(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心点からの各道路までの距離は、各道路までの最短距離、各道路の始点までの距離と終点までの距離との平均値、各道路における中央点までの距離、各道路の始点までの距離と終点までの距離のうちの短い方の距離、道路を構成する各リンクに対する最短距離、のうちの何れかであることを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
前記出発地側境界地点から前記目的地側境界地点までの通過領域走行経路の走行距離が大きいほど小さな係数を乗じることで、各通過領域走行経路の通過領域走行経路コストを補正するコスト補正手段を備え、
前記経路探索手段は、前記コスト補正手段による補正後の通過領域走行経路コストを用いて、前記各通過領域走行経路コストを求める、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
前記コスト補正手段は、前記出発地から前記通過領域を通り前記目的地までの走行経路の全走行距離に対する、前記通過領域走行経路の走行距離の値が大きいほど小さな係数を乗じることで、前記通過領域内の各道路の道路コストを補正する
ことを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のナビゲーション装置における好適な実施の形態について、
図1から
図11を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態のナビゲーション装置では、ユーザが通過したい場所を、特定の地点や道路で指定するのではなく、領域を指定するだけでその領域を通過する経路探索を行う。
図1は、本実施形態による、領域を通過する走行経路探索の方法について表したものである。
図1に表したように、ユーザは、出発地Sと目的地Gを指定すると共に、画面表示された地図上で通過領域Aを指定する。この通過領域Aは、画面上で2点を指定することで、指定された2点間を半径とする円形領域として指定されるが、2点間を直径とする円形領域や、2点間を対角線とする方形領域として指定するようにしてもよい。また、予め規定されている領域(例えば、花見ができる地域を規定した領域)の領域名を指定することで通過領域が指定されるようにしてもよい。
【0010】
ナビゲーション装置では、出発地Sから指定された通過領域Aを通過し目的地Gに到達する全てのパターンについての経路探索を行うと、膨大な量になってしまう。例えば、
図1に示されるように、通過領域Aの境界と道路とが交差する境界地点の数が9であったとすると、出発地Sから境界地点までの9経路と、通過領域Aに進入する9の境界地点から退出する9の境界地点までの81経路と、退出する9の境界地点から目的地Gまでの9経路の合計99回の経路探索を行う必要がある。
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、指定された通過領域Aの全境界地点のうち、出発地側境界地点s1〜s3と、目的地側境界地点g1〜g4を決定し、出発地Sから各出発地側境界地点s1〜s3までの3経路(目的地側走行経路)、各出発地側境界地点s1〜s3から各目的地側境界地点g1〜g4までの12経路(通過領域走行経路)、及び、各目的地側境界地点g1〜g4から目的地までの4経路(目的地側走行経路)の合計19回の経路探索を行うことで、効率良く経路探索を行うことができる。
そして、ナビゲーション装置では、3つの目的地側走行経路と、12の通過領域走行経路、及び、4つの目的地側走行経路の各組み合わせのうち、合計コストが最小となる組を、出発地Sから通過領域Aを通り目的地Gに至る走行経路とする。
【0011】
出発地側境界地点s1〜s3と、目的地側境界地点g1〜g4は次のようにして決定する。
図1に示すように、設定された出発地Sから通過領域Aに対して2本の接線を引き、両接線に挟まれている出発地S側の通過領域Aの境界線上にある境界地点を、出発地側境界地点s1〜s3とする。
同様に、目的地Gから通過領域Aに対して引いた2本の接線に挟まれている、目的地G側の通過領域Aの境界線上にある境界地点を目的地側境界地点g1〜g4とする。
【0012】
(2)実施形態の詳細
図2は本実施形態が適用されるナビゲーション装置の構成図である。
ナビゲーション装置は、
図2に示すように、現在位置検出装置10、情報処理制御装置20、入出力装置40及び情報記憶装置50とを備えている。
現在位置検出装置10は、方位センサ12、距離センサ13、GPS受信装置14を備え、それぞれ以下のように構成されている。
