特許第5950731号(P5950731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950731パーキングブレーキ機構および電動パーキングブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950731
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】パーキングブレーキ機構および電動パーキングブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/56 20060101AFI20160630BHJP
   F16D 51/50 20060101ALI20160630BHJP
   F16D 65/09 20060101ALI20160630BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20160630BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20160630BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20160630BHJP
   F16D 125/60 20120101ALN20160630BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20160630BHJP
【FI】
   F16D65/56 K
   F16D51/50
   F16D65/09 A
   F16D65/09 Z
   F16D65/22
   F16D121:14
   F16D121:24
   F16D125:60
   F16D125:64
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-150638(P2012-150638)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13060(P2014-13060A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】前原 利史
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭34−004865(JP,B1)
【文献】 特開2002−181087(JP,A)
【文献】 特開2010−133465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16D 121/14
F16D 121/24
F16D 125/60
F16D 125/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が拡開機構からの入力側とされる第1ブレーキシューと、前記第1ブレーキシューと対向して前記ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が前記拡開機構からの入力側とされるとともに他端側が前記第1ブレーキシューの他端側にアジャスタを介して連結される第2ブレーキシューと、バッキングプレートに装備され、前記第1ブレーキシューの一端側及び前記第2ブレーキシューの一端側に当接されるアンカ部と、前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され、入力側端が前記拡開機構に当接するとともに出力側端が前記第2ブレーキシューの他端側に連結された前記アジャスタに当接する伝達レバーと、を備え、前記第1ブレーキシューの他端側と前記アジャスタとの間に所定の間隙が設けられることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【請求項2】
請求項1記載のパーキングブレーキ機構であって、
前記第1ブレーキシューの第1ウエブには段付きスリーブが貫通され、
前記段付きスリーブは、前記バッキングプレートに貫通支持される貫通ピンに貫通され、前記第1ウエブを挟んで前記バッキングプレートと反対側の段部が前記貫通ピンとの間に介装されるバネ座およびスリーブ押圧スプリングの押圧によって前記第1ブレーキシューの浮き上がりを規制し、
前記伝達レバーは、前記第1ウエブと前記バッキングプレートとの間で前記段付きスリーブに貫通されて前記段付きスリーブを中心に回転自在となるとともに、一部分がU字状に折り曲げられた挟持片部によって前記第1ウエブを挟んで前記第1ブレーキシューに保持されることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【請求項3】
ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が拡開機構からの入力側とされる第1ブレーキシューと、
前記第1ブレーキシューと対向して前記ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、他端側が前記第1ブレーキシューの他端側にアジャスタを介して連結される第2ブレーキシューと、
バッキングプレートに装備され、前記第1ブレーキシュー及び前記第2ブレーキシューの一端側に当接されるアンカ部と、
