(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
“読む”という行為をストレス無しに行い得る表示装置として、電子書籍や電子新聞などと呼ばれる電子ペーパー表示装置の開発が行われている。この種の電子ペーパー表示装置は、薄型で、軽量で、割れづらく、その上、低消費電力であることが要求されるため、メモリ性を有する表示素子で構成されることが好ましい。メモリ性を有する表示装置に用いられる表示素子としては、電気泳動表示素子やコレステリック液晶などが知られているが、近年は、2種類以上の帯電粒子を用いた電気泳動表示素子が注目されている。
【0003】
白黒表示のアクティブマトリクス駆動方式の電気泳動表示装置について、説明する。この電気泳動表示装置は、TFTガラス基板と、電気泳動表示素子フィルムと、対向基板とが、この順に積層されて構成されている。上記TFTガラス基板には、マトリクス状に多数配列されたスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)と、各TFTにそれぞれ接続される画素電極、ゲート線、データ線が設けられている。上記電気泳動表示素子フィルムは、ポリマのバインダ中に約40μmのマイクロカプセルが敷き詰められて形成されている。このマイクロカプセル内部には溶媒が注入されており、溶媒中には、正負に帯電した2種類のナノ粒子、すなわちマイナスに帯電した酸化チタン粒子などの白色顔料と、プラスに帯電した炭素粒子などの黒色顔料とが、分散浮遊する状態で封じ込められている。また、上記対向電極には、基準電位を与える対向電極が形成されている。
【0004】
この電気泳動表示装置は、画素データに対応した電圧を、画素電極と対向電極との間に印加して、白色顔料と黒色顔料とを上下に移動させることで動作する。すなわち、画素電極にプラスの電圧を印加したときは、マイナスに帯電した白色顔料が画素電極に寄り集まる一方で、プラスに帯電した黒色顔料は対向電極に集まるので、対向電極側を表示面とした場合は、画面には黒が表示される(以下述べる例は、全て対向電極側を表示面として説明する。)。これに対して、画素電極にマイナスの電圧を印加したときは、プラスに帯電した黒色顔料が画素電極に寄り集まる一方で、マイナスに帯電した白色顔料が対向電極に集まるので、画面には白が表示されることになる。
【0005】
すなわち、画像を白表示から黒表示に切り替えるときには、画素電極にプラスの信号電圧を印加し、黒表示から白表示に切り替えるときには、画素電極にマイナスの信号電圧を印加し、現在の画像を維持するとき、つまり白表示から白表示へ、黒表示から黒表示へ表示するときには、0[V]を印加する。このように、電気泳動表示素子は、メモリ性を持っているので、現画面(前画面)と次画面(更新画面)とを比較することで、印加すべき信号が決定される。
【0006】
さて、以上では白黒表示のマイクロカプセル型電気泳動表示装置について説明したが、電気泳動表示素子の紙に近い白黒の優れた表示性能を損なわずに、カラー表示ができる電気泳動表示装置が近年、開発されている。これらの表示装置では、電界に感度のない無帯電(又は微弱帯電の)粒子と、電界に感度があって同極性又は逆極性の複数の粒子とを、溶媒中に用いて、無帯電粒子の色及び各帯電粒子の色を表示することにより、白黒及びカラーを表示するものである(特許文献1、2参照)。
【0007】
例えば、特許文献1で述べられているカラー電気泳動表示装置は、一対の基板と、該一対の基板の間隙に封入された溶媒と、溶媒に含まれ、正負いずれかに極性帯電した、互いに色の異なる3色(例えば、シアンC、マジェンタM、イエローY)の電気泳動粒子と、無帯電の白色粒子(W)と、から構成されている。これらの色の異なる3色の電気泳動粒子は移動を開始するしきい値電圧がそれぞれ異なるため、各々のしきい値電圧の違いを利用して電圧を印加すれば、1つのセルで、白色(W),黒色(K)の他にシアン(C)、マジェンタ(M),イエロー(Y)やこれらCMYの2次色、3次色が表示できる。
【0008】
これら帯電粒子C,M,Y及び白粒子Wを同一画素電極に置いて、しきい値電圧の違いを利用してカラー表示をする駆動方法について、
図18を参照にして説明する。以下、帯電粒子C,M,Yのしきい値電圧を、それぞれVth(c),Vth(m),Vth(y)として、|Vth(c)|<|Vth(m)|<Vth(y)の関係を仮定する。また、印加電圧V1,V2,V3は、|Vth(c)|<|V3|<|Vth(m)|,|Vth(m)|<|V2|<|Vth(y)|,|Vth(y)|<|V1|の関係を満たすものとする。
【0009】
図18は、帯電粒子C,M,Yのヒステリシス曲線を表しており、印加電圧(しきい値電圧)と相対色濃度との関係を表している。なお、同図において、説明を簡単にするために、各ヒステリシスY,nY,M,nM,C,nCの傾きは一定になるように、帯電粒子Y,M,Cが背面から表示面へ移動するまでの移動時間はそれぞれ異なる時間になるように設定している。例えば、駆動電圧が低消費電力の要求を最低限満たすように帯電粒子の材料設計を行った場合、|Vth(c)|≒7[V]、|Vth(m)|≒12[V],|Vth(y)|≒28[V]となり、駆動電圧は|V3|=10[V],|V2|=15[V],|V1|=30[V]と設定する必要がある。
【0010】
図18において、始め(前)の画面を白(W)とする。電圧+V3を印加したときは、シアン色(C)の電気泳動粒子が表示面側に移動するので、シアンが表示される。電圧+V2を印加したときは、シアン色(C)及びマジェンタ色(M)の電気泳動粒子が表示面側に移動するので、青(B)が表示される。また、電圧+V1を印加したときは、シアン色(C)、マジェンタ色(M)及びイエロー色(Y)の電気泳動粒子が表示面側に移動するので、黒(K)が表示される。また、前の画面を白(W)としてマイナス電圧を印加したときは、表示面側に色粒子がないため、白(W)のままである。
【0011】
一方、前の画面を黒(K)として、電圧−V3を印加したときには、シアン色(C)の電気泳動粒子が背面基板側に移動し、表示面側にはマジェンタ色(M)及びイエロー色(Y)の電気泳動粒子が残るので、赤(R)が表示される。前の画面を黒(K)として、電圧−V2を印加した場合は、シアン色(C)及びマジェンタ色(M)の電気泳動粒子が背面基板側に移動し、表示面側にはイエロー色(Y)の電気泳動粒子が残るので、イエロー(Y)となる。前の画面を黒(K)として、電圧−V1を印加した場合はシアン色(C)、マジェンタ色(M)及びイエロー色(Y)の全ての電気泳動粒子が背面基板に移動するので、白(W)表示となる。また、マジェンタ(M)を表示するには、白(W)表示から電圧+V2を印加して表示色を一旦青(B)色にする。その上で、電圧−V3をかけてシアン色(C)の電気泳動粒子を背面に移動させてマジェンタ(M)を表示する。
【0012】
この動作は、次のように表現できる。更新すべき次画面を構成する各画素の、帯電粒子Cの色濃度をRc、帯電粒子Mの色濃度をRm、帯電粒子Yの色濃度をRyとしたとき、
リセット電圧を印加して、白又は黒の基底状態にリセットするリセット期間と、
第1の電圧V1(又は−V1)、又は/及び0[V]電圧を印加して、基底状態から記帯電粒子C,M,Yの色濃度がRyとなる第1の中間遷移状態に遷移させる第1の電圧印加期間と、
第2の電圧V2(又は−V2)、又は/及び0[V]電圧を印加して、第1の中間遷移状態から、帯電粒子Yの色濃度をRyに保ったまま、帯電粒子C,Mの色濃度がRmとなる第2の中間遷移状態に遷移させる第2の電圧印加期間と、
第3の電圧V3(又は−V3)、又は/及び0[V]電圧を印加して、基底状態から、帯電粒子M,Yの色濃度をRm,Ryに保ったまま、帯電粒子Cの色濃度がRcとなる第3中間遷移状態に遷移させる第3の電圧印加期間と、
から構成される駆動波形を印加する。
【0013】
ところで、一般的な電気泳動表示装置において、移動しきれなかった粒子や定位置か再度移動してしまった粒子を制御する方法が、特許文献4、5に開示されている。
【0014】
特許文献4では、極性の異なる2粒子系の電気泳動表示素子において、画像書き換え期間中に第1のデータ入力パルス及びそれよりデータ幅が狭いかデータ強度が小さい第2のデータ入力パルスを印加する方法が述べられている。このように、電気泳動粒子に、電極間を所定距離移動するのに必要な時間だけ所定電圧を印加した後、それよりも短い時間又はそれよりも低い電圧のパルスを電極間に印加することにより、移動しきれなかった粒子や定位置から再度移動してしまった粒子等を再び定位置に移動させ、画質の向上を図る技術が開示されている。
【0015】
また、特許文献5では、極性の異なる2粒子系の電気泳動表示素子において、表示部に画像を表示するための信号を印加後、段階的に電圧が変化する付加的な信号を基底電位に加えることで帯電粒子の移動を抑制して、画面の保持性(メモリ性)を向上させる手段が開示されている。以上は、画面の保持性を高めるために、付加的な補正パルスを印加するものである。
【0016】
特許文献6では、画面更新期間から保持期間に遷移する間に起こる帯電粒子の再移動が、フィードスルー(後述)による電界に起因する、ことについて触れられている。全てのアクティブマトリクスディスプレイは、画素電極に達する電圧が、対応するデータ電圧入力からある大きさ(通常0.5〜2.0[V])だけ変化する、フィードスルーと呼ばれる作用を受ける。フィードスルー効果は、TFTを走査するゲート線と画素電極との間の結合電気回路網を通じて、ゲート線の走査から生ずる。すなわち、特許文献6では以下のように述べられている。実際に画素電極に印加される電圧は、走査時におけるフィードスルーのために、画素電極に書き込まれるデータ電圧からマイナス方向にずれる。通常、対向電極はこのフィードスルーに対応するため、基準電位(通常、グラウンドGND)から一定の大きさだけマイナス側にオフセットされる。そして、走査を止めると、フィードスルー電圧分、画素電極と対向電極との間にオフセットが生じる。
【0017】
その対策として、特許文献6では、書き込みモードから電源オフ(保持)の間の、非書き込みモードにおいて、走査線をゲートオフ電圧に固定して走査を止め、アナログスイッチにより対向電極電圧をフィードスルー電圧−VfdからGNDに瞬時に切り替えることで、不要なDCオフセット電圧を引加しないことが開示されている。
【0018】
また、特許文献7で述べられており、特許文献5、6でも採用されている公知技術として、電源をオフする前の入力パルスは0[V]で終端する技術が、一般的に知られている。しかし、帯電粒子の移動は、表示装置が駆動している画面更新期間から、電源をオフにして、素子に不要な電界がかかることでも起こるものであり、後述で詳細を述べるとおり、0[V]で終端した補正パルスを印加しても、このようなケースでは付加的な補正パルスでは対応できない。また、電源オフした場合に、帯電粒子が移動するメカニズムについても解析されていない。更に、特許文献1、2のしきい値の異なる多粒子に適用した場合、どのような具体的な波形にすればよいか開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0031】