方位センサ12は、基準角度(絶対方位)に対して、相対的に変化した角度を検出する手段であり、本実施形態では、角速度を利用して角度の変化を検出するジャイロセンサを使用している。なお、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム或いは車輪部に取り付ける角度センサでもよい。また、方位センサ12として、例えば、磁石に基づいてN方向の検出から、車両がいずれの方向に位置するかを検出する地磁気センサであり、絶対方位を検出する手段であってもよい。
【0013】
距離センサ13は、車両の移動距離を計測できる手段であり、例えば、車輪の回転を検出して計数するものや、加速度を検出して2回積分するものを使用する。
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信装置14は、人工衛星からの信号を受信する装置であり、信号の発信時刻、受信装置の位置情報、受信装置の移動速度、受信装置の進行方向など様々な情報を得ることができる。
【0014】
情報処理制御装置20は、現在位置検出装置10、入出力装置40から入力される情報及び情報記憶装置50に格納された情報に基づいて演算及び制御を行うとともに、演算結果をディスプレイ42やスピーカ43等の出力手段に出力するように制御する手段である。
【0015】
この情報処理制御装置20は、以下のように構成されている。
中央処理装置(CPU)21は、ナビゲーション装置全体の総括的な演算及び制御を行う。
ROM22は、目的地までの経路の探索、表示案内や音声案内等のナビゲーションに関するプログラムや、本実施形態による通過領域指定探索処理プログラム等の各種プログラムを格納している。
センサ入力インターフェイス23は、現在位置検出装置10からの情報を受け取る手段である。
【0016】
RAM24は、入力装置41により入力された目的地の情報、通過地点の情報等の利用者が入力した情報を記憶すると共に、利用者の入力情報に基づいてCPU21により演算された結果や、経路探索された結果、または情報記憶装置50から読み込まれた地図情報を格納するための記憶手段である。
例えば、入力された出発地S、目的地G、通過領域A、通過領域Aの境界上に位置する出発地側境界地点sと目的地側境界地点g、これら各地点S、s、g、G間について算出した走行経路のコスト、各出発地Sから通過領域Aを通り目的地Gまで探索した各走行経路についての総走行経路コスト、最小走行経路コスト、等がRAM24に記憶される。
【0017】
通信インターフェイス25は、伝送路45を介して各種情報を入出力するための手段である。具体的には、伝送路45を介して、GPS受信装置14、入力装置41、情報記憶装置50が接続される。
時計28は、例えば、水晶振動子などを用いて構成されており、時刻を刻んだり、発振によってナビゲーション装置の各部の動作タイミングを提供したりする。
その他、CPU21で処理されたベクトル情報を画像情報に処理するための画像処理専用の画像プロセッサ、画像プロセッサで処理された画像情報を格納する画像メモリ、情報記憶装置50から読み込まれた音声情報を処理しスピーカ43に出力する音声処理専用の音声プロセッサを配設するようにしてもよい。
【0018】
入出力装置40は、利用者により目的地、通過地点、探索条件等のデータを入力する入力装置41、画像を表示するディスプレイ42、音声を出力するスピーカ43より構成される。
入力装置41は、例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、ジョイスティック、キースイッチ等で構成される。入力装置41のユーザ操作により出発地Sや目的地Gが入力されたり、通過領域Aが指定されたりする。
ディスプレイ42には、現在地周辺の地図や、目的地までの走行経路が表示される。
【0019】
情報記憶装置50は、伝送路45を介して情報処理制御装置20に接続される。
情報記憶装置50は、地図データファイル51、その他のデータファイル52(例えば、走行経路を音声により案内する場合の音声データ等)を格納している。
この情報記憶装置50は、一般的には、光学的記憶媒体であるDVD−ROM、CD−ROMや磁気的記憶媒体であるハードディスクなどで構成されるが、光磁気ディスク、各種半導体メモリなどの各種情報記憶媒体で構成してもよい。
なお、書き換えが必要な情報については、書き換え可能なハードディスク、フラッシュメモリなどで構成し、その他の固定的な情報についてはCD−ROM、DVD−ROMなどのROMを使用するようにしてもよい。
