(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950644
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20160630BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160630BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
H01L21/78 M
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-64949(P2012-64949)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-197443(P2013-197443A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】細野 則義
【審査官】
梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−159864(JP,A)
【文献】
特開2005−294623(JP,A)
【文献】
特開2011−018769(JP,A)
【文献】
特開2010−150498(JP,A)
【文献】
特開2003−338474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハに半導体ウェーハ用治具を取り付け、半導体ウェーハに所定の処理を施す半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
半導体ウェーハ用治具は、半導体ウェーハの周縁部に沿うリング形の基材層と、この基材層の半導体ウェーハの片面周縁部に対向する対向面の大部分に積層して設けられ、半導体ウェーハの片面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層とを含み、基材層の対向面の大部分以外の残部を一対の粘着層の存在しない剥離契機部に形成し、各粘着層に弱粘着性を付与してその半導体ウェーハに対する粘着面の平均表面粗さRaを0.5〜5μmの範囲とし、
半導体ウェーハの裏面がバックグラインドされた場合に、100μm以下の厚さに薄化された半導体ウェーハの表面周縁部に半導体ウェーハ用治具を加圧しながら剥離可能に粘着して半導体ウェーハの強度を向上させ、その後、半導体ウェーハの裏面に回路パターンの形成、ハンダバンプの形成、ストレスリリーフ、PVD、CVD、あるいはエッチングの少なくとも何れかの処理を施すことを特徴とする半導体ウェーハの取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造工程で使用される半導体ウェーハの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における半導体ウェーハは、バックグラインド工程で図示しない薄い半導体パッケージに適合させるため、裏面がバックグラインドされ、ダイシング工程でキャリア治具の粘着テープに粘着支持された後、ダイシングブレードで個々の半導体チップに分離されることにより、多数の半導体チップを形成する(特許文献1、2、3、4参照)。半導体ウェーハのバックグラインド工程においては、半導体ウェーハが回転砥石により100μm以下、時には30〜50μm程度の厚みに薄く削られるが、そうすると、半導体ウェーハが非常に薄く脆く撓みやすくなるので、ハンドリングや搬送に支障を来たすおそれがある。
【0003】
係る点に鑑み、従来においては、(1)半導体ウェーハをバックグラインドする際、半導体ウェーハの周縁部を残しながらその内側領域をバックグラインドし、残存する周縁部により半導体ウェーハの剛性を確保して撓みを抑制する方法、(2)半導体ウェーハの周縁部に剛性確保リングを接着剤により位置決め固定し、この剛性確保リングにより、半導体ウェーハに剛性を付与して撓みを抑制防止する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260219号公報
【特許文献2】特開2009−164476号公報
【特許文献3】特開2005−191039号公報
【特許文献4】特許第4239974号公報
【特許文献5】特開2011−159864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法を採用する場合には、半導体ウェーハの強度を向上させて反りを低減することができるものの、半導体ウェーハの周縁部を残存させるため、専用の装置が必要になり、製造設備やコストの削減を図ることができないという問題が新たに生じることとなる。また近年においては、バックグラインドされた半導体ウェーハの裏面に回路パターンを形成等することがあるが、半導体ウェーハの周縁部が残存していると、半導体ウェーハの裏面から周縁部が上方に一部突出して作業の妨げとなり、半導体ウェーハの裏面に回路パターンを形成等するのがきわめて困難になる。
