特許第5950413号(P5950413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950413パーシャルアゴニスト活性を持つ新規ビタミンD受容体モジュレーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950413
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】パーシャルアゴニスト活性を持つ新規ビタミンD受容体モジュレーター
(51)【国際特許分類】
   C07C 401/00 20060101AFI20160630BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C07C401/00CSP
   A61K31/59
   A61P43/00 123
   A61P19/10
   A61P35/00
   A61P17/06
   A61P37/06
   A61P31/00
   A61P25/28
   A61P3/10
   A61P9/00
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-502403(P2013-502403)
(86)(22)【出願日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2012055254
(87)【国際公開番号】WO2012118154
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-45022(P2011-45022)
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】槇島 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ モウリーニョ
(72)【発明者】
【氏名】常盤 広明
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健
(72)【発明者】
【氏名】渡曾 友祐
(72)【発明者】
【氏名】前川 和樹
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−514621(JP,A)
【文献】 特開2007−126458(JP,A)
【文献】 特表2003−504354(JP,A)
【文献】 特表2001−515881(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142158(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/064011(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/059768(WO,A1)
【文献】 特開2005−247768(JP,A)
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2008年,51(17),p.5320-5329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 401/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で表される化合物、式(I)で表される化合物の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物、又はその溶媒和物。
【化1】
(式中、m及びnはそれぞれ独立に1又は0であり、Rは水素原子又はアルキル基であり、
Yはエタン-1,1-ジイル基又はエチン-1,2-ジイル基であり、
1は水素原子であり、Z2はヒドロキシアルコキシ基であるか、あるいは、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する)
【請求項2】
式(I)で表される化合物が、(25S)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19,26,27-トリノルビタミン D3、 (25R)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19,26, 27-トリノルビタミン D3、 (25R)-26-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19, 27-ジノルビタミン D3、(25S)-26-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19,27-ジノルビタミン D3、(25R)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン- 20,20,22,22,23,23,24,24-オクタデヒドロ-19,21,26,27-テトラノルビタミン D3、(25S)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン- 20,20,22,22,23,23,24,24-オクタデヒドロ-19,21,26,27-テトラノルビタミン D3、(25R)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19,27-ジノルビタミン D3及び(25S)-25-(1-アダマンチル)-1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-23,23,24,24-テトラデヒドロ-19,27-ジノルビタミン D3からなる群より選択される化合物である請求項1記載の化合物、又はその溶媒和物。
【請求項3】
医薬又は実験用試薬として用いられる、請求項1記載の化合物、又はその溶媒和物を含む組成物。
【請求項4】
ビタミンD受容体を活性化させるための請求項3記載の組成物。
【請求項5】
医薬として使用される請求項3又は4記載の組成物。
【請求項6】
ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療するための請求項5記載の組成物。
【請求項7】
骨粗鬆症、悪性新生物、尋常性乾癬、自己免疫疾患、感染症及び神経変性疾患から成る群より選択される疾患を予防及び/又は治療するための請求項5又は6記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーシャルアゴニスト活性を持つ新規ビタミンD受容体モジュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
活性型ビタミンDは、ビタミンD受容体(VDR)に結合して、カルシウム代謝調節、細胞増殖抑制・分化誘導、炎症・免疫調節、心臓血管系および毛周期の調節などの作用を及ぼす。もし、これらの活性をコントロールできれば、ビタミンD剤は悪性新生物や感染症・自己免疫疾患、心臓血管系疾患、更に脱毛症などの有用な治療剤となり得ると考えられる。
【0003】
しかし、これまで合成され医薬開発が試みられた化合物のほとんどは天然ホルモンとほぼ同様の作用スペクトルを持つアゴニストであり、活性型ビタミンD剤に共通する副作用である高カルシウム血症が問題となり、医薬開発に大きな障害があった。その中で、最初の骨粗鬆症治療剤として、アルファカルシドールが、その後、外用の乾癬治療剤としてマキサカルシトールやカルシポトリエンなどが臨床開発された。マキサカルシトールはファーマコキネティック的な組織選択性を示し、二次性副甲状腺機能亢進症治療剤として臨床応用が拡大された。しかし、エストロゲン受容体の選択的エストロゲン受容体モジュレーターのような遺伝子発現レベルでの細胞あるいは組織選択性をもつビタミンD剤は未だ開発されていない。また、VDRアンタゴニスト作用を持つビタミンD誘導体として、数種のグループの化合物が報告されている(非特許文献1〜3)が、医薬開発に成功した例は無い。一方、活性型ビタミンDの活性をもつ化合物として完全合成物質の中から見出されたノンセコステロイドと称される化合物群が選択的VDRモジュレーターとして開発途上にある。 (非特許文献4〜8)
【0004】
従来の活性型ビタミンD誘導体は、VDRのフルアゴニストとして開発されたものであり、ヒトまたは動物へ投与した場合、治療効果を発揮する投与量において、血中カルシウム濃度を上昇させてしまう。高カルシウム血症の原因は、小腸粘膜におけるカルシウム輸送担体の遺伝子発現誘導と考えられている。この副作用である高カルシウム血症は、くる病や骨軟化症などのビタミンD欠乏症以外の疾患の治療における従来型の活性型ビタミンD誘導体の安全な臨床使用を困難にしている。これは、活性型ビタミンD剤が欧米で骨粗鬆症治療剤として開発できなかった理由であり、ビタミンD剤が抗がん剤や免疫調節剤として開発に成功しなかった理由でもある。従って、活性型ビタミンD剤の開発の鍵は、血中カルシウム上昇作用(小腸粘膜におけるカルシウム吸収促進作用)とその他の作用との分離であるが、これまでの成功例はない。この理由の一つは、これまで開発されたVDRフルアゴニスト型の誘導体では、リガンドが結合したVDRのactivation function 2(AF2)表面の構造が同様で、転写共役因子である種々のコアクチベーターやコレプレッサーとの結合に選択性が出ないことにあると予想される。その結果、活性に組織選択性が期待できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bury, Y.; Steinmeyer, A.; Carlberg, C. Structure activity relationship of carboxylic ester antagonists of the vitamin D3 receptor. Mol. Pharmacol. 2000 58,1067-74
【非特許文献2】Miura, D.; Manabe, K.; Ozono, K.; Saito, M.; Gao, Q.; Norman, A.W.; Ishizuka, S. Antagonistic action of novel 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3-26, 23-lactone analogs on differentiation of human leukemia cells (HL-60) induced by 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3. J. Biol. Chem. 1999 274, 16392-16399.