[実施形態1]
まず、実施形態1の概要について、
図1乃至
図3に基づき説明する。
【0032】
本実施形態1のメモリ性を有する画像表示装置10は、スイッチング素子としてのTFT21と画素電極22とを有する画素23がマトリクス状に複数配列されている第1の基板としてのTFTガラス基板20と、対向電極31が形成されている第2の基板としての対向基板30と、TFTガラス基板20と対向基板30との間に介挿され、電気泳動粒子41を含有してなる電気泳動層40と、TFTガラス基板20、対向基板30及び電気泳動層40を有する表示部50と、画面更新期間に、画素電極22と対向電極31とを介して電気泳動粒子41に電圧を印加して、表示部50の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新する電圧印加部60と、を備えている。
【0033】
電気泳動粒子41は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧とを異にする3種類の帯電粒子C(シアン),M(マジェンダ),Y(イエロー)を含む。帯電粒子C(シアン),M(マジェンダ),Y(イエロー)のしきい値電圧をそれぞれVth3,Vth2,Vth1としたとき、これらは|Vth3|<|Vth2|<|Vth1|の関係を満たす。そして、電圧印加部60は、画面更新期間の最終期間に、基準電位と異なる電圧VEを印加する。電圧VEは、帯電粒子Cの動きを抑制する補償電圧である。すなわち、本実施形態1は、特許請求の範囲におけるnが3の場合である。
【0034】
画素電極22と対向電極31との電位差についての、電圧印加部60による電圧印加を終了してから∞までの時間による定積分を
∫ΔVdt=∫(Vpix−Vcom)dt
とした場合、
最終期間に電圧0を印加したときの定積分の絶対値、最終期間に電圧VEを印加したときの定積分の絶対値を、それぞれ
|∫ΔVdt(0)|、|∫ΔVdt(VE≠0)|としたとき、
電圧VEは、
|∫ΔVdt(0)|>|∫ΔVdt(VE≠0)|
の関係を満たす、としてもよい。ここでいう「定積分」は近似値でもよい。
【0035】
更新すべき次画面を構成する各画素23における帯電粒子C,M,Yの相対色濃度がR3,R2,R1であり、画面更新期間は、第1の期間、第2の期間、第3の期間及び最終期間を含むとする。このとき、第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、帯電粒子Yを相対色濃度R1とし、第2の期間は、第2の電圧V2,−V2又は0を印加して、帯電粒子Yを相対色濃度R1に保持したまま、帯電粒子Mを相対色濃度R2とし、第2の期間は、第3の電圧V3,−V3又は0を印加して、帯電粒子Y,Mをそれぞれ相対色濃度R2,R3に保持したまま、帯電粒子Cを相対色濃度R3とする。そして、しきい値電圧Vth3,Vth2,Vth1と印加される電圧V3,V2,V1,VEとは、
|Vth3|<|V3|<|Vth2|<|V2|<|Vth1|<|V1|、及び
0<|VE|<|V3|の関係を満たす、としてもよい。
【0036】
次に、
図1乃至
図3に
図4乃至
図8を加えて、本実施形態1について更に詳細に説明する。
【0037】
図1は、本実施形態1の画像表示装置10(
図3)を構成する表示部50を概念的に示す部分断面図である。画像表示装置10は、アクティブマトリクス型カラー電気泳動表示装置である。表示部50は、メモリ性を有するとともにアクティブマトリクス駆動によるカラー表示が可能な電気泳動表示素子からなり、TFTガラス基板20と、対向基板30と、TFTガラス基板20と対向基板30との間に封入された電気泳動層40とから構成されている。TFTガラス基板20及び対向基板30の周端は、封止部材43によって封止されている。
【0038】
TFTガラス基板20には、マトリクス状に多数配列されたスイッチング素子であるTFT21と、各TFT21にそれぞれ接続される画素電極22、図示しないゲート線及びデータ線が設けられている。TFT21は、半導体層21a、ゲート電極21g、ソース電極21s、ドレイン電極21d等を有する一般的なものである。また、絶縁膜24の一部がゲート絶縁膜になっており、絶縁膜25に設けられたコンタクトホールによってドレイン電極21dと画素電極22とが電気的に接続されている。
【0039】
電気泳動層40は、溶媒42と、溶媒42中に分散した帯電粒子C,M,Y及び白粒子Wとからなる。帯電粒子C,M,Yは、ナノ粒子であり、それぞれシアン(C),マジェンタ(M),イエロー(Y)の色を有し、正負いずれかに帯電している。白粒子Wは、電界に対してあまり移動しない無帯電又は弱帯電となっている。3色の帯電粒子C,M,Yは、それぞれの帯電量が異なるため、溶媒42の中で、移動を開始するしきい値電圧の絶対値が異なっている。本実施形態1では、帯電粒子C,M,Yはいずれも同極性(正の極性)に帯電している。
【0040】
また、対向基板30に形成された対向電極31には、表示部50の基準電位を定める対向電極電圧Vcomが与えられる。表示部50の動作は、画素電極22と対向電極31との間に画素データに対応した電圧を印加することにより、3色の帯電粒子C,M,YをTFTガラス基板20側から対向基板30側へ、又は、対向基板30側からTFTガラス基板20側へ移動させることで行う。なお、本実施形態1では、対向電極31側を表示面とする(他の実施形態においても同様である。)。
【0041】
次に、
図2を参照にして、表示部50のカラー表示の原理について説明する。本実施形態1では、図中、3種類の帯電粒子C,M,Yのしきい値電圧Vth(c)、Vth(m)、Vth(y)が、|Vth(c)|<|Vth(m)|<|Vth(y)|の関係を満たすように設定されている。つまり、しきい値電圧Vth(c)、Vth(m)、Vth(y)は、それぞれ前述のしきい値電圧Vth3、Vth2、Vth1の一例に相当する。
【0042】
図2からわかるように、まず、帯電粒子Cの挙動について説明すれば、プラスの電圧を印加した場合、電圧がしきい値電圧Vth(c)以上になると、帯電粒子CがTFTガラス基板20側から対向基板30側へ移動することにより、シアン色の表示濃度が濃くなり、電圧がしきい値電圧Vth(m)に達する前にシアン色の飽和濃度になる。この状態で、マイナスの電圧を印加した場合、電圧がしきい値電圧−Vth(c)以下になると、帯電粒子Cが対向基板30側からTFTガラス基板20へ移動することにより、シアン色の表示濃度が薄くなり、電圧が−Vth(m)に達する前にシアン色の表示濃度が最低となる。同様にして、帯電粒子Mでは、電圧がしきい値電圧Vth(m)以上(又は−Vth(m)以下)で表示濃度の増加(又は減少)が起こり、帯電粒子Yでは、電圧がしきい値電圧Vth(y)以上(又は−Vth(y)以下)で表示濃度の増加(又は減少)が起こる。以上のように、帯電粒子C,M,Yはそれぞれ異なるしきい値を有するので、印加電圧を異ならせることにより、帯電粒子C,M,Yそれぞれの移動が可能となる。
【0043】
次に、画像表示装置10の回路構成について説明する。
図3は、画像表示装置10の電気的構成を示すブロック図である。画像表示装置10は、電気泳動表示装置であり、カラー表示が可能な電子ペーパーである表示部50と、表示部50を駆動する電圧印加部60とを備えている。表示部50は、電子ペーパーすなわちメモリ性を有するとともにカラー表示の可能な電気泳動表示素子からなる。電圧印加部60は、シフトレジスタ動作するゲートドライバ61、多値出力のデータドライバ62、電子ペーパーモジュール基板70等からなる。
【0044】
ゲートドライバ61は、表示部50の各ゲート線にFPCコネクタ63,64によって接続されており、順次アクティブ期間にシフト動作するゲート信号をゲート線に供給する。データドライバ62は、表示部50の各データ線にFPCコネクタ65,66によって接続されており、画素電極22に書き込むデータ信号をデータ線に供給する。TFT21をオンにするゲート信号がゲート線に供給されると、ゲート線に接続されたTFT21がオンになり、TFT21に接続された画素電極22にデータ線からデータ信号が書き込まれる。
【0045】
電子ペーパーモジュール基板70には、表示部50を駆動する電子ペーパーコントローラ71と、フレームバッファを構成するグラフィックメモリ72と、装置各部を制御するとともに電子ペーパーコントローラ71に画像データを与えるCPU(Central Processing Unit)73と、ROMやRAMなどのメインメモリ74と、記憶装置75と、データ送受信部76とが設けられている。
【0046】
表示部50を構成する電気泳動表示素子は、メモリ性を有している。そのため、画面を更新せずに画面を維持しているときは、表示部50を走査しないだけでなく、ゲートドライバ61、データドライバ62、対向電極31に供給するゲートオン電圧、ゲートオフ電圧、データ電圧、対向電極電圧、ロジック系の電圧を全てパワーダウンすることが好ましい。
【0047】
次に、表示部50のTFT駆動方法について説明する。電気泳動表示素子のTFT駆動においても、液晶表示装置と同様に、ゲート線にゲート信号を印加して、ライン毎にシフトさせ、スイッチング素子のTFT21を介してデータ信号を画素電極22に書き込む動作が行われる。そして、全ラインの書き込みが終わる時間を1フレームと定義し、1フレームを例えば60Hz(16.6ms周期)で走査している。一般に液晶表示装置では、この1フレームで画像全体を切り替えている。これに対して、電気泳動表示素子は、液晶よりも応答速度が遅いため、複数のフレーム期間(以下、電気泳動表示素子では「サブフレーム期間」と呼び、複数のサブフレーム期間で構成された画面更新の期間を「画面更新期間」と呼ぶ。)の間、電圧を印加し続けなければ画面を切り替えることができない。
【0048】
このため、表示部50では、複数のサブフレーム期間の間、一定の電圧を印加し続けるPWM(Pulse Width Modulation)駆動が採用される。そして、予め定められた一定の電圧V1(V2又はV3)を所定のサブフレーム数印加することで、カラー表示及び階調表示が行われる。以下、任意の表示色を表すのに、3つの帯電粒子C,M,Yの色と同様のCMY系の色濃度に変換して説明する。色濃度は(C,M,Y)=(Rc,Rm,Ry)(Rc,Rm,Ry=0〜1)の値を採り、(C,M,Y)=(0,0,0)が白状態を示し、(C,M,Y)=(1,1,1)が黒状態を示す。
【0049】
