(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検査対象とする発光ダイオードの画像を前記カメラが取得するタイミングと、当該発光ダイオードを発光させるタイミングとを合わせるタイミング制御部を、更に備えている請求項1〜7のいずれか一項に記載の光ビーコンの検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔本発明の実施形態の説明〕
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に示す検査装置は、近赤外線によるダウンリンク光を照射する発光ダイオードを複数含む投光部を備えている光ビーコンのための検査装置であって、前記発光ダイオードが並列に接続されて成る並列接続体を含む電気回路を有する前記投光部に含まれる、発光中の前記発光ダイオードの画像を取得するカメラと、前記カメラによる取得画像中の少なくとも一つの前記発光ダイオードを含む範囲を一つのエリアとして、当該エリアの発光度合に対応する値を求めると共に、この値に基づいて前記発光ダイオードの異常を検知する。
【0017】
この検査装置によれば、少なくとも一つの発光ダイオードを含む範囲を一つのエリアとして、当該エリアの発光度合に対応する値に基づいて発光ダイオードの異常を検知することから、正確な検査が可能となる。
【0018】
なお、検査を行う光ビーコンにおいて、一つの発光ダイオードが故障して通電不能となっても、この故障した発光ダイオードが属する並列接続体に含まれる他の発光ダイオードは発光するため(通電可能であるため)、この並列接続体と直列に接続されている他の並列接続体が存在している場合、前記故障の影響を受けることなく発光ダイオードは発光することができる。この結果、一つの発光ダイオードの故障によって、光ビーコンの機能が完全に失われてしまうのを防ぐことができる。
【0019】
(2)また、前記カメラは、近赤外線による光を照射する前記発光ダイオードの可視画像を取得する可視光カメラであるのが好ましい。
前記カメラが、近赤外線による光を主として撮影する赤外線カメラである場合、近赤外線に対する感度が良すぎるため、一つの発光ダイオードが故障して発光不能となっていても、これの隣に接近して位置する正常な発光ダイオードからの光の影響を受けてハレーションを起こし、発光不能となっている発光ダイオードに対応するエリアでも発光していると誤認するおそれがある。
しかし、可視光カメラの場合、このような誤認の発生を抑制することが可能となる。なお、可視光カメラによって、近赤外線を発光している状態の発光ダイオードを撮影すると、発光ダイオードの発光素子部が発光している様子を捉えることができ、検査が可能である。また、前記可視光カメラは、波長によっては近赤外線の一部を画像として捉えることができるものであってもよい。
【0020】
(3)また、前記処理部は、前記カメラによる取得画像をグレースケール化し、前記エリアの前記発光度合いに対応する値として、前記エリアの輝度値の代表値を求めるのが好ましい。
この場合、正常に発光している発光ダイオードに対応しているエリアと、故障等の異常により発光していない発光ダイオードに対応しているエリアとで、輝度値の代表値が異なり、発光していない発光ダイオードに対応しているエリアを、画像解析によって容易に検出することができる。
【0021】
(4)また、検査対象とする発光ダイオードと前記カメラのレンズとの間の空間の周囲を覆うカバーを更に備えているのが好ましく、このカバーにより、カメラが画像を取得する際の外部の光による影響を小さくすることができる。
(5)また、前記カメラは、可視光カットフィルタを有しているのが好ましく、この場合も、カメラが画像を取得する際の外部の光(可視光)による影響を小さくすることができる。
(6)また、前記光ビーコンは、前記投光部を収容しかつ前記発光ダイオードが照射するダウンリンク光を通過させる窓部が形成された筐体を有し、前記カメラは、可視光カットフィルタが取り付けられている前記窓部を通じて前記発光ダイオードの画像を前記筐体の外側から取得するのが好ましい。この場合も、カメラが画像を取得する際の外部の光(可視光)による影響を小さくすることができる。
【0022】
(7)また、検査対象とする発光ダイオードの画像を前記カメラが取得するタイミングと、当該発光ダイオードを発光させるタイミングとを合わせるタイミング制御部を、更に備えているのが好ましい。
この場合、発光ダイオードの画像をカメラが取得するための時間帯にのみ、発光ダイオードを発光させることができ、投光部の発熱を抑えたり、検査を行う作業員の目への近赤外線の入射を抑えたりすることができる。
