお、漏洩同軸ケーブル11は、信号の放射と、信号の受信とのいずれか一方のみを行うものであってもよい。その漏洩同軸ケーブル11は、無線通信で用いられる周波数に対応したものを用いることが好適である。漏洩同軸ケーブル11には、電波を漏洩させるためのスロットが設けられているが、漏洩同軸ケーブル11を伝搬する信号の波長がスロットのピッチと一致すると、ケーブル内で共鳴が起こり、反射電力が増大して定在波比が悪化するため、波長がスロットのピッチと一致する周波数を使用しないことが好適である。例えば、無線通信において、2.4GHz帯や5.2GHz帯を用いる場合には、その周波数に対応したものを用いることが好適である。そのようなギガヘルツ帯の漏洩同軸ケーブル11については、例えば、次の文献を参照されたい。漏洩同軸ケーブル11は、両端の端子である2個の端子を有している。そして、その一端(
図1中の左端)において、漏洩同軸ケーブル11とケーブル2とが、筐体10に設けられたRFコネクタ14aを介して接続されている。また、漏洩同軸ケーブル11の他端(
図1中の右端)には、漏洩同軸ケーブル11の特性インピーダンスに合わせた終端器15を設けている。その端点において、漏洩同軸ケーブル11を流れてきた信号を吸収するためである。なお、漏洩同軸ケーブル11は、筐体10内において、漏洩同軸ケーブル11の任意の一点と、各無線通信デバイス13との間が見通し通信(障害物のない通信)となるように配設されることが好適であるが、そのように配設されなくてもよい。見通し通信の場合には、直接波で通信を行うことができ、マルチパスフェージング等の発生を抑制することができると考えられる。すべての無線通信デバイス13と見通し通信とできない場合には、見通し通信となる無線通信デバイス13の数が多くなるように漏洩同軸ケーブル11を配設することが好適であるが、そのように配設されなくてもよい。漏洩同軸ケーブル11は、例えば、各無線通信デバイス13に近接するように配設されてもよい。漏洩同軸ケーブル11と無線通信デバイス13とは、例えば、0.5λ程度以上離れるようにして、漏洩同軸ケーブル11や基板12等の近傍界の影響を排除するようにしてもよく、あるいは、両者を近接させて近傍界を用いて通信させるようにしてもよい。なお、λは、使用する周波数に応じた波長である。また、漏洩同軸ケーブル11の長さは、通常、筐体10の長さ程度であるため、30cmから2m程度のものであるが、それ以外の長さであってもよい。
文献:高野一彦、石井伸直、鈴木文生、小川幸三、御園信行、「ギガヘルツ対応広帯域漏洩同軸ケーブル」、フジクラ技報、2006年4月、(URL:http://www.fujikura.co.jp/00/gihou/gihou110/pdf110/110_03.pdf)
【0021】
筐体10内には、前述のように、複数の基板12と、その複数の基板12にそれぞれ設けられた複数の無線通信デバイス13が存在する。
図1において、すべての基板12や無線通信デバイス13に符号を付していないが、基板12と同形状の矩形はすべて基板12であり、無線通信デバイス13と同形状の矩形はすべて無線通信デバイス13である。このことは、他の図においても同様であるとする。基板12には、各種の回路や部品等が配設される。また、無線通信デバイス13は、漏洩同軸ケーブル11との間で電波の授受を行う。すなわち、無線通信デバイス13は、漏洩同軸ケーブル11から放射された電波を受信し、漏洩同軸ケーブル11に電波を送信するものである。なお、無線通信デバイス13は、電波の受信と、電波の送信とのいずれか一方のみを行うものであってもよい。その無線通信デバイス13は、アンテナ機能を含むものである。なお、基板12や無線通信デバイス13の個数は問わない。1個または2以上の任意の個数の基板12が筐体10内に存在してもよく、筐体10内に基板12が存在しなくてもよい。また、基板12は、何らかの機器であると考えてもよい。また、1個または2以上の任意の個数の無線通信デバイス13が筐体10内に存在してもよい。
【0022】
ケーブル2は、漏洩同軸ケーブル11の一端(
図1中の左端)と、通信装置3とを接続するアプローチケーブルである。そのケーブル2は、例えば、同軸ケーブルであってもよい。
【0023】
通信装置3は、情報機器1の筐体10内において、漏洩同軸ケーブル11を介して無線通信デバイス13と無線通信を行う。その通信は、送信であってもよく、受信であってもよく、または、その両方であってもよい。その無線通信は、例えば、無線LAN(IEEE802.11a/b/g等)の無線通信であってもよく、あるいは、その他の無線通信であってもよい。本実施の形態、及び以下の実施の形態では、通信装置3と無線通信デバイス13との間において、無線LANによる通信が行われる場合について主に説明する。なお、通信装置3と無線通信デバイス13との間の通信の内容は問わない。例えば、制御信号の送受信であってもよく、データの送受信であってもよく、その他の信号の送受信であってもよい。
【0024】
ここで、本実施の形態による漏洩同軸ケーブル11を用いた無線通信の特性について、従来のチップアンテナを用いた無線通信と比較した実験結果について説明する。
図2Aは、漏洩同軸ケーブル(LCX)11を用いた無線通信と、チップアンテナ(ChipANT)を用いた無線通信との遅延分散を示すグラフである。また、