また、印加電圧V1,V2,V3は、|Vth(c)|<|V3|<|Vth(m)|,|Vth(m)|<|V2|<|Vth(y)|,|Vth(y)|<|V1|の関係を満たすように設定されている。具体的には、|Vth(c)|≒1[V](ほぼしきい値なし)、|Vth(m)|≒5[V],|Vth(y)|≒13[V]となり、駆動電圧は|V3|=3[V],|V2|=7[V],|V1|=15[V]と設定する(
図2参照)。
【0050】
本実施形態1では、前の表示状態CUR(以下「現画面」ともいう。)から画像更新後の表示状態である最終遷移状態N(以下「次画面」ともいう。)を表示するために、中間遷移状態(WK,I1,I2)を経由することで、中間色・階調表示まで含めた系統的で簡便な駆動方法を実現している。そして、複数のサブフレームに渡って駆動することで、所定の画像を更新する。複数のサブフレームに渡る駆動期間は、白(W)又は黒(K)の基底状態に遷移するためのリセット期間と、V1,0,−V1[V]の電圧を印加する第1のサブフレーム群期間と、V2,0,−V2[V]の電圧を印加する第2のサブフレーム群期間(第2の電圧印加期間)と、V3,0,−V3[V]の電圧を印加する第3のサブフレーム群期間(第3の電圧印加期間)と、後述の補償電圧VE[V]の電圧を印加する最終サブフレーム期間とから構成される。ここで、V1,V2,V3,VEは|V1|>|V2|>|V3|>|VE|の関係を満たす。つまり、「第1のサブフレーム群期間」、「第2のサブフレーム群期間」、「第3のサブフレーム群期間」、「最終サブフレーム期間」は、それぞれ前述の「第1の期間」、「第2の期間」、「第3の期間」、「最終期間」の一例に相当する。
【0051】
図4は、表示すべき画像(更新すべき次画面N)の画素23の表示情報として、帯電粒子C,M,Yの相対色濃度(CMY)が(C,M,Y)=(1,0,1)となる緑色を、表示するための駆動波形を示す。
【0052】
第1のサブフレーム群期間S1では、+V1=+15[V]を印加して、白(W)又は黒(K)の基底状態から、帯電粒子Yの相対色濃度が1となる第1の中間遷移状態(I1):(1,1,1)に遷移させる。第2のサブフレーム群期間S2では、−V2=−7[V]を印加して、第1の中間遷移状態(I1)から、Y濃度が1でM濃度が0となる第2の中間遷移状態(I2):(1,0,0)に遷移させる。第3のサブフレーム群期間S3では、+V3=+3[V]を印加して第2の中間遷移状態から最終遷移状態N:(1,0,1)に遷移させる。最終サブフレーム期間Eは、表示部50の電源がオフされ保持期間に移行する際に電気泳動粒子41が不要に動くことを抑制し、最終遷移状態の相対色濃度Nを確定させる期間であり、相対色濃度の変化はほぼない。
【0053】
第1〜第3のサブフレーム群期間S1〜S3と最終サブフレーム期間Eとを含む期間を画面更新期間80と呼ぶ。その後、ゲート信号及びデータ信号を停止し、ゲート電圧、データ電圧、対向電極電圧への電圧供給をオフにして、それらを基準電位(GND)にする。
【0054】
次に、補償電圧VE[V]の電圧を印加する最終サブフレーム期間Eを設けた理由について説明する。
【0055】
関連技術の駆動方法(特許文献3,5,6)では、画面更新期間の最終サブフレーム期間に0[V]のデータ信号を印加して駆動を終端する。これは、駆動電圧を印加したまま画面更新期間を終えると、画素電極に電圧がかかったまま、画面更新期間が終わってしまうため、帯電粒子が経時的に大きく動いてしまい、目的の最終遷移状態Nから大幅に、色が変化してしまうからである。
【0056】
図5は最終サブフレーム期間Eのデータ電圧を0[V]に終端する駆動波形を示している(特許文献7など)。縦軸は電圧を表し、横軸は時間を表し、VDはデータ電圧、Vcomは対向電極電圧を示す。また、V1は帯電粒子Yの駆動電圧、V2は帯電粒子Mの駆動電圧、V3は帯電粒子Cの駆動電圧であり、V1は15[V],V2は7[V]、V3は3[V]程度である。画面更新期間80は12[s]程度である。
【0057】
また、
図5には、画面更新期間80の終了付近の、最終サブフレーム期間Eから保持期間81に移行する期間における拡大図を、合わせて示してある。Vcomは対向電極電圧であり、Vpixは画素電極電圧であり、ΔV=Vpix−Vcomは画素電極22と対向電極31との電位差を表す。画面更新期間80では、対向電極電圧がフィードスルー電圧Vfdだけ基準電位からマイナスに、すなわちVcom=−Vfdに調整されている。そして、最終サブフレーム期間Eでは、VD=0[V]が書き込まれているので、画素電極電圧はフィードスルー分マイナスにシフトしたVpix=−Vfdとなる。そのため、最終サブフレーム期間Eでは、画素電極22と対向電極31との電位差ΔV=0[V]である。
【0058】
さて、画面更新期間80の終了後、表示電源回路をパワーオフして、対向電極31やゲートドライバ61、データドライバ62への電力供給を停止する。そして、対向電極電圧Vcomは、対向電極31のパネル等価回路時定数で変化しつつ基準電位(GND,0[V])に放電される。画素電極電圧Vpixは画素電極22のパネル等価回路時定数で変化しつつ基準電位(GND,0[V])に放電される。これらの時定数は一般に1[s]程度と考えられる。
【0059】
前述のように、対向電極電圧Vcomと画素電極電圧Vpixとのパネル等価回路時定数は異なる。そのため、対向電極電圧Vcomと画素電極電圧Vpixとが、電力供給停止後から基準電位(GND)に変化するまでの間、画素電極22と対向電極31とに電位差が生ずる。ここで、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積を、
∫ΔVdt=∫(Vpix−Vcom)dt
(∫は電源オフから∞までの時間積)
と定義する。
【0060】
図6は、画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数が、対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数よりも大きい場合に、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdtが最大帯電量の帯電粒子Cに与える影響を説明する図である。
図6[A]は帯電粒子Cが対向電極31側に、
図6[B]は帯電粒子Cが画素電極22側にそれぞれ配置された場合の、帯電粒子C,M,Yの様子を示している。
【0061】
この場合、
図6[C]に示すように時間積∫ΔVdt<0[V]であるので、電源オフ後に対向電極31側から画素電極22側に電界がかかる。そのため、最終遷移状態Nがシアン色のとき(
図6[A])、正の大帯電粒子であるシアン粒子(帯電粒子C)は、電源オフ前に対向電極31側に配置されていたのが、電源オフ後に画素電極22側へ動いてしまうことがある。そうなると、
図6[A]に示すように画像の表示色が退色して薄くなってしまう。一方、最終遷移状態Nがシアンの補色である赤のとき(
図6[B])、帯電粒子Cは、既に画素電極22側に配置されているため、再移動することもない。その結果、
図6[B]に示すように画像の表示色に退色が見られず画像の表示状態は変わらない。
【0062】
逆に画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数が、対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数よりも小さい場合は、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt>0[V]となるので、電源オフ後に画素電極22から対向電極31に向かって電界が発生する。そのため、例えば、最終遷移状態Nが白色(W)である場合、帯電粒子Cは、電源オフ前には画素電極22側に配置されているが、電源オフ後に対向電極31側(表示面側)に動いてしまうことがある。そうなると、画像は白色がうっすらとシアン色に着色してしまう。
【0063】
このように、本実施形態1の表示部50は、複数の異なる帯電量をもつため、駆動電圧V1〜V3を小さくして電子ペーパーの特徴を生かす低消費電力化を図ると、最大帯電量の電気泳動粒子のしきい値は1[V]程度、駆動電圧は3[V]程度となって微小電圧でも粒子が移動してしまう。これは、白黒表示の電気泳動表示素子では問題にならなかったカラー表示に特有の問題である。そのため、画面更新期間80の終了後、表示部50への供給電源をオフする際に生ずる画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdtにより、大帯電粒子であるシアン粒子が移動してしまい、画面の保持性(メモリ性)が劣化する問題があることがわかった。
【0064】
この、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdtの影響を取り除き、最大帯電量のシアン粒子が動かないようにするには、
∫ΔVdt≒0
となるように、最終サブフレーム期間Eにかける補償用のデータ電圧VEを調整すればよい。
【0065】
図7及び
図8は、最終サブフレーム期間の電圧を非ゼロのVEに終端する、本実施形態1の駆動波形を示しており、
図7はシアン色の駆動波形であり、
図8はシアンの補色である赤色の駆動波形である。本実施形態1では、最大の帯電量の電気泳動粒子であるシアン粒子(帯電粒子C)が対向電極31側にあろうと、画素電極22側にあろうと、最終遷移状態Nにかかわらず、非ゼロの電圧VE(0)で終端する。
【0066】
ここで、VDはデータ電圧、Vcomは対向電極電圧、V1〜V3は各粒子の駆動電圧であり、VEは0[V]より大きくV3より小さい値である。以下、対向電極電圧Vcomのパネル回路時定数τcomよりも画素電極電圧Vpixのパネル回路時定数τpixの方が大きいとし、τcom=a×τ、τpix=τとして説明する。また、aは、a=τcom/τpixであり、対向電極電圧Vcomの時定数τcomと画素電極電圧Vpixの時定数τpixとの比である。
【0067】
図7には、画面更新期間80の終了付近の、最終サブフレーム期間Eから保持期間81に移行する期間における、画素電極22及び対向電極31の電圧の放電の様子を表す拡大図を合わせて示してある。画面更新期間80では、対向電極電圧は、フィードスルー電圧Vfd分だけ基準電位からマイナスに、すなわち、Vcom=−Vfdに調整されている。そして、最終サブフレーム期間Eでは、データ電圧VD=VE(0)が書き込まれるので、画素電極電圧はフィードスルー分マイナスにシフトしたVpix=VE(0)−Vfdとなる。
【0068】
今、対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数がaτ、画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数がτであるので、