【0023】
(8)また、前記処理部は、前記カメラによる取得画像を、一つの発光ダイオードに一つのエリアが対応するようにして、複数のエリアに分割して処理し、前記エリア毎の発光度合に対応する値を求めると共に、この値に基づいて前記発光ダイオードの異常を検知するのが好ましい。
この場合、各発光ダイオードに対応するエリア毎の発光度合に対応する値に基づいて発光ダイオードの異常を検知することから、正確な検査が可能となる。
【0024】
(9)本発明の実施形態に示す検査方法は、近赤外線によるダウンリンク光を照射する発光ダイオードを複数含む投光部を備えている光ビーコンを検査する方法であって、前記発光ダイオードが並列に接続されて成る並列接続体を含む電気回路を有する前記投光部に含まれる、発光中の前記発光ダイオードの画像をカメラによって取得し、この取得した画像中の少なくとも一つの前記発光ダイオードを含む範囲を一つのエリアとして、当該エリアの発光度合に対応する値を求め、この値に基づいて前記発光ダイオードの異常を検知する。
この検査方法によれば、少なくとも一つの発光ダイオードを含む範囲を一つのエリアとして、当該エリアの発光度合に対応する値に基づいて発光ダイオードの異常を検知することから、正確な検査が可能となる。
【0025】
〔本発明の実施形態の詳細〕
本発明の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
<1. 検査装置の全体構成>
図1は、検査装置20の一例を示すブロック図である。この検査装置20は、後述する光ビーコンの投光部7(
図4参照)を検査するための装置であり、カメラ21、及び画像解析装置22を備えている。なお、本実施形態の検査装置20は、更に、入出力ユニット23、メインコンピュータ24、検査治具25、電流計26、及び電源部27を備えている。
【0026】
本実施形態のカメラ21は、可視光カメラからなり、前記投光部7(
図4参照)の画像を取得する。後にも説明するが、投光部7(
図4参照)は、回路基板9に実装されている複数の発光ダイオード71(以下、「LED71」という。)を有しており、カメラ21は、これらLED71に電力を供給した状態にある投光部7の画像を撮影する。なお、複数のLED71のうち、故障等により発光していないLED71が存在している場合、カメラ21による取得画像には、この発光していないLED71の画像が含まれる。
【0027】
そして、カメラ21が撮影した複数のLED71を含む画像に基づいて、画像解析装置22が投光部7の検査処理を行う。電力が供給されかつカメラ21による撮影の対象となった複数のLED71が、画像解析装置22による検査対象となり、
図1では、これらLED71を「検査対象基板」と記載している。
【0028】
画像解析装置22は、コンピュータ装置からなり、CPU及び内部メモリ等を有する演算処理装置22aの他に、ハードディスク等からなる記憶装置22bを備えており、この記憶装置22bにコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムが演算処理装置22aによって実行されることで、前記コンピュータ装置は、前記検査処理を行う処理部22cとしての機能、及びカメラ21による画像取得のタイミングと投光部7のLED71の発光タイミングとを合わせる制御を行うタイミング制御部22dとしての機能を有することができる。つまり、処理部22c、及びタイミング制御部22dは、前記コンピュータプログラムが実行されることで動作する。これら処理部22c、及びタイミング制御部22dの機能については、後に説明する。
前記コンピュータプログラムは、磁気ディスク、光学ディスク又は半導体メモリ等からなる記憶媒体に記憶させることができる。
【0029】
メインコンピュータ24は、画像解析装置22が出力する信号(検査結果情報を含む信号)を集約し、管理する機能を有している。なお、前記タイミング制御部22dは、メインコンピュータ24が有していてもよい。また、本実施形態では、このメインコンピュータ24と画像解析装置22とを別のコンピュータ装置として構成しているが、共通するコンピュータ装置から構成してもよい。
【0030】
検査治具25は、電源部27が接続されている電源基板25aを有している。
電源部27は、検査治具25を駆動するための電源、及び投光部7のLED71を発光させるための電源として機能する。
