特許第5950246号(P5950246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950246
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   H01F37/00 K
   H01F37/00 MZHV
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-9033(P2012-9033)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-149785(P2013-149785A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】鄭 暁光
(72)【発明者】
【氏名】大橋 紳悟
(72)【発明者】
【氏名】馬場 猛
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−267360(JP,A)
【文献】 特開2010−272772(JP,A)
【文献】 特開2010−278218(JP,A)
【文献】 米国特許第6429639(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の50%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、
前記サイドコアに近いミドルコアの上面で、
前記ミドルコアの上面の長さをL、幅をWとしたときに、前記ミドルコアの前記サイドコア側の端から0.2L〜0.6L、外周面側の端から0〜0.7Wの領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記サイドコアの一方に、一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部が設けられており、
前記電流測定手段が、前記巻き返し部の上部に設置されている
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項5】
前記電流測定手段が、ホール素子またはホールICを使用することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記電流測定手段が、前記センターコアの上面または下面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記電流測定手段が、前記センターコアの側面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2および請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記センターコア、前記サイドコアおよび前記電流測定手段が、モールド樹脂加工により固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッドカーのコンバータなどに用いられるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題などを背景に、ハイブリッド自動車が急激に普及し、電気自動車などの開発も進められている。これらのハイブリッド自動車や電気自動車は、従来のガソリンエンジンなどの内燃機関と異なり、電気によるモータ駆動系が備えられている。
【0003】
このような電気によるモータ駆動系は、300V程度の高圧バッテリー、パワーコントロールユニット(PCU)、モータからなり、ハーネスにより結線されている。
【0004】
PCUには、電圧を600V程度まで昇圧する昇圧コンバータ部、モータを駆動させるインバータ部、制御部、内部結線、電流センサなどの各種センサが内包されている。昇圧コンバータ部は、スイッチング半導体素子、磁性体からなる環状のコアと巻線を巻回したコイルとを備えたリアクトル、およびコンデンサとから構成されている。内部配線には、ピークで200〜300Aの電流が流れることを考慮して、金属配線(バスバ)が使用され、電流の状態を監視する電流センサが取り付けられている(特許文献1)。電流センサは基板、ホール素子、集磁コアによって構成されている。
【0005】
そして、昇圧コンバータを用いて高圧バッテリーの300V程度から約600V程度にまで昇圧された電圧が、インバータを介して制御されることにより、モータの駆動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−279150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、モータの駆動のために種々の部品が組み込まれるが、車両においては、限られた空間に多くの部品を詰め込む必要があるため、部品の小型化、軽量化が強く望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、リアクトルについて、より小型化、軽量化が図られた製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の技術に基づく発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明に関連する技術につき説明する。
【0010】
