(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを保持して移送するロボットアームと、該ロボットアームに保持された状態の前記ワークにマーキング用のレーザーを照射するレーザー照射部とを具備したレーザーマーキング装置であって、
距離検知面を有する距離検知部であって、前記レーザー照射部と並んだ状態でかつ前記距離検知面と前記レーザー照射部のレーザー照射面とが互いに平行な状態で配設され、前記ワークのマーキング面までの距離を検知する距離検知部と、
前記ロボットアームで前記マーキング面を前記距離検知面と平行な向きに配置した状態から前記ワークを前記距離検知部に近づけていき、前記ワークのマーキング面までの距離が前記レーザーでマーキング可能な距離に達したことを前記距離検知部で検知することで前記ワークの近接動作を停止し、
然る後、前記マーキング面の向きを維持して前記ワークを前記距離検知部と前記レーザー照射部との並設方向に沿って移動し、前記レーザー照射部と対向する位置で停止させるよう制御する制御部とをさらに具備することを特徴とするレーザーマーキング装置。
ワークをロボットアームで保持して、該保持した状態のワークにマーキング用のレーザーを照射することで前記ワークにマーキングを施すレーザーマーキング方法であって、
距離検知面を有し前記ワークのマーキング面までの距離を検知する距離検知部を、前記レーザーを照射するためのレーザー照射部と並んだ状態でかつ前記距離検知面と前記レーザー照射部のレーザー照射面とが互いに平行な状態となるように配設し、
前記ロボットアームで前記マーキング面を前記距離検知面と平行な向きに配置した状態から前記ワークを前記距離検知部に近づけていき、前記ワークのマーキング面までの距離が前記レーザーでマーキング可能な距離に達したことを前記距離検知部で検知することで前記ワークの近接動作を停止し、
然る後、前記マーキング面の向きを維持して前記ワークを前記距離検知部と前記レーザー照射部との並設方向に沿って移動し、前記レーザー照射部と対向する位置で停止させるよう制御するレーザーマーキング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このレーザー照射装置によるマーキング工程は、通常、鋳造工程の後に実施されることから、ロボットアームを用いて、鋳造金型からワーク(鋳造品)を取出した後、取出したワークをロボットアームで保持した状態でレーザー照射装置のマーキング位置まで自動的に移送するのが好ましい。
【0005】
この種のロボットアームは、予めティーチングした経路を通って保持したワークを所定の空間座標位置(ティーチング位置)まで移送するよう設定されるのが通常である。しかしながら、鋳造品のように、ワークごとの寸法のばらつきが大きい場合には、常にワークの同一箇所を保持して一定のティーチング位置までワークを移送したとしても、ワークのマーキング面とレーザー照射装置との距離が必ずしも一定になるとは限らない。また、鋳造品の中でも、シリンダブロックやエンジンチェーンカバーなど、比較的質量の大きいワークを移送対象とする場合には、ロボットアームのティーチング位置に対する繰り返し精度が必ずしも保証される訳ではなく、多数回の移送動作を繰り返すうちに、マーキング時の位置が所定のティーチング位置からずれるおそれもある。この種のレーザー照射装置においては、通常、マーキング可能となるレーザーの照射距離について一定の許容範囲が設けられているが、ロボットアームを用いて鋳造品にレーザーマーキングを施す場合には、上述した要因が重なることで、上記許容範囲を超える程度の位置ずれが生じることも少なくない。そのため、鋳造品に対して同一条件でレーザーマーキングを施しているにも
関わらず、マーキング用のレーザーがワークのマーキング面にまで届かずに全くマーキングが成されないことがある等、マーキング品質が安定しない、との問題があった。
【0006】
ここで、例えばレーザーの焦点距離をワークとの距離に応じて照射途中で変更可能なタイプのレーザー照射装置を用いることでワークの寸法ばらつきに対応することも考えられるが、この種の装置は構造が複雑となる分、非常に高価となるため、この種のマーキング設備としてコスト面で適切ではない。
