特許第5950822号(P5950822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950822放射性同位元素を生成するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950822
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】放射性同位元素を生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/06 20060101AFI20160630BHJP
   G21G 4/08 20060101ALI20160630BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   G21G1/06
   G21G4/08 T
   G21K5/08 R
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-539025(P2012-539025)
(86)(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公表番号】特表2013-511046(P2013-511046A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】US2010056573
(87)【国際公開番号】WO2011093938
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】12/944,694
(32)【優先日】2010年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/944,634
(32)【優先日】2010年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/405,605
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/265,383
(32)【優先日】2009年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/260,585
(32)【優先日】2009年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514075264
【氏名又は名称】グローバル メディカル アイソトープ システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ユ−ヘイ ツァング
【審査官】 関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−086893(JP,A)
【文献】 特開平08−146175(JP,A)
【文献】 特開平03−269399(JP,A)
【文献】 特開平05−080197(JP,A)
【文献】 特開2002−071866(JP,A)
【文献】 特表2002−504231(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/058185(WO,A1)
【文献】 米国特許第03267001(US,A)
【文献】 米国特許第04370298(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0274258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/02 − 1/08
G21G 4/08
G21K 5/08
G21C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素を生成するための方法であって、
中性子を照射するための照射チャンバにおいて、NEU材料から成る複数の平坦なプレートを、中性子反射材料から形成される複数の平行な壁により包囲された複数の領域に導入することと、
該NEU材料を、前記照射チャンバ内の中性子発生器から出力される800keVを超えるエネルギーを有する中性子によって照射することであって、それにより、高速核分裂反応が該NEU材料の中において発生して、核分裂生成物を生成するようにさせ、
該照射することにおいて用いられる少なくとも一部の中性子は、前記中性子反射材料から反射され、それによって、それらの中性子が該NEU材料の中に存在する間の経路長を増加させ、
該経路長の増加は、該NEU材料の中においてそれらの中性子が高速核分裂反応を生じさせる確率を増加させる、ことと、
該核分裂生成物を該NEU材料から抽出することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記抽出された核分裂生成物のうちの1つは、モリブデン−99(Mo−99)、テクネチウム−99m(Tc−99m)、ヨウ素131(I−131)およびヨウ素132(I−132)のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記核分裂生成物を前記NEU材料から抽出することは、前記NEU材料から成る複数の平坦なプレートを、前記平行な複数の壁によって包囲された複数の領域から除去することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記平行な複数の壁によって包囲された複数の領域から除去された前記NEU材料から成る複数の平坦なプレートを、室温のイオン性液体において溶解することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記核分裂生成物を該NEU材料から抽出することは、
キャリアガスを前記照射チャンバに導入することと、
前記照射チャンバにおいて前記キャリアガスを循環させることと、
前記照射チャンバから前記キャリアガスを排出させることと、
を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記NEU材料から成る複数の平坦なプレートを導入することは、4枚以上の前記NEU材料から成る平坦なプレートを導入することを含む請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
放射性同位元素を生成するための方法であって、
照射チャンバに、NEU材料の複数の平坦なプレートを提供することと、
前記NEU材料の複数の平坦なプレートを、中性子反射材料から成る複数の平行な壁の間に導入することと、
前記NEU材料の前記複数の平坦なプレートを、中性子反射材料から成る少なくとも1つのさらなる壁によって包囲することと、
前記中性子反射材料から成る少なくとも1つのさらなる壁を中性子吸収材料によって包囲することと、
前記NEU材料の複数の平坦なプレートに核分裂閾値を超えるエネルギーを有し、前記照射チャンバ内の中性子発生器により供給される中性子を照射することであって、それにより、高速核分裂反応が該NEU材料の中において発生して、核分裂生成物を生成するようにさせ、
少なくとも一部の中性子に対して、該中性子反射材料は、それらの中性子が前記NEU材料内に残留する時間を延長し、それによって、それらの中性子が該中性子吸収材料に衝突する前に、それらの中性子によって生じさせられる高速核分裂反応の数を増加させる、ことと
前記核分裂生成物の少なくとも一部を抽出することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記核分裂生成物のうちの少なくとも1つを抽出することは、前記NEU材料の複数の平坦なプレートを前記照射チャンバから除去することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記核分裂生成物のうちの少なくとも1つを抽出することは、前記NEU材料の複数の平坦なプレートを前記照射チャンバから除去しないで前記核分裂生成物のうちの少なくとも1つを抽出することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
放射性同位元素を生成するための長方形角柱形状の装置であって、
高速中性子発生器と、
中性子反射材料から成る複数の平坦なプレートにより形成された複数の平行な離間したシェルと、
隣接する前記シェルの間の空間に除去可能に収容された、前記高速中性子発生器によって発生される中性子による照射を受けるNEU材料の複数の平坦なプレートと、
前記複数の平行な離間したシェル及び前記NEU材料の複数の平坦なプレートを包囲する、中性子反射材料から成る最外シェルと、
前記NEU材料の複数の平坦なプレートを導入する導入ポートと、
前記高速中性子発生器によって発生された中性子の照射による生成物を取り除くための排出ポートと、
を有し、
前記複数の平行な離間したシェルは、それぞれの断面が同一の形状を有しており、
前記NEU材料の複数の平坦なプレートは、それぞれの断面が同一の形状を有しており、
前記複数の平行な離間したシェル及び前記NEU材料の複数の平坦なプレートは、交互に重なった層を構成している、
放射性同位元素を生成するための装置。
【請求項11】
外側格納容器をさらに備え、該外側格納容器は、前記最外シェルから外に通過する中性子を吸収するために、中性子吸収材料から作成される1つ以上の壁を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記外側格納容器の壁は、該外側格納容器の壁から散乱または反射される中性子が前記最外シェルに衝突する可能性を制限するために、該最外シェルから離間している、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記高速中性子発生器は、少なくとも10MeVのエネルギーを有する中性子を提供する、請求項10から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記最外シェルは、前記複数の平行な離間したシェルよりも厚い、請求項10から13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の米国特許出願の優先権を主張する:
・米国仮特許出願第61/260,585号(名称「Medical Isotope Production on Demand」、2009年11月12日出願)
・米国仮特許出願第61/265,383号(名称「System for On−Demand Production of I−131」、2009年12月1日出願)
・米国仮特許出願第61/405,605号(名称「Techniques for On−Demand Production of Medical Isotopes Such as Mo−99/Tc− 99m」、2010年10月20日出願)