【0020】
地図データファイル51には、ナビゲーションにおける地図表示、経路探索、経路案内に必要な各種データとして、地図データ、道路データ、見どころ領域指定マップ、目的地データ、案内地点データ、詳細目的地データ、その他のデータが記憶されている。
地図データとしては、全国道路地図、各地域の道路地図または住宅地図等が記憶されている。道路地図は、主要幹線道路、高速道路、細街路等の各道路と地上目標物(施設等)から構成される。住宅地図は、地上建造物等の外形を表す図形及び、道路名称等が表示される市街図である。細街路とは、例えば、国道、県道以下の道幅が所定値以下の比較的狭い道路である。
地図データは、車両現在位置やユーザに指定された地点を含む、所定縮尺による一定範囲の地図がディスプレイ42に表示される。この地図上には、車両の現在位置や指定された地点が表示される。
道路データは、各道路の位置と種類及び車線数及び各道路間の接続関係等の道路に関するデータで、ノード情報とリンク情報で構成される。この道路データは、経路探索やマップマッチングに使用されると共に、探索した走行経路を地図データ上に重ねて表示する場合にも使用される。
【0021】
見どころ領域指定マップは、ユーザが通過領域Aとして指定可能な「見どころ領域」について、予め用意されているデータである。
この見どころ領域指定マップには、後述する
図4(c)に示されるように、桜、梅、菖蒲等の自然を鑑賞することが可能な、自然領域、寺社や城下町等の建造物を観察することが可能な建造物領域等の、当該領域を車両で走行することにより特定の自然や建造物などを観察することができる、各種見どころ領域について規定されている。
見どころ領域指定マップは、各見どころをユーザが指定する際に画面表示される見どころの「名称」と共に、各見どころ領域の境界を規定する座標値が保存される。
なお、ユーザが通過領域Aとして見どころ領域を指定する場合には、地域やカテゴリから順次絞り込みながら検索する場合のほか、入力された出発地Sと目的地Gを結ぶ直線距離から所定距離Nkm以内に存在する「見どころ領域」を抽出、表示することで、ユーザが選択するようにしてもよい。
【0022】
次に、以上のように構成されたナビゲーション装置による、通過領域指定探索処理の動作について説明する。
図3は、通過領域指定探索処理の内容を表したフローチャートである。
ナビゲーション装置のCPU21は、出発地S、目的地G、通過領域Aを取得する(ステップ11)。
出発地Sと目的地Gは、ユーザが入力装置41から入力した出発地S、目的地Gを取得する。但し、ユーザ入力が現在値を指定した場合、又は、出発地Sの入力がない場合、CPU21は、現在位置検出装置10で検出した車両の現在位置を出発地Sとして取得する。
一方、通過領域Aは、ユーザがディスプレイ42に表示されている地図、又は見どころ領域指定マップを見ながら指定した領域を通過領域Aとして取得する。
【0023】
図4は、ユーザによる通過領域Aの各種指定方法について表したものである。
本実施形態では、
図4(a)に示す方法によるが、(a)の方法に変えて(b)、(c)の方法とすることも可能であり、またいずれか2つ、又は3つの方法、更に他の方法を含めた中からユーザが指定方法を選択した上で通過領域Aを指定するようにしてもよい。
図4(a)の通過領域Aの指定方法では、ユーザが指で入力装置41の画面上の2点を指定し、CPU21は、最初に指定された点を中心とし、次に指定した点を通る円形領域を通過領域Aとして取得する。
なお、この方法では、ユーザが指定した2点間を半径とする円形領域が取得されるが、ユーザが指定した2点を通り、両点間の距離を直径とする円形領域を通過領域Aとして取得するようにしてもよい。また指定された2点を焦点とする楕円を通過領域Aとして取得するようにしてもよい。
【0024】
図4(b)の通過領域Aの指定方法では、CPU21は、ユーザが指定した2点を対角点とする方形領域を通過領域Aとして取得する。
その他、ユーザが3点以上の点を指定し、CPU21は、指定された各点を指定順に結ぶことで通過領域Aを取得するようにしてもよい。また複数の点を指定するのではなく、ユーザが画面を指定したまま画面上を移動させることで囲んだ任意の閉領域を通過領域Aとして取得するようにしてもよい。
【0025】
図4(c)の通過領域Aの指定方法では、ユーザが見どころ領域の指定を入力装置41から選択すると、CPU21は、ユーザが選択するカテゴリや階層に従って絞り込み、見どころ領域の名称を見どころリストとして画面表示する。