【0007】
以上の問題は、何も鋳造品のマーキング作業に限ったことではなく、ロボットアームで保持して移送されるワークにレーザーでマーキングを施す場合全てに起こり得る。
【0008】
以上の事情に鑑み、ロボットアームで保持され移送されるワークに対してレーザーマーキングを確実かつ安価に実施することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題の解決は、本発明に係るレーザーマーキング装置によって達成される。すなわち、このマーキング装置は、ワークを保持して移送するロボットアームと、ロボットアームに保持された状態のワークにマーキング用のレーザーを照射するレーザー照射部とを具備したレーザーマーキング装置であって、レーザー照射部と並んで配設され、ワークのマーキング面までの距離を検知する距離検知部と、ロボットアームでワークを距離検知部に近づけていき、ワークのマーキング面までの距離がレーザーでマーキング可能な距離に達したことを距離検知部で検知することでワークの近接動作を停止し、然る後、ワークを距離検知部とレーザー照射部との並設方向に沿って移動し、レーザー照射部と対向する位置で停止させるよう制御する制御部とをさらに具備する点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「レーザーでマーキング可能な距離」には、使用するレーザー照射部のマーキング用レーザーとして最適な照射距離が含まれる他、上記最適な照射距離を基準として、その前後でレーザー照射部の仕様に基づきレーザーマーキングの品質が保証される範囲内の距離も含まれるものとする。
【0010】
このように、本発明では、ワークを保持してレーザーマーキング可能な位置まで移送可能なロボットアームを設けると共に、ワークのマーキング面との距離を検知可能な距離検知部を、レーザー照射部と並んで配設するようにした。また、この際に、ロボットアームと距離検知部とを用いて、ワークのマーキング面と距離検知部との距離をレーザーマーキング可能な距離に設定し、然る後、距離検知部とレーザー照射部との並設方向に沿ってワークを移動させ、レーザー照射部との対向位置で停止させるよう制御可能とした。これにより、ワークごとにレーザーマーキング可能な距離をレーザーマーキングに先んじて設定することができる。また、この設定の後、ワークを距離検知部で距離検知可能な位置からレーザー照射部と対向する位置まで移送することで、結果的に、ワークのマーキング面とレーザー照射部との対向間隔を、レーザーマーキングが可能な距離に設定することができる。従って、ワーク個々の寸法のばらつきの影響を受けることなく、全てのワークに対して正確かつ確実にマーキングを施すことが可能となる。また、距離検知部でマーキング可能な距離をワークごとに設定した後のワークのロボットアームによる移送距離は、並んで配設される距離検知部とレーザー照射部との離間距離分で済むので、この移動の際に位置ずれが生じる可能性も極めて低い。一方、コスト面に関しても、既存の設備(ロボットアーム、レーザー照射部)に対して、距離検知部を追加して制御部の制御プログラムを変更するだけで足りるので、高価な焦点距離可変タイプのレーザー照射部を用いる場合と比べて安価にレーザーマーキング装置を構築することができる。
【0011】
また、本発明に係るレーザーマーキング装置は、レーザー照射部のレーザー照射面と距離検知部の距離検知面とが同一平面上に配置されており、制御部は、マーキング面を距離検知面と平行な向きに配した状態でワークを距離検知部に近づけていき、かつ、ワークの近接動作を停止した後、マーキング面の向きを維持してワークを距離検知部とレーザー照射部との並設方向に沿って移動させるよう制御するものであってもよい。
【0012】
