特許第5950772号(P5950772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャパンマリンユナイテッド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5950772-溶接トーチ用補助具 図000002
  • 特許5950772-溶接トーチ用補助具 図000003
  • 特許5950772-溶接トーチ用補助具 図000004
  • 特許5950772-溶接トーチ用補助具 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950772
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】溶接トーチ用補助具
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/28 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   B23K9/28 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-200616(P2012-200616)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-54654(P2014-54654A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】森 常人
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214455(JP,A)
【文献】 特開平11−123579(JP,A)
【文献】 特開2000−015151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に溶接トーチを着脱可能に装着するトーチ保持部と手元部に枢着されたレバーとを有する操作棒と、
前記トーチ保持部に設けられ、前記溶接トーチのトーチスイッチをオン・オフさせるリンクと、
前記レバーにより前記リンクを動作させるように、前記リンクと前記レバーとを繋ぐワイヤと、
を備えたことを特徴とする溶接トーチ用補助具。
【請求項2】
前記手元部に装着される前記レバーの取付位置を調整できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の溶接トーチ用補助具。
【請求項3】
前記操作棒は、中間部で折れ曲がるように2本の棒が互いに枢着されてなり、かつ、任意の曲げ角度で固定可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の溶接トーチ用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造船、鋼構造物、橋梁などの溶接作業において、手動により溶接を行う際に使用する溶接トーチ用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の溶接作業の一例を図4に示す。例えば、図4(a)のように上向き姿勢の溶接の場合、作業者は腕を上げて溶接するため腕が疲れ、長時間続けて溶接することができない。図4(b)のような狭隘箇所での溶接作業では、その狭隘箇所に作業者が入り込んで溶接箇所に手を伸ばして溶接しなければならず、溶接がしにくい姿勢となるため溶接能率が低下する。また、図4(c)のように張り出し部材などがある場合、手が届かないとそこに乗るか、足場をセットしてから作業をする必要があり、安全上の問題や、段取りが増える等の問題が出てくる。
【0003】
上記のような溶接状況に鑑み、溶接トーチの使用に際しての利便性を図るため様々な工夫、提案がなされている。例えば、特許文献1は、先端部にガス供給ノズルを有するトーチボディの長さを伸縮可能にした溶接トーチについて開示している。また、特許文献2は、産業用ロボットに装着されるものであるが、トーチボディが湾曲自在な溶接トーチについて開示している。また、一般的な市販の溶接トーチでは、トーチボディの長さや曲げ角度が異なるものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214455号公報
【特許文献2】特開2003−251466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示すような様々な溶接状況に対応させるには、市販の溶接トーチのようにトーチボディの長さや曲げ角度が固定されたものでは、その都度溶接トーチを取り替えなければならず、面倒なうえにコスト増を招く。
特許文献1の溶接トーチでも、トーチボディの長さに制限があるため、同様の問題がある。
特許文献2の技術では、自動機械である産業用ロボットそれ自体が高価であるだけでなく、造船、鋼構造物、橋梁などの溶接作業では自動溶接よりもむしろ手動溶接の方が手軽で便利な場合が多い。
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、普段使っている溶接トーチを簡単に装着でき、低コストで、様々な溶接状況に対応できる溶接トーチ用補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶接トーチ用補助具は、先端部に溶接トーチを着脱可能に装着するトーチ保持部と手元部に枢着されたレバーとを有する操作棒と、前記トーチ保持部に設けられ、前記溶接トーチのトーチスイッチをオン・オフさせるリンクと、前記レバーにより前記リンクを動作させるように、前記リンクと前記レバーとを繋ぐワイヤと、を備えたものである。
【0008】
また、本発明に係る溶接トーチ用補助具において、前記手元部に装着される前記レバーの取付位置を調整できるようにしたものである、また、前記操作棒は、中間部で折れ曲がるように2本の棒が互いに枢着されてなり、かつ、任意の曲げ角度で固定可能に構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る溶接トーチ用補助具は、上記のように構成されているので、既存の溶接トーチを簡単に装着できるとともに、低コストで、様々な溶接状況に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る溶接トーチ用補助具の構成図。
図2】本発明の実施の形態2に係る溶接トーチ用補助具の構成図。