図2Bは、漏洩同軸ケーブル11を用いた無線通信と、チップアンテナを用いた無線通信との平均遅延時間を示すグラフである。
図2A、
図2Bは、筐体10に相当する2m×2m×2mの電磁遮蔽性の強い空間において、漏洩同軸ケーブル11またはチップアンテナと、空間的に分散させた70箇所の位置との間での通信を行った結果である。なお、その70箇所の位置が分散している空間は、情報機器1の筐体10内に対応するように、メカニカルな構造を有する空間とした。また、グラフの縦軸は、その70箇所の位置からそれぞれ信号を送信し、その信号を漏洩同軸ケーブル11やチップアンテナで受信した場合における遅延分散や平均遅延時間の累積確率である。累積確率が1となったときに、すべての70箇所の位置からの電波を受信できたことになる。なお、LCXa、LCXb、LCXcは、その順番で長さが長くなる3種類の漏洩同軸ケーブル11である。両グラフにおいて、LCXa、LCXb、LCXcの違いは大きくないため、漏洩同軸ケーブル11の長さに応じた伝搬特性の違いはあまりないと考えられる。
図2Aの遅延分散のグラフにおいて、遅延分散の小さいところで累積確率が1(100%)になることは、機器内の70箇所の位置からの受信電波の時間分布は、送信電波から拡がりの少ない状態で到達していることを意味する。チップアンテナを用いた場合には、遅延分散が大きい値に集中していることが分かる。一方、漏洩同軸ケーブル11を用いた場合には、チップアンテナの場合よりも遅延分散が小さい値に集中していることが分かる。したがって、漏洩同軸ケーブル11の方がチップアンテナよりも遅延分散の拡がりが小さく、符号干渉が小さいと言える。また、
図2Bのグラフでは、送信時を0(ns)として、受信までの遅延時間の平均を示している。なお、遅延時間については、受信電波(時間的に広がっているもの)の平均遅延時間なので、分散の中央値になる。
図2Bから、漏洩同軸ケーブル11を用いた方が、チップアンテナを用いた場合よりも、短い時間で受信できることが分かる。すなわち、送受信の間における反射は、漏洩同軸ケーブル11の方が少ないことが分かる。このように、チップアンテナを用いた場合よりも、漏洩同軸ケーブル11を用いた場合の方が、反射の少ないパスで送受信を行うことができており、マルチパスフェージング等の発生しにくい環境で無線通信を実現できることが分かる。
【0025】
次に、本実施の形態による無線通信システム100を用いた無線通信の動作の具体例について、簡単に説明する。なお、その無線通信は、無線LANの通信であるとする。通信装置3から、送信電波に応じた信号が出力されると、その信号はケーブル2を介して、アンテナである漏洩同軸ケーブル11に入力される。そして、その信号は、漏洩同軸ケーブル11を長さ方向に伝わりながら少しずつ放射(漏洩)される。なお、放射されないで残った信号は、終端器15で吸収される。漏洩同軸ケーブル11から放射された電波は、筐体10内の空間を伝搬し、各無線通信デバイス13で受信される。そして、各無線通信デバイス13は、自分のIPアドレス宛の信号であるかどうかを判断し、その判断結果に応じて信号を受領したり、破棄したりする。無線通信デバイス13が信号を受領した後におけるその信号の用途は問わない。例えば、基板12に設けられた種々の構成部品等において用いられてもよく、あるいは、その他の用途で用いられてもよい。また、ある無線通信デバイス13から電波が送信されると、その電波は漏洩同軸ケーブル11で受信される。そして、その受信された電波に応じた信号が漏洩同軸ケーブル11とケーブル2とを介して通信装置3で受信される。そして、通信装置3において、その受信に応じた処理が行われる。
【0026】
以上のように、本実施の形態による無線通信システム100によれば、漏洩同軸ケーブル11を用いて機器内通信を行うため、筐体10内における電波の反射やシャドウイング等を低減することができる。その結果、複雑な構造の機器内においても、符号干渉の発生を抑えることができ、適切な通信を行うことができるようになる。従来、漏洩同軸ケーブルは、鉄道無線やトンネル内通信などにおいて、非常に長い距離のものが使用されていたが、本実施の形態の無線通信システム100の漏洩同軸ケーブル11のように、短い長さのものも使用可能であり、筐体10内におけるマルチパス等の発生を抑えるために有効であることが発明者らによって見いだされた。また、漏洩同軸ケーブル11を用いることによって、チップアンテナを用いた場合よりも、電波の送受信の距離を短くすることができる。そのように、電波の送受信の距離を短くできた場合には、電波の強度を低くすることができ、その結果、機器外部に漏れる電波を少なくすることができる。また、電波の強度を低くできた場合には、マルチパスの発生も少なくなる。また、漏洩同軸ケーブル11のアンテナとしての利得は低いが、情報機器1内での通信では、通信先の無線通信デバイス13との距離が長くないため、利得が低くても十分対応することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、情報機器1の筐体10内に設けられた漏洩同軸ケーブル11が直線である場合について説明したが、そうでなくてもよい。通常、漏洩同軸ケーブル11は、直線状に配設されるが、
