特許第5950346号(P5950346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950346
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】三方断裁機
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/02 20060101AFI20160630BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20160630BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20160630BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   B26D7/02
   B26D1/06 Z
   B26D7/06 E
   B26D5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-191774(P2012-191774)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46414(P2014-46414A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113403
【氏名又は名称】ホリゾン・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金尾 真道
(72)【発明者】
【氏名】谷内 知則
(72)【発明者】
【氏名】神原 完太
(72)【発明者】
【氏名】清水 智之
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−330409(JP,A)
【文献】 特開2002−219690(JP,A)
【文献】 特開2008−119773(JP,A)
【文献】 特開2011−156636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/216623(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/203440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/02
B26D 1/06
B26D 5/00
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製本物の天辺端部、地辺端部及び小口辺端部を断裁するための三方断裁機であって、
前記天辺端部を断裁するための天用断裁刃と、
前記地辺端部を断裁するための地用断裁刃と、
前記天用断裁刃及び前記地用断裁刃で前記天辺端部及び前記地辺端部を断裁する際に、非押圧位置から押圧位置に移動して、前記製本物を押さえる押さえ部材と、
前記天用断裁刃及び前記地用断裁刃で前記天辺端部及び前記地辺端部を断裁する際に、前記製本物を第1又は第2断裁位置に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の指示信号に基づいて、前記製本物が前記第1又は第2断裁位置のいずれかに搬送されるように前記搬送機構を制御し、
前記製本物が前記第1断裁位置に搬送される場合、前記押さえ部材が前記押圧位置に配置されるときに、前記押さえ部材は前記製本物の背面を押さえないように配置され、
前記製本物が前記第2断裁位置に搬送される場合、前記押さえ部材が前記押圧位置に配置されるときに、前記押さえ部材は前記製本物の背面を押さえるように配置されることを特徴とする三方断裁機。
【請求項2】
作業者からの入力を受けるための入力部を備え、
前記入力部は、前記製本物を前記第1断裁位置に搬送するように指示するための第1指示ボタンと、前記製本物を前記第2断裁位置に搬送するように指示するための第2指示ボタンと、を備え、前記第1又は第2指示ボタンの選択に基づいて、前記指示信号を前記制御部に送ることを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【請求項3】
製本物に印刷された情報部を読み取るための情報読み取り部を備え、
前記情報読み取り部は、前記情報部の情報を読み取り、前記情報に基づいた前記指示信号を前記制御部に送ることを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【請求項4】
作業者からの入力を受けるための入力部を備え、
前記入力部は、前記製本物の背の厚さの値を入力するための第1入力領域と、前記製本物の本身の厚さの値を入力するための第2入力領域と、を備え、
