(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の不織布を含む物品であって、前記物品は、消費者向けアパレル、産業用アパレル、医療用品、スポーツ用品、保護用品、およびろ過膜からなる群から選ばれる物品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の不織布は、熱可塑性ポリウレタンポリマー(TPU)から作られる。
【0016】
本発明において用いられるTPUポリマーのタイプは、TPUポリマーが適当な分子量を有する限り、当分野および文献において公知であるいずれの従来のTPUポリマーであってもよい。TPUポリマーは、一般に、ポリイソシアネートを1つ以上の連鎖延長剤とともに中間体、例えばヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ポリカーボネート、またはそれらの混合物と反応させることによって調製される。これらのすべては当業者に周知である。
【0017】
ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、一般に、約500から約10,000、望ましくは約700から約5,000、好ましくは約700から約4,000の数平均分子量(M
n)を有し、一般に1.3未満、好ましくは0.8未満の酸価を有する直鎖ポリエステルである。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量と関連付けられる。ポリマーは、(1)1つ以上のグリコールと1つ以上のジカルボン酸または酸無水物とのエステル化反応によって、あるいは(2)エステル交換反応、すなわち1つ以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応によって製造される。末端ヒドロキシル基が優勢である直鎖を得るためには、一般に、酸に対して1モル超のグリコールのモル比が好ましい。適当なポリエステル中間体は、さまざまなラクトン、例えば通常はε−カプロラクトンと二官能性開始剤、例えばジエチレングリコールとから作られるポリカプロラクトンも含む。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはそれらの組み合わせであってよい。単独で用いられても混合物中で用いられてもよい適当なジカルボン酸は、一般に、合計4から15個の炭素原子を有し、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、および類似物を含む。上記のジカルボン酸の無水物、例えば無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、または類似物も用いられてよい。アジピン酸が好ましい酸である。反応して望ましいポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族、芳香族、またはそれらの組み合わせであってよく、合計2から12個の炭素原子を有し、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、および類似物を含み、1,4−ブタンジオールが好ましいグリコールである。
【0018】
ヒドロキシル末端ポリエーテル中間体は、2から6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、通常はエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはその混合物を含むエーテルと反応させた、合計2から15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオール、好ましくはアルキルジオールまたはグリコールから誘導されるポリエーテルポリオールである。例えば、ヒドロキシル官能ポリエーテルは、最初にプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、続いてエチレンオキシドと次の反応をさせることによって製造することができる。エチレンオキシドから得られる一級ヒドロキシル基は、二級ヒドロキシル基より反応性が高く、従って好ましい。有用な市販のポリエーテルポリオールは、エチレングリコールと反応させたエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応させたプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフランと反応させた水を含むポリ(テトラメチルグリコール)(PTMEG)を含む。