前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され、入力側端が前記拡開機構に当接するとともに出力側端が前記アジャスタに当接されており、前記拡開機構からの入力によって前記第1ブレーキシューと前記第2ブレーキシューの一端側よりも先に他端側を拡開させる切替レバーと、
を備えることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【請求項4】
請求項3記載のパーキングブレーキ機構であって、
前記切替レバーが、第1支点ピンによって前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され入力側となる第1切替レバーと、第2支点ピンによって前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され前記第1切替レバーに従動して回転する出力側となる第2切替レバーと、を有し、
前記第1切替レバーが、前記拡開機構に設けられる拡開機構突出端部と第1ウエブとで回転軸方向に挟まれ、
前記第2切替レバーが、前記アジャスタに設けられるアジャスタ突出端部と第1ウエブとで回転軸方向に挟まれることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項のパーキングブレーキ機構を備える電動パーキングブレーキであって、
前記バッキングプレートの裏側面には、前記拡開機構に接続されたパーキングケーブルを引っ張り駆動する駆動機構が配設されていることを特徴とする電動パーキングブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキ機構および電動パーキングブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキ装置は、ブレーキシューが開く支点位置やアンカ構造等のちがいによって、リーディングトレーリング式やツーリーディング式、若しくはデュオサーボ式等に分類される。
【0003】
例えば、デュオサーボ型ドラムブレーキ501は、図17に示すように、円筒状のブレーキドラム509内に、互いに対向配置した第1ブレーキシュー503と第2ブレーキシュー505の一対のブレーキシューを備える。第1ブレーキシュー503は、ブレーキドラム509の前進回転方向入口側(図中上側)が入力部とされると共に、ブレーキドラム509の前進回転方向出口側(図中下側)は例えばアジャスタ515を介して第2ブレーキシュー505の入口側(図中下側)に連結される。一方、第2ブレーキシュー505の出口側(図中上側)はバッキングプレート上に装備されたアンカ部507に当接させられ、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505に作用するアンカ反力をアンカ部507で受け止めるようになっている。
【0004】
これにより、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505を拡開させてブレーキドラム509の内周面511に押し付けると、第1ブレーキシュー503に作用するアンカ反力が第2ブレーキシュー505の入口側に入力して第2ブレーキシュー505をブレーキドラム509の内周面511に押し付けるように作用するため、第1ブレーキシュー503と第2ブレーキシュー505の双方がリーディングシューとして動作し、非常にゲインの高い制動力を得ることができる。
【0005】
このようなデュオサーボ型ドラムブレーキ501は、リーディングトレーリング式やツーリーディング式のドラムブレーキ装置と比較して、極めて高い制動力を得ることができるばかりでなく、小型化し易く、ディスクブレーキの内部にパーキングブレーキ機構として組み込まれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−28212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パーキングブレーキ機構としてのデュオサーボ型ドラムブレーキ501は、図17(A)に示す操作前の状態から、図示しない拡開機構の拡開力(図中、白抜き矢印)により第1ブレーキシュー503と第2ブレーキシュー505のアンカ部507側が拡開されると、図17(B)に示す操作初期において、拡開された第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505は、互いにアンカ部507から離れてブレーキドラム509の内周面511に圧接する。この際、内周面511からの反力(図中、矢印)で、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505がアジャスタ515側へ移動する。
【0008】
図17(C)に示す操作終了時、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505は、ブレーキドラム509の内周面511の曲率に沿って移動し、アンカ部507と反対側のブレーキドラム509の内周面513に圧接する。そこで、内周面513からは、アンカ部507側へ上向きの反力(図中、矢印)が、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505に作用する。
【0009】
この時、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505は、アンカ部507と反対側(一般にアジャスタ515の側)には拡開機能がないため、ブレーキドラム509の内周面513に対する密着性が不足する場合がある。