前記三方断裁機は、さらに、前記第1及び第2入力領域の入力に基づいて、前記指示信号を前記制御部に送る判定部を備え、
前記判定部は、前記第1入力領域に入力された値と前記第2入力領域に入力された値との差を算出し、
前記差が所定の閾値より大きい場合に、前記製本物を前記第1断裁位置に搬送するように指示し、
前記差が前記閾値より小さい場合に、前記製本物を前記第2断裁位置に搬送するように指示することを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【請求項5】
前記本身の厚さを測定するための第1測定部と、
前記製本物の背面の厚さを測定するための第2測定部と、
前記第1及び第2測定部の測定結果に基づいて、前記指示信号を前記制御部に送る判定部と、を備え、
前記判定部は、前記第1測定部が測定した値と前記第2測定部が測定した値との差を算出し、
前記差が所定の閾値より大きい場合に、前記製本物を前記第1断裁位置に搬送するように指示し、
前記差が前記閾値より小さい場合に、前記製本物を前記第2断裁位置に搬送するように指示することを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【請求項6】
前記三方断裁機は、
前記製本物の本身の背面に糊を塗布し、前記本身の背面に表紙を貼り付けて前記製本物にする無線綴じ製本機に接続されており、
前記無線綴じ製本機は、
前記本身を把持して搬送するための一対のクランプ板と、
前記本身の背面に前記表紙を押し当てた状態で挟むための一対のニップ板と、を備え、
前記製本機又は前記三方断裁機は、
前記クランプ板の移動量に基づいて、前記本身の厚さを測定するための第1測定部と、
前記ニップ板の移動量に基づいて、前記製本物の背面の厚さを測定するための第2測定部と、
前記第1及び第2測定部の測定結果に基づいて、前記指示信号を前記制御部に送る判定部と、を備え、
前記判定部は、前記第1測定部が測定した値と前記第2測定部が測定した値との差を算出し、
前記差が所定の閾値より大きい場合に、前記製本物を前記第1断裁位置に搬送するように指示し、
前記差が前記閾値より小さい場合に、前記製本物を前記第2断裁位置に搬送するように指示することを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本工程に用いられて、製本の仕上げのために、製本物の天辺端部、地辺端部および小口辺端部を断裁するための三方断裁機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本身の背面に糊を塗布し、その背面に表紙を貼り付けて製本物にする無線綴じ製本機は良く知られている。そして、製本機によって作成された製本物を仕上げるために、断裁機によって、製本物の天辺縁部、地辺縁部および小口辺縁部を断裁する。従来の断裁機として、例えば特許文献1に記載されたものがある。断裁機は、断裁刃を上下方向に運動させることで、製本物の各縁部を断裁するようになっている。特許文献1の図7に示すとおり、断裁刃1は、斜め方向に上下方向に運動させて、断裁刃1の刃先にかかる負担を軽減するようになっている。
【0003】
また、特許文献1の図9に示すとおり、断裁刃1で製本物4の天辺縁部4cおよび地辺縁部4dを断裁する際、断裁刃1が製本物4の小口4aの方向から進入して断裁すると、製本物4の背面4bに返りが発生して乱れが生じる問題がある。そこで、特許文献1の断裁機は、断裁刃1で製本物4の天辺縁部4cおよび地辺縁部4dを断裁する際に、断裁刃1の進入方向を変更できるようになっており、製本物4を裏返すことなく、断裁刃1が製本物4の背面4cから進入して断裁できる。
【0004】
また、製本物の天辺縁部、地辺縁部および小口辺縁部を自動で断裁できる三方断裁機がある。従来の三方断裁機として、例えば特許文献2に記載されたものがある。特許文献2の図1及び図3に示すとおり、三方断裁機は、製本物27の天辺縁部27aを断裁するための天用断裁刃11、製本物27の地辺縁部27bを断裁するための地用断裁刃12、製本物27の小口辺縁部27cを断裁するための小口用断裁刃13を備える。
【0005】
三方断裁機は、搬送機構18で製本物27を所定の断裁位置に搬送し、その後、押さえ部材15a〜15cで製本物を押さえる。そして、三方断裁機は、製本物27の天辺縁部27aおよび地辺縁部27bを断裁する際に、搬送機構18で製本物27を所定の断裁位置に搬送し、断裁位置に搬送された製本物27を一対の押さえ部材15a,15bで押さえて、製本物27を押さえている間に、天用断裁刃11および地用断裁刃12で製本物27の天辺縁部27aおよび地辺縁部27bを断裁する。
