(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
立体造形用の素材を射出する複数の射出ノズル(1a,1b…)が取り付けられ,所望の立体物を造形するように移動制御される3Dプリンタ用の射出ヘッド(100)であって,
前記複数の射出ノズル(1a,1b…)を取り付けるための複数の取付部(11a,11b…)が角度的に間隔をおいて設けられた回転台(10)と,
前記回転台(10)が回転可能に固定された固定台(20)と,
前記回転台(10)を所定角度回転させることにより,射出位置に位置する前記射出ノズル(1a,1b…)を切り換えるサーボ機構(30)と,を備え,
前記回転台(10)は,
前記射出位置に位置する取付部(11a,11b…)に対して,他の取付部(11a,11b…)が,上方に向かって所定角度傾斜する形状をなし,
前記複数の取付部(11a,11b…)と連結された中心部(12)を有し,
前記中心部(12)において,前記固定台(20)に回転可能に固定され,
前記中心部(12)が傾斜していることにより,前記回転台(10)の回転軸が垂直方向に対して所定角度傾いている
3Dプリンタ用の射出ヘッド。
【背景技術】
【0002】
従来から,コンピュータグラフィックスにより生成された3Dデータに基づいて,実際の立体物を造形する3Dプリンタ(3次元造形装置)が知られている。例えば,3Dプリンタは,立体物の基礎データとなる3Dデータを,コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し,設定された姿勢に基づいて,高さ方向に平行な複数の面で切断した断面毎の2次元データを生成する。そして,3Dプリンタは,この各層に関する2次元データに基づいて,X軸,Y軸,及びZ軸の直交座標系で特定される位置に,立体造形用の素材(例えばプラスチック素材)を順次積層することよって立体造形を行う。
【0003】
また,例えば,製品開発段階で試作品等を作成する際に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping)の分野において,3次元の立体物を造形するための手法として,積層造形法が知られている。積層造形法では,立体物の3次元CADデータをスライスし,薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し,プラスチック素材などの素材を積層して試作品を作成する。このようなラピッド・プロトタイピングにおいて,3Dプリンタは有効に利用される。熱可塑性の樹脂素材を用いた積層造形法としては,液状の樹脂に紫外線などを照射して硬化させていくインクジェット方式や,熱で融解した液状の樹脂を冷却しながら積み重ねていくFDM方式(Fused Deposition Modeling: 熱溶解積層方式)が知られている。
【0004】
また,従来から,立体物の色や物性を部位に応じて異ならせるために,異なる素材を射出する複数の射出ノズルが備えられた3Dプリンタが知られている(特許文献1)。このように,色や物性の異なる複数種類の素材を用いて立体物の造型を行う場合には,異なる素材が射出ノズル内で混合することを防止するために,各素材を異なる射出ノズルから射出する必要がある。例えば,特許文献1に記載の3Dプリンタでは,アクチュエータによって移動制御される射出ヘッドに,複数の射出ノズルが平行に並べて取り付けられている。そして,この従来の3Dプリンタは,立体像の基礎となる3Dデータに従って,素材を射出する射出ノズルを選択し,この選択した射出ノズルを適切な位置に移動させる微調整を行った後に,射出ノズルから素材を射出するように制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記した従来の3Dプリンタのように,アクチュエータによって移動制御される射出ヘッドに,複数の射出ノズルが平行に取り付けられていると,各射出ノズルの吐出口は,それぞれ平面方向(X−Y軸の2次元方向)において異なる位置に位置することになる。このため,従来の3Dプリンタは,射出する素材を切り換える際に,射出ノズルを選択した後に,この選択した射出ノズルを適切な位置に位置させるために,射出ヘッド全体を移動制御させる必要があった。