特許第5950449号(P5950449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950449
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】加速度計
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/12 20060101AFI20160630BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   G01P15/12 Z
   G01P15/08 101B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-146184(P2012-146184)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-10021(P2014-10021A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(74)【代理人】
【識別番号】100082636
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 修治
(72)【発明者】
【氏名】清水 和貴
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2939921(JP,B2)
【文献】 特許第2939923(JP,B2)
【文献】 特開平6−294812(JP,A)
【文献】 特開平6−194380(JP,A)
【文献】 特許第2939922(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム状を呈する起歪体の長手方向における基端側を固定部とし、中間に前記長手方向に直交する方向に貫通するスリットを形成して薄肉となした一対の起歪部とし、先端側を重り部とし、前記起歪部に少なくとも4つのひずみゲージをそれぞれのゲージ軸を前記長手方向に向けて添着してなる加速度計であって、
前記スリットの中央を境界として、
ホイートストンブリッジ回路の一方の対辺に接続される複数の第1のひずみゲージおよび前記一方の対辺に隣接する他方の対辺に接続される複数の第2のひずみゲージを前記起歪部上の対称位置に、それぞれ添着し、
前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージの各々の抵抗値を全て等しく設定すると共に、前記第1のひずみゲージのグリッド長に対する前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせ、前記ホイートストンブリッジ回路において、グリッドの主感度方向の出力を大きくし、主感度方向に直交する方向の出力を相殺し得るように、設定したことを特徴とする加速度計。
【請求項2】
前記第1のひずみゲージのグリッド長に対し前記第2のひずみゲージのグリッド長を長く形成したことを特徴とする請求項1に記載の加速度計。
【請求項3】
前記スリット中心に対し、所定間隔を隔てて前記起歪部の内面側を対称的に断面半円弧状に形成することでさらに二重アーチ状の起歪部を設け、前記スリットの中心から対称の前記半円弧状の薄肉部に対応する平面側に、複数の前記第1のひずみゲージおよび複数の前記第2のひずみゲージをそれぞれ添着してなることを特徴とする請求項1または2に記載の加速度計。
【請求項4】
前記起歪体に対し、前記重り部が主感度方向に変位する上下方向をX軸方向とし、
左右方向に変位する方向をY軸方向とし前後方向に変位する方向をZ軸方向としたとき、重り部がX軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、一方が圧縮ひずみ、他方が引張ひずみを受けるように変形して前記ホイートストンブリッジ回路の出力端に大きな出力をもたらし、重り部がY軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けるように変形して、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて実質的な出力はもたらさず、重り部がZ軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けると共に、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせることによって、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて小さな出力をもたらすように、構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加速度計。
【請求項5】
前記第1のひずみゲージは、所定間隔を隔てて形成された前記二重アーチ状の前記固定側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第1のひずみゲージの前記グリッド長の中心を合致させ、
前記第2のひずみゲージは、前記二重アーチ状の前記重り側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第2のひずみゲージのグリッド長の中心を合致させた状態で添着してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加速度計。
【請求項6】
前記第1のひずみゲージのグリッド長をxとし、前記Z方向の干渉度を半減するための前記第2のひずみゲージのグリッド長の上限許容値をyとし、下限許容値をyとしたとき、前記第2のひずみゲージの前記グリッド長の許容範囲yは、次の条件式(1)、(2)、(3):
(1)y=0.0007x+0.5959x+120.02
(2)y=0.0005x+0.723x+61.218
(3)y<y<y
を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加速度計。
【請求項7】