本発明に関連する第の技術は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0011】
本発明者は、通電時、リアクトルを構成するコイルからリアクトルの外周面に発生する漏れ磁束に着目した。即ち、通電時、リアクトルは、センターコアに一方のサイドコアから他方のサイドコアへ向けて主磁路を形成すると同時に、リアクトルの外周面に漏れ磁束を発生させる。そして、測定の結果、この漏れ磁束の磁束密度は通電量に比例して変化することを確認した。
【0012】
このため、リアクトルの外周面の適切な位置に電流測定手段(電流センサ)を設置することにより、リアクトルに流れる電流を精度高く検出することができる。
【0013】
そして、本技術においては、電流測定手段(電流センサ)をリアクトルと一体化して形成しているため、リアクトル自体の容積を実質的に増加させることがなく、PCUの容積や重量の増加を抑制することができる。また、リアクトルをコンバータなどに組み込んだ後、バスバや電流センサを別途組み込む必要がないため、工程の簡略化を図ることができると共に、PCUを構成する部品点数の削減を図ることができる。
【0014】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段が、ホール素子またはホールICを使用することを特徴とするの技術に記載のリアクトルである。
【0015】
電流測定手段(電流センサ)としては、ホール効果を利用する電流センサ、カレントトランスを利用する電流センサ、シャント抵抗を利用する電流センサなど種々の電流センサがあるが、ホール効果を利用するホール素子またはホールICの使用が、絶縁、直流成分の検出、検出精度などの観点より好ましい。
【0016】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されていることを特徴とするの技術またはの技術に記載のリアクトルである。
【0017】
リアクトルの外周面の内でも、コイルが巻回されているセンターコア付近は、漏れ磁束の磁束密度が高いため、センターコアに沿って電流測定手段を配置した場合、より高い精度でリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0018】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの上面または下面に沿って配置されていることを特徴とするの技術に記載のリアクトルである。
【0019】
センターコアに沿って電流測定手段を配置するに際して、サイドコアとセンターコアとで形成される面の上側の面(上面)または下側の面(下面)、あるいは側面のいずれの面に沿って電流測定手段を配置するかは、設計上の制約などを考慮して決定すればよいが、配置の容易さを考慮すると、センターコアの上面または下面に沿って配置することが好ましい。
【0020】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの側面に沿って配置されていることを特徴とするの技術に記載のリアクトルである。
【0021】
電流測定手段をセンターコアの側面に沿って配置することにより、リアクトルの厚さを薄くすることができる。
【0022】
本発明に関連する第の技術は、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されていることを特徴とするの技術ないしの技術いずれか1に記載のリアクトルである。
【0023】
一般に、リアクトルを構成する一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されている。そして、通電時に発生した漏れ磁束は、サイドコアに近いミドルコアの方が磁束密度が高くなっている。このため、サイドコアに近いミドルコアに沿って電流測定手段を配置した場合、より高い精度でリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0024】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の50%以上である領域内に配置されていることを特徴とするの技術ないしの技術のいずれか1に記載のリアクトルである。
【0025】
そして、本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域内に配置されていることを特徴とするの技術ないしの技術のいずれか1に記載のリアクトルである。
【0026】
サイドコアに近いミドルコアに沿って電流測定手段を配置するに際して、ミドルコアの外周面においても位置により漏れ磁束の磁束密度が変化しており、高い磁束密度を示す領域に電流測定手段を配置することにより、より精度高くリアクトルに流れる電流を検出することができる。本発明者が行った実験の結果によると、ピーク値の磁束密度の50%以上の領域であれば電流の確実な検出が可能となり、70%以上の領域であればより精度高く電流を検出することが可能となる。
【0027】
本発明に関連する第の技術は、
前記電流測定手段の中心部が、
前記サイドコアに近いミドルコアの上面で、
前記ミドルコアの上面の長さをL、幅をWとしたときに、前記ミドルコアの前記サイドコア側の端から0.2L〜0.6L、外周面側の端から0〜0.7Wの領域内に配置されている
ことを特徴とするの技術に記載のリアクトルである。
【0028】