【非特許文献3】Kato, Y.; Nakano, Y.; Sano, H.; Tanatani, A.; Kobayashi, H.; Shimazawa, R.; Koshino, H.; Hashimoto, Y.; Nagasawa, K. Synthesis of 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3-26,23-lactams (DLAMs), a novel series of 1 alpha,25-dihydroxyvitamin D3 antagonist. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004 14, 2579-2583.
【非特許文献4】Boehm MF et al., Chem Biol 6 (1999) 265-275.
【非特許文献5】Ma Y, et al., J. Clin Inves, 116 (2006) 892-904.
【非特許文献6】Hosoda S et al., Bioorg Med Chem, 14 (2006) 5489-5502.
【非特許文献7】Sato M, et al., J Bone Mineral Res, 25 (2010) 1326-1336.
【非特許文献8】Kashiwagi H, et al., Bioorg Med Chem, 19 (2011) 4721-4729.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、選択的VDRモジュレーターとして機能して、高カルシウム血症を誘導せずにその他の作用を引き起こす作用選択性または組織選択性を有する化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、VDRパーシャルアゴニストとして機能する新規ビタミンD化合物を創生した。VDRパーシャルアゴニスト設計の鍵は、リガンドの側鎖構造であり、それが結合したときのVDRのAF2コンフォメーションの変化である。これはビタミンDの側鎖に嵩高いアダマンタン環と三重結合を導入することによって達成した。
今回合成した23-yn-25(or 26)-adamantyl化合物(ADTK1-4)は、いずれも期待通り、転写活性化試験において、パーシャルアゴニスト活性を示した(図2)。この結果は、これらが結合したVDRのリガンド依存性転写活性化(AF2)構造に変化が生じていることを示唆している。すなわち、AF2部位の表面構造が、通常のアゴニスト結合型から変化している、そして、AF2表面へのコアクチベーターおよびコリプレッサーの結合性が変化していることが示唆された。今回の化合物は、本発明者らが以前に報告してきた、二重結合誘導体(10−15%)(M. Igarashi et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 460 (2007) 240-253; J. Med. Chem. 2008, 51, 5320-5329)と比較し、いずれも、efficacyがかなり高いこと(40−72%)が特徴である。しかし、1,25(OH)2D3共存下では、この天然ホルモンの作用を競合的に阻害し、活性を当該化合物の活性まで下げ、弱いアンタゴニスト活性をもつことも示された。すなわち、当該化合物が、選択的VDRモジュレーターとして機能して、高カルシウム血症を誘導せずにその他の作用を引き起こす作用選択性または組織選択性を有する可能性が示唆された。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)下記の式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグ。
【化1】
(式中、m及びnはそれぞれ独立に1又は0であり、Rは水素原子又はアルキル基であり、
Yはエタン-1,1-ジイル基又はエチン-1,2-ジイル基であり、
1は水素原子であり、Z2はヒドロキシアルコキシ基であるか、あるいは、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する)
(2)式(I)で表される化合物が、(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26,27-trinorvitamin D3、 (25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26, 27-trinorvitamin D3、 (25R)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19, 27-dinorvitamin D3、(25S)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3、(25R)- 25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3、(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3、(25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy- 2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3及び(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3からなる群より選択される化合物である(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグ。
(3)(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグを含む組成物。
(4)ビタミンD受容体を活性化させるための(3)記載の組成物。
(5)医薬として使用される(3)又は(4)記載の組成物。
(6)ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療するための(5)記載の組成物。
(7)骨粗鬆症、悪性新生物、尋常性乾癬、自己免疫疾患、感染症及び神経変性疾患から成る群より選択される疾患を予防及び/又は治療するための(5)又は(6)記載の組成物。
(8)ビタミンD受容体を有する細胞、組織、器官又は動物個体を(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグで処理することを含む、ビタミンD受容体を活性化させる方法。
(9)(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグの医薬的に有効な量を被験者に投与することを含む、ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療する方法。
(10)ビタミンD受容体の活性化に使用するための(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグ。
(9)ビタミンD受容体が関与する疾患の予防及び/又は治療に使用するための(1)記載の化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグ。
VDR作動薬の開発において、強力なアゴニストの検索は重要ではない。このような従来の開発志向を転換し、意図的にVDR活性化表面(AF2表面)構造を変化させる化合物を設計した。その結果、これらの化合物は、コアクチベーターの結合にある程度の障害をもち、天然ホルモンのようなフルアゴニストの活性を示さないと予測された。このようにして設計した今回の化合物は、転写活性化アッセイの結果から、予測どおり、パーシャルアゴニスト活性を示すことが明らかにされた。
そのため、これらの化合物は、標的細胞内の転写共役因子の濃度に依存して、転写活性が変化することが予測される。すなわち、これらは組織選択的VDRモジュレーターとしてのポテンシャルをもっていると言える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、VDRパーシャルアゴニスト活性を示すので、組織選択的VDRモジュレーターとして機能しうる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2011‐45022の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ADTK1〜4のヒトVDRに対する結合性を示す。ヒトVDRと[3H]-1,25(OH)2D3を用いる競合的結合アッセイでは、ADTK2は天然ホルモンである1,25(OH)2D3とほぼ同様(67%)の結合性を示した。その他も1/50程度のかなり強い結合活性を示した。ADTK1: (25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26,27-trinorvitamin D3ADTK2: (25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26, 27-trinorvitamin D3ADTK3: (25R)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19, 27-dinorvitamin D3ADTK4: (25S)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3
図2図2は、ADTK1〜4のVDR転写誘導活性を示す。VDR転写誘導活性は、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞を用い、マウスのosteopontinビタミンD応答領域(VDRE)(SPP)を上流に持つluciferase(Luc)レポーターを用いるLucアッセイ法で評価した。VDR結合活性が最も高かったADTK2は試験に用いた最低濃度である10-8Mで既に最高の活性を示したが、efficacyは天然ホルモンの66%であり、高濃度の投与でもそれ以上活性は上がらなかった。この結果はADTK2がパーシャルアゴニストであることを示している。その他の化合物(ADTK1,3,4)は10-7 M程度の濃度で最高の活性を示し、efficacyはADTK1、40%;ADTK3、72%;ADRK4,54%であった。そして、これらの化合物は10倍濃度で、すでに1,25(OH)2D3の活性を阻害し、1000倍濃度では、自らの最高活性値に収斂した。すなわち、これらはパーシャルアゴニストおよびアンタゴニスト活性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記の式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグを提供する。