その結果、図17(D)に示すパーキング制動力発生までに、第2ブレーキシュー505の出口側がアンカ部507に当接する方向に、第1ブレーキシュー503および第2ブレーキシュー505が微小変位して拡開機構の拡開力が低下するので、パーキング制動力が生じるときに所謂緩み現象が発生する場合があった。
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、デュオサーボ式パーキングブレーキにおいて、パーキング制動力が生じる時に発生する緩み現象を防止できるパーキングブレーキ機構および電動パーキングブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が拡開機構からの入力側とされる第1ブレーキシューと、前記第1ブレーキシューと対向して前記ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が前記拡開機構からの入力側とされるとともに他端側が前記第1ブレーキシューの他端側にアジャスタを介して連結される第2ブレーキシューと、バッキングプレートに装備され、前記第1ブレーキシューの一端側及び前記第2ブレーキシューの一端側に当接されるアンカ部と、前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され、入力側端が前記拡開機構に当接するとともに出力側端が前記第2ブレーキシューの他端側に連結された前記アジャスタに当接する伝達レバーと、を備え、前記第1ブレーキシューの他端側と前記アジャスタとの間に所定の間隙が設けられることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【0012】
上記(1)の構成のパーキングブレーキ機構によれば、パーキングブレーキが作動すると、拡開された第1ブレーキシュー及び第2ブレーキシューの一端側は、互いにアンカ部から離れてブレーキドラムの内周面に圧接する。この際、第1ブレーキシューの一端側及び伝達レバーの入力側端への拡開機構からの入力は、伝達レバーの出力側端を介してアジャスタに連結された第2ブレーキシューの他端側に伝達される。
そして、パーキングブレーキの操作終了後、デュオサーボ式ドラムブレーキの自己倍力効果によってパーキング制動力が発生するまでに、第1ブレーキシュー又は第2ブレーキシューの一端側がアンカ部に当接してブレーキドラムの内周面に密着すると、これらブレーキシューが微小変位するが、パーキング制動力でアジャスタ側に発生した反力は伝達レバーを介して拡開機構に伝達されると共に、第1ブレーキシューの他端側とアジャスタとの間に設けた間隙がこの微小変位を吸収する。そこで、拡開機構の拡開力が低下せず、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。その結果、パーキングブレーキの安心感が向上する。
【0013】
(2) 上記(1)の構成のパーキングブレーキ機構であって、前記第1ブレーキシューの第1ウエブには段付きスリーブが貫通され、前記段付きスリーブは、前記バッキングプレートに貫通支持される貫通ピンに貫通され、前記第1ウエブを挟んで前記バッキングプレートと反対側の段部が前記貫通ピンとの間に介装されるバネ座およびスリーブ押圧スプリングの押圧によって前記第1ブレーキシューの浮き上がりを規制し、前記伝達レバーは、前記第1ウエブと前記バッキングプレートとの間で前記段付きスリーブに貫通されて前記段付きスリーブを中心に回転自在となるとともに、一部分がU字状に折り曲げられた挟持片部によって前記第1ウエブを挟んで前記第1ブレーキシューに保持されることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【0014】
上記(2)の構成のパーキングブレーキ機構によれば、段付きスリーブは、バッキングプレートに支持される貫通ピンによって、段部がバネ座およびスリーブ押圧スプリングを介して第1ブレーキシューの浮き上がりを規制する。伝達レバーは、第1ウエブとバッキングプレートとの間に配置され、貫通された段付きスリーブを中心に回転自在となる。段付きスリーブを中心に回転自在となった伝達レバーは、第1ウエブを挟む挟持片部によって第1ウエブに保持される。従って、第1ウエブおよび伝達レバーの双方が段付きスリーブを介して支持され、第1ブレーキシューの浮き上がり防止と、伝達レバーの回転自在な支持とが、簡素で安価な構成となる。
【0015】
(3) ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、一端側が拡開機構からの入力側とされる第1ブレーキシューと、前記第1ブレーキシューと対向して前記ブレーキドラムの内周面に沿って配置され、他端側が前記第1ブレーキシューの他端側にアジャスタを介して連結される第2ブレーキシューと、バッキングプレートに装備され、前記第1ブレーキシューの一端側及び前記第2ブレーキシューの一端側に当接されるアンカ部と、前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され、入力側端が前記拡開機構に当接するとともに出力側端が前記アジャスタに当接されており、前記拡開機構からの入力によって前記第1ブレーキシューと前記第2ブレーキシューの一端側よりも先に他端側を拡開させる切替レバーと、を備えることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【0016】