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)が好ましいポリエーテル中間体である。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドのポリアミド付加体をさらに含み、例えばエチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加体、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加体、および同様なポリアミド型のポリエーテルポリオールを含んでよい。本発明においてコポリエーテルも利用してよい。通常のコポリエーテルは、THFとエチレンオキシド、またはTHFとプロピレンオキシドとの反応生成物を含む。これらは、BASFからブロックコポリマーであるPoly THF B、およびランダムコポリマーであるポリTHF Rとして入手可能である。さまざまなポリエーテル中間体は、一般に、末端官能基のアッセイによって決定される数平均分子量(M
n)を有し、M
nは、約700より大きな、例えば約700から約10,000、望ましくは約1000から約5000、好ましくは約1000から約2500の平均分子量である。特定の望ましいポリエーテル中間体は、2つ以上の異なる分子量のポリエーテルのブレンド、例えばM
nが2000のPTMEGとM
nが1000のPTMEGのブレンドである。
【0019】
本発明の最も好ましい実施態様は、アジピン酸を、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの50/50の重量ブレンドと反応させて作られるポリエステル中間体を用いる。上記ブレンドはまた、上記1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの50/50のモルブレンドであってもよい。
【0020】
本発明のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートを、ヒドロキシル末端ポリカーボネートと連鎖延長剤とのブレンドと反応させることによって調製される。ヒドロキシル末端ポリカーボネートは、グリコールをカーボネートと反応させることによって調製することができる。
【0021】
米国特許第4,131,731号が開示する、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびそれらの調製法は、参照により本明細書によって組み込まれる。そのようなポリカーボネートは直鎖であり、末端ヒドロキシル基を有し、基本的に他の末端基は含まれない。必須の反応体は、グリコールおよびカーボネートである。適当なグリコールは、4から40個、好ましくは4から12個の炭素原子を含む脂環式および脂肪族ジオールから、ならびに、分子あたり2から20個のアルコキシ基を含み、各アルコキシ基は2から4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレングリコールから選ばれる。本発明において用いるのに適しているジオールは、4から12個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール、および脂環式ジオール、例えば1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−エンドメチレン−2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、およびポリアルキレングリコールを含む。上記反応において用いられるジオールは、最終製品において望まれる特性に応じて単一ジオールであってもジオールの混合物であってもよい。
【0022】
末端がヒドロキシルであるポリカーボネート中間体は、一般に、当分野においておよび文献において公知のものである。適当なカーボネートは、次の一般式を有する5から7員環から構成される炭酸アルキレンから選ばれる。
【0024】
ここで、Rは、2から6個の直鎖炭素原子を含む飽和2価ラジカルである。本発明において用いるのに適しているカーボネートは、炭酸エチレン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、炭酸1,2−プロピレン、炭酸1,2−ブチレン、炭酸2,3−ブチレン、炭酸1,2−エチレン、炭酸1,3−ペンチレン、炭酸1,4−ペンチレン、炭酸2,3−ペンチレン、および炭酸2,4−ペンチレンを含む。
【0025】
