特許第5950480号(P5950480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5950480
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】押出射出成形機
(51)【国際特許分類】
   A21C 11/20 20060101AFI20160630BHJP
   A21C 3/04 20060101ALI20160630BHJP
   A21C 11/16 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A21C11/20 B
   A21C3/04
   A21C11/16 E
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-26168(P2015-26168)
(22)【出願日】2015年2月13日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正人
(72)【発明者】
【氏名】尾形 泰久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光晴
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−258266(JP,A)
【文献】 実公昭44−31673(JP,Y1)
【文献】 実公昭26−1778(JP,Y1)
【文献】 実公昭13−12476(JP,Y1)
【文献】 特許第3088263(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/20
A21C 3/04
A21C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を原材料として含む麺生地を麺体に成形する押出射出成形機であって、
螺旋羽根を有し、麺生地を搬送する一軸スクリューと、
複数の羽根を有し、前記一軸スクリューから搬送された麺生地を複数にせん断して送り出す多条スクリューと、
前記多条スクリューから送り出された麺生地を充填する麺生地充填空間と、
前記麺生地充填空間と連通する複数の麺体射出孔を有し、麺生地を前記複数の麺体射出孔から麺体に成形された状態で射出するダイスと、
を備え、
前記多条スクリューは、回転軸が前記一軸スクリューによって搬送される麺生地の送り方向の中心線と一致するように設けられ、
前記麺生地充填空間は、前記送り方向において、前記麺生地充填空間内の麺生地に所定圧力がかかる前記送り方向の長さを有することを特徴とする押出射出成形機。
【請求項2】
前記麺体充填空間は、その後半部分において、前記麺体射出孔の入り口の孔径に合わせるように、加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の押出射出成形機。
【請求項3】
前記多条スクリューの前記複数の羽根は、その周方向端部に刃部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の押出射出成形機。
【請求項4】
前記多条スクリューの条数は、前記一軸スクリューから前記多条スクリューへと麺生地が搬送される際、麺生地が前記一軸スクリューと前記多条スクリューとの間に滞留することなく搬送可能な条数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の押出射出成形機。
【請求項5】
前記一軸スクリューは、その後半部分において、前記螺旋羽根が設けられていない切り欠き部を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の押出射出成形機。
【請求項6】
麺生地を取り込んで貯蔵する貯蔵部が設けられ、前記貯蔵部に貯蔵された麺生地を前記一軸スクリューに送るチャンバと、
前記チャンバと接続され、前記一軸スクリュー、多条スクリュー、前記麺生地充填空間、および、前記ダイスを取り囲むケースと、
前記チャンバおよび前記ケース内を真空引きする真空ポンプと、
をさらに有し、
前記チャンバには、麺生地が貯蔵された前記貯蔵部よりも上部に、前記真空ポンプの吸気孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の押出射出成形機。
【請求項7】
前記麺生地充填空間には、前記多条スクリューの軸方向に、前記軸から延在するように配置されたシャフトが設けられ、
前記ケースの内径、前記シャフトの径、前記麺生地充填空間の送り方向の長さの比率が、29:12:20であることを特徴とする請求項6に記載の押出射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉を原料として含む麺生地に対して、せん断および混練を施した後、長細形状の麺体に成形する押出射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
バターなどの可塑性食品や、うどんやそば、あるいは、パスタなど小麦粉を原料として含む麺生地などの高粘性食品を混練およびせん断し、棒状に成形するための装置として、特許文献1に記載の押出射出成形機がある。この押出射出成形機は、装置内に取り込まれた上記食品を搬送するとともに、混練およびせん断する2軸スクリューと、2軸スクリューの後端に取り付けられ、食品を棒状に成形して押出す複数の射出孔を備えたダイスとを有している。
