(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950368
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】高耐熱性多層光学フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20160630BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20160630BHJP
B29C 47/06 20060101ALI20160630BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20160630BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20160630BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20160630BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20160630BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20160630BHJP
B29L 11/00 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
B32B27/36
B29C55/02
B29C47/06
G02B5/28
C08G63/183
G02B5/08 A
B29K67:00
B29L9:00
B29L11:00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-556466(P2014-556466)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-514600(P2015-514600A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】KR2012011526
(87)【国際公開番号】WO2013125781
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年8月11日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0017048
(32)【優先日】2012年2月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】イ・ウンギ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ミンヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン・チャンハク
(72)【発明者】
【氏名】パク・クイル
【審査官】
原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−521730(JP,A)
【文献】
特表2006−512619(JP,A)
【文献】
特表2008−528313(JP,A)
【文献】
特表2008−500211(JP,A)
【文献】
国際公開第00/007046(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0221446(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0259326(US,A1)
【文献】
特表2008−546866(JP,A)
【文献】
特表2008−517139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/00−47/96、55/00−55/30
B29K 67/00
B29L 9/00−11/00
G02B 5/00−5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂層;及び
ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層が交互に積層された構造を有し、
前記結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルは、ナフタレートジカルボキシレートとエチレングリコールとの重縮合によって製造されたポリエチレンナフタレート(PEN)であり、
前記第2の樹脂層のガラス転位温度は、100℃〜140℃であり、
前記PETGは、シクロへキサンジメタノールの含量が60%〜70%であり、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の厚さは、200nm〜300nmである、
多層光学フィルム。
【請求項2】
前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が0.05〜0.2であることを特徴とする、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項3】
(a)結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂、及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂をそれぞれ溶融・押出した後、これらを交互に積層するステップ;及び
(b)前記ステップ(a)で積層されたシートを延伸した後で熱固定するステップ;を含み、
前記結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルとして、ナフタレートジカルボキシレートとエチレングリコールとの重縮合によって製造されたポリエチレンナフタレート(PEN)を使用し、
前記第2の樹脂層のガラス転位温度を、100℃〜140℃とし、