炭酸ジアルキル、脂環式カーボネート、および炭酸ジアリールも本発明において適している。炭酸ジアルキルは、各アルキル基中に2から5個の炭素原子を含んでよく、その特定の例は、炭酸ジエチルおよび炭酸ジプロピルである。脂環式カーボネート、特に二脂環式カーボネートは、各環構造中に4から7個の炭素原子を含んでよく、1つまたは2つのそのような構造があってもよい。一方の基が脂環式のとき、他方はアルキルまたはアリールのどちらでもよい。これに対して、一方の基がアリールなら、他方はアルキルまたは脂環式であってよい。各アリール基中に6から20個の炭素原子を含んでよい炭酸ジアリールの好ましい例は、炭酸ジフェニル、炭酸ジトリル、および炭酸ジナフチルである。
【0026】
反応は、エステル交換触媒の存在下または非存在下で100℃から300℃の温度および0.1から300mmHgの範囲の圧力において蒸留によって低沸点グリコールを除去しながら10:1から1:10、しかし好ましくは3:1から1:3のモル範囲でグリコールをカーボネート、好ましくは炭酸アルキレンと反応させることによって行われる。
【0027】
より詳しくは、ヒドロキシル末端ポリカーボネートは2段階で調製される。第1段階において、グリコールを炭酸アルキレンと反応させて低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートを生成させる。低沸点グリコールは、10から30mmHg、好ましくは50から200mmHgの減圧下で100℃から300℃、好ましくは150℃から250℃における蒸留によって除去される。副生物のグリコールを反応混合物から分離するために分留塔が用いられる。副生物のグリコールは塔頂部から取り出され、未反応炭酸アルキレンおよびグリコール反応体は還流として反応器に戻される。不活性ガスまたは不活性溶媒の流れを用いて、副生物のグリコールが生成される場合に副生物のグリコールの除去を促進してよい。得られた副生物のグリコールの量が、ヒドロキシル末端ポリカーボネートの重合度が2から10の範囲であることを示したとき、圧力が0.1から10mmHgに徐々に低くされ、未反応グリコールおよび炭酸アルキレンが除去される。これは、第2の反応段階の始まりを表し、第2の反応段階においては、100℃から300℃、好ましくは150℃から250℃および0.1から10mmHgの圧力において、グリコールが生成されると同時に、グリコールを蒸留して除くことによって、所望の分子量のヒドロキシル末端ポリカーボネートに達するまで低分子量ヒドロキシル末端ポリカーボネートを縮合させる。ヒドロキシル末端ポリカーボネートの分子量(M
n)は、約500から約10,000まで異なってよいが、好ましい実施態様においては、500から2500の範囲である。
【0028】
本発明のTPUポリマーを作る第2の必要な成分は、ポリイソシアネートである。
【0029】
本発明のポリイソシアネートは、一般に、式R(NCO)
nを有し、ここで、nは一般に2から4であり、組成物が熱可塑性樹脂であるので2が非常に好ましい。従って、3または4個の官能基を有するポリイソシアネートは、それらが架橋を引き起こすので、非常に少量、例えばすべてのポリイソシアネートの合計重量を基準として重量で5%未満、望ましくは2%未満の量で利用される。Rは、一般に合計2から約20個の炭素原子を有する芳香族、脂環式、および脂肪族、またはそれらの組み合わせであってよい。適当な芳香族ジイソシアネートの例は、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、H
12 MDI、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、およびジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4′−ジイソシアネート(TODI)を含む。適当な脂肪族ジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4,4−テトラメチルヘキサン(TMDI)、1,10−デカンジイソシアネート、およびtrans−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)を含む。非常に好ましいジイソシアネートは、約3重量%未満のオルト−パラ(2,4)異性体を含むMDIである。
【0030】