【0006】
これに対し、(2)の方法の場合、(1)の問題を解決することができるので、非常に有意義である。しかしながら、大きな問題ではないものの、半導体ウェーハの周縁部に剛性確保リングを重ねて位置決めする際、剛性確保リングの固定に接着剤を使用すると、接着剤による汚染を回避しなければならないので、調整しながらの位置合わせが困難になる事態が予想される。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、半導体ウェーハの強度を向上させて製造設備やコストの削減を図ることができ、半導体ウェーハのバックグラインドされた面に所定の処理を容易に施すことのできる半導体ウェーハの取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、半導体ウェーハに半導体ウェーハ用治具を取り付け、半導体ウェーハに所定の処理を施す半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
半導体ウェーハ用治具は、半導体ウェーハの
周縁部に沿うリング形の基材層と、この基材層の
半導体ウェーハの片面周縁部に対向する対向面の大部分に積層して設けられ、半導体ウェーハの片面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層とを含み、
基材層の対向面の大部分以外の残部を一対の粘着層の存在しない剥離契機部に形成し、各粘着層に弱粘着性を付与してその半導体ウェーハに対する粘着面の平均表面粗さRaを0.5〜5μmの範囲とし、
半導体ウェーハの裏面がバックグラインドされた場合に、
100μm以下の厚さに薄化された半導体ウェーハの表面周縁部に半導体ウェーハ用治具を加圧しながら剥離可能に粘着して半導体ウェーハの強度を向上させ、
その後、半導体ウェーハの裏面に回路パターンの形成、ハンダバンプの形成、ストレスリリーフ、PVD、CVD、あるいはエッチングの少なくとも何れかの処理を施すことを特徴としている。
【0009】
なお、剥離契機部を、基材層の対向面残部と粘着層の端部との間に区画形成することができる。
【0010】
また、粘着層を複数に分割し、これら複数の粘着層の両端部を対向面の残部を介して対向させることが可能である。
また、半導体ウェーハを搭載するテーブルを備え、このテーブルの表面に、半導体ウェーハ用治具を収容する収容溝を形成することが可能である。
さらに、半導体ウェーハの裏面に所定の処理を施した後、半導体ウェーハの表面から半導体ウェーハ用治具を剥離し、半導体ウェーハの表面をキャリア治具の粘着テープに粘着し、半導体ウェーハに所定の処理を施すことも可能である。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハは、φ150、200、300、450mmタイプ等を特に問うものではない。この半導体ウェーハの片面は、半導体ウェーハの表面でも良いし、裏面でも良い。また、基材層と粘着層とは、同じ厚さや幅でも良いし、異なる厚さ・幅でも良い。これら基材層と粘着層とは、一体成形しても良いし、別々に形成することもできる。
【0012】
基材層は、
主にリング形に形成され、透明、不透明、半透明、着色、可撓性の有無を特に問うものではない。さらに、半導体ウェーハに施す所定の処理には、少なくとも230〜260℃での回路パターンやハンダバンプの形成、ストレスリリーフ、100〜200℃でのPVD、80〜200℃でのCVD、エッチング、バックグラインド、ダイシング等が該当する。
【0013】
本発明によれば、半導体ウェーハ用治具がバックグラインドされた薄い半導体ウェーハの表面周縁部に粘着して半導体ウェーハの強度を増大させる。したがって、半導体ウェーハの裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具が存在して凸凹を形成し、作業の妨げとなることが少ない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、