【0006】
特許文献2の三方断裁機では、押さえ部材15a,15bは、製本物27の背面にわたって押さえている。しかし、押さえ部材15a,15bが製本物27の背面を押さえると、製本物の背面に皺が入り、仕上がりのよい製本物27ができない場合があった。
また、押さえ部材15a,15bが製本物27の背面を避けるように押さえて、天用断裁刃11および地用断裁刃12で製本物27の天辺縁部27aおよび地辺縁部27bを断裁すると、製本物27の背面の角が破れることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−66347号公報
【特許文献2】特開2001−252890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、製本物に応じて、押さえ部材が製本物を押さえる位置を変更でき、仕上がりのよい製本物になるように、製本物の天辺縁部および地辺縁部を断裁できる三方断裁機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る三方断裁機は、
製本物の天辺端部、地辺端部及び小口辺端部を断裁するための三方断裁機であって、
天辺端部を断裁するための天用断裁刃と、
地辺端部を断裁するための地用断裁刃と、
天用断裁刃及び地用断裁刃で天辺端部及び地辺端部を断裁する際に、非押圧位置から押圧位置に移動して、製本物を押さえる押さえ部材と、
天用断裁刃及び地用断裁刃で天辺端部及び地辺端部を断裁する際に、製本物を第1又は第2断裁位置に搬送する搬送機構と、
搬送機構の動作を制御する制御部と、を備え、
制御部は、所定の指示信号に基づいて、製本物が第1又は第2断裁位置のいずれかに搬送されるように搬送機構を制御し、
製本物が第1断裁位置に搬送される場合、押さえ部材が押圧位置に配置されるときに、押さえ部材は製本物の背面を押さえないように配置され、
製本物が第2断裁位置に搬送される場合、押さえ部材が押圧位置に配置されるときに、押さえ部材は製本物の背面を押さえるように配置される。
【0010】
好ましくは、三方断裁機は、
作業者からの入力を受けるための入力部を備え、
入力部は、製本物を第1断裁位置に搬送するように指示するための第1指示ボタンと、製本物を第2断裁位置に搬送するように指示するための第2指示ボタンと、を備え、第1又は第2指示ボタンの選択に基づいて、指示信号を制御部に送る。
【0011】
好ましくは、三方断裁機は、
製本物に印刷された情報部を読み取るための情報読み取り部を備え、
情報読み取り部は、情報部の情報を読み取り、情報に基づいた指示信号を制御部に送る。
【0012】
好ましくは、三方断裁機は、
作業者からの入力を受けるための入力部を備え、
入力部は、製本物の背の厚さの値を入力するための第1入力領域と、製本物の本身の厚さの値を入力するための第2入力領域と、を備え、
三方断裁機は、さらに、第1及び第2入力領域の入力に基づいて、指示信号を制御部に送る判定部を備え、
判定部は、第1入力領域に入力された値と第2入力領域に入力された値との差を算出し、
差が所定の閾値より大きい場合に、製本物を第1断裁位置に搬送するように指示し、
差が閾値より小さい場合に、製本物を第2断裁位置に搬送するように指示する。
【0013】
好ましくは、三方断裁機は、
本身の厚さを測定するための第1測定部と、
製本物の背面の厚さを測定するための第2測定部と、
第1及び第2測定部の測定結果に基づいて、指示信号を制御部に送る判定部と、を備え、
判定部は、第1測定部が測定した値と第2測定部が測定した値との差を算出し、
差が所定の閾値より大きい場合に、製本物を第1断裁位置に搬送するように指示し、
差が閾値より小さい場合に、製本物を第2断裁位置に搬送するように指示することを特徴とする請求項1に記載の三方断裁機。
【0014】
好ましくは、三方断裁機は、
製本物の本身の背面に糊を塗布し、本身の背面に表紙を貼り付けて製本物にする無線綴じ製本機に接続されており、
無線綴じ製本機は、
本身を把持して搬送するための一対のクランプ板と、
本身の背面に表紙を押し当てた状態で挟むための一対のニップ板と、を備え、
製本機又は三方断裁機は、
クランプ板の移動量に基づいて、本身の厚さを測定するための第1測定部と、
ニップ板の移動量に基づいて、製本物の背面の厚さを測定するための第2測定部と、
第1及び第2測定部の測定結果に基づいて、指示信号を制御部に送る判定部と、を備え、
判定部は、第1測定部が測定した値と第2測定部が測定した値との差を算出し、
差が所定の閾値より大きい場合に、製本物を第1断裁位置に搬送するように指示し、