本発明のTPUポリマーを作る第3の必要な成分は、連鎖延長剤である。適当な連鎖延長剤は、約2から約10個の炭素原子を有する低級脂肪族または短鎖グリコールであり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキシルジメチロールのcis−trans異性体、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,5−ペンタンジオールを含む。芳香族グリコールも連鎖延長剤として用いてよく、高熱利用のための好ましい選択肢である。ベンゼングリコール(HQEE)およびキシリレングリコールは、本発明のTPUを作るのに用いられる適当な連鎖延長剤である。キシリレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンと1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンとの混合物である。ベンゼングリコールは、好ましい芳香族連鎖延長剤であり、詳しくは、ハイドロキノン、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;レゾルシノール、すなわち1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;カテコール、1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られているビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;およびそれらの組み合わせを含む。好ましい連鎖延長剤は、1,4−ブタンジオールである。
【0031】
上記の3つの必要な成分(ヒドロキシル末端中間体、ポリイソシアネート、および連鎖延長剤)を、好ましくは触媒の存在下で反応させる。
【0032】
一般に、ジイソシアネートをヒドロキシル末端中間体または連鎖延長剤と反応させるために、任意の従来の触媒も利用してよく、当分野および文献において同じことが周知である。適当な触媒の例は、ビスマスまたはスズのさまざまなアルキルエーテルまたはアルキルチオールエーテルを含み、ここで、アルキル部分は1から約20個の炭素原子を有し、特定の例は、ビスマスオクトエート、ビスマスラウレート、および類似物を含む。好ましい触媒は、さまざまなスズ触媒、例えば第一スズオクトエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、および類似物を含む。そのような触媒の量は、一般に少なく、例えばポリウレタン形成モノマーの合計重量を基準として約20から約200パーツパーミリオンである。
【0033】
本発明のTPUポリマーは、当分野および文献において周知の従来の重合法のいずれによって作られてもよい。
【0034】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは「ワンショット」プロセスによって作られる。このプロセスにおいては、加熱されている押し出し機にすべての成分が一緒に同時に、または実質的に同時に加えられ、反応してポリウレタンを生成する。ヒドロキシル末端中間体とジオール連鎖延長剤との合計当量に対するジイソシアネートの当量比は、一般に、約0.95から約1.10、望ましくは約0.97から約1.03、好ましくは約0.97から約1.00である。生成するTPUのショアA硬度は、完成した物品の最も望ましい特性を達成するために、通常は65Aから95A、好ましくは約75Aから約85Aである。ウレタン触媒を利用する反応温度は、一般に、約175℃から約245℃、好ましくは約180℃から約220℃である。熱可塑性ポリウレタンの分子量(Mw)は、一般に、GPCによりポリスチレン標準と比較して測定して、約100,000から約800,000ダルトン、望ましくは約150,000から約400,000、好ましくは約150,000から約350,000である。
【0035】
本熱可塑性ポリウレタンは、プレポリマープロセスを利用して調製してもよい。プレポリマー経路においては、ヒドロキシル末端中間体を一般に過剰当量の1つ以上のポリイソシアネートと反応させて、溶液中に遊離のまたは未反応のポリイソシアネートを含むプレポリマー溶液を形成させる。反応は、一般に、適当なウレタン触媒の存在下で約80℃から約220℃、好ましくは約150℃から約200℃の温度で行われる。続いて、上述の選択型の連鎖延長剤が、イソシアネート末端基に、および任意の遊離または未反応のジイソシアネート化合物に概ね等しい当量で加えられる。ヒドロキシル末端中間体と連鎖延長剤との合計当量に対するジイソシアネート全体の全体的な当量比は、従って、約0.95から約1.10、望ましくは約0.98から約1.05、好ましくは約0.99から約1.03である。連鎖延長剤に対するヒドロキシル末端中間体の当量比は、所望の硬度、例えば、65Aから95A、好ましくは75Aから85Aのショア硬度をもたらすように調整される。鎖延長反応温度は、一般に、約180℃から約250℃であり、約200℃から約240℃が好ましい。通常は、プレポリマー経路は、任意の従来の装置中で行ってもよく、押し出し機が好ましい。従って、押し出し機の第1の部分の中でヒドロキシル末端中間体を過剰当量のジイソシアネートと反応させてプレポリマー溶液を生成させ、続いて、下流の部分で連鎖延長剤を加え、プレポリマー溶液と反応させる。任意の従来の押し出し機を利用してもよく、直径に対する長さの比が少なくとも20、好ましくは少なくとも25であるバリアスクリューを備えた好ましい押し出し機を利用してもよい。
