特許第5950203号(P5950203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950203
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】エンジンの吸気量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 69/32 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   F02M69/32 A
   F02M69/32 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-217544(P2012-217544)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70576(P2014-70576A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 大地
(72)【発明者】
【氏名】森田 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲川 良治
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4234121(JP,B2)
【文献】 特開2007−332904(JP,A)
【文献】 特開2005−113718(JP,A)
【文献】 特開2009−114997(JP,A)
【文献】 特開2010−163890(JP,A)
【文献】 特開2004−183523(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0100822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 69/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御基体(5)に,バルブガイド孔(7)と,このバルブガイド孔(7)の内側面に開口し,前記バルブガイド孔(7)を通してエンジンの吸気が通過する計量孔(10)とを形成し,前記バルブガイド孔(7)には,前記計量孔(10)を開閉する制御バルブ(12)を摺動自在且つ回転不能に嵌装し,この制御バルブ(12)に,これを開閉駆動すべく,前記制御基体(5)に取り付けられる電動モータ(20)の正逆転可能の出力軸(20b)をねじ機構(25)を介して連結してなり,前記ねじ機構(25)が,前記制御バルブ(12)に回り止め手段(26)を介し連結されて該制御バルブ(12)を同期的に開閉駆動するスライドピース(27)と,前記出力軸(20b)に連設され,前記スライドピース(27)に前記制御バルブ(12)の摺動方向に沿って設けられたねじ孔(28)に螺合するねじ軸(29)とで構成される,エンジンの吸気量制御装置において,
前記バルブガイド孔(7)の内側面に制御内側面(8a)を形成すると共に,この制御内側面(8a)に前記計量孔(10)を開口する一方,前記制御バルブ(12)の外側面に,前記制御内側面(8a)と摺接する制御外側面(8b)を形成し,
前記回り止め手段(26)を,前記ねじ軸(29)の回転方向に沿って並ぶよう前記スライドピース(27)に設けられる第1及び第2加圧部(35a,35b)と,前記ねじ軸(29)の回転方向で前記第1及び第2加圧部(35a,35b)にそれぞれ対向するよう前記制御バルブ(12)に設けられる第1及び第2受圧部(36a,36b)とで構成し,
前記第1加圧部(35a)は,前記ねじ軸(29)の正転時,第1受圧部(36a)を押圧することにより,前記制御外側面(8b)を前記制御内側面(8a)に密接させるように前記スライドピース(27)を押圧し,
また前記第2加圧部(35b)は,前記ねじ軸(29)の逆転時,第2受圧部(36b)を押圧することにより,前記制御外側面(8b)を前記制御内側面(8a)に密接させるように前記スライドピース(27)を押圧することを特徴とする,エンジンの吸気量制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの吸気量制御装置において,