上記(3)の構成のパーキングブレーキ機構によれば、パーキングブレーキ作動時に、切替レバーを介した拡開機構からの入力により第1ブレーキシューと第2ブレーキシューの他端側(アジャスタ側)が一端側(アンカ部側)より先に拡開される。そこで、第1ブレーキシューと第2ブレーキシューの一端側は、拡開時にアンカ部側に移動され、アンカ部と離れることがない。従って、第1ブレーキシューおよび第2ブレーキシューは、他端側と一端側との双方に拡開力が生じるため、第1ブレーキシューおよび第2ブレーキシューとドラム摺動面との密着性が向上し、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。その結果、パーキングブレーキの安心感が向上する。
(4) 上記(3)の構成のパーキングブレーキ機構であって、前記切替レバーが、第1支点ピンによって前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され入力側となる第1切替レバーと、第2支点ピンによって前記第1ブレーキシューに回転自在に支持され前記第1切替レバーに従動して回転する出力側となる第2切替レバーと、を有し、前記第1切替レバーが、前記拡開機構に設けられる拡開機構突出端部と第1ウエブとで回転軸方向に挟まれ、前記第2切替レバーが、前記アジャスタに設けられるアジャスタ突出端部と第1ウエブとで回転軸方向に挟まれることを特徴とするパーキングブレーキ機構。
【0017】
上記(4)の構成のパーキングブレーキ機構によれば、第1切替レバーが第1支点ピン、第2切替レバーが第2支点ピンによって第1ブレーキシューに回転自在に保持される。そこで、第1支点ピン及び第2支点ピンの位置や、拡開機構と第1切替レバーとの摺接点の位置、第1切替レバーと第2切替レバーとの摺接点の位置、第2切替レバーとアジャスタとの摺接点の位置を設定することで、第1及び第2切替レバーの適正な伝達比を容易に選定することができ、第1ブレーキシューおよび第2ブレーキシューとドラム摺動面との最適な密着性が得やすくなる。
更に、第1切替レバーが拡開機構突出端部と第1ウエブとの間で回転軸方向に挟まれ、第2切替レバーがアジャスタ突出端部と第1ウエブとの間で回転軸方向に挟まれる。そこで、第1切替レバー及び第2切替レバーは、平板形状であってもそれぞれの当接点が外れることがなく、簡素な形状で安価な構成とすることができる。
【0018】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1つの構成のパーキングブレーキ機構を備える電動パーキングブレーキであって、前記バッキングプレートの裏側面には、前記拡開機構に接続されたパーキングケーブルを引っ張り駆動する駆動機構が配設されていることを特徴とする電動パーキングブレーキ。
【0019】
上記(5)の構成の電動パーキングブレーキによれば、バッキングプレートの裏側面に配設した駆動機構によってパーキングケーブルが引っ張られることによって、電動により拡開機構が作動可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るパーキングブレーキ機構によれば、デュオサーボ式パーキングブレーキにおいて、パーキング制動力が生じる時に発生する緩み現象を防止できる。
また、本発明に係る電動パーキングブレーキによれば、パーキングブレーキを電動化できる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキの斜視図である。
図2図1に示したドラムブレーキの正面図である。
図3図2に示したドラムブレーキの右側面図である。
図4図2に示したドラムブレーキの背面図である。
図5図2に示したドラムブレーキの上面図である。
図6図2に示したドラムブレーキのV−V断面矢視図である。
図7図2に示したドラムブレーキのVII−VII断面矢視拡開機構図である。
図8図2に示したドラムブレーキのVIII−VIII断面矢視図である。
図9図2に示したドラムブレーキの操作前(A)、操作初期(B)、操作終了(C)、制動力発生(D)を表した作用説明図である。
図10】本発明に係る第2実施形態のパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキの斜視図である。
図11図10に示したドラムブレーキの正面図である。
図12図11に示したドラムブレーキの斜視図である。
図13図11に示したドラムブレーキのXIII−XIII断面矢視図である。
図14図11に示した第1切替レバーおよび第2切替レバーが作動前のドラムブレーキの概略構成図である。
図15図11に示した第1切替レバーおよび第2切替レバーが作動後のドラムブレーキの概略構成図である。
図16図11に示したドラムブレーキの操作前(A)、操作初期(B)、操作終了(C)、制動力発生(D)を表した作用説明図である。
図17】従来のパーキングブレーキ機構を構成するデュオサーボ型ドラムブレーキの操作前(A)、操作初期(B)、操作終了(C)、制動力発生(D)を表した作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1図5に示すように、本第1実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ11は、所謂デュオサーボ式ドラムブレーキと呼ばれるものである。ドラムブレーキ11は、バッキングプレート13が車輪の回転軸心に対して略垂直となる姿勢で車体に一体的に固設される。バッキングプレート13には、それぞれ略円弧形状を成している一対のブレーキシューである第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17が左右の外周縁に略沿って上下に配設される。