入出力ユニット23は、メインコンピュータ24にデジタル信号の入出力機能を拡張するためのものであり、画像解析装置22の出力信号が、この入出力ユニット23を通じてメインコンピュータ24に入力される。また、入出力ユニット23は、検査治具25の電源基板25aによってLED71を発光させるために、前記タイミング制御部22dからの信号を検査治具25へ送信する。
電流計26は、前記検査対象基板を流れる電流を測定することができ、例えば、検査対象となるLED71を発光させている際のドライブ電流を測定することができる。
【0031】
<2. 光ビーコンについて>
<2.1 全体構成>
図2は、前記検査装置20による検査の対象となる光ビーコン1の説明図であり、光ビーコン1を路上に設置した状態を示している。
光ビーコン1は、道路Rを走行する車両Cに搭載された車載機Sとの間で、所定の通信領域で光信号による双方向通信を行う。この光ビーコン1は、道路Rの上方に配置され、車両Cに搭載された車載機Sと通信を行うビーコンヘッド2と、このビーコンヘッド2を制御する制御機(図示せず。)とを備えている。なお、制御機は、支柱等に設置され、電話回線等の通信回線を介して図外の交通管制システム等の中央装置と接続されており、ビーコンヘッド2による通信等の制御を行う。
【0032】
ビーコンヘッド2は、近赤外線によりダウンリンク光DO(ダウンリンク情報を構成する光信号)を照射する投光部7と、車載機Sからの近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク情報を構成する光信号)を受信する受光部8とを備えている。これら投光部7及び受光部8は、共に、ビーコンヘッド2の筐体2a(
図3参照)の内部に収納されている。なお、以下の説明において、「ダウンリンク光DO」を「DL光DO」称し、「アップリンク光UO」を「UL光UO」と称する。
【0033】
ビーコンヘッド2は、受光部8によって、車載機SからのUL光UOを受信すると共に、投光部7によって、DL光DOを送信して、車載機Sとの間で双方向通信を行う。
投光部7及び受光部8は、車載機Sとの間で路車間通信が可能な領域である通信領域Aを、道路R上において、ビーコンヘッド2の直下よりも車両進行方向の上流側寄りに設定する。
【0034】
通信領域Aは、ビーコンヘッド2からのDL光DOを車載機Sが受信可能なダウンリンク通信領域(
図2において実線のハッチングを設けた領域)DAと、車載機SからのUL光UOをビーコンヘッド2が受信可能なアップリンク通信領域(
図2において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。なお、以下の説明においては、「ダウンリンク通信領域DA」を「DL通信領域DA」と称し、「アップリンク通信領域UA」を「UL通信領域UA」と称する。
【0035】
投光部7は、DL光DOを道路R上の所定の領域に向けて出射することで、DL通信領域DAを設定している。
光ビーコン1の「光学式車両感知 近赤外線式インターフェース規格」及び「高度化光ビーコン 近赤外線式インターフェース規格」によれば、DL通信領域DA及びUL通信領域UAの正式な領域寸法が規定されている。
図2においては、前記規格上のDL通信領域DAは、ビーコンヘッド2の投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲であり、UL通信領域UAは、投受光位置d、道路面から1.0mレベルの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲として規定されている。
【0036】
<2.2 ビーコンヘッド2の外観構成>
図3はビーコンヘッド2の斜視図である。
図2及び
図3を参照して、ビーコンヘッド2は、内部機構を収納する筐体2aの両側面に固定されたブラケット32を介して、道路Rの脇に立設された支柱等から道路Rを横切るように水平に架設された架設バー31に固定され、道路Rの車線の直上に配置されている。
【0037】
筐体2aは、下側に向く下面部2a1と、この下面部2a1と繋がるように形成されている前面部2a2とを有している。前面部2a2は、道路R上におけるビーコンヘッド2の直下位置よりも車両進行方向上流側であって斜め下方に向いている。
下面部2a1には、左右一対の下側窓部4が形成されている。筐体2aの内部には車両検知部11(
図4参照)が配置されており、この車両検知部11は、ビーコンヘッド2直下を通過する車両Cを検知するための光信号を、一対の下側窓部4を通じて送受信可能としている。
【0038】
前面部2a2には、第1の窓部5と、この第1の窓部5よりも幅の狭い第2の窓部6とが形成されている。第1の窓部5の内部側には、前記投光部7が配置されており、第2の窓部6には、前記受光部8が配置されている。