Vpix=(VE(0)−Vfd)exp(−t/aτ)
Vcom=−Vfdexp(−t/τ)
となる。ここで、t=0はパネルの表示電源をオフした瞬間を示し、画面更新期間80が終了してからパネル表示電源がオフするまでの、画素電極22及び対向電極31の電圧変動は無視する。
【0069】
このとき、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdtは
∫Δvdt=∫(Vpix−Vcom)dt
=(VE(0)−Vfd)×aτ+Vfd×τ
=VE(0)×aτ−Vfd×(a−1)τ
となる。
【0070】
電位差∫ΔVdt≒0にするには、
VE(0)=(a−1)/a×Vfd・・・式(1−1)
の関係が成り立つよう、電圧VE(0)を設定すればよい。つまり、フィードスルー電圧Vfd=2[V]、a=2とすれば、VE(0)=1[V]程度にすればよい。すなわち、0[V]<VE(0)=1[V]<V3=3[V]となり、0<VE(0)<V3の関係を満たすことがわかる。
【0071】
なお、電圧VE(0)の補償効果を高めるため、画面更新期間80の後から表示電源をオフするまでの間に、ゲート信号やデータ信号は停止するが、ゲートドライバ61にゲートオフ電圧を印加し続けて画素電極22の放電を遅らせる一方、対向電極31の放電は開始させる、そのような期間を設けることも可能である。
【0072】
画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数τpixが対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数τcomよりも大きい場合とは、最終サブフレーム期間Eに印加する電圧を0[V]としたときに、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt<0[V]となる場合の一例である。逆に、パネル等価回路時定数τpixがパネル等価回路時定数τcomよりも小さい場合とは、最終サブフレーム期間Eに印加する電圧を0[V]としたときに、時間積∫ΔVdt>0[V]となる場合の一例である。これらを一例とした理由は、対向電極電圧Vcomの調整不足(フィードスルー電圧分のオフセット−Vfdがずれている)により、画素電極電圧Vpixの時定数τpixが対向電極電圧Vcomの時定数τcomよりも大きい場合でも時間積∫ΔVdt>0[V]となることがあり、時定数τpixが時定数τcomよりも小さい場合でも時間積∫ΔVdt<0となることがあるからである。つまり、帯電粒子Cの動きは時間積∫ΔVdtに従うので、時間積∫ΔVdtが本質的なパラメータである。
【0073】
上記構成に代えて、最終サブフレーム期間Eのデータ電圧VDだけでなく、画面更新期間80の全体にわたって画素電極電圧Vpix又は対向電極電圧Vcomにオフセット電圧をかけることでも、同様の効果を期待できそうにも思われる。しかし、その場合は、画面更新期間80(10[s]程度)の全体を通して、画素電極22と対向電極31との間にDCオフセット電圧がかかり続けることになり、電気泳動粒子41がチャージアップしてしまい、チャージアップ電界により電気泳動粒子41が動いてしまうので、適切でない。本実施形態1のように、最終サブフレーム期間Eのみに、データ電圧VDとして適切な補償電圧VE(0)を印加することにより、画面更新期間80中も画面更新後も、不要な電界がかかり続けることを防止できるのである。
【0074】
なお、最終サブフレーム期間Eは、複数のサブフレーム群期間から構成された最終サブフレーム群期間としてもよいし、画面更新期間80の駆動方法は、最終サブフレーム期間Eのデータ印加電圧VEが満たされれば、最終遷移状態Nの色濃度を実現できる全ての駆動波形に適用できることはいうまでもない。例えば、前の遷移状態CURから基底状態WKを経由することなく、中間遷移状態(I1),(I2)に遷移した後に最終遷移状態Nに至る駆動波形や、中間遷移状態(I1),(I2)を通らずに最終遷移状態Nに至る駆動波形も、本発明に含まれる。
【0075】
本実施形態1では、無極性の白粒子Wと同極性で異なる帯電量を持つ帯電粒子C,M,Yとから電気泳動粒子41を構成したが、各帯電粒子の帯電量の大小関係はこれに限定されない。また、帯電粒子C,M,Yが異極性で帯電量を持つ場合や、電気泳動粒子41が2粒子の場合や3粒子よりも多い場合も本発明に含まれることはいうまでもない。
【0076】
また、データ電圧VDは、リセット期間R及び第1〜第3のサブフレーム群S1〜S3では電圧+V、電圧0[V]、電圧−Vの3値しかとらず、最終サブフレーム期間Eでは電圧VEの1値しかとらない。したがって、正電圧/負電圧/0[V]の3値を出力する簡易な3値ドライバを用いて、サブフレーム毎にドライバへの入力電圧を変更することで、コストダウンを図ることもできる。
【0077】
また、第1〜第3のサブフレーム群S1〜S3で印加する電圧+Vi,0,−Vi(i=1,2,3)の0[V]の代わりに、最小のしきい値Vth(C)よりも小さい電圧を印加することも可能である。
【0078】
以上を一般化した場合は、次のように表現することもできる。
スイッチング素子としてのTFT21と画素電極22とがマトリクス状に配列されている第1の基板としてのTFTガラス基板20と、
対向電極31が形成されている第2の基板としての対向基板30と、
TFTガラス基板20と対向基板30との間に介挿され、電気泳動粒子41を含有してなる電気泳動層40と、
TFTガラス基板20、対向基板30及び電気泳動層40を備える表示部50と、
画面更新時、画素電極22と対向電極31との間の電気泳動粒子41に所定の期間、所定の電圧を印加して、表示部50の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新させる電圧印加部60と、
を備えるメモリ性を有する画像表示装置10であって、
電気泳動粒子41は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にするn種類(nは2以上の整数)の帯電粒子C1,・・・,Cnからなり、
各帯電粒子C1,・・・Cnは、帯電粒子Cnのしきい値電圧|Vth(Cn)|<・・・<帯電粒子C1のしきい値電圧|Vth(C1)|の関係性を備え、
更新すべき次画面を構成する各画素23の、帯電粒子C1の相対色濃度がR1,・・・,帯電粒子Cnの相対色濃度がRnであるとき、
電圧が印加される所定の期間である画面更新期間80の最終サブフレーム期間Eは、
基準電位と異なる電圧VEを印加する、
ことを特徴とするメモリ性を有する画像表示装置10である。
【0079】
ここで、画素電極22−対向電極31間電位差時間積を、
∫ΔVdt=∫(Vpix−Vcom)dt
(∫は電源オフから∞までの時間積)
とし、最終サブフレーム期間Eの印加電圧0[V]を与えた場合の時間積の絶対値を|∫ΔVdt|(0)、最終サブフレーム期間Eの印加電圧VEを与えた場合の時間積の絶対値を|∫ΔVdt(VE≠0)|としたとき、
|∫ΔVdt(0)|>|∫ΔVdt(VE≠0)|
の関係性を満たすよう、印加電圧VEを定める。ここでいう「定積分」は近似値でもよい。
【0080】
また、以下のようにも一般化できる。
更新すべき前記次画面を構成する前記各画素における前記帯電粒子Cmの相対色濃度がRmであるとき、
前記画面更新期間は、第1の期間から第nの期間までの全てと前記最終期間とを含み、
前記第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、前記帯電粒子C1を相対色濃度R1とし、
第mの期間は、第mの電圧Vm,−Vm又は0を印加して、前記帯電粒子C1から帯電粒子C(m−1)までをそれぞれ相対色濃度R1からR(m−1)までに保持したまま、前記帯電粒子Cmを相対色濃度Rmとし、
前記しきい値電圧と印加する前記電圧とは、
|Vth(Cm)|<|Vm|<|Vth(C(m−1))|、
|Vth(C1)|<|V1|、及び
0<|VE|<|Vn|
の関係を満たす、としてもよい。
【0081】
本実施形態1によれば、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にする帯電粒子C,M,Yを用いたカラー電気泳動表示素子である画像表示装置10において、表示用の電源オフ時に発生する画素電極22と対向電極31との電位差ΔVを補償することにより、電源オフ後に最も大きな帯電量を持つ(しきい値電圧の小さな)帯電粒子Cの動きを抑制できるので、画面の保持性(メモリ性)を向上できる。
【0082】
[実施形態2]
本実施形態2は、
図3に示す電圧印加部60の一部の機能が異なる点を除き、実施形態1と同じ構成である。そこで、まず、本実施形態2の概要について、実施形態1と同様に
図1乃至
図3に基づき説明する。
【0083】
本実施形態2のメモリ性を有する画像表示装置10は、スイッチング素子としてのTFT21と画素電極22とを有する画素23がマトリクス状に複数配列されている第1の基板としてのTFTガラス基板20と、対向電極31が形成されている第2の基板としての対向基板30と、TFTガラス基板20と対向基板30との間に介挿され、電気泳動粒子41を含有してなる電気泳動層40と、TFTガラス基板20、対向基板30及び電気泳動層40を有する表示部50と、画面更新期間に、画素電極22と対向電極31とを介して電気泳動粒子41に電圧を印加して、表示部50の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新する電圧印加部60と、を備えている。
【0084】
電気泳動粒子41は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧とを異にする3種類の帯電粒子C(シアン),M(マジェンダ),Y(イエロー)を含む。帯電粒子C(シアン),M(マジェンダ),Y(イエロー)のしきい値電圧をそれぞれVth3,Vth2,Vth1としたとき、これらは|Vth3|<|Vth2|<|Vth1|の関係を満たす。そして、更新すべき次画面を構成する各画素23における帯電粒子C,M,Yの相対色濃度がR3,R2,R1であるとき、電圧印加部60は、画面更新期間の最終期間に、相対色濃度R3に依存する電圧VE(R3)を印加する。電圧VE(R3)は、帯電粒子Cの動きを抑制する補償電圧である。すなわち、本実施形態2は、特許請求の範囲におけるnが3の場合である。
【0085】
電圧VE(R3)は、相対色濃度R3が1のときの電圧VE(R3=1)と、相対色濃度R3が0のときの電圧VE(R3=0)とで異なる、ようにしてもよい。このとき、電圧VE(R3=1)及び電圧VE(R3=0)は、VE(R3=1)=0であるとき、VE(R3=0)≠0である、又は、VE(R3=1)≠0であるとき、VE(R3=0)=0である、としてもよい。