例えば,切換ポイントαにおいて,素材Aから素材Bに射出する素材を切り換える必要がある場合には,第1の射出ノズルによって切換ポイントαまで素材Aを射出し,その後,第2の射出ノズルによる素材Bの射出を開始する。しかし,切換時点において,第1の射出ノズルの吐出口は切換ポイントαに位置しているが,第2の射出ノズルの吐出口は切換ポイントαには位置していない。このため,第2の射出ノズルの吐出口が切換ポイントαに位置するように,複数の射出ノズルが取り付けられた射出ヘッド全体を移動制御する必要がある。従って,従来の3Dプリンタは,素材の切換時に,射出ヘッド全体をアクチュエータによって移動させなければならず,時間の遅延を招くものであった。
【0007】
また,射出ノズルを切り換える際に射出ヘッド全体を移動制御させることとすると,その射出ヘッドの移動距離を予めプログラミングしておく必要があり,移動制御が複雑化するという問題がある。例えば,射出ノズルが3本以上備わっている場合に,第1の射出ノズルから第2の射出ノズルに切り換える際の移動距離と,第1の射出ノズルから第3の射出ノズルに切り換える際の移動距離とでは,それぞれ異なる移動制御(プログラム)が必要になる場合がある。このように,射出ノズルの切換時の処理をソフトウェアに依存させると,移動制御が複雑になるとともに,仮にプログラムが誤っている場合には3Dプリンタ全体が誤作動を起こすという問題があった。
【0008】
そこで,本発明は,射出する素材の切り換え動作を,複数の射出ノズルが取り付けられた射出ヘッドを移動させることなく,瞬時に行うことができるようにすることを第1の目的とする。
【0009】
また,従来の3Dプリンタのように,射出ヘッドに複数の射出ノズルが平行に取り付けられていると,各射出ノズルの吐出口は,ほぼ同じ高さに位置することとなる。そうすると,射出ヘッドを移動させたときに,射出されて積み重ねられた素材と,射出を行っていない射出ノズルの先端部分が衝突を起こすおそれがあった。また,このような衝突が生じると,既に積み重ねられている素材に,不必要な素材が混合するおそれがあり,正確に3Dデータに従った立体物を造型することができないという問題があった。
【0010】
そこで,本発明は,射出されて積み重ねられた素材に対して,射出ノズルが衝突したり,不用意に異素材が混合するという事態を回避することを第2の目的とする。
【0011】
本発明は,上述した第1の目的と第2の目的の少なくともいずれか一方を達成するための手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は,従来発明の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,複数の射出ノズルを回転台に取り付け,この回転台をサーボ機構によって回転させるようにすることで,3Dプリンタ用の射出ヘッドに,射出ノズルの位置切換機能を付与することができるという知見を得た。このように,回転台を回転させて射出ノズルの位置の切り換えを行うことにより,射出ヘッド全体の位置を移動制御することなく,射出する素材の瞬時に切り換えることができる。また,射出ノズルの高さが変わるように,回転台を回転させることにより,積み重ねられた素材に,射出ノズルの先端が衝突したり,不用意に異素材が混合する事態を回避できる。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0013】
本発明は,3Dプリンタ用の射出ヘッド100に関する。
本発明の射出ヘッド100は,立体造形用の素材を射出する複数の射出ノズル1a,1b…が取り付けられる。また,射出ヘッド100は,所望の立体物を造形するように,3Dプリンタが備えるアクチュエータなどによって移動制御されるものである。
射出ヘッド100は,回転台10と,固定台20と,サーボ機構30と,を備える。
回転台10は,複数の射出ノズル1a,1b…を取り付けるための複数の取付部11a,11b…が角度的に間隔をおいて設けられた部材である。
固定台20は,回転台10が回転可能に固定される部材である。
サーボ機構30は,回転台10を所定角度回転させることにより,射出位置に位置する射出ノズル1a,1b…を切り換える制御を行うための機構である。
【0014】