図3図2に示す溶接トーチ用補助具の操作棒の屈折部の固定方法を示す図。
図4】従来の溶接状況を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る溶接トーチ用補助具の実施の形態を図面を参照して説明する。本発明の各実施の形態において共通するものは、特に断らない限り、同一の符号で示すものとする。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接トーチ用補助具10の構成図(概略の側面図)で、作業者が上向き姿勢で溶接している状態を併せて示している。
この溶接トーチ用補助具10は、例えば、既存の溶接トーチ20を操作棒11の先端部に取り付けて手元操作で溶接が実施できるようにしたものである。
操作棒11は、例えばアルミパイプのごとき軽量な材料を用いて構成される。樹脂製のパイプでもかまわない。この操作棒11の先端部に溶接トーチ20を装着するためのトーチ保持部12が設けられている。
トーチ保持部12は、角形の筒状に形成されており、この角形筒部の中に溶接トーチ20のトーチホルダー部21を収納し保持するようになっている。また、トーチ保持部12には蓋またはバンド(図示せず)が設けられており、これにより溶接トーチ20を着脱可能に構成している。
さらに、トーチ保持部12の側面には、略L字状のリンク13がピン14により回転自在に枢着されている。リンク13は、その先端部13aが回動することによって、溶接トーチ20のトーチスイッチ22をオン・オフさせるものである。
【0013】
一方、操作棒11の手元部には、レバー15がピン16により回転自在に枢着されている。そして、レバー15とリンク13の他端部13bとがワイヤ17で繋がれている。レバー15は、ワイヤ17で繋がれたリンク13を手元操作で回動させるものである。また、ボルト23を緩めてレバー15の操作棒11との取付位置を自由に調節できるようにすることで、溶接トーチ用補助具10の長さを調節することができる。レバー15の取付位置を調整するために、ワイヤ17は長さが調整できるようになっており、リンク13の他端部13bまたは、レバー15部のいずれかで調整する。これにより、作業者がより溶接作業のしやすい体勢をとることができる。また、リンク13またはレバー15を元の位置に復帰させるためのバネ(図示せず)がリンク13またはレバー15に装着されている。
【0014】
次に、上記のように構成された溶接トーチ用補助具10の使用方法並びに動作について説明する。
【0015】
溶接箇所に適した溶接トーチ20を、操作棒11先端部のトーチ保持部12に装着する。また、レバー15を適切な位置にセットし、ワイヤ17の長さを調節する。
以上により、溶接開始前の準備が終了する。
【0016】
次に、溶接トーチ20先端を溶接箇所に向け、操作棒11手元部のレバー15を握ると、レバー15がピン16を中心に操作棒11側へ図1において時計回りに回動し、レバー15にワイヤ17で繋がれたリンク13がピン14を中心に図1において反時計回りに回動するので、リンク13の先端部13aによってトーチスイッチ22をオンさせる。これにより、溶接トーチ20に通電され、溶接トーチ20先端から溶接ワイヤおよびシールドガスが自動送給されるとともに、溶接ワイヤから被溶接材との間でアークが発生して被溶接材の溶接を実行することができる。溶接を停止するときは、レバー15に対する把持力を解放すれば、図示しないバネによってレバー15及びリンク13が元の位置に復帰するので、トーチスイッチ22はオフとなり、溶接トーチ20への通電が遮断され溶接を停止する。
【0017】
以上のように、本実施の形態1によれば、溶接作業を楽な姿勢で行うことができる。例えば、図1に示すように、上向き姿勢の溶接の場合、腕を上げて溶接しなければならなかった箇所でも腕を下ろした状態で溶接できるようになり、作業者の負担を軽減することができるとともに、溶接作業の連続性を保つことができる。また、この溶接トーチ用補助具10は構造が簡単なため安価に製作が可能であり、しかも溶接箇所に応じて適宜、既存の溶接トーチ20に取り替えて溶接できるので、低コストで、様々な溶接状況に対応させることができる。
【0018】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係る溶接トーチ用補助具10の構成図(概略の側面図)で、図3は、図2に示す溶接トーチ用補助具10の操作棒11の屈折部の固定方法を示す図である。
【0019】
本実施の形態2に係る溶接トーチ用補助具10は、操作棒11が中間部で2本の棒が折れ曲がるように構成した以外は実施の形態1と基本的に同じ構成である。ここでは主にその相違点について述べることとし、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0020】
図2図3に示すように、操作棒11は、中間部で折れ曲がるようになっている。すなわち、上部操作棒11aと下部操作棒11bとは、例えば、ボルト11cにより回転自在に枢着されており、ボルト11cを蝶ナット11dで締め付け固定することにより、上部操作棒11aに対し下部操作棒11bを任意の曲げ角度θで保持するようになっている。本例では、−45゜≦θ≦45゜の可動範囲としている。
また、操作棒11の屈折部には、リンク13とレバー15とを繋ぐワイヤ17を屈折させてガイドするワイヤガイド18が設けられている。
【0021】
また、図1には示されていなかったが、リンク13をその先端部13aが溶接トーチ20のトーチスイッチ22から離れる方向に付勢するバネ(ねじりバネ)19がトーチ保持部12に設けられている。
【0022】
本実施の形態2によれば、操作棒11が中間部で折れ曲がるようになっているので、真っ直ぐな操作棒11では溶接しにくい箇所でも溶接できるようになり、溶接作業の利便性、能率向上に貢献する。
【0023】
以上のように、本発明に係る溶接トーチ用補助具10を使用することにより、重筋作業の軽減、溶接作業の連続性向上に効果を発揮できた。
【符号の説明】
【0024】
10 溶接トーチ用補助具
11 操作棒
11a 上部操作棒
11b 下部操作棒
11c ボルト
11d 蝶ナット
12 トーチ保持部
13 リンク
13a 先端部
13b 他端部
14 ピン
15 レバー
16 ピン
17 ワイヤ
18 ワイヤガイド
19 バネ
20 溶接トーチ
21 トーチホルダー部
22 トーチスイッチ
23 ボルト
図1
図2
図3
図4