特許第5950342号(P5950342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950342
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】投影面積算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   G06T7/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-152409(P2012-152409)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-16709(P2014-16709A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大黒 雅之
【審査官】 ▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−009875(JP,A)
【文献】 特開2007−310707(JP,A)
【文献】 大黒雅之 外4名,人体各部を対象とした放射解析のための投影面積率測定,日本建築学会計画系論文集,日本,2001年 9月,第547号,第17頁−第25頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
複数の部位を有する形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像を取得するステップと、
前記複数の方位に対応する前記複数の投影画像に基づいて、前記複数の部位の複数の平行投影面積を算出するステップと、
前記複数の方位に対応づけて、前記複数の部位のそれぞれの前記複数の平行投影面積を記憶するステップと
前記複数の方位の数及び前記複数の方位の間隔の少なくとも1つに基づいて立体角を算出するステップと、
前記複数の方位のそれぞれに対応する前記平行投影面積に前記立体角を乗算した結果を積算することによって有効放射面積を算出するステップと、
前記平行投影面積に対応づけて前記有効放射面積を記憶するステップと
を実行させるための投影面積算出プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
前記形状モデルにおける互いに接する複数の面要素の角度及び前記形状モデルにおける複数の面要素の密度の少なくとも1つに基づいて前記複数の部位の境界位置を算出するステップをさらに実行させるための請求項1に記載の投影面積算出プログラム。
【請求項3】
コンピュータに、
前記複数の投影画像を取得するステップにおいて、少なくとも1つの方位から見たときに前記形状モデルの少なくとも一部の領域と重なる障害物モデルを含む前記複数の投影画像を取得させ、
前記複数の平行投影面積を算出するステップにおいて、前記複数の投影画像のうち前記障害物モデルと重なった前記領域を除く領域の画像に基づいて前記複数の平行投影面積を算出させるための請求項1又は2に記載の投影面積算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形態係数の算出などに用いる平行投影面積を算出するための投影面積算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輻射熱伝達又は照度のシミュレーション、若しくは、物体又は空間の視認性のシミュレーションにおいては、建物、人及び工業製品等の評価対象物と周囲の面の形態係数が用いられている。形態係数を算出するための平行投影面積及び有効放射面積は、対象モデルと同じ形状の実物又は模型をさまざまな方向から写真撮影することによって算出されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
また、解析対象となる3次元図形を複数の面要素に分割し、それぞれの面要素の透視投影面積に基づいて算出した形態係数を用いて入熱量を算出する方法も知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−164667号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大黒雅之(M.Oguro),エドワード・アレンズ(E. Arens), ウイ・チャン(H. Zhang), 都築和代(K. Tsuzuki), 片山忠久(T. Katayama)著、「人体各部を対象とした放射解析のための投影面積率測定(Measurement of projected area factors for thermal radiation analysison each part of the human body)」、日本建築学会計画系論文集、2001年、No. 547, pp.17-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、平行投影面積及び有効放射面積を算出するためには対象モデルと同じ形状の実物又は模型をさまざまな方向から写真撮影する必要があったので、長時間を要するという問題があった。