そしてCPU21は、表示した見どころリストからユーザによって最終的に選択された見どころに対応する領域データを地図データファイル51から読み取ることで、通過領域Aを取得する。
【0026】
図3に戻り、CPU21は、通過領域Aに対して接線を引く(ステップ12)。
すなわち、CPU21は、
図1に示すように、出発地Sと目的地Gの両地点から、通過領域Aを挟むように、それぞれ2本ずつの接線を引く。
なお、この接線は仮想の接線であり、出発地S、目的地Gを通るそれぞれ2本の直線が通過領域Aと接する点(合計4接点)を求める処理であってもよい。
いずれの場合であっても当該処理は内部処理として行われ、仮想の接線や接点はディスプレイ42には表示されない。
【0027】
そして、CPU21は、通過領域A上の境界地点s、gを抽出する(ステップ13)。
すなわち、CPU21は、
図1に示すように、指定された通過領域Aの全境界地点のうち、出発地Sを通る2本の接線に挟まれた出発地S側の出発地側境界地点s(
図1の例ではs1〜s3)を抽出すると共に、目的地Gを通る2本の接線に挟まれた目的地G側の目的地側境界地点g(
図1の例ではg1〜g4)を抽出する。
【0028】
CPU21は、出発地Sから各出発地側境界地点sのそれぞれに対し走行経路探索を実施する(ステップ14)。
すなわち、
図1の例では、CPU21は、出発地Sから出発地側境界地点s1〜s3の3地点をそれぞれ仮目的地とする走行経路探索を行い、出発地Sから出発地側境界地点s1〜s3までの3つの出発地側走行経路と、各々の出発地側走行経路コストを、RAM24に保存する。
【0029】
CPU21は、各出発地側境界地点sのそれぞれから、各目的地側境界地点gのそれぞれに対し走行経路探索を実施する(ステップ15)。
すなわち、
図1の例では、CPU21は、出発地側境界地点s1〜s3の3地点をそれぞれ仮出発地とし、各目的地側境界地点g1〜g4をそれぞれ仮目的地とする走行経路探索を行い、12の通過領域走行経路と、各々の通過領域走行経路コストを、RAM24に保存する。
【0030】
さらに、CPU21は、各目的地側境界地点gのそれぞれから目的地Gに対し走行経路探索を実施する(ステップ16)。
すなわち、
図1の例では、CPU21は、目的地側境界地点g1〜s4の4地点をそれぞれ仮出発地とし、目的地Gまでの走行経路探索を行い、4つの目的地側走行経路と、各々の目的地側走行経路コストを、RAM24に保存する。
なお、以上のステップ14〜16の各走行経路探索については、何れの順番で行うようにしてもよく、また並列処理によることも可能である。
【0031】
次にCPU21は、最小走行経路コストを初期化する(ステップ17)。
そして、CPU21は、ステップ18〜ステップ18−2による出発地側境界地点数のループと、当該ループ内でのステップ19〜ステップ19−2による目的地側境界地点数のループとにより、ステップ20〜ステップ23の処理を行う。
これにより、出発地S、出発地側境界地点s1〜s3、目的地側境界地点g1〜g4、及び目的地Gの各地点間に対して算出した走行経路コストから、各出発地Sから通過領域Aを通り目的地Gまでの各走行経路に対する総走行経路コストの最小値を求める。
【0032】
図5は、RAM24に保存される各走行経路コストを表したものである。
図5に示すように、No1〜12は、出発地Sから通過領域Aを通り目的地Gまでの各走行経路であり、各地点間の走行経路コストと、その合計値である総走行経路コストが表わされている。通過領域Aに対する出発地側境界地点s1〜s3、目的地側境界地点g1〜g4については、
図1の例に従っている。
【0033】
この
図5に示すように、ステップ18〜18−2のループの最初に出発地側境界地点s1が選択され、このs1に対して目的地側境界地点g1〜g4のうちのg1がステップ19〜19−2の最初に選択されることで、出発地S〜出発地側境界地点s1〜目的地側境界地点g1〜目的地Gの走行経路1が選択される。
そして、CPU21は、当該ループにおいて選択した走行経路に対する、総走行経路コスト=出発地側走行経路コスト+通過領域走行経路コスト+目的地側走行経路コストを算出する(ステップ20)。
すなわち、走行経路1の場合、出発地側走行経路コスト=300、通過領域走行経路コスト=250、目的地側走行経路コスト=400から、総走行経路コスト=950が算出される。
【0034】
そして、CPU21は、RAM24の最小走行経路コストが初期値か否かを判断し(ステップ21)、初期値でなければ(ステップ21;N)、算出した総走行経路コストが最小走行経路コスト未満であるか否かを判断する(ステップ22)。