【0036】
適当な量の有用な添加剤を利用してよく、有用な添加剤は、不透明化顔料、着色剤、鉱物充填剤、安定剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、加工助剤、および必要に応じた他の添加剤を含み得る。有用な不透明化顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタネートイエロー(titanate yellow)を含み、有用な彩色顔料は、カーボンブラック、黄色酸化物、褐色酸化物、粗および焼けたシエナ土またはアンバー、酸化クロムグリーン、カドミウム顔料、クロム顔料、および他の混合金属酸化物および有機顔料を含む。有用な充填剤は、珪藻土(スーパーフロス)粘土、シリカ、タルク、雲母、珪灰石、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムを含む。望むなら、有用な安定剤、例えば酸化防止剤を用いてよく、有用な安定剤は、フェノール系酸化防止剤を含み得、有用な光安定剤は、有機リン酸エステル、および有機スズチオラート(メルカプチド)を含む。有用な潤滑剤は、金属ステアリン酸塩、パラフィン油、およびアミドワックスを含む。有用な紫外線吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンを含む。通常のTPU難燃剤も添加されてもよい。
【0037】
特性に影響を及ぼすことなく硬度を低下させるために、少量で使用するならば、可塑剤添加剤も有利に利用することができる。好ましくは、可塑剤は使用されない。
【0038】
不織布を作るためのメルトブローまたはスパンボンドプロセスの間に、上記TPUポリマーは、架橋剤で軽度に架橋される。架橋剤は、ヒドロキシル末端中間体のプレポリマーであり、ヒドロキシル末端中間体のプレポリマーは、ポリイソシアネートと反応したポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、またはそれらの混合物である。ポリエステルまたはポリエーテルが架橋剤を作る好ましいヒドロキシル末端中間体であり、ポリエステルTPUと組み合わせて用いられるときポリエーテルが最も好ましい。プレポリマーである架橋剤は、約1.0個より大きな、好ましくは約1.0から約3.0個、より好ましくは約1.8から約2.2個のイソシアネート官能基を有する。ヒドロキシル末端中間体の両末端がイソシアネートでキャップされ、従って2.0個のイソシアネート官能基を有するなら特に好ましい。
【0039】
架橋剤を作るために用いられるポリイソシアネートは、TPUポリマーの作製において上で記載されたものと同じである。ジイソシアネート、例えばMDIが好ましいジイソシアネートである。
【0040】
架橋剤は、約750から約10,000ダルトン、好ましくは約1,200から約4,000ダルトン、より好ましくは約1,500から約2,800ダルトンの数平均分子量(M
n)を有する。M
nが約1500であるまたは約1500を超える架橋剤で、より良好に設定された特性が得られる。
【0041】
TPUポリマーと共に用いられる架橋剤の重量パーセントは、約2.0%から約20%、好ましくは約8.0%から約15%、より好ましくは約10%から約13%である。用いられる架橋剤の百分率は、TPUポリマーと架橋剤の合計重量を基準とする重量パーセントである。
【0042】
本発明のTPU不織布を作る好ましいプロセスは、予め形成されたTPUポリマーを押し出し機に供給してTPUポリマーを溶融させることを含み、架橋剤は、TPU溶融物が押し出し機から出る段階に近い下流で、またはTPU溶融物が押し出し機を出た後に連続的に添加される。架橋剤は、溶融物が押し出し機から出る前に押し出し機に加えられても溶融物が押し出し機を出た後に押し出し機に加えられてもよい。架橋剤は、溶融物が押し出し機から出た後に加えられるなら、TPUポリマー溶融物への架橋剤の適切な混合を確実にするために、静的または動的ミキサーを用いてTPU溶融物と混合される必要がある。押し出し機から出た後に、溶融TPUポリマーと架橋剤とはマニホールドに流入する。マニホールドは、複数の孔または開口部を有するダイに供給する。個別の繊維は、孔を通って出る。高温、高速の空気が供給され、繊維に沿って吹き付けられて高温の繊維を伸長させ、ベルトの上に繊維をランダムに堆積させて不織マットを形成させる。形成された不織マットはベルトによって運び去られ、ロールに巻き付けられる。