このように構成することで、ロボットアームによるワークの移送動作を直線的かつ最小限の動作とすることができる。従って、このことによっても最終的なワークの位置決め精度(マーキング予定位置での位置決め精度)を高めることが可能となる。また、距離検知面とレーザー照射面とを含む平面に平行な向きにワークを移動させるだけで、ワークのマーキング面とレーザー照射面とを平行に対峙させることができるので、これによってもワークの位置決め精度を高めることができ、安定したマーキングが可能となる。距離検知面とレーザー照射面とが同一平面内にないときは、これらの面に対して傾斜する向きにワークを動かす必要があるため、並設方向へのワークの移動距離が所定の距離から僅かにでもずれると、結果的にワークのマーキング面とレーザー照射面との距離が狂うことにもつながりかねないが、上述の移動態様であればその心配もない。
【0013】
また、前記課題の解決は、本発明に係るレーザーマーキング方法によっても達成される。すなわち、このマーキング方法は、ワークをロボットアームで保持して、保持した状態のワークにマーキング用のレーザーを照射することでワークにマーキングを施すレーザーマーキング方法であって、ワークのマーキング面までの距離を検知する距離検知部を、レーザーを照射するためのレーザー照射部と並んで配設し、ロボットアームでワークを距離検知部に近づけていき、ワークのマーキング面までの距離がレーザーでマーキング可能な距離に達したことを距離検知部で検知することでワークの近接動作を停止し、然る後、ワークを距離検知部とレーザー照射部との並設方向に沿って移動し、レーザー照射部と対向する位置で停止させるよう制御する点をもって特徴付けられる。
【0014】
このマーキング方法によれば、既に述べた本発明に係るレーザーマーキング装置と同様に、ワークごとにレーザーマーキング可能な距離をレーザーマーキングに先んじて設定することができる。また、この設定の後、ワークを距離検知部で距離検知可能な位置からレーザー照射部と対向する位置まで移送することで、ワークのマーキング面とレーザー照射部との対向間隔を、レーザーマーキング可能な距離に設定することができる。従って、ワーク個々の寸法のばらつきの影響を受けることなく、全てのワークに対して正確かつ確実にマーキングを施すことが可能となる。また、コスト面に関しても、既存の設備(ロボットアーム、レーザー照射部)に対して、距離検知部を追加してこれら(ロボットアーム、距離検知部、レーザー照射部)の制御態様を変更するだけで済むので、高価な焦点距離可変タイプのレーザー照射部を用いる場合と比べて安価にレーザーマーキング装置を構築することができる。さらに、ロボットアームによるワークの移送動作についても、距離検知部を経由する分の増加で済むので、問題となるほどの作業時間の増加は生じない。よって、作業効率も確保できる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ロボットアームで保持され移送されるワークに対してレーザーマーキングを確実かつ安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザーマーキング装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すレーザーマーキング装置の制御部における制御プログラムの一例を示すフローチャートである。
【
図3】ロボットアームで保持した状態の鋳造品を距離検知部と対向する位置まで移動させた状態を示す要部平面図である。
【
図4】
図3に示す状態におけるレーザーマーキング装置の要部側面図である。
【
図5】鋳造品をレーザーマーキング可能な距離まで距離検知部に近接させた状態を示す要部側面図である。
【
図6】鋳造品をレーザー照射面と対向する位置まで移動させた状態を示す要部側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るレーザーマーキング装置の構成を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るレーザーマーキング装置及びレーザーマーキング方法の一実施形態を
図1〜
図6に基づき説明する。本実施形態では、ワークとしての鋳造品を鋳造装置からロボットアームで取出し、次工程に搬送する途中で当該ワークにレーザーマーキングを施す場合を例にとって説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザーマーキング装置の全体構成を示している。同図に示すように、このマーキング装置は、鋳造品W(