バックグラインドされた薄く脆い半導体ウェーハの周縁部に半導体ウェーハ用治具を沿わせて粘着することにより、半導体ウェーハの強度を増大させることができるので、半導体ウェーハの反りや撓みを有効に防止し、後のハンドリングや搬送の円滑化を図ることができる。したがって、半導体ウェーハの周縁部を残しながらその内側領域をバックグラインドする必要がなく、専用の装置を確実に省略することができるので、製造設備やコストの大幅な削減が期待できるという効果がある。また、半導体ウェーハの露出した裏面の周縁部から半導体ウェーハ用治具が突出して凸凹を形成し、作業の妨げとなることがないので、半導体ウェーハの裏面に回路パターンを円滑かつ容易に形成することができる。また、汚染の原因となる接着剤を何ら要しないので、作業の遅延や煩雑化を招くこともない。また、作業毎に半導体ウェーハ用治具を廃棄することなく、再利用等することもできる。
【0015】
また、粘着層粘着面の表面粗さを数値限定するので、半導体ウェーハに半導体ウェーハ用治具を重ねてその位置を繰り返しながら微調整し、正確に位置合わせすることが
可能になる。すなわち、各粘着層粘着面の平均表面粗さRaが0.5〜5μmの範囲なので、半導体ウェーハの表面周縁部に半導体ウェーハ用治具を重ねて位置決めする際、半導体ウェーハ用治具を軽く重ねるだけで粘着することがなく、半導体ウェーハ用治具を前後左右に滑らせる作業に資することが可能になる。また、半導体ウェーハの表面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具が粘着しなくなる事態を防ぐことも可能になる。さらに、半導体ウェーハ用治具の剥離契機部に指や治具等を干渉させて持ち上げることができるので、半導体ウェーハの周縁部から半導体ウェーハ用治具を簡単、かつ安全に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【
図2】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハと半導体ウェーハ用治具との関係を模式的に示す斜視説明図である。
【
図3】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハと半導体ウェーハ用治具との関係を模式的に示す正面説明図である。
【
図4】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハ用治具を模式的に示す裏面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハの取り扱い方法は、
図1ないし
図4に示すように、半導体ウェーハ1の裏面3がバックグラインドされた場合に、半導体ウェーハ1の表面周縁部に半導体ウェーハ用治具10を剥離可能に粘着し、半導体ウェーハ1の裏面3に所定の条件下で所定の処理を施すようにしている。
【0018】
半導体ウェーハ1は、
図1や
図2に示すように、例えばφ200mmの平面円形のシリコンウェーハからなり、表面2に回路パターンが形成されており、裏面3が図示しない汎用のバックグラインド装置でバックグラインドされることにより、100μm以下の厚さに薄化される。この半導体ウェーハ1は、周縁部に、結晶方向の判別や整列を容易にする平面略V字形のノッチ4が切り欠かれ、バックグラインドされた裏面3に所定の処理、例えば回路パターンが形成される。
【0019】
半導体ウェーハ用治具10は、薄い半導体ウェーハ1の表面2に対向するエンドレスの基材層11と、この基材層11に積層されて半導体ウェーハ1の表面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層15とを二層構造に備え、基材層11の大部分に一対の粘着層15が積層され、大部分以外の残部14が粘着層15の存在しない一対の剥離契機部17に形成されており、各粘着層15の粘着面16の平均表面粗さRaが所定の範囲内に設定される。
【0020】
基材層11と粘着層15とは、
図3や
図4に示すように、例えば基材層11と粘着層15とが同じ幅に形成されるが、製造や作業の便宜を図りたい場合等には、基材層11の幅が粘着層15の幅よりもやや広く形成される。
【0021】
基材層11は、
図2ないし
図4に示すように、所定の材料により薄い平面リング形に形成され、加工時に半導体ウェーハ1を位置決め固定する複数の固定孔12が周方向に所定の間隔で穿孔されており、半導体ウェーハ1の表面周縁部に対向する。この基材層11の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばシリコン、ガラスエポキシ樹脂やガラスクロス複合材、カーボン繊維強化プラスチック、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、金属(アルミニウム、SUS、タングステン、鉄−ニッケル合金(42アロイ等))、その他の合金等があげられる。これらの中でも、機械的特性、吸湿性、強度、熱伝導率、耐熱温度、電気的特性に優れるガラスエポキシ樹脂の採用が最適である。
【0022】