前記第1のひずみゲージの前記グリッド長xは、100μm〜400μmの範囲で設定することを特徴とする請求項6に記載の加速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度計に係り、特に、被測定対象の構造物表面等に取付けられて使用される加速度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ひずみゲージを備えて構成される加速度計(加速度変換器とも称される)は、例えば、自動車等の移動体や航空機等の構造物の安全設計に必要な試験工程において、構造物の衝撃強度の測定や、発生する加速度波形の解析等を行うために多用されている。
なお、ひずみゲージでホイートストンブリッジ回路を構成する四辺の抵抗は、箔材式、線材式、スパッタゲージ式および拡散型半導体ゲージ式等で形成されており、これをグリッドと称している。
一般的な加速度計は、主要部が、固定部(従動部)と、起歪部と、重り(一般には、錘または重錘とも称されている)で構成されており、試験工程等における使用時には、構造物側に固定部を取着し、自由端である重りが従動部に対して相対変位して、起歪部にひずみを生じさせ、その起歪部に添着されたひずみゲージで構成されるホイートストンブリッジ回路から出力される信号を加速度信号として検出している。
【0003】
この種の加速度変換器については、本件出願人は、先に、特許文献1(特開平7−167886号公報)に、
被測定対象に附随して一体的に運動する従動部に可撓部を介して重錘が支持され、前記従動部が加速度を受けたとき前記重錘がその従動部に対し相対変位するときのひずみをひずみゲージにより電気信号に変換して当該加速度の検出を行う方式の加速度変換器において、
矩形状断面を呈する梁の中間部に、相対する側周面の両側から一定深さのスリットをそれぞれ形成することで、基端側には剛性の大きな従動部を、先端側には剛性の大きな重錘部を、中間部には可撓性を有する可撓部を、それぞれ設けてなる片持梁と、
この片持梁の中間部に形成された一対のスリットを跨ぐようにして前記従動部と前記重錘部の前記両側周面にそれぞれ接合された薄肉で可撓性を有する1対の起歪板と、
この1対の起歪板のスリット側表層部にひずみを検出し得るようにしてそれぞれ添着された少なくとも1対のひずみゲージと、
を有し、前記重錘部に作用する加速度で前記片持梁が変形することによって前記起歪板に作用する引張・圧縮ひずみと、前記起歪板に作用する加速度で前記起歪板自体が変形することによって生ずる曲げひずみとを加えて前記1対のひずみゲージで検出し得るように構成した加速度変換器を提案した。
【0004】
また、他の加速度変換器として、本件出願人は、特許文献2(特開平8−5656号公報)に、
被測定対象に附随して一体的に運動する従動部に可撓部を介して重錘が支持され、前記従動部が加速度を受けたとき前記重錘がその従動部に対し相対変位するときのひずみをひずみゲージにより電気信号に変換して当該加速度の検出を行う方式の加速度変換器において、
梁の中間部に、相対する側周面の両側から一定深さのスリットをそれぞれ形成することで、基端側には剛性の大きな従動部を、先端側には剛性の大きな重錘部を、中間部には可撓性を有する可撓部を、それぞれ設けてなる片持梁と、
この片持梁の中間部に形成された一対のスリットを跨ぐようにして前記従動部と前記重錘部の前記両側周面にそれぞれ接合された可撓性を有する薄膜からなる1対の補強膜と、
この1対の補強膜の反スリット側表面部にそれぞれ添着された薄肉の1対の絶縁膜と、
この1対の絶縁膜の反スリット側表面に添着形成されたひずみゲージと、
を有し、前記重錘部に作用する加速度で前記片持梁が変形することによって前記補強膜に作用する引張・圧縮ひずみを、前記1対のひずみゲージで検出し得るように構成した加速度変換器を提案した。
【0005】
さらには、特許文献3(特開2006−294892号公報)に、
半導体材料からなる固定部と、
前記半導体材料からなり、所定方向の加速度を受けて前記固定部に対して変位する変位部と、
前記半導体材料からなり、前記固定部と前記変位部とをそれぞれ接続し、かつ前記所定方向に並んで配置される複数の接続部であって、前記所定方向での幅より前記所定方向に垂直な方向での厚さが大きい断面形状を有する複数の接続部と、
前記複数の接続部に配置される複数の歪検出素子と、
を具備することを特徴とする一軸半導体加速度センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−167886号公報
【特許文献2】特開平8−5656号公報
【特許文献3】特開2006−294892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願に係る発明者らは、上記特許文献1〜3の加速度変換器(加速度センサあるいは加速度計)について、本来の受感軸方向に対する加速度出力、即ち、ビーム状を呈する起歪体の重り部の上下方向の加速度成分による出力の他に、起歪体の横方向、即ち、左右方向および起歪体の前後方向に対する加速度出力が生じ、それが誤差となって本来の受感軸方向に対する加速度出力に誤差となって混入し、真の加速度の測定精度を低下させるという問題があることを、見出した。
従来、このような問題は、仕様上においては、単に誤差として許容していた。
しかしながら、本願に係る発明者は、その問題の原因を鋭意探求した結果、下記の原因により干渉が生じるものであることを解明した。
即ち、この原因を図12を用いて説明する。
この図12に示す加速度計は、本発明の基本的構成をなすものである。
例えば、加速度計50が、断面矩形で長手方向に延びるビーム体51であって、そのビーム体51の被測定対象物に取着される基端側を固定部52とし、中間に長手方向に直交する方向に貫通するスリット53を形成して薄肉となして一対の起歪部54とし、先端側を重り部55とする。前記スリット53の中心を境にして、長手方向に一定距離を離れた部分に2枚と、長手方向に直交する方向に一定距離を離れた部分に2枚の合計4枚のひずみゲージG1〜G4を添着してなるものとして、説明する。
【0008】