【0003】
2軸スクリューは、2本のスクリューが互いに噛みあった状態で配置されている。この2本のスクリューは、前半部分に、取り込まれた食品を搬送する搬送部、後半部分に、搬送部から搬送された食品を混練およびせん断する混練部を有している。
【0004】
搬送部において、2本のスクリューは、1条ネジ構造をなしている。2本のスクリューが異方向に回転することによって、搬送部に送られた食品は、相互の山(羽根)と谷(羽根と羽根との間の溝)とが噛み合わない空間部分に密封されるように押し込まれ、それらの回転にともない後半部分に設けられた混練部へと搬送される。
【0005】
混練部において、2本のスクリューは、3条ネジ構造をなしている。混練部は、その前半部分に、山(羽根)が食品を送る方向に捩じれたフォワード部分、後半部分に、山(羽根)が食品を戻す方向に捩じれたリバース部分が形成されている。搬送部から混練部に搬送された食品は、フォワード部分とリバース部分において、混練およびせん断される。さらに、リバース部分に搬送された食品の一部は、フォワード部分に再び戻され、繰り返し混練およびせん断が施される。以上により、食品は、ばらばらに寸断された状態でダイスへと搬送される。
【0006】
ダイスは、混練部のリバース部分と連通する複数の射出孔を有し、2軸スクリューの後端に取り付けられている。リバース部分からダイスへと搬送された食品は、後方から連続的に搬送される食品の圧力によって、複数の射出孔から棒状に成形された状態で押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3088263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、互いに回転する2軸スクリューから食品が押し出される際、食品に加わる圧力は、その回転中心から径方向内側よりも径方向外側の方が大きくなる。従って、特許文献1に記載の押出射出成形機のように、複数の射出孔が設けられたダイスが2軸スクリューの後端に取り付けられ、ダイスの径方向において2つ以上の射出孔が配設されている場合、食品は、その回転中心から径方向内側に設けられた射出孔よりも径方向外側に配設された射出孔から射出されやすくなる。つまり、ダイスの中心からの射出孔の距離によって、連続的に押し出される食品の長さにばらつきが生じる。
【0009】
また、搬送される麺生地の密度が比較的小さく、隙間が多く存在する場合、ダイスの周方向に対して複数配設された射出孔においても、その位置によって、連続的に押し出される食品の長さにばらつきが生じる。以上により、得られる食品は、その長さが異なる低品質なものとなる。
【0010】
また、上述したように、特許文献1に記載の押出射出成形機では、食品は、フォワード部分とリバース部分によって、混練およびせん断が施される。さらに、リバース部分によって、食品をフォワード部分に再び戻すことにより、混練およびせん断が繰り返し行われ、細かく寸断される。
【0011】
ここで、加工する食品が、特許文献1の実施例に記載のバターのように、固化した乳脂肪分が局所的に生じてしまうものの場合、細かく寸断して含有成分の均一化および組織の細分化を図ることにより、品質の安定化などにおいて大きな効果を得ることができる。
【0012】
しかしながら、うどんやそば、あるいは、パスタなど小麦粉を原料として含む麺生地の場合、特許文献1に記載の押出射出成形機によって、ばらばらに寸断された状態で押し固められ、麺体に成形されたものは、もちもち感が乏しく食感の悪い低品質な麺体となる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、高品質な麺体を得ることができる、押出射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明の押出射出成形機は、小麦粉を原材料として含む麺生地を麺体に成形する押出射出成形機であって、螺旋羽根を有し、麺生地を搬送する一軸スクリューと、複数の羽根を有し、前記一軸スクリューから搬送された麺生地を複数にせん断して送り出す多条スクリューと、前記多条スクリューから送り出された麺生地を充填する麺生地充填空間と、前記麺生地充填空間と連通する複数の麺体射出孔を有し、麺生地を前記複数の麺体射出孔から麺体に成形された状態で射出するダイスと、を備え、前記多条スクリューは、回転軸が前記一軸スクリューによって搬送される麺生地の送り方向の中心線と一致するように設けられ、前記麺生地充填空間は、前記送り方向において、前記麺生地充填空間内の麺生地に所定圧力がかかる前記送り方向の長さを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、麺生地充填空間における麺生地の送り方向の長さは、麺生地の送り方向において、麺生地充填空間内の麺生地に所定圧力がかかる長さに設定されている。従って、比較的高い粘性を有する麺生地が多条スクリューによって押し出されて、麺生地充填空間に比較的高い密度で充填されるので、後方から連続的に搬送される麺生地によって、その送り方向に対して均一に加圧される。すなわち、麺体射出孔から押し出される麺生地に対して、その送り方向に均一な圧力を付加することができるため、ダイスに設けられた麺体射出孔の位置によることなく、すべての麺体射出孔から連続的に押し出される麺体の長さを一定に保持することができる。以上により、本発明によれば、長さの等しい高品質な麺体を得ることができる。
