(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950833
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】β−ヒドロキシアルキルアミド、その製造方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 233/60 20060101AFI20160630BHJP
C07C 231/02 20060101ALI20160630BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20160630BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20160630BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20160630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
C07C233/60CSP
C07C231/02
C09D5/03
C09D7/12
C09D167/00
!C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2012-556519(P2012-556519)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-527139(P2013-527139A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2011053606
(87)【国際公開番号】WO2011110624
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年1月28日
(31)【優先権主張番号】102011005332.8
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010002783.9
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー グレンダ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌイル スピロウ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァイラオホ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ラマース
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー レシュ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベーレント
【審査官】
井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0111720(KR,A)
【文献】
特開昭49−026226(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/143037(WO,A1)
【文献】
特開2000−038372(JP,A)
【文献】
特開2009−215372(JP,A)
【文献】
特開昭51−017970(JP,A)
【文献】
特表2003−505522(JP,A)
【文献】
特開平04−247058(JP,A)
【文献】
特開平02−003458(JP,A)
【文献】
JUNG,HONG-RYUN,ET AL.,"Preparation and Properties of N1,N1,N4,N4-Tetrakis(hydroxyethyl)cyclohexane-trans-1,4-dicarboxamide as a Crosslinker of Polyester Powder Coatings",JOURNAL OF THE KOREAN INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY (KONGOP-HWAHAK),2009年,VOL.20,NO.2,PP.195-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/
C07C 231/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式XIIA
【化22】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表1】
を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【請求項2】
式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドが、175℃未満で固体形で存在することを特徴とする、請求項1に記載のβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【請求項3】
N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドのその製造後の最終生成物中の全ての異性体の濃度が、75質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【請求項4】
吸熱ピーク1(160℃)対吸熱ピーク2(190℃)のエンタルピーの比率が、1:1〜1:3である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【請求項5】
式XIIA
【化23】
で示され、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表2】
を有し、かつ
5. 単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表3】
を有する、請求項1から
4までのいずれか1項に記載のβ−ヒドロキシアルキルアミド。
【請求項6】
式XIIA
【化24】
で示され、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンからの、1分子当たりに4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有し、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表4】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを
、断続的に回分法によって製造する方法
であって、前記回分法は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンを、反応器中20〜120℃の温度で溶剤の存在下で反応させることにより行われる前記方法。
【請求項7】
添加される溶剤の量が、使用される全ての出発物質の全量に対して、10質量%を上回る、請求項6に記載の断続的な製造方法。
【請求項8】
式XIIA
【化25】
で示され、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンからの、1分子当たりに4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有し、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表5】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを
、断続的に回分法によって製造する方法
であって、前記回分法は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンを、閉じた装置中で圧力下に60〜140℃の温度で溶剤を添加せずに反応させることにより行われる前記方法。
【請求項9】
式XIIA
【化26】