次に、本発明者は、一般的に広く用いられているセンターコアがそれぞれ3個のミドルコア(3個/列×2列)で構成されているリアクトルの上面における漏れ磁束の磁束分布を詳細に調べ、上記した「漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域」を具体的に求めた。
【0029】
図7はコア7を上部から見た図であり、各センターコア71は3個のミドルコア71aより構成されて、両端はサイドコア73に挟まれている。また、Wはミドルコア71aの幅であり、Lは長さである。
【0030】
そして実験の結果、前記ミドルコア(サイドコア73側のミドルコア)71aのサイドコア73側の端から0.2L〜0.6L、外側の端から0〜0.7Wで規定される領域が、漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域であり、この位置が、電流測定手段(電流センサ)の中心部を配置する位置として好適であることが分かった。
【0031】
本発明に関連する第10の技術は、
前記サイドコアの一方に、一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部が設けられており、
前記電流測定手段が、前記巻き返し部の上部に設置されている
ことを特徴とするの技術またはの技術に記載のリアクトルである。
【0032】
一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部の上部に電流測定手段を設けた場合、前記した漏れ磁束に加えて、巻き返し部で発生する磁束を使用してリアクトルに流れる電流も検出できるため、さらに精度高くリアクトルに流れる電流を検出することができる。
【0033】
本発明に関連する第11の技術は、
前記センターコア、前記サイドコアおよび前記電流測定手段が、モールド樹脂加工により固定されていることを特徴とするの技術ないし10の技術のいずれか1に記載のリアクトルである。
【0034】
モールド樹脂加工することにより、センターコア、サイドコア、電流測定手段(電流センサ)などの全てを一度に固定することができ、また樹脂加工であるため、リアクトルの重量増加を抑制することができる。
【0035】
本発明は上記の各技術に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の50%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0036】
また、請求項2に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、前記漏れ磁束の磁束密度がピーク値の70%以上である領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0037】
また、請求項3に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記電流測定手段が、前記センターコアに沿って配置されており、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されており、
前記電流測定手段の中心部が、
前記サイドコアに近いミドルコアの上面で、
前記ミドルコアの上面の長さをL、幅をWとしたときに、前記ミドルコアの前記サイドコア側の端から0.2L〜0.6L、外周面側の端から0〜0.7Wの領域内に配置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0038】
また、請求項4に記載の発明は、
相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回されたコイルを備えた一対のセンターコアと、
前記一対のセンターコアの両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコアと
を備えたリアクトルであって、
前記リアクトルの漏れ磁束を利用して前記リアクトルに流れる電流を測定する電流測定手段が、前記リアクトルの外周面に設置されており、
前記サイドコアの一方に、一方のセンターコアから他方のセンターコアへコイルを巻き返す巻き返し部が設けられており、
前記電流測定手段が、前記巻き返し部の上部に設置されている
ことを特徴とするリアクトルである。
【0039】
また、請求項5に記載の発明は、
前記電流測定手段が、ホール素子またはホールICを使用することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0040】
また、請求項6に記載の発明は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの上面または下面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0041】
また、請求項7に記載の発明は、
前記電流測定手段が、前記センターコアの側面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0042】
また、請求項8に記載の発明は、
前記一対のセンターコアは、それぞれ2個以上のミドルコアで構成されており、