図4を参照)を保持して移送するロボットアーム10と、ロボットアーム10に保持された状態の鋳造品Wにマーキング用のレーザーを照射するレーザー照射部20と、レーザー照射部20と並んで配設され、鋳造品Wのマーキング面Wa(
図4を参照)までの距離dがレーザーでマーキング可能な距離に等しいことを検知する距離検知部30と、ロボットアーム10及び距離検知部30を制御する制御部40とを具備する。本実施形態では、ロボットアーム10は、鋳造装置50(
図1中、下側の破線部)から鋳造品Wを取り出して、次工程へと鋳造品Wを搬送するための搬送台車60(
図1中、上側の破線部)へ鋳造品Wを移載し、かつ、その移載途中で、保持した鋳造品Wをレーザー照射部20と対向する位置まで移送するようになっている。
【0019】
ロボットアーム10は、本実施形態では多関節型のロボットアームで構成されるもので、その先端に鋳造品Wを吸着、挟持等により保持可能な保持部11を有している。また、ロボットアーム10の基部が鉛直方向に沿ってスライドすることで、ロボットアーム10全体を鉛直方向に沿ってスライド制御できるようになっている。上述のロボットアーム10は、制御部40と電気的に接続されており、制御部40に組み込まれた後述する制御プログラムに則って動作するように制御される。
【0020】
レーザー照射部20は、いわゆるレーザーマーカのレーザーヘッド部でもって構成されるもので、レーザー照射面21の法線方向を基準として、所定の幅方向(角度)範囲内でマーキング用のレーザーを走査できるようになっている。また、このレーザー照射部20は、ロボットアーム10の可動域内であって、鋳造品Wのマーキング面Waがレーザー照射部20のレーザー照射面21と後述する所定の距離を介して対向する位置まで鋳造品Wを移送可能な位置に配設される。本実施形態では、レーザー照射面21がロボットアーム10の回転中心と正対する向きに配設されている。また、このレーザー照射部20も、制御部40と電気的に接続されており、制御部40に組み込まれた後述する制御プログラムに則って動作するように制御される。
【0021】
距離検知部30は、距離検知面31を有するもので、レーザー照射部20と並んで配設される。言い換えると、レーザー照射部20のレーザー照射面21と距離検知部30の距離検知面31とが平行となるように両部20,30が配設される。本実施形態では、距離検知部30の距離検知面31とレーザー照射部20のレーザー照射面21とが同一平面に含まれる位置に配設されている。また、レーザー照射面21だけでなく距離検知面31もロボットアーム10の回転中心と正対する向きに配設される。この場合、レーザー照射部20と距離検知部30とは鉛直上下方向に並んで配置される。
【0022】
距離検知部30としては、距離検知面31と対向する鋳造品Wのマーキング面Waとの距離d(
図4を参照)が、レーザー照射部20からのレーザーでマーキング可能な距離D(同じく
図4を参照)に等しいことを検知可能な限りにおいて任意のものが使用でき、例えば検知対象との距離を測定可能なタイプの距離センサの他、検知対象が所定の距離範囲内にあることの有無のみを検知するタイプの距離センサなどが使用できる。また、この距離検知部30も、制御部40と電気的に接続されており、制御部40に組み込まれた後述する制御プログラムに則って動作するように制御される。
【0023】
制御部40は、本実施形態では、
図2に示すように、鋳造装置50で鋳造した鋳造品Wをロボットアーム10の先端に設けた保持部11で保持し、鋳造装置50から鋳造品Wを取出すステップS0(図示は省略)と、取出した鋳造品Wを距離検知部30の距離検知面31と対向する位置まで移動させるステップS1と、鋳造品Wの距離検知面31への近接動作を開始するステップS2と、鋳造品Wのマーキング面Waと距離検知面31との距離dがレーザー照射部20によるレーザーでマーキング可能な距離Dに達したことを距離検知部30で検知することで、鋳造品Wの近接動作を停止するステップS3と、近接動作の停止後、鋳造品Wを距離検知部30とレーザー照射部20との並設方向に沿って移動させるステップS4と、レーザー照射部20のレーザー照射面21と対向する位置で鋳造品Wを停止させるステップS5と、停止した位置で鋳造品Wに向けてレーザーを照射することでマーキング面Waにレーザーマーキングを施すステップS6とを有する制御プログラムを組み込んでなる。