上記構成のように,本発明の射出ヘッド100は,回転台10をサーボ機構30によって回転させることで,立体造形用の素材を射出する射出ノズル1a,1b…を切り換えることができる。このため,本発明の射出ヘッド100を用いることで,射出する素材を切り換える際に,回転台10を回転させるだけで,適切な射出ノズルを適切な位置に配置することができる。すなわち,本発明では,従来の発明とは異なり,射出ノズルを適切な位置に位置させるために,射出ヘッド全体を移動制御させる必要がなくなる。例えば,切換ポイントαにおいて,素材Aから素材Bに射出する素材を切り換える必要がある場合には,第1の射出ノズル1aによって切換ポイントαまで素材Aを射出し,その後,第2の射出ノズル1bによる素材Bの射出を開始する。ただし,切換時点において,第1の射出ノズル1aの吐出口は切換ポイントαに位置しているが,第2の射出ノズル1bの吐出口は切換ポイントαには位置していない。そこで,本発明では,回転台10を回転させることで,第2の射出ノズル1bを,瞬時に切換ポイントαに位置させる。これにより,射出ヘッド100全体を移動制御する必要がなくなるため,より短時間で射出素材の切り換えを行うことが可能となる。このように,本発明は,回転構造を採用しているため,射出ヘッド100の移動切換時間がなく,ゼロ距離での切換動作が可能となり,さらには移動距離制御のソフトウェア依存性を低減することができる。
【0015】
本発明の射出ヘッド100は,射出位置に位置している状態において,複数の射出ノズル1a,1b…のそれぞれは,同一直線上に沿って素材を射出するものであることが好ましい。
【0016】
上記構成のように,本発明では,素材を射出するものとして選択された射出ノズルは,回転台10の回転により一定の射出位置へと運ばれる。このとき,複数の射出ノズルはそれぞれ異なるタイミングで射出位置に位置することとなるが,射出位置に位置している射出ノズルはすべて,同一直線上に沿って素材を射出する。これにより,第1の射出ノズル1aから第2の射出ノズル1bに切り換えたときに,射出ヘッド100の位置を微調整することなく,そのままの状態で第2の射出ノズル1bによる射出を開始することができる。従って,瞬時に切換動作を行うことができる。
【0017】
本発明の射出ヘッド100において,回転台10は,射出位置に位置する取付部11a,11b…に対して,他の隣接する取付部11a,11b…が,上方に向かって所定角度傾斜する形状をなしていることが好ましい。
【0018】
上記構成のように,回転台10の取付部11a,11bによる射出ノズル1a,1b…の取り付け高さを異ならせる。これにより,射出されて積み重ねられた素材と,射出を行っていない射出ノズルの先端部分が衝突を起こす事態を回避することができる。また,積層した素材と射出ノズルの衝突を防止することで,積層した素材に,不必要な素材が混合する可能性を低減させることができる。その結果,本発明の射出ヘッド100を用いることで,より正確に3Dデータに従った立体物を造型することが可能となる。
【0019】
本発明の射出ヘッド100において,回転台10は,複数の取付部11a,11b…と連結された中心部12を有し,この中心部12において,固定台20に回転可能に固定されている。ここで,中心部12が傾斜していることにより,回転台10の回転軸が垂直方向に対して所定角度傾いていることが好ましい。
【0020】
上記構成のように,回転台10の回転軸を所定角度傾斜させることで,射出位置に位置する射出ノズル1a,1b…を切り換えた場合であっても,切換前の射出ノズルの吐出口の高さと切換後の射出ノズルの吐出口の高さとを一定に維持することができる。これにより,よりスムーズに連続的な素材の射出が可能となる。
【0021】
本発明の射出ヘッド100において,回転台10は,取付部11a,11b…に対応する回転台用磁性物14a,14b…を有し,固定台20は,回転台用磁性物14a,14b…に吸着する固定台用磁性物24を有することが好ましい。また,ある1つの取付部11a,11b…が射出位置に位置しているときに,この取付部11a,11b…に対応する回転台用磁性物14a,14b…が固定台用磁性物24に吸着していることが好ましい。なお,ここにいう「磁性物」としては,永久磁石や,電磁石,鉄などの強磁性体を用いればよい。
【0022】