特に、平行投影面積を算出した結果に応じて対象モデルを修正して、修正後の対象モデルの平行投影面積を算出するには多大な手間と時間を要していた。
【0007】
さらに、平行投影面積を高い精度で算出することも困難であった。例えば、対象モデルの模型を用いる場合には、対象モデルの設計図通りに模型が作成されない場合があるので、対象モデルの形状に対する平行投影面積を高精度に算出することができなかった。また、写真撮影は限られた距離内で行う必要があるので、厳密に無限遠から対象モデルを見たときの平行投影面積を算出することもできなかった。
【0008】
また、従来の透視投影面積に基づいて算出した形態係数を用いて入熱量を算出する場合には、放射計算を行う空間(例えば、部屋)と入熱量を算出する対象(例えば、人間)とを一体の3次元形状でモデリングしておく必要があった。したがって、人の向きや立っている位置を変化させるたびに、部屋のモデルと一体化させた3次元形状モデルを作成する必要があったので、多大な工数を要していた。
【0009】
そこで、本発明はこれらの点を鑑みてなされたものであり、コンピュータに、複数の方位に対応する平行投影面積を短時間で高精度に算出して記憶媒体に記憶させるための投影面積算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明においては、コンピュータに、複数の部位を有する形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像を取得するステップと、複数の方位に対応する複数の投影画像に基づいて、複数の部位の複数の平行投影面積を算出するステップと、複数の方位に対応づけて、複数の部位のそれぞれの複数の平行投影面積を記憶するステップとを実行させるための投影面積算出プログラムを提供する。
【0011】
また、上記の投影面積算出プログラムは、コンピュータに、複数の方位の数及び複数の方位の間隔の少なくとも1つに基づいて立体角を算出するステップと、複数の方位のそれぞれに対応する平行投影面積に立体角を乗算した結果を積算することによって有効放射面積を算出するステップと、平行投影面積に対応づけて有効放射面積を記憶するステップとをさらに実行させてもよい。
【0012】
さらに、上記の投影面積算出プログラムは、コンピュータに、形状モデルにおける互いに接する複数の面要素の角度及び形状モデルにおける複数の面要素の密度の少なくとも1つに基づいて複数の部位の境界位置を算出するステップをさらに実行させてもよい。
【0013】
上記の投影面積算出プログラムは、複数の投影画像を取得するステップにおいて、少なくとも1つの方位から見たときに形状モデルの少なくとも一部の領域と重なる障害物モデルを含む複数の投影画像を取得させ、複数の平行投影面積を算出するステップにおいて、複数の投影画像のうち障害物モデルと重なった領域を除く領域の画像に基づいて複数の平行投影面積を算出させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の方位に対応する平行投影面積を短時間で高精度に算出して記憶媒体に記憶させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1本発明の参考例の投影面積算出プログラムのフローチャートの一例を示す。
図2A】人体の形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像の一例を示す。
図2B】人体の形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像の一例を示す。
図2C】人体の形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像の一例を示す。
図2D】建物の形状モデルの投影画像の一例を示す。
図3】形状モデルと複数の方位との関係を示す。
図4】平行投影面積の一例を示す。
図5】複数の高度角α及び複数の方位角βに対応する特定の部位の平行投影面積の一例を示す。