筐体2aの内部に配置された投光部7及び受光部8は、第1及び第2の窓部5,6を通じて、道路R上を走行する車載機Sとの通信にかかる前記のDL光DO及びUL光UOを送受信可能としている。
【0039】
<2.3 ビーコンヘッド2の内部構成>
図4はビーコンヘッド2の内部を示す斜視図である。なお、
図4では、
図3中のビーコンヘッド2の下面部2a1を上側にして筐体2aを外した状態としており、この状態にあるビーコンヘッド2内部の外観を斜視図としている。
ビーコンヘッド2は、前記筐体2a(
図3参照)の内部に、投光部7及び受光部8が設けられた回路基板9,12と、ビーコンヘッド2直下を通過する車両Cを検知する車両検知部11とを備えている。
【0040】
回路基板9は、投光部7が第1の窓部5(
図3参照)に対応するように、筐体2aの前面部2a2の内側面に対向配置されており、回路基板12は、受光部8が第2の窓部6に対応するように、筐体2aの前面部2a2の内側面に対向配置されている。したがって、投光部7は、第1の窓部5から筐体2aの外部を臨むように前面部2a2に配置され、受光部8は、第2の窓部6から筐体2aの外部に臨むように前面部2a2に配置されている。回路基板9,12は、図示していないが、絶縁基板と、この絶縁基板に対し、所定の回路設計に基づいて引き回して固着形成された導体パターンとから構成されている。
【0041】
投光部7は、DL光DOの発光源として、複数の表面実装型近赤外線発光ダイオード71を有している。なお、以下の説明において、この表面実装型近赤外線発光ダイオード71を、単純に「LED71」と称する。
投光部7が有している複数のLED71は、行方向X、及び行方向Xと直交する列方向Yに配列され回路基板9上に表面実装されている。それゆえに、投光部7は、複数のLED71によって面状発光部として構成されている。複数のLED71は、第1の窓部5を通過する光軸方向に向けて、DL光DOを出射する。
【0042】
受光部8は、集光レンズ10と、この集光レンズ10を介して光信号を受信するフォートダイオードチップ等の受光素子(図示せず)とを備えており、道路R上の車載機S(
図1参照)からのUL光UOを第2の窓部6を介して受光する。
【0043】
<2.4 LED71の構成>
図5は、LED71の斜視図である。LED71は、発光ダイオード素子としてのLEDチップ71s、パッケージ71p、ヘッダー71h、3本のアノード側リード71a、及び3本のカソード側リード71cを備えている。
パッケージ71pは、その上面に、椀形状をなす凹部が形成されており、この凹部内に、ヘッダー71h及びLEDチップ71sが収容されている。ヘッダー71hは、前記凹部の底部において露出する部分を有しており、この露出部分にLEDチップ71sがダイボンドされている。
【0044】
そして、LED71は、回路基板9上に搭載されている。そして、パッケージ71pの凹部内においてヘッダー71hにダイボンドされたLEDチップ71sは、封止面が前記パッケージ71pの上面とほぼ面一状態となるように前記凹部内に充填された透明エポキシ樹脂等の透光性樹脂71rにより封止されている。透光性樹脂71rは、赤外領域の光に対して透光性を有する樹脂である。これにより、LED71は、そのDL光DOの照射面をフラットにしてレンズレスとされている。
【0045】
<2.5 投光部7の構成>
図6は投光部7の電気回路図であり、
図7はLED71の回路基板9への実装状態を示す平面図である。
図7に示すように、平板状である回路基板9上に、複数のLED71が、行方向Xに沿って、及びこの行方向Xに直交するY方向に沿って面状に配列されている。本実施形態では、50個のLED71が回路基板9上に実装されており、これらLED71は2つのブロックに分けられている。各LED71には識別番号(k=1〜50)が付与されており、
図6と
図7とにおいて、説明のために、一部のLED71の近傍に、その識別番号をカッコ書きで記載している。識別番号k=1〜26のLED71が、第1ブロックB1に含まれ、識別番号k=27〜50のLED71が、第2ブロックB2に含まれる。なお、第1ブロックB1と第2ブロックB2とが
図7では上下に明確に分かれているが、このように明確に分かれていなくてもよい。
【0046】
図6に示すように、第1ブロックB1に含まれる26個のLED71は、2個のLED71で構成されるグループに分けられており、各グループに属する2個のLED71を並列に接続して一つの並列接続体74が構成され、そして、13個の並列接続体74が直列に接続されている。第2ブロックB2においても同様にして、2個のLED71を並列に接続して一つの並列接続体74が構成され、12個の並列接続体74が直列に接続されている。