【0086】
画面更新期間は、第1の期間、第2の期間、第3の期間及び最終期間を含むとする。このとき、第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、帯電粒子Yを相対色濃度R1とし、第2の期間は、第2の電圧V2,−V2又は0を印加して、帯電粒子Yを相対色濃度R1に保持したまま、帯電粒子Mを相対色濃度R2とし、第2の期間は、第3の電圧V3,−V3又は0を印加して、帯電粒子Y,Mをそれぞれ相対色濃度R2,R3に保持したまま、帯電粒子Cを相対色濃度R3とする。そして、しきい値電圧Vth3,Vth2,Vth1と印加される電圧V3,V2,V1,VEとは、
|Vth3|<|V3|<|Vth2|<|V2|<|Vth1|<|V1|、及び
0<|VE|<|V3|の関係を満たす、としてもよい。
【0088】
実施形態1では、最大帯電量の電気泳動粒子であるシアン粒子(帯電粒子C)が、対向電極31側にあるか画素電極22側にあるかにかかわらず、最終遷移状態Nによらずに、最終サブフレーム期間Eのデータ電圧を適切なVEに設定することで、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdtをほぼ0にして、表示系の供給電圧をオフした際の、電気泳動粒子41の移動を抑制している。
【0089】
しかし、電源オフ時の対向電極31のパネル等価回路時定数は、トランスファー抵抗や対向電極31の面抵抗のばらつきによって変わることがある。また、画素電極22のパネル等価回路時定数は、TFT21のリーク電流に依存するので、明るさや温度などの周辺環境によって変わることがある。
【0090】
そこで、本実施形態2では、時間積∫ΔVdtがほぼ0を満たすように電圧VEを設定するのではなく、電圧VEの調整に許容マージンを持たせている。すなわち、本実施形態2は、最終遷移状態Nに従い、最大帯電量粒子であるシアン粒子(帯電粒子C)が、対向電極31側にあるか画素電極22側にあるかによって、最終サブフレーム期間Eに異なるデータ電圧VDを印加する駆動方法である。
【0091】
本実施形態2の表示部50の構成は、実施形態1と同様である。本実施形態2の駆動方法は、実施形態1の駆動方法と同様に、複数のサブフレーム期間の間、一定の電圧を印加し続けることで所定の画像が更新されるPWM駆動が採用される。
【0092】
複数のサブフレームに渡る駆動期間は、
白(W)又は黒(K)の基底状態に遷移するためのリセット期間Rと、
V1,0,−V1の電圧を印加する第1のサブフレーム群期間S1と、
V2,0,−V2の電圧を印加する第2のサブフレーム群期間S2と、
V3,0,−V3の電圧を印加する第3のサブフレーム群期間S3と、
最終遷移状態Nに応じて、異なるVE(N)(ここで、Nは最終遷移状態を表し、N:(C,M,Y)=(0,0,0)は白表示W、N:(C,M,Y)=(1,1,1)は黒表示K、N:(C,M,Y)=(1,0,0)はシアン表示C、N:(C,M,Y)=(0,1,1)は赤表示R、・・・、の各状態を表す。)の電圧を印加する最終サブフレーム期間Eと、
から構成される。ここで、V1,V2,V3,VE(N)は、|V1|>|V2|>|V3|>|VE(N)|の関係を満たす。
【0093】
第1のサブフレーム群期間S1は、白(W)又は黒(K)の基底状態から、帯電粒子Yの相対色濃度がRyとなる第1の中間遷移状態(I1)に遷移する期間である。第2のサブフレーム群期間S2は、第1の中間遷移状態(I1)から、Y濃度がRyでM濃度がRmとなる第2の中間遷移状態(I2)に遷移する期間である。第3のサブフレーム群期間S3は、第2の中間遷移状態(I2)から最終遷移状態Nに遷移する期間である。最終サブフレーム期間Eは、表示部50の電源がオフされ、保持期間に移行する際に、最終遷移状態Nが退色又は着色してしまうことを防ぐための期間である。
【0094】
図9及び
図10は、本実施形態2における駆動波形を示す。
図9は、最終遷移状態がN:(C,M,Y)=(1,0,0)のシアン表示の場合の駆動波形である。
図10は、最終遷移状態がN:(C,M,Y)=(0,1,1)のシアンの補色である赤表示の場合の駆動波形である。VD、Vcom、V1〜V3は、実施形態1と同様の表記であり、VE(C=1)は帯電粒子Cが対向側になるときの最終サブフレーム期間の電圧、VE(C=0)は帯電粒子Cが画素電極側にある時の、データ電圧を表す。そして、VE(C=1)
≠ VE(C=0)である。
【0095】
図11は、
図9の駆動を行った場合の、帯電粒子Cの挙動を示す図である。
図12は、
図10の駆動を行った場合の、帯電粒子Cの挙動を示す図である。以下、電源オフ時の画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数が対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数よりも大きいとして説明する。なお、画素素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数が対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数よりも大きい場合とは、最終サブフレーム電圧を0[V]とした場合に画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt<0となる場合、と一般化できる。
【0096】
図9は、最終遷移状態N:(C,M,Y)=(1,0,0)であるシアン色を表示するための駆動波形に、電源オフ後の対向電極電圧Vcom及び画素電極電圧Vpixの時間変化の拡大図を合わせて示している。画面更新期間80の間、対向電極電圧はフィードスルー電圧Vfd分、基準電位(GND)からマイナスに、すなわちVcom=−Vfdに調整されている。最終サブフレーム期間Eでは、VD=VE(C)が書き込まれるが、VE(C)は、∫ΔVdt=0となる実施形態1のVE(以下、VE(0)と記す)よりも大きな値をとり、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt>0を満たすように設定される。すなわち、
VE(C=1) > VE(0)=(a−1)/a×Vfd
を満たす必要がある。aの定義は実施形態1と同様である。
【0097】
このとき、
図11に示すとおり、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt>0のために、画素電極22から対向電極31へ向かう微小電界が発生する。すると、帯電粒子Cは、元々、画面更新期間80の終了直後に対向電極31側に配置されているので、更に対向電極31側に押し付けられる。その結果、帯電粒子Cは、電極界面との接着力が強化されて、保持性が増す。また、周辺環境の変化や対向電極電圧Vcomの調整ズレがおきても、∫ΔVdt=0とする場合に較べて、設定マージンが広がる。
【0098】
ただし、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt(>0)となることに起因して、画素電極22側に配置されている帯電粒子M,Yが電源オフの際に対向電極31側に移動することは、防ぐ必要がある。そのため、|VE(C=1)|は、2番目に大きな帯電粒子Mのしきい値電圧|Vth(m)|以下、好ましくは、最大帯電粒子Cの駆動電圧|V3|以下に設定することが好ましい。
【0099】
以上より、VE(C=1)は、
VE(C=1) > VE(0)=(a−1)/aVfdかつ
|VE(C=1)|<|V3| ・・・(式2.1)
に設定することが好ましい。本実施形態2の場合は、V3=3[V],Vfd=2[V],a=2であるから、3>VE(C=1)>1を満たす電圧、例えば、VE(C=1)=2[V]程度に設定する。
【0100】
図10は、最終遷移状態N:(C,M,Y)=(0,1,1)であるシアン色の補色である赤色を表示するための駆動波形に、電源オフ後の対向電極電圧Vcom及び画素電極電圧Vpixの時間変化の拡大図を合わせて示している。この場合は、∫ΔVdt<0となるように、最終サブフレーム期間Eの印加電圧を上記したVE(C=1)と異なるVE(C=0)に設定する。ここでは、VE(C=0)=0[V]とした。
【0101】
この場合、∫ΔVdt<0となるため、
図12に示すとおり、対向電極31から画素電極22へ向かう微小電界が発生する。帯電粒子Cは、元々、画面更新期間80の終了直後に画素電極22側に配置されているので、更に画素電極22側に押し付けられる。その結果、帯電粒子Cは、電極界面との接着力が強化されて、保持性が増す。また、周辺環境の変化や対向電極電圧Vcomの調整ズレがおきても、∫ΔVdt=0とする場合に較べて、設定マージンが広がる。
【0102】
ただし、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt(<0)に起因して、対向電極31側に配置されている帯電粒子M,Yが電源オフの際に画素電極22側に移動することは、防ぐ必要がある。そのため、|VE(C=0)|は、|Vth(m)|以下、好ましくは、最大帯電粒子Cの駆動電圧|V3|以下に設定することが好ましい。
【0103】
以上より、VE(C=0)は、
VE(C=0) < VE(0)=(a−1)/aVfdかつ
|VE(C=0)|<|V3| ・・・(式2.2)
に設定することが好ましい。本実施形態2の場合は、−V3=−3[V],Vfd=2[V],a=2であるから、VE(C=0)=0[V]程度に設定することで、∫ΔVdt<0を満たすことが可能となる。
【0104】
なお、画素電極電圧Vpixの時定数が対向電極電圧Vcomの時定数よりも小さい場合、対向電極電圧Vcomの時定数と画素電極電圧Vpixの時定数との比aはa<1の値、例えばa=1/2をとる。そのため、VE(C=1),VE(C=0)は、V3=3[V]、Vfd=2[V]、a=1/2とすると、
VE(C=1)>−2,|VE(C=0)|<3
VE(C=0)<−2,|VE(C=1)|<3
の関係を満たす必要がある。例えば、VE(C=1)=0[V],VE(C=0)=−2.5[V]に設定すればよい。
【0105】
画素素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数が対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数よりも小さい場合とは、最終サブフレーム電圧を0[V]とした場合に画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt>0を生ずる場合、と一般化できることはいうまでもない。
【0106】
