(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る配管形状修正装置の概要を示す図である。
図1に示す配管形状修正装置1は、配管Aを取り付ける位置や角度を測定した結果に基づいて配管Aの形状を修正する装置であり、アーム2a〜2d、関節部3a〜3c、検出部4、測定子5、ハンドチャック6、制御装置7、計算機8およびモニタ9を備える。
【0010】
アーム2a〜2dは、検出部4を先端に取り付けるマニピュレータを構成するアームであり、関節部3a〜3cによってそれぞれ接続される。
また、関節部3a〜3cには、角度検出器がそれぞれ設けられており、これらの角度検出器によってアーム2a〜2dのそれぞれの相対的な角度が検出される。この相対角度とアームの寸法によって、マニピュレータ本体に設定された3次元座標系における、アーム2aの先端の3次元位置を算出することができる。なお、角度検出器には、例えばポテンショメータあるいはエンコーダを利用することができる。
【0011】
検出部4は、測定子5の変位量および回転角度を検出する検出部であり、アーム2aの先端部に着脱自在に取り付けられる。配管Aの端面位置に対する測定子5の変位量および回転角度に基づいて、実際の配管Aの端面位置が算出される。
測定子5は、円錐形状の測定子であって、先端部から配管Aの端面開口に差し込まれた状態で変位量および回転角度が検出される。
ハンドチャック6は、配管Aをチャッキング保持するハンドチャックであって、アーム2aの先端部に取り付けられる。なお、アーム2aの先端部におけるハンドチャック6と検出部4の測定子5は所定の位置関係にあり、測定子5の座標位置からハンドチャック6の座標位置を算出することができる。
【0012】
制御装置7は、計算機8による位置座標の計算結果に基づいて、マニピュレータの駆動を制御する制御装置であり、制御部7aおよび記憶部7bを備えて構成される。
制御部7aは、演算部8aからの指示に従って、マニピュレータを駆動させて配管Aの端面位置に測定子5を移動させたり、設計上の端面位置と差異が許容範囲外である場合、配管Aの形状を修正する動作を制御する。
記憶部7bは、配管Aの設計上の3次元位置データおよび検出部4による配管Aの端面位置の検出結果を記憶する記憶部である。
【0013】
計算機8は、演算処理を実施する計算機であり、演算部8aおよびモニタ9を備える。
演算部8aは、配管Aの端面位置の測定における座標位置の演算や、配管形状の修正における演算を実施する。モニタ9は、計算機8の演算結果や検出部4による配管Aの座標位置の検出結果を表示するモニタである。
また、治具10は、配管形状修正装置1を用いて配管形状を修正する際に配管Aを保持するクランプなどの治具である。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る検出部の構成を示す図であり、
図1の検出部4および測定子5を示している。
図2(a)は測定子5のシャフト軸方向に沿って検出部4を切断した断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のB−B線で切断した断面の矢示図である。
検出部4は、
図2(a)、
図2(b)に示すように、直動ブロック部11a,11bとレール部11c,11dから構成される直動システムを備える。
【0015】
直動ブロック部11aは、レール部11cに沿ってスライド可能に設けられ、レール部11dは、直動ブロック部11a上に取り付けられる。レール部11cとレール部11dは、直動ブロック11aを介して上下に直交している。
【0016】
また、直動ブロック部11aには、
図2(b)に示すように、レール部11cに沿ったスライド方向にスプリング12a,12bおよび変位センサ15がそれぞれ設けられる。直動ブロック部11bについても同様に、レール部11dに沿ったスライド方向にスプリング12c,12dと変位センサ15がそれぞれ設けられる。
【0017】
直動ブロック部11a,11bは、測定子5に移動力が加えられなければ、スプリング12a〜12dによって常に原点位置になるよう付勢されている。測定子5に移動力が加えられて直動ブロック部11a,11bがスライドすると、変位センサ15により、そのスライド方向の変位量が検出される。
【0018】
直動ブロック部11b上の中央部には、シャフト受け部14aが取り付けられており、検出部4の筐体における直動システムを設けた面に対向する面にはシャフト受け部14bが取り付けられる。