前記PETGは、シクロへキサンジメタノールの含量を60%〜70%とし、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の厚さを、200nm〜300nmとし、
前記ステップ(b)で積層されたシートを、縦方向及び横方向のうち少なくとも一方向に延伸し、
前記溶融・押出の温度を、280℃〜300℃とし、
前記縦方向及び横方向延伸時の温度を、150℃〜180℃とする、
多層光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記(b)ステップの延伸工程後、
延伸方向での前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が、非延伸方向での前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差より大きいことを特徴とする、請求項3に記載の多層光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記延伸方向での前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が0.3以上であることを特徴とする、請求項4に記載の多層光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性多層光学フィルム及びその製造方法に関し、より具体的には、結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂層;及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層が交互に積層された構造を有する多層光学フィルムを提供する。
【背景技術】
【0002】
既存の多層光学フィルムの場合、結晶性ポリエステル系重合体及び他の重合体の交代層を使用している。これは、互いに屈折率が異なる物質の界面で発生する補強干渉を通じて光線を反射させる現象を用いたものである。特に、多層光学フィルムのうち、偏光フィルムの第1の成分として有用な物質としてはポリエステルを使用するが、これは、ポリエステル系のうちナフタレンジカルボン酸ポリエステルが高い複屈折率を有するためである。併せて、ポリエステル系重合体は、重合体の製造時に用いられる単量体の材料によって決定されるという特性を有し、その結果、屈折率の調節が容易であるという長所を有する。また、第2の成分と第1の成分との相溶性が低下する場合、フィルムの剥離現象が発生し得るが、ポリエステル系列の重合体は、多様な共重合が可能であり、これを通じて第1の成分と第2の成分の剥離現象を防止しながら光学的特性を満足させ得る物質が容易に選定される。
【0003】
このように多層光学フィルムと関連して、これまでは多層光学フィルムの製造方法の単純化と材料の光特性の改善に対する開発がなされてきた。また、大韓民国特許登録第10―0364029号にも、結晶性ナフタレンジカルボン酸エステル及び他の選択された重合体の多数の交代層を含む多層重合体フィルムが記載されている。
【0004】
しかし、従来とは異なって、近来は、ディスプレイ装置のスリム化傾向と共に、ディスプレイ装置で発生する発熱問題がイシュー化されており、そこで、安定性のある素材開発の重要性が台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ディスプレイ装置の発熱問題によるディスプレイ素材での耐熱性問題を解決するためのものであって、耐熱性が向上した物質を用いた多層光学フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、耐熱性に優れる有機物質を通じて、反射に優れ、且つ耐熱性の強い多層光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂層;及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層が交互に積層された構造を有する多層光学フィルムを提供する。
【0008】
また、本発明の目的を達成するために、本発明は、(a)結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂、及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂をそれぞれ溶融・押出した後、これらを交互に積層するステップ;及び(b)前記ステップ(a)で積層されたシートを延伸した後で熱固定するステップ;を含む多層光学フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層光学フィルムは、一定のガラス転移温度を有するポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層を有することによって耐熱性が向上し、第1の樹脂層との高い屈折率差を発生させ得るので光学的特性に優れる。
【0010】
また、多層光学フィルムの製造方法を通じて、耐熱性に優れる多層光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1及び実施例2の光特性試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、共に詳細に説明している各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現可能である。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を示す。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
多層光学フィルム
本発明は、結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂層;及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層が交互に積層された構造を有する多層光学フィルムを提供する。