以上をまとめると、更新画面の最終遷移状態N:(C,M,Y)=(1,Rm,Ry)(0≦Rm≦1,0≦Ry≦1)の場合、すなわち帯電粒子Cが対向電極31側に配置されている場合には、式(2.1)を満たすVE(C=1)に最終サブフレーム期間Eのデータ電圧VDを設定する。また、最終遷移状態N:(C,M,Y)=(0,Rm,Ry)(0≦Rm≦1,0≦Ry≦1)の場合、すなわち帯電粒子Cが画素電極22側に配置されている場合には、式(2.2)を満たすVE(C=0)にデータ電圧VDを設定する。これらの場合、式(2.1)、式(2.2)の関係からVE(C=1)≠VE(C=0)である。
【0107】
最終サブフレーム電圧を0[V]とした場合に画素電極22と対向電極31との電位差の時間積が∫ΔVdt<0となるか∫ΔVdt>0となるかに応じて、VE(C=1)、VE(C=0)のいずれか一方を0[V](基準電位)に設定することもできる。
【0108】
また、更新画面の最終遷移状態のシアン成分の濃度が中間調である場合、すなわち、最終遷移状態N:(C,M,Y)=(Rc、Rm,Ry)(0<Rc<1,0≦Rm≦1,0≦Ry≦1)のときは、最終サブフレーム期間Eに印加するデータ電圧VDは、採り得るシアン濃度の値であるRcに応じて、VE(C=1)かVE(C=0)又はその中間値に設定される。
【0109】
なお、VE(0)の補償効果を高めるため、画面更新期間80の後、表示電源をオフするまでの間に、ゲート信号やデータ信号は停止するが、ゲートドライバ61にゲートオフ電圧を印加し続けて画素電極22の放電を遅らせる一方、対向電極31の放電は開始させる、そのような期間を設けることも可能である。
【0110】
また、以上は最大の帯電粒子が正極性の場合について説明をしたが、最大の帯電粒子が負極性の場合については、補償電圧VE(N)の満たすべき範囲は、負の最大帯電粒子Cが対向電極31側にあるときには、∫ΔVdt<0を満たす必要があるので、次のように関係が正極性の場合と逆になる。
VE(C=1) < VE(0)=(a−1)/aVfdかつ
|VE(C=1)|<|V3|
VE(C=0) > VE(0)=(a−1)/aVfdかつ
|VE(C=0)|<|V3|
例えば、VE(C=1)=0[V],VE(C=0)=2[V]に設定することになる。
【0111】
以上の構成により、対向電極電圧Vcomの設定値のマージンが拡大し、また、周辺環境による影響も少なくなるので、電源オフ時の画面の保持性(メモリ性)の劣化を更に抑制することが可能となる。
【0112】
画素電極電圧Vpixのパネル等価回路時定数τpixが対向電極電圧Vcomのパネル等価回路時定数τcomよりも大きい場合とは、最終サブフレーム期間Eに印加する電圧を0[V]としたときに、画素電極22と対向電極31との電位差の時間積∫ΔVdt<0[V]となる場合の一例である。逆に、パネル等価回路時定数τpixがパネル等価回路時定数τcomよりも小さい場合とは、最終サブフレーム期間Eに印加する電圧を0[V]としたときに、時間積∫ΔVdt>0[V]となる場合の一例である。これらを一例とした理由は、対向電極電圧Vcomの調整不足(フィードスルー電圧分のオフセット−Vfdがずれている)により、画素電極電圧Vpixの時定数τpixが対向電極電圧Vcomの時定数τcomよりも大きい場合でも時間積∫ΔVdt>0[V]となることがあり、時定数τpixが時定数τcomよりも小さい場合でも時間積∫ΔVdt<0となることがあるからである。つまり、帯電粒子Cの動きは時間積∫ΔVdtに従うので、時間積∫ΔVdtが本質的なパラメータである。
【0113】
なお、最終サブフレーム期間Eは、複数のサブフレーム群期間から構成された最終サブフレーム群期間としてもよいし、画面更新期間80の駆動方法は、最終サブフレーム期間Eのデータ印加電圧VEが満たされれば、最終遷移状態Nの色濃度を実現できる全ての駆動波形に適用できることはいうまでもない。例えば、前の遷移状態CURから基底状態WKを経由することなく、中間遷移状態(I1),(I2)に遷移した後に最終遷移状態Nに至る駆動波形や、中間遷移状態(I1),(I2)を通らずに最終遷移状態Nに至る駆動波形も、本発明に含まれる。
【0114】
本実施形態2では、無極性の白粒子Wと同極性で異なる帯電量を持つ帯電粒子C,M,Yとから電気泳動粒子41を構成したが、各帯電粒子の帯電量の大小関係はこれに限定されない。また、帯電粒子C,M,Yが異極性で帯電量を持つ場合や、電気泳動粒子41が2粒子の場合や3粒子よりも多い場合も本発明に含まれることはいうまでもない。
【0115】
また、データ電圧VDは、リセット期間R及び第1〜第3のサブフレーム群S1〜S3では電圧+V、電圧0[V]、電圧−Vの3値しかとらず、最終サブフレームEではVE(C=0)又はVE(C=1)の一方を0[V]としたときにVE(C=1)(又はVE(C=0))と0[V]との2値しかとらない。したがって、正電圧/負電圧/0[V]の3値を出力する簡易な3値ドライバを用いて、サブフレーム毎にドライバへの入力電圧を変更することで、コストダウンを図ることもできる。
【0116】
また、第1〜第3のサブフレーム群S1〜S3で印加する電圧+Vi,0,−Vi(i=1,2,3)の0[V]の代わりに、最小のしきい値Vth(C)よりも小さい電圧を印加することも可能である。
【0117】
以上を一般化した場合は、次のように表現することもできる。
スイッチング素子としてのTFT21と画素電極22とがマトリクス状に配列されている第1の基板としてのTFTガラス基板20と、
対向電極31が形成されている第2の基板としての対向基板30と、
TFTガラス基板20と対向基板30との間に介挿され、電気泳動粒子41を含有してなる電気泳動層40と、
TFTガラス基板20、対向基板30及び電気泳動層40を備える表示部50と、
画面更新時、画素電極22と対向電極31との間の電気泳動粒子41に所定の期間、所定の電圧を印加して、表示部50の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新させる電圧印加部60と、
を備えるメモリ性を有する画像表示装置10であって、
電気泳動粒子41は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にするn種類(nは2以上の整数)の帯電粒子C1,・・・,Cnからなり、
各帯電粒子C1,・・・Cnは、帯電粒子Cnのしきい値電圧|Vth(Cn)|<・・・<帯電粒子C1のしきい値電圧|Vth(C1)|の関係性を備え、
更新すべき次画面を構成する各画素23の、帯電粒子C1の相対色濃度がR1,・・・,帯電粒子Cnの相対色濃度がRnであるとき、
電圧が印加される所定の期間である画面更新期間80の最終サブフレーム期間Eは、
帯電粒子Cnの相対色濃度Rnに依存する、電圧VE(Rn)を印加する、
ことを特徴とする。
【0118】
ここで電圧VE(Rn)は、帯電粒子Cnの相対色濃度が1のときの電圧VE(Rn=1)と、相対色濃度が0のときの電圧VE(Rn=0)とが異なることを特徴とする。特に、VE(Rn=1)=0で、VE(Rn=0)≠0である場合や、VE(Rn=1)≠0で、VE(Rn=0)=0である場合を含む。
【0119】
また、以下のようにも一般化できる。
更新すべき前記次画面を構成する前記各画素における前記帯電粒子Cmの相対色濃度がRmであるとき、
前記画面更新期間は、第1の期間から第nの期間までの全てと前記最終期間とを含み、
前記第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、前記帯電粒子C1を相対色濃度R1とし、
第mの期間は、第mの電圧Vm,−Vm又は0を印加して、前記帯電粒子C1から帯電粒子C(m−1)までをそれぞれ相対色濃度R1からR(m−1)までに保持したまま、前記帯電粒子Cmを相対色濃度Rmとし、
前記しきい値電圧と印加する前記電圧とは、
|Vth(Cm)|<|Vm|<|Vth(C(m−1))|、
|Vth(C1)|<|V1|、及び
0<|VE|<|Vn|
の関係を満たす、としてもよい。
【0120】
本実施形態2によれば、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にする帯電粒子C,M,Yを用いたカラー電気泳動表示素子である画像表示装置10において、表示用の電源オフ時に発生する画素電極22と対向電極31との電位差ΔVを補償することにより、電源オフ後に最も大きな帯電量を持つ(しきい値電圧の小さな)帯電粒子Cの動きを抑制できるので、画面の保持性(メモリ性)を向上できる。
【0121】
[実施形態3]
実施形態1、2では、画面更新期間の対向電極電圧Vcomをフィードスルー電圧分マイナスになるようにすなわちVcom=−Vfdになるように設定し、保持期間の対向電極電圧Vcomを表示の電源電圧をオフすることでVcom→0[V]に変化するように設定する。これに対し、本実施形態3では、表示電源の周辺回路の簡便化のために、対向電極電圧Vcomは画面更新期間か保持期間かにかかわらず基準電位(GND,0[V])に設定する。この場合、実施形態1、2における各サブフレーム群及び最終サブフレームに印加する電圧は、フィードスルー分、プラスにオフセットする必要がある。
【0122】
本実施形態3の画像表示装置は、実施形態1、2と同様に、無極性の白粒子と同極性で異なる帯電量を持つC,M,Yの電気泳動粒子をもつアクティブマトリクス型カラー電気泳動表示装置である。そして、本実施形態3の画像表示装置は、電圧印加部の一部の機能を除き、実施形態1、2の画像表示装置と同じ構成であるので、その詳しい説明を省略する。
【0123】
本実施形態3の駆動方法は、実施形態1の駆動方法と同様に、複数のサブフレーム期間に、一定の電圧を印加し続けることで所定の画像が更新されるPWM駆動が採用される。
【0124】
実施形態1では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が次のようになっている。
画面更新期間の対向電極電圧:−Vfd
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1,0,−V1
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2,0,−V2
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3,0,−V3
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE
【0125】
実施形態2では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が次のようになっている。
画面更新期間の対向電極電圧:−Vfd
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1,0,−V1