総走行経路コストが最小走行経路コスト未満であれば(ステップ22;Y)、RAM24の最小走行経路コストを、ステップ20で算出した総走行経路コストに更新する(ステップ23)。
【0035】
ステップ21において、最小走行経路コストが初期値である場合(ステップ21;Y)、CPU21は、RAM24の最小走行経路コストを初期値から総走行経路コストに更新する(ステップ23)。
なお、ステップ17の初期化の際に設定する初期値として、想定しうる最大のコストよりも大きな値を設定しておくことで、ステップ20で算出した最初の走行経路1に対する総走行経路コストは、常に初期値未満となるので、ステップ21を省略するようにしてもよい。
例えば、北海道最北端の「宗谷岬」を出発地とし、最東端の「納沙布岬」を経由して、九州最南端の「佐多岬」を目的地とする、高速道路を使用しない走行経路の総走行経路コストをMとした場合、2Mを初期値として設定する。
【0036】
総走行経路コストが最小走行経路コスト以上である場合(ステップ22;N)、及び、最小走行経路コストを更新(ステップ23)した後、CPU21は、ステップ20〜ステップ23の処理を、目的地側境界地点数と、出発地側境界地点数だけ繰り返す(ステップ19−2、18−2)。
【0037】
以上の処理を
図5に示した走行経路1〜12を例に説明すると、最初のループにおいてCPU21は、走行経路1の総走行経路コスト950を算出し(ステップ20)、最小走行経路コストが初期値から950に更新する(ステップ21;Y→ステップ23)。
次のループにおいてCPU21は、走行経路2の総走行経路コスト900が、当該ループでの最小走行経路コスト950未満なので(ステップ22;Y)、最小走行経路コストを900に更新する。
次の走行経路3でも同様に、CPU21は、総走行経路コスト880が、当該ループでの最小走行経路コスト900未満なので(ステップ22;Y)、最小走行経路コストを880に更新する。
そして、CPU21は、次の走行経路4の総走行経路コスト1100は、当該ループでの最小走行経路コスト880以上なので(ステップ22;N)、更新することなく次のループに移行する。
【0038】
以上で、出発地側境界地点s1に対する全ての目的地側境界地点についてのループが完了したので、次の出発地側境界地点s2に対する各目的地側境界地点についてのループ、すなわち、走行経路5〜8について順次処理する。
そして、CPU21は、全ループが完了した時点でRAM24に保存されている最小走行経路コストに対応する走行経路を、取得した出発地Sから通過領域Aを通過して目的地Gに至るまでの走行経路に決定し(ステップ24)、メインルーチンにリターンする。
なお、
図5の例では、最小走行経路コスト880に対応する走行経路3、すなわち、
図1の出発地Sから出発地側境界地点s1と目的地側境界地点g3を通り目的地Gに至る走行経路に決定される。
【0039】
以上説明したように本実施形態のナビゲーション装置によれば、
図1に示すように、通過したい大まかな領域を通過領域Aとして画面上で指定したり、予め規定されている見どころエリアを選択すればよいので、ユーザ操作を軽減することができる。
また、ナビゲーション装置は、指定された通過領域Aの境界線上に位置する全ての境界地点を領域の進入地点、退出地点として走行経路を探索をするのではなく、全境界地点のうち出発地Sに面した側の境界地点、目的地Gに面した側の境界地点に限定することで、走行経路探索の回数を少なくし、処理負担を軽減することができる。
【0040】
以上、本発明のナビゲーション装置における1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、ステップ15で実施した、各出発地側境界地点sから各目的地側境界地点gまでの全ての通過領域走行経路を対象として、ステップ20の総走行経路コストを算出する場合について説明した。
これに対して、各出発地側境界地点sから各目的地側境界地点gまでの全ての通過領域走行経路のうち、通過領域走行経路コストが所定の閾値以下となる通過領域走行経路を総走行経路コストの算出対象外としてもよい。
これは、総走行経路コストが最小となる走行経路を決定するにあたり、通過領域走行経路の距離が短いと、通過領域走行経路コストも小さくなり、結果として最小の総走行経路コストとなる可能性が高くなる。
例えば
図4(b)のように方形の通過領域が指定された場合に、1の頂点を挟む両辺の頂点近くにそれぞれ出発地側境界地点sと目的地側境界地点gが存在する場合が該当する。
しかし、このような場合にはユーザが指定した通過領域Aを通過はしているが、必ずしもユーザが短い距離の通過を望んでいない可能性も高いと考えられる。
