【実施例】
【0019】
以下、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用ドアトリム10を意匠面側すなわち車室内側から見た概略正面図で、
図2は
図1におけるII−II矢視部分の拡大断面図、すなわち車両用ドアトリム10に設けられたオーナメント12の縦断面図である。このオーナメント12は、車両用ドアトリム10の上端のショルダー部分(窓の下端部分)に設けられる車両用内装部品で、全体として略垂直(鉛直)になる姿勢で配設される。オーナメント12は、板状の基材14と、その基材14の表面22に沿って略平行に重ね合わされるように配置された表層部材16とから成る重ね合わせ複合部品で、板状パネルに相当し、基材14の表面22は合わせ面に相当するが、突起としてリブ20が設けられた参考例である。
【0020】
表層部材16は第2部材で、軟質ポリ塩化ビニル等の比較的軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料にて一体成形されており、上記表面22と略平行な板状部18を有するとともに、その板状部18の裏面には基材14の表面22に向かって突き出す多数のリブ20が一体に設けられている。そして、これ等のリブ20により板状部18と表面22との間に空間24が形成されるとともに、リブ20の先端が表面22に密着する状態で、板状部18の外周端末部26が基材14の外周縁部に巻き付けられて図示しない係止部に係止されており、表層部材16が基材14に一体的に取り付けられている。基材14は第1部材に相当し、上記表層部材16よりも硬質のポリプロピレン等の合成樹脂材料にて一体成形されており、裏面に設けられた取付部30を介して車両用ドアトリムに一体的に取り付けられる。
【0021】
上記多数のリブ20は、それぞれ車両の前後方向に互いに略平行に直線状に延びる細長い突起で、
図3に示すように板状部18の裏面に対して略垂直に立設されているとともに、先端程幅寸法が小さくなる先細形状を成している。また、板状部18に対して垂直な中立面に対して対称形状を成しており、先端部には丸みが設けられている。リブ20の間隔であるピッチPすなわちリブ20の中心距離は、例えば4mm≦P≦7mm程度の範囲内で定められ、リブ20の高さ寸法Hは、例えば2mm≦H≦4mm程度の範囲内で定められ、リブ20の幅寸法dは、例えば1mm≦d≦2mm程度の範囲内で定められ、リブ20の両側の側壁の傾斜角度αは、例えば2°≦α≦5°程度の範囲内で定められる。これ等の寸法や角度は、表層部材16の材質などを考慮して、所定の触感(ソフト感や剛性感など)や強度等が得られるように適宜定められる。このリブ20は、例えばオーナメント12の車両前後方向の全長に亘って連続して設けることもできるが、本参考例では車両前後方向において複数に分断され、所定の間隔を隔てて断続的に設けられている。
【0022】
そして、このようなオーナメント12においては、表層部材16の板状部18に腕や肩などが押圧された場合、リブ20の先端が基材14の表面22に押圧されて弾性変形(圧縮変形や撓み変形)させられることによりクッション性が付与される。本参考例では、表層部材16よりも硬質の板状の基材14を備えているため、その基材14によって所定の剛性や強度を確保しつつ、表層部材16に設けられたリブ20の弾性変形により、その表層部材16に腕や肩などが押圧された場合に優れた触感が得られる。
【0023】
ここで、本参考例では、
図2に示すようにリブ20の高さ寸法Hが、オーナメント12の上下方向において滑らかに連続的に変化しており、その高さ寸法Hの変化に対応して、板状部18と基材14の表面22との間の距離すなわち隙間寸法も、オーナメント12の上下方向において滑らかに連続的に変化している。具体的には、下端部のリブ20の高さ寸法Hは第1寸法H1で、上端部のリブ20の高さ寸法Hは第2寸法H2(>H1)であり、下端部から上端部に向かうに従ってその全域で高さ寸法Hが徐々に増大している。本参考例では、第1寸法H1≒2.5mm、第2寸法H2≒3.5mmで、約1mm変化している。すなわち、本参考例ではリブ20が設けられた全域が徐変領域に相当するが、そのリブ20の高さ寸法Hの徐変に拘らず、表層部材16の板状部18の表面が目的とする意匠面形状となるように成形されている。一方、基材14は略一定の板厚寸法で、リブ20の高さ寸法Hの変化に応じてオフセットして形成されており、具体的には、リブ20の高さ寸法Hの変化に拘らず表面22がそのリブ20の先端に接するように、上端部から下端部へ向かうに従って車両内側へ突き出し、板状部18に対して徐々に接近するように変形させられている。言い換えれば、表層部材16の外周端末部26を基材14の外周縁部に巻き付けて組み付けた状態で、その表層部材16の表面が目的とする意匠面形状となるように、リブ20の高さの変化に合わせて基材14の形状が設定されている。