【0043】
本不織繊維作製プロセスの重要な様相は、TPUポリマー溶融物と架橋剤との混合である。一様な繊維特性を達成するために適当な一様な混合が重要である。TPU溶融物と架橋剤との混合は、プラグ流れ、すなわち先入れ先出しを達成する方法であるべきである。適当な混合は、動的ミキサーまたは静的ミキサーで達成することができる。静的ミキサーの方が清掃し難く、従って動的ミキサーの方が好ましい。供給スクリューおよび混合ピンを有する動的ミキサーが好ましいミキサーである。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,709,147号は、そのようなミキサーを記載し、回転することができる混合ピンを有する。混合ピンは、定位置にあってよく、例えばミキサーの胴体部に取り付けられ、供給スクリューの中心線の方へ伸びてよい。混合供給スクリューは、ネジによって押し出し機スクリューの末端に取り付けてよく、ミキサーのハウジングは押し出し機にボルト留めしてよい。動的ミキサーの供給スクリューは、ポリマー溶融物を漸進的に動かし、後方混合がほとんどなく、溶融物のプラグ流れを達成する設計にするべきである。混合スクリューのL/Dは、3を超える値から30未満まで、好ましくは約7から約20まで、より好ましくは約10から約12までであるべきである。
【0044】
TPUポリマー溶融物が架橋剤と混合される混合ゾーンにおける温度は、約200℃から約240℃、好ましくは約210℃から約225℃である。ポリマーを劣化させないで反応させるためにこれらの温度が必要である。
【0045】
形成されるTPUは、押し出しプロセス時に架橋剤と反応させて約200,000から約800,000、好ましくは約250,000から約500,000、より好ましくは約300,000から約450,000の最終繊維形のTPUの分子量(Mw)が得られる。
【0046】
プロセス温度(ダイに入る場合、ポリマー溶融物の温度)は、ポリマーの融点より高く、好ましくはポリマーの融点の約10℃から約20℃上の温度であるべきである。用いることができる溶融温度が高いほど、ダイ開口部を通る押し出しはより良好になる。しかし、溶融温度が高すぎるとポリマーは分解し得る。従って、TPUポリマーの融点の約10℃から約20℃上の温度が、ポリマーの分解のない良好な押し出しの兼ね合いを達成するために最適である。溶融温度が低すぎると、ダイ開口部中でポリマーが固化し、繊維欠損を引き起こし得る。
【0047】
本発明の不織布を作る2つのプロセスは、スパンボンドプロセスおよびメルトブロープロセスである。どちらのプロセスの基本概念も不織布を作る当業者に十分理解されている。通常、スパンボンドプロセスは、ダイのそばに室温の空気を誘導して吸引力を発生させ、吸引力によってダイから繊維を引張り、繊維を伸長させた後にベルトの上に繊維をランダム配向で堆積させる。スパンボンドプロセスの場合、ダイからコレクター(ベルト)までの距離は、約1から2メートルの範囲であってよい。スパンボンドプロセスは、個別の繊維が10マイクロメートル以上、好ましくは15マイクロメーター以上の直径を有する不織布を作るために最も良好に用いられる。通常、メルトブロープロセスは、例えば400から450℃の加圧加熱空気を用いてダイを通るように繊維を押し、繊維を伸長させた後、繊維はコレクターの上にランダム配向で堆積される。メルトブロープロセスの場合、ダイからコレクターまでの距離はスパンボンドプロセスの場合より短く、通常0.05から0.75メートルである。メルトブロープロセスは、スパンボンドプロセスより小さなサイズの繊維を作るために用いることができる。メルトブロー製造繊維の場合の繊維直径は、1マイクロメートル未満であってよく、0.2マイクロメートルという小ささの直径であってもよい。もちろん、どちらのプロセスも、上記で言及されているより大きな直径の繊維を作ることができる。どちらのプロセスもいくつかの孔、通常ダイの幅1インチあたり約30から100の孔を有するダイを用いる。通常、インチあたりの孔の量は孔の直径に依存し、次に孔の直径はそれぞれの繊維のサイズを定める。不織布の厚さは製造される繊維のサイズおよび不織布を搬送するベルトの送り速度に応じて大幅に変化する。メルトブロー不織布についての典型的な厚さは、約0.5ミルから10ミル(0.0127mmから0.254mm)である。スパンボンドプロセスで作られた不織布について、典型的な厚さは、約5ミルから30ミル(0.127mmから0.762mm)である。厚さは、最終使用用途に応じて上記に記載のものから変化してよい。