基材層11は、半導体ウェーハ1と同径か、あるいは僅かに拡径に形成される。基材層11は、半導体ウェーハ1と同径の場合には、外周縁が半導体ウェーハ1の周縁部に整合するよう揃えられ、半導体ウェーハ1よりも僅かに拡径の場合には、外周縁が半導体ウェーハ1の周縁部から3mm以内で周縁部に沿うよう近接保護する。基材層11が半導体ウェーハ1よりも僅かに拡径に形成される場合、図示しないハンドリング装置の位置決め治具等が薄い半導体ウェーハ1のエッジに直接接触し、半導体ウェーハ1のエッジにチッピングやクラック等が発生するのを有効に抑制することができる。
【0023】
一対の粘着層15は、
図3や
図4に示すように、弱粘着性等に優れる所定の材料により厚さ200μm以下(例えば、100μm程度)の薄い平面略半円弧形にそれぞれ湾曲形成され、半導体ウェーハ1の表面周縁部に対向する基材層11の平坦な対向面13に積層粘着されており、半導体ウェーハ1の表面周縁部に着脱自在に粘着する。各粘着層15の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、60℃程度で剥離強度が低下し、しかも、耐熱性等に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴム等があげられる。これらの材料には必要な所定のフィラーが添加される。
【0024】
各粘着層15の半導体ウェーハ1の表面周縁部に粘着する粘着面16は、粘着層15が金型による成形法で成形される場合、金型のキャビティによる転写法、あるいは成形材料にシリカからなるフィラーを添加する等の方法により粗く形成される。この粘着面16の平均表面粗さ(算術表面粗さ)Raは、専用の表面粗さ測定機、レーザ顕微鏡、又は三次元走査型電子顕微鏡等の測定により、0.5〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0025】
これは、粘着面16の平均表面粗さRaが0.5μm未満の場合には、半導体ウェーハ1の表面周縁部に半導体ウェーハ用治具10を重ねて位置決めする際、半導体ウェーハ用治具10を軽く重ねるだけでも粘着してしまい、半導体ウェーハ用治具10を前後左右に滑らせる作業に重大な支障を来たすからである。また、Raが5μmを超える場合には、半導体ウェーハ1の表面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具10が粘着しなくなるからである。このような一対の粘着層15は、基材層11の対向面13の大部分に積層粘着され、両端部が対向面13の大部分以外の残部14において隙間を介し対向する。
【0026】
各剥離契機部17は、
図3や
図4に示すように、対向面13の残部14と一対の粘着層15の両端部との間に空隙として区画形成され、半導体ウェーハ1から粘着した半導体ウェーハ用治具10を剥離する際のきっかけとなる。各剥離契機部17には、基材層11の固定孔12が作業用の目印として選択的に位置する。
【0027】
上記構成において、バックグラインドされた半導体ウェーハ1の裏面3に回路パターンを形成する場合には、先ず、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハ1の回路パターンが形成された表面2を上面とし、この半導体ウェーハ1の表面周縁部に半導体ウェーハ用治具10の粘着層15を軽く重ねて前後左右に位置合わせし、この半導体ウェーハ用治具10をローラ等により加圧して隙間なく着脱自在に粘着する。
【0028】
この際、粘着面16の平均表面粗さRaが0.5μm以上なので、半導体ウェーハ用治具10を軽く重ねただけでは粘着せず、半導体ウェーハ用治具10を幾度もずらして適切に位置合わせすることができる。また、Raが5μm以下であるから、半導体ウェーハ1の表面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具10を確実に圧着することができる。半導体ウェーハ1の周縁部に半導体ウェーハ用治具10の外周縁を位置決めする場合、半導体ウェーハ1のノッチ4に半導体ウェーハ用治具10の剥離契機部17を対向させることが可能である。
【0029】
次いで、半導体ウェーハ1の表面2を下向きにして多孔質のチャックテーブル20上に位置決めセットし、チャックテーブル20用の真空ポンプ21を駆動してチャックテーブル20の表面に半導体ウェーハ1を真空吸着すれば、半導体ウェーハ1の露出した裏面3に上方から回路パターンを230〜260℃の温度条件で形成することができる(
図1参照)。
【0030】
この際、半導体ウェーハ1とチャックテーブル20の表面との間に段差が生じないよう、チャックテーブル20の表面に平面円形の収容溝22を予め切り欠き、この収容溝22に半導体ウェーハ用治具10を収容して半導体ウェーハ1とチャックテーブル20の表面とを略面一に整合させることが好ましい。