そこで、指定された通過領域A内を走行する距離(通過領域走行経路の距離)が所定の閾値以下となる通過領域走行経路を対象外とするものである。
【0041】
この変形例の場合、例えば、所定の閾値としては、ユーザが閾値を設定してもよく、また予めデフォルト値として設定しておいた値を使用してもよいし、ユーザが閾値を設定しない場合にデフォルト値を使用するようにしてもよい。
さらに、ユーザの設定ではなく、ナビゲーション装置が自動的に閾値を選択するようにしてもよい。例えば、ユーザによる2点の指定により通過領域Aを取得した場合、CPU21は、指定された2点間の距離Lを基準として、例えば、L/2等の値を閾値を決定する。
【0042】
また、説明した実施形態では、車両に搭載されるナビゲーション装置を例に説明したが、ナビゲーション機能を搭載した携帯電話、PDA、スマートフォン、ノート型パソコン等の各種端末装置をナビゲーション装置として適用することも可能である。これらの携帯端末装置を歩行者が使用し、または、車両は二輪車等に搭載しながら使用するようにしてもよい。
【0043】
更に、説明した実施形態では、車両に搭載されるナビゲーション装置を対象とし、入力装置41から入力された出発地S、通過領域A、目的地Gを取得することで、走行経路探索を行う場合について説明した。
これに対して、ナビゲーションセンタ等のサーバ装置において、
図3で説明した通過領域指定探索処理を実行するようにしてもよい。
この場合サーバ装置では、車載ナビゲーション装置や上記ナビゲーション機能を備えた端末装置から受信することで、出発地S(現在位置を出発地とする場合には端末装置で求めた現在位置)、通過領域A、目的地Gを取得する。
【0044】
次に第2実施形態及び第3実施形態について説明する。
この第2、第3実施形態では、通過領域Aの端をかすめるだけの通過領域走行経路ではなく、通過領域A内では適切な距離を走行する経路が選択されるようにするため、通過領域A内の各道路や、通過領域走行経路に対するコストを補正するものである。
なお、この第2実施形態、第3実施形態におけるナビゲーション装置の構成は、
図2で説明した第1実施形態と同様である。
【0045】
図6は、出発地、目的地、及びユーザが指定した通過領域Aを表したものである。この第2実施形態、第3実施形態では、
図6に示した通過領域A内の道路や通過領域走行経路に対するコストの補正について説明する。
なお、
図6に示した、出発地側境界地点s1〜s3、目的地側境界地点g1〜g5については、第1実施形態と同様にして決定されるものとする。
また、
図6以降の説明では通過領域Aとして円が指定された場合について表しているが、第1実施形態と同様に方形領域や予め規定されている領域名の指定をすることも可能であり、その指定方法も第1実施形態と同様である。
【0046】
図7は、
図6で指定された通過領域Aを通る各走行経路の走行経路コストについて、第1実施形態の方法により求めたものである。
図6からも理解されるように、通過領域走行経路として出発地側境界地点s1から目的地側境界地点g1の通過領域走行経路は、他の通過領域走行経路の距離よりもかなり短い。
このため
図7に示されるように、出発地側境界地点s1から目的地側境界地点g1を通るNo1の通過領域走行経路コストは300であり、他の通過領域走行経路コストが600〜1250であるのに比べてかなり小さいため、総走行経路コストが1600で最小値となる。
その結果、
図6に示されるような領域Aが指定された場合には、最小総走行経路コスト1600に対応する走行経路1、すなわち、
図6の出発地Sから出発地側境界地点s1と目的地側境界地点g1を通り目的地Gに至る走行経路が決定されてしまうことになる。
【0047】
そこで、第2実施形態では、中心近くを通る通過領域走行経路が選択されやすくするために、通過領域Aの中心から各道路までの距離が小さいほど道路コストが小さくなるように補正する。
図8は、通過領域A内に存在する各補正単位となる道路の道路番号と、各道路のコスト及び中心から各道路までの距離、及び補正後の道路コストを表したものである。
図8(a)に示されるように、補正単位となる各道路は、通過領域内に存在する各交差点間の道路、及び交差点から出発地側境界地点sまでの道路、及び交差点から目的地側境界地点gまでの道路が対象となる。
図8(
図6)の例では、道路R1〜R13の各々が補正対象となる。
図8(b)に示す道路コストは、本実施形態では第1実施形態でコストを算出している場合と同様に、道路の距離を道路コストとして使用しているが、道路の途中や始点、終点に信号機が存在する場合に信号機コストを加算する等の修正をする場合には同様にして算出した道路コストを使用する。