【化2】
(式中、m及びnはそれぞれ独立に1又は0であり、Rは水素原子又はアルキル基であり、
Yはエタン-1,1-ジイル基又はエチン-1,2-ジイル基であり、
1は水素原子であり、Z2はヒドロキシアルコキシ基であるか、あるいは、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する)
【0012】
Rで示されるアルキル基としては、炭素数1〜6個のアルキル基が適当であり、炭素数1〜3個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2個のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルなどを例示することができる。
2で示されるヒドロキシアルコキシ基のアルコキシ基としては、炭素数1〜6個のアルコキシ基が適当であり、炭素数1〜3個のアルコキシ基が好ましく、炭素数3個のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、sec−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、イソヘキソキシなどを例示することができる。
式(I)で表される化合物には立体異性体が存在しうるが、この異性体が単独の場合も混合物の場合も本発明に包含される。
式(I)で表される化合物として、以下のものを例示することができる。
・(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26,27-trinorvitamin D3(以下、「ADTK1」と記すこともある。)
・(25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26, 27-trinorvitamin D3(以下、「ADTK2」と記すこともある。)
・(25R)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19, 27-dinorvitamin D3(以下、「ADTK3」と記すこともある。)
・(25S)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3(以下、「ADTK4」と記すこともある。)
・(25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3、(以下、「ADYW1」と記すこともある。)
・(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3(以下、「ADYW2」と記すこともある。)
・(25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3 (以下、「ADKM1」と記すこともある。)
・ (25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3 (以下、「ADKM2」と記すこともある。)








































【化3】
【0013】
式(I)のRが水素原子であり、Yがエタン-1,1-ジイル基であり、mが1であり、nが0又は1であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物は、後述の実施例1に記載の合成法又はそれに準じる方法で製造することができる。
式(I)のRが水素原子(Rがアルキル基の場合も同様)であり、Yがエタン-1,1-ジイル基であり、mが0であり、nが0又は1であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物については、下記のスキーム2に示す如く、22−トシレート体1をアルデヒド体7に酸化後、Seyferth-Gilvert増炭反応に付し、アセチレン体8を合成、その後はADTK化合物と同様にアダマンチルアルデヒド(n=0or1)と反応し、プロパルギルアルコール体(9および10)を得、保護基を除去し、目的のアダマンチルビタミンD誘導体を合成することができる。R=アルキルの場合、9,10の化合物を酸化し、ケトン体とし、これをアルキル化して合成する(ADKM1と2の合成の様に(後述の実施例5参照のこと))。










【化4】
式(I)のRがアルキル基であり、Yがエタン-1,1-ジイル基であり、mが1であり、nが0又は1であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物については、スキーム3に示す如く後述の実施例1に記載のスキームの化合物3または4の25位のアルコールを酸化し、ケトン体(11)とした後、アルキルメタル試薬(例えばMeMgBr、EtMgBr、MeLi、BuLi)と反応させ、25アルキル体(12)とし、保護基を除去し目的の化合物を得ることができる(後述の実施例5参照のこと)。他に、3または4の25水酸基のカルバモイル化体(13:Cb: i-Pr2NCO)を強塩基で処理後、ボロン酸誘導体やアルキルボランと反応させアルキル基を導入(14)し、脱保護し、目的の化合物を得る方法もある。



















【化5】
式(I)のRが水素原子であり、Yがエチン-1,2-ジイル基であり、mが0であり、nが0であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物は、後述の実施例4に記載の合成法又はそれに準じる方法で製造することができる。
式(I)のRが水素原子であり、Yがエチン-1,2-ジイル基であり、mが0であり、nが1であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物は、下記のスキーム又はそれに準じる方法で合成することができる。
【化6】
式(I)のRがアルキル基であり、Yがエチン-1,2-ジイル基であり、mが0であり、nが0又は1であり、Z1とZ2が共同してメチレン基を形成する化合物は、下記のスキーム又はそれに準じる方法で合成することができる。









【化7】
式(I)のZ1が水素原子であり、Z2がヒドロキシアルコキシ基である化合物は、下記のスキーム又はそれに準じる方法で合成することができる。
【化8】
式(I)の2位のhydroxypropoxyl基(すなわち、式(I)のZ1が水素原子であり、Z2がヒドロキシプロポキシル基である)は骨粗しょう症薬として良い効果があることが知られている(1)ED-71, a new active vitamin D3, increases bone mineral density regardless of serum 25(OH)D levels in osteoporotic subjects. Matsumoto T, Kubodera N, ED-71 Study Group, Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology 103 (2007) 584-586; 2) A New Active Vitamin D, ED-71, Increases Bone Mass in Osteoporotic Patients under Vitamin D Supplementation: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial. Matsumoto T, et al., The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 90 (2005) 5031-5036.; 3) Recent results on A-ring modification of 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3: design and synthesis of VDR-agonists and antagonists with high biological activity. Saito N, Honzawa S, Kittaka A. Curr Top Med Chem. 2006;6(12):1273-88)。

式(I)で表される化合物は、VDRパーシャルアゴニスト/アンタゴニストであり、組織選択的VDRモジュレーターとして機能する可能性が強く示された。
【0014】
式(I)で表される化合物は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの溶媒と溶媒和物を生成してもよい。また、溶媒和物は、単独のものであっても、複数種の混合物であってもよい。
式(I)で表される化合物は、プロドラッグにしてもよい。プロドラッグは、生体に投与された後、酵素の作用や代謝的加水分解などにより、医薬的に活性な化合物になる。プロドラッグは、当業者に知られている酸誘導体であればよく、例えば、式(I)で表される化合物の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、式(I)で表される化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物などを例示することができる。式(I)で表される化合物のプロドラッグは、以下のようにして製造することができる。
(1)水酸基のアシル化体の合成
1および3位の水酸基の保護体(3または4)を各種カルボン酸無水物やハロゲン化物と弱塩基(ピリジン、トリエチルアミンなど)存在下に反応させた後、1,3位を脱保護し、25位の水酸基のアシル化体を得ることができる。
最終ビタミンD誘導体を同様にアシル化すると1,3,25−トリアシル化体を得ることができ、これをより緩和な条件化でアシル化すると、1,3-ジアシル化体を得ることができる。
(2)水酸基のアルキルエーテルの合成
1および3位の水酸基の保護体(3または4)を強塩基(n-BuLi、NaHなど)で処理後ハロゲン化アルキルと反応し、25−水酸基のアルキルエーテル体を合成し、1および3位を脱保護し、目的物を得ることができる。
最終ビタミンD誘導体を同様にアルキル化すると1,3,25位のトリアルキルエーテル体を得ることができ、これをより緩和な条件化でアルキル化すると、1,3-ジアルキルエーテル化体を得ることができる。
【0015】
また、本発明は、式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグを含む組成物を提供する。
式(I)で表される化合物、その溶媒和物及びそのプロドラッグは、VDRを活性化させるために利用でき、特に、組織選択的VDRモジュレーターとして利用できる。この薬剤は、医薬としても、また、実験用試薬としても用いることができる。