・米国仮特許出願第12/944,634号(名称「Techniques for On−Demand Production of Medical Isotopes Such As Mo−99/Tc−99m and Radioactive Iodine Isotopes Including 1−131」、2010年11月11日出願)
・米国仮特許出願第12/944,694号(名称「Techniques for On−Demand Production of Medical Radioactive Iodine Isotopes Including 1−131」、2010年11月11日出願)
上記の全ての出願の開示全体は、全ての付録および付属物を含めて、あらゆる目的のために参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、不安定、すなわち、放射性、核同位元素(多くの場合、放射性同位元素と称される)の発生に関し、より具体的には、モリブデン−99(Mo−99)およびその崩壊娘核テクネチウム−99m(Tc−99m)等の医療同位元素、ならびにヨウ素−131(I−131)等の放射性ヨウ素を発生させるための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
放射性同位元素は、非常に小用量において、癌および甲状腺機能亢進症等の疾患のための臨床的療法(放射線治療)、ならび放射性同位元素が対象の体内で集中する領域を撮像する能力を使用した診断において広く使用されている。現在、すべての核撮像手技のうちの約80%は、Tc−99mを利用しており、これは、診断医学のための非常に重要な同位元素となっている。身体の特定の範囲内に集中する分子およびタンパク質は、低エネルギーガンマ線の放出を介して基底状態に崩壊するTc−99mで標識し、ガンマ線カメラまたは検出器を使用して、体外から観察することができる。この方法によって、Tc−99mで標識された化合物が集中する「活性」範囲または領域は、体外から3−Dにおいて観察可能となる。
【0004】
米国の人口が単に高齢化するにつれて、需要が増加することが予測されるTc−99mおよびI−131等の放射性ヨウ素の使用による医療手技の高い需要によって、Tc−99mおよびI−131供給の信頼性は必須である。信頼性のある供給源に対する主な障害は、米国の供給の100%が海外原子炉から輸入されているという事実である。米国の供給は、ほぼすべてカナダ(Chalk River)のNRU ReactorおよびオランダのHFRから調達されており、両原子炉とも築40年以上である。Mo−99の高速崩壊は、生成物が直ぐに出荷され、使用されなければならず、長期保存が不可能であることを意味する。いかなる供給の中断も、メンテナンスのための原子炉の閉鎖等の短期間であっても、欠乏および患者治療遅延を生じさせ得る。実際の欠乏は、最近では、それぞれ、NRU ReactorおよびHFRが、一定期間の間、閉鎖されたときの2007年および2008年に生じている。
【0005】
従来の方法は、高濃縮ウラン(HEU)から作成されるターゲットの熱核分裂に依存する。HEUは、天然ウランに見られる約0.7%を超えるレベルの核分裂可能U−235の割合を93%を超えるレベルまで大幅に増加させるように処理されたウランである。熱核分裂は、低エネルギー(「熱」)中性子によってターゲットを照射し、核分裂を生じさせることを指す。現在、米国は、93%を超えるU−235を有する50kgを超えるHEUを、Mo−99/Tc−99mおよび他の医療同位元素の照射および抽出のために、少なくとも5つの海外核原子炉に輸出している。新しいHEUおよび使用済みHEUの出荷と関連付けられた増殖能および危険性は明らかであるが、Mo−99/Tc−99mの現在の生成は、このプロセスに依存する。
【0006】
使用済みHEUターゲット材料はまた、HEUターゲット内のU−235の1−3%のみが燃焼し、残りのターゲット材料は、依然として92%の濃縮U−235を含有し得るので、脅威である。また、低燃焼のため、3年間の保存後に、HEUターゲット材料は、本質的に接近して取り扱うことができ、これは、その比較的に低い燃焼に起因して、使用済みHEUターゲット材料内の長寿命核分裂生成物の量が極少であることを意味する。使用済みHEUターゲットは、増殖因子を保護するための最小の遮蔽材料によって、比較的に容易に取り扱い、処理することができる。
【0007】
代替技術が提案されているが、それらは、コスト効果がかなり小さいと考えられており、多くの技術的課題を残している。そのような提案の1つは、より低い濃縮レベルのU−235ターゲット(LEU)、例えば、20%を下回るU−235への移行であるが、これは、依然として、核原子炉の必要性を含め、HEUと同一の問題を提起する。提案される別の方法は、鉱石として採鉱することができるMo−98における中性子捕獲の利用である。しかしながら、天然モリブデンは、約24.1%のMo−98を含有し、したがって、ターゲットは、照射に先立って濃縮を必要とする可能性が高い。
【0008】
Mo−99の生成のために提案される他の技術は、陽子加速器(サイクロトロン)を使用して、(p、2n)または(p、pn)反応をMo−100ターゲットにおいて生じさせるステップを含む。再び、天然モリブデンは、約9.64%のMo−100を含有し、したがって、サイクロトロンのためのターゲットもまた、照射に先立って濃縮を必要とする可能性が高い。また、高エネルギー電子加速器から生成された制動放射線を介して、(γ、f)反応をU−235またはLEU、あるいはU−238、もしくは全ての3つの材料の組み合わせにおいて生じさせることが提案されている。
【0009】
粒子加速器を使用する提案される代替方法はすべて、類似の問題を有する。
・すべて、大量かつ濃縮された同位元素ターゲットを必要とする。
・すべて、照射の間、ターゲットから熱の除去を必要とし、技術的課題を提起する。
・生成されたMo−99は、未使用モリブデン同位元素ならびに他の核分裂生成物および放射化副産物を除去するために精製されなければならない。
・すべて、金属ターゲットの場合、高速溶解方法の展開を必要とする。
・廃棄物核分裂生成物および廃棄物ウランの処置および廃棄は、有意な課題を提起する(LEUの場合)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、放射性同位元素の生成のための技術を提供する。医学分野において有用である放射性同位元素は、時として医療同位元素と称されるが、いくつかの安定同位元素は潜在的な医療用途を有し、時として、安定医療同位元素と称される。本発明によって提供される技術は、前述の問題の少なくとも一部を克服する。実施形態は、配送施設から遠く離れた核原子炉に依存せず、広く流通され得る比較的に小型の独立型デバイスとして、実装することができる。
【0011】
本発明の実施形態を説明する際に、以下の用語が、時として、使用される。
・非濃縮ウラン(「NEU」)
・中性子反射材料
・高速中性子
・高速中性子核分裂反応
・中性子発生器
ここで論じられるように、これらの用語は、広義に定義される。
【0012】
用語「非濃縮ウラン」(「NEU」)は、少なくとも、天然ウランと同程度のU−238(99.27%)と、天然ウランと同程度しかU−235(0.72%)を含有しない任意のウランに加え、天然ウランまたは劣化ウランを網羅することが意図される。劣化ウランは、通常、天然量未満のU−235(0.72%)を有するウランを意味するものと理解されるが、商業および軍事目的のために使用される劣化ウランは、より一般的には、0.3%未満のU−235を有する。
【0013】
NEUの定義は、同位元素含有量が、基準を上回って満たす限り、任意の形態のウランに限定されない。NEU材料はまた、NEU原料またはNEUターゲットとも称され、バルク固体材料、粉砕された固体材料、金属削りくず、金属やすりくず、焼結ペレット、液体溶液、溶融塩、溶融合金、またはスラリーの形態であることができる。NEUはまた、その形態に関わらず、意図された用途と適合性がある他の材料と混合することができる。
【0014】
用語「中性子反射材料」は、中性子を反射または散乱させる材料を網羅することが意図される。散乱は、弾性、または概してそうであることが好ましいが、これは、定義のために必要ではない。さらに、実施形態の一部は、プレート、球形シェル、円筒形シェル、チューブ等の固体構造形状に形成される中性子反射材料を使用するが、用語は、粉末、ペレット、削りくず、やすりくず等、小粒子を含む材料を網羅することが意図される。
【0015】
用語「高速中性子」は、多くの場合、Wikipediaが、「約0.025eV」のエネルギーを有するものとして特徴付けている熱中性子と区別するために使用される。Wikipediaはまた、「定義に応じて、1eV、0.1MeV、または約1MeV超」のエネルギーを有するものとして、高速中性子を特徴付けている。この目的のために、用語「高速中性子」は、U−238内の核分裂のための閾値である、800keVを超えるエネルギー(すなわち、0.8MeV)を伴う中性子を意味するであろう。しかしながら、本発明の実施形態は、より高いエネルギー、例えば、10−20MeV、または可能性として、12−16MeVの中性子を使用することができる。例えば、20−100MeV範囲の範囲内のより高いエネルギー中性子もまた、使用することができる。
【0016】
用語「高速中性子核分裂」は、800keVの閾値を上回るエネルギーを伴う、中性子によって生じる、核分裂反応を網羅することが意図される。反応表現(n、f)が、便宜上、使用される。
【0017】
用語「中性子発生器」は、所望のエネルギーの中性子を発生させるための広範囲のデバイスおよびプロセスを網羅することが意図される。Wikipediaは、中性子発生器を以下のように定義する:
中性子発生器は、コンパクトな線形加速器を含有し、水素の同位元素をともに融合する
ことによって、中性子を生成する、中性子源デバイスである;融合反応は、ジュウテリ
ウム、トリチウム、またはこれらの2つの同位元素の混合物のいずれかを、同様に、ジ
ュウテリウム、トリチウム、または混合物のいずれかを含有する、金属水素化物ターゲ
ットに加速することによって、これらのデバイス内で生じる;ジュウテリウム原子(D
+D)の融合は、運動エネルギー約2.45MeVを有するHe−3イオンおよび中性
子の形成をもたらす。ジュウテリウムおよびトリチウム原子(D+T)の融合は、運動
エネルギー約14.1MeVのHe−4イオンおよび中性子の形成をもたらす。
トリトンおよびトリチウム原子(T+T)の融合は、He−4イオンおよび2つの中性子の形成をもたらす。これらの2つの中性子は、0.1eV未満から約9.33MeVの範囲のエネルギーを有することができる。