測定子5の円錐底面から延設されたシャフト13には、その軸方向に自在継手13a,13bが設けられており、自在継手13a,13bが、シャフト受け部14a,14bに取り付けられる。これにより、測定子5は、シャフト13を介してフローティング可能に保持される。
【0019】
なお、
図2において図示を省略したが、検出部4は、直動ブロック部11a,11bのスライド方向を含む平面の法線方向、すなわちアーム2aの延長方向においても直動可能な直動機構を有しており、その変位量を検出する直動変位センサも設けられている。また、配管端面の位置を確認するためのカメラも取り付けられている。
【0020】
次に動作について説明する。
図3は、実施の形態1に係る配管形状修正装置の動作を示すフローチャートであって、この図に沿って配管Aの端面位置の測定と配管形状の修正処理の詳細について述べる。
まず、計算機8の演算部8aは、制御装置7の記憶部7aから、対象ワークの配管Aについての設計上の3次元データを読み出して(ステップST1)、設計上の3次元データにおける配管Aの座標位置データを認識する(ステップST2)。
【0021】
次に、演算部8aは、設計上の3次元データを用いて、配管組み立ての基準となる位置と配管Aの端面との各座標位置を算出する(ステップST3)。演算部8aに算出された座標位置データは、制御装置7の制御部7aに出力される。
制御部7aは、演算部8aから入力した設計上の座標位置データに基づいてマニピュレータを駆動させ、配管Aの端面の設計上の座標位置に検出部4を移動させる(ステップST4)。
【0022】
配管Aの端面位置が設計上の座標位置に一致する場合は、
図1に示すように、測定子5の先端部が配管Aの端面開口に自動的に差し込まれる。
一方、配管Aの端面位置と設計上の座標位置に差異がある場合、検出部4に取り付けた上記カメラで位置を確認して自動で位置を合わせる、もしくは、作業者が、測定子5をシャフト受け部14a,14bを中心としてフレキシブルに動かして、測定子5の先端部を配管Aの端面開口に差し込む。このときの測定子5の変位量および回転角度が、変位センサ15、上記直動変位センサおよび上記回転角度検出器によって検出され、制御装置7を介して演算部8aに入力される。
【0023】
演算部8aは、変位センサ15などによる検出結果を用いて、現在の配管Aの端面位置を3次元測定する(ステップST5)。例えば、検出された回転角度により配管Aの端面の向きを特定し、この端面の向きに応じて、変位センサにより検出されたXYZ軸方向における変位量を設計上の座標位置に加算して現在の配管Aの端面の座標位置データを求める。すなわち、各アームに取り付けられている角度検出器および検出部4の測長センサ、回転角度センサの検出データの組み合わせにより、配管Aの端面の座標位置データを求めることができる。
【0024】
演算部8aによって算出された現在の配管Aの端面の座標位置データは、設計上の座標位置データとともにモニタ9に表示される(ステップST6)。これにより、作業者は配管Aが設計値からずれていることを視覚的に認識することができる。
【0025】
続いて、演算部8aは、測定した現在の配管Aの端面の座標位置データと設計上の配管Aの端面の座標位置データとの差異が、あらかじめ設定された許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST7)。
このとき、座標位置データの差異が許容範囲内であれば(ステップST7;YES)、演算部8aは、測定した配管Aの端面の座標位置データを記憶部7bに保存する(ステップST8)。このように許容範囲内で設計値からずれた座標位置データを保存していくことで、保存データを用いて許容範囲内で配管Aがずれる傾向を分析できる。
また、この分析結果を製造工程にフィードバックすることにより、さらなる品質の向上を図ることができる。
【0026】
また、座標位置データの差異が許容範囲外である場合(ステップST7;NO)、演算部8aは、モニタ9を用いた視覚的な方法により、あるいは、不図示のスピーカを用いた聴覚的な方法により、現在の配管Aの端面位置が許容できないずれを起こしている旨を、作業者に通知する(ステップST9)。
【0027】
作業者は、上記通知を受けると、
図4(a)に示すように配管Aの曲げ部分以外が変形しないように、クランプなどの治具10で配管Aの根元付近の直線部分を固定する(ステップST10)。さらに、ハンドチャック6によって配管Aの端面をチャックする。