【0015】
前記第1の樹脂層は、結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを主成分とし、前記結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルがポリエチレンナフタレート(PEN)であることを特徴とする。前記PENは、ナフタレートジカルボキシレートとエチレングリコールとの重縮合によって製造されたものであり得る。併せて、第1の樹脂層が含むPENは、複屈折率が大きく、耐熱性に優れることを特徴とする。
【0016】
前記第2の樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含むことを特徴とする。下記の[化学式1]のようなPETGは、エチレングリコール(EG:Ethylene glycol)及びシクロヘキサンジメタノール(CHDM:1,4―cyclohexanedimethanol)及びテレフタル酸(TPA:Terephthalic acid)から製造されたものであって、等方性を有する。
【0018】
前記ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)は、押出成形に主に使用されるので、高い溶融粘度が必要となることから高分子量のポリマーを製造しなければならないが、非結晶性樹脂という特徴により固相重合工程を利用できないので、溶融重合のみで高分子量まで反応させると同時に、最終用途に合わせて明るい色相と優れた透明性を同時に満足させる高い難易度の技術を必要とする。
【0019】
また、前記第2の樹脂層は、ガラス転位温度が100℃〜140℃であることを特徴とする。前記ガラス転移温度が100℃未満である場合は、耐熱性が低下し、延伸工程で構造的安定性が低下するおそれがあり、140℃を超える場合は、最終的な多層光学フィルムの耐熱性に影響を及ぼし、難燃性が低下し得るという問題がある。
【0020】
本発明のように100℃〜140℃水準のガラス転位温度を有するPETGを使用する場合は、80℃〜90℃水準のPETGを使用する場合に比べて高耐熱性を有することによって、PENを含む第1の樹脂層のみで克服しにくかった耐熱性問題を解決することができる。
【0021】
前記PETG樹脂は、シクロへキサンジメタノール(Cyclohexanedimethanol:CHDM)の含量が50%以上であることを特徴とする。前記シクロへキサンジメタノールの含量が50%未満である場合は、既存のガラス転移温度が80℃〜90℃水準であるPETGしか得られないので、ガラス転移温度が80℃〜90℃程度である普通のPETGは、一般に前記シクロへキサンジメタノールの含量を25%水準にする。
【0022】
しかし、シクロへキサンジメタノールの含量を50%以上にした場合、ガラス転移温度が100℃〜140℃である高耐熱性PETGを得ることができる。より好ましくは、前記高耐熱性フィルムを製造するためのPETGは、シクロへキサンジメタノールの含量を60%〜70%に増加させて使用することによって、耐熱性の問題を解決することができる。
【0023】
シクロへキサンジメタノールの含量が70%を超える場合、非結晶性樹脂であるPETGが結晶性を有するようになってPETGの非結晶性特性を失うことになるので、50%以上、好ましくは60%〜70%のシクロへキサンメタノールを含有することによって、非結晶性樹脂特性を維持すると同時に、ガラス転位温度が100〜140℃である高耐熱性PETGを得ることができる。
【0024】
また、交差して繰り返される物質のガラス転移温度は、多層光学フィルムの最終性能を左右するが、層同士がくっ付いたり不均衡に割れないようにする構造安定性の面と関連があるので、延伸工程においては、第1の樹脂層と第2の樹脂層との間のガラス転移温度差が多いほど無定形高分子物質の構造の安定性が低下し得る。そのため、本発明では、高温のガラス転移温度を有するPETGを含む樹脂を使用することによって、第1の樹脂層とのガラス転移温度差が少なくなり、構造安定性の面で優れた効果を示すことができる。
【0025】
本発明が含む第1の樹脂層と第2の樹脂層は、屈折率差が0.2以下であることを特徴とし、特に前記屈折率の差が0.05〜0.2であることが好ましい。
【0026】
本発明の多層光学フィルムは、屈折率が互いに異なる樹脂層を交差して配列することによって、その界面での光の反射率を高めることが重要であるが、前記屈折率差が0.05未満である場合は、界面での反射率よりも透過率が高くなるので、多層光学フィルムとしての最終製品の商品価値がなくなるおそれがある。
【0027】
各樹脂層の屈折率差は、多層光学フィルムの効率性を決定するにおいて重要な数値である。従来は、耐熱性に優れていないポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む樹脂層を使用しなかったが、本発明では、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂層のガラス転位温度が100℃〜140℃であることを特徴とするので、耐熱性の短所を克服した。また、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)の屈折率に比べて比較的屈折率が高いポリエチレンナフタレート(PEN)を含む第1の樹脂層との積層構造を含むことによって、多層光学フィルムの光学的特性をかなり向上させることができる。
【0028】
併せて、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚さは100nm〜500nmにすることができ、特に200nm〜300nmの厚さにすると、可視光領域の光を調節できるという点で好ましい。各樹脂層の厚さは、透過される光の波長領域を決定し、詳細には、各層の厚さは、各層の屈折率の値で前記光の波長領域を決定することができる。前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚さが100nm未満である場合は、短波長帯に調節波長帯が変わるおそれがあり、500nmを超える場合は、赤外線領域に調節波長帯が変わるという問題がある。