【0018】
しかしながら、本願で使用されるように、用語「中性子発生器」は、所望のエネルギーの十分な数の中性子を提供するであろう、任意のデバイスをより広義に含むように定義される。これらとして、例えば、以下が挙げられ得るが、それらに限定されない。
・高密度プラズマ集束デバイスは、ジュウテリウムまたはトリチウムプラズマを使用して、2.45MeV中性子、14.1MeV中性子、または広域スペクトル(0.1eV未満から約9.33MeV)を網羅する中性子を生成することができる。
・電子加速器は、高エネルギー電子を電子ビームから変換材料、例えば、タンタル(Ta)、タングステン(W)等上へと送り、それによって、電子エネルギーを制動放射線に変換することができる。次いで、この制動放射線を使用して、中性子濃縮材料と相互作用させ、(γ、n)相互作用を介して、中性子を生成することができる。例えば、ベリリウム同位元素Be−9をγ線で照射することによって、より少ない原子質量および1つまたは2つの中性子を伴う、ベリリウム同位元素を生成することができる(反応は、Be−9(g、n)Be−8、またはBe−9(γ、2n)Be−7で示される)。
・サイクロトロン等の陽子加速器は、高エネルギー陽子を材料、例えば、炭素、ベリリウム、またはリチウム等の材料中に送り、例えば、C−12(p、n)N−12、またはBe−9(p、n)B−9反応を介して、中性子を生成するために使用することができる。
【0019】
要するに、本発明の実施形態は、照射チャンバ内において、劣化または天然ウランターゲットの高速中性子核分裂を使用する。そのようなウランのための一般的用語は、非濃縮ウラン(「NEU」)である。U−238は、高速中性子、すなわち、核分裂閾値を超えるエネルギーを有する中性子によって衝突されると、核分裂を生じさせることができるという点において、核分裂可能である。連鎖反応を維持することができないという点においては、核分裂性ではない。これは、U−238が、核分裂を受ける時、核分裂から生じる中性子が、概して、エネルギー閾値を下回り、より多くのU−238核分裂を生じさせるためである。
【0020】
核分裂を生じさせる目的は、所望の放射性同位元素である、またはそれに崩壊する、核分裂生成物を発生させ、抽出することである。実施形態は、Mo−99/Tc−99mおよび放射性ヨウ素同位元素の抽出に関連して説明されるが、これは、例示にすぎない。
【0021】
本願において、用語「核分裂生成物」は、「核分裂生成物」を「重元素の核分裂によって形成される核(核分裂片)と、核分裂片の放射崩壊によって形成される核種」として定義する、NRC用語集(http://www.nrc.gov/reading−rm/basic−ref/glossary.html)に規定されるように使用されるであろう。したがって、用語は、核分裂反応から直接生じる核のみを網羅するであろう定義より広義に使用される。
【0022】
この解釈は、「核分裂生成物」を「核分裂片およびその崩壊娘核を含む、核分裂内で形成される、残留核」として定義する、http://www.nuclearglossary.com(「The Language of the Nucleus」)における用語集と一致している。用語「核分裂片」は、「核分裂の直接的結果として形成される原子核。これらの核種の崩壊によって形成される核分裂生成物は、含まれない」として定義される。用語「一次核分裂生成物」は、「核分裂片」に対する同義語となる。
【0023】
本発明の実施形態は、NEUの領域を通過後、中性子に散乱または反射を受けさせることによって、NEUターゲット内の高速核分裂を向上させるよう操作する。これは、中性子が、ターゲット材料から離脱する前により長い経路を進行するように、中性子を反射または散乱させる「中性子反射」材料と称されるものをターゲット材料に散在させることによって達成される。これは、中性子が、NEUターゲット材料との核分裂反応を生じさせるより多くの機会を提供する。
【0024】
したがって、所与の中性子は、核分裂反応を生じさせるか、またはU−238によって吸収されることなく、NEUターゲット材料によって占有される領域または複数の領域から離脱する前に、U−238核と複数の相互作用(例えば、散乱事象)を有する傾向がある。NEUターゲット材料内のいくつかの散乱事象後、中性子のエネルギーは、核分裂閾値を下回るであろう。いくつかの異なる幾何学的配設に従って、中性子反射材料をターゲット材料に散在させることができる。
【0025】
特定の形態の原料は、典型的には、照射チャンバの幾何学形状、抽出される核分裂生成物の特性、および核分裂生成物の抽出方法に依存する。好ましい原料は、劣化ウランの形態である。劣化ウランは、ウラン濃縮の副産物であって、約99.3%のU−238を含有する、天然ウランと比較して、99.7%を超えるU−238を含有する。
【0026】
高速核分裂閾値を上回る中性子エネルギーを維持するのと同様に、十分に高い中性子エネルギーを維持し、U−238による中性子吸収を最小限にすることが好ましい。より低速のエネルギーを伴う中性子が、U−238によって捕獲されると、励起されたU−238原子の後続崩壊後、Pu−239が、生成される。代わりに、高速中性子源を使用すると、U−238の核分裂の確率は、捕獲の確率を桁違いに上回り、Pu−239の生成が大きく減少する。
【0027】
一組の実施形態において、NEUおよび中性子反射材料は、NEUおよび中性子反射材料の交互層として形成される。層は、球形シェル、円筒形シェル、平坦プレート等の形態をとることができ、高速中性子発生器は、中心近傍に配置される。これらの実施形態において、照射チャンバは、略球形、略円筒形、または略長方形である。多角形円筒形および多面体等の他の幾何学形状もまた、可能であって、加工をより容易にし得る。
【0028】
別の組の実施形態において、NEUは、複数の並列伸長領域を占有し、各領域は、中性子反射材料によって包囲される。包囲中性子反射材料は、複数のチューブとして形成することができ、固体ロッドまたは粉砕されたNEUをチューブ内に配置することができる。NEUおよび包囲中性子反射材料は、高速中性子発生器の中空中心を伴う、円筒形領域を占有することができる。したがって、この組の実施形態において、照射チャンバは、略円筒形(円形または多角形ベース)である。
【0029】
他の実施形態において、NEUおよび中性子反射材料は両方とも、比較的に小さい物体(例えば、数センチサイズ)として形成され、固体形態またはスラリー内に混合することができる。スラリーは、中性子発生器を包囲するチューブ内を循環することができる。NEUが溶融形態である、実施形態もまた、中性子反射材料が散在されているかどうかに関わらず、循環することができる。NEUの循環は、チャンバ内のすべてのNEUの照射さえもたらす。
【0030】
本発明のある側面において、放射性同位元素を生成するための方法は、NEU材料を照射チャンバの中に導入するステップであって、NEU材料を800keVを超えるエネルギーを有する中性子で照射し、高速核分裂反応をNEU材料内で発生させ、核分裂生成物を生成するステップとをよび核分裂生成物をNEU材料から抽出するステップとを備える。照射チャンバは、中性子反射材料から形成される、1つ以上の壁を有し、照射ステップからの少なくとも一部の中性子は、1つ以上の壁のうちの少なくとも1つから反射され、それによって、それにわたって、それらの中性子が、NEU材料内に存在する間の経路長を増加させる。経路長の増加は、NEU材料内のそれらの中性子が、高速核分裂反応を生じさせる確率を増加させる。
【0031】
いくつかの実施形態において、照射チャンバ内のNEU材料は、単一の空間的連続領域を占有する一方、他の実施形態において、照射チャンバ内のNEU材料は、複数の空間的分離領域を占有する。中性子反射材料から形成される、1つ以上の壁は、照射チャンバの少なくとも1つの内部壁、またはすべての照射チャンバ内のNEU材料を包囲する、外側壁、または両方を備えることができる。
【0032】
本発明の別の側面において、放射性同位元素を生成するための方法は、ある体積のNEU材料を提供するステップと、NEU材料に中性子反射材料を散在させるステップと、体積のNEU材料を付加的中性子反射材料で包囲するステップと、付加的中性子反射材料を中性子吸収材料で包囲するステップと、NEU材料を核分裂閾値を超えるエネルギーを有する中性子で照射し、高速核分裂反応をNEU材料内で発生させ、核分裂生成物を生成するステップとを備える。
【0033】
少なくとも一部の中性子に対して、中性子反射材料は、それらの中性子が、体積のNEU材料内に残留する時間を延長し、それによって、それらの中性子が、中性子吸収材料に衝突する前に、それらの中性子によって生じる高速核分裂反応の数を増加させる。方法はまた、核分裂生成物をNEU材料から抽出するステップを含むことができる。反応および生成物に応じて、抽出は、NEU材料を照射チャンバから除去するステップを必要としてもよく、または必要としなくてもよい。
【0034】
本発明の別の側面において、放射性同位元素を生成するための装置は、高速中性子発生器と、中性子反射材料から作成される複数の離間したシェルとを備える。シェルは、中性子発生器を包囲し、最外シェルを含み、隣接するシェル間の空間は、中性子発生器によって発生される中性子による照射のために、NEUを受容するように構成される、いくつかの領域を提供する。最外シェルは、残りのシェルより厚くあることができる。
【0035】
本発明の別の側面において、放射性同位元素を生成するための装置は、高速中性子発生器と、NEUを中に導入することができる1つ以上の領域を有する照射チャンバと、照射チャンバの中またはその周囲に配置される1つ以上の中性子反射領域とを備える。1つ以上の中性子反射領域は、それらの中性子が、照射チャンバから離脱する前に、中性子発生器からの少なくとも一部の中性子によって進行される経路長を増加するように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態において、装置はまた、最外シェルから外に通過する中性子を吸収するために、中性子吸収材料から作成される1つ以上の壁を有する外側格納容器を備えることができる。外側格納容器の壁は、最外シェルから離間しており、外側格納容器の壁から散乱または反射される中性子が、最外シェルに衝突する可能性を制限することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、照射チャンバは、球形構成であって、1つ以上の中性子反射領域は、中性子反射材料の最外シェルを含む複数の離間した同心球形シェルを含み、シェルは、中性子発生器を包囲し、隣接するシェル間の空間は、NEUを中に導入することができる1つ以上の領域のうちの少なくとも1つを画定する。
【0038】