図6】第の実施形態の投影面積算出プログラムのフローチャートの一例を示す。
図7】形態係数、有効放射面積及び立体角を算出する方法の一例を示す。
図8】形状モデルの部位の境界位置の算出方法の一例を示す。
図9】形状モデルの近傍に障害物がある状態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の参考例
[投影面積算出プログラムの構成例]
図1は、本発明の参考例の投影面積算出プログラムのフローチャートの一例を示す。本参考例の投影面積算出プログラムは、投影画像を取得するステップ(S110)、平行投影面積を算出するステップ(S120)、及び、平行投影面積を記憶するステップ(S130)をコンピュータに実行させる。例えば、投影面積算出プログラムは、コンピュータが読み取り可能なメモリ及びCD−ROM等の記憶媒体に記憶されている。投影面積算出プログラムは、ネットワークを介してコンピュータにダウンロードされてもよい。
【0017】
投影画像を取得するステップ(S110)において、コンピュータは、複数の部位を有する形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像を取得する。例えば、コンピュータは、建物、人、工業製品等を複数の方位から見た形状を示す画像を投影画像として取得する。投影画像は、例えば、コンピュータグラフィックスにより表現した画像である。
【0018】
コンピュータは、投影面積算出プログラム以外のプログラム(例えば、コンピュータグラフィックス生成ソフトウェア)により生成された投影画像を取得してもよく、投影面積算出プログラムが生成した投影画像を取得してもよい。また、投影面積算出プログラムを実行するコンピュータは、その他のコンピュータにより生成された投影画像を取得してもよい。
【0019】
図2A図2B及び図2Cは、人体の形状モデルを複数の方位から投影した複数の投影画像の一例を示す。図2Dは、建物の形状モデルの投影画像の一例を示す。図3は、形状モデルと複数の方位との関係を示す。
【0020】
図2Aは、人体を正面(高度角α=0°、方位角β=0°)から投影したときの画像を示す。図2Bは、人体を斜め方向(高度角α=45°、方位角β=45°)から投影したときの画像を示す。図2Cは、人体を上方(高度角α=90°、方位角β=0°)から投影したときの画像を示す。
【0021】
投影画像は、形状モデルが有する複数の部位に対応する複数の部位を有してもよい。具体的には、図2A図2B及び図2Cに示す投影画像は、頭、首、右上腕、左上腕、右腕、左腕、右手、左手、胸、腹、背中、右腿、左腿、右脛、左脛、右足及び左足のそれぞれの部位を有する。図2Dに示す建物の投影画像は、1階部分、2階部分及び3階部分の部位を有する。投影画像は単一の部位を有してもよい。例えば、形状モデルが人体である場合に、投影画像は全身を投影した画像であってもよい。
【0022】
次に、平行投影面積を算出するステップ(S120)について説明する。コンピュータは、平行投影面積を算出するステップ(S120)において、複数の方位に対応する複数の投影画像に基づいて、複数の部位の複数の平行投影面積を算出する。ここで、方位aに対応する投影画像に基づいて算出される部位Xの平行投影面積は、形状モデルが有する部位Xを方位aの無限遠から見ることができる大きさを示す。
【0023】
図4は、平行投影面積の一例を示す。図4は、方位aに対する右脛の平行投影面積Ap1、及び、方位bに対する右脛の平行投影面積Ap2を示す。図4から明らかなように、選択された部位の平行投影面積は、選択された部位を投影する方位によって異なる。例えば、方位aに対する右脛の平行投影面積Ap1は、方位bに対する右脛の平行投影面積Ap2よりも大きい。
【0024】
コンピュータは、複数の方位から選択された方位に対応する投影画像を選択し、選択した投影画像が有する複数の部位から選択した部位の画像面積を、選択した部位に対する平行投影面積として算出する。コンピュータは、複数の方位角及び高度角の組み合わせごとに、形状モデルが有する複数の部位のそれぞれの平行投影面積を算出してよい。
【0025】
コンピュータは、形状モデルの態様、向き及び位置の少なくとも1つを自動的に変化させて、所定の変化量ごとに平行投影面積を算出してもよい。例えば、コンピュータは、形状モデルが人体である場合に、人が歩いて移動しているときの姿勢、歩く向き、所定の時間(例えば、0.5秒)ごとの位置等を変化させた複数の形状モデルを生成し、それぞれの形状モデルに対する平行投影面積を算出する。このようにすることで、コンピュータは、形状モデルのさまざまな状態に対する平行投影面積が記憶されたデータベースを構築することができる。