前記第1及び第2加圧部(35a,35b)を前記スライドピース(27)に一体に形成し,前記第1及び第2受圧部(36a,36b)を前記制御バルブ(12)に一体に形成したことを特徴とする,エンジンの吸気量制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のエンジンの吸気量制御装置において,
前記制御バルブ(12)には,外側面を前記制御外側面(8b)とする制御壁(12a)と,この制御壁(12a)の,前記電動モータ(20)と反対側の前端部から起立する前端壁(12c)とを設ける一方,前記スライドピース(27)を,その前端面が前記前端壁(12c)に対向するように前記制御バルブ(12)内に配置し,前記制御壁(12a)の内面側から起立して前記第1及び第2受圧部(36a,36b)を有する共通の受圧突起(36)を前記前端壁(12c)の内面に一体に形成し,前記第1及び第2加圧部(35a,35b)を,これらの間に前記受圧突起(36)を挟むようにV字状に配置しながら前記スライドピース(27)の前端面に一体に形成し,前記第1加圧部(35a)が前記第1受圧部(36a)を押圧するときも,前記第2加圧部(35b)が前記第2受圧部(36b)を押圧するときも,前記受圧突起(36)に作用する分力(F1)が,前記制御外側面(8b)を前記制御内側面(8a)に密接させるように前記スライドピース(27)を押圧することを特徴とする,エンジンの吸気量制御装置。
【請求項4】
請求項3記載のエンジンの吸気量制御装置において,
前記第1及び第2加圧部(35a,35b)のV字状に配置される加圧面(35a1,35b1)の開き角度(θ)を90°以上に設定したことを特徴とする,エンジンの吸気量制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載のエンジンの吸気量制御装置において,
前記スライドピース(27)の前端部に第1スプリング座(31)を設け,この第1スプリング座(31)と対向する第2スプリング座(32)を前記制御バルブ(12)の後端部に設け,これら第1及び第2スプリング座(31,32)間に,前記スライドピース(27)に対して前記制御バルブ(12)を後方へ付勢して前記第1及び第2加圧部(35a,35b)と前記第1及び第2受圧部(36a,36b)との対向位置を保持するコイルスプリング(33)を縮設したことを特徴とする,エンジンの吸気量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,制御基体に,バルブガイド孔と,このバルブガイド孔の内側面に開口し,前記バルブガイド孔を通してエンジンの吸気が通過する計量孔とを形成し,前記バルブガイド孔には,前記計量孔を開閉する制御バルブを摺動自在且つ回転不能に嵌装し,この制御バルブに,これを開閉駆動すべく,前記制御基体に取り付けられる電動モータの正逆転可能の出力軸をねじ機構を介して連結してなり,前記ねじ機構が,前記制御バルブに回り止め手段を介し連結されて該制御バルブを同期的に開閉駆動するスライドピースと,前記出力軸に連設され,前記スライドピースに前記制御バルブの摺動方向に沿って設けられたねじ孔に螺合するねじ軸とで構成される,エンジンの吸気量制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるエンジンの吸気制御装置は,下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−114997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝるエンジンの吸気量制御装置では,製作誤差や組立誤差により,計量孔が開口するバルブガイド孔の内側面と,その計量孔を開閉する制御バルブの外側面との間に隙間が生じ,その隙間からの吸気の漏れにより,特に制御バルブの全閉時や部分開度時,エンジンの吸気量にばらつきが発生することがある。