【0031】
また、半導体ウェーハ表面2の回路パターンを保護したい場合には、半導体ウェーハ表面2に保護フィルムを積層した後、チャックテーブル20に半導体ウェーハ1を真空吸着すれば良い。また、半導体ウェーハ1の裏面3には、ストレスリリーフ、100〜200℃の温度条件下でのPVD、80〜200℃の温度条件下でのCVD、エッチング、ハンダバンプの形成等の処理を代わりに施すこともできる。
【0032】
半導体ウェーハ1の裏面3に回路パターンを形成した後、半導体ウェーハ1をダイシング処理したい場合には、先ず、チャックテーブル20用の真空ポンプ21を停止してチャックテーブル20の表面から半導体ウェーハ1を取り外し、この半導体ウェーハ1の表面2から半導体ウェーハ用治具10を剥離する。
【0033】
半導体ウェーハ用治具10の剥離に際しては、半導体ウェーハ用治具10の剥離契機部17に指先等を係止して引き上げれば、半導体ウェーハ1の表面周縁部から粘着層15が徐々に剥がれ、半導体ウェーハ用治具10を完全に取り外すことができる。このとき、50℃〜150℃、好ましくは60℃程度の加熱で剥離強度が低下する粘着層15の特性を利用すれば、剥離に要する力が2/3〜1/4程度に軽減されるので、半導体ウェーハ用治具10の取り外しが簡単になる。
【0034】
次いで、半導体ウェーハ1の表面2をキャリア治具の粘着テープに粘着するとともに、キャリア治具をチャックテーブル20上に搭載し、チャックテーブル20上にキャリア治具を真空ポンプ21で真空吸着した後、半導体ウェーハ1に裏面3側から高速回転するダイシングブレードでダイシング処理を施せば、半導体ウェーハ1の破損を招くことなく、多数の半導体チップを容易に得ることが可能となる。
【0035】
なお、チャックテーブル20の表面から半導体ウェーハ1を取り外し、半導体ウェーハ1の裏面3をキャリア治具の粘着テープに粘着し、キャリア治具をチャックテーブル20上に搭載するとともに、チャックテーブル20上にキャリア治具を真空ポンプ21で真空吸着し、半導体ウェーハ1の表面2から半導体ウェーハ用治具10を剥離した後、半導体ウェーハ1に表面2側からダイシングブレードでダイシング処理を施しても、多数の半導体チップを得ることが可能となる。
【0036】
上記構成によれば、バックグラインドされた薄く脆い半導体ウェーハ1の周縁部に半導体ウェーハ用治具10を沿わせて粘着することにより、半導体ウェーハ1の強度を増大させることができるので、半導体ウェーハ1の反りや撓みを有効に防止し、後のハンドリングや搬送の円滑化を図ることができる。したがって、半導体ウェーハ1の周縁部を残しながらその内側領域をバックグラインドする必要がなく、専用の装置を確実に省略することができるので、製造設備やコストの大幅な削減が期待できる。
【0037】
また、半導体ウェーハ1の露出した裏面3の周縁部から半導体ウェーハ用治具10が突出して凸凹を形成し、作業の妨げとなることがないので、半導体ウェーハ1の裏面3に回路パターンを円滑かつ容易に形成することができる。また、半導体ウェーハ1に半導体ウェーハ用治具10を接着剤により剥離不能に固着するのではなく、弱粘着性の粘着層15を利用してその粘着面16の表面粗さを数値限定するので、半導体ウェーハ1に半導体ウェーハ用治具10を重ねてその位置を手作業で繰り返しながら微調整し、精確に位置合わせすることができる。
【0038】
また、汚染の原因となる接着剤を何ら要しないので、作業の遅延や煩雑化を招くこともない。また、作業毎に半導体ウェーハ用治具10を廃棄することなく、再利用等することも可能となる。さらに、剥離契機部17に指先を引っかけて持ち上げることができるので、半導体ウェーハ1の周縁部から密着状態の半導体ウェーハ用治具10を簡単、かつ安全に取り外すことができ、作業の遅延や煩雑化のおそれを有効に排除することが可能になる。
【0039】
なお、上記実施形態では一対の粘着層15を用いたが、粘着層15を複数に分割(例えば、三分割や四分割等)してこれら複数の粘着層15を隙間を介して突き合わせ、この複数の粘着層15間の隙間をそれぞれ剥離契機部17としても良い。また、基材層11の対向面13に一対の粘着層15ではなく、平面リング形の粘着層15を積層粘着して剥離契機部17を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法は、半導体製造の分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体ウェーハ
2 表面
3 裏面
10 半導体ウェーハ用治具
11 基材層
13 対向面
14 残部
15 粘着層
16 粘着面
17 剥離契機部
20 チャックテーブル
22 収容溝