【0029】
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層には、公知の添加剤、例えば、重縮合触媒、分散剤、静電印加剤、帯電防止剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤及びその他無機活剤が本発明の効果を損傷させない範囲内で添加されても構わない。
【0030】
また、本発明の多層光学フィルムの表面層は、第1の樹脂層で構成することができ、第2の樹脂層で構成しても構わない。
【0031】
前記のように製造された本発明の多層光学フィルムは、鏡フィルム、カラーフィルター、包装材、光学ウィンドウなどの多様な用途で使用することができる。カラーフィルターの場合、所望の光を反射させ、特定の色を半永久的に示すのでインテリアなどに使用することができる。
【0032】
多層光学フィルムの製造方法
本発明は、(a)結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含む第1の樹脂、及びポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)を含む第2の樹脂をそれぞれ溶融・押出した後、これらを交互に積層するステップ;及び(b)前記ステップ(a)で積層されたシートを延伸した後で熱固定するステップ;を含む多層光学フィルムの製造方法を提供する。
【0033】
前記(a)ステップでは、第1の樹脂及び第2の樹脂を押出器を通じて同時に溶融・押出する工程が実施される。溶融押出温度は280℃以上であることが好ましく、280℃〜300℃であると、フィルム内部の未溶融ペレットを減少できるという面でさらに好ましい。
【0034】
溶融・押出される第1の樹脂及び第2の樹脂は、多層フィードブロックを通じて積層される。フィードブロックの温度は、溶融押出温度を大きく逸脱しないことが良く、280℃以上であることが好ましい。積層の数は、波長の位置、反射率、またはフィルムの厚さに応じて調節され、少なくは50層以上に、多くは1000層以上に積層することができる。積層の数が増加するにつれて特定の波長に対する反射率が増加するようになり、層に勾配を与える場合、反射波長の範囲は広くなり得る。また、各層の厚さに応じても波長の位置を変化させることができ、最外郭層の厚さも必要に応じて調節が可能である。特に、押出比を通じて流量比をうまく維持することが、流れない外観を有するフィルムを製造する助けとなる。
【0035】
前記(b)ステップにおいて、積層されたシートを縦方向及び横方向のうち少なくとも一方向に延伸することができる。より具体的には、多層フィードブロックを通じて形成された積層体は、キャスティング後に縦方向及び横方向のうち少なくともいずれか一つの方向への延伸を経るようになり、これを通じて屈折率差がさらに大きくなる。横方向または縦方向の1軸延伸を実施する場合、製造された光学フィルターは、複屈折性を一部のみ発現し、光を分離して透過/反射させる特性を有することができる。キャスティング時にエアナイフなどを活用して速く冷却させることが好ましいが、これは、第1の樹脂と第2の樹脂が混合されずにぞれぞれの固有の屈折率を維持させるのに役立つ。
【0036】
ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)の光学的/物理的特性を最大化するためには、可能な限り低い温度で配向延伸を実施すると良いが、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)のガラス転位温度(Tg)+30℃以下の温度、好ましくは、ガラス転位温度(Tg)+10℃以下の温度で配向延伸を実施すると良い。例えば、本発明の多層フィルムの延伸工程は、150℃〜180℃の延伸温度で実施することができる。前記延伸温度が150℃未満である場合は、多層光学フィルムが破断するおそれがあり、180℃を超える場合は、フィルムの内部構造が不安定になるという問題がある。
【0037】
また、前記(b)ステップの延伸工程を経た後、延伸方向での前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が、非延伸方向での前記第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差より大きいことを特徴とする。前記第2の樹脂層が含むポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)は、非結晶性であって、押出及び延伸後に低屈折率をそのまま維持する等方の高分子樹脂であるので、延伸の可否とは関係なく屈折率が一定である。しかし、第1の樹脂層の屈折率が延伸前より延伸後に増加するが、これは、第2の樹脂層が含むPETGとは異なって、第1の樹脂層が含むPENに存在するナフタレートグループがフィルムの延伸によって再配列されるためである。
【0038】
より具体的には、延伸後、前記延伸方向での第1の樹脂層と第2の樹脂層との間の屈折率差が0.3以上にさらに増加するようになり、従来と異なって、結晶化による延伸妨害やヘイズ増加がほとんど起きない。各樹脂層のヘイズ値は、いずれも1以下であって、0.5%〜0.7%に維持されることが好ましい。
【0039】
以下では、本発明を次の実施例に基づいてより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、発明の内容を例示するものに過ぎなく、発明の範囲が実施例によって限定されることはない。
【0040】
実施例及び比較例:多層光学フィルムの製造
【0041】
実施例1―PEN:PETG
PEN及び高耐熱性PETGで構成された1000層のフィルムを、フィードブロックを活用した共押出増倍技術を用いてT―ダイ押出を通じて製造した。前記高耐熱性PETGは、Tgが120℃である重合体であって、表面層はPENで構成した。前記の製造されたフィルムを160℃で1分間予備加熱し、150℃で延伸比を6:1にし、延伸方向は機械方向(machine direction:MD)にした。