【0024】
第1ブレーキシュー15は、図示しないブレーキドラムの内周面に沿って配置され、ドラム前進回転方向入口側(一端側)がトグル式の拡開機構19からの入力側となる。第2ブレーキシュー17は、第1ブレーキシュー15と対向してブレーキドラムの内周面に沿って配置され、ドラム前進回転方向出口側(一端側)が拡開機構19からの入力側となる。
【0025】
拡開機構19は、図7に示すように、一端部において連結ピン23により相対回動可能に連結されたレバー部材25およびストラット27を備えており、連結ピン23がバッキングプレート13と略平行となる姿勢で配設されている。
レバー部材25は金属板にて構成されており、第2ブレーキシュー17と係合させられる係合部29(凹部)が設けられている。また、レバー部材25の他端部にはケーブル掛止部31が設けられ、パーキングケーブル33の先端に固設された掛止部材が掛止される。
ストラット27は、2枚の金属板を略U字形状に曲げ加工したもので、その内側にレバー部材25が配設されているとともに、連結ピン23と反対の他端部は互いに密着するように内側へ曲げられて一体的に重ね合わされ、第1ブレーキシュー15と係合させられる係合部29(凹部)が設けられている。また、このストラット27には、所定形状に曲げ形成された板バネ35が装着される。
【0026】
バッキングプレート13には、アンカ部37が装備される。アンカ部37は、金属ブロックの切削加工あるいは鍛造により形成され、バッキングプレート13に固定される。アンカ部37には、第1ブレーキシュー15のドラム前進回転方向入口側(一端側)と第2ブレーキシュー17のドラム前進回転方向出口側(一端側)が当接される。
【0027】
拡開機構19は、アンカ部37をバッキングプレート13と共に図示しない車両のキャリアなどに一体的に固設する複数のボルトの頭部39に当接して支持されるようになっており、バッキングプレート13には、パーキングケーブル33を挿通させるための挿通穴41が設けられている。ケーブル掛止部31は、バッキングプレート13に対して略垂直な方向において挿通穴41と略一致する部分に位置させられており、パーキングケーブル33を車体側(図7の下側)から挿通穴内に挿入することにより、ケーブル掛止部31に掛止される。アンカ部37に支持された第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17の一端側の間には、図2に示す引張コイルスプリング43が略水平に配設されている。
【0028】
アジャスタ21は、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17のライニング45の摩耗の進行に応じて、これら第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17の他端側の間隔を調整する。アジャスタ21は、アジャスタ用スプリング85により先端がアジャスタ上の調整用歯車47に当接された図示せぬアジャスタレバーの動作で、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17の他端側の間隔を自動調整するように構成されている。
【0029】
それぞれの第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17は、第1シューホールドダウン装置49および第2シューホールドダウン装置51によって、バッキングプレート13に拡開可能に保持されている。
【0030】
更に、第1ブレーキシュー15には、図1、2及び図4に示す伝達レバー53が回転自在に支持されている。伝達レバー53は、図4及び図8に示すように、入力側端が拡開機構19に当接するとともに、出力側端がアジャスタ21に当接される。この伝達レバー53は、第1ブレーキシュー15の他端側とアジャスタ21との間に所定の間隙S1が形成されるように、出力側端の形状が設定されている(図8参照)。
【0031】
本第1実施形態において、伝達レバー53は、第1シューホールドダウン装置49によって第1ブレーキシュー15の第1ウエブ55に回転自在に支持される。第1シューホールドダウン装置49は、図6に示すように、段付きスリーブ57と、貫通ピン59と、バネ座61と、スリーブ押圧スプリング63と、を有する。第1ブレーキシュー15の第1ウエブ55には、段付きスリーブ57が貫通される。段付きスリーブ57は、バッキングプレート13に貫通支持される貫通ピン59に貫通される。段付きスリーブ57は、第1ウエブ55を挟んでバッキングプレート13と反対側の段部57aが貫通ピン59との間に介装されるバネ座61およびスリーブ押圧スプリング63の押圧によって、第1ブレーキシュー15の浮き上がりを規制している。伝達レバー53は、第1ウエブ55とバッキングプレート13との間で段付きスリーブ57に貫通されてスリーブ57を中心に回転自在となる。また、伝達レバー53は、一部分がU字状に折り曲げられた挟持片部65によって、第1ウエブ55を挟んで第1ブレーキシュー15に保持される。
【0032】
なお、第2シューホールドダウン装置51は、第1シューホールドダウン装置49の構成から、段付きスリーブ57を省略したものとなっている。従って、第2シューホールドダウン装置51では、スリーブ押圧スプリング63が第2ウエブ67を直接押圧するように構成されている。