図3Aや、
図3Bで示されるように、漏洩同軸ケーブル11は、曲げて配設されてもよい。なお、漏洩同軸ケーブル11が曲げられる場合に、
図3Aで示されるように、漏洩同軸ケーブル11自体が曲げられてもよく、あるいは、
図3Bで示されるように、漏洩同軸ケーブル11が、2個の直線状の漏洩同軸ケーブル11a、11bと、両漏洩同軸ケーブル11a、11bの端点を接続するケーブル11cとを備え、そのケーブル11cの位置において、曲げられてもよい。通常、漏洩同軸ケーブル11は、曲げ半径が小さくないため、
図3Bのように、同軸ケーブル等であるケーブル11cの位置において曲げるようにしてもよい。なお、
図3A,
図3Bでは、曲げる箇所を1箇所としているが、2箇所以上で曲げられてもよいことは言うまでもない。また、
図3Bにおいて、直線状の漏洩同軸ケーブルを接続するケーブルが1箇所である場合について示しているが、2箇所以上においてケーブルによる接続が行われてもよい。このように、漏洩同軸ケーブル11を曲げることによって、
図3A,
図3Bの場合のように、各無線通信デバイス13と見通し通信を行うことができるように、または、見通し通信を行う無線通信デバイス13の個数が増えるように漏洩同軸ケーブル11を配設することができうる。
【0028】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による無線通信システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信システムは、通信装置が漏洩同軸ケーブルの両端に接続可能であり、送信先の無線通信デバイスに応じて、通信装置が無線通信で用いる端子を切り替えるものである。
【0029】
図4は、本実施の形態による無線通信システム200の構成を示す図である。本実施の形態による無線通信システム200は、ケーブル2と、通信装置3aと、ケーブル4と、漏洩同軸ケーブル11と、無線通信デバイス13a〜13mとを備える。なお、情報機器1及びケーブル2は、通信装置3aが漏洩同軸ケーブル11の両端を介して通信可能となっている以外、実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。なお、
図4において、
図1の無線通信デバイス13に代えて、無線通信デバイス13a〜13mとしているが、これは各無線通信デバイスを識別可能にするために符号を付したものであり、無線通信デバイス13a〜13mは、無線通信デバイス13と実質的に同じものである。また、本実施の形態の場合には、通常、情報機器1の筐体10内に2以上の無線通信デバイスが存在しているものとする。
【0030】
通信装置3aは、通信部31と、スイッチ32と、記憶部33と、制御部34とを備える。なお、通信装置3aは、通信装置3aと接続される漏洩同軸ケーブル11の2個の端子のいずれかを介して無線通信を行う以外は、実施の形態1の通信装置3と同様のものである。
【0031】
通信部31は、漏洩同軸ケーブル11の2個の端子のいずれかを介して無線通信デバイス13と無線通信を行う。通信部31が漏洩同軸ケーブル11のある端子を介して無線通信を行うとは、その端子を漏洩同軸ケーブル11の給電側として用いて無線通信を行う、という意味である。その通信は、送信であってもよく、受信であってもよく、または、その両方であってもよい。また、その無線通信は、例えば、無線LANの無線通信であってもよく、あるいは、その他の無線通信であってもよい。
【0032】
スイッチ32は、通信部31が接続される漏洩同軸ケーブル11の2個の端子を切り替える。なお、スイッチ32の切り替えは、制御部34によってなされる。また、スイッチ32は、信号を吸収するものであることが好適である。例えば、スイッチ32において、通信部31を漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14a(またはRFコネクタ14b)側の端子と接続する際には、漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14b(またはRFコネクタ14a)側の端子から入力される信号を反射しないで吸収するためである。
【0033】
記憶部33では、無線通信デバイス13と、その無線通信デバイス13が通信先である場合に通信部31が無線通信で用いる漏洩同軸ケーブル11の端子との対応を示す対応情報が記憶される。通信部31が無線通信で用いる端子とは、通信部31が給電側として用いる端子のことである。その対応情報は、無線通信デバイス13と、その無線通信デバイス13と通信する際に通信装置3aが用いる漏洩同軸ケーブル11の端子との対応を示すことができる情報であれば、どのようなものであってもよい。対応情報は、例えば、無線通信デバイス13の識別情報と、漏洩同軸ケーブル11の端子の識別情報との対応を示す情報であってもよい。本実施の形態では、その場合について説明する。なお、対応情報は、結果として、無線通信デバイス13と、その無線通信デバイス13と通信する際に通信装置3aが用いる漏洩同軸ケーブル11の端子との対応が分かるのであれば、どのような情報であってもよい。例えば、対応情報は、無線通信デバイス13と、その無線通信デバイス13と通信する際に通信装置3aが用いない漏洩同軸ケーブル11の端子との対応を示す情報であってもよい。なお、対応情報の設定方法については後述する。