いくつかの実施形態において、照射チャンバは、円筒形シェルとして形成される部分を有する、外側壁を伴う、円筒形構成であって、1つ以上の中性子反射領域は、中性子反射材料の1つ以上のチューブを含み、1つ以上のチューブのボアは、NEUを中に導入することができる1つ以上の領域のうちの少なくとも1つを画定する。
【0039】
実施形態において、照射チャンバは、円筒形シェルとして形成される部分を有する、外側壁を伴う、円筒形構成であって、1つ以上の中性子反射領域は、中性子反射材料の複数の離間した同軸円筒形シェルを含み、中性子反射材料の円筒形シェル間の空間は、その中に、NEUを導入することができる、1つ以上の領域のうちの少なくとも1つを画定する。
【0040】
いくつかの実施形態において、照射チャンバは、長方形シェルとして形成される部分を有する、外側壁を伴う、長方形構成であって、1つ以上の中性子反射領域は、中性子反射材料の複数の離間したプレートまたは長方形シェルを含み、中性子反射材料のプレートまたは長方形シェルの間の空間は、その中に、NEUを導入することができる、1つ以上の領域のうちの少なくとも1つを画定する。
【0041】
本発明の別の側面において、放射性ヨウ素を生成するための方法は、ウランを照射チャンバの中に導入するステップであって、照射チャンバは、ガス注入口と、ガス排出口とを有する、ステップと、ウラン材料を中性子で照射し、核分裂反応をウラン材料内で生じさせるステップであって、核分裂反応のうちの少なくとも一部は、放射性ヨウ素の生成につながり、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部は、照射チャンバ内で昇華する、ステップと、キャリアガスをガス注入口内に導入し、昇華した放射性ヨウ素と混合し、ガス混合物を形成するステップと、ガス混合物をガス排出口から引き出すステップと、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部をガス混合物の他の成分から分離するステップとを備える。
【0042】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、少なくとも1つの短寿命放射性ヨウ素同位元素が、実質的に、非ヨウ素物質に崩壊するように、一定の時間を経過させるステップと、非ヨウ素物質を残りの放射性ヨウ素から分離するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、ウラン材料は、非濃縮ウラン材料(NEU)である。いくつかの実施形態において、中性子は、U−238に対して、高速核分裂閾値を超えるエネルギーで提供される。いくつかの実施形態において、ガス混合物の少なくとも一部は、放射性ヨウ素の分離後、ガス注入口に戻される。いくつかの実施形態において、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部を分離するステップは、銀ゼオライトトラップを使用するステップを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、ウラン材料は、照射期間後に、照射チャンバから除去され、ウラン材料は、溶媒中に溶解され、それによって、付加的昇華したヨウ素を、付加的ガス混合物の一部として、解放し、付加的放射性ヨウ素の少なくとも一部は、付加的ガス混合物の他の成分から分離される。
【0045】
本発明の別の側面において、放射性ヨウ素を生成するための方法は、ある体積の非濃縮ウラン(「NEU」)材料を照射チャンバ内に提供するステップであって、照射チャンバは、ガス注入口およびガス排出口を有する、ステップと、照射チャンバの中またはその周囲に配置される、1つ以上の中性子反射領域を提供するステップと、ウラン材料を中性子で照射し、核分裂反応をウラン材料内で生じさせるステップとを備え、中性子は、U238に対する高速核分裂閾値を上回るエネルギーで提供され、1つ以上の中性子反射領域は、それらの中性子が、照射チャンバから離脱する前に、中性子の少なくとも一部によって進行される経路長を増加させるように構成され、核分裂反応のうちの少なくとも一部は、放射性ヨウ素の生成につながり、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部は、照射チャンバ内で昇華する。方法はまた、照射の間、キャリアガスをガス注入口内に導入し、昇華した放射性ヨウ素と混合し、ガス混合物を形成するステップと、ガス混合物をガス排出口から引き出すステップと、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部をガス混合物の他の成分から分離するステップとを備える。
【0046】
いくつかの実施形態において、ガス混合物の少なくとも一部は、放射性ヨウ素の分離後、ガス注入口に戻される。いくつかの実施形態において、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部を分離するステップは、銀ゼオライトトラップを使用するステップを含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、照射期間後にNEU材料を照射チャンバから除去するステップと、NEU材料を溶媒中に溶解し、それによって、付加的昇華したヨウ素を、付加的ガス混合物の一部として解放するステップと、付加的放射性ヨウ素の少なくとも一部を付加的ガス混合物の他の成分から分離するステップとを含む。
【0047】
本発明の別の側面において、放射性ヨウ素同位元素を生成するための装置は、中性子発生器と、中性子発生器によって発生される中性子による照射のために、ウラン材料を受容するように構成される、いくつかの領域を提供する、照射チャンバとを備え、照射チャンバは、ガス注入口およびガス排出口を含む。照射の間、核分裂反応が、ウラン材料内で生じ、核分裂反応のうちの少なくとも一部は、放射性ヨウ素の生成につながり、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部は、照射チャンバ内で昇華する。ガス注入口は、キャリアガスをガス注入口に導入し、昇華した放射性ヨウ素と混合し、ガス混合物を形成させるように構成され、ガス排出口は、ガス混合物をガス排出口から引き出すように構成される。装置はまた、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部をガス混合物の他の成分から分離するための機構を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、ウラン材料は、非濃縮ウラン材料であって、中性子は、U−238に対して、高速核分裂閾値を超えるエネルギーで提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の中性子反射領域は、照射チャンバの中またはその周囲に配置され、1つ以上の中性子反射領域は、それらの中性子が、照射チャンバから離脱する前に、中性子の少なくとも一部によって進行される経路長を増加させるように構成される。1つ以上の中性子反射領域は中性子反射材料から形成される、照射チャンバの1つ以上の壁を形成してもよい。
【0049】
本発明の別の側面において、放射性ヨウ素同位元素を生成するための装置は、中性子発生器と、中性子発生器によって発生される中性子による照射のために、ウラン材料を受容するように構成される、いくつかの領域を提供し、ガス注入口およびガス排出口を有する照射チャンバとを備える。照射の間、核分裂反応が、ウラン材料内で生じ、核分裂反応のうちの少なくとも一部は、放射性ヨウ素の生成につながり、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部は、照射チャンバ内で昇華する。装置はさらに、キャリアガスをガス注入口内に導入し、昇華した放射性ヨウ素と混合し、ガス混合物を形成するための機構と、ガス混合物をガス排出口から引き出すための機構と、放射性ヨウ素のうちの少なくとも一部をガス混合物の他の成分から分離するための機構とを含む。
【0050】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、例示であって、限定ではない、明細書および図面の残りの部分を参照することによって、実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明のある実施形態による、放射性同位元素発生器の定型化された高レベル概略図である。
図2図2は、U−238の高速核分裂によって発生された後のMo−99の崩壊生成物を示す。
図3図3は、中性子エネルギーの関数としてのU−238の核分裂断面積および中性子捕獲断面積のグラフである。
図4図4は、本発明のある実施形態による、球形照射チャンバを有する放射性同位元素発生器の簡略化された斜位像である。
図5図5は、本発明のある実施形態による、円筒形照射チャンバを有する放射性同位元素発生器の簡略化された斜位像である。
図6図6は、図4および5に示される放射性同位元素発生器のいずれかに適用される、図4および5内の線6−6に沿った、簡略化された断面図である。
図7図7は、本発明のある実施形態による長方形角柱形状照射チャンバを有する放射性同位元素発生器の簡略化された斜位像である。
図8図8は、図7に示される放射性同位元素発生器の、図7における線8−8に沿った、簡略化された断面図である。
図9図9は、NEUがロッドの形態である、放射性同位元素発生器の簡略化された断面図である。
図10図10は、本発明のある実施形態による、放射性同位元素の発生のためのプロセス概略図である。
図11A図11Aは、並列NEUロッドを伴う円筒形照射チャンバを有する特定の実施形態による、放射性同位元素発生器の斜視図である。
図11B図11Bは、図11Aに示される放射性同位元素発生器の斜視切断図であって、カバーおよび外側円筒が除去されている。
図11C図11Cは、異なる視点からの図11Aに示される放射性同位元素発生器の斜視切断図であって、付加的詳細を示す。
図12図12は、U−238の高速核分裂によって発生された後のI−131の崩壊生成物を示す。
図13図13は、照射チャンバを通るガスの循環に関する付加的詳細を伴う、図6の断面図に示されるもの等の放射性同位元素発生器の簡略化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明のある実施形態による、放射性同位元素発生器10の従来の型に則った高レベル概略図であって、後述の種々の実施形態に一般的に見られ得る顕著な特色を例示するために使用される。放射性同位元素発生器10の主要構成要素として、照射チャンバ15と、高速中性子発生器20と、好ましい実施形態において、1つ以上の中性子反射要素25とを含む。照射チャンバは、非濃縮ウラン(「NEU」)と称されるものの電荷を受けるように構成される。