【0048】
中心Pからの距離について本実施形態では、中心Pから対象となっている道路上の各点までの距離のうちの最短距離を、中心Pから当該道路までの距離としているが、次の値を採用するようにしてもよい。
(a)中心Pから、当該道路の始点までの距離と終点までの距離との平均値
(b)中心Pから、当該道路における中央点までの距離
(c)中心Pから、当該道路の始点までの距離と終点までの距離のうちの短い方の距離
(d)中心Pから、当該道路を構成する各リンクに対する最短距離
【0049】
また、中心Pについては、通過領域Aの形状が、
図4(a)で示すように円形である場合にはその中心点、
図4(b)で示すように方形である場合には2対角線の交点、
図4(c)で示すように任意の形状である場合にはその平面重心点、通過領域が指定された2点を焦点とする楕円である場合には両焦点の中間点、をそれぞれ中心点Pとする。
【0050】
通過領域A内の各道路に対する道路コストの補正値(補正後の新道路コスト)Kは、次の式1により算出される。
K=k×(L1/L2)…式1
ここで、kは補正前の道路コスト、L1は中心Pから当該道路までの距離である。
またL2は、通過領域Aの大きさにより決まる基準距離で、中心Pから通過領域Aまでの距離の最大値である。
なお、基準距離L2は
図8のように通過領域Aの形状が円である場合にはその半径であり、
図4(b)のように方形である場合には中心Pから頂点までの距離である。
【0051】
図8の例において、基準距離L2(半径)を500(m)とすると、各道路について補正した補正コストは
図8(b)に示す値となる。
例えば、中心Pからの距離が大きい道路R1の場合、補正前の道路コストk=300に対し、中心Pからの距離L1=400なので、K=300×(400/500)=240となる。
一方、中心Pからの距離が小さい道路R5の場合、k=300、L1=30なので、K=300×(30/500)=18となる。
このように、道路R1とR5は共にその距離が300mで道路コストが300と同じ値であるが、中心Pから離れている道路R1は補正後の道路コストが240であるのに対し、中心Pに近い道路R5は補正後の道路コストが18とかなり小さな値となる。これにより、中心Pに近い道路の道路コストがより小さな値となることで、中心Pの近くを通る道路が選択されやすくなる。
【0052】
図9は、各道路の道路コストを中心からの距離に応じて補正した新道路コストを反映させた場合(b)と反映させない場合(a)の、各走行経路に対する走行走行経路コストとその順位(小さい順)を対比して表したものである。
図9(a)に示すように、道路コストの補正を行わない場合(
図7と同じ)には、総走行経路コストが1600と最も小さい走行経路1、すなわち、
図8の出発地Sから出発地側境界地点s1と目的地側境界地点g1を通り目的地Gに至る経路が走行経路に決定される。
この出発地側境界地点s1と目的地側境界地点g1を通る通過領域走行経路は、通過領域Aを走行する距離が300mと短いため好ましくない、走行経路の決定となっている。
【0053】
これに対して
図9(b)に示されるように、中心Pからの距離に基づいて補正した道路コストから算出した各通過領域走行経路コストを使用した場合、総走行経路コストの最小値は、出発地側境界地点s2と目的地側境界地点g4を通る走行経路4(総走行経路コスト1345)となり、走行経路4が決定される。
一方、補正しない場合の総走行経路コストが最小値であった走行経路1は、補正した新道路コストを反映させることで、総走行経路コストが8番目の1540となっている。
【0054】
このように、第2実施形態によれば、通過領域A内の各道路に対して、中心Pからの距離が短いほど小さな係数を乗ずる補正をすることにより、通過領域Aの端部を走行する通過領域走行経路よりも、中心Pの近くを走行する通過領域走行経路が選択されやすくなるため、ユーザが設定した通過領域Aを適切距離だけ走行する走行経路を選択することができる。
【0055】
次に第3実施形態について説明する。
この第3実施形態では、出発地側境界地点sから目的地側境界地点gまでの通過領域走行経路の走行距離が大きいほど小さな補正係数γを乗じる補正を行うことで、通過領域A内の走行距離が適度な大きさの通過領域走行経路が決定されやすくするものである。
具体的には、出発地Sから目的地Gまでの全走行距離をL3、通過領域走行経路の走行距離をL4、通過領域走行経路以外の距離をL5とした場合、補正係数γ=L5/L3とする。