先ず、第1の干渉の原因は、図12の(a)に示すように固定側のひずみゲージG1、G3と重り部56側のひずみゲージG2、G4とが離間されていることから、ひずみゲージG2、G4は、重り部56の質量Maのみを受けるのに対し、固定部52側に添着されたひずみゲージG1、G3は、重り部56の質量の他に、ひずみゲージG1、G3とひずみゲージG2、G4との間に存在する起歪部54に相当する質量maとが加わった分が加速度として受けるので、これら4枚のひずみゲージG1、G3、G2、G4をもってホイートストンブリッジ回路(以下、「ブリッジ回路」という)を組んでも、相殺されず、Z軸方向の干渉成分が残る。
また、第2の干渉の原因は、図12(b)に示すように、質量maによるモーメントが発生し、そのモーメントによるひずみを受け、このひずみ分は、ブリッジ回路によって相殺し得ないために、干渉値となるのである。
また、第3の干渉の原因は、質量Maによる荷重で重り部55が撓むことにより、モーメントが発生し、そのモーメントによる新たなひずみを生じる。このひずみは、複雑な挙動を示し、回路的に見掛け上の出力である干渉を消去することができない。
そこで、本発明の第1の目的とするところは、上記見掛け上の成分の減少乃至は除去を実現し、高精度な加速度計を提供することにある。
また、本発明の第2の目的とするところは、複雑な回路手段を用いることなく、構造が簡素で安価な加速度計を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、微小な加速度を検出可能であって、しかも超小型の加速度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る加速度計は、上述した第1の目的および第2の目的を達成するために、
ビーム状を呈する起歪体の長手方向における基端側を固定部とし、中間に前記長手方向に直交する方向に貫通するスリットを形成して薄肉となした一対の起歪部とし、先端側を重り部とし、前記起歪部に少なくとも4つのひずみゲージをそれぞれのゲージ軸を前記長手方向に向けて添着してなる加速度計であって、
前記スリットの中央を境界として、
ホイートストンブリッジ回路の一方の対辺に接続される複数の第1のひずみゲージおよび前記一方の対辺に隣接する他方の対辺に接続される複数の第2のひずみゲージを前記起歪部上の対称位置に、それぞれ添着し、
前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージの各々の抵抗値を全て等しく設定すると共に、前記第1のひずみゲージのグリッド長に対する前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせ、前記ホイートストンブリッジ回路において、グリッドの主感度方向の出力を大きくし、主感度方向に直交する方向の出力を相殺し得るように、設定したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る加速度計は、上記第1および第2の目的を達成するために、
前記第1のひずみゲージのグリッド長に対し前記第2のひずみゲージのグリッド長を長く形成したことを特徴としている。
請求項3に係る加速度計は、上記第1および第2の目的を達成するために、前記スリット中心に対し、所定間隔を隔てて前記起歪部の内面側を対称的に断面半円弧状に形成することで二重アーチ状の起歪部を設け、前記スリットの中心から対称の前記半円弧状の薄肉部に対応する平面側に、複数の前記第1のひずみゲージおよび前記第2のひずみゲージをそれぞれ添着してなることを特徴としている。
請求項4に係る加速度計は、上記第1および第2の目的を達成するために、前記起歪体に対し、前記重り部が主感度方向に変位する上下方向をX軸方向とし、
左右方向に変位する方向をY軸方向とし前後方向に変位する方向をZ軸方向としたとき、重り部がX軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、一方が圧縮ひずみ、他方が引張ひずみを受けるように変形して前記ホイートストンブリッジ回路の出力端に大きな出力をもたらし、重り部がY軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けるように変形して、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて実質的な出力はもたらさず、重り部がZ軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けると共に、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせることによって、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて小さな出力をもたらすように、構成したことを特徴としている。
【0011】
請求項5に係る加速度計は、上記第1および第2の目的を達成するために、前記第1のひずみゲージは、所定間隔を隔てて形成された前記二重アーチ状の前記固定側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第1のひずみゲージの前記グリッド長の中心を合致させ、
前記第2のひずみゲージは、前記二重アーチ状の前記重り側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第2のひずみゲージのグリッド長の中心を合致させた状態で添着してなることを特徴としている。
請求項6に係る加速度計は、上記第1および第2の目的を達成するために、前記第1のひずみゲージのグリッド長をxとし、前記Z方向の干渉度を半減するための前記第2のひずみゲージのグリッド長の上限許容値をyとし、下限許容値をyとしたとき、前記第2のひずみゲージの前記グリッド長の許容範囲yは、次の条件式(1)、(2)、(3):
(1)y=0.0007x+0.5959x+120.02
(2)y=0.0005x+0.723x+61.218
(3)y<y<y
を満足することを特徴としている。