差が閾値より小さい場合に、製本物を第2断裁位置に搬送するように指示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る三方断裁機は、天用断裁刃および地用断裁刃で天辺縁部および地辺縁部を断裁する際に、製本物を第1又は第2断裁位置に搬送するための搬送機構と、搬送機構の動作を制御する制御部とを備える。そして、制御部は、所定の指示信号に基づいて、製本物が第1又は第2断裁位置のいずれかに搬送されるように搬送機構を制御する。製本物が第1断裁位置に搬送されると、押さえ部材は製本物の背面を押さえないようになっており、一方、製本物が第2断裁位置に搬送されると、押さえ部材は製本物の背面を押さえるようになっている。
【0016】
製本物の背面が本身よりも厚くて、製本物の背面の厚さと本身の厚さとの差が大きい場合、押さえ部材が製本物の背面を押さえると、押さえた時に製本物の背面に皺が入り、仕上がりのよい製本物ができない。従って、その場合には、三方断裁機は、制御部に指示信号を送り、製本物を第1断裁位置に搬送して、押さえ部材が製本物の背面を押さえず、製本物の背面に皺が入らないようにする。
また、製本物の背面の厚さと本身の厚さとの差が小さい場合、押さえ部材が製本物の背面を押さえても、押さえた時に製本物の背面に皺が入らない。従って、その場合には、三方断裁機は、制御部に指示信号を送り、製本物を第2断裁位置に搬送して、押さえ部材が製本物の背面を押さえて、製本物の背面の角が破れないようにする。
【0017】
従って、本発明に係る三方断裁機は、天用断裁刃および地用断裁刃で製本物の天辺縁部および地辺縁部を断裁する際に、押さえ部材で製本物の背面を押さえるか押さえないかを指示できるようになっている。すなわち、本発明に係る三方断裁機は、製本物に応じて、押さえ部材が製本物を押さえる位置を変更できるようになっており、その結果、仕上がりのよい製本物になるように断裁できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の三方断裁機を示す斜視図。
図2】三方断裁機を示す平面図。
図3】三方断裁機の一部を示す正面図。
図4】三方断裁機の一部を示す側面図。
図5】第1断裁位置に搬送された製本物を断裁するときの説明図であって、(A)は押さえ部材が非押圧位置に配置された状態を示す拡大側面図、(B)は押さえ部材が押圧位置に配置された状態を示す拡大側面図。
図6】第2断裁位置に搬送された製本物を断裁するときの説明図であって、(A)は押さえ部材が非押圧位置に配置された状態を示す拡大側面図、(B)は押さえ部材が押圧位置に配置された状態を示す拡大側面図。
図7】第2実施形態の三方断裁機の一部を示す平面図。
図8】第3実施形態の三方断裁機の入力部を示す図。
図9】第4実施形態の三方断裁機において第1及び第2測定部を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明に係る三方断裁機について説明する。
【0020】
[第1実施形態]
先ず、三方断裁機の第1実施形態について説明する。
図1の通り、製本物27は、天辺縁部27a、地辺縁部27b、小口辺縁部27c及び背面27dを有する。三方断裁機は、製本物27の天辺縁部27a、地辺縁部27b及び小口辺縁部27cを断裁することで、製本物27を所定寸法に仕上げる。
【0021】
三方断裁機は、製本物27の天辺縁部27aを断裁するための天用断裁刃11、製本物27の地辺縁部27bを断裁するための地用断裁刃12、製本物27の小口辺縁部27cを断裁するための小口用断裁刃13を備える。三方断裁機は、天用断裁刃11で製本物17を断裁する際に製本物27を押さえるための天用押さえ板15a、地用断裁刃12で製本物27を断裁する際に製本物27を押さえるための地用押さえ板15b、小口用断裁刃13で製本物27を断裁する際に製本物27を押さえるための小口用押さえ板15cを備える。
【0022】
三方断裁機は、製本物27の天辺縁部27aを断裁する際に、天用押さえ板15aと共に製本物27を押さえるための天用断裁台16を備える。三方断裁機は、製本物27の地辺縁部27bを断裁する際に、地用押さえ板15bと共に製本物27を押さえるための地用断裁台17を備える。そして、図3の通り、天用断裁台16は、天用断裁刃11の刃先を受けるための刃受け16aを備える。地用断裁台17は、地用断裁刃12の刃先を受けるための刃受け17aを備える。
【0023】
図1の通り、三方断裁機は、ねじ軸32を回転自在に支持する支持部31を備える。天用押さえ板15aは、ねじ軸32に螺合されている。三方断裁機は、ねじ軸34を回転可能に支持する支持部33を備える。地用押さえ板15bは、ねじ軸34に螺合されている。三方断裁機は、ねじ軸36を回転可能に支持する支持部35を備える。小口用押さえ板15cは、ねじ軸36に螺合されている。
【0024】