【0016】
また、多条スクリューは、回転軸が一軸スクリューによって搬送される麺生地の送り方向の中心線と一致するように設けられている。従って、多条スクリューに押し込まれる際、麺生地は、多条スクリューに設けられた複数の羽根によって、その長さ方向に対して複数にせん断される。そして、複数にせん断された麺生地は、多条スクリューから麺生地充填空間に押し出される際、互いに捻じれ合い、再びまとまりながら、麺生地充填空間に充填されていく。従って、麺生地充填空間に充填された麺生地は、その長さ方向から見た断面が層状となる。これにより、麺体射出孔から射出される麺体も同様に、その長さ方向から見た断面が層状となる。以上により、本発明によれば、もちもち感のある高品質な麺体を得ることができる。
【0017】
ここで、麺生地に含まれるでんぷんは、局所的に密度が高い部分と低い部分とが混在する場合がある。このように、でんぷんの密度が一定でない場合、成形して得られた麺体は、旨味の少ない低品質なものとなってしまう。
【0018】
本発明によれば、一軸スクリューによって搬送された麺生地は、多条スクリューに押し込まれる際にせん断され、押し出された麺生地充填空間で再び混ぜ合わされる。これにより、麺生地に含まれるでんぷんを均等に分散させることができる。従って、本発明によれば、特許文献1に記載の押出射出成形機のように2軸スクリューを設けることなく、部品点数の少ない一軸スクリューによって、でんぷん密度が均一化された、旨味のある高品質な麺体を得ることができる。
【0019】
第2の発明の押出射出成形機は、前記第1の発明において、前記麺体充填空間は、その後半部分において、前記麺体射出孔の入り口の孔径に合わせるように、加工が施されていることを特徴とするものである。
【0020】
ここで、麺生地充填空間の後半部分に、上述したような加工が施されていない場合、麺生地を麺体射出孔にスムーズに搬送することができず、例えば、麺生地充填空間の角部などに麺生地が滞留するおそれがある。この場合、滞留した古い麺生地の一部が、その後に搬送される麺生地内に混入する、いわゆるコンタミネーションが生じ、得られる麺体の品質が低下するおそれがある。
【0021】
第2の発明では、麺体充填空間は、その後半部分において、麺体射出孔の入り口の孔径に合わせるように加工が施されている。従って、麺生地充填空間の後半部分に滞留することなく、搬送された麺生地を確実に麺体射出孔に送ることができる。これにより、コンタミネーションを防止し、得られる麺体の品質を安定化させることができる。
【0022】
第3の発明の押出射出成形機は、前記第1または第2の発明において、前記多条スクリューの前記複数の羽根は、その周方向端部に刃部が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
第3の発明では、多条スクリューの複数の羽根は、その周方向端部に刃部が形成されている。従って、多条スクリューに押し込まれる際、刃部によって麺生地を確実にせん断することができる。これにより、麺生地をせん断することができず、一軸スクリューと多条スクリューとの間に麺生地が滞留することを防止できる。また、麺生地を確実にせん断することによって、麺生地に含まれるでんぷんをより確実に分散させることができる。
【0024】
第4の発明の押出射出成形機は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記多条スクリューの条数は、前記一軸スクリューから前記多条スクリューへと麺生地が送られる際、麺生地が前記一軸スクリューと前記多条スクリューとの間に滞留することなく搬送可能な条数であることを特徴とするものである。
【0025】
ここで、多条スクリューの条数が多く、すなわち、その長さ方向に対して形成される羽根の枚数が多くなり、麺生地が通る隙間が狭く、その軸方向に対する羽根の傾斜角度が大きい場合、麺生地は送り方向に対してスムーズに搬送されづらくなる。そのため、一軸スクリューと多条スクリューとの間に麺生地が滞留するおそれがある。
【0026】
第4の発明では、多条スクリューの条数は、一軸スクリューから多条スクリューへと麺生地が送られる際、麺生地が一軸スクリューと多条スクリューとの間に滞留することなく搬送可能な条数である。これにより、一軸スクリューと多条スクリューとの間に滞留することなく、麺生地をスムーズに多条スクリューに搬送することができる。
【0027】
第5の発明の押出射出成形機は、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記一軸スクリューは、その後半部分において、前記螺旋羽根が設けられていない切り欠き部を有していることを特徴とするものである。
【0028】
第5の発明では、一軸スクリューは、その後半部分において、螺旋羽根が設けられていない切り欠き部を有している。従って、多条スクリューに押し込まれる前、一軸スクリューによって搬送された麺生地は、螺旋羽根と多条スクリューと切り欠き部とに囲まれた空間に充填される。つまり、多条スクリューに押し込まれる麺生地は、一度この空間に充填された麺生地となる。これにより、多条スクリューに対して、常に所定量の麺生地を均等に搬送させることができる。従って、多条スクリューから押し出される麺生地の量を一定に制御することができるため、麺体射出孔から射出される麺体の量を確実に制御することができる。