で示され、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンからの、1分子当たりに4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有し、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表6】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを
、断続的に回分法によって製造し、こうして得られた生成物を再結晶化させる、前記N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造方法
であって、前記回分法は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンを、反応器中20〜140℃の温度で溶剤を添加せずに反応させることにより行われる前記方法。
【請求項10】
式XIIA
【化27】
で示され、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンからの、1分子当たりに4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有し、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表7】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサー中で溶剤を用いずに
ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンを混和及び反応させることにより連続的に製造し、こうして得られた生成物を、
a)再結晶化させるか、又は
b)50〜100℃の温度で熱処理し、その際、その時間は、6時間を上回る、前記N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造方法。
【請求項11】
式XIIA
【化28】
で示され、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表8】
を有し、
5. 単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表9】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを製造するための、請求項
6から
10までのいずれか1項に記載の前記N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造方法。
【請求項12】
式XIIA
【化29】
で示され、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表10】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、艶消し表面を有するコーティングの製造のための用いる、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の前記N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの使用。
【請求項13】
式XIIA
【化30】
で示され、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、
98モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表11】
を有し、かつ
5. 単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表12】
を有するN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを使用する、請求項
12に記載の前記N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの使用。
【請求項14】
粉末塗料における、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
60°の入射角でDIN 67530/ISO 2813に従って反射率計値として測定された50単位未満の光沢を有する艶消し表面を有するコーティングの製造のための、請求項12から14までのいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のβ−ヒドロキシアルキルアミド、その製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
β−ヒドロキシアルキルアミドは、有機合成における有用な中間生成物である。
【0003】
十年前から、β−ヒドロキシアルキルアミドは、粉末塗料において硬化剤(架橋剤とも呼ぶ)として工業的に使用されている。
【0004】
β−ヒドロキシアルキルアミド並びにその製造方法は、以下の特許文献:DE2509237、DE19823925、EP0473380、EP0960878、WO2000050384、WO200055266からも知られている。
【0005】
架橋剤(硬化剤)としてのトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)と酸官能性のポリエステルを基礎とする粉末塗料は、耐蝕性でかつ耐候性の粉末コーティングをもたらす。しかしながら、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)は、突然変異誘発性かつ毒性であると評価されている。
【0006】
架橋剤としてのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、毒性学的に懸念がなく、さらにまた反応性がより高い。特許文献US4,076,917及びUS4,101,606においては、β−ヒドロキシアルキルアミドを、少なくとも1つのカルボキシレート官能もしくは無水物官能を有するポリマーと、特にポリアクリレートと組み合わせて粉末塗料としている。EP0322834は、酸基を有するポリエステル及びβ−ヒドロキシアルキルアミドから構成されている熱硬化性の粉末塗料を記載している。
【0007】
基材に一様に平坦かつ艶消しの表面を与えるコーティング系は、かなり関心が持たれている。その理由は、十分に実用的な性質のものである。光沢のある表面は、艶消し表面よりもはるかに高い清浄化の程度を必要とする。更に、安全技術的理由から、強く反射する表面を避けることが望ましいことがある。粉末塗料産業の広範な利用分野、例えば建築分野、自動車分野及び金属調度品分野などにおいて、DIN 67530/ISO 2813に従って入射角60°で反射率計値として測定される艶消し(10〜30単位)表面と半艶消し(30〜50単位)表面に対する需要が高まっている。
【0008】
艶消し表面を得るための最も簡単な原理は、粉末塗料に、所望の艶消し効果の程度に応じて、より少量のもしくはより多量の充填剤、例えば白亜、微細な二酸化ケイ素もしくは硫酸バリウムなどの充填剤を混加することにある。しかしながら、これらの添加物は、塗料技術的な塗膜特性、例えば付着性、可撓性、耐衝撃性及び耐化学薬品性の悪化を引き起こす。
【0009】
塗料と非相溶性の物質、例えばワックスもしくはセルロース誘導体などの物質の添加は、たしかに明らかな艶消しをもたらすものの、押出の間の僅かな変化が、表面光沢に変動をもたらし、かつ暗色の色調における、フェード・アウトをもたらす。艶消し効果の再現性は、保証されていない。
【0010】
EP0698645においては、少なくとも2種の別個に完成されたヒドロキシアルキルアミド粉末塗料の乾式混合(ドライブレンド)によって艶消し粉末コーティングを作成することが記載されている。
【0011】
半艶消しの及び艶消しの(50単位未満の光沢)の、ヒドロキシアルキルアミドを有する粉末コーティングについては、つまり先行技術は、いわゆるドライブレンドである。すなわち、結合剤成分の酸価が異なる2種のヒドロキシアルキルアミド粉末塗料を別個に製造し、それらを次いで乾式混合物として磨砕に供給することが必要である。そのことは、かなりの多大な労力をもたらし、結合剤成分が異なる場合に光沢の変動が引き起こされ、その補正はかなりの追加の労力を意味する。更に、これらの乾式混合物は、エンドユーザにおいても、粉末塗料が通常のようにリサイクルされるべき場合には、それにより生ずる光沢の変化を伴い分離する。
