(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950592
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】クローズドブリーザシステム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20160630BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20160630BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
F01M13/04 C
F01M13/00 G
F02M35/10 311Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-20411(P2012-20411)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2013-160073(P2013-160073A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 俊克
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−267320(JP,A)
【文献】
特開2006−063884(JP,A)
【文献】
特開2007−332873(JP,A)
【文献】
特開2010−048126(JP,A)
【文献】
特開2010−059918(JP,A)
【文献】
特開2007−092592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
F01M 13/00
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから抜き出したブローバイガスをベンチレータを介しオイルミストを分離回収して吸気管に戻すようにしたクローズドブリーザシステムにおいて、吸気管の中途部に該中途部を全周に亘り取り囲むように覆う環状のチャンバを設け、該チャンバに対しベンチレータからブローバイガスを導くガス戻し管を接続すると共に、前記吸気管の中途部に吸気管を分断するように前記チャンバの内部空間と吸気管の内部流路とを環状に連通する連通部を形成したことを特徴とするクローズドブリーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズドブリーザシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮行程と爆発行程においてピストンリングの間隙よりクランクケースへ漏れ出るブローバイガスは、クランクケース内及び該クランクケースと連通しているシリンダヘッドカバー内に充満してくるため、これらの内部から外部に抜き出す必要があるが、クランクケース内ではクランク軸及びコネクティングロッド等が高速で動いており、クランクケースと連通するシリンダヘッドカバー内においてもロッカアーム及びバルブ等が作動しているため、クランクケースやシリンダヘッドカバーの内部はオイルミストが充満した状態にある。
【0003】
このため、ブローバイガスをそのまま大気放出してしまうと、該ブローバイガスに混合しているオイルミストも外部へ排出されてしまう虞れがあるため、
図2に示す如く、ブローバイガス1中のオイルミストを分離回収するための濾網又はラビリンス構造を内蔵したベンチレータ2(CCV:Closed Crankcase Ventilator)を設け、エンジン3のシリンダヘッドカバー4からガス抜出管5を介して抜き出したブローバイガス1を前記ベンチレータ2を通すことによりオイルミストを分離回収してからガス戻し管6を介して吸気管7に戻し、前記ベンチレータ2で回収したオイル8をオイル回収管9を介し図示しないオイルパンへと戻すようにしている。
【0004】
尚、
図2中における10はエアクリーナ、11はターボチャージャ、11aはタービン、11bはコンプレッサ、12はインタークーラ、13は吸気、14は排気ガスを夫々示している。
【0005】
一般的に、前述の如きブローバイガス1をクローズドサーキットで処理するシステムはクローズドブリーザシステムと称されているが、この種のクローズドブリーザシステムに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−278523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、斯かる従来のクローズドブリーザシステムにおいては、
図3に拡大して示す如く、ガス戻し管6の吸気管7に対する戻し口6aが吸気13により直接冷やされる構造となっているため、極低温下における長時間のアイドル運転時やエンジンルーム内の温度が上がらない低速走行運転時等において、ブローバイガス1中に含まれる水分が前記戻し口6aで結露し、その結露水がそのまま凍結することで前記戻し口6aが閉塞してしまうことがあり、このような場合にクランクケース内の圧力が上昇して油漏れを誘発する虞れがあった。
【0008】
また、ガス戻し管6の吸気管7に対する戻し口6aに電熱ヒータを設置して加熱することも提案されているが、このような電熱ヒータの設置は、コストの大幅な増加を招いてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ガス戻し管の吸気管に対する戻し口でブローバイガス中の水分が結露して凍結することにより生じる閉塞をコストの大幅な増加を招くことなく確実に防止し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンから抜き出したブローバイガスをベンチレータを介しオイルミストを分離回収して吸気管に戻すようにしたクローズドブリーザシステムにおいて、吸気管の中途部に該中途部を