【0029】
第6の発明の押出射出成形機は、前記第1〜第5のいずれかの発明において、麺生地を取り込んで貯蔵する貯蔵部が設けられ、前記貯蔵部に貯蔵された麺生地を前記一軸スクリューに送るチャンバと、前記チャンバと接続され、前記一軸スクリュー、多条スクリュー、前記麺生地充填空間、および、前記ダイスを取り囲むケースと、前記チャンバおよび前記ケース内を真空引きする真空ポンプと、をさらに有し、前記チャンバには、麺生地が貯蔵された前記貯蔵部よりも上部に、前記真空ポンプの吸気孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
ここで、一般的に、押出射出成形機によって麺生地を麺体に成形する場合、真空ポンプを設け、ケースおよびチャンバ内を真空引きすることによって、取り込んだ麺生地を脱気する。しかしながら、従来の押出射出成形機では、ケースの側壁に、真空ポンプと接続する吸気孔が配設されていた。そのため、真空引き中、ケース内を搬送中の麺生地を誤って吸い込み、それが吸気孔に詰まることによって十分な真空引きを行うことができない、また、吸気孔内の清掃など維持管理の負担が増大するという問題があった。
【0031】
第6の発明では、麺生地を取り込んで貯蔵する貯蔵部が設けられ、貯蔵部に貯蔵された麺生地を一軸スクリューに送るチャンバと、チャンバと接続され、一軸スクリュー、多条スクリュー、麺生地充填空間、および、ダイスを取り囲むケースと、チャンバおよびケース内を真空引きする真空ポンプと、をさらに有し、チャンバには、麺生地が貯蔵された貯蔵部よりも上部に、真空ポンプの吸気孔が設けられている。従って、真空ポンプの吸気孔は、麺生地を貯蔵する貯蔵部よりも上部に設けられている。すなわち、吸気孔が麺生地よりも上部に位置するため、真空引きの際、吸気孔内に麺生地が吸い込まれることを防止できる。これにより、麺生地による吸気孔の詰まりを防止することができるため、真空引きを確実に行うことができる。また、吸気孔内の清掃など、装置の維持管理作業の負担を軽減することができる。
【0032】
第7の発明の押出射出成形機は、前記第7の発明において、前記麺生地充填空間には、前記多条スクリューの軸方向に、前記軸から延在するように配置されたシャフトが設けられ、前記ケースの内径、前記シャフトの径、前記麺生地充填空間の送り方向の長さの比率が、29:12:20であることを特徴とするものである。
【0033】
ここで、ケースの内径およびシャフトの径に対して、麺生地充填空間の麺生地の送り方向の長さが大きい場合、チャンバの貯蔵部から貯蔵した麺生地を出しきった後に、麺生地充填空間に残留する麺生地の量が多くなってしまう。この麺生地は破棄することになるため、麺生地充填空間が大きくなり残留する麺生地の量が多くなると、製品とならない麺生地が多く発生することになる。
【0034】
第7の発明では、麺生地充填空間には、多条スクリューの軸方向に、その軸から延在するように配置されたシャフトが設けられ、ケースの内径、シャフトの径、麺生地充填空間の送り方向の長さの比率が、29:12:20である。このように、ケースの内径、シャフトの径、麺生地充填空間の送り方向の長さの比率を29:12:20とすることによって、麺生地に対して均等な圧力をかけることができ、且つ、チャンバの貯蔵部から貯蔵した麺生地を出しきった後に、麺生地充填空間に残留する麺生地の量を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態に係る押出射出成形機の全体構成を示す内部側面図である。
図2図1の押出射出成形機の背面図である。
図3図1のA部の拡大図である。
図4】(a)は、図1図3の3条スクリューの正面図であって、(b)は、図1図3の3条スクリューの斜視図である。
図5図1図2の押出射出成形機によって得られた麺体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1に示すように、押出射出成形機100は、小麦粉を原料として含む麺生地5aに対して、せん断および混練を施した後、長細形状の麺体5bに成形するためのものである。押出射出成型機100は、チャンバ1と、真空ポンプ(不図示)と、ケース4と、一軸スクリュー10と、3条スクリュー20と、駆動機構6と、ダイス30などを備えている。なお、以下では、図1の紙面左側を前側、紙面右側を後側、紙面上側を上側、紙面下側を下側と定義して、適宜、「前」、「後」、「上」、「下」の方向語を使用して説明する。
【0038】
図1図2に示すように、チャンバ1は、麺生地5aを貯蔵し、一軸スクリュー10へと送るためのものである。チャンバ1は、例えば、略バレル状である。チャンバ1の上端には、麺生地5aを取り込むための麺生地取り込み口1aが設けられている。この麺生地取り込み口1aは、麺生地5aを取り込む際に開かれ、麺生地5aを取り込んだ後、密閉される。また、チャンバ1の側壁上端部には、真空ポンプ(不図示)と接続される吸気孔2が配設されている。この吸気孔2よりも下側には、麺生地5を貯蔵するための空間である貯蔵部3が設けられている。貯蔵部3には、取り込まれた麺生地5を、チャンバ1より下部に配置される一軸スクリュー10に積極的に送るための搬送機構(不図示)が設けられている。この搬送機構(不図示)は、一軸スクリュー10が配置される下方向に麺生地5aを搬送可能なものであれば特に限定されないが、例えば、貯蔵された麺生地5aを下方向に加圧することによって一軸スクリュー10に搬送する機構や、貯蔵された麺生地5を混練することによって下方に送る機構が適用される。チャンバ1は、その側壁下端がケース4に接合されている。