各ねじ軸32,34,36は、その上端部にプーリーを備える。三方断裁機は、押さえ板駆動モータ26を備える。押さえ板駆動モータ26の出力軸は、無端ベルト37aを介して、各ねじ軸32,34,36のプーリーに連結されている。そして、押さえ板駆動モータ26が駆動すると、ねじ軸32,34,36の回転に伴って、押さえ板15a,15b,15cが昇降するようになっている。
【0025】
図1の通り、地用断裁刃12は、その端部において、駆動ロッド25aの一端部が回転自在に連結されている。駆動ロッド25aの他端部は、駆動減速機23の出力軸24のクランク25に連結されている。三方断裁機は、断裁刃用駆動モータ22を備える。断裁刃用駆動モータ22は、無端ベルト37bを介して、駆動減速機23と連結する。断裁刃用駆動モータ22が駆動して、駆動減速機23の出力軸24が一回転すると、地用断裁刃12が斜め方向に1サイクル昇降運動する。また、断裁刃用駆動モータ22が駆動すると、地用断裁刃12と共に天用断裁刃11も昇降運動するように構成されている。なお、小口用断裁刃13は、別の断裁刃駆動モータ(不図示)で昇降運動するようになっている。
【0026】
図2の通り、三方断裁機は、搬入部1a、挿入部1b、小口断裁部1c、天地断裁部1d及び排出部1eで構成される。製本物27は、搬入部1aに設けられたベルトコンベア100によって挿入部1bへ搬送され、挿入部1bに設けられた位置合わせプレート102,103によって位置合わせされる。そして、製本物27は、搬送機構18によって小口断裁部1cへ搬送されて、小口用断裁刃13によって製本物27の小口辺縁部27cが断裁される。そして、製本物27は、搬送機構18によって天地用断裁部1dへ搬送されて、天用断裁刃11及び地用断裁刃12によって製本物27の天辺縁部27a及び地辺縁部27bが断裁される。その後、製本物27は、搬送機構18によって搬出部1eへ搬送されて、搬出部1eに設けられたベルトコンベア101によって搬出される。
【0027】
図1及び図4の通り、搬送機構18は、チャック機構180を備える。チャック機構180は、固定側把持部18aと可動側把持部18bとで製本物27の背面27d付近を把持する。チャック機構180は、可動側把持部18bを開位置と閉位置とに移動可能にするための駆動部18cを備える。チャック機構180は、可動側把持部18bを開位置にして製本物27を解放し、可動側把持部18bを閉位置して製本物27を把持する。
【0028】
搬送機構18は、小口断裁部1cと天地断裁部1dとにわたって延設された送りねじ184を備える。搬送機構18は、送りねじ184に螺合された移動部183を備える。移動部183は、チャック機構180に連結されている。送りねじ184は、無端ベルト182を介して搬送駆動モータ181に連結される。搬送駆動モータ181の駆動によって、送りねじ184は正逆回転する。送りねじ184の正逆回転によって、移動部184は、送りねじ184の軸方向に沿って進退移動する。移動部184が移動することによって、チャック機構180は、製本物27を把持して、小口断裁部1cと天地用断裁部1dとの間を移動することができる。
【0029】
図1の通り、三方断裁機は、製本物27の下方に配置される一対の製本物受け台14a,14bを備える。製本物受け台14a,14bは、小口断裁部1cと天地用断裁部1dとにわたって延設されている。各製本物受け台14a,14bは、空間部14cを介して配置されている。図3の通り、空間部14cには、チャック機構18の固定側把持部18aが配置されるようになっており、これによって、チャック機構18が空間部14cに沿って移動できるので、製本物27を製本物受け台14a,14bの上で搬送できる。
【0030】
図1の通り、三方断裁機は、制御部1を備える。制御部1は、三方断裁機の駆動を制御するようになっており、断裁刃駆動モータ22、押さえ板駆動モータ26、搬送駆動モータ181等の駆動を制御する。三方断裁機は、制御部1に接続された入力部2を備える。作業者は、種々の設定を行う際に、各設定を入力部2に入力するようになっている。制御部1は、入力部2に入力された設定に基づいて、三方断裁機の駆動を制御する。
【0031】
<天地断裁動作>
次に、三方断裁機が製本物27の天辺縁部27a及び地辺縁部27bを断裁する際の動作について詳細に説明する。
【0032】
本実施形態では、入力部2は、タッチパネルで構成されており、図1の通り、製本物27を第1断裁位置に搬送するように指示するための第1指示ボタン2aと、製本物27を第2断裁位置に搬送するように指示するための第2指示ボタン2bとが、入力部2に表示されるようになっている。そして、作業者が入力部2を通じて製本物27を第1又は第2断裁位置に搬送するように指示すると、その指示信号が入力部2から制御部1に送られ、制御部1は、入力部2からの指示信号に基づいて、搬送機構18を駆動する。