【0033】
次に、上記構成を有するドラムブレーキ11の作用を説明する。
本第1実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ11では、パーキングブレーキ作動時に、パーキングケーブル33が、車室内の操作部材(操作レバーなど)の操作に従ってバッキングプレート13と略直角な作用方向(図7の下方)へ引っ張られる。
【0034】
すると、レバー部材25が連結ピン23の左まわりに回動させられることにより第2ブレーキシュー17が外側(図7の右方向)へ押し出され、図示しないブレーキドラムの内周面に押圧される。このブレーキドラムからの反力で第2ブレーキシュー17との係合部29を支点として連結ピン23が図7の左方向へ移動させられると、ストラット27も左方向へ移動させられる。
ストラット27は、この移動によって第1ブレーキシュー15の一端側及び伝達レバー53の入力側端を図7の左方へ押圧する。ストラット27に押圧された第1ブレーキシュー15及び伝達レバー53は、図1の第1シューホールドダウン装置49の段付きスリーブ57を中心に反時計回りに回転される。そして、拡開された第1ブレーキシュー15及び第2ブレーキシュー17の一端側は、互いにアンカ部37から離れてブレーキドラムの内周面に圧接する。
この際、第1ブレーキシュー15の他端側とアジャスタ21との間には所定の間隙S1が設けられているので、第1ブレーキシュー15の一端側及び伝達レバー53の入力側端への拡開機構19からの入力は、伝達レバー53の出力側端を介してアジャスタ21に連結された第2ブレーキシュー17の他端側に伝達される。
【0035】
次に、上記構成を有するドラムブレーキ11の作用を説明する。
図9は本第1実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ11の操作前(A)、操作初期(B)、操作終了(C)、制動力発生(D)を表した作用説明図である。
本第1実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ11では、図9(A)に示す操作前の状態から、パーキングケーブル33が、車室内の操作部材(操作レバーなど)の操作に従って引っ張られると、拡開機構19の拡開力(図中、白抜き矢印)により第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17のアンカ部37側が拡開されると共に、伝達レバー53も第1ブレーキシュー15と供に移動される。
【0036】
すると、図9(B)に示す操作初期において、拡開された第1ブレーキシュー15及び第2ブレーキシュー17は、互いにアンカ部37から離れてブレーキドラムの内周面100に圧接する。この際、内周面100からの反力(図中、矢印)で、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17がアジャスタ21側へ移動する。
【0037】
図9(C)に示す操作終了時、第1ブレーキシュー15及び第2ブレーキシュー17は、ブレーキドラムの内周面100の曲率に沿って移動し、アンカ部37と反対側のブレーキドラムの内周面101に圧接する。そこで、内周面101からは、アンカ部37側へ上向きの反力(図中、矢印)が、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17に作用する。なお、第1ブレーキシュー15の他端側とアジャスタ21との間には所定の間隙S1が設けられているが、このアンカ部37側への反力は、伝達レバー53の出力側端から段付きスリーブ57を介して第1ブレーキシュー15に伝達される。
【0038】
そして、操作終了後、デュオサーボ式ドラムブレーキの自己倍力効果によって図9(D)に示すパーキング制動力発生までに、第2ブレーキシュー17の一端側がアンカ部37に当接してブレーキドラムの内周面100,101に密着すると、これらブレーキシュー15,17が微小変位するが、パーキング制動力でアジャスタ21側に発生した反力(図中、白抜き矢印)は伝達レバー53を介して拡開機構19に伝達されると共に、第1ブレーキシュー15の他端側とアジャスタ21との間に設けた間隙S1が間隙S2に縮小してこの微小変位を吸収する。
そこで、本第1実施形態のドラムブレーキ11では、拡開機構19の拡開力が低下せず、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。その結果、パーキングブレーキの安心感が向上する。
【0039】
また、本第1実施形態において、段付きスリーブ57は、バッキングプレート13に支持される貫通ピン59によって、段部57aがバネ座61およびスリーブ押圧スプリング63を介して第1ブレーキシュー15の浮き上がりを規制する。伝達レバー53は、第1ウエブ55とバッキングプレート13との間に配置され、スリーブ貫通孔69に貫通された段付きスリーブ57を中心に回転自在となる。段付きスリーブ57を中心に回転自在となった伝達レバー53は、第1ウエブ55を板厚方向に挟む挟持片部65によって第1ウエブ55に保持される。従って、第1ウエブ55および伝達レバー53の双方が段付きスリーブ57を介して支持され、第1ブレーキシュー15の浮き上がり防止と、伝達レバー53の回転自在な支持とが、簡素で安価な構成となる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ71について説明する。