【0053】
前述のように、NEUは、元素金属、塩、合金、溶融塩、溶融合金、スラリー、または他の混合物を含む任意の好適な形態であることができ、後述のように、いくつかの形状および状態のうちの任意の1つをとることができる。一般化の目的のために、NEUは、複数の任意の形状体30(明確にするために、点描される)として示される。照射チャンバは、概して、1つ以上の充填ポート35aおよび1つ以上の空の(排出)ポート35b等、照射チャンバ内にNEUを導入し、そこからNEUを除去するための機構が提供される。いくつかの実施形態において、ガスを照射チャンバに流動させることが望ましく、この目的を達成するために、チャンバに1つ以上のガス注入口ポート40aおよび1つ以上のガス排出口ポート40bを提供することができる。
【0054】
図1はまた、照射チャンバを包囲する中性子吸収外側格納容器チャンバ45を示す。代表的実施形態において、この外側格納容器チャンバは、照射チャンバと完全に別個の構造であって、放射性同位元素発生器の設置に先立って、施設に建築することができる。格納容器チャンバ45は、コンクリート製の保護容器または貯蔵容器として建築され、ホウ素入りポリエチレン等の特殊中性子吸収材料によって裏打ちされることができる。外側格納容器チャンバは、照射チャンバが、外側格納容器チャンバの壁の任意の点において、比較的に小さい立体角に内在するように、照射チャンバより有意に大きいことが好ましい。これによって、外側格納容器チャンバ壁によって散乱される任意の低速中性子が、照射チャンバ内側に戻る可能性を低減させることに役立つ。
【0055】
照射チャンバ15の壁は、好ましくは、少なくとも、中性子反射材料の層を含み、したがって、中性子反射要素の照射チャンバ15の層と、中性子反射要素25とのの組み合わせは、照射チャンバの中またはその周囲に配置される1つ以上の中性子反射領域を画定すると見なすことができる。後述の実施形態の一部は、チャンバをNEU材料によって占有される分離領域に再分割する効果を有し得る、チャンバ内側に別個の中性子反射要素を含む一方、他の実施形態は、NEU材料によって占有される単一の連続領域を提供する。
【0056】
一般化のために、図1は、別個の分離体としてのNEUを示すが、NEU材料の単一連続体の場合も、発明の範囲内にあると見なされるべきである。図1の概略的性質を踏まえて、中性子反射要素およびNEU体は、照射チャンバに疎に集合しているように示される。しかしながら、ほとんどの実施形態において、NEU材料の領域は、概して、中性子反射材料によって包囲されるように、照射チャンバ内の中空領域を充填するであろう。しかしながら、このことは、中性子反射材料またはNEU材料のいずれも有していない、チャンバの中空部分を排除するものではない。
【0057】
本発明の実施形態は、任意の特定の種類の中性子発生器に限定されない。代表的システムは、可搬型およびコンパクトな加速器を使用することができ、この加速器は、荷電粒子、または中性粒子、または重陽子、またはトリトンをターゲットに加速および指向することが可能であり、このターゲットは、U−238の800keVを超える高速中性子核分裂閾値エネルギーであるエネルギーを有する中性子を生成するために使用されることができる。ターゲット材料は、元素、化合物、または溶液であることができる。他のターゲット材料はまた、トリチウム原子で濃縮される、材料または化合物を含有することができる。具体的には、ジュウテリウム原子とトリチウム原子の融合は、高速核分裂反応をウラン原子内で生じさせるために使用される14.1−MeV中性子を生成する。トリトンが、トリチウム原子で濃縮されたターゲット濃縮によって加速および融合されると、生成された中性子は、0.1eV未満〜約9.3MeVのエネルギーを包含することができる。
【0058】
好適な中性子発生器は、例えば、Adelphi Technology Inc.2003 East Bayshore Rd、Redwood City、CA 94063,Halliburton,10200 Bellaire Blvd.Houston,TX77072、およびSchlumberger Technology、300 Schlumberger Dr.,Sugar Land,Texas 77478から市販されている。
【0059】
放射性同位元素発生器10の動作は、以下のように要約することができる。中性子発生器20は、U−238に対して核分裂閾値を超える中性子を提供する。核分裂を生じさせる目的は、所望の放射性同位元素であるか、またはそれに崩壊する1つ以上の核分裂生成物を発生および抽出することである。
【0060】
図2は、一次核分裂生成物のうちの1つであるか、また、崩壊連鎖を通して生成されるMo−99の崩壊生成物(Z=42)を示す。Mo−99は、約6%の核分裂収率を占める。Mo−99は、66時間の半減期によって、Tc−99(12.5%)およびTc−99の準安定異性体Tc−99m(87.5%)(両方とも、Z=43)に崩壊するであろう。Mo−99およびTc−99mは両方とも、化学抽出プロセスおよび/または電気化学分離器によって、回収することができる。実施形態は、Mo−99/Tc−99mの抽出に関連して説明されるであろう。中性子は、好ましくは、U−238に対する中性子吸収断面が、無視できる状態のままであるエネルギーを上回って維持される。したがって、NEUターゲットは、プロトニウム(Pu−239)を増殖させない。他の核分裂生成物として、同様に、化学抽出プロセスおよび/または電気化学分離器によって回収することができるI−129、I−131、I−132、およびI−133が挙げられる。
【0061】
中性子反射材料の目的および動作は、それらの中性子が、照射チャンバから離脱する前に、中性子発生器からの少なくとも一部の中性子によって進行される経路長を増加させることである。したがって、中性子が、可能性として、その中で1つ以上の散乱相互作用を受けるNEU材料の領域を離脱することによって、付加的NEU材料に衝突する可能性を向上させるように反射または散乱され、したがって、核分裂反応を開始する機会の増加をもたらす。鉄は、中性子反射材料として作用することができる元素の実施例である。特定の実施形態において、ステンレス鋼が、その構造および中性子反射特性の両方のために使用される。中性子エネルギー800keVを超える場合、鉄との各散乱事象は、中性子にエネルギー約0.56MeVを損失させる。したがって、十分な数の散乱事象後(初期エネルギーに応じて)、中性子は、高速核分裂閾値を下回るであろう。
【0062】
(ウランの関連特性および核分裂反応の概要)
ウランの特性および核分裂の物理特性に関する文献は膨大であって、核物理学および工学分野の当業者によって十分に理解されている。完全を期すために、この膨大な知識の関連側面を短い概要を概説することによって、本発明の実施形態の説明の背景を提供する。
【0063】
前述のように、本発明の実施形態は、劣化または天然(すなわち、非濃縮ウランまたはNEU)ターゲットを使用する。天然ウランは、約99.27%U−238、0.72%U−235、および0.0055%U−234である。劣化ウランは、より高い割合のU−235を達成するための、天然ウランを濃縮するプロセスの副産物である。したがって、劣化ウランは、天然ウランよりも有意に少ないU−235およびU−234を含有する(例えば、3分の1未満程度)。本発明の実施形態が、純U−238を使用しない根本的理由は存在しないが、実際問題として遥かに高価となるであろう。
【0064】
さらに、前述のように、本発明の実施形態は、主として、U−238を含有するNEUを高速中性子によって照射して、核分裂を生じさせる。一方、最も一般的核原子炉は、U−235を熱中性子によって照射して、核分裂を生じさせる。U−235およびU−238は両方とも、高速中性子と衝突すると核分裂を受けるが、特性は異なる。
【0065】
1つ目は、2つの同位元素に対する中性子エネルギーの関数としての核分裂断面積の差異である。高速中性子に対するU−235の核分裂断面積は、熱中性子の少なくとも250倍である。核原子炉内の中性子が、典型的には熱化されるので、このことが、核原子炉が、U−235で濃縮されたターゲットを使用してMo−99を生成するために使用される理由である。熱中性子は、U−238の中において核分裂を生じさせることができない。
【0066】
2つ目は、反応の性質である。U−235は核分裂性であって、核分裂反応から生じる中性子が、U−235の核分裂断面積が広いエネルギーを有するので、臨界質量が存在するとき連鎖反応を維持することができることを意味する。一方、U−238は、核分裂可能であるが、核分裂性ではない。U−238は、高速中性子と衝突すると、核分裂を生じることができるが、核分裂反応から生じる中性子の大部分は、付加的U−238核分裂を生じさせるのに十分なエネルギーを有しない。
【0067】
図3は、中性子エネルギーの関数としてのU−238の核分裂断面積および中性子捕獲断面積のグラフである。このグラフは、http://atom.kaeri.re.kr/cgi−bin/endfplot.plに提供されるツールを使用して作成された。U−238はまた、中性子を吸収し、2つのベータ崩壊後にPu−239となる反応経路を有する。この反応経路は、増殖炉において望ましくあり得るが、本発明の実施形態は、核分裂のための断面積が中性子吸収のための断面積を遥かに超える範囲内に、中性子エネルギーを維持することによって、中性子吸収の確率を低減させることを追求する。例えば、図3のグラフから分かるように、2つの断面積は、約1.3MeVの中性子エネルギーにおいて等しい一方、2.2MeVでは、核分裂断面積は、約20倍大きい。故に、減速体として作用するであろう材料を最小化または排除することが好ましい。
【0068】
中性子エネルギーの関数としてのU−238の核分裂断面積のグラフから分かるように、核分裂断面積は、1と2MeVとの間で安定水準に達し、中性子捕獲断面積は、このエネルギー範囲内で急降下する。
【0069】
高速中性子は、核分裂反応を生じさせることなく、NEUを通ってその経路全体を横断することができることを理解されたい。この高速中性子はまた、U−238核から散乱または反射されることができる。中性子反射または散乱材料は、高速中性子が、最終的には、U−238原子核と相互作用し、そのエネルギーが、800keV閾値を下回る前に、核分裂反応を生じさせる確率を向上させるために使用される。この高速中性子が、U−238と相互作用し、核分裂反応を生じさせると、この中性子は、本質的に消失する。核分裂反応後に誕生した2−3個の中性子(即発中性子)が存在し、これらの中性子の一部は、そのエネルギーが800keV閾値を上回ったままであることができるとき、NEU内にいくつかのさらなる核分裂を生じさせることができる。
【0070】
(代表的幾何学的構成の概要)