【0033】
<第1断裁位置>
作業者が入力部2の第1指示ボタン2aを押すと、搬送機構18は、製本物27を小口断裁部1cから天地断裁部1dにおける第1断裁位置へ搬送して停止する。
【0034】
図5(A)の通り、製本物27が第1断裁位置で停止すると、天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bの前端面150から前方へ所定距離Sだけ間隔を置いた位置に、製本物27の背面27dを配置する。なお、搬送機構18のチャック機構180は、製本物27の背面27dを把持しないように、製本物27を把持する。
【0035】
その後、図5(B)の通り、製本物27が第1断裁位置で停止している間に、押さえ板駆動モータ26が駆動して、それによって、天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bが、製本物27から離れた非押圧位置(図5(A))から製本物27を押さえる押圧位置(図5(B))に移動する。非押圧位置と押圧位置との位置関係は、予め設定されており、本実施形態では、押さえ板15a,15bは、垂直方向に移動するようになっている。その結果、押圧位置に配置された天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bは、製本物27の背面27dが押さえられないように、製本物27を押さえるようになっている。
【0036】
製本物27は、本身270と表紙271とを備えており、本身270の背面に糊が塗布されて、その背面に表紙271が貼り付けられている。製本物27の背面27dの厚さW1が、本身270の厚さW2よりも厚くて、厚さW1と厚さW2との差が所定の閾値よりも大きい場合、押さえ部材15a,15bが製本物27の背面27dを押さえると、押さえた時に、製本物27の背面27dが潰れて皺が入り、仕上がりのよい製本物ができない。従って、その場合には、作業者は入力部2の第1指示ボタン2aを押して、製本物27を第1断裁位置に搬送して、押さえ板15a,15bが製本物27の背面27dを押さえず、製本物27の背面27dに皺が入らないようにする。
【0037】
そして、押さえ板15a,15bが製本物27の背面27dを避けるように押さえている間に、制御部1は、断裁刃駆動モータ22を駆動して、それによって、天用断裁刃11及び地用断裁刃12を非断裁位置から断裁位置へ斜め方向に降ろす。その結果、製本物27の天辺縁部27a及び地辺縁部27bが断裁されるようになっている。
なお、断裁刃11,12は、製本物27の背面27dから進入して、斜め方向に断裁することで、断裁刃11,12の刃先にかかる負担を軽減し、仕上がりのよい製本物27になるように断裁する。
【0038】
<第2断裁位置>
作業者が入力部2の第2指示ボタン2bを押すと、搬送機構18は、製本物27を小口断裁部1cから天地断裁部1dにおける第2断裁位置へ搬送して停止する。
【0039】
図6(A)の通り、製本物27が第2断裁位置で停止すると、天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bの前端面150の真下(又は、真下より前方)に、製本物27の背面27dが配置される。
【0040】
その後、図6(B)の通り、製本物27が第2断裁位置で停止している間に、押さえ板駆動モータ26が駆動して、それによって、天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bが、製本物27から離れた非押圧位置(図6(A))から製本物27を押さえる押圧位置(図6(B))に移動する。その結果、押圧位置に配置された天用押さえ板15a及び地用押さえ板15bは、製本物27の背面27dが押さえられるように、製本物27を押さえるようになっている。
【0041】
製本物27の背面27dの厚さW1と本身270の厚さW2との差が所定の閾値よりも小さい場合、押さえ部材15a,15bが製本物27の背面27dを押さえても、押さえた時に、製本物27の背面27dに皺が入らない。従って、その場合には、作業者は入力部2の第2指示ボタン2bを押して、製本物27を第2断裁位置に搬送して、押さえ板15a,15bが製本物27の背面27dを押さえて、製本物27の背面27dの角が破れないようにする。
【0042】
そして、押さえ板15a,15bが製本物27を押さえている間に、制御部1は、天用断裁刃11及び地用断裁刃12を非断裁位置から断裁位置へ斜め方向に降ろす。その結果、製本物27の天辺縁部27a及び地辺縁部27bが断裁されるようになっている。
【0043】