【0026】
コンピュータが取得する投影画像が、コンピュータグラフィックス生成ソフトウェアにより生成された画像である場合には、投影画像は、厳密に無限遠から形状モデルを見たときの形状モデルを示す。したがって、コンピュータが、コンピュータグラフィックス生成ソフトウェアにより生成された投影画像を用いて平行投影面積を算出することにより、厳密に無限遠から見たときの形状モデルの平行投影面積を高い精度で算出することができる。
【0027】
続いて、コンピュータは、平行投影面積を記憶するステップ(S130)において、複数の方位に対応づけて、複数の部位のそれぞれの複数の平行投影面積を記憶する。例えば、コンピュータは、形状モデルが有する複数の部位のそれぞれに対して、複数の方位角及び複数の高度角の組み合わせに対応するメモリ等の記憶媒体のアドレスに、複数の部位のそれぞれの平行投影面積を記憶する。
【0028】
図5は、複数の高度角α及び複数の方位角βに対応する特定の部位の平行投影面積の一例を示す。図5に示した例においては、コンピュータは、30°間隔の高度角α及び15°間隔の方位角βの組み合わせにより定まる複数の方位のそれぞれにおける平行投影面積を記憶媒体に記憶させている。コンピュータは、任意の間隔の高度角αと方位角βとの組み合わせごとに平行投影面積を記憶させてよい。
【0029】
投影面積算出プログラムは、コンピュータに、平行投影面積の算出に用いる複数の方位を生成するステップをさらに実行させてもよい。例えば、コンピュータは、平行投影面積の算出に用いる方位の数を取得して、取得した数に基づいて複数の方位を決定する。
【0030】
コンピュータは、平行投影面積を算出する方位の順序を決定してもよい。コンピュータは、平行投影面積を算出する対象の形状モデルの形状に応じて決定した方位の順序で平行投影面積を算出してもよい。一例として、コンピュータは、高度角αを選択した状態で方位角βを順次変更して平行投影面積を算出した後に、次の高度角αを選択した状態で方位角βを順次変更して平行投影面積を算出する。
【0031】
コンピュータは、部位ごとに異なる数の方位において平行投影面積を算出してもよい。例えば、コンピュータは、ユーザによって部位ごとに指定される形態係数に求められる精度に応じて、それぞれの部位において平行投影面積を算出する方位の数を決定する。コンピュータは、形態係数に求められる精度が高いほど多くの数の方位における平行投影面積を算出してよい。コンピュータが部位ごとに平行投影面積を算出する対象とする方位の数を決定することにより、高い精度が不要な部位の演算時間、及び、平行投影面積を記憶する記憶媒体の容量を低減することができる。
【0032】
さらに、コンピュータは、形状モデル、形状モデル内の部位又は部位内の領域の形状等に基づいて、平行投影面積を算出する方位の数及び方位間隔の少なくとも1つを変更してもよい。例えば、コンピュータは、頭部のうち、顔側は第1の方位間隔で平行投影面積を算出し、後ろ側は第1の方位間隔よりも粗い第2の方位間隔で平行投影面積を算出する。
【0033】
コンピュータは、形状モデル、形状モデル内の部位又は部位内の領域の周囲の他の形状モデル等との距離及び位置関係に基づいて、平行投影面積を算出する方位の数及び方位間隔の少なくとも1つを変更してもよい。例えば、コンピュータは、形状モデル内の特定の部位の近傍に壁面又は床面がある場合に方位間隔を細かくすることにより、壁面又は床面に接する部位の形態係数を高精度に算出することができる。コンピュータが、形状モデル、形状モデル内の部位又は部位内の領域の形状等に応じて最適な方位の数及び方位間隔で平行投影面積を算出することで、演算時間と記憶媒体の容量を低減することができる。
【0034】
以上の通り、本参考例に係る投影面積算出プログラムによれば、コンピュータに、任意の方位において厳密に無限遠から形状モデルを見たときの平行投影面積を高い精度で算出させると共に、算出した平行投影面積を方位に対応づけて記憶媒体に記憶させることができる。したがって、形状モデルの写真を撮影する時間を要することなく、さまざまな条件を柔軟に変化させて算出した平行投影面積をデータベース化することができる。
【0035】
<第の実施形態>
[有効放射面積を記憶する]
図6は、第の実施形態の投影面積算出プログラムのフローチャートの一例を示す。本実施形態の投影面積算出プログラムは、立体角を算出するステップ(S140)、有効放射面積を算出するステップ(S150)、及び、有効放射面積を記憶するステップ(S160)をさらにコンピュータに実行させる点で、本発明の参考例の投影面積算出プログラムと異なる。有効放射面積は、全ての方位に対する平行投影面積を積算することで得られる面積であり、形態係数の算出等に用いられる。有効放射面積の算出方法の詳細は後述する。