全周に亘り取り囲むように覆う
環状のチャンバを設け、該チャンバに対しベンチレータからブローバイガスを導くガス戻し管を接続すると共に、前記吸気管の中途部に
吸気管を分断するように前記チャンバの内部空間と吸気管の内部流路とを
環状に連通する連通部を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、ガス戻し管の戻し口がチャンバを介して間接的に吸気管と接続されることになり、ガス戻し管の戻し口が吸気の流れに直接的に晒されなくなるため、極低温下における長時間のアイドル運転時やエンジンルーム内の温度が上がらない低速走行運転時等においても、ガス戻し管の戻し口でブローバイガス中の水分が結露して凍結してしまうような事態が起こらなくなる。
【0012】
また、このようにガス戻し管の戻し口での凍結を回避するにあたり、電熱ヒータの如き高コストの付帯設備を必要とすることがなく、ガス戻し管の戻し口をチャンバを介し間接的に吸気管と接続するという構造的な工夫だけで済むため、コストの大幅な増加を招くことなく低コストで実施することが可能となる。
【0013】
尚、連通部でブローバイガス中の水分が結露することは起こり得るが、連通部の開口面積は、チャンバにより覆われた範囲内でいくらでも大きく拡張することが可能であり、連通部が結露水の凍結により閉塞される事態を回避することは容易である。
【0014】
また、連通部の一部で結露水の凍結が起こったとしても、アイドル運転や低速走行運転から高速走行運転へ移行してエンジン側からの伝熱によりチャンバが暖まれば、直ぐに解凍して蒸発し、ブローバイガスと共に吸気管へと排除されることになる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明のクローズドブリーザシステムによれば、電熱ヒータの如き高コストの付帯設備を必要とすることなく、ガス戻し管の戻し口をチャンバを介し間接的に吸気管と接続するという構造的な工夫を施すだけで、ガス戻し管の戻し口が吸気の流れに直接的に晒されないようにすることができ、ガス戻し管の戻し口でブローバイガス中の水分が結露して凍結することにより生じる閉塞をコストの大幅な増加を招くことなく確実に防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【
図3】
図2のクローズドブリーザシステムの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図2及び
図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に示す如く、本形態例においては、
図2と同様に構成したクローズドブリーザシステムに関し、吸気管7の中途部に該中途部を全周に亘り取り囲むようにチャンバ15が環状に設けられており、該チャンバ15に対しベンチレータ2(
図2参照)からブローバイガス1を導くガス戻し管6が接続されていると共に、前記吸気管7の中途部に前記チャンバ15の内部空間と吸気管7の内部流路とを連通する連通部16が前記吸気管7を分断するように環状に形成されている。
【0021】
而して、このようにクローズドブリーザシステムを構成すれば、ガス戻し管6の戻し口6aがチャンバ15を介して間接的に吸気管7と接続されることになり、ガス戻し管6の戻し口6aが吸気13の流れに直接的に晒されなくなるため、極低温下における長時間のアイドル運転時やエンジンルーム内の温度が上がらない低速走行運転時等においても、ガス戻し管6の戻し口6aでブローバイガス1中の水分が結露して凍結してしまうような事態が起こらなくなる。
【0022】
また、このようにガス戻し管6の戻し口6aでの凍結を回避するにあたり、電熱ヒータの如き高コストの付帯設備を必要とすることがなく、ガス戻し管6の戻し口6aをチャンバ15を介し間接的に吸気管7と接続するという構造的な工夫だけで済むため、コストの大幅な増加を招くことなく低コストで実施することが可能となる。
【0023】
尚、連通部16でブローバイガス1中の水分が結露することは起こり得るが、連通部16の開口面積は、チャンバ15により覆われた範囲内でいくらでも大きく拡張することが可能であり、連通部16が結露水の凍結により閉塞される事態を回避することは容易である。
【0024】
特に本形態例の場合には、吸気管7を分断するように環状に連通部16を形成しているので、ガス戻し管6の戻し口6aと比較して開口面積が十分に広く且つその全てが閉塞してしまうほどの凍結が極めて起こり難い連通部16となる。
【0025】
また、連通部16の一部で結露水の凍結が起こったとしても、アイドル運転や低速走行運転から高速走行運転へ移行してエンジン3(
図2参照)側からの伝熱によりチャンバ15が暖まれば、直ぐに解凍して蒸発し、ブローバイガス1と共に吸気管7へと排除されることになる。
【0026】
従って、上記形態例によれば、電熱ヒータの如き高コストの付帯設備を必要とすることなく、ガス戻し管6の戻し口6aをチャンバ15を介し間接的に吸気管7と接続するという構造的な工夫を施すだけで、ガス戻し管6の戻し口6aが吸気13の流れに直接的に晒されないようにすることができ、ガス戻し管6の戻し口6aでブローバイガス1中の水分が結露して凍結することにより生じる閉塞をコストの大幅な増加を招くことなく確実に防止することができる。
【0027】
尚、本発明のクローズドブリーザシステムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 ブローバイガス
2 ベンチレータ
3 エンジン
6 ガス戻し管
6a 戻し口
7 吸気管
13 吸気
15 チャンバ
16 連通部