【0048】
上記に言及の架橋剤はいくつかの目的を達成する。架橋剤は、不織布中の繊維の引張り強さおよび歪み特性を改善する。架橋剤は、不織マットの形であるときに接触する繊維の表面の間で反応させることによって、繊維の間に結合も起こさせる。すなわち、繊維は、不織布中の別のTPU繊維と接触するところで化学的に結合する。この特徴は不織布に耐久性を加え、分離させずに取り扱うことを容易にする。架橋剤は、初期にTPU溶融物の溶融粘度も低下させ、繊維の押し出し時のダイのヘッド圧を低下させる。この低下したダイヘッド圧は、溶融物がより高速でダイを通って流れることを可能にし、より小さな直径の繊維が作られることを可能にする。例えば、約12〜14重量パーセントの架橋剤レベルは、ダイヘッド圧を約50%低下させることができる。
図1に、架橋剤の重量パーセントに対するダイヘッド圧のグラフがある。
【0049】
本発明の不織布は、例えばカレンダー法によってさらに加工することができる。加熱されたカレンダーロールは、不織布を圧縮して厚さを減らし、布中の空気通路のサイズを小さくすることができる。圧縮された不織布は、さまざまな用途、例えばろ過のための膜として用いることができる。不織布はカレンダーにかけることができ、この場合、すべての空気空間がなくなり、固体フィルムが形成される。
【0050】
本発明は、不織布を構成する繊維が非常に小さく、例えば1マイクロメートル未満にされることを可能にする。この小さなサイズの繊維は、空気通路が非常に小さく、不織布をある範囲の最終用途、例えばろ過または通気性衣類にとって許容されるものとするように不織布が圧縮されることを可能にする。繊維直径が小さくなるほど、小さな細孔サイズが達成可能になる。
【0051】
本発明の別の実施態様は、架橋されたTPU不織布または架橋剤のないTPU不織布から作られた膜を含む。不織布は、例えば加熱されたカレンダーロールを通して加工することによって、圧縮されてその厚さを減らす。不織布を圧縮するステップは、不織布の細孔サイズも小さくする。膜中の細孔サイズは、膜を通る所望の空気流ならびに膜を通って透過される水蒸気の量を定めるために重要である。水滴のサイズは約100マイクロメートルなので、最終使用用途が膜が耐水性であることを要求する場合、細孔サイズは100マイクロメートル未満であるべきである。降って来る雨のように水にいくらか圧力があると、防水性であるためには細孔サイズはより小さく、例えば25マイクロメートル以下である必要がある。本発明の膜は、所望の最終使用用途に応じて100ナノメートルから100マイクロメートル未満の細孔サイズを有する。所望の細孔サイズを決定する別の因子は、膜を通る所望の空気流である。空気流は、細孔の数、細孔サイズ、および細孔を通る平均流路によって影響を受ける。25フィート
3/分/フィート
2(7.621m
3/分/m
2)以上の空気流は非常に開放的であると考えられる。アウターウェア衣類の場合、約5から10フィート
3/分/フィート
2(1.524から3.048m
3/分/m
2)の空気流が望ましいと考えられる。本発明の膜は、所望の最終使用用途に応じて2から500フィート
3/分/フィート
2(0.601から152.4m
3/分/m
2)の空気流を有することができる。空気流は、ASTM D737−96試験方法に従って測定される。
【0052】
膜の厚さは、不織布の厚さならびに膜中の不織布の層の数に応じて変化してよい。カレンダー法操作において不織布が圧縮される量も膜の厚さを決定する。膜は、単一層の不織布または複数層の不織布から作られてよい。例えば、メルトブロープロセスによって作られた5ミル(0.0127cm)の厚さの不織布は、約1.5ミル(0.00381cm)の厚さを有する望ましい膜を作る。別の例は、スパンボンドプロセスによって作られた10ミル(0.0254cm)の厚さの不織布である約6.5ミル(0.01651cm)の厚さを有する望ましい膜を作る。膜の厚さは、不織布の厚さおよび膜を作るために用いられた不織布の層数に応じて変化してよい。
【0053】
膜を他の材料に接着させることが望まれる用途については、架橋剤を有しないTPUを用いることが好ましい。TPU膜が他の布に接着する必要がある衣類の場合にこれがあてはまり得る。
【0054】
