【実施例】
【0042】
以下に本発明の代表的な試験例と実施例を示し、詳細に説明する。
【0043】
試験例1
マウスを用いた運動負荷時の作業効率におけるセージ葉抽出物の抗疲労効果の評価
(生薬抽出物の調製)
セージの葉の抽出物の肉体疲労に対する効果の評価を下記の通り行った。
セージ葉抽出物としては、次の工程により製造された抽出物を用いた。セージ葉に精製水を加え、加熱抽出後、浸出液を濾過した。濾液を加熱濃縮し、得られた濃縮抽出物にモルトデキストリン加え、スプレードライ法により乾燥粉末とした。得られたセージ葉抽出物の乾燥粉末1重量部は、乾燥セージ葉5.4重量部に相当しており(原生薬対比5.5〜6.7)、ロズマリン酸を4.33%含有していた。
また、比較素材として、運動持久力を向上させる効果が知られているエゾウコギ抽出物及びイワベンケイ抽出物を選定した。
エゾウコギ抽出物は、次の工程により製造された抽出物を用いた。エゾウコギに含水アルコール(30%エタノール)を加え、加熱抽出後、浸出液を濾過した。濾液を加熱濃縮し、得られた濃縮抽出物にモルトデキストリン加え、スプレードライ法により乾燥粉末とした。得られたエゾウコギ抽出物の乾燥粉末1重量部は、乾燥エゾウコギ約16重量部に相当しており(原生薬対比15.0〜18.0)、エレウテロシドB及びEの合計として 1.6%含有していた。
イワベンケイ抽出物は、次の工程により製造された抽出物を用いた。イワベンケイに含水アルコール(70%エタノール)を加え、加熱抽出後、浸出液を濾過した。濾液を加熱濃縮し、得られた濃縮抽出物にモルトデキストリン加え、スプレードライ法により乾燥粉末とした。得られたイワベンケイ抽出物の乾燥粉末1重量部は、乾燥イワベンケイ約2重量部に相当しており(原生薬対比2〜4)、ロザビン類を5.39%含有し、サリドロシドを1.42%含有していた。
【0044】
(抗疲労効果の測定)
抗疲労効果は、マウスを用いた限界遊泳試験により評価し、限界遊泳の繰り返し負荷に伴って短縮する限界遊泳時間を延長させる作用により判定した。実験には、8週齢の雄性 BALB/c Cr Slc マウス(日本エスエルシー(株))(32匹)を用いた。
限界遊泳試験は、限界遊泳の訓練(5回)、群分け、限界遊泳の負荷(2回)、及び抗疲労効果の評価(3回)より構成した。限界遊泳試験には、京大石原改良式運動量測定装置(流水型遊泳装置、(有)アニテック製)を用いた。運動量測定装置には水温34℃の水を注ぎ入れ、吐出水量12L/分にて遊泳させ、5分ごとに水量を1L/分の割合で増加させた。限界遊泳時間とは、疲労困憊により遊泳困難となった時点までの遊泳時間とした。限界遊泳後のマウスは、タオル等を用い、ストレスを与えないよう留意して体毛より水分を簡易的に除去した。限界遊泳の訓練(5回)は、1日間の休息日を挟んで行った。
群分けは表1に従い、各群の訓練時5回目の限界遊泳時間の平均に差がないように群分けした(4群、各群8匹)。
【0045】
【表1】
群分け後、セージ葉抽出物及び比較素材は15日間投与した。投与物質の投与は、0.1w/v% ポリソルベート80注射用水で調整した薬液を、体重1kgあたり10mlの容量で経口にて行った。セージ葉抽出物の体重1kgあたり投与用量は、ヒトにおいて胃腸障害にたいする効果が報告されている量又はヒト1日あたりの推奨量の三分の一量の生薬に相当する抽出物量とした。エゾウコギ抽出物及びイワベンケイ抽出物の体重1kgあたり投与用量は、ヒトにおいて運動機能に対する効果が報告されている量又はヒト1日あたりの推奨量の三分の一量の生薬に相当する抽出物量とした。
【0046】