【0036】
立体角を算出するステップ(S140)において、コンピュータは、複数の方位の数及び複数の方位の間隔の少なくとも1つに基づいて立体角を算出する。ここで、立体角は、有効放射面積を算出する対象の部位の中心から出る複数の半直線により形成される錐面によって区切られた領域の面積の関数として表される。
【0037】
有効放射面積を算出するステップ(S150)において、コンピュータは、複数の方位のそれぞれに対応する平行投影面積に立体角を乗算した結果を積算することによって有効放射面積を算出する。有効放射面積を記憶するステップ(S160)において、コンピュータは、平行投影面積に対応づけて有効放射面積を記憶する。コンピュータは、有効放射面積を用いて、形状モデルの形態係数を算出してもよい。
【0038】
図7は、形態係数、有効放射面積及び立体角を算出する方法の一例を示す。図7においては、人体の形状モデルが、面Aを有する頭の中心点を中心とする半径Rの球Sに設けられている。球Sの面上には面積がAの面Bが示されている。面B内には面積dAの微小面ΔBが示されている。微小面ΔBの中心位置の法線方向と微小面ΔB及び面Aを結ぶ線分の方向との角度はθである。
【0039】
図7において、面Bを球S全体の面とすると、面Bに対する面Aの形態係数FA-Bは、微小面ΔBと面Aの形態係数を球S全体で積分することにより算出することができる。すなわち、微小面ΔBから見た平行投影面積をAp、有効放射面積をAeffとすると、FA-Bは、以下の式(1)により算出される。
【0040】
面Bが球S全体なのでFA-B=1となり、半径Rが十分に大きいとするとcosθ≒1になるので、有効放射面積Aeff は、以下の式(2)により表される。
【0041】
ここで、球S上の微小面ΔBの立体角dωは、以下の式(3)により表される。
【0042】
したがって、有効放射面積Aeffは、以下の式(4)により算出される。
【0043】
コンピュータは、上記の式(4)により算出した有効放射面積を平行投影面積に対応づけて記憶媒体に記憶してよい。さらに、コンピュータは、記憶媒体に記憶された平行投影面積及び有効放射面積に基づいて、微小面ΔBに対する面Aの形態係数FA-Bを以下の式(5)により算出してもよい。
【0044】
コンピュータは、立体角を算出するステップ(S140)において、有効放射面積の算出に用いる複数の方位の数に基づいて立体角を算出してもよく、複数の方位の間隔に基づいて立体角を算出してもよい。例えば、有効放射面積の算出に用いる方位の数が18(高度角方向に3、方位角方向に6)である場合には、方位角はdω=4πR/18/R=2π/9と算出される。
【0045】
コンピュータは、有効放射面積の算出に用いる方位の数又は方位の間隔を、ユーザから指定される形態係数に求められる精度に応じて決定してもよい。コンピュータは、方位の数を増やすことにより、又は、方位の間隔を小さくすることにより、より高い精度で有効放射面積及び形態係数を算出することができる。
【0046】
さらに、コンピュータは、平行投影面積を用いて形状モデルへの直達熱を算出すると共に、平行投影面積と有効放射面積を用いて輻射熱を算出してもよい。本実施形態によれば、さまざまな方位に対する平行投影面積及び有効放射面積を記憶することができるので、建物の形態及び建物内の人の位置を変化させながら、高精度の輻射シミュレーションを短時間で容易に実施することができる。
【0047】
以上の通り、本実施形態に係る投影面積算出プログラムを用いることで、平行投影面積及び有効放射面積をデータベース化することができるので、例えば、予め部屋の放射計算をした後に、部屋の中の人の向きや位置をさまざまな状態に変化させた場合の形態係数を容易に算出することができる。すなわち、データベース化した平行投影面積、及び、部屋の窓と人との間の距離R及び方向θに基づいて、さまざまな条件下での形態係数を算出して輻射シミュレーションをすることができるという効果を奏する。
【0048】
<第の実施形態>
[形状モデルの部位の境界位置を算出する]
図8は、形状モデルの部位の境界位置の算出方法の一例を示す。投影面積算出プログラムは、コンピュータに、形状モデルにおける互いに接する複数の面要素の角度及び形状モデルにおける複数の面要素の密度の少なくとも1つに基づいて複数の部位の境界位置を算出するステップをさらに実行させてもよい。図8においては、投影画像を構成する複数の面要素の角度に基づいて、直方体状の第1部位と円柱状の第2部位との間の境界線を算出した結果の一例が表示されている。コンピュータは、算出した境界位置に基づいて定められる部位ごとに平行投影面積、有効放射面積及び形態係数の少なくとも1つを算出して記憶してよい。