図10図12に示すように、本第2実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ71は、上記第1実施形態に係るドラムブレーキ11と同様に、所謂デュオサーボ式ドラムブレーキと呼ばれるものである。なお、上記第1実施形態に示したドラムブレーキ11の構成部材と同等の構成部材には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0041】
本第2実施形態のドラムブレーキ71は、上記第1実施形態に示したドラムブレーキ11に用いられていた伝達レバー53に代えて、第1切替レバー73と、第2切替レバー75とで構成された切替レバーを用いている。
第1切替レバー73は、第1ブレーキシュー15の第1ウエブ55に垂設された第1支点ピン77によって第1ブレーキシュー15のドラム前進回転方向入口側(一端側)位置に回転自在に支持され入力側となる。第2切替レバー75は、第1ウエブ55に垂設された第2支点ピン79によって第1ブレーキシュー15の略中間位置に回転自在に支持され第1切替レバー73に従動して回転する出力側となる。
【0042】
図13に示すように、第1切替レバー73は、拡開機構19に設けられる拡開機構突出端部81と第1ウエブ55とで回転軸方向に挟まれる。また、第2切替レバー75は、アジャスタ21に設けられるアジャスタ突出端部83と第1ウエブ55とで回転軸方向に挟まれる。第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17のアジャスタ21側は、アジャスタ用スプリング85によって接近方向に付勢されている。
【0043】
これら第1切替レバー73および第2切替レバー75は、拡開機構19からの入力によって第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17のアンカ部37側(一端側)よりもアジャスタ21側(他端側)を先に拡開させるように支点と力点と作用点との間の距離が設定されている。
本第2実施形態では、操作部材の非操作状態において、図14に示すように、ストラット27と第1切替レバー73とは、第1摺接点87で接触し、第1切替レバー73と第2切替レバー75とは第2摺接点89で接触し、第2切替レバー75とアジャスタ21とは第3摺接点91で接触する。
なお、アンカ部37に支持された第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17の一端側は、引張コイルスプリング43によって接近方向に付勢されているが、図13に示すように、第1ブレーキシュー15の一端側とストラット27との間に所定の間隙Sが形成されるように、第1切替レバー73及び第2切替レバー75の形状が設定されている(図14参照)。
【0044】
図14中の左右に第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17を配置したバッキングプレート13を左右に二分割する仮想中心線93に沿う方向の第1摺接点87と第1支点ピン77との距離をA、仮想中心線93に沿う方向の第1支点ピン77と第2摺接点89の距離をB、仮想中心線93に沿う方向の第2摺接点89と第2支点ピン79との距離をC、仮想中心線93に沿う方向の第2支点ピン79と第3摺接点91との距離をDとする。そして、それぞれの距離が(A/B)×(C/D)>1に設定されると共に、第1ブレーキシュー15の一端側とストラット27との間に所定の間隙Sが設けられることで、図15に示すように、第1切替レバー73及び第2切替レバー75を介した拡開機構19からの入力によって第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17のアンカ部37側(一端側)よりもアジャスタ21側(他端側)が先に拡開されることとなる。
【0045】
次に、上記構成を有するドラムブレーキ71の作用を説明する。
図16は本第2実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ71の操作前(A)、操作初期(B)、操作終了(C)、制動力発生(D)を表した作用説明図である。
本第2実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ71では、図16(A)に示す操作前の状態から、パーキングケーブル33が、車室内の操作部材(操作レバーなど)の操作に従って引っ張られると、第1ブレーキシュー15の一端側とストラット27との間には所定の間隙Sが設けられているので、拡開機構19の拡開力(図中、白抜き矢印)により第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17のアンカ部37側が拡開される前に、第1切替レバー73が第1支点ピン77を中心に反時計回りに回動される。
【0046】
すると、図16(B)に示す操作初期において、第1切替レバー73が第2切替レバー75を押圧し、第2切替レバー75が第2支点ピン79を中心に反時計回りに回転する。その結果、第2切替レバー75は、アジャスタ21を介して第2ブレーキシュー17のアジャスタ21側(他端側)を押圧する。これにより、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17とは、アジャスタ21側が拡開し、ブレーキドラムの内周面101に圧接した後、内周面101からの反力(図中、矢印)でアンカ部37側へ動く。つまり、第2切替レバー75がアジャスタ21を押圧することにより、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17とのアジャスタ21側(反アンカ側)が先に拡開することになる。そこで、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17のアンカ部37側は、拡開時にアンカ部37側に移動され、アンカ部37と離れることがない。