【0039】
図1に示すように、ケース4は、一軸スクリュー10および3条スクリュー20を挿設するためのものである。ケース4は、前後方向に延びる筒状をなしている。ケース4の側壁前端部の上側には、チャンバ1と接続するための接続孔4aが配設され、チャンバ1とケース4とが接合されている。ケース4には、一軸スクリュー10および3条スクリュー20が、前側から順に、一軸スクリュー10、3条スクリュー20と並ぶように挿設されている。また、ケース4の前端には、一軸スクリュー10と3条スクリュー20とを回転駆動させるモータ(不図示)が設けられた駆動機構6が取り付けられている。ケース4の後端には、麺生地5aを麺体5bとして射出するダイス30が取り付けられている。
【0040】
一軸スクリュー10は、麺生地5aを後方に搬送するためのものである。一軸スクリュー10は、その回転軸方向がケース4の長さ方向、すなわち、図1の前後方向と平行となるように、ケース4内に挿設されている。一軸スクリュー10は、駆動機構6に設けられたモータ(不図示)によって回転駆動される。麺生地5a搬送時、一軸スクリュー10は、押出射出装置100の前側から見て、時計回りに回転駆動される。また、一軸スクリュー10には、その軸本体11の外周面に螺旋状に植設された螺旋羽根12が設けられている。この螺旋羽根12は、一軸スクリュー10の前側よりも後側の方が、羽根12aのピッチが狭くなるように形成されている。また、一軸スクリュー10の螺旋羽根12および軸本体11の表面には、フッ素樹脂コーティングが施されている。また、一軸スクリュー10には、その後端部に、軸本体11に螺旋羽根12が植設されていない切り欠き部13が設けられている。螺旋羽根12と3条スクリュー20との間に設けられ、切り欠き部13とケース4によって囲まれた空間を、第1充填空間S1とする。図3に示すように、一軸スクリュー10の切り欠き部13は、その後端が3条スクリュー20の軸本体21と接続されている。
【0041】
3条スクリュー20は、麺生地5aをせん断し、後方へ搬送するためのものである。3条スクリュー20は、上述した一軸スクリュー10と同様に、その回転軸方向がケース4の長さ方向、すなわち、図1の前後方向と平行になるように、ケース4内に挿設されている。3条スクリュー20は、駆動装置6に設けられたモータ(不図示)によって回転駆動される。より具体的には、3条スクリュー20は、上述したように、その軸本体21が一軸スクリュー10の切り欠き部13の後端と接続されているため、一軸スクリュー10の回転に連動して回転駆動される。
【0042】
図3図4に示すように、3条スクリュー20には、軸本体21の外周面に植設された3枚の羽根(第1の羽根22、第2の羽根23、第3の羽根24)が設けられている。3枚の羽根22,23,24は、所定の厚みを有する略扇状である。図3に示すように、3枚の羽根22,23,24は、3条スクリュー10の軸方向と直交する方向に対して、それぞれ所定角度θ傾いた状態で植設されている。また、図4(a)に示すように、3枚の羽根22,23,24は、前方から見て、1枚の羽根の周方向両端部が、異なる2枚の羽根の周方向端部とそれぞれ前後で重なるように配置されている。より具体的には、図4(b)に示すように、第1の羽根22の周方向一端部22aには、その前側に第3の羽根24の周方向他端部24bが所定距離を保持して対向配置され、第1の羽根22の周方向他端部22bには、その後側に第2の羽根23の周方向一端部23aが所定距離を保持して対向配置され、第2の羽根23の周方向他端部23bには、その後側に第3の羽根24の周方向一端部24aが所定距離を保持して対向配置されている。以上により、第1の羽根22の周方向他端部22bと第2の羽根23の周方向一端部23aとの間の隙間には第1搬送通路P1が形成され、第1の羽根22の周方向一端部22aと第3の羽根24の周方向他端部24bとの間の隙間には第2搬送通路P2が形成され、第2の羽根23の周方向他端部23bと第3の羽根24の周方向一端部24aとの間の隙間には第3搬送通路P3が形成されている。また、3枚の羽根22,23,24には、周方向他端部22b,23b,24bの前側に、第1刃部22b1、第2刃部23b1,第3刃部24b1がそれぞれ形成されている。また、3条スクリュー20の3枚の羽根22,23,24および軸本体21の表面には、フッ素樹脂コーティングが施されている。
【0043】
図3に示すように、3条スクリュー20の軸本体21は、シャフト7と接続されている。シャフト7は、3条スクリュー20の軸本体21の後端から、前後方向に延在するように設けられている。シャフト7の表面には、フッ素樹脂コーティングが施されている。3条スクリュー20と、ケース4の後端に取り付けられるダイス30との間に設けられ、シャフト7とケース4によって囲まれた空間を、第2充填空間S2とする。第2充填空間S2の前後方向の長さdは、ケース4の内径およびシャフト7の径に対する長さとして、実験的に求められる。なお、この実験結果についての詳細な説明は、後述する。