請求項7に係る加速度計は、上記第1〜第3の目的を達成するために、前記第1のひずみゲージの前記グリッド長xは、100μm〜400μmの範囲で設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ビーム状を呈する起歪体の長手方向における基端側を固定部とし、中間に前記長手方向に直交する方向に貫通するスリットを形成して薄肉となした一対の起歪部とし、先端側を重り部とし、前記起歪部に少なくとも4つのひずみゲージをそれぞれのゲージ軸を前記長手方向に向けて添着してなる加速度計であって、
前記スリットの中央を境界として、
ホイートストンブリッジ回路の一方の対辺に接続される複数の第1のひずみゲージおよび前記一方の対辺に隣接する他方の対辺に接続される複数の第2のひずみゲージを前記起歪部上の対称位置に、それぞれ添着し、
前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージの各々の抵抗値を全て等しく設定すると共に、前記第1のひずみゲージのグリッド長に対する前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせ、前記ホイートストンブリッジ回路において、前記グリッドの主感度方向の出力を大きくし、主感度方向に直交する方向の出力を相殺し得るように、設定したことにより、主感度方向の出力を増大させると共に主感度方向に直交する方向、即ち横方向前後方向の見掛け出力を極力、出力させないようにして加速度の測定精度の大幅な向上を実現させ得ると共に、簡素な構成で安価な加速度計を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記第1のひずみゲージのグリッド長に対し前記第2のひずみゲージのグリッド長を長く形成したことにより、上記請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する加速度計を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、前記スリット中心に対し、所定間隔を隔てて前記起歪部の内面側を対称的に断面半円弧状に形成することでさらに二重アーチ状の起歪部を設け、前記スリットの中心から対称の前記半円弧状の薄肉部に対応する平面側に、複数の前記第1のひずみゲージおよび複数の前記第2のひずみゲージをそれぞれ添着したことにより、主感度方向の出力を増大させると共に、主感度方向に直交する横方向、前後方向の見掛け出力をより一層低減可能とし、加速度の測定精度をより一層向上させ得る加速度計を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、
前記起歪体に対し、前記重り部が主感度方向に変位する上下方向をX軸方向とし、
左右方向に変位する方向をY軸方向とし前後方向に変位する方向をZ軸方向としたとき、重り部がX軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、一方が圧縮ひずみ、他方が引張ひずみを受けるように変形して前記ホイートストンブリッジ回路の出力端に大きな出力をもたらし、重り部がY軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けるように変形して、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて実質的な出力はもたらさず、重り部がZ軸方向に変位したとき、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージは、圧縮ひずみまたは引張ひずみを同様に受けると共に、前記第1のひずみゲージと前記第2のひずみゲージのグリッド長を異ならせることによって、前記ホイートストンブリッジ回路内で相殺されて小さな出力をもたらすように、構成したので、横方向の出力を相殺して見掛け出力をゼロとすると共に、特に、前後方向の見掛けひずみ出力を殆ど出力させないようにして、加速度の測定精度をさらに大幅に向上させ得る加速度計を提供すすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記第1のひずみゲージは、所定間隔を隔てて形成された前記二重アーチ状の前記固定側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第1のひずみゲージの前記グリッド長の中心を合致させ、
前記第2のひずみゲージは、前記二重アーチ状の前記重り側の半円弧状の頂点に対応する平面側位置に、前記第2のひずみゲージのグリッド長の中心を合致させた状態で添着してなることにより、主感度方向の出力を増大させると共に、主感度方向に直交する横方向、前後方向の見掛け出力をより適切に低減可能とし、加速度の測定精度をより一層向上させ得る加速度計を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、
前記第1のひずみゲージのグリッド長をxとし、前記Z方向の干渉度を半減するための前記第2のひずみゲージのグリッド長の上限許容値をyとし、下限許容値をyとしたとき、前記第2のひずみゲージの前記グリッド長の許容範囲yは、次の条件式(1)、(2)、(3):
(1)y=0.0007x+0.5959x+120.02
(2)y=0.0005x+0.723x+61.218
(3)y<y<y
を満足することにより、Z方向の干渉度を半減以下とし得る第1のひずみゲージと第2のひずみゲージのグリッド長の関係を容易且つ正確に設定することができ、横方向の出力を相殺して見掛け出力をゼロとすると共に、特に、前後方向の見掛けひずみを殆ど出力させないようにして、加速度の測定精度をさらに大幅に向上させ得る加速度計を提供することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、
前記第1のひずみゲージの前記グリッド長は、100μm〜400μmの範囲で設定することにより、上記効果に加え、微小な加速度を検出し得ると共に超小型の加速度計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る加速度計の主要部の構成を示すものであり、図1(a)は加速度計の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は加速度計の一部を構成するホイートストンブリッジ(以下、単に「ブリッジ」と称する場合がある)の回路構成を示す回路図である。