なお、例えば、配管形状の修正を行った回数をカウントするカウンタを計算機8に用意しておき、修正頻度を保存してもよい。この場合、修正頻度が所定の閾値を超えた際に、演算部8aが作業者に通知することで、製造工程の加工条件を見直すことができる。
また、設計値との差異が許容範囲外のデータも記憶部7bに保存しておくことで、加工条件の見直し内容を決定するためのデータとして利用することができる。例えば、演算部8aが、設計値からのずれの増減の傾向と修正頻度の増減の傾向を分析して作業者に通知する。
【0028】
次に、演算部8aは、設計上の配管Aの端面の座標位置データを目標位置として、現在の配管Aの端面の座標位置データに基づき、ハンドチャック6の所定の移動量を算出する(ステップST11)。例えば、設計上の配管Aの端面の座標位置データからのずれ具合に応じて、XYZ軸方向の移動量を算出する。演算部8aによって算出された移動量データは、制御部7aに出力される。
【0029】
制御部7aは、演算部8aから入力した所定の移動量ごとにマニピュレータを駆動させて配管Aの形状を修正する(ステップST12)。例えば、
図4(b)に矢印で示すように、配管Aをさらに曲げてその形状を修正する。この後、ステップST5の処理に戻り、形状を修正した配管Aの端面位置と設計値との差異が許容範囲内になるまで配管Aの形状修正が繰り返される。
【0030】
上述した配管形状修正では、配管Aの曲げ部分以外が変形しないようにクランプなどの治具10で配管Aの根元付近の直線部分を固定する場合を示したが、この態様に限定されるものではない。
例えば、
図5(a)、
図5(b)に示すように、治具10を使用する代わりに、アーム2a〜2dおよび関節部3a〜3cから構成されるマニピュレータをもう1台用意して、その先端にハンドチャック6を取り付けた配管固定用マニピュレータを用いてもよい。
この場合、演算部8aが、設計上の3次元データに基づいて、クランプ部分の座標位置を算出して、制御装置7の制御部7aに出力する。
制御部7aが、演算部8aから入力した座標位置に基づいて配管固定用マニピュレータを駆動させ、先端のハンドチャック6が上記クランプ部分を保持固定する。これにより、最適な位置でチャッキングすることが可能である。
【0031】
以上のように、この実施の形態1によれば、測定子5の変位量および回転角度を検出する検出部4と配管Aを保持する保持具であるハンドチャック6とを先端部に取り付けたマニピュレータと、マニピュレータの動きを制御する制御部7aと、制御部7aに指示してマニピュレータにより、3次元の設計データに基づいて算出した設計上の配管Aの端面位置に検出部4を移動させ、検出部4により検出された実際の配管Aの端面位置に対する測定子5の変位量および回転角度に基づいて実際の配管Aの端面位置を算出し、設計上の端面位置と実際の端面位置との差異が許容範囲外である場合に、制御部7aに指示してハンドチャック6で配管Aを保持したマニピュレータを駆動させることにより、実際の配管Aの端面位置が設計上の端面位置になるように配管Aの形状を修正する演算部8aとを備える。このように、設計値との差異が許容範囲外の場合に、ハンドチャック6で配管端面をチャックし、設計上の3次元データの座標位置に配管形状を修正するので、複数の配管を備えた機器の配管組み立てを高精度で容易に行うことができる。
【0032】
また、この実施の形態1によれば、配管Aの設計上の端面位置と実際の端面位置との差異、および配管Aの形状を修正した修正回数をデータとして記憶する記憶部7bを備え、演算部8aが、記憶部7bに記憶したデータを用いて設計上の端面位置からのずれの増減の傾向と修正頻度の増減の傾向を分析する。この分析結果に基づいて、製造工程における加工条件(曲げ条件)を見直すことで、製造工程の品質向上にフィードバックできる。
【0033】
さらに、上記実施の形態1では、測定子5の座標位置から現在の配管Aの端面の座標位置データを測定する場合を示したが、ハンドチャック6の先端にタッチセンサなどの接触センサを取り付け、配管組み立ての基準となる位置と、タッチセンサが配管Aの端面にタッチした反応位置との差異から配管Aの端面の座標位置データを算出してもよい。
このようにすることでも、配管Aの端面位置を測定することができる。
【0034】
さらに、上記実施の形態1において、複数台のマニピュレータを用意し、これらの少なくとも一つに配管Aを保持するための保持具を先端に取り付け、他のいずれかにろう付けなどの配管の組み立て治具を取り付けてもよい。これにより、配管の端面位置の測定と、配管形状の修正を行った後に、配管組み立ても行うことができる。
【0035】
実施の形態2.