前記電流測定手段が、前記サイドコアに近いミドルコアに沿って配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2および請求項7のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【0043】
また、請求項9に記載の発明は、
前記センターコア、前記サイドコアおよび前記電流測定手段が、モールド樹脂加工により固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のリアクトルである。
【発明の効果】
【0044】
本発明においては、より小型化、軽量化が図られたリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施の形態におけるリアクトルを模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるリアクトルの磁束密度の測定について説明する図である。
図3】本発明の一実施の形態においてホールICの出力電圧を測定した結果を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態においてホールICの出力電圧を測定した結果を立体的に示す図である。
図5】本発明の一実施の形態のY方向におけるホールICの好ましい配置位置の決定方法を説明する図である。
図6】本発明の一実施の形態のX方向におけるホールICの好ましい配置位置の決定方法を説明する図である。
図7】本発明の一実施の形態のホールICの好ましい配置位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0047】
1.リアクトルの構成
図1は、本実施の形態におけるリアクトルを模式的に示す斜視図である。図1において、1はリアクトル、11はセンターコア、12はコイル、13はサイドコア、14は電流測定部、14aはホールIC(電流測定手段)、14bは基板である。なお、本実施の形態においては、リアクトル1は、(縦)80×(横)120×(高さ)60mmの大きさに作製されている。
【0048】
図1に示すように、リアクトル1は、相互に対向して並列配置され、各々に巻線が巻回された複数のコイル12を備えた一対のセンターコア11と、センターコア11の両端に、相互に対向して並列配置された一対のサイドコア13とを備えている。
【0049】
また、サイドコア13寄りに、センターコア11の上面に沿って電流測定部14が配置され、電流測定部14は、基板14bにホールIC14aが設けられて構成されている。このようにセンターコア11に沿ってホールIC14aを設けることにより、リアクトルの外周面に発生した漏れ磁束を検知して、リアクトル1に流れる電流を精度よく測定することができる。
【0050】
なお、基板14b上には、チップ抵抗、チップコンデンサなどの周辺部品を実装してもよい。また、基板14bは、エポキシ系接着剤などを用いて、固定されていることが好ましい。これにより、基板14bを安定して保持することができるため、ホールIC14aやリード(図示せず)の動きが規制されて、より安定した検出が行われる。
【0051】
ホールICに替えてホール素子を用いてもよい。また、図1ではホールIC14aがセンターコアの上面に沿って配置されているが、側面に沿って配置されていてもよい。
【0052】
センターコア11、サイドコア13および電流測定部14は、モールド樹脂(図示せず)加工により固定されている。
【0053】
一対のセンターコア11は、前記のようにそれぞれ2個以上のミドルコア(図7参照)で構成されており、例えば、2個/列×2列構成、3個/列×2列構成、4個/列×2列構成、あるいはそれ以上で構成され、前記のように一般的に3個/列×2列構成のタイプが広く用いられている。なお、各ミドルコアの幅(W)、長さ(L)(図7参照)、高さ(厚さ)は、それぞれ例えば、24mm、20mm、25mm程度である。
【0054】
また、センターコア11とサイドコア13および隣り合うミドルコアの間には所定の厚さ(1.5〜2.5mm程度)のギャップ材が配されて、エポキシ樹脂系接着剤などを用いて熱硬化させることにより、一体に接合されている。
【0055】
なお、巻線の巻回に際して、通常は、予め、センターコア11の周囲にPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂などから形成されたボビン(図示せず)が配される。
【0056】
各センターコア11およびサイドコア13の形成材としては、絶縁被覆処理された鉄粉が圧縮成形された軟磁性材が好ましく用いられる。そして、ギャップ材としては、PBT樹脂やPA(ポリアミド)樹脂、または磁性粉末が混入された樹脂材などが好ましく用いられる。
【0057】
また、コイルを形成する巻線としては、導体である銅をポリイミド樹脂などの被膜(厚み:約30〜40μm)で被覆した平角エナメル線(サイズとしては、例えば、4.5×1.7mm)などが好ましく用いられる。
【0058】
2.ホールICを配置する領域
ホールIC14aはその中心部が、漏れ磁束の磁束密度が高い領域に配置されていることが好ましく、具体的には、計測されるピーク値の50%以上の領域に配置されていることが好ましい。この領域にホールIC14aを配置することにより、漏れ磁束の磁束密度から電流の確実な検出が可能となり、70%以上の領域であればより精度高く電流を検出することが可能となる。
【0059】