上記構成のように,ある1つの取付部11a,11b…が射出位置に位置している状態において,回転台10に設けられた回転台用磁性物14a,14b…の少なくとも1つが固定台20に設けられた固定台用磁性物24に吸着していることで,回転台10の回転が抑制されて安定するようになる。例えば,アクチュエータによって射出ヘッド100を移動制御しているときであっても,回転台10が磁力によって固定台20に吸着されているため,機械駆動特有のブレによって回転台10が不用意に回転することを防止できる。これにより,さらに精度の高い立体造形が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明よれば,射出する素材の切り換え動作を,複数の射出ノズルが取り付けられた射出ヘッドを移動させることなく,瞬時に行うことができる。また,本発明によれば,射出されて積み重ねられた素材に対して,射出ノズルが衝突したり,不用意に異素材が混合する事態を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0026】
本発明は,3Dプリンタに備え付けられる射出ヘッド100に関するものである。
図1〜
図5には,本発明の一実施形態に係る射出ヘッド100の構成の例が示されている。
図1は,複数の射出ノズル1a,1b,1cが射出ヘッド100に取り付けられた状態を示している。本実施形態において,射出ヘッド100には,最大,3本の射出ノズル1a,1b,1cを取り付けることができるようになっている。
図1に示されるように,本発明に係る射出ヘッド100は,複数の射出ノズル1a〜1cを束ねて保持するための部材である。また,本発明に係る射出ヘッド100は,複数の射出ノズル1a〜1cの位置の切り換えを行うことができ,その内の1つを素材の射出に適した射出位置に固定することができる。
【0027】
射出ノズル1a〜1cは,3Dプリンタに備え付けられるものとして公知の物を適宜用いることができる。複数の射出ノズル1a〜1cは,それぞれ独立しており,射出ノズルのチューブには,それぞれ異なった立体造形用の素材が供給することができる。このため,各射出ノズル1a〜1cは,その吐出口からそれぞれ異なった素材を射出するものであることが好ましい。なお,本発明は,射出ヘッド100を対象としたものであり,この射出ヘッド100に取り付けられる射出ノズル1a〜1cは,本発明の構成要件とはなっていない。
【0028】
また,射出ノズル1a〜1cに供給する立体造形用の素材としては,一般的な3Dプリンタにて利用される公知の素材を用いることができる。例えば,インクジェット方式の3Dプリンタの場合,射出ノズル1a〜1cには,立体造形用の素材として,紫外線などによって硬化する性質を持つ液状の樹脂を供給すればよい。なお,インクジェット方式の3Dプリンタは,射出ヘッド100の他に,樹脂素材を硬化させる紫外線を放射するための照射装置(図示省略)を備えていてもよい。また,例えば,FDM方式の3Dプリンタの場合,射出ノズル1a〜1cには,立体造形用の素材として,熱融解された液状の樹脂を供給すればよい。この場合,FMD方式の3Dプリンタは,射出ヘッド100の他に,樹脂素材を加熱するための加熱装置(図示省略)や,熱融解した樹脂素材を冷却するための冷却装置(図示省略)を備えていてもよい。
【0029】
本発明に係る射出ヘッド100は,射出ノズル1a〜1cから素材を射出する位置を調整するために,3Dプリンタが備えるアクチュエータ(図示省略)によって,移動制御される。すなわち,本発明の射出ヘッド100は,立体造型の基礎となるCADデータに基づいて,アクチュエータにより,左右方向(X軸方向),奥行方向(Y軸方向),及び上下方向(Z軸方向)に移動制御される。アクチュエータは,適宜公知の構造を採用することができる。例えば,アクチュエータは,射出ヘッド100を,X軸,Y軸,Z軸方向に移動制御するものであってもよい。また,例えば,アクチュエータは,射出ヘッド100をX軸とY軸方向に移動させ,樹脂素材が積層されるステージ(図示省略)をZ軸方向に移動させるものであってもよい。また,例えば,アクチュエータは,射出ヘッド100をX軸とZ軸方向に移動させ,樹脂素材が積層されるステージをY軸方向に移動させるものであってもよい。このように,3Dプリンタ自体の構造は特に限定されるものではなく,本発明の射出ヘッド100は,適宜公知の3Dプリンタに取り付けることが可能である。
【0030】
図1〜