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2,0,−V2
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3,0,−V3
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE(C=1)、VE(C=0)
【0126】
これに対して、本実施形態3では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が実施形態1に対応した次のようになっている。
画面更新期間の対向電極電圧:0
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1+Vfd,+Vfd,−V1+Vfd
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2+Vfd,+Vfd,−V2+Vfd
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3+Vfd,+Vfd,−V3+Vfd
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE(0)+Vfd
【0127】
あるいは、本実施形態3では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が実施形態2に対応した次のようになっている。
画面更新期間の対向電極電圧:0
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1+Vfd,+Vfd,−V1+Vfd
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2+Vfd,+Vfd,−V2+Vfd
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3+Vfd,+Vfd,−V3+Vfd
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE(C=1)+Vfd、VE(C=0)+Vfd
【0128】
図13に、実施形態2において最終遷移状態N:(1,0,1)すなわち緑色を表示する駆動波形を示す。
図14に、本実施形態3において最終遷移状態N:(1,0,1)すなわち緑色を表示する駆動波形を示す。
図14に示す本実施形態3は、実施形態2に対応している。本実施形態3では、実施形態2における各データ電圧の印加電圧をフィードスルー電圧Vfd分プラスにオフセットすることにより、対向電極電圧Vcomを基準電位である0[V]にしている。
【0129】
本実施形態3によれば、実施形態1、2の効果に加え、対向電極電圧を生成する電源回路の設計が容易になり、また、対向電極電圧の調整が不要となる。
【0130】
なお、本実施形態3では、無極性の白粒子Wと同極性で異なる帯電量を持つ帯電粒子C,M,Yとから電気泳動素子を構成したが、各帯電粒子の帯電量の大小関係はこれに限定されない。また、帯電粒子C,M,Yが異極性で帯電量を持つ場合や、電気泳動粒子が2粒子の場合や3粒子よりも多い場合も本発明に含まれることはいうまでもない。
【0131】
[実施形態4]
実施形態3では、データ電圧の印加電圧をフィードスルー電圧Vfd分プラスにオフセットすることで、対向電極電圧を基準電位である0[V]にする。しかし、この場合、リセット期間や第1〜第3のサブフレーム群期間では、+Vfdを出力する必要があり、+V,0、−Vしか出力できない3値ドライバを用いることができない。
【0132】
これに対して、本実施形態4では、対向電極電圧は基準電位に固定しつつ、通常の3値ドライバでも対応可能な、駆動波形を提供する。そのために、画面更新期間全体に渡るフィードスルー電圧の時間積分−∫Vfddt(積分期間は画面更新期間全体)を調整するために、
Vc×Tc=∫Vfddt …(式4.1)
(Tc:DCキャンセル期間の時間幅、Vc:DCキャンセル期間のデータ電圧)
となるデータ電圧Vcを印加するDCキャンセル補償サブフレーム群期間を追加する。
【0133】
これにより、リセット期間及び第1〜第3のサブフレーム群期間に印加する電圧はオフセットすることなく、最終サブフレーム期間の印加電圧のみVE→VE+Vfd分オフセットする。すなわち、本実施形態4の構成及び駆動方法は以下のようになる。
【0134】
本実施形態4の画像表示装置は、実施形態1、2と同様に、無極性の白粒子と同極性で異なる帯電量を持つC,M,Yの電気泳動粒子とを備えるアクティブマトリクス型カラー電気泳動表示装置である。そして、本実施形態4の画像表示装置は、電圧印加部の一部の機能を除き、実施形態1、2の画像表示装置と同じ構成であるので、その詳しい説明を省略する。
【0135】
本実施形態4の駆動方法は、実施形態1の駆動方法と同様に、複数のサブフレーム期間の間、一定の電圧を印加し続けることで所定の画像が更新されるPWM駆動が採用される。
【0136】
本実施形態4では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が、実施形態1に対応して次のようになっている。
画面更新期間の対向電極電圧:0
DCキャンセル補償期間:Vc(式4.1を満たす電圧)
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1,0,−V1
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2,0,−V2
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3,0,−V3
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE(0)+Vfd
【0137】
図15に、最終遷移状態N:(1,0,1)の緑表示の駆動波形を示す。ここでは、DCキャンセル群期間のデータ電圧をV1に設定し、式(4.1)を満たすように、DCキャンセル期間の時間を設定した。
【0138】
又は、本実施形態4では、複数のサブフレームに渡る駆動期間が、実施形態2に対応して次のようになっている。
【0139】
1.最終サブフレーム電圧を0[V]とした場合に画素電極−対向電極間電位差時間積∫ΔVdt<0となる場合には、
画面更新期間の対向電極電圧:0
DCキャンセル補償期間:Vc(式4.1を満たす電圧)
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1,0,−V1
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2,0,−V2
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3,0,−V3
最終サブフレーム期間のデータ電圧:VE(C=1)+Vfd(正の値)、0
【0140】
2.最終サブフレーム電圧を0[V]とした場合に画素電極−対向電極間電位差時間積∫ΔVdt>0となる場合には、
画面更新期間の対向電極電圧:0
DCキャンセル補償期間:Vc(式4.1を満たす電圧)
リセット期間、第1のサブフレーム群期間のデータ電圧:V1,0,−V1
第2のサブフレーム群期間のデータ電圧:V2,0,−V2
第3のサブフレーム群期間のデータ電圧:V3,0,−V3
最終サブフレーム期間のデータ電圧:0、VE(C=0)+Vfd(負の値)
【0141】
図16に、∫ΔVdt<0の場合の、最終遷移状態N:(1,0,1)の緑表示の駆動波形を示す。
図17に、∫ΔVdt<0の場合の、最終遷移状態N:(0,1,1)の赤表示の駆動波形を示す。N:(1,0,1)の駆動波形の最終サブフレーム電圧はVE(C=1)+Vfdであり、N:(0,1,1)の駆動波形の最終サブフレーム電圧は0[V]に設定されている。また、DCキャンセル群期間のデータ電圧をV1に設定し、式(4.1)を満たすように、DCキャンセル期間の時間を設定した。
【0142】
本実施形態4によれば、実施形態1〜3の効果に加え、対向電極電圧を生成する電源回路の設計が容易になり、また、対向電極電圧の調整が不要となるとともに、通常の3値ドライバでも対応可能となり、ドライバのコストダウンが図れる。
【0143】
なお、本実施形態4では、無極性の白粒子Wと同極性で異なる帯電量を持つ帯電粒子C,M,Yとから電気泳動素子を構成したが、各帯電粒子の帯電量の大小関係はこれに限定されない。また、帯電粒子C,M,Yが異極性で帯電量を持つ場合や、電気泳動粒子が2粒子の場合や3粒子よりも多い場合も本発明に含まれることはいうまでもない。
【0144】
[総括]
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0145】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は以下の構成に限定されるものではない。
【0146】
[付記1]スイッチング素子と画素電極とを有する画素がマトリクス状に複数配列されている第1の基板と、
対向電極が形成されている第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に介挿され、電気泳動粒子を含有してなる電気泳動層と、
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記電気泳動層を有する表示部と、
画面更新期間に、前記画素電極と前記対向電極とを介して前記電気泳動粒子に電圧を印加して、前記表示部の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新する電圧印加部と、
を備えるメモリ性を有する画像表示装置であって、
前記電気泳動粒子は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧とを異にするn種類(nは2以上の整数)の帯電粒子C1から帯電粒子Cnまでを含み、
mを2からnまでの全ての整数としたとき、前記帯電粒子Cmのしきい値電圧|Vth(Cm)|は、|Vth(Cm)|<|Vth(C(m−1))|の関係を満たし、
前記電圧印加部は、前記画面更新期間の最終期間に、前記帯電粒子Cnの動きを抑制する補償電圧を印加する、
ことを特徴とするメモリ性を有する画像表示装置。
【0147】
[付記2]前記補償電圧は、基準電位と異なる電圧VEである、
ことを特徴とする付記1記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0148】
[付記3]前記画素電極と前記対向電極との電位差についての、前記電圧印加部による電圧印加を終了してから∞までの時間による定積分を
∫ΔVdt=∫(Vpix−Vcom)dt