【0044】
第2充填空間S2は、その後半部分が、後述する麺体射出孔30aの入り口に滑らかに接続されるように、ケース4の内壁とシャフト7にそれぞれテーパー加工が施されている(テーパー部4a,7a)。より具体的には、ケース4は、後端に近づくにつれて内径が小さくなるように加工され(テーパー部4a)、シャフト7は、後端に近づくにつれて径が大きくなるように加工されている(テーパー部7a)。
【0045】
ダイス30は、麺生地5aを麺体5bとして射出するためのものである。図1図3に示すように、ダイス30は、ケース4の後端に取り付けられている。また、図2に示すように、ダイス30には、その周方向に等間隔に配置された4つの麺体射出孔30aが設けられている。4つの麺体射出孔30aは、上述した第2充填空間S2と連通している。
【0046】
次に、上述した押出射出成形機100を用いて、麺生地5aを麺体5bに成形する過程について詳細に説明する。
【0047】
図1に示すように、まず、麺生地取り込み口1aから麺生地5aを取り込み、チャンバ1内の貯蔵部3に貯蔵する。麺生地5aの取り込み完了後、麺生地取り込み口1aを閉じ、さらに、射出孔封止部材(不図示)によってダイス20の麺体射出孔30aを封止することにより、装置100内を完全に密閉する。この状態で、吸気孔2に接続された真空ポンプ(不図示)によって、チャンバ1およびケース4内を真空引きすることにより、麺生地5aを脱気する。次に、貯蔵部3に設けられた搬送機構(不図示)を駆動し、麺生地5aを一軸スクリュー10の前方部分に搬送する。
【0048】
そして、駆動機構6を駆動し、一軸スクリュー10および3条スクリュー20を回転駆動させる。これにより、一軸スクリュー10の前方部分に送られた麺生地5aは、螺旋羽根12の羽根12aと羽根12aとの間に押し込まれ、前方から見て、一軸スクリュー10が時計周りに回転することにより、羽根12aと羽根12aとの間に軸本体11とケース4に囲まれて密閉された状態で、後方に設けられた第1充填空間S1へと搬送される。第1充填空間S1に搬送された麺生地5aは、第1充填空間S1に充填される。そして、一軸スクリュー10によって後方から連続的に送られる麺生地5aの圧力により、3条スクリュー20に押し込まれていく。このとき、麺生地5aは、3条スクリュー20の3枚の羽根22,23,24の周方向他端部22b,23b,24bにそれぞれ形成された刃部22b1,23b1,24b1によって、その長さ方向に対して3つにせん断され、羽根と羽根との間の隙間である第1搬送通路P1、第2搬送通路P2、第3搬送経路P3に分かれて押し込まれていく。そして、3条スクリュー20によって後方に搬送されて第2充填空間S2に押し出される際、互いに捻じれ合い、再びまとまりながら、第2充填空間S2に充填されていく。その後、3条スクリュー20によって後方から連続的に送られる麺生地5aの圧力により、4つの麺体射出孔30aから、その孔径に等しい太さの麺体5bとなって押し出される。
【0049】
4つの麺体射出孔30aから麺体5bが射出されたことを確認し、搬送機構(不図示)および駆動機構6の駆動を停止させ、射出孔封止部材(不図示)を取り外す。そして、搬送機構(不図示)および駆動機構6を再駆動し、4つの麺体射出孔30bから連続的に麺体5bを射出する。
【0050】
(第2充填空間S2の前後方向の長さdの差異による影響評価)
次に、ケース4の内径が145mm、シャフトの径が60mmである押出射出成形機100において、第2充填空間S2の前後方向の長さdを変更したときの影響評価について、詳細に説明する。
i)第2充填空間S2の前後方向の長さdが、80mmの場合
ダイス30に設けられた4つの麺体射出孔30aから連続的に射出される麺体5bの長さにばらつきが生じた。
ii)第2充填空間S2の前後方向の長さdが、100mmの場合
ダイス30に設けられた4つの麺体射出孔30aから連続的に射出される麺体5bの長さが均一になった。
【0051】
以上より、押出射出成形機100は、ケース4の内径が145mm、シャフトの径が60mmのとき、第2充填空間S2の前後方向の長さdが100mm以上であれば、第2充填空間S2に充填されたの麺生地5aに対して、前後方向に均一な圧力を付加することが可能となり、ダイス30に設けられた複数の麺体射出孔30aから連続的に射出される麺体5bの長さが均一になることが分かる。
【0052】
ここで、上述したように、第2充填空間S2の前後方向の長さdが大きい場合、チャンバ1の貯蔵部3から貯蔵した麺生地5aを出しきった後に、第2充填空間S2に残留する麺生地5aの量が多くなってしまう。この麺生地5aは破棄することになるため、第2充填空間S2が大きくなり残留する麺生地5aの量が多くなると、製品とならない麺生地5aが多く発生することになる。以上により、第2充填空間S2の前後方向の長さdは、可能な限り小さいことが好ましい。従って、ケース4の内径が145mm、シャフト7の径が60mmの場合、第2充填空間S2の前後方向の長さdは、100mmであることが最も好ましいことが分かる。
【0053】