図5に示されるように,本発明の射出ヘッド100は,基本的に,回転台10と,固定台20と,サーボ機構30と,基台40とを備える。本実施形態において,基台40には,3Dプリンタのアクチュエータが連結されている。また,本実施形態において,基台40は,L字型に形成されており,その底壁41に固定台20が取り付けられ,その側壁42にサーボ機構30が取り付けられている。また,固定台20には,回転台10が回転可能に固定されている。そして,この回転台10には,複数の射出ノズル1a〜1cを取り付けることができる。これにより,アクチュエータを介して基台40を移動させることで,この基台40上に搭載されている回転台10,固定台20,及びサーボ機構30,さらには複数の射出ノズル1a〜1cが全体的に移動するようになっている。以下,本発明に係る射出ヘッド100の各部の構成について具体的に説明する。
【0031】
図1に示されるように,回転台10は,複数の射出ノズル1a〜1cを取り付けるための部材である。また,
図4には,射出ノズル1a〜1cを取り付ける前の回転台10の様子が示されている。
図1及び
図4に示されるように,本実施形態において,回転台10は,複数の取付部11a,11b,11cと,中心部12と,複数の補助部13a,13b,13cとによって構成されている。回転台10は,中心部12において,固定台20に対して回転可能に固定される。また,この中心部12から前端側に向かって,所定の角度間隔を空けて,複数の取付部11a〜11cが延出している。また,この中心部12から後端側(取付部11a〜11cの延出方向とは反対側)に向かって,所定の角度間隔を空けて,複数の補助部13a〜13cが延出している。本実施形態において,取付部11a〜11cは,射出ノズル1a〜1cの数に合わせて,3箇所に形成されている。また,補助部13a〜13cは,取付部11a〜11cの数に合わせて,3箇所に設けられている。このように,回転台10は,中心部12を中心として,およそ放射状に,複数の取付部11a〜11c及び複数の補助部13a〜13cが延出した形状となっている。
【0032】
図1に示されるように,複数の取付部11a〜11cには,それぞれ,複数の射出ノズル1a〜1cが取り付けられる。例えば,
図4に示されるように,取付部11a〜11cには,ネジ孔が形成されていてもよい。これにより,射出ノズル1a〜1cに形成されたネジ山を,取付部11a〜11cのネジ孔に嵌め合わせることで,両者を連結することができる。また,取付部11a〜11cは,射出ノズル1a〜1cの射出方向が垂直方向と一致するように,射出ノズル1a〜1cを保持することが好ましい。
【0033】
中心部12には,複数の取付部11a〜11cの一端部分が連結されている。
図4に示されるように,回転台10は,中心部12において,固定台20に対して回転可能に固定される。このため,回転台10の回転軸(R)は,中心部12を通るものとなる。また,中心部12には,複数の補助部13a〜13cの一端部分が連結されている。本実施形態において,複数の取付部11a〜11cと複数の補助部13a〜13cは3箇所ずつ(合計6箇所)に形成されていることから,中心部12は,およそ6角形状の領域となっている。
【0034】
補助部13a〜13cは,回転台10の動作を補助するための部位である。複数の補助部13a〜13bは,それぞれ,複数の取付部11a〜11cに対応して設けられる。具体的には,第1の取付部11aと中心部12を通る直線上に,第1の補助部13aが位置する。また,第2の取付部11bと中心部12を通る直線上に,第2の補助部13bが位置する。さらに,第3の取付部11cと中心部12を通る直線上に,第3の補助部13cが位置する。このように,各補助部13a〜13cは,それに対応する各取付部11a〜11cと同一直線上に設けられている。また,詳しくは後述するが,各補助部13a〜13cには,それぞれ,回転台用磁性物14a〜14cが取り付けられている。
【0035】
図4などに示されるように,固定台20は,回転台10が回転可能に取り付けられる部材である。具体的には,固定台20には,回転台10の中心部12が固定される。固定台20は,固定部21と基礎部22とに区分される。固定台20の固定部21は回転台10の中心部12が回転可能に固定される部位である。また,固定台20の基礎部22は,基台40に対して不動で固定される部位である。このように,固定台20は,回転台10と基台40とを中継する役割を担っている。