【0042】
実施例2―PEN:PETG
高耐熱性PETGのTgが140℃である重合体であることを除いては、前記実施例1と同一の方法で1000層のフィルムを製造した。
【0043】
比較例4―PEN:PETG
PEN及びPETGで構成された1000層のフィルムを、フィードブロックを活用した共押出増倍技術を用いてT―ダイ押出を通じて製造した。前記PETGは、Tgが約80℃である重合体であって、表面層はPETGで構成した。前記の製造されたフィルムを160℃で1分間予備加熱し、150℃で延伸比を6:1にし、延伸方向は機械方向(machine direction:MD)にした。
【0044】
実施例
3―PEN:PETG
高耐熱性PETGのTgが100℃である重合体であることを除いては、前記実施例1と同一の方法で1000層のフィルムを製造した。
【0045】
比較例1
PEN重合体を単独で押出を通じて製造する。
【0046】
比較例2
高耐熱性PETG重合体(ガラス転位温度120℃)を単独で押出を通じて製造する。
【0047】
比較例3
PETG重合体(ガラス転位温度80℃)を単独で押出を通じて製造する。
【0048】
難燃性及び光特性評価
本実験例の難燃性は、一つの試片を水平に置いた後、火を付けて測定する方法、すなわち、水平法(Horizontal Burning Test)を用いて評価した。
【0049】
前記実施例1〜
3及び比較例1〜
4の光学フィルムを長さ5in.(127mm)、幅0.5in.(12.7mm)、厚さ0.12in.〜0.5 in.(3.05mm〜12.7mm)の試片に製作し、前記試片に水平方向に火花を印加し、火花の長さは2cmにし、赤みを帯びない青色の火花を用いた。このとき、火花の印加は連続的に行った。このとき、前記実施例1〜
3及び比較例1〜
4の多層光学フィルムの難燃性を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0050】
また、光特性を測定した後、その結果を
図1に示した。各波長別の透過度を観察するために分光光度計(spectrophotometer、島津社のsolid spec 3700)を用い、光特性を測定した。
【0052】
前記表1から分かるように、比較例1〜3に比べて実施例1〜
3の方が、燃焼開始時間(燃焼が最初に開始される時間)がより遅くなる結果となった。完全燃焼時間も、実施例1〜
3の場合、比較例1〜3よりも長い時間がかかったので、PENを含む第1の樹脂層とPETGを含む第2の樹脂層を積層することによって、光学フィルムの耐熱性がより優秀になることが分かった。併せて、実施例1の難燃性試験結果を通じて、一般のPETGを含む第2の樹脂層に比べてガラス転移温度の高い高耐熱性PETGを含む第2の樹脂層を適用した光学フィルムの場合、難燃性において優れることが分かった。
【0053】
図1は、実施例1、
比較例4の一定の波長に対する透過率を示すものであって、1000λを超える赤外線領域では、透過率が90%以上を維持しながら差が生じなかったが、250λ〜1000λ範囲内の可視光線領域では、透過率が下がってから上がる光学的特性を示した。図面には示していないが、これは、PETを含む樹脂層とPENを含む樹脂層が交互に積層された多層光学フィルムの光学的特性と類似するものであって、前記実施例1、
比較例4の光学的特性を確認することができた。
【0054】
屈折率の測定及び評価
前記の実施例1及び
比較例4、比較例1〜3で得た光学フィルムに対して、アッべ(Abbe)屈折計を用いて632.8nmでの延伸前、延伸後の屈折率を測定した後、その結果を下記の表2にまとめた。延伸後の屈折率は、延伸方向及び非延伸方向に区分して測定した。
【0056】
前記表2の結果を参考にすると、本発明に係る実施例1及び
比較例4の多層光学フィルムは、延伸後、非延伸方向での第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が0.08、0.12である一方、延伸方向での第1の樹脂層と第2の樹脂層との屈折率差が0.32、0.36に大きくなることが分かる。
【0057】
このように延伸段階を経ることによって層間の屈折率差が発生し、屈折率差によって発生する補強干渉の効果も大きくなり得る。また、光学的な効果、すなわち、光の反射率を既存よりも高めることができ、より優れた光学的特性が具現可能であると予測することができる。
【0058】
耐熱性評価
前記の実施例1〜
3、比較例1〜
4で得た光学フィルムに対して、長さ100mm、幅100mm、厚さ0.5mmのフィルム試片を製作し、60℃と90℃のオーブンに12時間または72時間放置し、寸法変形度を通じて耐熱性評価を進行した後、その結果を下記の表3に示した。このとき、変形力(%)が小さいほど耐熱性に優れることを示す。
【0060】
高耐熱性でない一般PETGのガラス転位温度は80℃〜90℃に維持されており、60℃は一般PETGのガラス転位温度より低い場合であるので、60℃で寸法変形度を測定する場合、高耐熱性PETGとPENを交互に積層して光学フィルムを製造した実施例1、2及び
3、そして、一般PETGとPENを交互に積層して光学フィルムを製造した
比較例4のいずれの場合においても寸法変形率が低く測定された。また、PEN樹脂のみを使用した比較例1、 高耐熱性PETG樹脂のみを使用した比較例2、及び一般PETG樹脂のみを使用した比較例3の場合にも、比較的良い寸法変形率を維持することを示した。
しかし、90℃は一般PETGのガラス転移温度と類似する場合であるので、90℃で寸法変形度を測定する場合、実施例1、2及び
3の場合、
比較例4よりも低い寸法変形度を示したので、一般PETGを積層する場合よりも、高耐熱性PETGをPENと交互に積層して光学フィルムを製造する場合に耐熱性が優秀になることが分かった。また、交互積層構造でなく、樹脂単独でフィルムを製造した比較例の場合は、実施例に比べて寸法変形度がより高く測定された。