図2図1に示す加速度計の主要部の構成を示すものであり、図2(a)は、平面図であり、図2(b)は、左側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る加速度計の形状が3次元空間内で印加される加速度の方向で変形する様子を誇張して示した説明図であり、図3(a)は主感度方向であるX軸方向の加速度、図3(b)はY軸方向(左右方向)の加速度および図3(c)はZ軸方向(前後方向)の加速度が、それぞれ印加された時の、加速度計の変形状態を示す斜視図、平面図および左側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る加速度計の要部を示すもので、図4(a)は、起歪体全体を描いてなる左側面図であり、図4(b)はねその一部である起歪部の上半部を描いてなる部分拡大側面図である。
図5】固定側に設置した第1のひずみゲージのグリッド長を200μmに固定し、重り側に設置した第2のひずみゲージのグリッド長を200μm〜300μmの間で変えた場合における加速度計の定格出力と干渉出力との関係を示すグラフである。
図6】重り側に設置した第2のひずみグリッド長を200μmに固定し、固定部側に設置した第1のひずみゲージのグリッド長を100μm〜200μmの間で変えた場合における定格出力と干渉出力との関係を示すグラフである。
図7】本発明の一実施の形態に係る加速度計にX方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部の中心線〔図2(a)におけるラインA〕上のひずみ出力の特性を示すグラフである。
図8】本発明の一実施例の形態に係る加速度計にZ方向から1000Gの加速度が印加された場合すにおける起歪部の中心線〔図2(a)におけるラインA〕上のひずみ出力の特性を示すグラフである。
図9】本発明の他の実施の形態に係る加速度計にX方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部の中心線〔図2(a)におけるラインA〕上のひずみ出力の特性を示すグラフであり、図7のグラフとは起歪部に添着された第1のひずみゲージと第2のひずみゲージのグリッド長の長さが異なっている。
図10】本発明の他の実施の形態に係る加速度計にZ方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部の中心線〔図2(a)におけるラインA〕上のひずみ出力の特性を示すグラフであり、図8のグラフとは、起歪部に添着された第1のひずみゲージと第2のひずみゲージのグリッド長の長さが異なっている。
図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る加速度計において、Z方向から1000Gの加速度が印加された場合において、干渉度が0%を中心として、干渉度が+0.09%および−0.09%を達成し得る固定側のひずみゲージと重り側のひずみゲージのグリッド長の組み合わせ例を連続して示すグラフである。
図12】加速度計に主感度方向であるX軸方向に対し直交する前後方向であるZ軸方向に加速度が印加された場合におけるX軸方向成分に混入する原因を解析するための説明図で、図12(a)は、固定側ひずみゲージの設置位置と重り側ひずみゲージの設置位置との間に加わる質量の大きさが異なることによる干渉原因を説明する側面図、図12(b)は、固定側ひずみゲージと重り側ひずみゲージとの間に存在する質量maによりモーメントが発生することによる干渉原因を説明する側面図、図12(c)は、重り部の質量Maにより重り部が撓むことによりモーメントが発生し、そのモーメントによる干渉原因を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の加速度計の実施の形態について、順に、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る加速度計の主要部の概略構成を示すものであり、このうち、図1(a)は、加速度計の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、加速度計の一部を構成するホイートストンブリッジの回路構成を示す回路図である。図2は、図1(a)に示す加速度計の具体的構成を示すもので、図2(a)は、平面図、図2(b)は左側面図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る加速度計の形状が3次元空間内で印加される加速度の方向で変形する様子を示した説明図であり、このうち、図3(a)は、主感度方向であるX軸方向の加速度、図3(b)は、Y軸方向(左右方向)の加速度および図3(c)は、Z軸方向(前後方向)の加速度が、それぞれ印加された時の、加速度計の変形状態を誇張してそれぞれ示す斜視図、平面図および左側面図である。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る加速度計の上側の起歪部の構成を拡大して示す部分左側面図である。
【0019】
図1図2図3および図4において、2は、断面矩形ビーム状を呈する起歪体であり、この起歪体2の長手方向(図1図4における左右方向)における基端側(図1図4における左端側)を固定部3とし、中間に長手方向に直交する方向(図1図4において紙面に直交する方向)に貫通する矩形状のスリット5を形成して薄肉となして一対の起歪部4とし、先端側(図1図4において右端側)を重り部6とし、一対の起歪部4、4のうち一方(図5の上部)の平面部に、4つのひずみゲージG1、G2、G3、G4を、そのゲージ軸を長手方向に向けて添着して、加速度計1が構成されている。
この起歪体2のスリット5の中心線5aに対し、所定間隔(この例においては、0.6mm)を隔てて、起歪部4の内面側に断面半円弧部5bと5cを形成することで、中間に突出部5dを残して二重アーチ状の起歪部4を設けてある。