【0034】
記憶部33に対応情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して対応情報が記憶部33で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された対応情報が記憶部33で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された対応情報が記憶部33で記憶されるようになってもよい。記憶部33での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、あるいは、長期的な記憶でもよい。記憶部33は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現されうる。
【0035】
制御部34は、通信先の無線通信デバイス13に対応情報によって対応付けられる漏洩同軸ケーブル11の端子を介して通信部31が通信を行うように制御する。本実施の形態では、制御部34は、通信先の無線通信デバイス13に対応情報によって対応付けられる漏洩同軸ケーブル11の端子と通信部31とが接続されるようにスイッチ32を制御するものとする。制御部34は、例えば、通信部31が、ある無線通信デバイスと通信を行う際に、記憶部33で記憶されている対応情報を用いて、その通信先の無線通信デバイスに対応する、漏洩同軸ケーブル11の端子を特定する。そして、その特定した端子と、通信部31とが接続されるように、スイッチ32を制御する。
【0036】
ケーブル4は、通信装置3aと、漏洩同軸ケーブル11の一端(
図4中の右端)とを接続するアプローチケーブルである。ケーブル4は、RFコネクタ14bを介して、漏洩同軸ケーブル11と接続される。そのケーブル4は、例えば、同軸ケーブルであってもよい。
【0037】
ここで、対応情報の設定方法について説明する。
図5は、漏洩同軸ケーブル11の放射指向性の一例を示す図である。
図5は、漏洩同軸ケーブル11の左端側から給電し、右端側に終端器15を接続して、受信アンテナを漏洩同軸ケーブル11の長さ方向に移動させながら受信電力を測定した結果の概要を示すグラフである。
図5の漏洩同軸ケーブル11は、給電側の受信強度が大きいバックファイア型のものである。一方、終端側の受信強度が大きいエンドファイア型の漏洩同軸ケーブル11もある。バックファイア型とエンドファイア型とは、伝搬する信号の周波数と、漏洩同軸ケーブル11のスロットのピッチとにより決定される。その詳細については、前掲の文献「ギガヘルツ対応広帯域漏洩同軸ケーブル」を参照されたい。例えば、漏洩同軸ケーブル11が
図5で示されるように、バックファイア型である場合には、
図4中の左側に存在する無線通信デバイス13a〜13fのいずれかと通信装置3aとが通信を行う際には、RFコネクタ14a側から給電することが好適であり、
図4中の右側に存在する無線通信デバイス13g〜13mのいずれかと通信装置3aとが通信を行う際には、RFコネクタ14b側から給電することが好適である。したがって、対応情報において、無線通信デバイス13a〜13fと、RFコネクタ14a側の漏洩同軸ケーブル11の端子とを対応付け、無線通信デバイス13g〜13と、RFコネクタ14b側の漏洩同軸ケーブル11の端子とを対応付けるようにしてもよい。
【0038】
なお、漏洩同軸ケーブル11と、各無線通信デバイス13a〜13mとの間の伝搬特性は、筐体10内の構造によっても大きく変化する。したがって、無線通信デバイス13a〜13mのそれぞれと、通信装置3aとの間で、漏洩同軸ケーブル11の一端、及び他端を用いたテスト通信を行ってもよい。そして、その結果に応じて、無線通信デバイス13a〜13mのそれぞれが、特性のよい端子側と接続されるように、対応情報を生成してもよい。
【0039】
次に、通信装置3aの動作について
図6のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)通信部31は、通信を行うかどうか判断する。そして、通信を行う場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、通信を行うと判断するまでステップS101の処理を繰り返す。なお、通信部31は、例えば、無線通信デバイス13a〜13mのいずれかに信号を送信する必要がある場合に、通信を行うと判断してもよく、あるいは、無線通信デバイス13a〜13mのいずれかから送信された信号を受信した際に、通信を行うと判断してもよい。後者の場合には、初回の受信においては、漏洩同軸ケーブル11の適切でない端子側から信号を受け取ることもあるが、それ以降においては、適切な端子側から信号を受け取ることができるようになる。
【0040】
(ステップS102)制御部34は、通信部31が通信を行う通信先の無線通信デバイスに対応する、漏洩同軸ケーブル11の端子を、記憶部33で記憶されている対応情報を用いて特定する。
【0041】
(ステップS103)制御部34は、ステップS102で特定した端子側と通信部31とが接続されるようにスイッチ32を制御する。その制御は、スイッチ32の切り替えることであってもよく、あるいは、スイッチ32を切り替えないことであってもよい。