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,製作誤差や組立誤差に殆ど影響されることなく,計量孔が開口するバルブガイド孔の内側面と,その計量孔を開閉する制御バルブの外側面とを常に密着させ,その間に隙間が生じないようにして,制御バルブの全閉時や部分開度においもエンジンの吸気量を適正に制御し得るようにした前記エンジンの吸気量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,制御基体に,バルブガイド孔と,このバルブガイド孔の内側面に開口し,前記バルブガイド孔を通してエンジンの吸気が通過する計量孔とを形成し,前記バルブガイド孔には,前記計量孔を開閉する制御バルブを摺動自在且つ回転不能に嵌装し,この制御バルブに,これを開閉駆動すべく,前記制御基体に取り付けられる電動モータの正逆転可能の出力軸をねじ機構を介して連結してなり,前記ねじ機構が,前記制御バルブに回り止め手段を介し連結されて該制御バルブを同期的に開閉駆動するスライドピースと,前記出力軸に連設され,前記スライドピースに前記制御バルブの摺動方向に沿って設けられたねじ孔に螺合するねじ軸とで構成される,エンジンの吸気量制御装置において,
前記バルブガイド孔の内側面に制御内側面を形成すると共に,この制御内側面に前記計量孔を開口する一方,前記制御バルブの外側面に,前記制御内側面と摺接する制御外側面を形成し,
前記回り止め手段を,前記ねじ軸の回転方向に沿って並ぶよう前記スライドピースに設けられる第1及び第2加圧部と,前記ねじ軸の回転方向で前記第1及び第2加圧部にそれぞれ対向するよう前記制御バルブに設けられる第1及び第2受圧部とで構成し,前記第1加圧部は,前記ねじ軸の正転時,第1受圧部を押圧することにより,前記制御外側面を前記制御内側面に密接させるように前記スライドピースを押圧し,また前記第2加圧部は,前記ねじ軸の逆転時,第2受圧部を押圧することにより,前記制御外側面を前記制御内側面に密接させるように前記スライドピースを押圧することを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記第1及び第2加圧部を前記スライドピースに一体に形成し,前記第1及び第2受圧部を前記制御バルブに一体に形成したことを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第2の特徴に加えて,前記制御バルブには,外側面を前記制御外側面とする制御壁と,この制御壁の,前記電動モータと反対側の前端部から起立する前端壁とを設ける一方,前記スライドピースを,その前端面が前記前端壁に対向するように前記制御バルブ内に配置し,前記制御壁の内面側から起立して前記第1及び第2受圧部を有する共通の受圧突起を前記前端壁の内面に一体に形成し,前記第1及び第2加圧部を,これらの間に前記受圧突起を挟むようにV字状に配置しながら前記スライドピースの前端面に一体に形成し,前記第1加圧部が前記第1受圧部を押圧するときも,前記第2加圧部が前記第2受圧部を押圧するときも,前記受圧突起に作用する分力が,前記制御外側面を前記制御内側面に密接させるように前記スライドピースを押圧することを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明の第3の特徴に加えて,前記第1及び第2加圧部のV字状に配置される加圧面の開き角度を90°以上に設定したことを第4の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は,第3又は第4の特徴に加えて,前記スライドピースの前端部に第1スプリング座を設け,この第1スプリング座と対向する第2スプリング座を前記制御バルブの後端部に設け,これら第1及び第2スプリング座間に,前記スライドピースに対して前記制御バルブを後方へ付勢して前記第1及び第2加圧部と前記第1及び第2受圧部との対向位置を保持するコイルスプリングを縮設したことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば,バルブガイド孔の内側面に制御内側面を形成すると共に,この制御内側面に前記計量孔を開口する一方,制御バルブの外側面に,制御内側面と摺接する制御外側面を形成し,制御バルブ及びスライドピース間の回り止め手段を,スライドピースに設けられてねじ軸の回転方向に沿うように配置される第1及び第2加圧部と,ねじ軸の回転方向において第1及び第2加圧部にそれぞれ対向する第1及び第2受圧部とで構成し,第1加圧部は,ねじ軸の正転時,第1受圧部を押圧することにより,制御バルブの制御外側面をバルブガイド孔の制御内側面に密接させるようにスライドピースを押圧し,また第2加圧部は,ねじ軸の逆転時,第2受圧部を押圧することにより,制御外側面を制御内側面に密接させるようにスライドピースを押圧するので,出力軸の正転,逆転の何れのときも,制御バルブは,第1及び第2加圧部の何れかが対応する受圧部に加える押圧力によって,バルブガイド孔の制御内側面側に押しつけられ,その制御外側面をバルブガイド孔の制御内側面に密着させ,制御内側面と制御外側面との間から隙間を排除することができ,その状態で,制御バルブは,制御内側面に開口する計量孔を開閉することで,バルブガイド孔及び制御バルブ間の隙間による吸気の漏れを無くすことができ,したがって制御バルブの全閉時や部分開度時でも,その開度に対応した適正なバイパス吸気量をエンジンに供給することができる。
【0012】
本発明の第2の特徴によれば,第1及び第2加圧部を前記スライドピースに一体に形成し,前記第1及び第2受圧部を前記制御バルブに一体に形成したので,回り止め手段による部品点数の増加はなく,吸気量制御装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば,制御バルブには,外側面を制御外側面とする制御壁と,この制御壁の,電動モータと反対側の前端部から起立する前端壁とを設ける一方,スライドピースを,その前端面が前記前端壁に対向するように制御バルブ内に配置し,制御壁の内面側から起立して第1及び第2受圧部を有する共通の受圧突起を前記前端壁の内面に一体に形成し,第1及び第2加圧部を,これらの間に受圧突起を挟むようにV字状に配置しながらスライドピースの前端面に一体に形成し,第1加圧部が第1受圧部を押圧するときも,第2加圧部が第2受圧部を押圧するときも,受圧突起に作用する分力が,制御外側面を制御内側面に密接させるようにスライドピースを押圧するので,制御バルブの前端壁と,制御バルブ内に収容されるスライドピースの前端面との間に,前記回り止め手段をコンパクトに構成することができ,吸気量制御装置の大型化を回避することができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば,第1及び第2加圧部間のV字状の開き角度を90°以上に設定したので,互いに対向する第1及び第2加圧部間の空間を,エンドミルによるスライドピースの素材の切削により容易に形成することができる。
【0015】
本発明の第5の特徴によれば,スライドピースの前端部に第1スプリング座を設け,この第1スプリング座と対向する第2スプリング座を制御バルブの後端部に設け,これら第1及び第2スプリング座間に,スライドピースに対して制御バルブを後方へ付勢して第1及び第2加圧部と第1及び第2受圧部との対向位置を保持するコイルスプリングを縮設したので,スライドピース及び制御バルブ間をコイルスプリングにより軸方向にガタ無く連結して,制御バルブをスライドピースの軸方向移動に遅れなく同期追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの吸気量制御装置の縦断側面図。
図2図1の2−2線拡大断面図。
図3図1の3−3線断面図で,(A)は電動モータの正転時,(B)は同逆転時の状態を示す。
図4】本発明の第2実施形態を示す,図3との対応図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を,添付図面に基づいて以下に説明する。
【0018】
先ず,図1図3に示す本発明の第1実施形態の説明より始める。図1において,符号1は,例えば自動二輪車用のエンジンに取り付けられるスロットルボディであって,エンジンの吸気ポートに連通する吸気道2を中心部に有し,その吸気道2を開閉するバタフライ型のスロットルバルブ3がスロットルボディ1に軸支される。スロットルボディ1の上側壁には支持台4が一体に形成され,この支持台4上に制御基体5が重ねられ,図示しないボルトにより締結される。
【0019】
図1図3において,制御基体5には,有底シリンダ状のバルブガイド孔7が形成され,このバルブガイド孔7は,横断面が多角形(図3参照,図示例では正方形)をなしており,このバルブガイド孔7の,重力方向に沿う下側の内側面は制御内側面8aとされる。制御基体5には,上記制御内側面8aに開口する計量孔10と,この計量孔10よりバルブガイド孔7の底部側で制御内側面8aに開口する入口孔11とが設けられる。計量孔10は,長径がバルブガイド孔7の軸線方向に沿って配置される長孔状をなしており,この計量孔10を開閉する制御バルブ12がバルブガイド孔7に摺動自在に嵌装される。