医薬として利用する場合には、ビタミンD受容体が関与する疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。具体的には、骨粗鬆症、悪性新生物(例えば、骨髄性白血病、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、尋常性乾癬、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性ループスエリテマトーシスなど)、感染症(例えば、結核など)、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症など)、糖脂質代謝疾患(例えば、糖尿病など)、心血管疾患(例えば、高血圧症など)などの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0016】
医薬として用いる場合には、式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグを単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ、エアロゾル、坐剤、注射剤等に製剤化するとよい。賦形剤または担体は、当分野で常套的に使用され、医薬的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜変更される。例えば、液状担体としては水、植物油などが用いられる。固体担体としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、結晶セルロースなどのセルロース誘導体などが使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤等を添加してもよい。その他、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤等を添加してもよい。また、凍結乾燥製剤として用いたりすることもできる。
【0017】
式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグは、経口、経鼻、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内などの種々の経路によって投与できる。
式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%である。例えば、液剤の場合には、式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、1〜100重量%が好ましい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の場合は、式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、通常約10〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%であり、残部は担体である。製剤は、単位投与製剤に製剤化するとよい。
【0018】
式(I)で表される化合物、その溶媒和物又はそのプロドラッグの投与量は、期待する予防及び/又は治療効果が確認できる量であればよく、剤型、投与経路、患者の年齢、体重、疾患の種類や重篤度などにより異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、有効成分の量に換算して、5〜50 μg/kg体重程度とし、1日に1回から数回投与することができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに何ら影響されることはない。
【実施例】
【0019】
〔実施例1〕ADTK1−4の合成

























【化9】
(1)1α-Hydroxy-2-methylene-24-trimethylsilyl-23,23,24,24-tetradehydro-19,25,26,27-tetranorvitamin D3 1,3-bis-(tert-butyldimethylsilyl) ether (2a)の合成
トリメチルシリルアセチレン(76.0 μL, 0.55 mmol, 6 eq)の無水ジオキサン(850 μL)溶液を0℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6 M in hexanes, 211 μL, 0.55 mmol, 6 eq)を加え、0℃で30分間撹拌した後、さらに室温で90分間撹拌した。次いで、この溶液に、トシル体1 (67.2 mg, 0.092 mmol)の無水ジオキサン(2.8 mL)溶液をゆっくりと加え、反応液を封管中で120 ℃、20時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 4.0 g)にて精製し、0.5% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、2a (26.5 mg, 61.9%)を得た。
2a: 1H NMR (CDCl3, δ) 0.02, 0.05, 0.055, 0.06 (each 3H, s), 0.155 (9H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.09 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.03-2.08 (1H, m), 2.18 (1H, dd, J = 14, 8 Hz), 2.29-2.34 (2H, m), 2.44-2.53 (2H, m), 2.82 (1H, dd, J = 12, 3.2 Hz), 4.41-4.45 (2H, m), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.84 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 654 (M+, 2), 522 (30), 450 (10), 366 (10), 234 (10), 73 (100).
(2)1α-Hydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,25,26,27-tetranorvitamin D3 1,3-bis-(tert- butyldimethylsilyl) ether (2b)の合成
TMSアセチレン体2a (27.0 mg, 0.041 mmol)のTHF/メタノール(1:0.7, 850 μL)溶液に、炭酸カリウム(28.5 mg, 0.21 mmol, 5 eq)を加え、室温で24時間撹拌した。0℃下で、反応混合物に飽和塩化アンモニウム溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 6.8 g)にて精製し、1% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、2b (22.8 mg, 95%)を得た。
2b: 1H NMR (CDCl3, δ) 0.02, 0.05, 0.06, 0.07 (each 3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.09 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.95 (1H, t, J = 2.4 Hz), 2.01-2.08 (1H, m), 2.18 (1H, dd, J = 14, 8 Hz),2.27 (1H, dt, J = 17, 2.8 Hz), 2.32 (1H, dd, J = 13.4, 3.2 Hz), 2.44-2.53 (2H, m), 2.82 (1H, dd, J = 12, 3.2 Hz), 4.41-4.45 (2H, m), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.84 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 582 (M+, 2), 450 (65), 366 (18), 351 (10), 234 (18), 73 (100).
(3)25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26,27-trinorvitamin D3 1,3-bis-(tert-butyldimethylsilyl) ether (3)の合成
アセチレン体2b (6.1 mg, 0.010 mmol)のTHF(200 μL)溶液に、アルゴン中0℃撹拌下、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(19.2 μL, 1.6 M, 0.050 mmol, 5 eq)を加え、10分間撹拌後、1-formyladamantane(4.92 mg, 0.030 mmol, 3 eq)のTHF(70 μL)溶液をゆっくりと加え、0℃下で1時間撹拌した。0℃下、反応液に飽和塩化アンモニウムを加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1.2 g)にて精製し、1% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、アルコール体3(4.7 mg, 63.0%)を25位のエピマーの1:1混合物として得た。この混合物を順相HPLC [Hibar RT LiChrosorb Si 60 (7μm) 10 mm x 250 mm; CH2Cl2/hexane, 2/3, 4.0 mL/min]で分離し、より極性の低い(25R)体(3b)とより極性の高い(25S)体(3a)を得た。
3: 1HNMR (CDCl3, δ) 0.02, 0.05, 0.07, 0.08 (each 3H, s), 0.56 (3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.06-1.12 (3H, m), 2.15-2.20 (1H, m), 2.29-2.38 (3H, m), 2.45-2.54 (2H, m), 3.89 (1H, s), 4.41-4.45 (2H, m), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.84 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 746 (M+, 2), 614 (18), 596 (20), 366 (20), 234 (12), 135 (100), 73 (80).
(4)(25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26,27-trinorvitamin D3 (ADTK1) の合成
TBSエーテル体3a (more polar; 1.07 mg, 0.0014 mmol)のメタノール溶液(500 μL)を0℃に冷却し、 (±)-10-camphorsulfonic acid (1.31 mg, 0.0056 mmol, 4 eq)のメタノール溶液(300 μL) を加え、室温で2時間撹拌した。0℃下、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1.5 g)にて精製し、40% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、ADTK 1 (331 μg, 45.6%)を得た。
ADTK 1: 1H NMR (CDCl3 δ) 0.57 (3H, s), 1.10 (3H, d, J = 8.0 Hz), 2.12-2.19 (1H, m), 2.25-2.36 (2H, m), 2.58 (1H, dd, J = 12, 4 Hz), 2.80-2.87 (2H, m), 3.86 (1H, d, J = 4 Hz), 4.46-4.50 (2H, m), 5.10 (1H, s), 5.11 (1H, s), 5.89 (1H, d, J = 12 Hz), 6.36 (1H, d, J = 12 Hz).
13C NMR (CDCl3 δ) 12.2, 19.4, 22.2, 22.7, 23.4, 26.0, 27.5, 28.3, 28.9, 29.7, 35.7, 37.5, 38.1, 40.3, 45.7, 45.8, 55.3, 56.3, 70.7, 71.8, 71.9, 80.3, 85.1, 107.8, 115.4, 124.2, 130.6, 143.1, 151.9.
MS m/z (%): 518 (M+, 10), 365 (10), 347 (10), 295 (10), 135 (100), 93 (25), 79 (25).
(5)(25R)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,26, 27-trinorvitamin D3 (ADTK2)の合成
TBSエーテル体3b (less polar; 1.35 mg, 0.0018 mmol) を上記の3aの場合と同様にCSA(1.68 mg, 0.0072 mmol, 4 eq)で処理し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1.0 g)にて精製し、50% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、ADTK 2 (416 μg, 44.0%)を得た。
ADTK 2: 1H NMR (CDCl3, δ) 0.57 (3H, s), 1.10 (3H, d, J = 8.0 Hz), 2.12-2.19 (1H, m), 2.25-2.36 (2H, m), 2.58 (1H, dd, J = 12, 4 Hz), 2.80-2.87 (2H, m), 3.86 (1H, d, J = 4 Hz), 4.46-4.50 (2H, m), 5.10 (1H, s), 5.11 (1H, s), 5.89 (1H, d, J = 12 Hz), 6.36 (1H, d, J = 12 Hz).
13C NMR (CDCl3 δ): 12.2, 19.4, 22.2, 22.7, 23.4, 26.0, 27.5, 28.3, 28.9, 29.7, 35.7, 37.5, 38.1, 40.3, 45.7, 45.8, 55.3, 56.3, 70.7, 71.8, 71.9, 80.3, 85.1, 107.8, 115.4, 124.2, 130.6, 143.1, 151.9.
MS m/z (%): 518 (M+, 10), 365 (10), 347 (10), 295 (10), 135 (100), 93 (25), 79 (25).
(6)26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3 1,3-bis-(tert-butyldimethylsilyl) ether (4)の合成
アセチレン体2b (6.4 mg, 0.011 mmol)の無水THF(150 μL)溶液に、アルゴン気流下0℃で、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(21.1 μL, 1.6 M, 0.055 mmol, 5 eq)を加え、10分間放置後、2-(1-アダマンチル)アセトアルデヒド(5.88 mg, 0.033 mmol, 3 eq)の無水THF(60 μL)溶液を加え、0℃で1時間撹拌した。反応液に0℃で飽和塩化アンモニウム溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 1.1 g)にて精製し、1% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、アルコール体4(5.3 mg, 80.4%)を25位のエピマーの約1:1の混合物として得た。
4: 1H NMR (CDCl3 δ) 0.02, 0.05, 0.06, 0.08 (each 3H, s), 0.55 (3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.06 (3H, d, J = 8.0 Hz), 2.13-2.20 (1H, m), 2.25-2.34 (2H, m), 2.44-2.54 (2H, m), 4.41-4.45 (2H, m), 4.50 (1H, t, J = 6.4 Hz), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.84 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 760 (M+, 2), 610 (16), 475 (18), 366 (20), 234 (12), 135 (100), 73 (75).
(7)25-[(S)-α-Methoxy-α-(triflouoromethyl)phenylacetyl] ester of 26-(1-adamantyl)-1α,25-dihydroxy- 2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinor- vitamin D3 1,3-bis-(tert-butyldimethylsilyl) ether (5)の合成
プロパルギルアルコール体4 (5.2 mg, 0.0068 mmol)の無水ジクロロメタン(600 μl)溶液を0℃に冷却し、トリエチルアミン(9.46 μL, 0.068 mmol, 10 eq)と4-ジメチルアミノピリジン(4.63 mg, 0.038 mmol, 5.6 eq)を加え、次いで(S)-(+)-α-メトキシ-α- (トリフルオロメチル)フェニルアセチルクロライド(MTPA-Cl 4.63 mg, 0.038 mmol, 5.6 eq)の無水ジクロロメタン(450)溶液を加え、0℃で5分、室温で30分撹拌した。反応混合物に氷水を加え、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)にて抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 5.0 g)にて精製し、2%酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、MTPAエステル5(5.4 mg, 80.9%)を25位のエピマーの約1:1混合物として得た。この混合物を順相HPLC [Hibar RT LiChrosorb Si 60 (7μm); 10 mm x 250 mm; CH2Cl2/hexane 2/3, 4.0 mL/min]で分離し、より極性の低い(25S)体5bとより極性の高い(25R)-体5aを得た。
5a: 1H NMR (CDCl3 δ) 0.02, 0.05, 0.06, 0.08 (each 3H, s), 0.54 (3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.04 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.55-1.58 (2H, m), 2.02-2.08 (1H, m), 2.18 (1H, dd, J = 14, 8 Hz), 2.20-2.26 (1H, m), 2.44-2.54 (2H, m), 3.53 (3H, s), 4.41-4.45 (2H, m), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.60 (1H, t, J = 6.4 Hz), 5.83 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz), 7.37-7.56 (5H, m).
5b: 1H NMR (CDCl3 δ) 0.02, 0.05, 0.06, 0.08 (each 3H, s), 0.54 (3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.03 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.54-1.56 (2H, m), 2.08 (1H, ddd, J = 17, 8, 2 Hz), 2.18 (1H, dd, J = 14, 8 Hz), 2.23-2.34 (2H, m), 2.44-2.54 (2H, m), 3.53 (3H, s), 4.41-4.45 (2H, m), 4.92 (1H, s), 4.97 (1H, s), 5.60 (1H, t, J = 6.4 Hz), 5.83 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.21 (1H, d, J = 11.2 Hz), 7.37-7.56 (5H, m).