【0042】
(ステップS104)通信部31は、ステップS102で特定された端子側を介して、通信先の無線通信デバイスと通信を行う。そして、ステップS101に戻る。
なお、
図6のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0043】
次に、本実施の形態による無線通信システム200の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例において、無線通信デバイス13aの識別子を「13a」とし、他の無線通信デバイス13b〜13mについても同様であるとする。また、漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14a側の端子の識別子を「L」とし、RFコネクタ14b側の端子の識別子を「R」とする。そして、記憶部33では、
図7で示される対応情報が記憶されているものとする。
図7において、無線通信デバイスを識別する無線通信デバイス識別子と、漏洩同軸ケーブル11の端子を識別する端子識別子とが対応付けられている。なお、漏洩同軸ケーブル11は、
図5で示されるように、バックファイア型のものであるとしている。
【0044】
そして、通信部31が無線通信デバイス13cに制御信号を送信することになったとする。すると、通信部31は、通信を行うと判断し、通信先の無線通信デバイス13cの無線通信デバイス識別子「13c」を、制御部34に渡す(ステップS101)。制御部34は、無線通信デバイス識別子「13c」を受け取ると、その無線通信デバイス識別子を検索キーとして、
図7で示される対応情報を検索する。そして、ヒットした3番目のレコードから、端子識別子「L」を読み出す(ステップS102)。その後、制御部34は、読み出した端子識別子「L」で識別される端子と、通信部31とが接続されるようにスイッチ32を制御する(ステップS103)。その結果、スイッチ32は、
図4で示される状態となり、通信部31は、漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14a側の端子を介して、無線通信デバイス13cと無線通信を行う(ステップS104)。
【0045】
以上のように、本実施の形態による無線通信システム200によれば、無線通信時の漏洩同軸ケーブル11への給電側として、よりよい側の端子を選択して用いる選択ダイバシチを行うことができる。その結果、より特性のよい無線通信を行うことができるようになる。
【0046】
また、漏洩同軸ケーブル11の指向特性以外にも、筐体10内の構造によって伝搬特性が変化するため、通信先の無線通信デバイスに応じて、使用する周波数(周波数チャネル)を切り替えるようにしてもよい。その場合には、記憶部33において、無線通信デバイスと、その無線通信デバイスが通信先である場合に使用する周波数との対応を示す周波数対応情報が記憶されており、通信部31は、通信先の無線通信デバイスに周波数対応情報によって対応付けられる周波数を用いて通信を行うようにしてもよい。そのような周波数の切り替えは、漏洩同軸ケーブル11の端子の切り替えに加えて行ってもよく、または、漏洩同軸ケーブル11の端子の切り替えに代えて行ってもよい。後者の場合には、漏洩同軸ケーブル11の端子の切り替えは行われないことになる。
【0047】
また、本実施の形態では、制御部34がスイッチ32を制御する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、通信部31が、無線通信デバイスと無線通信を行う2個の通信手段を有しており、一方の通信手段は漏洩同軸ケーブル11の一端に接続されており、他方の通信手段は漏洩同軸ケーブル11の他端に接続されていてもよい。そして、制御部34は、その2個の通信手段から、通信先の無線通信デバイスに対応情報によって対応付けられる漏洩同軸ケーブル11の端子に接続されている通信手段を用いた無線通信が行われるように制御してもよい。なお、その場合に、無線通信を行わない通信手段の側は、信号を反射しないように、信号を吸収する終端器に接続されるようにしてもよい。例えば、そのための終端器やスイッチ等を通信装置3aが備えており、制御部34がそのスイッチをも制御することによって、漏洩同軸ケーブル11の終端側に終端器が接続されるようにしてもよい。
【0048】
なお、上記実施の形態1,2において、通信装置3、3aが情報機器1の筐体10外に存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図8A,
図8Bで示されるように、通信装置3、3aは、筐体10内に存在してもよい。なお、通信装置3、3aが筐体10内に含まれる場合には、無線通信システム100、200は、その全体が情報機器1、1aの筐体10内に含まれることになる。
【0049】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による無線通信システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信システムは、漏洩同軸ケーブルを介して直流電源を供給するものである。