【0012】
公開公報KR 10−2009−0111720(出願番号10−2008−0037454)は、"シクロアルカンジカルボキサミド化合物、その製造及び使用"(同様にJ.Korean Ind.Eng.Chem.,Vol.20,No.2,April 2009,195−200を参照のこと)という翻訳された表題を有し、それは、特に例1において、そこに挙げられる化合物N
1,N
1,N
4,N
4−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン−1,4−ジカルボキサミド(式3)を開示している。前記化合物は、
図2によれば、ほぼ190℃で最大ピークを有する、DSC分析による1つだけのピークしか有さない。該化合物のシス/トランス含量は、挙げられていない。更に、カルボキシル基を有するポリエステルであって、厳密に定義されておらず、広い範囲の幾つかのパラメータによってのみ示されているポリエステル(ポリエステルは一義的に特徴付けられておらず、市場ではこの粘度で知られていない)は、前記化合物と架橋され、かつ公知のβ−ヒドロキシアルキルアミド、ここでは例3で[N
1,N
1,N
6,N
6−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド]として挙げられるもの(VESTAGON HAA 320又はPRIMID XL 552)、つまり従来技術からの硬化剤及び長年にわたり確立されていた商品であって、周知のように製造されたコーティングの光沢のある表面をもたらすものと比較される。
図3及び4においては、薄板が示されている。艶消しの被覆であることは記載されていない。慣用の硬化剤を用いて光沢のある被覆が得られるので、その可能性もない。
【0013】
本発明の課題は、中間生成物及び硬化剤として使用可能な新規のβ−ヒドロキシアルキルアミドを見出すことであった。特に、本発明の課題は、粉末塗料において硬化後に艶消し表面をもたらし、かつ粉末塗料の製造に際して乾式混合を必要としない、新規のβ−ヒドロキシアルキルアミドを見出すことであった。
【0014】
前記課題は、本発明による新規のβ−ヒドロキシアルキルアミドによって解決された。
【0015】
本発明の対象は、1分子当たりに2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化1】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化2】
であってもよく、かつ
Aは、
【化3】
であり、
R
3は、互いに独立して、同一もしくは異なる、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ2もしくはそれより多くの置換基R
3は、互いに結合して環を形成してよい]で示される、β−ヒドロキシアルキルアミドであって、150℃未満では固体形で存在するβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0016】
驚くべきことに、骨格中にシクロヘキサン環を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド(その際、該β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満で固体形で存在する)は、粉末塗料中において硬化の後に艶消し表面をもたらすことが判明した。更に、本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、新規の中間生成物である。
【0017】
β−ヒドロキシアルキルアミドは、種々の出発物質から製造できる。β−ヒドロキシアルキルアミンと、カルボン酸のエステルとの反応が知られており、その際、後者が、基本骨格(A)を生ずる。出発物質の選択に応じて、こうして本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドを製造できる。
【0018】
代替的はあるが、あまり好ましくない方法は、別のカルボン酸誘導体、例えばカルボン酸、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物又は別の活性化されたカルボン酸誘導体を、β−ヒドロキシアルキルアミンと反応される出発物質として基礎とする。好適なβ−ヒドロキシアルキルアミンは、炭化水素骨格中に少なくとも2から10個までの炭素原子を有するアルキル基を有するものである。該アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式であってもよい。同様に、該アルキル基は、ヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素で置換されていてよい。更に、これらのアルキル基は、また、官能基、好ましくはカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基を含んでよく、かつ窒素原子上に追加のアルキル基を有してよい。
【0019】
好ましくは本発明においては、β−ヒドロキシアルキルアミドは、N−アルキル−1,2−アルカノールアミンから及び/又はN,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン及びシクロヘキサンジカルボン酸のエステルから製造される。
【0020】
特に好ましくは、式II及び/又はIII:
【化4】
[式中、R
1は、水素、メチル、エチル、プロピルであり、R
2は、メチルである]
【化5】
[式中、R
1は、同時にもしくは互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピルである]のβ−ヒドロキシアルキルアミンが使用される。
【0021】
特に好ましくは、本発明によれば、以下の化合物が、β−ヒドロキシアルキルアミドの製造のための出発物質として使用される:ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジ−s−ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチル−イソプロパノールアミン。
【0022】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドにおける置換基Aのための出発化合物としては、1,2−置換された、1,3−置換された、及び1,4−置換されたシクロヘキサンジカルボン酸誘導体、特にシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルが適している。その際、出発化合物は、任意のシス/トランス含有量を有してよい。
【0023】
好ましくは、式IV
【化6】
[式中、R
4は、同時にもしくは互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチルである]の化合物が使用される。
【0024】
特に好ましくは、1,4−置換されたシクロヘキサンジカルボン酸エステル、殊に好ましくはジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートが使用される。
【0025】
本発明により特に好ましい、ジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートからの、好ましくはジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートからのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回る、シクロヘキシル環上のカルボキシル基の位置に対するトランス含量を有する。その際、任意のトランス含量を有するジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートを使用できる。