図4は、本発明のある実施形態による、球形照射チャンバを有する放射性同位元素発生器10sphereの簡略化された斜視図である。充填ポート35aが示されているが、排出ポート35bは、図から見えない。チャンバは、好ましくは、赤道線(隠れた半分は、想像線で示される)によって表される少なくとも2つの区画から加工される。赤道線はまた、切断線6−6によって表される水平平面の交差点を示す。便宜上、ガス注入口ポート40aおよびガス排出口ポート40bは、示されていない。
【0071】
図5は、本発明のある実施形態による、円筒形照射チャンバを有する放射性同位元素発生器10cylの簡略化された斜視図である。再び、充填ポート35aは示されるが、排出ポート35bは、図から見えないであろう。また、ガス注入口ポート40aおよびガス排出口ポート40bも示されない。示されている想像線は、切断線(同様に、6−6)によって表される水平平面の交差点である。照射チャンバ15の円筒形壁は、複数の区画に加工される必要はないが、それも可能である。そのような場合、水平平面の交差点を表す想像線は、円筒形壁の可視部分上に実線として描かれ得る。
【0072】
図6は、放射性同位元素発生器10sphereおよび10cylのいずれかに適用される、図4および5における線6−6に沿った簡略化された断面図である。球形実施形態10sphereの場合、中性子反射要素25は、中性子発生器20を包囲する複数の離間した同心球形シェルとして形成される。円筒形実施形態10cylの場合、中性子反射要素25は、中性子発生器20を包囲する複数の離間した同軸円筒形シェルとして形成される。
【0073】
両実施形態において、NEU体または領域30は、部分的または完全に、中性子反射シェル25間の空間を占有する。図面は、ある領域内に導入されたNEU材料を他の領域へと通じさせる、中性子反射シェル内の孔を示していないという点において、簡略化されている。さらに、再び、図示されないが、シェル間の空間を維持し、付加的構造強度を提供する、隔壁が存在してもよいことが想定される。
【0074】
両実施形態の場合、半径方向内側シェルより厚く示される、最外中性子反射シェルは、少なくとも部分的に、照射チャンバ15を画定する。NEUのための複数の領域が示されるが、いくつかの実施形態は、1つのみの領域(場合によっては、球形または円筒形シェル)を有することができる。さらに、最外中性子反射シェルは、内側シェルまたは複数のシェルより厚くある必要はない。
【0075】
最外中性子反射シェルの半径方向外側には、中性子反射シェルから漏出し得る、アルファ粒子、電子、およびガンマ線等の電離放射線を遮断するために使用される、生体遮蔽50がある。生体遮蔽50はまた、照射チャンバ15を部分的に画定すると見なすことができる。そのような遮蔽は、鉛、鉄、ホウ素入りポリエチレン、あるいはそのような材料の一部または全部の組み合わせ等の材料から作成されることができる。
【0076】
特定の寸法が、本発明の一部を形成するわけではないが、いくつかの代表的寸法、または少なくとも特定の寸法を規定すると見なされ得る要因について論じられる。例えば、NEUは、約30から50cm厚の単一層において形成される、または約10cm厚の複数の層の組み合わせにおいて形成され、約0.5cm厚のステンレス鋼層によって分離されることができる。このように、複数の散乱事象後、中性子エネルギーが、1MeVを下回ると、中性子は、NEUの最外層から漏出するであろう。照射チャンバ15からの格納容器チャンバ45の壁の距離約2.5メートルは、代表的である。
【0077】
図7は、本発明のある実施形態による、長方形角柱形状照射チャンバを有する、放射性同位元素発生器10rectの簡略化された斜位像である。再び、充填ポート35aは示されるが、排出ポート35bは、図から見えないであろう。また、ガス注入口ポート40aおよびガス排出口ポート40bも示されない。示される想像線は、切断線8−8によって表される、水平平面の交差点である。
【0078】
図8は、図7に示される放射性同位元素発生器の、図7に示される線8−8に沿った簡略化された断面図である。本実施形態において、中性子反射要素25は、複数の離間した並列プレートとして形成され、その一部は、中性子発生器20のための空洞を提供するように切断または短縮される。NEU体または領域30は、部分的または完全に、中性子反射プレート25間の空間を占有する。
【0079】
図9は、NEUがロッド55の形態である放射性同位元素発生器10rodの簡略化された断面図であって、そのうちの1つが拡大されて示されている。図から分かるように、各ロッドは、NEU30を含有するボアを包囲する中性子反射材料25の管状シェルを備える。ロッドは、円形断面積として示されるが、多角形チューブもまた使用されることができる。円形断面積は、概して、最も一般的であって、製造および操作がより経済的となるであろうために、概して好ましい。円形断面積は、高速中性子の伝搬に対して最大の構造上の完全性および効率の付加的利点を有する。
【0080】
チューブは、円筒形照射チャンバ内に配置されて示されるが、そうである必要はない。図式的に描写されるように、ロッドは、八角形アレイにレイアウトされ、したがたって、八角形照射チャンバもまた、使用され得る。ロッドはまた、その軸が、同心円筒形表面内にあるように、一式の同心円に沿って分布され得る。
【0081】
(プロセス概要)
図10は、本発明の例示的実施形態による、放射性同位元素の発生のためのプロセス概略図である。概略図内の各ブロックは動作を表すが、ブロックの多くはまた、装置の物理的部品を表す。接続線は、論理フローならびに材料フローを表し、したがって、図はまた、流れ図と見なすことができる。
【0082】
生成は、この例示的実施形態において、劣化ウランであるNEUの初期供給を提供することから開始すると見なすことができる(動作60)。この例示的実施形態は、NEUを粒状形態において使用し、したがって、次いで、NEUは、研磨動作65およびNEUの小片を拒絶する選別動作70を受ける。所望のサイズ基準を満たす片は、好適な形態または状態において、NEUの在庫75に送られ、小片は、在庫を迂回するように方向転換され、後述のように、さらなる処理を受ける。研磨65および選別動70はまた、後述のように、NEUをリサイクルするために使用されることができる。
【0083】
例示的実施形態の目的のために、好適な形態は、所望の公称サイズ、例えば、最小寸法約0.64cm(1/4インチ)以上および最大寸法12.7cm(1/2インチ)以下の「小石」に研磨または粉砕されたNEUであろう。NEUは、例えば、充填ポート35a(図10に図示せず)を通して、重力によって放射性同位元素発生器内に装填され、好適な時間期間の間、好適なエネルギーの中性子で照射される(動作80)。一例示的実施形態において、NEUは、14.1−MeV中性子を使用して、20時間、3.5x1013中性子/秒で照射される。これは、生成と崩壊との間の均衡を提供する。外径182.88cm(6フィート)を有する、NEUの単一30−cm球形シェルの実施例の場合、NEUの質量は、約22,000kgとなるであろう。
【0084】
照射後、現時点において、所望の核分裂生成物および他の核分裂生成物を含む核分裂生成物を含有するNEUは、例えば、排出ポート35b(図10に図示せず)を通して、重力によって放射性同位元素発生器から除去され、放射性同位元素回収動作85を受け、所望の核分裂生成物、この場合、Mo−99を提供する。次いで、回収されたMo−99は、品質管理試験動作90を受け、Tc−99m発生器に装荷するために使用され(動作95)、Tc−99m発生器は、エンドユーザに出荷するために準備される(動作100)。一例として、単一の発生器は、6キュリーを含有してもよく、患者当たり約10−30マイクロキュリーとなり得る、多数の別個の患者線量を調製するために使用されるであろう。
【0085】
Mo−99が回収されたNEUは、他の核分裂生成物を除去するために(そのうちの一部が、望ましい放射性同位元素であり得る)別個の回収動作105を受け、次いで、リサイクル用のNEUを回収するために、さらに別の回収動作110を受ける。後述のように、回収動作は、イオン性液体、より具体的には、室温イオン性液体(RTIL)を使用することができる。
【0086】
回収動作110によって提供される回収されたNEUは、研磨および選別動作を受けるために戻されるが、これらの動作は、当初にシステムに提供されるNEUのために使用されたのと同一の研磨および選別動作65ならびに70であり得る。当初に提供されたNEUの場合のように、選別動作は、NEUの小片を拒絶する。所望のサイズ基準を満たす片は、NEU在庫に戻され、小片は、在庫および照射チャンバを迂回するように方向転換される。
【0087】
照射および核分裂はまた、ガス状態における種々の核分裂生成物を生じさせることができる。これらのガス状核分裂生成物は、それ自体が気体である核分裂生成物(例えば、キセノンおよびクリプトン(kryton))、および固体であるが、容易に昇華するヨウ素(例えば、I−129、I−131、I−132、I−133等)を含む。HEUを使用するいくつかの従来のシステムにおいて、HEUターゲット要素は、封入される。したがって、これらのガス状核分裂生成物は、封入されたターゲット要素内に捕捉され、ガス状核分裂生成物は、Mo−99回収に関連して、照射後に、捕獲されるであろう。加えて、ガス状核分裂生成物が、ターゲットから漏出する程度において、ヨウ素は、冷却剤および減速体として作用する水中に溶解するであろう。
【0088】
この例示的実施形態において、ガス状核分裂生成物(すなわち、核分裂ガスおよび昇華したヨウ素)は、照射の間に抽出される。したがって、Mo−99は、バッチベースで回収されるが、ガス状核分裂生成物は、連続ベースで収集することができる。後述されるように、核分裂ガスおよびヨウ素の一部は、NEUマトリクス内に捕捉されて残り、バッチベースで回収される。
【0089】
この例示的実施形態において、照射チャンバは、1つ以上のガス注入口ポート40aおよび1つ以上のガス排出口ポート40b(図1に図式的に示される)が提供される。さらに、ガス注入口および排出口ポートと照射チャンバ内のNEUとの間の流体連通が提供される。不活性キャリアガス(例えば、アルゴン)が、注入口ポート内に導入され、照射チャンバを通して循環され、ガス状核分裂生成物と混合する。照射チャンバの排出口ポートから流出するガスは、掃気動作115を受け、ガスが、照射チャンバの注入口ポート内に再導入される前に、ガス状核分裂生成物を除去する。
【0090】