とした場合、
前記最終期間に電圧0を印加したときの前記定積分の絶対値、前記最終期間に前記電圧VEを印加したときの前記定積分の絶対値を、それぞれ
|∫ΔVdt(0)|、|∫ΔVdt(VE≠0)|としたとき、
前記電圧VEは、
|∫ΔVdt(0)|>|∫ΔVdt(VE≠0)|
の関係を満たす、
ことを特徴とする付記2記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0149】
[付記4]更新すべき前記次画面を構成する前記各画素における前記帯電粒子Cmの相対色濃度がRmであるとき、
前記画面更新期間は、第1の期間から第nの期間までの全てと前記最終期間とを含み、
前記第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、前記帯電粒子C1を相対色濃度R1とし、
第mの期間は、第mの電圧Vm,−Vm又は0を印加して、前記帯電粒子C1から帯電粒子C(m−1)までをそれぞれ相対色濃度R1からR(m−1)までに保持したまま、前記帯電粒子Cmを相対色濃度Rmとし、
前記しきい値電圧と印加する前記電圧とは、
|Vth(Cm)|<|Vm|<|Vth(C(m−1))|、
|Vth(C1)|<|V1|、及び
0<|VE|<|Vn|
の関係を満たす
ことを特徴とする付記2又は3記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0150】
[付記5]更新すべき前記次画面を構成する前記各画素における前記帯電粒子Cnの相対色濃度がRnであるとき、
前記補償電圧は、前記相対色濃度Rnに依存する電圧VE(Rn)である、
ことを特徴とする付記1記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0151】
[付記6]前記電圧VE(Rn)は、前記相対色濃度Rnが1のときの電圧VE(Rn=1)と、相対色濃度Rnが0のときの電圧VE(Rn=0)とで異なる、
ことを特徴とする付記5記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0152】
[付記7]前記電圧VE(Rn=1)及び前記電圧VE(Rn=0)は、
VE(Rn=1)=0であるとき、VE(Rn=0)≠0である、
ことを特徴とする付記6記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0153】
[付記8]前記電圧VE(Rn=1)及び前記電圧VE(Rn=0)は、
VE(Rn=1)≠0であるとき、VE(Rn=0)=0である、
ことを特徴とする付記6記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0154】
[付記9]更新すべき前記次画面を構成する前記各画素における前記帯電粒子Cmの相対色濃度がRmであるとき、
前記画面更新期間は、第1の期間から第nの期間までの全てと前記最終期間とを含み、
前記第1の期間は、第1の電圧V1,−V1又は0を印加して、前記帯電粒子C1を相対色濃度R1とし、
第mの期間は、第mの電圧Vm,−Vm又は0を印加して、前記帯電粒子C1から帯電粒子C(m−1)までをそれぞれ相対色濃度R1からR(m−1)までに保持したまま、前記帯電粒子Cmを相対色濃度Rmとし、
前記しきい値電圧と印加する前記電圧とは、
|Vth(Cm)|<|Vm|<|Vth(C(m−1))|、
|Vth(C1)|<|V1|、及び
0≦|VE(Rn)|<|Vn|
の関係を満たす、
ことを特徴とする付記5乃至8のいずれか一つに記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0155】
[付記10]前記対向電極に印加される電圧が基準電位である0[V]である、
ことを特徴とする付記2又は5記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0156】
[付記11]前記画面更新期間は、この画面更新期間全体に渡るフィードスルー電圧を補償するために、DCキャンセル電圧Vcを印加するDCキャンセル補償期間を更に含む、
ことを特徴とする付記10記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0157】
[付記21]スイッチング素子と画素電極とがマトリクス状に配列されている第1の基板と、
対向電極が形成されている第2の基板と、
前記第1の基板と第2の基板との間に介挿され、電気泳動粒子を含有してなる電気泳動層と、
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記電気泳動層を有する表示部と、
画面更新時、前記画素電極と前記対向電極との間の前記電気泳動粒子に所定の期間、所定の電圧を印加して、前記表示部の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新させる電圧印加部と、
を備えるメモリ性を有する画像表示装置であって、
前記電気泳動粒子は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にするn種類(nは2以上の自然数)の帯電粒子C1,・・・,Cnからなり、
各帯電粒子C1,・・・Cnは、帯電粒子Cnのしきい値電圧|Vth(Cn)|<・・・<帯電粒子C1のしきい値電圧|Vth(C1)|の関係性を有し、
更新すべき次画面を構成する各画素の、帯電粒子C1の相対色濃度がR1,・・・,帯電粒子Cnの相対色濃度がRnであるとき、
電圧が印加される前記所定の期間である画面更新期間の最終サブフレーム期間は、基準電位と異なる電圧VEを印加する、
ことを特徴とするメモリ性を有する画像表示装置。
【0158】
[付記22]前記画素電極−前記対向電極間電位差時間積を、
∫ΔVdt=∫(Vpix−Vcom)dt
(∫は電源オフから∞までの時間積)
とし、最終サブフレーム期間の印加電圧0[V]を与えた場合の前記時間積の絶対値を|∫ΔVdt|(0)、最終サブフレーム期間の印加電圧VEを与えた場合の前記時間積の絶対値を|∫ΔVdt(VE≠0)|としたとき、
|∫ΔVdt(0)|>|∫ΔVdt(VE≠0)|
の関係性を満たす、
ことを特徴とする付記21記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0159】
[付記23]前記画面更新期間は
第1の電圧V1(又は−V1)又は/及び0[V]を印加して、前記帯電粒子C1,・・・,Cnの相対色濃度がR1となる第1のサブフレーム群と、
・・・、
第nの電圧Vn(又は−Vn)又は/及び0[V]を印加して、前記帯電粒子C1,・・・、Cn−1の相対色濃度をR1,・・・,Rn−1に保持したまま、前記帯電粒子Cnの相対色濃度がRnとなる第nのサブフレーム群と、
前記最終サブフレームとを含み、
前記各帯電粒子の前記しきい値電圧と、前記各電圧印加期間における前記電圧とは、
|Vth(cn)|<|Vn|<|Vth(cn−1)|,・・・,
|Vth(c1)|<|V1|及び
0<|VE|<|Vn|の関係を満たす、
ことを特徴とする付記21又は22記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0160】
[付記24]スイッチング素子と画素電極とがマトリクス状に配列されている第1の基板と、
対向電極が形成されている第2の基板と、
前記第1の基板と第2の基板との間に介挿され、電気泳動粒子を含有してなる電気泳動層と、
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記電気泳動層を有する表示部と、
画面更新時、前記画素電極と前記対向電極との間の前記電気泳動粒子に所定の期間、所定の電圧を印加して、前記表示部の表示状態を所定の色濃度の次画面に更新させる電圧印加部と、
を備えるメモリ性を有する画像表示装置であって、
前記電気泳動粒子は、互いに色と泳動を開始するしきい値電圧を異にするn種類(nは2以上の自然数)の帯電粒子C1,・・・,Cnからなり、
各帯電粒子C1,・・・Cnは、帯電粒子Cnのしきい値電圧|Vth(Cn)|<・・・<帯電粒子C1のしきい値電圧|Vth(C1)|の関係性を有し、
更新すべき次画面を構成する各画素の、帯電粒子C1の相対色濃度がR1,・・・,帯電粒子Cnの相対色濃度がRnであるとき、
電圧が印加される前記所定の期間である画面更新期間の最終サブフレーム期間は、
前記帯電粒子Cnの相対色濃度Rnに依存する、電圧VE(Rn)を印加する、
ことを特徴とするメモリ性を有する画像表示装置。
【0161】
[付記25]前記電圧VE(Rn)は、前記帯電粒子Cnの相対色濃度が1のときの電圧VE(Rn=1)と、前記帯電粒子Cnの相対色濃度が0のときの電圧VE(Rn=0)とが異なる、
ことを特徴とする付記24記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0162】
[付記26]前記VE(Rn=1)=0であるとき、前記VE(Rn=0)≠0である、
ことを特徴とする付記25記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0163】
[付記27]前記VE(Rn=1)≠0であるとき、VE(Rn=0)=0である、
ことを特徴とする付記25記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0164】
[付記28]前記画面更新期間は、
第1の電圧V1(又は−V1)又は/及び0[V]を印加して、前記帯電粒子C1,・・・,Cnの相対色濃度がR1となる第1のサブフレーム群と、
・・・、
第nの電圧Vn(又は−Vn)又は/及び0[V]を印加して、前記帯電粒子C1,・・・,Cn−1の相対色濃度をR1,・・・,Rn−1に保持したまま、前記帯電粒子Cnの相対色濃度がRnとなる第nのサブフレーム群と
前記最終サブフレームとを含み、
前記各帯電粒子の前記しきい値電圧と、前記各電圧印加期間における前記電圧は、
|Vth(cn)|<|Vn|<|Vth(cn−1)|
・・・、
|Vth(c1)|<|V1|及び
0≦|VE(Rn)|<|Vn|
の関係を満たす、
ことを特徴とする付記24記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0165】
[付記29]前記対向電極に印加する電圧が基準電位である0[V]である、
ことを特徴とする付記21又は24記載のメモリ性を有する画像表示装置。
【0166】
[付記30] 前記画面更新期間は、この画面更新期間全体に渡るフィードスルー電圧を補償するために、DCキャンセル電圧Vcを印加するDCキャンセル補償サブフレーム群を更に含む、
ことを特徴とする付記29記載のメモリ性を有する画像表示装置。