(8)(25R)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19, 27-dinorvitamin D3 (ADTK3)の合成
エステル体5a (more polar; 1.03 mg, 0.0010 mmol)のメタノール溶液(500 μL)を0℃に冷却し、(±)-(10)-カンファースルホン酸(CSA、1.22 mg, 0.0052 mmol, 5 eq)のメタノール溶液(200 μL) を加え、室温で3時間撹拌した。0℃下、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和塩化食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。残渣のメタノール(600 μL)溶液に炭酸カリウム(130 mg)を加え、室温で24時間撹拌した。0℃下、反応混合物に飽和塩化アンモニウム溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Sephadex LH-20, 1.0 g)にて精製し、クロロホルム/ヘキサン/メタノール(70/30/1)の溶出部より、ADTK 3 (161 μg, 43.0%)を得た。
ADTK 3: 1H NMR (CDCl3 δ) 0.56 (3H, s), 1.07 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.95-2.11 (1H, m), 2.33-2.36 (3H, m), 2.57-2.59 (1H, m), 2.81-2.86 (2H, m), 4.48-4.51 (3H, m), 5.10 (1H, s), 5.11 (1H, s), 5.88 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.36 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 532 (M+, 10), 429 (10), 361 (10), 309 (10), 135 (100), 93 (40), 79 (40).
(9) (25S)-26-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3 (ADTK4)の合成
(S)-MTPA エステル5b (less polar; 1.05 mg, 0.0011 mmol)は上記5aの場合と同様にCSA/MeOH処理でTBS基を除去、引き続きK2CO3/MeOH処理によってMTPA基を除去し、生成物をSephadex LH-20カラムクロマトグラフィー(3.0 g, CHCl3/hexane/MeOH 70/30/1)で精製しADTK 4 (285 μg, 45.4 %)を得た。
ADTK 4: 1H NMR (CDCl3, δ) 0.56 (3H, s), 1.07 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.00-2.10 (1H, m), 2.26-2.36 (3H, m), 2.56-2.59 (1H, m), 2.81-2.87 (2H, m), 4.46-4.52 (3H, m), 5.10 (1H, s), 5.11 (1H, s), 5.88 (1H, d, J = 11.2 Hz), 6.36 (1H, d, J = 11.2 Hz).
MS m/z (%): 532 (M+, 10), 429 (10), 361 (10), 309 (10), 135 (100), 93 (40), 79 (40).
【0020】
〔実施例2〕
文献記載の方法にて(Ishizawa et al., J Lipid Res 49:763,2008)、化合物(ADTK1-4)のヒトVDRに対する結合を評価した。
結果を図1に示す。ヒトVDRと[3H]-1,25(OH)2D3を用いる競合的結合アッセイでは、ADTK2は天然ホルモンである1,25(OH)2D3とほぼ同様(67%)の結合性を示した。その他も1/50程度のかなり強い結合活性を示した。
【0021】
〔実施例3〕
文献記載の方法にて(Ishizawa et al., J Lipid Res 49: 763, 2008; Igarashi et al., Arch Biochem Biophys 460: 240, 2007)、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞を用い、マウスのosteopontinビタミンD応答領域(VDRE)(SPP)を上流に持つluciferase(Luc)レポーターを用いるLucアッセイ法で、化合物(ADTK1-4)のVDR転写誘導活性を評価した。リン酸カルシウム法でヒトVDR発現ベクター(pCMX-VDR)、VDR応答性ルシフェラーゼ(Sppx3-tk-LUC)及びβ-ガラクトシダーゼの発現ベクターをHEK細胞にトランスフェクションし、8時間後に化合物を加えた。16-24時間培養後に細胞を回収し、ルシフェラーゼとβ-ガラクトシダーゼの活性を測定した。ルシフェラーゼ活性値をβ-ガラクトシダーゼ値で補正した。
結果を図2に示す。VDR結合活性が最も高かったADTK2は試験に用いた最低濃度である10-8Mで既に最高の活性を示したが、efficacyは天然ホルモンの66%であり、高濃度の投与でもそれ以上活性は上がらなかった。この結果はADTK2がパーシャルアゴニストであることを示している。その他の化合物(ADTK1,3,4)は10-7 M程度の濃度で最高の活性を示し、efficacyはADTK1、40%;ADTK3、72%;ADRK4,54%であった。そして、これらの化合物は10倍濃度で、すでに1,25(OH)2D3の活性を阻害し、1000倍濃度では、自らの最高活性値に収斂した。すなわち、これらはパーシャルアゴニストおよびアンタゴニスト活性を示した。
実施例2と3の結果を纏めると、ADTK1〜4はいずれもパーシャルアゴニスト活性を示した。転写活性のEC50値はVDR結合能と良く相関し、ADTK2が最も低濃度で最高の活性を示したが、efficacyはVDR結合能とは相関しなかった。例えば、VDR結合活性が最も低いADTK3は最高72%のefficacyを示した。ADTK1〜4は、いずれもVDRパーシャルアゴニスト/アンタゴニストであり、組織選択的VDRモジュレーターとして機能する可能性が強く示された。
〔実施例4〕ADYW1-2の合成
(1)化合物 11aの合成
化合物 11aを下記のスキームで合成した。
【化10】
実験操作
(a) LDA, N-(5-chloro-2-pyridyl)-triflimide. (b) LDA, THF, rt. (c) n-HexLi, THF, I2,-78℃. (d) TMS-acetylene, CuI, pyrrolidine.
CD環アルコール保護体11a
11a: 1H NMR (CDCl3) δ: 0.006 (3 H, s), 0.013 (3 H, s), 0.179 (9 H, s), 0.883 (9 H, s), 1.036 (3 H, s), 4.02 (1 H, m)
13C NMR (CDCl3) d: -4.905, -4.510, -0.228, 14.437, 16.145, 17.801, 18.289, 23.026, 23.606, 26.077, 28.312, 29.757, 30.092, 31.978, 34.676, 38.480, 43.749, 44.559, 51.931, 68.185, 69.055, 81.377, 83.201, 89.149.
次に、(25R)- and (25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene- 20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3 (ADYW1 and -2)を下記のスキームで合成した。
【化11】
(2)CD環アルコール体11bの合成
CD環原料(11a)(20.4 mg, 0.0514 mmol)をテトラヒドロフラン(50 μL)に溶かした後、メタノール(50 μL)を加え、0℃に冷却した。カンファースルホン酸(60.6 mg, 0.257 mmol, 5 eq.)のメタノール(100 μL)溶液を加え、30分攪拌した。室温に戻し、メタノール(150 μL)とテトラヒドロフラン(50 μL)を加えて、フラスコに析出していた固体物を完全に溶かし、48時間撹拌した。溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 1 g)で精製し、5 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、アルコール体11b(11.2 mg, 79.3%)を得た。
11b: 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.18 (9 H, s, TMS), 1.07 (3 H, s, -CH3), 1.25 (2 H, m), 1.49 (3 H, m), 1.78 (5 H, m), 2.04 (1 H, m), 2.24 (1 H, m), 4.28 (1 H, m).