【0020】
一方,スロットルボディ1には,スロットルバルブ3より上流の吸気道2を前記入口孔11に接続するバイパス上流通路14と,前記計量孔10を,スロットルバルブ3より下流の吸気道2に接続するバイパス下流通路15とが設けられる。スロットルボディ1及び制御基体5の接合面間には,バイパス上流通路14及び入口孔11間の接続部,並びにバイパス下流通路15及び計量孔10間の接続部をそれぞれ囲繞するシール部材16が介装される。而して,バイパス上流通路14,入口孔11,バルブガイド孔7,計量孔10及びバイパス下流通路15は,スロットルバルブ3を迂回して吸気道2に接続されるバイパス17を構成する。
【0021】
前記制御バルブ12は,下側面を制御外側面8bとして前記バルブガイド孔7の制御内側面8aに摺接させる制御壁12aと,この制御壁12aの左右両側端部より起立してバルブガイド孔7の左右両内側面に対面する一対の側壁12b,12bと,制御壁12aの,バルブガイド孔7の底部側の前端より起立して両側壁12b,12bの前端部間を連結する前端壁12cと,制御壁12a及び両側壁12b,12bの後端部から内方に突出するU字状の内向き鍔12dとよりなっていて,制御壁12aと反対側の面を開放面12eとした箱形をなしており,したがってこの制御バルブ12は,横断面正方形のバルブガイド孔7内では,その軸方向に摺動自在であるが,回転は不能である。
【0022】
制御基体5には,前記バルブガイド孔7の開口端に段部18を介して連なる,バルブガイド孔7より大径のモータ取り付け孔19が設けられ,それに電動モータ20のステータ20aが装着される。その際,ステータ20aの前端面と段部18との間には,電動モータ20の出力軸20bの外周面に密接するシール部材21が挟持される。電動モータ20の出力軸20bは,正逆転が可能であり,この出力軸20bに前記制御バルブ12がねじ機構25を介して連結される。
【0023】
上記ねじ機構25は,制御バルブ12に回り止め手段26を介し連結されて制御バルブ12を同期的に開閉駆動するスライドピース27と,電動モータ20の出力軸20bに連設され,スライドピース27に制御バルブ12の摺動方向に沿って設けられたねじ孔28に螺合するねじ軸29とで構成される。上記ねじ孔28は,行き止まり部28aを有する袋状に形成される。スライドピース27は,制御バルブ12のU字状の内向き鍔12d内を貫通して制御バルブ12内に配置される筒軸27aと,この筒軸27a前端の閉鎖端壁27bの外周に形成されるフランジ27cとよりなっており,筒軸27aには,前記ねじ軸29が螺合する袋状の前記ねじ孔28が設けられる。また筒軸27aには,ねじ孔28の行き止まり部28a近傍で,ねじ孔28を筒軸27a外周の両対向面に開放し且つ制御バルブ12の開放面12eと並行する同軸一対の横孔30,30が設けられる。
【0024】
前記外向きフランジ27cの内面には第1スプリング座31が,また前記内向き鍔12dの内面には第2スプリング座32がそれぞれ形成され,この両スプリング座31,32間にコイルスプリング33が縮設され,このコイルスプリング33のセット荷重により制御バルブ12はスライドピース27に対して後方,即ち電動モータ20側へ付勢され,それによりスライドピース27の前端壁12cが外向きフランジ27cとの当接状態に保持される。これにより,スライドピース27及び制御バルブ12は,互いに軸方向にガタ無く連結される。
【0025】
コイルスプリング33は,第1スプリング座31に支承されながら筒軸27aの,前記横孔30,30が穿設される外周部に嵌合される密着巻き部33aと,これに一体に接続されると共に,この密着巻き部33aよりも大径で制御バルブ12に支承される大径端部33b1を有するコーンスプリング部33bとより構成され,上記密着巻き部33aは,横孔30,30の外端開口部を閉鎖するようになっている。
【0026】