さらに、ケース4の内径とシャフト7の径の比率を保持しつつ、その大きさが変化した場合であっても、ケース4の内径、シャフト7の径、第2充填空間S2の前後方向の長さdの比率が、上述したケース4の内径とシャフトの径と第2充填空間S2の前後方向の長さdの比率、すなわち、29:12:20であれば、第2充填空間S2に充填された麺生地5aに対して、前後方向に均等な圧力をかけることができ、且つ、チャンバ1の貯蔵部3に貯蔵した麺生地5aを出しきった後に、第2充填空間S2に残留する麺生地5aの量を最小限に抑えることができることが分かった。
【0054】
(作用・効果)
本実施形態では、第2充填空間S2における麺生地5aの前後方向の長さdは、麺生地5aの送り方向、すなわち、図1の前後方向において、第2充填空間S2内の麺生地5aに所定圧力が付加される長さに設定されている。比較的高い粘性を有する麺生地5aが3条スクリュー20によって押し出されて、第2充填空間S2に比較的高い密度で充填されるので、後方から連続的に搬送される麺生地5aによって、第2充填空間S2内の麺生地5aを前後方向に対して均一に加圧することができる。すなわち、4つの麺体射出孔30aから押し出される麺生地5aに対して、前後方向に均一な圧力を付加することができる。これにより、ダイス30に設けられた麺体射出孔30aの位置によることなく、連続的に押し出される麺体5bの長さを一定に保持することができる。以上により、長さの等しい高品質な麺体5bを得ることができる。
【0055】
また、図1図3に示すように、3条スクリュー20は、回転軸が麺生地5aの送り方向、すなわち、図1の前後方向と一致するように設けられている。従って、一軸スクリュー10によって後方に搬送された麺生地5aは、図4に示すように、第1の羽根22の周方向他端と、第2の羽根23の周方向他端と、第3の羽根24の周方向他端によって3つにせん断され、第1搬送通路P1、第2搬送通路P2、第3搬送通路P3にそれぞれ分かれて押し込まれていく。そして、3条スクリュー20によって後方に送られた3つの麺生地5aは、押し出される第2充填空間S2で再び混ぜ合わされる。これにより、3条スクリュー20および第2充填空間S2を設けることなく、一軸スクリュー10によって搬送された麺生地5aをそのまま押出す場合に比べて、麺生地5aに含まれるでんぷんを均等に分散させることができる。以上により、でんぷんの密度が均一化された、旨味のある高品質な麺体5bを得ることができる。
【0056】
また、3条スクリュー20に押し込まれる際、麺生地5aは、その長さ方向に対して3つにせん断される。そして、3つにせん断された麺生地5aは、3条スクリュー20から第2充填空間S2に押し出される際、互いに捻じれ合い、再びまとまりながら、第2充填空間S2に充填される。これにより、第2充填空間S2に充填された麺生地5aは、その長さ方向から見た断面が層状となる。従って、図5に示すように、麺体射出孔30aから射出される麺体5bも同様に、その長さ方向から見た断面が層状となる。以上により、もちもち感のある高品質な麺体5bを得ることができる。
【0057】
また、図3に示すように、第2充填空間S2では、その後半部分が麺体射出孔30aの入り口に滑らかに接続されるように、ケース4の内壁とシャフト7にそれぞれテーパー加工が施されている(テーパー部4a,7a)。より具体的には、ケース4を、後端に近づくにつれて内径が小さくなるように加工し(テーパー部4a)、シャフト7を、後端に近づくにつれて径が大きくなるように加工している(テーパー部7a)。これにより、第2充填空間S2を、ダイス30に設けられた麺体射出孔30aの入り口と滑らかに接続することができる。従って、第2充填空間S2に滞留することなく、麺生地5aを確実に麺体射出孔30aに送ることができる。これにより、コンタミネーションを防ぐことができ、生成される麺体5bの品質を安定化させることができる。
【0058】
また、図4(b)に示すように、3枚の羽根22,23,24の周方向他端部22b,23b,24bには、その前側に第1刃部22b1、第2刃部23b1、第3刃部24b1がそれぞれ形成されている。従って、麺生地5aを第1充填空間S1から3条スクリュー20に押し込む際、第1刃部22b1、第2刃部23b1および第3刃部24b1によって、麺生地5aを確実にせん断することができる。これにより、麺生地5aに含まれるでんぷんをより確実に分散させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、図1図3図4に示すように、一軸スクリュー20と第2充填空間S2との間に配置する多条スクリューとして、3条スクリュー20を採用している。これによれば、3枚の羽根22,23,24によって構成される通路の数は3本であり、それら第1搬送通路P1、第2搬送通路P2および第3搬送通路P3の幅は、麺生地5が通るために十分な大きさである。また、3枚の羽根22,23,24は、麺生地5aが搬送される方向である前後方向に対する傾斜角度が小さい。従って、第1充填空間S1で麺生地5が滞留することを防止し、麺生地5aをスムーズに3条スクリュー20に搬送することができる。
【0060】