【0024】
なお、上記第1寸法H1、第2寸法H2は、表層部材16を基材14に組み合わせる前の自然状態におけるリブ20の高さ寸法Hである。これに対し、リブ20の先端が基材14の表面22に接する組み合わせ状態における表面22と板状部18との間の距離(隙間寸法)は、リブ20の高さ寸法Hと略同じであるが、表層部材16を基材14に組み付ける際の引張荷重やリブ20の弾性によっては、リブ20の弾性変形で上記高さ寸法Hよりも小さくなる場合がある。
【0025】
このようなオーナメント12においては、リブ20の高さ寸法Hすなわちクッションストロークが徐々に変化する徐変領域を有するため、触感が部分的に相違させられ、触感に対する要求が部分的に異なる場合でも部分毎に適切な触感を付与することが可能で、商品の品質が向上する。また、リブ20の高さ寸法Hが徐々に変化するため、触感が急に変化して違和感を生じさせることが防止され、この点でも商品の品質が向上する。
【0026】
すなわち、オーナメント12の上方部は下方部に比較して乗員の肩や腕などが押圧される可能性が高く、クッション性に対する要求が高いため、上方部のリブ20の高さ寸法Hが大きくされてクョッション性が高められることにより、必要十分な触感を確保しつつ、下方へ向かうに従ってリブ20の高さ寸法Hが徐々に低くされることで触感の急な変化が抑制される。
【0027】
また、基材14は略一定の板厚寸法で、リブ20の高さ寸法Hの変化に応じてオフセットして形成されており、リブ20の高さ寸法Hの変化に拘らず表面22がそのリブ20の先端に接するように、上端部から下端部へ向かうに従って板状部18に対して徐々に接近するように変形させられているため、意匠面形状を変更することなく簡単な設計変更で徐変領域を設けることにより容易に商品品質を向上させることができる。
【0028】
次に、他の参考例および本発明の実施例を説明する。なお、以下の参考例および実施例において前記参考例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0029】
図4は前記
図2に対応する縦断面図で、このオーナメント40も参考例であり、前記リブ20の高さ寸法Hが前記第1寸法H1で一定の下端側の低突起領域ELと、高さ寸法Hが前記第2寸法H2で一定の上端側の高突起領域EHとを有し、それ等の低突起領域ELと高突起領域EHとの間に高さ寸法Hが第1寸法H1から第2寸法H2へ徐々に変化する徐変領域ECが設けられている。この参考例では上下方向の中間位置の平坦面部分に徐変領域ECが設定される。低突起領域ELは第1クッション領域で、高突起領域EHは第2クッション領域である。また、表層部材16の板状部18の形状すなわち意匠面形状は前記参考例と同じで、基材14は、板状部18が目的とする意匠面形状を維持したままリブ20の先端に表面22が密着させられるように、リブ20の高さ寸法Hに応じて形状が定められる。具体的には、上記高突起領域EHでは板状部18との間に第2寸法H2と略等しい隙間が形成され、低突起領域ELでは板状部18との間に第1寸法H1と略等しい隙間が形成されるように、何れも板状部18と略平行に形状が定められる。また、徐変領域ECでは、リブ20の高さ寸法Hの変化に拘らず表面22がリブ20の先端に接するように、高突起領域EHから低突起領域ELへ向かうに従って板状部18に対して徐々に接近するように変形させられている。
【0030】
本参考例においても、リブ20の高さ寸法Hが部分的に相違させられることにより、触感に対する要求が部分的に異なる場合でも部分毎に適切な触感を付与することができるなど、前記参考例と同様の作用効果が得られる。また、リブ20の高さ寸法Hが第1寸法H1の低突起領域ELと、リブ20の高さ寸法Hが第2寸法H2の高突起領域EHとを有し、それ等の境界部分に徐変領域ECが設けられているため、触感の急な変化を防止しつつ触感が明確に異なる複数のクッション領域(EL、EH)を設定できる。これにより、触感に対する要求が部分的に異なる場合に、その部分毎に明確に触感の違いを識別できるようにすることが可能で、商品の品質が一層向上する。
【0031】
図5は前記