ここでL5=L3−L4であるから、補正係数γ=L5/L3=(L3−L4)/L3となる。すなわち、補正係数γは、通過領域走行経路の走行距離L4が大きいほど小さな値となる。
【0056】
従って、次の式2に従い、通過領域走行経路のコスト(通過領域走行経路コスト)C1に係数L4/L3を乗じることで、補正後の通過領域走行経路コストC2を求める。
C2=C1×(L4−L3)/L3…式2
【0057】
図10は、第3実施形態により、通過領域Aを通る各通過領域走行経路に対する通過領域走行経路コストを、上記式2で補正した後の通過領域走行経路コスト(新コスト)を表した表である。
なお、
図10では、
図6、
図8で表した通過領域Aの走行経路を対象として算出している。
図10において、例えば、通過領域走行経路1の場合、通過領域走行経路コストC1=300、通過領域走行経路の距離=300、全体距離=1600である。
補正後の通過領域走行経路コスト(新コスト)C2は、式2から次の通りである。
C2=300×(1600−300)/1600=244
【0058】
また、補正前の通過領域走行経路コストが最も大きい通過領域走行経路5の場合、通過領域走行経路コストC1=1250、通過領域走行経路の距離=1250、全体距離=2450であるから、補正後の通過領域走行経路コスト(新コスト)C2は、式2から次の通りである。
C2=1250×(2450−1250)/2450=244
【0059】
図11は、式2による補正後の各通過領域走行経路コストC2(新コスト)を反映させた場合(b)と反映させない場合(a)の、各走行経路に対する走行走行経路コストとその順位(小さい順)を対比して表したものである。
図10(a)に示すように、道路コストを補正を行わない場合(
図7、
図9(a)と同じ)には、総走行経路コストが1600と最も小さい走行経路1、すなわち、
図8の出発地Sから出発地側境界地点s1と目的地側境界地点g1を通り目的地Gに至る経路が走行経路に決定される。
これに対して
図10(b)に示されるように、
図10(a)で示す補正係数γによる補正後の各通過領域走行経路コストを使用した場合、総走行経路コストの最小値は、出発地側境界地点s2と目的地側境界地点g4を通る走行経路4(総走行経路コスト1535)となり、走行経路4が決定される。
一方、補正しない場合の総走行経路コストが最小値であった走行経路1は、補正した新道路コストを反映させることで、総走行経路コストが2番目の1544となっている。
【0060】
このように、第3実施形態によれば、通過領域A内の各道路に対して、通過領域走行経路の走行距離が大きいほど小さな係数γを乗じる補正を行った各通過領域走行経路コストを使用することにより、通過領域の走行距離が短かい場合や長い場合に選択されにくくなる。これは、通過領域の走行距離が短い場合には補正係数が大きくなるため、長い場合には補正係数は小さくなるが全体の走行距離が長くなるためである。
このため、第3実施形態によれば、適度な距離を走行する通過領域走行経路が選択されやすくなり、ユーザが設定した通過領域Aを適切距離だけ走行する走行経路を選択することができる。
【0061】
以上説明した第2実施形態、第3実施形態における、通過領域指定探索処理については、第1実施形態において
図3で説明した処理のステップ20を除き同様に行われる。
ステップ20において、CPU21は、各ループで選択した走行経路に対する、総走行経路コスト=出発地側走行経路コスト+補正後の通過領域走行経路コスト+目的地側走行経路コストを算出する。
すなわち、第2実施形態の場合には、
図8(b)に示すように数式(1)で補正した各道路コストKを用いて補正した補正後の通過領域走行経路コストを使用して総走行経路コストが算出される(
図9(b)参照)。
また大3実施形態の場合には、数式2で補正した後の通過領域走行経路コストC2を使用して、総走行経路コストが算出される(
図11(b)参照)。
【0062】
なお、以上説明した第2実施形態、第3実施形態では、
図3のステップ15で探索した、各出発地側境界地点sから各目的地側境界地点gまでの全ての通過領域走行経路を総走行経路コストの算出対象とする場合について説明した。
第2実施形態、第3実施形態に対しては、第1実施形態で説明した各種変形例を適用するようにしてもよい。
例えば、各出発地側境界地点sから各目的地側境界地点gまでの全ての通過領域走行経路のうち、通過領域走行経路コストが所定の閾値以下となる通過領域走行経路を総走行経路コストの算出対象外とし、閾値を越える通過領域走行経路に対して通過領域走行経路コストの補正と、総走行経路コストの算出を行い、最小走行経路コストの決定を行うようにしてもよい。