【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の
技術に基づく発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、
本発明に関連する技術につき説明する。
【0010】
本発明に関連する第1
の技術は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0011】
本発明者は、通電時、リアクトルを構成するコイルからリアクトルの外周面に発生する漏れ磁束に着目した。即ち、通電時、リアクトルは、センターコアに一方のサイドコアから他方のサイドコアへ向けて主磁路を形成すると同時に、リアクトルの外周面に漏れ磁束を発生させる。そして、測定の結果、この漏れ磁束の磁束密度は通電量に比例して変化することを確認した。
【0012】
このため、リアクトルの外周面の適切な位置に電流測定手段(電流センサ)を設置することにより、リアクトルに流れる電流を精度高く検出することができる。
【0013】
そして、本
技術においては、電流測定手段(電流センサ)をリアクトルと一体化して形成しているため、リアクトル自体の容積を実質的に増加させることがなく、PCUの容積や重量の増加を抑制することができる。また、リアクトルをコンバータなどに組み込んだ後、バスバや電流センサを別途組み込む必要がないため、工程の簡略化を図ることができると共に、PCUを構成する部品点数の削減を図ることができる。
【0014】
本発明に関連する第2
の技術は、
前記電流測定手段が、ホール素子またはホールICを使用することを特徴とする
第1
の技術に記載のリアクトルである。
【0015】
電流測定手段(電流センサ)としては、ホール効果を利用する電流センサ、カレントトランスを利用する電流センサ、シャント抵抗を利用する電流センサなど種々の電流センサがあるが、ホール効果を利用するホール素子またはホールICの使用が、絶縁、直流成分の検出、検出精度などの観点より好ましい。
【0016】
本発明に関連する第3
の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されていることを特徴とする
第1
の技術または
第2
の技術に記載のリアクトルである。
【0017】
リアクトルの外周面の内でも、コイルが巻回されているセンターコア付近は、漏れ磁束の磁束密度が高いため、センターコアに沿って電流測定手段を配置した場合、より高い精度でリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0018】
本発明に関連する第4
の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの上面または下面に沿って配置されていることを特徴とする
第3
の技術に記載のリアクトルである。
【0019】
センターコアに沿って電流測定手段を配置するに際して、サイドコアとセンターコアとで形成される面の上側の面(上面)または下側の面(下面)、あるいは側面のいずれの面に沿って電流測定手段を配置するかは、設計上の制約などを考慮して決定すればよいが、配置の容易さを考慮すると、センターコアの上面または下面に沿って配置することが好ましい。
【0020】
本発明に関連する第5
の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの側面に沿って配置されていることを特徴とする
第3
の技術に記載のリアクトルである。
【0021】
電流測定手段をセンターコアの側面に沿って配置することにより、リアクトルの厚さを薄くすることができる。
【0022】
本発明に関連する第6
の技術は、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されていることを特徴とする
第3
の技術ないし
第5
の技術いずれか1
つに記載のリアクトルである。
【0023】
一般に、リアクトルを構成する一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されている。そして、通電時に発生した漏れ磁束は、サイドコアに近いミドルコアの方が磁束密度が高くなっている。このため、サイドコアに近いミドルコアに沿って電流測定手段を配置した場合、より高い精度でリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0024】
本発明に関連する第7
の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の50%以上である領域内に配置されていることを特徴とする
第3
の技術ないし
第6
の技術のいずれか1
つに記載のリアクトルである。
【0025】
そして、
本発明に関連する第8
の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域内に配置されていることを特徴とする
第3
の技術ないし
第6
の技術のいずれか1
つに記載のリアクトルである。
【0026】
サイドコアに近いミドルコアに沿って電流測定手段を配置するに際して、ミドルコアの外周面においても位置により漏れ磁束の磁束密度が変化しており、高い磁束密度を示す領域に電流測定手段を配置することにより、より精度高くリアクトルに流れる電流を検出することができる。本発明者が行った実験の結果によると、ピーク値の磁束密度の50%以上の領域であれば電流の確実な検出が可能となり、70%以上の領域であればより精度高く電流を検出することが可能となる。
【0027】
本発明に関連する第9
の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、
前記サイドコアに近いミドルコアの上面で、
前記ミドルコアの上面の長さをL、幅をWとしたときに、前記ミドルコアの前記サイドコア側の端から0.2L〜0.6L、外周面側の端から0〜0.7Wの領域内に配置されている
ことを特徴とする
第6
の技術に記載のリアクトルである。
【0028】
次に、本発明者は、一般的に広く用いられているセンターコアがそれぞれ3個のミドルコア(3個/列×2列)で構成されているリアクトルの上面における漏れ磁束の磁束分布を詳細に調べ、上記した「漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域」を具体的に求めた。
【0029】
図7はコア7を上部から見た図であり、各センターコア71は3個のミドルコア71aより構成されて、両端はサイドコア73に挟まれている。また、Wはミドルコア71aの幅であり、Lは長さである。
【0030】
そして実験の結果、前記ミドルコア(サイドコア73側のミドルコア)71aのサイドコア73側の端から0.2L〜0.6L、外側の端から0〜0.7Wで規定される領域が、漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域であり、この位置が、電流測定手段(電流センサ)の中心部を配置する位置として好適であることが分かった。
【0031】
本発明に関連する第10
の技術は、
前記サイドコアの一方に、一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部が設けられており、
前記電流測定手段が、前記巻き返し部の上部に設置されている
ことを特徴とする
第1
の技術または
第2
の技術に記載のリアクトルである。
【0032】
一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部の上部に電流測定手段を設けた場合、前記した漏れ磁束に加えて、巻き返し部で発生する磁束を使用してリアクトルに流れる電流も検出できるため、さらに精度高くリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0033】
本発明に関連する第11
の技術は、
前記センターコア、前記サイドコアおよび前記電流測定手段が、モールド樹脂加工により固定されていることを特徴とする
第1
の技術ないし
第10
の技術のいずれか1
つに記載のリアクトルである。
【0034】
モールド樹脂加工することにより、センターコア、サイドコア、電流測定手段(電流センサ)などの全てを一度に固定することができ、また樹脂加工であるため、リアクトルの重量増加を抑制することができる。
【0035】
本発明は上記の各技術に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の50%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0036】
また、請求項2に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0037】
また、請求項3に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、
前記サイドコアに近いミドルコアの上面で、
前記ミドルコアの上面の長さをL、幅をWとしたときに、前記ミドルコアの前記サイドコア側の端から0.2L〜0.6L、外周面側の端から0〜0.7Wの領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0038】
また、請求項4に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記サイドコアの一方に、一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部が設けられており、
前記電流測定手段が、前記巻き返し部の上部に設置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0039】
また、請求項5に記載の発明は、
前記電流測定手段が、ホール素子またはホールICを使用することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0040】
また、請求項6に記載の発明は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの上面または下面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0041】
また、請求項7に記載の発明は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの側面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0042】
また、請求項8に記載の発明は、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2および請求項7のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0043】
また、請求項9に記載の発明は、
前記センターコア、前記サイドコアおよび前記電流測定手段が、モールド樹脂加工により固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のリアクトルである。