図4に対応する縦断面図で、このオーナメント42も参考例であり、前記オーナメント40に比較して徐変領域ECの位置が相違する。すなわち、本参考例では上端部の近傍において上方へ向かうに従って車両外側方向へ滑らかに湾曲させられたコーナー部分に徐変領域ECが設定されており、この場合も前記参考例と同様の作用効果が得られる。
【0032】
ここで、
図2、
図4、
図5は別々の参考例のオーナメント12、40、42に関するもので、車両の前後方向において各図に示す略一定の断面形状で構成されているが、例えば
図1のオーナメント12を車両の前後方向において複数の領域に区分し、その区分毎にリブ20の高さ寸法Hの変化形態を
図2、
図4、
図5に示すように変化させることもできる。車両の前後方向においてリブ20の高さ寸法Hを連続的に変化させることも可能である。また、
図2、
図4、
図5のリブ20は車両の前後方向に沿って設けられているが、車両の上下方向に沿って延びるリブを採用することもできるし、前後方向および上下方向の多数のリブが交差する格子状のリブを設けることも可能である。
【0033】
また、細長いリブ20に代えて、
図6に示すような微小突起32を表層部材16の裏面に点在形成するようにしても良い
。図6の(a) は実際の大きさに近い状態(直径φ=50mm)で示した平面図で、(b) は(a) におけるVIb 部を拡大して示した平面図である。これ等の平面図は、何れも前記板状部18に対して垂直方向から見た状態である。また、
図7は
図6の(b) における VII−VII 矢視部分の拡大縦断面図、
図8は
図6の(b) におけるVIII−VIII矢視部分の拡大縦断面図である。これ等の図から明らかなように、多数の微小突起32は同一形状で、板状部18に対して垂直な方向から見た平面視(
図6の状態)において長手形状(この
参考例では長方形)を成しており、同一形状の多数の多角形の各辺がそれぞれ隣接する多角形の辺と重なる格子模様34を形成するように、その多角形の各辺を構成する位置にその辺と長手方向とが略平行になる姿勢で設けられている。本
参考例では、微小突起32の平面視の形状は、四隅が丸められた長方形で、その長手方向が多角形の各辺と一致する姿勢で配置されている。また、格子模様34は、
図6の(b) に二点鎖線で示すように、多角形として一定の大きさの正六角形が連続して繰り返すハニカム模様で、微小突起32は、その正六角形の各辺の中央部分に一つずつ設けられている。この微小突起32についても、前記リブ20と同様に、各部の寸法や角度は、表層部材16の材質などを考慮して、所定の触感(ソフト感や剛性感など)や強度等が得られるように適宜定められる。
【0034】
そして、上記微小突起32の高さ寸法Hが前記参考例と同様に徐変させられ、或いは部分的に相違させられることにより、触感に対する要求が部分的に異なる場合でも部分毎に適切な触感を付与することができるなど、前記参考例と同様の作用効果が得られる。
【0035】
図9は、本発明が、車両用内装部品であるセンターコンソール50に、略水平になる姿勢で配設される肘掛け部品52に適用された実施例で、この肘掛け部品52は運転者が肘掛けとして利用できるだけでなく、コンソールボックスを開閉する蓋部材としても機能するものである。
図9は、肘掛け部品52を含むセンターコンソール50の斜視図で、
図10は
図9におけるX−X矢視断面に相当する肘掛け部品52の車両前後方向の縦断面図、
図11は
図9におけるXI−XI矢視断面に相当する肘掛け部品52の車両幅方向の縦断面図である。肘掛け部品52は、前記オーナメント12と同様に板状の基材54と、その基材54の表面56に沿って略平行に重ね合わされるように配置された表層部材58とから構成されている。基材54の表面56は合わせ面に相当する。
【0036】
表層部材58は第2部材で、軟質ポリ塩化ビニル等の比較的軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料にて一体成形されており、上記表面56と略平行な板状部60を有するとともに、その板状部60の裏面には基材54の表面56に向かって突き出す多数の突起62が一体に設けられている。この突起62は、例えば前記微小突起32と同様に構成される。そして、これ等の突起62により板状部60と表面56との間に空間64が形成されるとともに、突起62の先端が表面56に密着する状態で、板状部60の外周端末部66が基材54の外周縁部に巻き付けられて一体的に固定されることにより、表層部材58が基材54に一体的に取り付けられている。基材54は第1部材に相当し、表層部材58よりも硬質のポリプロピレン等の合成樹脂材料にて一体成形されている。
【0037】