この加速度計1に作用する方向として、例えば、図3(a)において、重り部6が主感度方向に変位する上下方向をX軸方向とし、上記X軸方向に直交する左右方向に変位する方向をY軸方向とし、さらに、上記X軸方向およびY軸方向に共に直交する前後方向に変位する方向をZ軸方向とする。
【0020】
4つのひずみゲージG1〜G4のうち、図1(b)に示す、ホイートストンブリッジ回路(以下、「ブリッジ回路」と略称することがある)の一方の対辺に接続される一対の第1のひずみゲージとしてのひずみゲージG1とG3は、スリット5の中心線5a(図2図4参照)を境界として、且つラインAに対称に固定部3側に接着、スパッタリング、蒸着等の手段で添着されている。
一方、ブリッジ回路の一方の対辺に隣接する他方の対辺に接続される一対の第2のひずみゲージとしてのひずみゲージG2とG4は、スリット5の中心線を境として、重り部6側の対称位置で且つラインAにそれぞれ対称位置に同様に添着されている。
この第1の実施の形態に係る加速度計1は、第1のひずみゲージG1とG3と、第2のひずみゲージG2とG4とは、スリット5の中心線5aを境にして、同一の距離に設置されるが、第1のひずみゲージG1とG3のグリッドのグリッド長に対し、第2のひずみゲージG2とG4の方が所定長だけ長く設定してある。
但し、ブリッジ回路を形成するひずみゲージG1の抵抗値R1、ひずみゲージG2の抵抗値R2、ひずみゲージG3の抵抗値R3、ひずみゲージG4の抵抗値R4は、すべて等しく設定してある。
尚、本明細書において、グリッド長と称しているが、一般に、ゲージ長、ゲージ長さ、あるいはひずみゲージ長さ、等と称されてもおり、添付図面においては、そのように記載している場合もある。
【0021】
このひずみゲージG1のグリッドの一端は、配線パターンを介して、+側の入力端であるゲージタブ9Rに接続され、他端は、配線パターンを介して−側の出力端であるゲージタブ9Wに接続されている。
ひずみゲージG2のグリッドの一端は、配線パターンを介して−側の入力端であるゲージタブ9Bに接続され、他端は、配線パターンを介して−側の出力端であるゲージタブ9Wに接続されている。
ひずみゲージG3のグリッドの一端は、配線パターンを介して、−側の入力端であるゲージタブ9Bに接続され、他端は、配線パターンを介して、+側の出力端であるゲージタブ9Gに接続されている。
ひずみゲージG4のグリッドの一端は、配線パターンを介して+側の入力端であるゲージタブ9Rに接続され、他端は、配線パターンを介して+側の出力端であるゲージタブ9Gに接続されている。
このような構成をもって、図1(b)に示すようなブリッジ回路が形成されている。
即ち、ゲージタブ9Rに+のブリッジ電圧Einを印加し、ゲージタブ9Bに−のブリッジ電圧を印加すると、ブリッジ回路を構成するひずみゲージG1〜G4が加速度に基づくひずみを受けて、それぞれの抵抗値R1〜R4が変化し、その変化に基づく出力電圧Eoutが、グリッド9G(+端子)とグリッド9W(−端子)から、出力されることになる。
【0022】
ここで、第1のひずみゲージとしての一対のひずみゲージG1とG3は、スリット5の中心線5aから固定部3側の所定の距離に並列状にラインA〔図2(a)参照〕上に対称に設置されており、図3(a)に示すように、X軸方向に加速度を受けて重り部6が相対的に変位し、引張りひずみを受けると、共に、その抵抗値R1とR3は、増大することになる。
また、第2のひずみゲージとしての一対のひずみゲージG2とG4は、スリット5の中心線5aから重り部6側の対称位置に並列状に設置されており、図3(a)に示すようにX軸方向の加速度を受けて重り部6が相対的に変位し、圧縮ひずみをうけると、共にその抵抗値R2とR4は減小することになる。
この第1のひずみゲージG1とG3は、上述したように、ブリッジ回路の一方の対辺に回路接続されており、第2のひずみゲージG2とG4は、一方の対辺に隣接する他方の対辺に回路接続されているので、ブリッジ回路の出力端であるゲージタブ9Gと9Wの間からは、印加された加速度に対応した大きなひずみ出力が得られることになる。
【0023】
即ち、加速度がX軸方向(主感度方向)に印加されたときのブリッジ回路から出力されるひずみ出力をEout(X)とし、各ひずみゲージG1、G2、G3、G4の無負荷時の抵抗値をR1、R2、R3、R4とし、加速度が負荷されたときのそれぞれの抵抗値変化を、ΔR1、ΔR2、ΔR3、ΔR4としたときの加速度計1の出力Eout(X)は、下記(1)式で表せる。
Eout(X)=1/4(ΔR1/R1−ΔR2/R2+ΔR3/R3−ΔR4/R4)Ein ・・・(1)
また、このX軸方向に対して90度だけ回転したY軸方向(左右方向)については、図3(b)に示すように重り部6の重心に対してひずみゲージG1とG3およびひずみゲージR2とR4が互いに対称であり、その抵抗値変化ΔR1とΔR3およびΔR2とΔR4とがブリッジ回路上で相殺されるため、見掛けの加速度は検出されない。即ち、この場合のひずみ出力Eout(Y)は、下記の(2)式で示される。
Eout(Y)=1/4(ΔR1/R1−ΔR2/R2+(−ΔR1/R1)−(−ΔR2/R2))Ein=0(2)
さらに、X軸方向およびY軸方向に対して90度だけ回転したZ軸方向(図3(c))に加速度が印加された場合、図12(a)を用いて説明したように、そのひずみ出力Eout(Z)は、ひずみゲージR1とひずみゲージRが、重り部6の質量Maと起歪部4の質量maに対応する加速度を検出するため、起歪部4の重さ(より詳しくは、第1のひずみゲージG1、G3の設置位置から第2のひずみゲージG2、G4までの間の起歪部4の質量ma)に対応する加速度分に対応する抵抗値変化分αが見掛けの加速度として検出される。即ち、この場合のひずみ出力Eout(Z)は、下記の(3)式で示される。
【0024】
Eout(Z)=1/4(ΔR1/R1+α/R1−ΔR1/R1+ΔR1/R1+α/R1−ΔR1/R1))Ein
=1/4(2α/R1)Ein ・・・(3)
しかしながら、Z軸方向に加速度が印加された場合、図12(a)を用いて説明したように、上記(3)式は、質量Maと質量maが荷重成分として、作用した場合の干渉出力に対応するに過ぎない。