[第2実施形態]
次に、三方断裁機の第2実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0044】
本実施形態は、第1実施形態と異なり、作業者が製本物27の第1又は第2断裁位置を指示するものではない。
図7の通り、三方断裁機は、搬入部1aの入口に情報読み取り部40が設けられている。情報読み取り部40は、製本物27に印刷された情報部280を読み取り、その情報に基づいて、第1又は第2断裁位置の指示信号を制御部1に送る。情報部280には、第1又は第2断裁位置を指示する情報が含まれている。本実施形態では、情報部280はバーコードからなり、情報読み取り部40はバーコードリーダーからなる。他の実施形態として、情報部280は文字情報又は画像情報等であってもよく、情報読み取り部40は画像識別装置であってもよい。
【0045】
[第3実施形態]
次に、三方断裁機の第3実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0046】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、入力部2に第1及び第2指示ボタン2a,2bが表示されない。
図8の通り、入力部2に、製本物27の背面27dの厚さW1の値を入力するための第1入力領域2cと、本身270の厚さW2の値を入力するための第2入力領域2dとが表示される。さらに、三方断裁機は、入力部2及び制御部1に接続された判定部10を備える。判定部10は、入力部2に入力された厚さW1の値と厚さW2の値との差(=W1−W2)を算出して、その算出値が所定の閾値より大きければ、第1断裁位置を指示する信号を制御部1に送り、算出値が所定の閾値より小さければ、第2断裁位置を指示する信号を制御部1に送るようになっている。
【0047】
[第4実施形態]
次に、三方断裁機の第3実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0048】
本実施形態は、第1実施形態と異なり、作業者が製本物27の第1又は第2断裁位置を指示するものではない。
本実施形態では、三方断裁機は、無線綴じ製本機(不図示)に接続される。この製本機は、例えば特開2011−37216号公報に記載されているように周知技術であるので、詳細な説明は省略する。図9の通り、製本機は、本身270をクランプ板200で把持して、その後、本身270の背面270dに糊を塗布する糊付け部、本身270の背面270dに表紙271を貼り付ける貼り付け部へ搬送する。
【0049】
さらに、製本機は、貼り付け部において、糊が塗布された本身270の背面270dに表紙271を配置し、背押し板202で表紙271を本身270に押し当てて、その後、一対のニップ板201で本身270と表紙271とを挟み、表紙271を本身270に貼り付けて、製本物27を作成する。
【0050】
製本機は、一対のクランプ板200の移動量を測定して、本身270の厚さW2を測定する第1測定部41を備える。製本機は、一対のニップ板201の移動量を測定して、製本物27の背面27dの厚さW1を測定する第2測定部42を備える。
【0051】
三方断裁機は、第1及び第2測定部41,42に接続された判定部10を備える。判定部10は、第1及び第2測定部41,42で測定された厚さW1の値と厚さW2の値との差(=W1−W2)を算出して、その算出値が所定の閾値より大きければ、第1断裁位置を指示する信号を制御部1に送り、算出値が所定の閾値より小さければ、第2断裁位置を指示する信号を制御部1に送る。
【0052】
なお、本実施形態では、第1及び第2測定部41,42は製本機に設けられているが、別の実施形態として、三方断裁機に設けられていてもよい。また、別の実施形態として、第1及び第2測定部41,42が、三方断裁機及び製本機とは別の装置に設けられ、各測定値を判別部10に送るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 制御部
2 入力部
2a 第1指示ボタン
2b 第2指示ボタン
2c 第1入力領域
2d 第2入力領域
10 判定部
11 天用断裁刃
12 地用断裁刃
18 搬送機構
15a 天用押さえ板
15b 地用押さえ板
280 情報部
40 情報読み取り部
41 第1測定部
42 第2測定部
200 クランプ板
201 ニップ板
27 製本物
27a 製本物の天辺縁部
27b 製本物の地辺縁部
27c 製本物の小口辺縁部
27d 製本物の背面
270 本身
271 表紙
W1 製本物の背面の厚さ
W2 本身の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9