投与期間中における限界遊泳の負荷(2回)は、投与開始の6日目及び9日目に、投与1時間後に行った。
抗疲労効果の評価(3回)は、投与の12日目に1回、15日目に2回行った。投与12日目における抗疲労効果の評価は、投与1時間後に行った。投与15日目における抗疲労効果の評価は、投与直前及び投与30分後に行った。
【0047】
次に、セージの葉の抽出物の肉体疲労に対する効果の評価結果を示す。
(1)投与12日目における抗疲労効果の評価
表2に、投与12日目(抗疲労効果の評価1回目)の限界遊泳時間の測定結果を示す。
【0048】
【表2】
溶媒群の投与12日目の限界遊泳時間は、繰り返し身体負荷に伴い、投与開始前(訓練時5回目)と比較して短縮していた。これより、投与12日目の溶媒群は疲労の状態であることが認められた。
【0049】
これに対して、セージ葉抽出物群、エゾウコギ抽出物及びイワベンケイ抽出物群の投与12日目の限界遊泳時間は、溶媒群の投与12日目の限界遊泳時間と比較して延長していた。特に、セージ葉抽出物群の限界遊泳時間の延長は著しく、投与開始前と比較しても延長していた。
【0050】
この結果は、セージ葉抽出物が、数日間の繰り返し運動負荷による運動機能の低下を改善し、抗疲労効果を有していることを示している。
【0051】
(2)投与15日目における抗疲労効果の評価
表3に、投与15日目(抗疲労効果の評価2及び3回目)の限界遊泳時間の測定結果を示す。
【0052】
【表3】
投与15日目における溶媒群の繰り返し2回目の限界遊泳時間は、1回目と比較して著しく短縮していた。これより、投与15日目の溶媒群の動物は疲労し易く、疲労が蓄積し易い状態であることが認められた。
【0053】
これに対して、セージ葉抽出物群、エゾウコギ抽出物及びイワベンケイ抽出物群の繰り返し2回目の限界遊泳時間は、溶媒群の繰り返し2回目の限界遊泳時間と比較して延長していた。特に、セージ葉抽出物群の限界遊泳時間の回復は著しく、有意な効果であった。
【0054】
この結果は、セージ葉抽出物が、短時間の繰り返し運動負荷による運動機能の低下を改善し、抗疲労効果を有していることを示している。
【0055】
試験例2
マウスの筋グリコーゲン量におけるセージ葉抽出物の抗疲労効果の評価
測定には、試験例1のマウス(4群、32匹)より採取した後肢骨格筋(ヒフク筋及びヒラメ筋)を用いた。また、運動を負荷しない健常対照として、同週齢の雄性 BALB/c Cr Slc マウス(日本エスエルシー(株))(8匹)をあわせて用いた。
骨格筋の採取は、試験例1を実施した翌日に約4時間絶食させた後に、深麻酔下で行った。骨格筋中のグリコーゲン量は、Glycogen Assay Kit(和光純薬工業(株))を用いて測定した。
【0056】
表4に、抗疲労効果の最終評価の翌日における筋グリコーゲン量の測定結果を示す。
【0057】
【表4】
溶媒群のグリコーゲン量は、運動負荷していない健常対照群のグリコーゲン量と比較して半減しており、回復していなかった。これより、筋グリコーゲン量の低下は、運動機能の低下の一因であることが認められた。
【0058】
これに対して、セージ葉抽出物群、エゾウコギ抽出物及びイワベンケイ抽出物群の筋グリコーゲン量は、溶媒群と比較して増加していた。特に、セージ葉抽出物群に強い増加作用が認められた。
【0059】
この結果は、セージ葉抽出物が骨格筋の機能維持または機能回復に有用であることを示している。
【0060】
以上の試験例より、セージ葉抽出物は、身体に負荷を与える作業に伴って作業効率の低下している状態において抗疲労作用を示し、疲労からの回復を早め、さらには疲労の蓄積を予防する効果を有していることが明らかとなった。