図2及び図3に示すように,前記回り止め手段26は,スライドピース27のフランジ27c付きの閉鎖端壁27bの外端面に一体に突設される加圧突起35と,制御バルブ12の制御壁12aの内面から起立するように,その前端壁12cの内面に突設される受圧突起36とより構成される。その加圧突起35には,受圧突起36をねじ軸29の回転方向に沿って挟むようにV字状に配置される一対の加圧面35a1,35b1を有する第1及び第2加圧部35a,35bが設けられ,上記V字状に配置される一対の加圧面35a1,35b1間の開き角度θは90°以上に設定される。こうすると,互いに対向する第1及び第2加圧部35a,35bの加圧面35a1,35b1を,エンドミルにより容易に加工することができる。
【0027】
一方,受圧突起36には,上記加圧面35a1,35b1にそれぞれ対面する凸状の第1及び第2受圧部36a,36bが設けられる。
【0028】
次に,この第1実施形態の作用について説明する。
【0029】
スロットルバルブ3の全閉時に,図示しない電子制御ユニットが,スロットルバルブ開度,エンジンの吸気負圧,吸気温,エンジン温度,エンジン回転数等のエンジンの運転条件に関する情報に基づいて,エンジン始動時,ファストアイドリング時,通常アイドリング時,エンジンブレーキ時など,エンジンの運転条件に対応した制御バルブ12の最適開度を得べく,電動モータ20への通電を制御して,電動モータ20の出力軸20bを正転又は逆転させる。出力軸20bが回転又は逆転すると,その回転はねじ機構により減速されながらスライドピース27を介して制御バルブ12に軸方向変位として伝達されるので,制御バルブ12は,その軸方向変位により計量孔10のバルブガイド孔7への開口面積をきめ細かく調節することができる。これにより,バイパス17を流れるエンジンの吸気量がきめ細かく制御され,エンジン始動,ファストアイドリング,通常アイドリング,エンジンブレーキ等に対応することができる。
【0030】
ところで,図3(A)に示すように,電動モータ20の出力軸20bの正転時には,出力軸20bの正転トルクT1がねじ軸29及びねじ孔28間の摩擦を介してスライドピース27に伝達し,第1加圧部35aの加圧面35a1が第1受圧部36aをバルブガイド孔7の制御内側面8aに対して斜めに押圧する。したがって,第1受圧部36aに加えられる押圧力Fは,制御内側面8aに垂直な第1分力と,制御内側面8aに平行な第2分力F2とに分解され,第1分力F1は制御バルブ12を制御内側面8aに押しつけ,第2分力F2は制御バルブ12をバルブガイド孔7の一方の内側面に押しつけることになる。また,図3(B)に示すように,電動モータ20の出力軸20bの逆転時には,出力軸20bの逆転トルクT2がねじ軸29及びねじ孔28間の摩擦を介してスライドピース27に伝達し,第2加圧部35bの加圧面35b1が第2受圧部36bをバルブガイド孔7の制御内側面8aに対して,先刻とは反対方向の斜めに押圧する。したがって,第2受圧部36bに加えられる押圧力Fは,制御内側面8aに垂直な第1分力と,制御内側面8aに平行な第2分力F2分かれ,第1分力F1は制御バルブ12を制御内側面8aに押しつけ,第2分力F2は制御バルブ12をバルブガイド孔7の他方の内側面に押しつけることになる。
【0031】
このように,出力軸20bの正転,逆転の何れのときも,制御バルブ12は,前記第1分力F1によりバルブガイド孔7の制御内側面8a側に押しつけられるため,その制御外側面8bをバルブガイド孔7の制御内側面8aに密着させることができる。即ち,制御内側面8aと制御外側面8bとの間から隙間を排除することができ,その状態で,制御バルブ12は,制御内側面8aに開口する計量孔10を開閉するので,バルブガイド孔7及び制御バルブ12間の隙間による吸気の漏れを無くすことができ,したがって制御バルブ12の全閉時や部分開度時でも,その開度に対応した適正なバイパス吸気量をエンジンに供給することができる。しかも,制御バルブ12により開閉される計量孔10は,制御バルブ12の摺動方向に長径を向けた長孔状をなしているから,その有効開口面積を制御バルブ12の摺動に応じてきめ細かく調節することができる。
【0032】
この場合,制御バルブ12には,重力による制御内側面8a側への押圧力と,計量孔10から制御バルブ12の制御外側面8bに働くエンジンの吸気負圧による吸引力とが同時に作用し,これらによって制御外側面8b及び制御内側面8a間の密着力は一層強められる。
【0033】