【0024】
以下、上記構成に係るレーザーマーキング装置を用いたレーザーマーキングの一例を
図3〜
図6に基づき説明する。
【0025】
まず、
図1に示すように、ロボットアーム10をその可動域内に配された鋳造装置50上に移動させ、鋳造装置50に設けられた金型から鋳造品Wを取出す(ステップS0)。本実施形態では、後述する
図3や
図4に示すように、鋳造品Wの製品部W1ではなくその周囲に一体成形された方案部W2を保持部11で保持した状態で鋳造品Wを金型から取出し、移送する。そして、金型から取出した鋳造品Wを保持した状態でロボットアーム10を旋回させ、
図3に示すように、保持部11で保持した状態の鋳造品Wを距離検知部30の距離検知面31と対向する位置まで移送する(ステップS1)。この際、鋳造品Wのマーキング面Waが距離検知部30の距離検知面31と平行となるよう、言い換えると距離検知面31と正対する位置まで鋳造品Wを移送する。なお、この時点では、
図4に示すように、鋳造品Wの製品部W1に設けられたマーキング面Waと距離検知面31との離間距離dは、設定すべきレーザーマーキング可能な距離Dよりも大きい。
【0026】
そして、上述した位置から、鋳造品Wの距離検知面31への近接動作を開始し(ステップS2)、鋳造品Wのマーキング面Waを距離検知面31へと近づけていく。そして、
図5に示すように、マーキング面Waと距離検知面31との距離dがレーザー照射部20によるレーザーマーキング可能な距離Dに達したことを距離検知部30で検知することで、鋳造品Wの近接動作を停止する(ステップ3)。
【0027】
このようにして鋳造品Wの近接動作を停止した後、
図6に示すように、鋳造品Wを距離検知部30とレーザー照射部20との並設方向に沿って移動させる(ステップS4)。本実施形態では、レーザー照射部20と距離検知部30とが鉛直上下方向に並んで配設されており、かつ、レーザー照射面21と距離検知面31とが同一平面上にあることから、例えばロボットアーム10全体を鉛直下方向にスライドさせることで、マーキング面Waの向きを変えることなく、鋳造品Wを距離検知面31とレーザー照射面21とを含む平面に沿って移動させる。そして、マーキング面Waがレーザー照射部20のレーザー照射面21と対向する位置にまで達したらロボットアーム10のスライド動作を停止し、鋳造品Wを上記対向位置で停止させる(ステップS5)。なお、上記
並設方向へのスライド動作後の鋳造品Wの位置精度が保証され得るのであれば、各関節の回転運動により鋳造品Wを上記並設方向に沿って移動させるようにしても構わない。
【0028】
そして、上記停止位置にて、レーザー照射面21よりマーキング用のレーザーをマーキング面Waに向けて照射することにより、所定の情報に対応する文字をマーキング面Waに刻印し、レーザーマーキングを施す(ステップS6)。以上のようにして、レーザーマーキングが完了した鋳造品Wを次工程(ここでは
図1に示す搬送台車60)に向けて移載することで、制御部40によるロボットアーム10、レーザー照射部20、及び距離検知部30の制御が終了する。
【0029】
このように、本発明では、鋳造品Wをロボットアーム10で保持してレーザーマーキング可能な位置まで移送することとし、かつその際、レーザーマーキングの前に、レーザー照射部20と並んで配設した距離検知部30でもってレーザーマーキング可能な距離を設定し、然る後、距離検知部30とレーザー照射部20との並設方向に沿って鋳造品Wを移動させ、レーザー照射面21との対向位置で停止させるようにした。これにより、鋳造品Wごとにレーザーマーキング可能な距離をレーザーマーキングに先んじて設定することができる。また、この設定の後、鋳造品Wを距離検知部30で距離検知可能な位置からレーザー照射面21と対向する位置まで移送することで、鋳造品Wのマーキング面Waとレーザー照射面21との対向間隔を、レーザーマーキングが可能な距離に設定することができる。