また、図1図3に示すように、一軸スクリュー20は、その後半部分において、螺旋羽根12が設けられていない切り欠き部13を有している。従って、3条スクリュー20に押し込まれる前、一軸スクリュー20によって搬送された麺生地5aは、螺旋羽根12と3条スクリュー30との間であって、切り欠き部13とケース4に囲まれた空間である、第1充填空間S1に充填される。つまり、3条スクリュー30に押し込まれる麺生地5aは、第1充填空間S1に充填された麺生地5aとなる。これにより、3条スクリュー30に対して、常に所定量の麺生地5aを均等に搬送させることができる。従って、3条スクリュー30の第1搬送通路P1、第2搬送通路P2および第3搬送通路P3からそれぞれ押し出される麺生地5aの量を一定に制御することができるため、麺体射出孔30aから射出される麺体5bの量を確実に制御することができる。
【0061】
また、真空ポンプ(不図示)の吸気孔2は、麺生地5aを貯蔵する貯蔵部3よりも上部に設けられている。すなわち、麺生地5aよりも吸気孔2が上部に設けられているため、真空引きの際、誤って吸気孔2内に麺生地5aが吸い込まれることを防止できる。これにより、麺生地5aによる吸気孔2の詰まりを防止することができるため、真空引きを確実に行うことができる。また、装置100の清掃など、維持管理作業の負担を軽減することができる。
【0062】
また、第2充填空間S2には、3条スクリュー20の軸方向に延在するようにシャフト7が配設され、ケース4の内径とシャフト7の径と第2充填空間S2の前後方向の長さdの比率が、29:12:20である。上述した実験結果により、この比率によれば、麺生地5aに対して均等な圧力をかけることができ、且つ、チャンバ1の貯蔵部3に貯蔵した麺生地5aを出しきった後に、第2充填空間S2に残留する麺生地5aの量を最小限に抑えることができる。
【0063】
また、図1に示すように、一軸スクリュー10に設けられた螺旋羽根12は、一軸スクリュー10の前側よりも後側の方が、羽根12aのピッチが狭くなるように形成されている。これにより、チャンバ1の貯蔵部3から送られる麺生地5を、一軸スクリュー10により効率的に搬送することができる。
【0064】
また、一軸スクリュー10、3条スクリュー20およびシャフト7の表面には、フッ素樹脂コーティングが施されている。従って、一軸スクリュー10の螺旋羽根12および軸本体11の表面、3条スクリュー20の3枚の羽根22,23,24および軸本体21の表面の滑りを良くすることができる。これにより、搬送される麺生地5aが一軸スクリュー10、3条スクリュー20およびシャフト7の表面に付着して滞留することを防止できるため、麺生地5aをスムーズに搬送することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0066】
本実施形態では、多条スクリューとして、3枚の羽根22,23,24が設けられた3条スクリュー20を採用したが、多条スクリューの条数は、麺生地5aが第1充填空間S1に滞留することなく搬送可能な条数であれば、この限りではない。例えば、加工が施される麺生地5aの粘性が高い場合、より条数の小さい2条スクリューを適用しても構わない。また、加工が施される麺生地5aの粘性が低い場合、より条数の大きい4条スクリューなどを適用しても構わない。
【0067】
また、本実施形態では、吸気孔2は、チャンバ1の側壁上端部に設けられていると記載したが、吸気孔2が設けられる位置は、この限りではない。吸気孔2は、麺生地5aが貯蔵される貯蔵部3よりも上部、すなわち、貯蔵される麺生地5aの位置よりも上部に設けられていれば、チャンバ1側壁のいずれの場所に設けられていても構わない。
【0068】
また、本実施形態では、第2充填空間S2では、図3に示すように、その後半部分が、後述する麺体射出孔30aの入り口にに滑らかに接続されるように、ケース4とシャフト7にそれぞれテーパー加工が施されている(テーパー部4a,7a)と記載したが、ケース4およびシャフト7に施される加工は、この限りではない。例えば、ケース4の後端に取り付けられるダイスが、その径方向に2つ以上の麺体射出孔が設けられたものの場合、第2充填空間S2とそれらを連通させるために、シャフト7の後半部分を細く加工することにより径を小さくし、ダイスの最も内側に設けられた麺体射出孔の入り口と滑らかに接続されるように加工しても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1:チャンバ
2:吸気孔
4:ケース
5a:麺生地
5b:麺体
10:一軸スクリュー
20:3条スクリュー
30:ダイス
30a:麺体射出孔
100:押出射出成形機
S2:第2充填空間
【要約】
【課題】高品質な麺体を得ることができる、押出射出成形機を提供すること。
【解決手段】小麦粉を原材料として含む麺生地を麺体に成形する押出射出成形機は、螺旋羽根を有し、麺生地を搬送する一軸スクリューと、複数の羽根を有し、一軸スクリューから搬送された麺生地を複数にせん断して送り出す多条スクリューと、多条スクリューから送り出された麺生地を充填する麺生地充填空間と、麺生地充填空間と連通する複数の麺体射出孔を有し、麺生地を複数の麺体射出孔から麺体に成形された状態で射出するダイスと、を備え、多条スクリューは、回転軸が一軸スクリューによって搬送される麺生地の送り方向の中心線と一致するように設けられ、麺生地充填空間は、麺生地の送り方向において、麺生地充填空間内の麺生地に所定圧力がかかる麺生地の送り方向の長さを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5