ねじ機構25のねじ軸29がスライドピース27を後方へ引き寄せて,その先端部をスライドピース27のねじ孔28の行き止まり部28aに突き当てることで,スライドピース27に同期する制御バルブ12の全開位置が規制され,計量孔10は全開となる。この全開位置が制御バルブ12の基準位置となり,この基準位置からの電動モータ20の出力軸20bの回転角度によって制御バルブ12の閉じ位置が決定され,計量孔10の開度が制御される。
【0034】
スロットルバルブ3を開放していけば,その開度に応じた量の吸気が吸気道2を通してエンジンに供給され,エンジンは出力運転域に移っていく。
【0035】
ところで,スライドピース27及び制御バルブ12は,コイルスプリング33により軸方向にガタ無く連結され,制御バルブ12はスライドピース27の軸方向移動に遅れなく同期して追従することができる。
【0036】
しかも,スライドピース27及び制御バルブ12間を連結する回り止め手段26は,スライドピース27のフランジ27c付きの閉鎖端壁27bの外端面に一体に突設される加圧突起35と,制御バルブ12の制御壁12aの内面から起立するように,その前端壁12cの内面に突設される受圧突起36とより構成されるので,回り止め手段26による部品点数の増加もなく,吸気量制御装置の構造の簡素化に寄与し得る。しかも,回り止め手段26は,制御バルブ12の前端壁12cと,制御バルブ12内に収容されるスライドピース27の閉鎖端壁27bの外端面との間に,コンパクトに構成することができ,吸気量制御装置の大型化を避けることができる。
【0037】
また上記ねじ軸29が螺合するねじ孔28をスライドピース27に加工する際には,それに先立って先ずねじ孔28の下孔を,次いでその下孔と交差するように同軸一対の横孔30,30をドリル加工し,その後,上記下孔にねじ孔をリーマ加工するもので,そうすることにより,横孔30,30が加工によるバリ(加工残り)を切断し,ねじ孔28の加工不足を確実に防ぐことができるのみならず,その際に発生する切粉を横孔30,30からスムーズに排出することができ,またねじ孔28の洗浄時には,残留する切粉を同軸一対の横孔30,30からスムーズに排出することができるので,高精度のねじ孔28を得ることができる。またねじ孔28の下孔の底部により行き止まり部28aを構成することができ,構造の簡素化を図ることができる。尚,横孔30,30を,上記下孔より大径に形成すれば,前記バリの切断効果と排出効果を高めることができる。
【0038】
さらに,スライドピース27及び制御バルブ12間を軸方向で連結すべく,スライドピース27の筒軸27aを囲繞するように配置したコイルスプリング33は,横孔30,30を閉鎖するようにスライドピース27の外周面に嵌合しながらスライドピース27の第1スプリング座31に端部を支承される密着巻き部33aと,この密着巻き部33aよりも大径で制御バルブ12の第2スプリング座32に支承される大径端部33b1を有するコーンスプリング部33bとで構成されるので,コイルスプリング33の大径端部33b1により制御バルブ12内でのコイルスプリング33の姿勢を安定させると共に,密着巻き部33aにより,制御バルブ12内に侵入したダストの横孔30,30への侵入を防ぐことができ,しかも,上記横孔30,30は,制御バルブ12の開放面12eと並行に配置されるので,開放面12eから侵入したダストが横孔30,30に直接向かうことがなく,ねじ孔28へのダスト侵入防止に寄与し得る。したがって部品点数及び組立工数の増加を伴なことなく,ダストのねじ孔28及びねじ軸29の螺合部への侵入を防ぎ,ねじ機構25のスムーズな作動が保証される。
【0039】
また,ねじ軸29の先端を前記行き止まり部に当接することにより,制御バルブの基準位置となる全開位置を規制するようにしたので,ねじ孔28の行き止まり部28aへのねじ軸29の付き当てを利用して制御バルブ12の基準位置を簡単に設定することができ,その設定のための部材の追加が不要で,構造の簡素化に寄与し得る。
【0040】
この吸気量制御装置の組み立てに際しては,先ずコイルスプリング33を装着したスライドピース27を,コイルスプリング33を縮めながら,制御バルブ12内にその開放面12eから収納して,スライドピース27の加圧突起35を制御バルブ12の受圧突起36に係合させ,同時にコイルスプリング33を解放してコーンスプリング部33bを制御バルブ12の第2スプリング座32に支承させる。