即ち、Z軸方向に加速度が印加された場合の干渉として、図12(b)に示すように、質量maによりモーメントが発生し、そのモーメントによるひずみ成分が干渉原因として存在するだけでなく、さらにまた、図12(c)に示すように、質量Maの重り部55によりモーメントが発生し、そのモーメントによるひずみ成分も干渉原因として混在する。
即ち、第1の実施の形態における加速度に対するひずみ出力として、図3(a)に示すように、X軸方向(主感度方向)に加速度が印加されたときの出力Eout(X)は、X軸方向に印加される加速度に対応した大きな出力が得られる。
また、図3(b)に示すような主感度方向に直交するY軸方向に加速度が印加されたときの主力Eout(Y)は、ブリッジ回路で相殺されて、出力は0となり、Y軸方向の見掛け加速度は、検出されないことになる。
【0025】
然しながら、図3(c)に示すように、主感度方向であるX軸方向に直交すると共に、Y軸方向にも直交するZ軸方向に加速度が印加されたときの出力Eout(Z)は、ブリッジ回路では、何らの対策も施されない限り、見掛け加速度として、検出され、これが加速度に対応するひずみ出力の誤差として混入し、検出精度を低下させることになる。
ここで、具体的な数値実施例1について説明する。
図2に示すように、起歪体2の全長(Z軸方向)を10mm、全高(X軸方向)を5mm、奥行(Y軸方向)を5mm、スリット5の幅を1.4mm(四隅の円弧半径を0.2mm)、起歪部4の板厚を0.2mm、固定部3の基端(左端)からスリット5の中心線5aまでの距離を6.5mmとし、起歪体2の材質をステンレス(SUS630−H900)とする。
このようなひずみゲージG1とG3およびG2とG4を、起歪部4のスリット5の中心線5aを境として、固定部3側および重り部6側に0.6mmずつ離れた目標位置に、それぞれ添着するものとし、この場合、スパッタゲージの目標位置からのずれ量を0とする。
【0026】
下記表1は、上記数値実施例において、固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長を200μmに固定し、重り部6側の第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長を10μmとびに300μmまで変化させた場合の加速度計であって、X方向に1000Gの加速度を印加させたときの定格出力(1/4・KEin×10−6ひずみ)と、Z方向に1000Gの加速度を印加させたときの干渉出力(1/4・KEin×10−6ひずみ)と、干渉度(%)と、第1のひずみゲージG1およびG3によって検出されるひずみ量ε1およびε3と、第2のひずみゲージG2およびG4によって検出されるひずみ量をε2およびε3の値を示すものである。
【0027】
【表1】
【0028】
この表1によって求められた値を基にして定格出力と干渉出力の関係を示したものが図5である。
この図5から分かることは、定格出力があまり低下せず、干渉出力が0となる設定条件として、第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長が200μmとして、第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長が245μmのときであり、干渉が完全に防止されている。
もっとも、干渉が0でなくても、例えば、固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3と、重り部6側の第2のひずみゲージG2、G4とが同じグリッド長(共に200μm)のときの干渉度が−0.20であるので、この干渉度の50%の干渉度でも実用上問題ない場合には、第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長は、230μm〜260μmの範囲のものを使用すれば、よいことになる。
また、第2の実施の形態として、重り部6側の第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長は、一定とし、固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長を変更調整する数値実施例2について説明する。
下記表2は、加速度計の重り部6側の第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長を一定とし、固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長を100μm〜200μmの範囲に亘って10μm毎に、X方向に1000Gの加速度を印加したときの定格出力(1/4・KEin×10−6ひずみ)と、Z方向に1000Gの加速度を印加したときの干渉出力(1/4・KEin×10−6ひずみ)と、干渉度(%)、第1のひずみゲージG1、G4の出力ひずみε1、ε3(×10ひずみ)の値の一覧を示すものである。
【0029】
【表2】
【0030】
この表2から分かることは、第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長が200μmとして、第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長が148μmのものを組合わせ使用したとき、干渉度が0%の加速度計を得ることができる、ということである。
図6は、上記表2のデータを基にして固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長を変えた場合の干渉出力と定格出力の関係を示すグラフである。
表2および図6からも分かるように、固定部3側のひずみゲージのグリッド長を120μm〜170μmに調整すれば、グリッド長が200μmのときと比べて、干渉出力を半減することができる。
このように、重り部6側のひずみゲージG2、G3のグリッド長が任意の長さの場合でも、固定部3側のひずみゲージG1、G3のグリッド長を変更調整することで、干渉出力を、上記のように無くすことができる。
次に、ひずみゲージのグリッド長を調整することによって、干渉出力を軽減乃至は除去し得ることの根拠を以下に考察する。
【0031】