【0036】
図1に示されるように,サーボ機構30は,回転台10を所定角度回転させるための機構である。
図3には,サーボ機構30の動作例が示されている。
図1及び
図3に示されるように,サーボ機構30が回転台10を所定角度回転させることで,回転台10に取り付けられている射出ノズル1a〜1cの位置が変わる。複数(3本)の射出ノズル1a〜1cのうち,必ず1本は,素材を射出するのに適した「射出位置」に配置される。すなわち,「射出位置」とは,3Dプリンタの設計上,素材を射出する位置として特定された位置である。従って,射出位置に位置する射出ノズル1a〜1cから素材を射出することで,理論的には,CADデータによって設計された立体物を正確に造形することができる。なお,回転台10は,射出位置に位置する射出ノズル1a〜1cから垂直に素材が射出されるように,射出ノズル1a〜1cを保持可能な形状であることが好ましい。このように,サーボ機構30は,回転台10を所定角度回転させることにより,複数の射出ノズル1a〜1cのうち,射出位置に位置する射出ノズルの切り換えを行うものである。
【0037】
図1及び
図3等に示されるように,本実施形態において,サーボ機構30は,サーボモータ31と,クランク32と,ロッド33を備えている。サーボモータ31は,バッテリ(図示省略)から供給される電気エネルギーを,機械的な回転運動(回転エネルギー)に変換する部材である。サーボモータ31の回転軸の先端には,クランク32が回転不能に固定されている。クランク32は,サーボモータ31の回転に応じて時計回り又は反時計回りに回動する部材である。クランク32の一端は,サーボモータ31の回転軸に回転不能に固定されており,クランク32の他端は,ロッド(連結棒)33に回転可能に連結している。ロッド33には,サーボモータ31及びクランク32の回転運動を,回転台10に伝達するための部材である。ロッド33の一端は,クランク32に回転可能に連結されており,ロッド33の他端は,回転台10の任意の一部分に回転可能に連結されている。サーボモータ31の回転により,クランク32と回転台10の間の距離や位置関係は相対的に変動する。一方,クランク32と回転台10を繋ぐロッド33の長さは不変である。このため,サーボモータ31を回転させて,クランク32の位置を調整することにより,ロッド33を介して,回転台10の姿勢(回転角度)を制御することができる。これにより,サーボ機構30によって,回転台10を所定角度回転させる制御を行うことができる。
【0038】
図2及び
図3は,サーボ機構30を用いて回転台10を回転させることで,射出ノズル1a〜1cの切り換えた動作の様子を示している。
図2(a)及び
図3(a)は,第1の射出ノズル1aが射出位置に位置している状態を示し,
図2(b)及び
図3(b)は,第2の射出ノズル1bが射出位置に位置している状態を示し,
図2(c)及び
図3(c)は,第3の射出ノズル1cが射出位置に位置している状態を示している。特に,
図2に示された例では,第1の射出ノズル1aから素材Aが射出され,第2の射出ノズル1bから素材Bが射出され,第3の射出ノズル1cから素材Cが射出されている。
【0039】
図2(a)及び
図3(a)に示されるように,第1の射出ノズル1aが射出位置に位置している状態において,第1の射出ノズル1aから素材Aを垂直に射出することができる。このように,第1の射出ノズル1aから素材Aを射出しながら,射出ヘッド100全体を移動制御することで,素材Aを積層させて立体物の一部を造形することができる。次に,
図2(b)及び
図3(b)に示されるように,サーボ機構30を利用して回転台10を回転させて,射出ノズル1a〜1cの位置を切り換えて,第2の射出ノズル1bを射出位置に位置させる。第2の射出ノズル1bが射出位置に位置している状態において,第2の射出ノズル1bから素材Bを垂直に射出することができる。このように,第2の射出ノズル1bから素材Bを射出しながら,射出ヘッド100全体を移動制御することで,素材Bを積層させて立体物の一部を造形することができる。次に,
図2(c)及び