掃気動作115によって除去されるガスは、1つ以上の回収動作120を受け、そのうちの1つが示される。これは、標準的化学抽出プロセスまたは標準的電気化学分離であることができる。この例示的実施形態において、ヨウ素(多くの場合、最大着目の放射性同位元素であるI−131を伴う)を抽出することが望しく、これは、銀ゼオライトトラップ内に捕獲され、残りのガス状核分裂生成物は、廃棄のために、HEPAフィルタ内に捕獲されることができる。次いで、ヨウ素(I−131を含む)は、品質管理試験動作125を受け、好適な量にパッケージ化され(動作127)、エンドユーザへの出荷のために準備される(動作130)。
【0091】
参考文献Burger_2004(「HWVP Iodine Trap Evaluation」)、Chapman_2010(「Radioactive Iodine Capture in Silver−Containing Mordenites through Nanoscale Silver Iodide Formation」)、およびWang_2006(「Simulating Gaseous 131I Distribution in a Silver Zeolite Cartridge Using Sodium Iodide Solution」)は、ヨウ素回収のための付加的な背景を提供する。
【0092】
同位元素抽出および分離の分野は、十分に開発されており、Mo−99回収プロセス85は、化学抽出プロセスおよび/または電気化学分離プロセス等の技術を使用し得る。例えば、HEUからのMo−99の回収のための一般化された手技は、原子炉ベースの動作と関連して開発されている。HEUは、通常、アルミニウムクラッドによって、分散型ターゲット内に封入され、HEUは、小型燃料プレートまたはピンの形態をとることができる。照射(典型的には、10−12日)後、ターゲットは、原子炉から除去され、処理ホットセルに輸送される前に数時間、原子炉に隣接するプール内で冷却される。
【0093】
次いで、ターゲットは、アルミニウムの溶解を補助するための可能性として考えられる硝酸水銀(II)(Hg(NO)を添加して、硝酸中に溶解される。溶解後、溶液は、アルミナまたはポリマーカラムに供給され、Mo−99が、重金属を含む少量の他の成分とともに、カラム上に吸収される。カラムがMo−99で装填されると、カラムは、硝酸、次いで、水で洗浄され、次いで、Mo−99は、水酸化アンモニウム溶液を使用してカラムから剥離される。精製は、可能な限り多くの重金属を除去するように行われる。一部の発生炉は、重金属濃度をFDA要件を満たすレベルまで低減させるために、多くの精製ステップを行う必要がある。
【0094】
参考文献NRC_2004の第2章(「Medical Isotope Production without Highly Enriched Uranium」)は、25−30ページにおいて、溶解およびMo−99回収の説明とともに、モリブデン−99/テクネチウム−99m生成および使用の説明を提供する。
【0095】
この例示的実施形態において、Mo−99回収プロセス85は、イオン性液体、より具体的には、室温イオン性液体(RTIL)を使用する。回収プロセスは、ここで説明されるように、一連のサブプロセスを含む。最初に、照射チャンバから取り除かれたNEU(核分裂生成物を含む)は、RTIL中に溶解され(動作135)、Mo−99が溶液から回収される(動作140)。回収動作140は、この例示的実施形態の場合、Mo−99アノードに電着させるステップによる。次いで、回収されたMo−99は、アノードから除去される(動作145)。犠牲アノードの場合、これは、より高い電荷を有するアノードを溶解または別様に破壊するステップによることができる。永久アノードの場合、これは、研削等の技術を含むことができる。
【0096】
参考文献Pemberton_2008(「Solubility and Electrochemistry of Uranyl Carbonate in a Room Temperature Ionic Liquid System」)およびPemberton_2009(「Solubility and Electrochemistry of Uranium Extracted into a Room Temperature Ionic Liquid」)は、付加的な背景を提供する。
【0097】
ヨウ素回収の前述の説明は、若干、簡略されたが、以下において、より詳細に説明される。多くの状況において、核分裂ガスの一部およびヨウ素核分裂生成物の一部は、NEU内に捕捉されて留まり、Mo−99回収の間に解放される。所望の放射性同位元素を回収するために、核分裂ガスおよびMo−99回収の間に解放された昇華したヨウ素を掃気し、ヨウ素(I−131を含む)を抽出し、回収されたヨウ素に品質管理試験を受けさせ、ヨウ素をパッケージ化し、パッケージ化されたヨウ素を出荷のために準備するステップが提供される。これは、NEU溶解(動作135)と関連付けられた想像線ブロックに図式的に示される。
【0098】
これらのブロックは、概して、NEUの照射の間に行われる、掃気動作115、回収動作120、品質管理試験動作125、パッケージ化動作127、および出荷のための準備動作130に対応する。これらのブロックは、異なる時間に行われる動作を表すが、1つ以上は、照射の間に、これらの動作を行うために使用される同一装置を使用して実装されてもよい。これは、「(1つ以上は、照射チャンバと共有され得る)」という説明文によって示される。その可能性はまた、NEU溶解動作135から、NEUを照射するステップ(動作80)と関連付けられるガス掃気動作115までの破線矢印によって、図式的に示される。
【0099】
(並列NEUロッドを有する円筒形照射チャンバによる特定の実施形態)
図11Aは、並列円筒形NEUロッドが並列に配置された円筒形照射チャンバを有する特定の実施形態による、放射性同位元素発生器の斜視図である。図11Bは、図11Aに示される放射性同位元素発生器の斜視切断図であって、カバーおよび外側円筒が除去され、チューブアセンブリおよび中性子発生器が露出されている。図11Cは、異なる視点からの、図11Aに示される放射性同位元素発生器の斜視切断図であって、チューブアセンブリおよび中性子発生器の付加的な詳細を示す。
【0100】
(I−131を含む放射性ヨウ素同位元素の発生および回収)
前述のように、照射および核分裂は、種々の核分裂生成物を生じさせ、これらの一部はガス状態である。放射性ヨウ素131(時として、131I、放射性ヨウ素131、または単純にI−131と称される)は、核分裂ガスではないが、容易に昇華し、したがって、これらのガス状核分裂生成物のうちの1つであって、回収される重要な放射性同位元素である。本発明の実施形態は、I−131および他の放射性ヨウ素同位元素の生成および回収を考慮して設計される。
【0101】
主要着目ヨウ素同位元素は、I−131であるが、核分裂生成物は、いくつかの他の放射性ヨウ素同位元素および放射性ヨウ素に崩壊する他の元素を含む。
【0102】
(I−131の特性および用途)
I−131(原子番号Z=53、78個の中性子)は、半減期8.02日を有し、種々の用途のために使用される。これらは、診断および治療用甲状腺製剤用途(溶液またはカプセル形態のいずれかにおいて)、産業用トレーサ、および抗体標識等の種々の研究用途を含む。I−131はまた、癌の治療において、治療用途のために、抗体を標識するために使用される。
【0103】
放射線療法におけるその用途の実施例として、甲状腺機能亢進症および甲状腺癌の治療を含む。小用量のI−131が飲み込まれると、消化(GI)管の血流の中に吸収され、甲状腺によって血液から集束され、腺細胞の破壊を開始する。診断試験は、甲状腺の正常細胞によるヨウ素の吸収の機構を利用する。実施例として、I−131は、甲状腺が良好に機能するかを試験するために使用することができるヨウ素の放射性同位元素のうちの1つである。
【0104】
図12は、一次核分裂生成物のうちの1つであって、合計核分裂収率のうちの約3%を占めるI−131の崩壊生成物を示す。要するに、I−131は、キセノン131またはXe−131(Z=54、77中性子)に崩壊し、プロセス中、ベータ粒子(β)、ガンマ(γ)線、およびニュートリノ(ν)を放出する。I−131崩壊の一次放出は、364−keVγ線(存在度81%)および606−keVβ粒子(存在度89%)である。
【0105】
図12により詳細に示されるように、崩壊は、実際には、2つのステッププロセスであって、最初に、I−131は、ベータ崩壊によって、Xe−131のいくつかの励起状態のうちの1つに崩壊し、プロセス中、β粒子およびニュートリノを放出し、励起状態におけるXe−131は、準安定状態(Xe−131m)になり、プロセス中、γ線を放出する。第1のステップは、半減期約8日によって生じる一方、第2のステップは、この目的のために、直ちに生じる。
【0106】
図12は、第1の準安定状態を上回る637keVおよび第2の準安定状態を上回る364keVの2つのみの励起状態が示されているという点において、簡略化されている。第1の状態へのベータ崩壊は、ゼロから約333keVのエネルギー範囲を有するベータ粒子をもたらす一方、第2の状態へのベータ崩壊は、ゼロから約606keVのエネルギー範囲を有するベータ粒子をもたらす。残りのエネルギーは、ニュートリノによって奪われる。準安定状態への崩壊の82%において、364−keVガンマ線が放出され、準安定状態への崩壊の7%において、637−keVガンマ線が放出される。他の崩壊機構は、基底状態への崩壊の他の11%を占める。
【0107】
準安定異性体Xe−131mは、半減期11.93日を有し、内部変換の機構によって、安定同位元素Xe−131への異性体転移を受け、プロセス中、単一の164−keV電子を放出する。Xe−131は、キセノンの9つの安定同位元素のうちの1つであって、天然キセノンの21.2%を占める。
【0108】
図12は、核分裂生成物としてのI−131を示し、これは、一次核分裂生成物(核分裂片)であるいくつかのI−131核を含む、およびまた、他の核分裂生成物の崩壊生成物であるいくつかの核を含む。例えば、連鎖内の核分裂片および核分裂生成物として、以下が挙げられる。
・半減期1秒未満に伴って、錫131(Sn−131、Z=50、81個の中性子)にベータ崩壊する、インジウム131(In−131、Z=49、82個の中性子)
・半減期1分未満に伴って、アンチモン131(Sb−131、Z=51、80個の中性子)にベータ崩壊する、Sn−131
・半減期23分に伴って、テルル131の2つの異性体(Te−131およびTe−131、Z=52、79個の中性子)にベータ崩壊する、Sb−131
・半減期25分に伴って、I−131(Z=53、78個の中性子)にベータ崩壊する、Te−131
・(Te−131は、半減期約30時間に伴って、前述のように、I−131にベータ崩壊する、Te−131への異性体転移を受ける)
I−131核分裂片およびI−131崩壊生成物の合計は、合計核分裂収率の約3%を占める。
【0109】
(他の放射性ヨウ素同位元素の特性および用途)