(3)CD環フラグメントケトン体12 の合成
アルコール体11b(54.9 mg, 0.200 mmol)の無水ジクロロメタン(1.5 mL)溶液に、デス・マーチン試薬(170.9 mg, 0.400 mmol, 2 eq.)をそのまま加え、室温で2時間攪拌した。亜硫酸ナトリウム水溶液と炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、5 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、CD環フラグメントであるケトン体12(49.1 mg, 90.1%)を得た。
12:1H-NMR (CDCl3) δ: 0.19 (9 H, s, TMS), 0.77 (3 H, s, -CH3), 1.57 (2 H, m), 1.77 (1 H, m), 1.98 (5 H, m), 2.29 (3 H, m), 2.58 (1 H, t, J =9.6 Hz ).
(4)カップリング体14aの合成
A環フラグメントであるホスフィン体13(42.0 mg, 0.0635 mmol, 1.3 eq.)の無水テトラヒドロフラン(390 μL)溶液を、-78℃に冷却し、10分後にn-ブチルリチウム(39 μL, 0.0635 mmol, 1.3 eq.)を滴下し、同温で10分攪拌後、CD環フラグメントであるケトン体12(13.3 mg, 0.0488 mmol)の無水テトラヒドロフラン(170 μL)溶液を滴下し、同温で1.5 時間撹拌した。1 時間かけて室温まで昇温した後、室温でさらに1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、1 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、カップリング体14a(17.4 mg, 50.0%)を、A環2位の異性体4 :3 の混合物として得た。
14a: 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.05 (12 H, m, SiMe×4), 0.12 (9 H, s, TMS), 0.18 (9 H, s, TMS), 0.67, 0.68 (4:3, 3 H, s, -CH3), 0.87 (18 H, m, t-Bu×2), 1.66 (7 H, m), 2.03 (5 H, m), 2.41 (4 H, m), 2.82 (1 H, m), 3.57 (1 H, m), 3.87 (2 H, m), 5.79, 5.81 (4:3, 1 H, d, J =11.6 Hz), 6.08, 6.11 (3:4, 1 H, d, J =11.6 Hz).
(5)2位アルコール体14b
カップリング体14a(43.5 mg, 0.0610 mmol)をテトラヒドロフラン(366 μL)で溶かして0℃に冷却し、酢酸/メタノール/水(8 : 1 : 1, 366 μL)の混合溶液を加え、1 時間撹拌した。室温に戻し、48 時間撹拌後、5 %炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 1 g)で精製し、0.5 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、アルコール体14b(32.9 mg, 84.1%)を、A環2位の異性体5:4の混合物として得た。
14b: 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.08 (12 H, m, SiMe×4), 0.18 (9 H, s, TMS), 0.67, 0.68 (5:4, 3 H, s, -CH3), 0.87 (18 H, m, t-Bu×2), 1.81 (10 H, m), 2.39 (5 H, m), 2.82 (1 H, m), 3.56 (1 H, m), 3.95 (2 H, m), 5.80 (1 H, d, J =11.8 Hz), 6.13, 6.16 (4:5, 1 H, d, J =11.8 Hz).
(6)2位ケトン体15aの合成
-78℃に冷却した二塩化オキサリル(6 μL, 0.0644 mmol, 2.4 eq.)の無水ジクロロメタン(104 μL)溶液にジメチルスルホキシド(9.2 μL, 0.129 mmol, 4.8 eq. )の無水ジクロロメタン(39 μL)溶液を滴下し、10 分撹拌後、アルコール体14b(17.2 mg, 0.0268 mmol)の無水ジクロロメタン(140 μL)溶液を滴下した。 同温で15 分撹拌後、トリエチルアミン(39 μL, 0.268 mmol, 10 eq. )を加え、同温でさらに30 分撹拌した。1 時間かけて0℃まで昇温したのち、その温度でさらに1 時間撹拌した。氷水を加え、ジクロロメタンを用いて抽出し、有機層を5 %塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、0.5 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、2位ケトン体15a(11.5 mg, 67.1%)を得た。
15a: 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.07 (12 H, m, SiMe×4), 0.18 (9 H, s, TMS), 0.68 (3 H, m, -CH3), 0.87, 0.89 (each 9 H, s, t-Bu), 1.70 (7 H, m), 2.03 (5 H, m), 2.44 (4 H, m), 2.70 (2 H, m), 2.85 (1 H, m), 4.34 (1 H, dd, J =6.0, 4.0 Hz), 4.55 (1 H, dd, J =8.8, 5.6 Hz), 5.81 (1 H, d, J =11.2 Hz), 6.33 (1 H, d, J =11.2 Hz).
(7)2位メチレン体15bの合成
メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(25.3 mg, 0.0701 mmol, 4 eq. )の無水テトラヒドロフラン(200 μL)溶液を0℃ に冷却し、n-ブチルリチウム(42 μL, 0.0701 mmol, 4 eq.)を加え、15 分撹拌後、ケトン体15a(11.2 mg, 0.0175 mmol)の無水テトラヒドロフラン(130 μL)溶液を滴下し、同温で1 時間攪拌した。室温に昇温し、さらに1時間撹拌し、反応混合液に氷水を加え、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、20 %ジクロロメタン/ヘキサン溶出部より、2位メチレン体15b(7.1 mg, 63.6%)を得た。
15b: 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.05 (12 H, m, SiMe×4), 0.18 (9 H, s, TMS), 0.68 (3 H, s, -CH3), 0.86, 0.90 (each 9 H, s, t-Bu), 1.71 (6 H, m), 2.05 (5 H, m), 2.30 (1 H, m), 2.47 (3 H, m), 2.85 (1 H, m), 4.43 (1 H, m), 4.92, 4.98 (each 1 H, s), 5.84 (1 H, d, J =11.2 Hz), 6.20 (1 H, d, J =11.2 Hz).