図3(c)に示されるように,サーボ機構30を利用して回転台10を回転させて,射出ノズル1a〜1cの位置を切り換えて,第3の射出ノズル1cを射出位置に位置させる。第3の射出ノズル1cが射出位置に位置している状態において,第3の射出ノズル1cから素材Cを垂直に射出することができる。このように,第3の射出ノズル1cから素材Cを射出しながら,射出ヘッド100全体を移動制御することで,素材Cを積層させて立体物の一部を造形することができる。
【0040】
本発明の射出ヘッド100は,基本的に,上記した構成及び動作によって,素材を射出する射出ノズル1a〜1cの位置を切り換えるものである。回転台10を回転させて,射出ノズル1a〜1cの切り換えを行うことで,切換前の射出ノズルの吐出口と切換後の射出ノズルの吐出口とをほぼ同じ位置に位置させることが可能である。このため,射出する素材を切り換える動作は,回転台10を所定角度回転させるだけで済むため,射出ヘッド100全体を移動させる必要がない。これにより,効率的かつ迅速に,射出する素材の切り換えを実行することができる。
【0041】
続いて,本発明係る射出ヘッド100のさらなる特徴的な構造について説明を行う。
【0042】
図1〜
図5に示されるように,回転台10は,平坦な平面状ではなく,立体的に傾斜(隆起)した特殊な形状となっている。特に
図2に示されるように,回転台10の複数の取付部11a〜11cは,それぞれ,射出ノズル1a〜1cを保持する高さ及び角度が異なっている。すなわち,
図2に示されるように,回転台10は,射出位置に位置する取付部11a〜11cに対して,他の取付部11a〜11cが,上方に向かって所定角度傾斜する形状をなしている。例えば,射出位置に位置する取付部に対し,これに隣接する取付部が上方に向かって傾斜する角度は,3度〜60度,5度〜45度,又は10度〜30度とすればよい。
【0043】
例えば,
図2(a)に示された例では,第1の射出ノズル1aを保持する第1の取付部11aが,射出位置に位置している。このとき,射出位置に位置する第1の取付部11aに対して,第2の取付部11b及び第3の取付部11cが上方に向かって傾斜している。
図2(b)に示された例では,第2の射出ノズル1bを保持する第2の取付部11bが,射出位置に位置している。このとき,射出位置に位置する第2の取付部11bに対して,第1の取付部11a及び第3の取付部11cが上方に向かって傾斜している。同様に,
図2(c)に示された例では,第3の射出ノズル1cを保持する第3の取付部11cが,射出位置に位置している。このとき,射出位置に位置する第3の取付部11cに対して,第1の取付部11a及び第2の取付部11bが上方に向かって傾斜している。このように,回転台10の取付部11a〜11cを立体的に傾斜させることで,これらの取付部11a〜11cによって取り付けられている射出ノズル1a〜1cは立体方向に展開され,それぞれ高さと角度が異なるものとなる。従って,例えば,第1の射出ノズル1aによって素材Aを射出している状態において,他の射出ノズル1b,1cが積層された素材に衝突する事態を回避できる。さらに,例えば,第1の射出ノズル1aによって素材Aを射出している状態において,第2の射出ノズル1bの先端に付着している素材Bが,素材Aに混合されるような事態を回避できる。これにより,安全かつ正確に,CADデータに従って立体物を造形することが可能となる。
【0044】
また,
図4に示されるように,回転台10と固定台20は特殊な固定構造を形成している。また,
図5は,
図4に示された構造一部の断面形状を概念的に示している。
図4及び
図5に示されるように,回転台10の中心部12と固定台20の固定部21とが傾斜して,互いに固定されている。具体的には,回転台10の中心部12と固定台20の固定部21とを貫通して,両者を回転可能に固定する固定棒23が傾斜している。これにより,
図5に示されるように,回転台10の回転軸(R)が垂直方向に対して所定角度(θ)で傾斜することとなる。回転台10の回転軸(R)は,射出ノズルが固定される前端側に向かって傾倒するものである。垂直方向に対する回転台10の回転軸(R)の傾斜角(θ)は,例えば,3度〜45度,又は5度〜30度であることが好ましく,10度〜20度であることが特に好ましい。
【0045】
また,
図5に示されるように,回転台10は,中心部12が傾斜しているのに対し,射出位置に位置する取付部11とこれに対応する補助部13は,地面(素材が積層されるプレート)対して平行に延びている。このため,射出位置に位置する取付部11は,地面(素材が積層されるプレート)に対して垂直に射出ノズルを保持することができる。