このように、本実施形態の投光部7は、各ブロック(B1,B2)に含まれる複数のLED71が、2個のLED71で構成される複数のグループに区分され、各グループに属するLED71が並列に接続されて並列接続体74が構成されており、そして、この並列接続体74同士が直列に接続されて構成された電気回路を有するものである。
【0047】
この回路構成を有する投光部7によれば、一つのLED71が故障して通電不能となっても、この故障によって、光ビーコン1の機能が完全に失われてしまうのを防ぐことができる。すなわち、例えば、識別番号k=1のLED71が故障して通電不能となっても、この故障したLED71が属する並列接続体74に含まれる他のLED71(識別番号k=2のLED71)は発光するため(通電可能であるため)、この並列接続体74と直列に接続されている他の並列接続体74では、前記故障の影響を受けることなくLED71は発光し続けることができる。この結果、一つのLED71の故障によって、光ビーコン1の機能が完全に失われてしまうのを防ぐことができる。
【0048】
なお、仮にLED71の全てを直列に接続すると、1つでもLED71が故障すると、全てのLED71が発光しなくなり、光ビーコン1としての機能が完全に失われてしまうという不具合が発生する。しかし、本実施形態の回路構成(
図6参照)によれば、このような不具合の発生を防ぐことが可能となる。
【0049】
<3. 検査装置20の構成について>
図6に示す回路構成を備えている投光部7が、本実施形態の検査装置20(
図1参照)によって検査される。
すなわち、
図1と
図7とを参照して、カメラ21は、投光部7に含まれる複数(50個)のLED71のうち、検査対象とするLED71の画像を取得する。本実施形態では、ブロックB1とブロックB2とを同時に検査する。このため、電源部27からブロックB1及びブロックB2それぞれのLED71に対して給電し、全て(50個)のLED71を発光させる。カメラ21は、これらLED71の発光状態の画像を取得する。カメラ21によって取得された画像データは、画像解析装置22の処理部22cに送られる。
なお、各ブロックのLED71の発光タイミングと、カメラ21による画像取得のタイミングとの制御は、タイミング制御部22dによって行われる。
【0050】
図8は、カメラ21によって取得され、処理部22cに取り込まれた画像(取得画像)Gの説明図である。処理部22cは、この取得画像G中の少なくとも一つのLED71を含む範囲を、一つのエリアとして扱う。なお、本実施形態では、取得画像G中の一つのLED71を含む範囲が、一つのエリアとして設定される。
つまり、処理部22cは、取得画像Gを、複数のエリアに分割して処理する。そして、取得画像Gは、少なくとも一つのLED71に一つのエリアが対応するようにして分割されればよいが、本実施形態では、
図8に示すように、取得画像Gは、一つのLED71に一つのエリアが1対1で対応するようにして分割されている。
本実施形態では、
図7に示すように、行方向Xに沿って5個のLED71、及び列方向に沿って10個のLED71が設けられ、合計50個のLED71が回路基板9上に設けられていることから、これに対応して、取得画像Gは、行方向Xに沿って5個のエリアに区画され、列方向Yに沿って10個のエリアに区画され、合計50個のエリアに区画されている。
【0051】
各エリアの行方向Xの識別子としてA,B,C,D,Eが付されており、列方向Yの識別子として1〜10が付されている。これら識別子によって一つのエリアを定義することができる。例えば、行方向Xの識別子が「A」であって、列方向Yの識別子が「1」である
図8の左上のエリアの番号は「A−1」となり、行方向Xの識別子が「E」であって、列方向Yの識別子が「10」である
図8の右下のエリアの番号は「E−10」となる。
【0052】
そして、
図7における識別番号k=1のLED71の画像は、番号が「A−1」であるエリア内に含まれ、識別番号k=50のLED71の画像は、番号が「E−10」であるエリア内に含まれる。各LED71の識別番号と各エリアの番号とは、1対1に対応付けられており、その対応関係は、演算処理装置22a(
図1参照)の記憶装置22bに記憶されている。
なお、一つのエリアには、一つのLED71の画像が含まれ、他のLED71の画像が含まれないように、取得画像Gは区画されている。つまり、一つのエリアには、複数のLED71の画像が含まれないように、取得画像Gは区画されている。
【0053】