(8)アセチレン体16の合成
2位メチレン体15b(19.2 mg, 0.0301 mmol)のテトラヒドロフラン/メタノール(1 : 0.7, 630 μL)溶液に、炭酸カリウム(21.0 mg, 0.151 mmol, 5 eq. )を加え、室温で24 時間撹拌した。0℃下で、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、15 %ジクロロメタン/ヘキサン溶出部より、アセチレン体16(11.7 mg, 68.7%)を得た。
16 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.02, 0.05, 0.06, 0.08 (each 3 H, s, SiMe×4), 0.68 (3 H, s, -CH3), 0.86, 0.90 (each 9 H, s, t-Bu), 2.01 (1 H, m), 2.09 (1 H, m), 2.18 (1 H, dd, J= 12.4, 8.4 Hz), 2.30 (1 H, m), 2.47 (3 H, m), 2.85 (1 H, m), 4.43 (1 H, m), 4.92, 4.98 (each 1 H, m), 5.84 (1 H, d, J =11.2 Hz), 6.20 (1 H, d, J =11.2 Hz).
(9)アダマンタン化合物17の合成
アセチレン体16 (11.7 mg, .02071 mmol)の無水テトラヒドロフラン(414 μL)溶液を0℃に冷却し、n-ブチルリチウム(65 μL, 0.104 mmol, 5 eq.)を加え、同温で10 分撹拌後、1-ホルミルアダマンタン(15.4 mg, 0.0938 mmol, 4.5 eq.)の無水テトラヒドロフラン(220 μL)溶液を滴下し、同温で1 時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 2 g)で精製し、3 %酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、アダマンタン化合物17 (10.8 mg, 71.5 %)を得た。
17 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.02, 0.05, 0.06, 0.08 (each 3 H, s, SiMe×4), 0.68 (3 H, s, -CH3), 0.86, 0.90 (each 9 H, s, t-Bu), 2.09 (1 H, m), 2.18 (1 H, dd, J= 12.4, 8.4 Hz), 2.30 (1 H, m), 2.47 (3 H, m), 2.85 (1 H, m), 3.00 (1 H, m), 3.92 (1 H, d), 4.43 (1 H, m), 4.92, 4.98 (each 1 H, m), 5.84 (1 H, d, J =11.2 Hz), 6.20 (1 H, d, J =11.2 Hz).
(10)(25R)- and (25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene- 20,20,22,22,23,23,24,24-octadehydro-19,21,26,27-tetranorvitamin D3 (ADYW1 and -2) の合成
アダマンタン化合物17 (2.00 mg, 0.00274 mmol)のメタノール(1 mL)溶液に、0℃下で、カンファースルホン酸(20.7 mg, 0.0892 mmol, 30 eq.)のメタノール(200 μL)溶液を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SephadexTM LH-20, 1 g)で精製し、クロロホルム/ヘキサン/メタノール(70:30:1)溶出部より、標的化合物ADYW1および2の混合物を定量的に得た。
ADYW 1, 2 1H-NMR (CDCl3) δ: 0.68 (3 H, s, -CH3), 2.09 (1 H, m), 2.45 (1 H, m), 2.58 (1 H, m), 2.84 (2 H, dd, J=12.8, 4.4 Hz), 3.92 (1 H, s), 5.01, 5.12 (each 1 H, m), 5.89 (1 H, d, J =11.4 Hz), 6.34(1 H, d, J =11.4 Hz).
〔実施例5〕ADKM1-2の合成
【化12】
(1)ケトン体18の合成
TBSエーテル体3 (11.6mg, 0.016mmol)のジクロロメタン溶液(300 μl)にデス・マーチン試薬(15.5mg, 0.037mmol, 2eq)を加え、室温で2時間攪拌した。0℃下で、反応混合物に1M亜硫酸ナトリウム水溶液と飽和炭酸水素ナトリウムを加え、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、5.5g)にて精製し、3% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、ケトン体18(5.4mg, 46.7%)を得た。
18: 1H NMR (CDCl3) δ 0.03, 0.05, 0.07, 0.08 (each 3H, s), 0.57, (3H, s), 0.87, 0.90 (each 9H, s), 1.14 (3H, d, J=6.8 Hz), 4.92(1H, s) 4.98 (1H, s) 5.85 (1H, d, J=11.0 Hz) 6.21 (1H, d, J=11.0 Hz)
(2)25-メチル体19の合成
ケトン体18 (5.4mg, 7.3mmol)の無水THF溶液(60 μl)にアルゴン気流下0℃で、メチルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(29.0μl, 29μmol, 4eq)を加え、30分攪拌した後、室温で2時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウムを加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、6.3g)にて精製し、3% 酢酸エチル/ヘキサン溶出部より、メチル化体19(2.8mg, 50.8%)を25位のエピマーの混合物として得た。
19: 1H NMR (CDCl3) δ 0.03, 0.05, 0.07, 0.08 (each 3H, s), 0.56, (3H, s), 0.86, 0.90 (each 9H, s), 1.10 (3H, d, J=6.4 Hz), 1.39 (3H, s), 4.92(1H, s) 4.97 (1H, s) 5.84 (1H, d, J=11.0 Hz), 6.21 (1H, d, J=11.0 Hz)
(3)(25R)- and (25S)-25-(1-Adamantyl)-1α,25-dihydroxy-2-methylene-23,23,24,24-tetradehydro-19,27-dinorvitamin D3 (ADKM1 and -2)の合成
メチル化体(2.8mg, 3.7mmol)のメタノール溶液(2.8ml)に、0℃下でカンファースルホン酸(5.1mg, 22.0μmol, 6eq)のメタノール溶液(400μl)を加え、室温で8時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SephadexTM LH-20、1.5g)にて精製し、クロロホルム/ヘキサン/メタノール(70:30:1)溶出部より、ADKM1および-2(1.0mg, 50.1%)を25位のエピマーの混合物として得た。
ADKM: 1H NMR (CDCl3) δ 0.57, (3H, s), 1.10 (3H, d, J=6.4 Hz), 1.39 (3H, s), 5.10 (1H, s) 5.11 (1H, s) 5.90 (1H, d, J=11.4 Hz) 6.36 (1H, d, J=11.4 Hz).
UV (95%EtOH) λmax 245, 253 and 263 nm
【0022】
〔製剤例1〕
ADK2 30g、結晶セルロース 140g、乳糖 100g、繊維素グリコール酸カルシウム 15g、ヒドロキシプロピルセルロース 10gおよび精製水30mlを練合機に添加し、通常の方法により5分間練合する。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥する。乾燥後、整粒し、ステアリン酸マグネシウムを5g添加する。1分混合した後、打錠して、1錠当たり約100mg、直径6.5mmの錠剤を得る。この錠剤は1錠中、ADK2を10mg含有する。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ビタミンD受容体が関与する疾患、具体的には、骨粗鬆症、悪性新生物(例えば、骨髄性白血病、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、尋常性乾癬、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性ループスエリテマトーシスなど)、感染症(例えば、結核など)、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症など)、糖脂質代謝疾患、心血管疾患などの疾患の予防及び/又は治療に利用することができる。
図1
図2