以下、3個/列×2列のミドルコアから構成されるセンターコアを備えたリアクトルを例に採り、この領域の設定方法につき、具体的に説明する。
【0060】
(1)漏れ磁束の磁束密度の測定
ホールICを配置する具体的な領域は、リアクトルにおける漏れ磁束の磁束密度を、リアクトルのX方向およびY方向に測定した結果に基づいて設定される。図2は、本実施例におけるリアクトルの磁束密度の測定について説明する図であり、(a)は測定結果を示す図、(b)は測定方法を説明する図である。本実施の形態においては、リアクトルの上面に沿って、X方向、Y方向の座標を設定し、各座標における磁束密度を測定することにより、磁束分布を求めた。
【0061】
イ.座標の設定
X方向:一方のセンターコアの外周側端面から他方のセンターコアの外周側端面に向けて、両端をそれぞれX(0)、X(50)として、その間を50等分し、X(0)〜X(50)の座標を設定した。なお、図2(b)においては、下方のセンターコアにおけるX座標、即ち、X(25)〜X(50)のみを示している。
【0062】
Y方向:図2(b)に示すセンターコアの左方から右方に向けて、一番左側のミドルコアの左側5mmの箇所をY(0)、一番右側のミドルコアの右側5mmの箇所をY(80)として、その間を80等分し、Y(0)〜(80)の座標を設定した。
【0063】
ロ.ホールICの出力電圧の測定
コイルに30Aの電流を流し、X(0)〜X(50)までX座標を5ずつ変化させながら、各X位置でホールIC(Melexis社製、IC90288)をY方向にY(0)〜Y(75)までスキャンさせて、各座標におけるホールICの出力電圧を測定した(offset値:2.465V)。測定結果を表1に示すと共に、この結果に基づいて、各X座標におけるY方向のホールICの出力電圧を図3に示し、また各X座標および各Y座標を底面とする立体表示図を図4に示す。なお、表1において、縦方向がX座標であり、横方向がY座標である。
【0064】
【表1】
【0065】
図3、4に示された結果より、測定位置によりホールICの出力電圧が異なっていることが分かる。
【0066】
ハ.磁束密度の算定
次に、上記の測定結果を用いて、ホールICの感度値により、200Aの時の各座標における磁束密度B(T)を求めた。算定結果を表2に示す。なお、表2において、縦方向がX座標、横方向がY座標である。
【0067】
【表2】
【0068】
図2(a)に示した図は、上記表2のデータより、一方のセンターコアにおける測定値、即ち、X(25)〜X(50)における測定値を取り出してプロットしたものである。
【0069】
図2(a)に示す結果より、X方向については、リアクトルの中心軸に近いX(25)〜X(30)に比べて、リアクトルの外周面に近いX(40)〜X(50)の方が大きなピークを示しており、センターコアの外周面の方が磁束密度が高いことが分かる。
【0070】
また、Y方向については、サイドコアに近いY(10)やY(70)で大きなピークを示しており、サイドコアに近い箇所で磁束密度が高いことが分かる。
【0071】
このように、リアクトルの外周面およびサイドコアに近い箇所で高い磁束密度が観測されるのは、中心側では磁束が相殺されるためである。
【0072】
(2)ホールICを配置する領域の決定
次に、上記の測定結果に基づいて、ホールICを配置する好ましい領域を求めた。具体的には、前記したように、ピーク値の70%以上の領域であればより精度高く電流の検出が可能となるため、ピーク値が得られた箇所のX方向、Y方向のそれぞれの方向にピーク値の70%以上の磁束密度が得られる領域を求めた。
【0073】
図5は本実施の形態のY方向のホールICの好ましい配置位置の決定方法を説明する図であって、(a)はX方向において最大のピークが得られたX(50)における磁束密度のY方向への分布状況を示す図であり、(b)は前記ピーク値の70%以上となるY方向の範囲Aを求めた結果を示す図である。なお、(b)の右図は、(a)のピークを上下反転して示している。
【0074】
(b)より、Y方向の好ましい領域Aの長さは、サイドコア寄りのミドルコアの長さLに対して0.4Lであり、Aの中心はサイドコアの端部より0.4Lの位置にあることから、Y方向の好ましい領域は、サイドコアの端部より0.2L〜0.6Lの領域にあることが分かる。なお、(a)の右側におけるY(70)のピークについても同様であり、サイドコアの端部より0.2L〜0.6Lの領域が好ましい。
【0075】
図6は、本実施の形態のX方向のホールICの好ましい配置位置の決定方法を説明する図であって、(a)はY方向において最大のピークが得られたY(10)における磁束密度のX方向への分布状況を示す図であり、(b)は前記ピーク値の70%以上となるY方向の範囲Bを求めた結果を示す図である。
【0076】
(b)より、X方向の好ましい領域BはX(34)〜X(50)であることから、X方向の好ましい領域が、センターコアの外周面側から、ミドルコアの幅Wに対して約0.7Wまでの領域にあることが分かる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 リアクトル
7 コア
11、71 センターコア
12 コイル
13、73 サイドコア
14 電流測定部
14a ホールIC
14b 基板
71a ミドルコア
A Y方向の範囲
B X方向の範囲
L ミドルコアの長さ
W ミドルコアの幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7