【0050】
図9は、本実施の形態による無線通信システム300の構成を示す図である。本実施の形態による無線通信システム300は、ケーブル2と、通信装置3と、直流電源5と、漏洩同軸ケーブル11と、無線通信デバイス13と、重畳部16と、抽出部17とを備える。なお、情報機器1aは、漏洩同軸ケーブル11と、基板12と、無線通信デバイス13と、抽出部17とを筐体10内に有している。その情報機器1aは、抽出部17をさらに備える以外、実施の形態1の情報機器1と同様のものであり、抽出部17以外の説明を省略する。また、ケーブル2、通信装置3についても上記実施の形態で説明したものと同様のものであり、その説明を省略する。
【0051】
重畳部16は、筐体10外に存在する。そして、重畳部16は、通信装置3と、通信装置3に接続されている漏洩同軸ケーブル11との間に存在する。
図9では、重畳部16は、通信装置3と、漏洩同軸ケーブル11とを接続するケーブル2の中ほどに存在する。その重畳部16は、直流電源5からの直流電圧を漏洩同軸ケーブル11の信号に重畳する。「直流電圧を漏洩同軸ケーブル11の信号に重畳する」とは、結果として、漏洩同軸ケーブル11に流れる信号に対して、直流電圧が重畳されるようにすることであり、その直流電圧を重畳する位置は、筐体10外であれば、どこであってもよい。その重畳部16は、例えば、バイアスティーである。重畳部16がバイアスティーである場合に、直流電圧が漏洩同軸ケーブル11側に重畳されるように接続されるものとする。なお、直流電源5は、直流電圧を供給できるのであれば、どのようなものであってもよい。直流電源5は、例えば、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器であってもよく、一次電池であってもよく、二次電池であってもよく、燃料電池であってもよく、あるいは、その他の直流電圧を供給可能なものであってもよい。
【0052】
抽出部17は、筐体10内に存在する。そして、抽出部17は、漏洩同軸ケーブル11を流れる直流電圧を抽出する。
図9では、抽出部17が漏洩同軸ケーブル11の終端側に存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。抽出部17は、漏洩同軸ケーブル11の給電側に存在してもよく、あるいは、その他の位置に存在してもよい。後者として、例えば、漏洩同軸ケーブル11が
図3Bで示されるように2個の直線状の漏洩同軸ケーブル11a、11bが、ケーブル11cで接続されたものである場合に、そのケーブル11cの位置に抽出部17を設けるようにしてもよい。その抽出部17は、例えば、バイアスティーである。抽出部17がバイアスティーである場合に、漏洩同軸ケーブル11側の直流電圧を抽出するように接続されるものとする。その抽出部17で抽出された直流電圧は、情報機器1の筐体10内において用いられる。例えば、筐体10内において、無線通信デバイス13や、その他の構成等の直流電源として用いられてもよい。
【0053】
このように、重畳部16によって、漏洩同軸ケーブル11を流れるRF信号に直流の電力が重畳され、その直流の電力が抽出部17で抽出されて情報機器1の筐体10内で用いられる以外は、実施の形態1と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0054】
以上のように、本実施の形態による無線通信システム300によれば、筐体10外において重畳した直流電圧を、筐体10内において用いることができる。そのようにして、直流電圧を供給するケーブルと、漏洩同軸ケーブル11とを共通化することによって、筐体10内の構成をシンプルにすることができる。また、その直流電圧を、漏洩同軸ケーブル11の信号に重畳するため、直流電源を筐体10の外部から内部に供給するためのコネクタを別途、設ける必要がなく、インターフェースコネクタの数を削減することができる。その結果、情報機器1の筐体10に気密性が要求される場合に、その気密性を高く保つことができる。情報機器1の筐体10において、外部とのインターフェースコネクタ数が少ないほど気密性を高めることができると考えられるからである。
【0055】
なお、本実施の形態では、直流電源5と重畳部16とが筐体10外に存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。直流電源5と重畳部16とが筐体10内に存在してもよい。その場合でも、直流電源の電源線と、漏洩同軸ケーブル11とを共通化することによって、筐体10内における配線を削減することができ、筐体10内の構造をシンプルにすることができるメリットがある。
【0056】
また、本実施の形態では、通信装置3と、通信装置3に接続されている漏洩同軸ケーブル11との間に重畳部16が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。結果として、漏洩同軸ケーブル11のRF信号に、直流電圧を重畳できるのであれば、重畳部16の位置は問わない。例えば、