上記実施の形態1は、配管Aの端面開口に円錐形状の測定子5の先端部(頂点部分)を差し込んで位置測定を行う場合を示したが、測定子5の先端部の寸法に対して配管の開口径が小さすぎると、先端部を配管にほとんど差し込めなくなる。この場合、微少なずれに対する測定精度が落ちる。
そこで、この実施の形態2では、マニピュレータの先端部で検出部を着脱自在として、配管の寸法に応じた測定子を備えた検出部に付け替える。これにより、配管の端面位置を精度よく測定することが可能である。また、配管に対して様々な測定を行える測定子を備えた検出部を取り付けてもよい。
【0036】
図6は、この発明の実施の形態2に係る配管形状修正装置の検出部の概要を示す図である。なお、実施の形態2に係る配管形状修正装置は、マニピュレータの先端部に装着する検出部以外の構成は、上記実施の形態1と同様である。
図6(a)は、実施の形態2に係る検出部4Aの側面図であり、
図6(b)は配管測定位置に検出部4Aを配置したときの側面図である。ここで、配管Aのみを断面で示している。
【0037】
図6に示す検出部4Aは、アーム2aの先端部に着脱自在に取り付けられる検出部であり、XY移動ユニット16、測長センサ17、回転角度センサ付きの自在継手18および測定子19を備えて構成される。XY移動ユニット16は、アーム2aの先端面に平行な方向の測定子19の移動を可能とするユニットであり、
図2の直動システムに相当する。
XY移動ユニット16は、測定子19に移動力が加えられなければ、スプリングにより常に原点位置になるよう付勢されている。測定子19に移動力が加えられてスライドすると、測長センサ17によりそのスライド方向の変位量(X軸方向およびY軸方向の変位量)が検出される。
【0038】
自在継手18は、測定子19を検出部4Aに接続する継手であり、継手原点位置からの測定子19の回転角度を検出する回転角度センサを備える。例えば、回転角度センサは、自在継手18の回転軸部にそれぞれ取り付けられ、各回転角度センサによって検出された回転角度から、X軸方向およびY軸方向の回転角度が検出される。
また、自在継手18は、測定子19に回転力が加えられなければ、スプリングによって常に継手原点位置になるよう付勢されている。測定子19に回転力が加えられて継手原点位置から回転すると、角度センサによりその回転角度が検出される。
測定子19は、軸中心に最鋭部が位置するように先端を尖らせた棒状の測定子である。
【0039】
配管Aの端面位置を測定する際、制御部7aは、
図6(a)に示すように、演算部8aから入力した設計上の座標位置データに基づいてマニピュレータを駆動させ、配管Aの端面の設計上の座標位置に検出部4Aを移動させる。このとき、
図6(a)に示すように、配管Aの端面に対する測定子19の位置のずれが配管Aの内径の1/2未満である場合、
図6(b)に示すように、測定子19は、その先端部が配管Aの開口の内縁部を滑るように移動して配管Aに挿入される。
【0040】
測長センサ17は、配管Aに挿入されるまでの測定子19の変位量を検出し、回転角度センサは、配管Aに挿入されるまでの測定子19の回転角度を検出する。これらの検出量は、演算部8aに送られる。演算部8aは、これらの検出量を用いて配管Aの設計値との差異を演算する。
【0041】
以上のように、この実施の形態2によれば、検出部4Aが、マニピュレータの先端部に着脱自在であるので、測定の用途に応じた測定子を有する検出部に交換することで、配管組み立てに利用可能な寸法ついて様々な測定が可能である。
【0042】
また、上記実施の形態2において、検出部4Aに対して測定子19を着脱自在として、配管の寸法や測定内容に応じた測定子を適宜取り付けてもよい。このように構成することにより、配管組み立てに利用可能な寸法ついて様々な測定が可能である。例えば、配管の内径または外径を測定する測定子を装着してもよい。
【0043】
なお、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。