引張り強度および他の弾性特性を測定するために使用される試験手順は、DuPontによって弾性ヤーン用に開発されたものであるが、この試験手順は不織布用に改変されている。この試験は、布を一連の5つのサイクルに付す。各サイクルにおいて、布は300%伸び率まで延伸され、一定の伸長速度を用いて緩和(元のゲージ長さと300%伸び率との間で)される。第5サイクルの後で%歪み(% set)が測定される。次に、第6サイクルを通して布試料が採取され、破断するまで延伸される。装置は、グラム重の単位で各伸長率における負荷、破断前最高負荷、および破断負荷、ならびに破断伸び率および最大伸び率を記録する。この試験は、普通は室温(23℃±2℃、および50%±5%の湿度)において行われる。
【0055】
本明細書に記載される不織布は、ろ過のために、アパレルの製造において、産業用布として、および他の類似の用途のために用いられてよい。布を構成する繊維が強くなり、および/または細くなればそのような不織布を用いる機会は増加し、これらの用途のすべてではないにしろ多くにおいてそのような布の性能は改善される。本発明は、従来の繊維と比較するとより強くかつより細い繊維を提供し、従ってこれらの繊維から作られた不織布はより広い範囲の用途で有用であり、布の製造において用いられた繊維の増加した強度および/またはより小さな直径から誘導された改善された性能を発揮する。例えば、本発明の不織布を含むろ過媒体は、改善された有効性を有することができ、スループットを増加させ、より細かなろ過を可能にし、必要なろ過媒体のサイズ、厚さまたは量、あるいはそれらの任意の組み合わせを減らすことができる。
【0056】
以下の実施例を参照することによって本発明の理解が深まる。
【実施例】
【0057】
実施例中で用いられるTPUポリマーは、ポリエステルヒドロキシル末端中間体(ポリオール)を1,4−ブタンジオール連鎖延長剤およびMDIと反応させることによって作られた。ポリエステルポリオールは、アジピン酸を、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの50/50混合物と反応させることによって作られた。ポリオールは、2500のM
nを有していた。TPUは、ワンショットプロセスによって作られた。不織布を作製するプロセス時にTPUに加えられた架橋剤は、M
nが1000のPTMEGをMDIと反応させてイソシアネートでエンドキャップされたポリエーテルを作り出すことによって作られたポリエーテルプレポリマーであった。実施例1において、架橋剤は、TPUと架橋剤との合計重量の10重量%のレベルで用いられた。実施例2において、10重量%の架橋剤が用いられた。
【0058】
(実施例1)
本実施例は、本架橋剤がメルトブロープロセスにおいてダイヘッド圧を低下させることを示すために提示される。
図1に結果が示される。用いられた架橋剤の重量%レベルは、0、10、12.5、および16.5であった。
図1から分かり得るように、架橋剤のレベルが増加するとダイヘッド圧は大幅に低下する。
【0059】
(実施例2)
本実施例は、架橋剤を用いない場合に対する架橋剤を用いて作られた弾性繊維不織布の引張り強さの劇的な増加を示すために提示される。データは、架橋剤が用いられると不織布の強度(最大荷重)が約100%も増加することを示す。データは、架橋剤を用いると高度の伸長度を維持しながら引張り歪みが約50%低下し、架橋剤の使用による劇的な弾性の増加を明示することも示す。
【0060】
用いられた試験手順は、弾性特性の試験について上に記載されたものであった。Merlinソフトウエアを備えたインストロンモデル5564テンシオメーターが用いられた。試験条件は、23℃±2℃および50%±5%湿度であり、クロスヘッドスピードは500mm/分であった。試験検体は、長さ50.0mm、幅1.27cmおよび厚さ9.25ミル(0.0235cm)であった。どちらの布も60グラム/m
2(GSM)の公称重量を有していた。架橋された繊維の重量平均分子量(Mw)は376,088ダルトンであり、一方架橋されていない繊維のMwは116,106ダルトンであった。4つの検体が試験され、結果は、試験された4つの検体の平均値である。表Iに結果が示される。
【0061】
【表1】
上記のデータはすべて、試験された4つの検体についての平均値である。
【0062】
上記のデータから、本発明の不織布は、良好な伸び率および%歪みの弾性特性を保持する一方で、非常に高くなった引張り強さを有することが分かる。
【0063】
特許法令に従って、最良のモードおよび好ましい実施態様を示してきたが、本発明の範囲はそれらに限定されず、むしろ添付の請求項の範囲によって限定される。