この肘掛け部品52は、上記突起62の高さ寸法Hが中央部分では車両前後方向および左右方向の周辺部分に比較して大きくされており、周辺部分から中央部分に向かうに従って高さ寸法Hが徐々に大きくなるように変化している徐変領域ECを有する。具体的には、
図10に示す車両前後方向では、突起62の高さ寸法Hが第1寸法H1で一定の周辺部分の低突起領域ELと、高さ寸法Hが第2寸法H2で一定の中央部分の高突起領域EHとを有し、それ等の低突起領域ELと高突起領域EHとの間に高さ寸法Hが第1寸法H1から第2寸法H2へ徐々に変化する徐変領域ECが設けられている。また、
図11に示す車両幅方向では、突起62の高さ寸法Hが第1寸法H1で一定の周辺部分の低突起領域ELと、中央部分で第2寸法H2に達するように高さ寸法Hが徐々に増減させられている徐変領域ECとを有する。第1寸法H1、第2寸法H2は、所望のクッション性能が得られるように適宜定められる。
【0038】
表層部材58の板状部60は、目的とする意匠面形状である略平坦な形状に成形されており、基材54は、板状部60が目的とする意匠面形状を維持したまま突起62の先端に表面56が密着させられるように、突起62の高さの変化に応じてオフセットして形状が定められる。具体的には、前記高突起領域EHでは板状部60との間に第2寸法H2と略等しい隙間が形成され、低突起領域ELでは板状部60との間に第1寸法H1と略等しい隙間が形成されるように、何れも板状部60と略平行に形状が定められる。また、徐変領域ECでは、突起62の高さ寸法Hの変化に拘らず表面56が突起62の先端に接するように、低突起領域ELから高突起領域EHへ向かうに従って板状部60から徐々に離間させられており、全体として中央部分が突起62の寸法差(H2−H1)だけ下方へ突き出すように変形させられている。
【0039】
本実施例においても、突起62の高さ寸法Hが部分的に相違させられることにより、触感に対する要求が部分的に異なる場合でも部分毎に適切な触感を付与することができるなど、前記参考例と同様の作用効果が得られる。また、突起62の高さ寸法Hが第1寸法H1の低突起領域ELと、突起62の高さ寸法Hが第2寸法H2の高突起領域EHとを有し、それ等の境界部分に徐変領域ECが設けられているため、触感の急な変化を防止しつつ触感が明確に異なる複数のクッション領域(EL、EH)を設定できる。これにより、触感に対する要求が部分的に異なる場合に、その部分毎に明確に触感の違いを識別できるようにすることが可能で、商品の品質を一層向上させることができる。
【0040】
すなわち、本実施例はセンターコンソール50に略水平に配設される肘掛け部品52に関するもので、肘掛け部品52の中央部分(高突起領域EH)には運転者の肘が載せられるためクッション性に対する要求が高い一方、周辺部分(低突起領域EL)では肘がずり落ちないように逆にクッション性が低い方が望ましいため、突起62の高さの徐変により部位毎に適切な触感が付与され、高い商品品質が得られる。例えば運転者が肘掛け部品52の中央部分に肘を載せた際に、最適なドライビングポジションをとることができるなど、違和感の無い着座姿勢を確保することができる。
【0041】
図12のオーナメント70は参考例で、前記オーナメント12に比較して、表層部材16の表面、すなわち板状部18のリブ20が設けられた側と反対側の面に、表皮材72が一体的に固着されており、板状の基材14と合わせて全体として3層構造を成している場合である。表皮材72は、例えば織布や不織布、編布、塩化ビニル、軟質フィルムなどで構成されており、表層部材16と一体成形することにより、その表層部材16の成形と同時に成形されるとともに、その表層部材16の表面に一体的に固着される。また、表皮材72の外周端末部74は、基材14の外周縁部に巻き付けられて、図示しない係止部に係止されている。
【0042】
このようなオーナメント70においても、前記オーナメント12と同様の作用効果が得られる。加えて、表層部材16が表皮材72によって被覆されるため、その表層部材16の板状部18のリブ20と反対側の面にヒケや艶ムラ等が生じても外部に露出することが無いとともに、表層部材16の傷付きが防止される。このため、その表層部材16の樹脂材料の選択の幅が広くなるとともに、触感に関与するリブ20の形状等の設計の自由度が高くなり、触感の調整を一層容易に且つ適切に行うことができる。
【0043】
なお
、図9の肘掛け部品5
2についても、オーナメント70のように表皮材を設けることができ
る。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。