【0041】
次いで,電動モータ20側のねじ軸29をスライドピース27のねじ孔28に螺合して,電動モータ20及び制御バルブ12の組立体を構成する。尚,最初にスライドピース27のねじ孔28にねじ軸29を螺合し,その後,スライドピース27をコイルスプリング33と共に,制御バルブ12内に開放面12eから収納してもよい。何れにせよ,制御バルブ12の開放面12eを利用して,制御バルブ12内へのスライドピース27及びコイルスプリング33の組み付けを容易に行うことができる。
【0042】
次に,上記制御バルブ12を制御基体5のバルブガイド孔7に嵌装する。このとき,制御バルブ12の開放面12eはバルブガイド孔7の上側面で閉鎖されるから,制御バルブ12の開放面12eからのスライドピース27の離脱を防ぐことができ,したがってスライドピース27のための特別な離脱防止手段が不要であり,組立性を良好にすると共に,構造の簡素化を図ることができる。しかも,上側面を開放面12eとした箱形の制御バルブ12内の収容空間は,上側面を開放面12eとした分,広い横断面を持つことになるので,制御バルブ12のコンパクト化を図りながら,その収容空間にコイルスプリング33及びスライドピース27を容易に収容することができる。
【0043】
続いて,電動モータ20を制御基体5のモータ取り付け孔19に嵌装した後,ボルト(図示せず)で電動モータ20を制御基体5に締結する。
【0044】
しかも制御バルブ12及びバルブガイド孔7の横断面が多角形であることから,キー及びキー溝のような特別回り止め手段を用いることなく制御バルブ12の回転を防ぎ,ねじ機構25の安定した作動を得ることができる。
【0045】
次に,図4に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0046】
この第2実施形態は,バルブガイド孔7及び制御バルブ12を,横断面が等脚台形となるように形成すると共に,それぞれの下底に制御内側面8a及び制御外側面8bを配置した点を除けば,前実施形態と同様の構成であり,図4中,前実施形態と対応する部分には同一の参照を付して,重複する説明を省略する。
【0047】
この第2実施形態によれば,出力軸20bの正転時又は逆転時,第1及び第2加圧部35a,35bの何れかが対応する第1受圧部36a又は第2受圧部36bに押圧力Fを加えたとき,第1受圧部36a又は第2受圧部36bに発生する制御内側面8aに平行な第2分力F2は,制御バルブ12をバルブガイド孔7の左右何れかの内側面に押圧するが,その内側面は,上端を内向きに傾斜させているので,その内側面では,上記第2分力F2を受けると,制御バルブ12に制御内側面8aに向かう反力を発生することになり,その結果,制御バルブ12の制御外側面8bを上記制御内側面8aに,より強く密着させ,制御内側面8a及び制御外側面8b間からの隙間排除の効果を高めることができる。
【0048】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば前記電動モータ20に代えてステップモータ,その他の形式のモータを使用することができる。またねじ軸29の先端がねじ孔28の行き止まり部28aに突き当たったときの制御バルブ12の基準位置では,制御バルブ12の全閉位置とすることもできる。またコイルスプリング33のコーンスプリング部33bは,その全体を大径端部33b1と同径の円筒状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
5・・・・・制御基体
7・・・・・バルブガイド孔
8a・・・・制御内側面
8b・・・・制御外側面
10・・・・計量孔
12・・・・制御バルブ
12a・・・制御壁
12c・・・前端壁
20・・・・電動モータ
20b・・・出力軸
25・・・・ねじ機構
26・・・・回り止め手段
27・・・・スライドピース
28・・・・ねじ孔
29・・・・ねじ軸
31・・・・第1スプリング座
32・・・・第2スプリング座
33・・・・コイルスプリング
35・・・・加圧突起
35a・・・第1加圧部
35a1・・加圧面
35b・・・第2加圧部
35b1・・加圧面
36・・・・受圧突起
36a・・・第1受圧部
36b・・・第2受圧部
図1
図2
図3
図4