図9において、漏洩同軸ケーブル11と終端器15との間に重畳部16が存在してもよい(筐体10内であってもよく、筐体10外であってもよい)。そして、抽出部17が、漏洩同軸ケーブル11の給電側に存在してもよい。なお、重畳部16が筐体10内に存在する場合には、通信装置3も筐体10内に存在してもよい。すなわち、無線通信システム300の全体が筐体10内に存在してもよい。また、上述のように、重畳部16と抽出部17との位置には任意性があるが、重畳部16によって重畳された直流電圧が、漏洩同軸ケーブル11を介して抽出部17に伝送され、抽出部17においてその直流電圧が抽出されるように両者が配設されることが好適である。
【0057】
また、本実施の形態では、無線通信システム300に直流電源5が含まれる場合について説明したが、そうでなくてもよい。重畳部16は、無線通信システム300の外部の直流電源から供給される直流電圧を、漏洩同軸ケーブル11の信号に重畳するようにしてもよい。その場合には、無線通信システム300は、直流電源5を備えていなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、実施の形態1による無線通信システム100において、漏洩同軸ケーブル11の信号に直流電圧を重畳したり、その直流電圧を抽出したりする場合について説明したが、実施の形態2による無線通信システム200において、漏洩同軸ケーブル11の信号に直流電圧を重畳したり、その直流電圧を抽出したりしてもよいことは言うまでもない。
【0059】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による無線通信システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による無線通信システムは、漏洩同軸ケーブルを介して電力供給用のRF信号を供給するものである。
【0060】
図10は、本実施の形態による無線通信システム400の構成を示す図である。本実施の形態による無線通信システム400は、ケーブル2と、通信装置3bと、ケーブル4と、直流電源5と、アイソレータ6と、フィルタ7と、漏洩同軸ケーブル11と、無線通信デバイス13と、重畳部16と、抽出部17と、無線電力受信用デバイス18とを備える。なお、情報機器1bは、漏洩同軸ケーブル11と、基板12と、無線通信デバイス13と、抽出部17と、無線電力受信用デバイス18とを筐体10内に有している。その情報機器1bは、無線電力受信用デバイス18をさらに備え、漏洩同軸ケーブル11が両端から信号を供給可能なものである以外は、実施の形態3の情報機器1aと同様のものであり、その説明を省略する。また、ケーブル2,4、直流電源5、重畳部16についても上記実施の形態で説明したものと同様のものであり、その説明を省略する。
【0061】
無線電力受信用デバイス18は、筐体10内において、電力供給用の信号(後述する)を漏洩同軸ケーブル11から受信することによって電力を取得する。そのようにして取得された電力は、情報機器1bの筐体10内において用いられる。また、
図10では、情報機器1bが2以上の無線電力受信用デバイス18を有する場合について示しているが、情報機器1bは、1以上の無線電力受信用デバイス18を有するものであればよい。なお、無線による電力の供給についてはすでに公知であり、電力供給用の信号を受信する無線電力受信用デバイスについても公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0062】
通信装置3bは、漏洩同軸ケーブル11の一方の端子に電力伝送用の信号を供給し、漏洩同軸ケーブル11の他方の端子に無線通信用の信号を供給する。なお、通信装置3bは、無線通信用の信号を供給する実施の形態1の通信装置3と、電力伝送用の信号を供給する装置とを備えたものであると考えてもよい。本実施の形態では、無線による電力伝送用の信号の周波数がfpであり、無線通信用の信号の周波数がfsであるとする。そして、
図10で示されるように、電力伝送用の周波数fpのRF信号が漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14a側にケーブル2を介して供給され、無線通信用の周波数fsのRF信号が漏洩同軸ケーブル11のRFコネクタ14b側にケーブル4を介して供給されるものとする。なお、周波数fpと周波数fsとは、相互に干渉しない程度に異なる周波数であるとする。また、周波数fpの信号は、無線電力伝送用の信号であるため、筐体10内における信号の電力反射が多い方が好ましい。したがって、周波数fpが共鳴周波数である漏洩同軸ケーブル11を用いるようにしてもよい。
【0063】
アイソレータ6は、通信装置3側からの信号を漏洩同軸ケーブル11側に通過させるが、漏洩同軸ケーブル11側からの信号を吸収するアイソレータである。このアイソレータ6によって、通信装置3bに、周波数fsの信号や、フィルタ7で反射された周波数fpの信号が入力することを回避できる。
【0064】
フィルタ7は、通信装置3bからの周波数fsの信号を通過させ、情報機器1からの周波数fpの信号を反射させる反射型のフィルタである。なお、フィルタ7として、その反射型のフィルタに代えて、通信装置3bからの信号を通過させ、情報機器1からの信号を吸収するアイソレータを用いてもよい。
【0065】