【0049】
例えば、コンピュータは、形状モデルを複数の面要素に分割し、隣接する面要素の方向の差を算出する。コンピュータは、方向の差が閾値より大きい場合に、隣接する面要素の間に部位の境界位置があると判定してよい。コンピュータは、第1の面要素が配置された第1の面の曲率と第2の面要素が配置された第2の面の曲率との差が閾値よりも大きい場合に、第1の面と第2の面との間に部位の境界位置があると判定してもよい。コンピュータは、境界位置があると判定した位置をつなぎ合わせることにより、部位の境界線の位置を算出することができる。コンピュータは、境界線で囲まれた複数の部位のそれぞれを異なる色又は異なる模様により表示してもよい。
【0050】
コンピュータは、コンピュータグラフィックスのソフトウェアが生成した投影画像を構成する複数の面要素の密度に基づいて、複数の部位の境界位置を算出してもよい。例えば、コンピュータグラフィックスのソフトウェアが、第1の密度で第1の面要素が配置された第1の面を構成し、第1の密度よりも大きな第2の密度で第1面要素よりも小さな第2の面要素が配置された第2の面を構成している場合に、第1の面の密度は第2の面の密度よりも小さい。そこで、コンピュータは、第1の面要素群の密度と第2の面要素群の密度との差が閾値よりも大きい場合に、第1の面要素群と第2の面要素群との間が部位の境界位置であると判定してよい。
【0051】
以上の通り、本実施形態に係る投影面積算出プログラムによれば、コンピュータに、投影画像における複数の部位の境界線を自動的に算出することができる。したがって、それぞれの部位に対する平行投影面積、有効放射面積及び形態係数の少なくとも1つを短時間で算出することができる。
【0052】
<第の実施形態>
[障害物がある場合の平行投影面積の算出方法]
図9は、形状モデルの近傍に障害物がある状態の一例を示す。図9においては、人が椅子に座った状態を示している。このような状態における形態係数の算出を可能にするために、投影面積算出プログラムは、コンピュータに、複数の投影画像を取得するステップ(S10)において、少なくとも1つの方位から見たときに形状モデルの少なくとも一部の領域と重なる障害物モデルを含む複数の投影画像を取得させ、複数の平行投影面積を算出するステップ(S120)において、複数の投影画像のうち障害物モデルと重なった領域を除く領域の画像に基づいて複数の平行投影面積を算出させてもよい。
【0053】
複数の投影画像を取得するステップ(S110)において、コンピュータは、例えば図9に示されるように形状モデル及び障害物を含む投影画像を取得する。コンピュータは、複数の方位に対する投影画像を取得してもよい。
【0054】
複数の平行投影面積を算出するステップ(S120)において、コンピュータは、平行投影面積を算出する方位から見たときに障害物と重なっていない領域の画像の面積を算出することにより、当該方位に対する平行投影面積を算出する。コンピュータは、形状モデルに対する障害物の位置を自動的に変化させ、所定の変化量ごとに平行投影面積を算出してもよい。
【0055】
形状モデルが人体である場合には、衣服の種類によって輻射熱が変化するので、衣服の種類に応じて形態係数を算出することが好ましい。そこで、コンピュータは、衣服の形状モデルをさらに取得して、衣服の形状に応じた平行投影面積を算出してもよい。コンピュータは、衣服の形状ごとに平行投影面積及び有効放射面積を算出して記憶することにより、服の形状に応じた形態係数を容易に算出することができる。コンピュータは、衣服の種類に対応する有効放射面積の比を算出することで、従来は算出が困難であった衣服による輻射熱の変化量を高い精度で算出することができる。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る投影面積算出プログラムによれば、コンピュータにより生成された形状モデル及び障害物モデルを含む投影画像を用いて平行投影面積、有効放射面積及び形態係数の少なくとも1つを算出させることで、形状モデルに対する障害物モデルの位置を柔軟に変更しながら、形状モデルの複数の方位から見た平行投影面積、有効放射面積及び形態係数の少なくとも1つを容易に算出することができる。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9