図5において,射出位置に位置する取付部11によって保持された射出ノズルによる射出方向(以下,「射出軸」という)が符号Iで示されている。射出軸Iが地面に対して垂直に維持されることで,射出ノズルから吐出された素材を正確に積層させることが可能となる。
【0046】
また,
図4に示されるように,回転台10は,複数の取付部11a〜11cが傾斜した形状となっている。それにも関わらず,回転台10の回転軸(R)を前端側に向かって傾倒させることで,
図4に示されるように,どの取付部11a〜11cを射出位置に位置させた場合であっても,射出ノズルの射出軸(I)と射出高さを一定に維持することができる。
【0047】
このように,回転台10の回転軸(R)を所定角度(θ)で傾斜させつつ,射出ノズルによる射出軸を垂直に維持することで,射出ノズルを切り換えの前後において,射出ノズルから素材が吐出される位置を一定に保つことができる。つまり,切換前の射出ノズルの吐出口と切換後の射出ノズルの吐出口の位置及び高さを一定に維持することができる。このため,射出ノズルを切り換えた際に,射出ヘッド100全体を移動させて,切換後の射出ノズルよる素材の吐出位置を微調整する必要がなくなる。これにより,よりスムーズに連続的な素材の射出が可能となる。
【0048】
さらに,
図1〜
図5に示されるように,回転台10の複数の補助部13a〜13cには,それぞれ,回転台用磁性物14a,14b,14cが取り付けられている。また,
図5の断面図に示されるように,固定台20の基礎部22には,固定台用磁性物24が取り付けられている。これらの回転台用磁性物14a〜14c及び固定台用磁性物24としては,互いに磁力によって吸着(吸引)し合う部材が選択される。例えば,回転台用磁性物14a〜14cと固定台用磁性物24の両方を永久磁石としてもよいし,一方を永久磁石として他方を鉄などの強磁性を有する金属としてもよい。また,回転台用磁性物14a〜14cと固定台用磁性物24として電磁石を採用することも可能である。
【0049】
図1〜
図5に示されるように,複数の補助部13a〜13cは,射出ノズル1a〜1cを取り付けるための複数の取付部11a〜11cに対応して設けられている。このため,第1の取付部11aが射出位置に位置しているときに,この第1の取付部11aの延長線上に位置する第1の補助部13aに設けられた第1の回転台用磁性物14aが,固定台20に設けられた固定台用磁性物24に吸着する。同様に,例えば,第2の取付部11bが射出位置に位置しているときに,この第2の取付部11bの延長線上に位置する第2の補助部13bに設けられた第2の回転台用磁性物14bが,固定台20に設けられた固定台用磁性物24に吸着する。このように,回転台10の補助部13a〜13cと固定台20の基礎部22に磁性物14a〜14c,24を設けることで,磁性物の吸着力を利用して,取付部11a〜11cが射出位置に位置している状態を安定化させることができる。すなわち,回転台用磁性物14a〜14cと固定台用磁性物24とが吸着している状態においては,取付部11a〜11cが射出位置において安定するため,射出ヘッド100全体を移動させた場合であっても,射出位置に位置する取付部11a〜11cがブレることを防止できる。このため,射出位置に位置する取付部11a〜11cによって,正確に素材を吐出することが可能となる。また,例えば永久磁石などを利用すれば,取付部11a〜11cの位置ブレを防止するために複雑な機構を設ける必要がなく,簡易な構造によって位置ブレを防止することができる。
【0050】
図6は,
図1〜
図5で説明した実施形態と異なる実施形態を示している。
図6(a)に示されるように,本発明に係る射出ヘッド100は,2本の射出ノズル1a,1bが取り付けられる構造であってもよい。また,
図6(b)に示されるように,本発明に係る射出ヘッド100は,4本の射出ノズル1a,1b,1c,1dが取り付けられる構造であってもよい。さらに,図示は省略するが,本発明に係る射出ヘッド100は,5本以上の射出ノズルを取り付ける構造とすることも可能である。
【0051】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。