従って、鋳造品Wの製品部W1における寸法のばらつきの影響を受けることなく、全ての鋳造品W(製品部W1)に対して正確かつ確実にマーキングを施すことが可能となる。特に、本実施形態のように、マーキング対象となるワークが鋳造品Wである場合には、製品部W1の破損や異物の付着を防止する目的で、製品部W1ではなく方案部W2を保持部11で保持して移送するのが好ましいが、このように直接レーザーマーキングを施す部位とは異なる箇所(方案部W2)を保持することで、被保持部とマーキング面Waとの位置関係が製品ごとにばらつき易い。この点、本発明によれば、方案部W2を保持して移送する場合であっても、上記方案部W2と製品部W1との位置関係のばらつきの影響を受けることなく、製品部W1のマーキング面Waに正確かつ確実にマーキングを施すことができる。
【0030】
また、距離検知部でマーキング可能な距離をワークごとに設定した後のワークのロボットアームによる移送距離は、並んで配設される距離検知部とレーザー照射部との離間距離分で済むので、この移動の際に位置ずれが生じる可能性も極めて低い。特に、本実施形態では、ロボットアーム10全体を鉛直下方向にスライドさせることで、マーキング面Waの向きを変えることなく、鋳造品Wを距離検知面31とレーザー照射面21とを含む平面に沿って移動させるようにしたので、距離設定後、ロボットアーム10の基部が有するスライド機能を利用してロボットアーム10全体を予め定められた距離だけスライドさせるだけの動作で足り、制御動作を単純化できる。従って、レーザーマーキング作業を安定的に実施することができ、ひいては安定したレーザーマーキング品質を得ることが可能となる。
【0031】
一方、コスト面に関しても、既存の設備(ロボットアーム10、レーザー照射部20)に対して、距離検知部30を追加して制御部40の制御プログラムを変更するだけで足りるので、高価な焦点距離可変タイプのレーザー照射部を用いる場合と比べて安価にレーザーマーキング装置を構築することができる。
【0032】
また、本発明では、鋳造品Wをレーザー照射位置において治具等で位置決めすることなく、ロボットアーム10で保持した状態のままでレーザーマーキングを行うようにしたので、作業効率も良い。また、ロボットアーム10の可動域内において、鋳造装置50から次工程に係る搬送台車60までの間にレーザー照射部20及び距離検知部30を配設するようにしたので、鋳造装置50上から距離検知部30前、距離検知部30前からレーザー照射部20前、及びレーザー照射部20前から搬送台車60上までの移送経路を経て、鋳造品Wの移載及びレーザーマーキングを行うことができる。従って、極力無駄な移送動作を省いてレーザーマーキング及び次工程への移載を行うことができ、作業効率も良好である。
【0033】
なお、上記実施形態では、制御部40が、ロボットアーム10とレーザー照射部20、及び距離検知部30の何れとも独立して配設される場合を説明したが、もちろん、何れか一方の部材に組み込まれた制御部の制御プログラムを変更することで、上述の制御を図るようにしてもよい。あるいは、上記制御プログラム(制御ステップ)の一部をロボットアーム10の制御部で制御し、残部をレーザー照射部20の制御部で制御するようにしても構わない。
【0034】
また、上記実施形態では、ロボットアーム10の鉛直下方向へのスライド動作を、ロボットアーム10の基部が有する鉛直方向へのスライド機能を利用して行うようにしたが、ロボットアーム10の各腕部を回転させることで、マーキング面Waの向きを変えることなく鋳造品Wを鉛直下方向にスライドさせるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、レーザー照射部20と距離検知部30とを上下方向に並べて配設した場合を例示したが、例えば
図7に示すように、レーザー照射部20と距離検知部30とを水平方向に並べて配設するようにしてもよい。この場合、距離検知部30による距離設定後、例えばロボットアーム10の基部が有する水平方向へのスライド機能を利用して、ロボットアーム10全体を水平方向に所定距離スライドさせるよう制御するのがよい(ステップ4’)。その他の制御ステップ(S0〜S3、S5、S6)は同じである。