このような構成により、通信装置3bから出力された周波数fpのRF信号は、アイソレータ6、重畳部16、RFコネクタ14aを通過して漏洩同軸ケーブル11に供給される。そして、漏洩同軸ケーブル11から周波数fpの信号が放射され、その無線電力供給用の信号が各無線電力受信用デバイス18によって受信されることによって、各無線電力受信用デバイス18による電力の取得が行われる。そのようにして取得された電力は、情報機器1の筐体10内において適宜、用いられる。なお、漏洩同軸ケーブル11を通過した無線電力供給用の信号は、フィルタ7で反射または吸収される。フィルタ7で反射された場合には、無線電力供給用の信号は、再度、漏洩同軸ケーブル11を通過し、漏洩同軸ケーブル11から放射され、最終的にアイソレータ6で吸収される。
【0066】
また、通信装置3bから出力された周波数fsの信号は、フィルタ7を通過して漏洩同軸ケーブル11に供給される。そして、漏洩同軸ケーブル11から周波数fsの信号が放射され、その無線通信用の信号が各無線通信デバイス13によって受信されることによって、機器内の無線通信が行われる。なお、漏洩同軸ケーブル11を通過した無線通信用の信号は、アイソレータ6で吸収される。
【0067】
また、直流電源5から出力された直流電圧は、重畳部16を介してケーブル2を流れるRF信号に重畳され、漏洩同軸ケーブル11に供給される。そして、その直流電圧は、抽出部17によって抽出され、情報機器1の筐体10内において適宜、用いられる。
【0068】
以上のように、本実施の形態による無線通信システム400によれば、無線電力供給用の信号をも漏洩同軸ケーブル11に供給し、その漏洩同軸ケーブル11から放射された無線電力供給用の信号を無線電力受信用デバイス18で受信することによって、情報機器1の筐体10内において、無線による電力供給を行うことができる。その結果、情報機器1の筐体10内において、電力供給用の配線をなくす、あるいは、低減することができうる。また、その無線電力伝送用の信号を、漏洩同軸ケーブル11の信号に重畳するため、電力伝送用の信号を筐体10の外部から内部に供給するためのコネクタを別途、設ける必要がなく、インターフェースコネクタの数を削減することができる。その結果、情報機器1の筐体10に気密性が要求される場合に、その気密性を高く保つことができる。前述のように、インターフェースコネクタ数が少ないほど筐体10の気密性を高く保てると考えられるからである。また、アイソレータ6やフィルタ7を備えることによって、漏洩同軸ケーブル11を流れるRF信号が通信装置3bに戻ることがないようにすることができる。その結果、通信装置3bを保護することができ、通信装置3bの動作を安定化させることができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、実施の形態3による無線通信システム300において、漏洩同軸ケーブル11を介して無線電力伝送用の信号をも供給する場合について説明したが、実施の形態1による無線通信システム100や、実施の形態2による無線通信システム200において、漏洩同軸ケーブル11を介した無線電力伝送用の信号の供給を実現するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0070】
また、上記各実施の形態では、ISM帯で無線通信を行う場合について主に説明したが、漏洩同軸ケーブル11を介した無線通信で用いる周波数が、ISM帯のものに限定されないことはいうまでもない。
【0071】
また、上記各実施の形態では、無線通信システム100、200、300、400が通信装置3、3a、3bを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。無線通信システム100、200、300、400は、通信装置3等を備えておらず、その通信装置3等と接続されうるものであってもよい。
【0072】
また、上記各実施の形態では、無線通信デバイス13、13a〜13mが基板12に設けられている場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。無線通信デバイス13、13a〜13mは、筐体10内に存在するのであれば、基板12以外に設けられていてもよいことは言うまでもない。
【0073】
また、上記各実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0074】
また、上記各実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0075】
また、上記各実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0076】
また、上記各実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0077】
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0078】
また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0079】
また、本発明は、以上の各実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。