図7は、本発明に係る加速度計にX方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部4のラインA〔図2(a)参照〕上のスリット5の中心線5aを基準点0として−0.7mm〜+0.7mmの範囲におけるひずみ分布を示すグラフである。
図8は、同加速度計にZ方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部4のラインA上のスリット5の中心線5aを基準点として、−0.7mm〜+0.7mmの範囲におけるひずみ分布を示すグラフである。
この図7および図8においては、固定部3側のグリッド長200μmの第1のひずみゲージG1、G3の中心が、基準位置から−0.3mmの部位に添着され、一方、重り部6側のグリッド長245μmの第2のひずみゲージG2、G4が基準位置から+0.3mmの部位に添着されている。これは、表1の計算結果により求められたグリッド長245μmを根拠としたものである。
この数値実施例に関しては、第1のひずみゲージG1、G3のひずみ出力ε1、ε3、第2のひずみゲージG2、G4のひずみ出力ε2、ε4の値およびX方向加速度時ひずみの値、即ちε1−ε2+ε3−ε4の値が下記の表3に記載されており、X方向加速度時には、高いひずみ、即ち、426.71×10−6ひずみが検出されていることが分かる。
【0032】
【表3】
【0033】
図8は、加速度計にZ方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部4のラインA上のスリット5の中心線5aを基準点として−0.7mm〜+0.7mmの範囲におけるひずみ分布を示すグラフである。
図8に示すように、Z方向に1000Gの加速度が印加された場合における第1のひずみゲージG1、G3のひずみε1、ε3、第2のひずみゲージG2、G4のひずみε2、ε4および合計ひずみε1−ε2+ε3−ε4の値が、表4に示す通りである。
【0034】
【表4】
【0035】
この表4から分かることは、合計ひずみε1−ε2+ε3−ε4の値が、−0.01と極めて小さい、干渉しか出力されていないことである。
これは、第2のひずみゲージG2、G4のグリッド長が245μmと第1のひずみゲージG1、G3のグリッド長200μmに対して、長いことから第1のひずみゲージG1、G3より長い領域のひずみが平均化されることによりZ方向の加速度成分が相殺されて干渉出力が殆ど出力されなくなったものである。
同様に、図9および図10は、加速度計にX方向およびZ方向から1000Gの加速度が印加された場合における起歪部4のラインA〔図2(a)参照〕上のスリット中心線5aを基準点(0点)として、−0.7mm〜+0.7mmの範囲におけるひずみ分布を示すグラフである。
この図9および図10においては、グリッド長148μm固定部3側の第1のひずみゲージG1、G3の中心が基準位置から−0.3mmの部位に添着され、一方、重り部6側のグリッド長200μmの第2のひずみゲージG2、G4が基準位置から0.3mmの部位に添着されている。
【0036】
これは、表2の計算結果により求められたグリッド長148μmのもの、即ち、重り部6側のひずみゲージG2、G4のグリッド長200μmより固定部3側のひずみゲージG1、G3のグリッド長を短く設定したものである。
この結果、X方向に1000Gの加速度が印加された場合のひずみ、即ち、総ひずみは、表5に示されるように、ε1−ε2+ε3−ε4=436.89と大きなひずみ出力が得られる。
【0037】
【表5】
【0038】
これに対し、Z方向に1000Gの加速度が印加された場合のZ方向加速時のひずみは、表6に示されるように、
ε1−ε2+ε3−ε4=0.00
となり干渉が0となる。
【0039】
【表6】
【0040】
これも固定部3側のひずみゲージG1、G3のグリッド長148μmと重り部6側のひずみゲージG2、G4のグリッド長200μmのひずみ検出が平均化され、且つ相殺されて干渉が消失されたものと考えられる。
ひずみゲージのグリッド長を100μm〜400μmの範囲につき、固定部3側と重り部6側のそれぞれのひずみゲージのグリッド長を調整して、干渉度が0%となる組合わせ例と、共にグリッド長が100μmのグリッド長の組み合わせ時における干渉度が−0.186%であったことから、この干渉度を半減化する干渉度−0.09%の場合と、干渉度0.09%の場合の組み合わせ例を、表7に示す。
【0041】
【表7】
【0042】
この表7の組み合わせ例をグラフ化したものが図11である。
図11は、横軸に固定部6側ひずみゲージのグリッド長(μm)をとり、縦軸に重り部6側のひずみゲージのグリッド長(μm)をとって、干渉度0%の線分を中心として、干渉度−0.09%の線分と、干渉度0.09%の線分を併せて表示してなるものである。
ここで、第1のひずみゲージのグリッド長をxとし、Z軸方向の干渉度を半減するための第2のひずみゲージのグリッド長の上限許容値をyとし、下限許容値をyとしたとき、前記第2のひずみゲージの前記グリッド長の許容範囲yは、次の条件式(1)、(2)、(3):
(1)y=0.0007x+0.5959x+120.02
(2)y=0.0005x+0.723x+61.218
(3)y<y<y
を満足すればよい。
このように、第1のひずみゲージのグリッド長と、第2のひずみゲージのグリッド長の組み合わせを設定することにより、干渉度を0%としたり、干渉度を半減化し得る加速度計を適切に提供することができる。
【0043】
尚、本実施例では、第1のひずみゲージのグリッド長xは、100μm〜400μmの範囲を例示したが、この範囲に限定されるものではなく、同様の根拠のもとに、それ以上またはそれ以下のグリッド長のものに適用可能である。
尚、本発明は、上述し且つ図示した実施の形態に何ら限定されるものではなく、種々に変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 加速度計
2 起歪体
3 固定部
4 起歪部
5 スリット
5a スリットの中心線
6 重り部
9R、9W、9B、9G ゲージタブ
5b、5c 半円弧部
5d 突出部
G1、G2、G3、G4 ゲージ
R1、R2、R3、R4 抵抗値
図1
図2
図3
図4
図6
図12
図5
図7
図8
図9
図10
図11