【0047】
図16(C)に示す操作終了時、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17は、アジャスタ21側のブレーキドラムの内周面101とアンカ部37側のブレーキドラムの内周面100に圧接する。そこで、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17には、アジャスタ21側のブレーキドラムの内周面101からはアジャスタ21に向かう内向きの反力(図中、矢印)が作用し、アンカ部37側のブレーキドラムの内周面100からはアジャスタ21側へ下向きの反力(図中、矢印)が作用する。
【0048】
この時、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17は、アンカ部37とアジャスタ21側の双方で拡開され、ブレーキドラム摺動面に対する密着性が向上する。その結果、図16(D)に示すパーキング制動力発生までに、第1ブレーキシュー15又は第2ブレーキシュー17のアンカ部37(一端側)がアンカ部37に当接する方向に変位することによって発生する緩み現象が防止される。
【0049】
このように、本第2実施形態のドラムブレーキ71では、第1切替レバー73及び第2切替レバー75から成る切替レバーを介した拡開機構19からの入力により第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17とのアジャスタ21側(他端側)がアンカ部37側(一端側)より先に拡開される。そこで、第1ブレーキシュー15と第2ブレーキシュー17のアンカ部37側は、拡開時にアンカ部37側に移動され、アンカ部37と離れることがない。従って、第1ブレーキシュー15及び第2ブレーキシュー17は、アジャスタ21側とアンカ部37側との双方に拡開力が生じるため、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17とドラム摺動面との密着性が向上し、パーキング制動力が生じる時に発生す緩みが防止される。その結果、パーキングブレーキの安心感が向上する。
【0050】
また、本第2実施形態のドラムブレーキ71では、第1切替レバー73が第1支点ピン77、第2切替レバー75が第2支点ピン79によって第1ブレーキシュー15に回転自在に保持される。そこで、第1支点ピン77及び第2支点ピン79の位置や、ストラット27と第1切替レバー73との第1摺接点87の位置、第1切替レバー73と第2切替レバー75との第2摺接点89の位置、第2切替レバー75とアジャスタ21との第3摺接点91の位置を設定することで、第1及び第2切替レバー73,75の適正な伝達比を容易に選定することができ、第1ブレーキシュー15および第2ブレーキシュー17とドラム摺動面との最適な密着性が得やすくなる。
【0051】
更に、第1切替レバー73が拡開機構突出端部81と第1ウエブ55との間で回転軸方向に挟まれ、第2切替レバー75がアジャスタ突出端部83と第1ウエブ55との間で回転軸方向に挟まれる。そこで、第1切替レバー73及び第2切替レバー75は、平板形状であってもそれぞれの当接点が外れることがなく、簡素な形状で安価な構成とすることができる。
【0052】
上記第1及び第2実施形態に係るドラムブレーキ11及びドラムブレーキ71は、バッキングプレート裏側面97に配設され、拡開機構19に接続されたパーキングケーブル33を引っ張り駆動する駆動機構としてのモータギアユニット95(図13参照)を取り付けることで、電動パーキングブレーキとすることができる。
電動パーキングブレーキによれば、バッキングプレート裏側面97に配設したモータギアユニット95によってパーキングケーブル33が引っ張られることによって、電動により拡開機構19が作動可能となる。
【0053】
従って、本実施形態に係るパーキングブレーキ機構を構成するドラムブレーキ11又はドラムブレーキ71によれば、デュオサーボ式パーキングブレーキにおいて、パーキング制動力が生じる時に発生する緩み現象を防止できる。
【0054】
また、本実施形態に係る電動パーキングブレーキによれば、パーキングブレーキを電動化できる。
【符号の説明】
【0055】
13…バッキングプレート
15…第1ブレーキシュー
17…第2ブレーキシュー
19…拡開機構
21…アジャスタ
33…パーキングケーブル
37…アンカ部
53…伝達レバー
55…第1ウエブ
57…段付きスリーブ
59…貫通ピン
61…バネ座
63…スリーブ押圧スプリング
65…挟持片部
73…第1切替レバー
75…第2切替レバー
77…第1支点ピン
79…第2支点ピン
81…拡開機構突出端部
83…アジャスタ突出端部
95…モータギアユニット(駆動機構)
97…バッキングプレート裏側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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