前述のように、核分裂生成物は、I−131に加え、いくつかのヨウ素同位元素を含む。より長い寿命の放射性核分裂生成物として、以下が挙げられる(また、半減期および核分裂収率も示される)。
・I−129(159万年、0.54%)
・I−131(8.042日、約3%)
・I−132(2.29時間(準安定異性体1.4時間)、4.31%)
・I−133(20.8時間(準安定異性体9秒)、6.77%)
・I−134(52.6分、7.87%)
・I−135(6.6時間、6.54%)
これらの同位元素の少なくとも一部は、撮像および/または医療療法における用途を有する(最も有用であるのは、I−131、I−132、およびI−133であると考えられる)。
【0110】
本発明の実施形態はまた、I−142までの放射性ヨウ素同位元素を生成することができる。用途に応じて、本発明の実施形態によって生成される放射性ヨウ素は、他の技術によって生成される純I−131よりも低用量要件を有すると考えられる。I−130(12.4時間(準安定異性体8.9分))は、核分裂片ではなく、Te−130からの崩壊連鎖においてのみ生成されるため、核分裂生成物ではないが、Te−130は、半減期約2.5x1021年を有する。I−127を下回る放射性ヨウ素同位元素は、核分裂片ではなく、安定元素によって遮断されるので、崩壊連鎖生成物でもない。
【0111】
他の放射性ヨウ素同位元素は、短寿命(数時間または数分)であって、非常に少量で生じ、実際問題として無視することができる。I−129は、一次核分裂収率の0.54%を占め、半減期159万年を有し、したがって、本質的に、安定性である。これらの放射性ヨウ素同位元素を分離することが可能であって、用途に応じて、そうする理由が存在し得る。
【0112】
I−132およびI−133は、着目される付加的な放射性ヨウ素同位元素である。I−132生成スキームは、以下の通りである。
・半減期1秒未満によって錫132(Sn−132、Z=50、82個の中性子)にベータ崩壊するインジウム132(In−132、Z=49、83個の中性子)
・半減期40秒によってアンチモン132の2つの異性体(Sb−132およびSb−132、Z=51、81個の中性子)にベータ崩壊するSn−132
・それぞれの半減期4.2分および2.8分によってテルル132(Te−132、Z=52、80個の中性子)にベータ崩壊するSb−132およびSb−132
・半減期3.2日によってヨウ素132の2つの異性体(I−132およびI−132、Z=53、79個の中性子)にベータ崩壊するTe−132
・半減期2.28時間によってキセノン132(Xe−132、Z=54、78個の中性子)にベータ崩壊するI−132
・(I−132は、半減期1.4時間によって、前述のように、Xe−132にベータ崩壊するI−132への異性体転移を受ける)。
I−132核分裂片およびI−132崩壊生成物の合計は、合計核分裂収率の約4.31%を占める。
【0113】
I−133生成スキームは、以下の通りである。
・半減期1秒未満によって錫133(Sn−133、Z=50、83個の中性子)にベータ崩壊するインジウム133(In−133、Z=49、84個の中性子)
・半減期1.4秒によってアンチモン133(Sb−133、Z=51、82個の中性子)にベータ崩壊するSn−133
・半減期2.5分によってテルル133の2つの異性体(Te−133およびTe−133、Z=52、81個の中性子)にベータ崩壊するSb−133
・半減期12.4分によってヨウ素133の2つの異性体(I−133およびI−133、Z=53、80個の中性子)にベータ崩壊するTe−133
・(Te−133は、半減期55.4分によってTe−133への異性体転移を受ける)
・半減期20.8時間によってキセノン133の2つの異性体(Xe−133およびXe−133、Z=54、79個の中性子)にベータ崩壊するI−133
・(I−133は、半減期9秒によって前述のように、Xe−133およびXe−133にベータ崩壊するI−133への異性体転移を受ける)
・半減期5.24日によってセシウム133(Cs−133、Z=55、78個の中性子)にベータ崩壊するXe−133
・(Xe−133は、半減期2.19日に伴って、前述のように、Cs−133にベータ崩壊する、Xe−133への異性体転移を受ける)。
【0114】
I−133核分裂片およびI−133崩壊生成物の合計は、合計核分裂収率の約6.7%を占める。
【0115】
ヨウ素崩壊の最終結果が、キセノンの不活性同位元素(例えば、Xe−131、Xe−132、およびXe−133)である場合、問題はない。そうでなければ、処理は、付加的動作を伴い得る。最終結果が、安定キセノン同位元素ではない場合、例えば、電気化学技術またはイオン交換クロマトグラフィ(イオンクロマトグラフィを使用して、そこから分離することが望ましいであろう)。これは、比較的に長寿命放射性物質、またはバリウム、セリウム、およびセシウム等の望ましくない安定物質の場合となるであろう。
【0116】
一部の短寿命放射性物質は、抽出されたヨウ素に付加的時間を与えることによって、対処することができ、したがって、放射性最終結果物質は、安定物質または分離を受けやすい放射性物質に崩壊することができる。例えば、I−133は、安定Cs−133に崩壊するが、I−135およびI−137は、撮像および療法用途の両方に望ましくないと考えらる、放射性セシウム同位元素に崩壊する。
【0117】
照射サイクルは、約20時間であるので、アプローチの1つは、放射性セシウムが電気化学的に分離されるか、またはイオン交換クロマトグラフィを通してヨウ素溶液から分離されることができるように、約1日間、収集された放射性ヨウ素を崩壊させることである(I−135の場合、約4半減期、I−137の場合、1000を超える半減期)。その結果、結果として生じたヨウ素溶液は、主に、撮像および療法用途の両方に使用され得るI−127(非放射性)、I−129、I−131、I−132、およびI−133含有するであろう。
【0118】
I−132は、1.39時間のI−132の異性体転移に伴って2.29時間の比較的に短い半減期を有する。I−132の半減期は、短く、これは、体内において急速に崩壊することを意味し、手技後、いつまでも残る放射能は存在せず、被曝量は、他のヨウ素撮像同位元素より遥かに低い。
【0119】
(I−131および他の放射性ヨウ素同位元素の発生のために調整された放射性同位元素発生器)
前述の照射チャンバ設計のいずれも、ガス状核分裂生成物(I−131およびガス状に昇華する他の放射性ヨウ素同位元素を含む)の抽出を向上させることができる。特に、前述のように、不活性キャリアガス(例えば、不活性かつその大量天然発生のため比較的に安価であるアルゴン)を導入し、照射チャンバを通して循環させ、核分裂ガスと混合し、さらなる処理のために、ガス混合物を排出させることによって、照射の間に、照射チャンバからガス状核分裂生成物を引き出すことが望ましい。
【0120】
図13は、照射チャンバを通したガスの循環に関する付加的な詳細を有する図6の断面図に示されるもの等の放射性同位元素発生器(例えば、放射性同位元素発生器10sphereまたは10cyl)の簡略化された断面図である。明示的に示されるのは、ガス注入口ポート40aおよびガス排出口ポート40bである。ガス通気層150(より太い実線で示される)が、NEU層の表面に沿って提供され、半径方向に延在するガス通気チャネル155は、ガス通気層150と注入口および排出口ポートとの間のガス連通通路を提供する。
【0121】
照射チャンバ内のキャリアガスの循環を増加させるための付加的方法として、隔壁および他の構造的要素内に開口を提供するステップが挙げられる。チューブ内にNEUを使用する実施形態の場合、チューブ壁に、概して、NEU顆粒の最小予測サイズよりも小さい孔を提供することができる。
【0122】
ポンプ160は、照射チャンバ15からガスを排出し、ガスは、前述の掃気およびヨウ素回収動作を受ける。照射チャンバは、好ましくは、動作の間、若干負の圧力に維持される。
【0123】
前述のように、ヨウ素およびガス状核分裂生成物の一部は、ウランマトリクス内に捕捉されて留まることができ、NEUが、照射チャンバから除去された後、Mo−99および他のの回収と関連して回収される。NEUを顆粒形態で提供することは、照射の間に、ウランマトリクスから逸出し、連続ベースで回収されることができるヨウ素および核分裂ガスの量を増加させることに役立つ。
【0124】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することによって組み込まれる。
【0125】
【表1】
(結論および潜在的利点)
結論として、本発明の実施形態は、医療同位元素を生成するための安全、効率的、かつ経済的技術を提供することができることが分かった。本発明の実施形態は、単独で、または任意の組み合わせにおいて、以下の属性のうちの1つ以上によって特徴付けることができる。
・中性子反射材料を使用することによって、NEU層または複数の層内のU−238の高速核分裂閾値を上回る中性子個体数を最大にし、NEU材料内の高速核分裂プロセスを向上させる。
・中性子エネルギーを約1MeVを超えて維持する一方、NEUでは、中性子捕獲、ひいては、Pu−239への崩壊を最小にする。
・U−238は、従来の原子炉ベースの方法によって使用される濃縮U−235ではなく、一次核分裂可能材料として使用することができる。エネルギー省(DOE)の施設に既に貯蔵されている濃縮プロセスからの副産物である劣化ウランを、効率的に使用することができる。これは、天然ウランまたは劣化ウランに関する規制要件のさらなる緩和によって、Mo−99/Tc−99m生成およびI−131生成のコストを大幅に削減する。
・本発明の実施形態による放射性同位元素発生器は、広く配備することができ、それによって、撮像センター、病院、および医療研究機関において、診断、療法、および研究医療放射性同位元素として使用するために、エンドユーザのより近くにおいて、放射性同位元素発生を可能にする。
・本発明の実施形態は、HEUを海外核原子炉に輸出し、続いて、Mo−99/Tc−99mおよび放射性ヨウ素同位元素等の放射性同位元素を輸入する必要性を排除または削減する。
・一連の放射性ヨウ素放射性同位元素が生成される。
・生成されたすべてのヨウ素放射性同位元素からの積算ヨウ素線量は、I−131のみを生成するシステムより大きい。
・放射性同位元素の一部は、I−131より遥かに短い半減期を有するので、生成された放射性同位元素ヨウ素は、潜在的により低い用量、I−131単独よりも広範囲な用途性を有する。
【0126】
前述は、本発明の特定の実施形態の完全なる説明であるが、前述の説明は、請求項によって定義される発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13