本実施形態のカメラ21は、近赤外線による光を照射するLED71の可視画像を取得する可視光カメラ(CCDカメラ)である。そして、このカメラ21によって取得された取得画像Gに含まれる各エリアの画像は、このカメラ21が有する複数(多数)の画素からの信号に基づいて構成されている。つまり、一つのエリアの画像は、複数の画素からの信号によって構成されている。そして、処理部22cは、取得画像Gをエリア毎に画像解析する。
【0054】
<4. 検査装置20による検査方法の具体例について>
図9は、検査方法を説明するフロー図である。
画像解析装置22のタイミング制御部22dは、検査治具25の電源基板25aに対して信号(開始信号)を送信し、電源基板25aは、所定のタイミングで検査対象とする投光部7のLED71を発光させる(ステップS1)。タイミング制御部22dは、この発光タイミングに合わせて、カメラ21によってこれらLED71を有する投光部7の画像を取得する(ステップS2)。カメラ21によって画像が取得されると、タイミング制御部22dは、電源基板25aに対して信号(終了信号)を送信し、電源基板を5aは投光部7のLED71の発光を停止させる(ステップS3)。
【0055】
このように、タイミング制御部22dは、検査対象とするLED71の画像をカメラ21が取得するタイミングと、このLED71を発光させるタイミングとを合わせる制御を行う。これにより、LED71の画像をカメラ21が取得するための微小な時間帯にのみ、LED71を発光させることができ、発光時間を短縮して投光部7の発熱を抑えたり、検査を行う作業員の目への近赤外線の入射を抑えたりすることができる。
【0056】
本実施形態では、回路基板9に搭載されている複数のLED71は、二つのブロックB1,B2に分けられているが、これらブロックB1,B2それぞれに含まれる全てのLED71に対して電力を供給し、全てのLED71を一度に発光させ、これら全てのLED71の画像をカメラ21が一度に取得する。取得した画像は、デジタルデータとして画像解析装置22へ送信される。
【0057】
なお、カメラ21により投光部7の画像を取得する際、本実施形態では、投光部7の検査対象となるLED71とカメラ21のレンズ21a(
図1参照)との間の空間の周囲を、カバー28(
図1参照)によって覆っている。このカバー28により、カメラ21が画像を取得する際の外部から浸入する光の影響を小さくすることができる。特に本実施形態では、カメラ21は可視光カメラからなるため、検査装置20は、このようなカバー28を有しているのが好ましい。
または、カメラ21は、可視光カットフィルタ35(
図1参照)を有していてもよい。可視光カットフィルタ35はカメラ21のレンズ部分に取り付けられる。この場合においても、カメラ21が画像を取得する際の外部の光(可視光)による影響を小さくすることができる。
【0058】
画像解析装置22の処理部22cは、カメラ21の取得画像G(
図8参照)に基づいて、各LED71が点灯しているか否かの検査を行う。その具体例を以下に説明する。
まず、処理部22cは、カメラ21による取得画像Gをグレースケール化する(ステップS4)。
【0059】
そして、取得画像Gに含まれる複数のエリアの内の一つのエリアに着目し、このエリアの輝度(輝度値)を算出する。本実施形態では、まず、
図8に示す左上のエリア「A−1」に着目し、このエリア「A−1」の輝度(輝度値)を算出する。なお、前記のとおり各エリアの画像は、カメラ21が有する複数(多数)の画素からの信号によって構成されていることから、処理部22cは、エリア「A−1」のみの画像を構成するための複数の画素それぞれの輝度値を求め(ステップS5)、この画素毎の輝度値からエリア「A−1」の輝度値の代表値を算出する(ステップS6)。ここでは、代表値として、画素毎の輝度値の平均値を採用している。つまり、エリア「A−1」の画像を構成するための複数の画素の輝度値の平均値を求め、この平均値をエリア「A−1」の輝度値として求める。なお、代表値は他の指標値であってもよく、例えば、中央値や最大値であってもよい。
【0060】
そして、輝度値についての閾値αが設定されており、この閾値αは、演算処理装置22a(
図1参照)の記憶装置22bに記憶されている。そこで、処理部22cは、この閾値αと、エリア「A−1」の輝度値(平均値)とを比較する(ステップS7)。
ここで、LED71が点灯している場合、そのLED71を可視光カメラ21によって撮影して得た画像をグレースケール化すると、そのLED71の画像として、素子(LEDチップ71s:
図5参照)を中心に輝度の高い画像が取得される。これに対して、LED71が消灯している場合、そのLED71を可視光カメラ21によって撮影して得た画像をグレースケール化すると、そのLED71の画像として、LED71が点灯している場合よりも輝度が低い画像が取得される。
【0061】
したがって、エリア「A−1」の輝度値(平均値)が閾値α以上である場合、処理部22cは、このエリア「A−1」に対応するLED71は発光しており、正常であると判定する(ステップS8)。
これに対して、ステップS7において、エリア「A−1」の輝度値(平均値)が閾値α未満である場合、処理部22cは、このエリア「A−1」に対応するLED71は発光しておらず、異常であると判定する(ステップS9)。この場合、エリア「A−1」に対応するLED71の識別番号が、記憶装置22b(
図1参照)に記憶される(ステップS10)。
【0062】
そして、取得画像Gのうちの残りのエリアについても、ステップS5〜S10の処理が同様に行われる(ステップS11)。例えば、エリア「A−1」に対応する識別番号k=1であるLED71の検査を終えると、別のエリアとして、その隣にあるエリア「B−1」に対応する識別番号k=2であるLED71の検査が実行される。
【0063】
全てのエリアの検査が終了すると、検査結果情報が処理部22cによって生成される。全てのエリアに対応する全てのLED71が正常であると判断された場合、その旨の検査結果情報が生成される。これに対して、一つでも異常があると判断された場合、記憶装置22bに記憶させた異常であるLED71の識別番号を含む検査結果情報が生成される。検査結果情報は、メインコンピュータ24に送信され、メインコンピュータ24から、検査結果情報が出力される。
【0064】
以上のように、近赤外線による光を照射するLED71を複数備えかつ2つのLED71が並列に接続されて成る並列接続体74が直列に接続された投光部7を、前記検査装置20によって検査する方法は、この投光部7に含まれる発光中のLED71の画像をカメラ21によって取得し、処理部22cが、この取得した画像中の一つのLED71を含む範囲を一つのエリアとして設定し、各エリアの輝度値の平均値(代表値)を求め、この平均値に基づいてLED71の異常を検知する。特に本実施形態では、取得画像G(
図8参照)を、一つのLED71に一つのエリアが対応するようにして、複数のエリアに分割して処理することで行われる。そして、処理部22cは、エリア毎の輝度値の平均値(代表値)を求め、この平均値に基づいてLED71の異常を検知する。
【0065】
前記のとおり、投光部7は、2つのLED71が並列に接続されて成る並列接続体74が直列に接続された構成であるため、このような投光部7を検査するために、並列接続体74が直列に接続された直列経路を流れる電流を計測し、その直列経路に含まれるLED71の故障を検知しようとしても、故障したLED71と並列にある他のLED71を通じて電流が流れるため、一つのLED71が故障して通電不能となっていても、前記直列経路を流れる電流値を、正常時と同様に計測することができてしまい、正確な検査ができないおそれがある。
しかし、本実施形態の検査装置20による検査方法によれば、各LED71に対応するエリア毎の輝度値の平均値に基づいて各LED71の異常を検知することから、正確な検査が可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、カメラ21を、近赤外線による光を照射しているLED71の「可視画像」を取得する可視光カメラとしている。仮に、カメラ21を、近赤外線による光を主として撮影する赤外線カメラとした場合、近赤外線に対する感度がよすぎるため、一つのLED71が故障して発光不能となっていても、これの隣に接近して位置する正常なLED71の光の影響を受けてハレーションを起こし、発光不能となっているLED71に対応するエリアでも発光していると誤認するおそれがある。しかし、本実施形態のように可視光カメラ21の場合では、このような誤認の発生を抑制することが可能となる。
【0067】
また、処理部22cは、カメラ21による取得画像Gをグレースケール化しており、エリア毎の発光度合いに対応する値として、エリア毎の輝度値の平均値(代表値)を求めていることから、正常に発光しているLED71に対応するエリアと、故障等の異常により発光していないLED71に対応するエリアとで、輝度値の平均値が大きく異なる。このため、発光していないLED71に対応するエリアを、前記閾値α等を用いた画像解析によって容易に検出することができる。
【0068】
また、本実施形態では、画像解析装置22のタイミング制御部22dによって、検査対象とするLED71の画像をカメラ21が取得するタイミングと、このLED71を発光させるタイミングとを合わせる制御が行われる。このようにタイミングの制御を行うことによって、LED71の画像をカメラ21が取得するための時間帯にのみ、そのLED71を発光させることができ、投光部7の発熱を抑えたり、検査を行う作業員の目への近赤外線の入射を抑えたりすることができる。
【0069】
前記のとおり本実施形態では、LED71の正常又は異常を検査するための指標として、輝度値の平均値を用いたが、各エリアに対応するLED71の発光度合に対応する値であればよく、輝度値の平均値以外であってもよい。
また、本実施形態では、カメラ21の取得画像をグレースケール化したが、カラーの取得画像を用いて検査を行なってもよい。この場合、発光度合に対応する値として、輝度値の平均値の代わりに、RGB値(又は別の表色系に変換した値、例えばL
*a
*b
*値等)の平均値を用いればよい。
また、前記のように、カメラ21に可視光カットフィルタ35(
図1参照)を取り付けた場合には、LED71からの近赤外線をグレースケールにより表現された取得画像として得ることができる。
【0070】
<5. 付記>
本実施形態の検査装置20による投光部7の検査は、LED71が実装された回路基板9単体で行なうことができるが、つまり、ビーコンヘッド2から回路基板9を取り外した状態で検査することが可能であるが、ビーコンヘッド2に搭載された状態にある回路基板9に対して検査を行なってもよい。この場合、ビーコン2の筐体2aを開けた状態とし(
図4参照)、回路基板9の給電コネクタに接続されている電源回路のケーブル(図示せず)を、検査治具25から伸びるケーブルにつなぎ替えて検査を行う。
【0071】
または、筐体2aを開けた状態としないで、つまり、投光部7等を含む光ビーコン本体部から筐体2aを取り外した状態としないで、カメラ21が筐体2aの外側からLED71の画像を取得して検査を行うことも可能である。この場合、筐体2aの前面部2a2に設けられている窓部5を間に挟んだ状態として、筐体2a内のLED71の画像をカメラ21は取得する。なお、この窓部5には、可視光カットフィルタ36(
図3参照)が取り付けられていることから、前記のようにカメラ21に可視光カットフィルタ35(
図1参照)を取り付けなくても、グレースケールにより表現された取得画像を得ることが可能となる。
【0072】
また、前記実施形態(
図6参照)では、投光部7が有している複数のLED71を2つのブロクに分け、それぞれのブロックに含まれるLED71を並列及び直列に接続する場合について説明したが、このようにブロックに分けなくてもよく、又は、3つ以上のブロックに分けてもよい。
また、全てのLED71を検査対象として、全てのLED71の画像を一度に取得した場合について説明したが、検査対象をブロック毎としてもよく、ブロック毎に画像を取得し、検査処理を実行してもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、各ブロックにおいて、2個のLED71を並列に接続して一つの並列接続体74を構成し、並列接続体74を複数直列に接続した場合について説明したが、並列接続体74は3つ以上のLED71を並列接続した構成であってもよい。つまり、複数のLED71が二以上である所定数のLED71で構成されるグループに区分され、各グループに属するLED71が並列に接続されて並列接続体74が構成されていればよい。
【0074】
また、前記実施形態では、複数のLED71を同時に発光させるようにしてカメラ21によって画像を取得し、
図8に示すように、この取得画像Gを、一つのLED71に一つのエリアが対応するようにして、複数のエリアに分割して処理する場合について説明したが、LED71を1つ発光させる毎に、カメラ21によって画像を取得し、処理部22cが検査を行う場合、取得画像Gを複数のエリアに分割しなくてもよい。つまり、LED71を1つ発光させる毎に、カメラ21によってその画像を取得する場合、LED71毎の画像が取得される。そして、処理部22cは、この取得画像中の当該LED71を含む範囲を一つのエリアとして扱い、このエリアの発光度合いに対応する値(輝度値の平均値)を求め、この値に基づいて当該LED71の異常を検知する。つまり、一つのLED71に一つのエリアを対応つけて検査が行われればよい。また、この場合、エリアは重複していてもよく、重複しないようにしてもよい。
【0075】
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。