【0026】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド(I)は、150℃未満で、好ましくは170℃未満で、特に好ましくは180℃未満で、固体形で存在する。
【0027】
副生成物として、該β−ヒドロキシアルキルアミドは、僅かな程度で、目的生成物の二量体、三量体、オリゴマー及び別の縮合生成物を含有する。
【0028】
特に好ましい本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、以下の式:
【化7】
【0029】
【化8】
[式中、
R
2は、メチル又は
【化9】
であり、その際、R
1Aは、水素であり、かつR
1Bは、メチル、エチル、プロピルであるか、又はR
1Aは、メチル、エチル、プロピルであり、かつR
1Bは、水素であり、かつ
Aは、式
【化10】
の1,4−二置換されたシクロヘキサン環であり、その際、Aのトランス含量は、70モル%以上である]を有し、該β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満で固体形で存在する。
【0030】
ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンとからなる、式XII
【化11】
で示される、1分子当たり4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、本発明により特に好ましいβ−ヒドロキシアルキルアミドは、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する。
【0031】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、原則的に、公知法に従って、例えばDE2509237、DE19823925、EP473380、EP960878、WO2000050384、WO200055266に従って製造することができる。該方法は、連続的に、半連続的に、断続的に、例えば回分法などにおいて実施することができる。
【0032】
しかしながら、以下で詳細に記載する、ジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートからのβ−ヒドロキシアルキルアミドの製造のための連続的な方法が好ましい。
【0033】
本発明は、また、好ましい本発明による、150℃未満で固体形で存在するβ−ヒドロキシアルキルアミドを、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する、ジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートから、特にジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートから、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、溶剤を用いずに連続的に製造する方法に関する。
【0034】
1,4−二置換されたシクロヘキサン環での70モル%トランス以上へのトランス形の富化は、驚くべきことに、連続的な方法によるβ−ヒドロキシアルキルアミドの製造に際して非常に簡単に押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて起こることが判明した。その際、任意のトランス含量を有するジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートを使用できる。
【0035】
本発明による使用される出発生成物であるジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートにおいて、トランス立体配置は、原料の起源に応じて大抵は15〜35モル%である。しかしながら、あらゆる任意の異性体組成物を使用することができる。
【0036】
従って、本発明の対象は、1分子当たりに少なくとも2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化12】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化13】
であってもよく、かつ
Aは、
【化14】
の1,4−二置換されたシクロヘキサン環であり、
Aのトランス含量は70モル%以上である]で示される、β−ヒドロキシアルキルアミドであって、150℃未満では固体形で存在するβ−ヒドロキシアルキルアミドを、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて溶剤を用いずに連続的に製造する方法である。
【0037】
該方法の原理は、使用物質の反応を、連続的に、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、強力な混和及び短時間の反応によって、好ましくは熱を供給して行うことにある。
【0038】
該方法においては、50〜325℃の温度を使用でき、その際、その温度は、実施例が示しているように、生成物に応じて変更する。
【0039】
熱を供給する、強力な混和及び短時間の反応とは、使用物質の上述の装置中での滞留時間が、通常3秒ないし15分、好ましくは3秒ないし5分、特に好ましくは5〜180秒であることを意味する。反応物は、その際、短時間で、熱を供給しつつ、50℃〜325℃の温度で、50〜225℃の温度で、殊に好ましくは70〜200℃の温度で反応される。使用物質と最終生成物の種類に応じて、滞留時間及び温度についてのこれらの値は、しかしながら、別の好ましい範囲を取りうる。
【0040】
場合により、連続的な後反応が後接続される。反応の完全性は、アミド化に際して生ずるアルコールの排出によって保証される。前記の排出は、好ましくは、アルコールを真空を用いて押出機もしくは強力ニーダーもしくは強力ミキサーもしくは静的ミキサー中の開口部を介して取り去ることによって、及び/又はガス流を、強力に混ぜられた反応混合物中に導通させることによって行われ、その際、より揮発性の高いアルコールがガス流から取り出される。
【0041】
該反応は、触媒によって促進することができる。アルカリ金属の水酸化物及び/又はアルコレート、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、ナトリウムエタノレートもしくはカリウムエタノレート、第四級アンモニウム水酸化物、アルコキシド及び/又は別の強塩基が適している。濃度は、使用される全質量に対して、0.01〜5%、好ましくは0.1〜3%である。
【0042】
真空ドームもしくはガス導通部の配置は、可変的に行ってよく、それは出発物質及び生ずるアルコールの種類に応じる。また、固有の反応部に後接続された追加のアルコール残量の除去部も可能である。
【0043】
引き続いての急速な冷却によって、最終生成物の取得に成功する。
【0044】
装置としては、押出機、例えば一軸スクリュー押出機もしくは多軸スクリュー押出機、特に二軸スクリュー押出機、遊星ローラ型押出機(Planetwalzenextruder)もしくはリング押出機(Ringextruder)、(流動管(Stroemungsrohr)、強力ニーダー、強力ミキサーもしくは静的ミキサー)は、本発明による方法のために特に適しており、好ましく使用される。特に、二軸スクリュー押出機もしくは多軸スクリュー押出機、特に二軸スクリュー押出機が好ましい。
【0045】
断続的な方法では多くの時間が必要となる反応が、上述の装置においては数秒で完全に進行することは驚くべきことであり、その際、好適な触媒反応の場合に、シス形をトランス形に変換することも進行する。短時間の熱的負荷は、強力ニーダーの混合作用と相まって、反応相手を完全に非常に十分に反応するのに十分であるという事実が原理的な性質である。前記強力ニーダーは、複数の混合室の好適な装備によってもしくはスクリュー形状の構成によって、同時の強力な熱交換において強力で迅速な混和を可能にする。他方でまた、長手方向での一様な流通も、できる限り均一な滞留時間で保証される。更に、種々異なる温度調節が、個々の装置ハウジングもしくは区間において可能でなければならない。
【0046】
出発物質は、該装置に、一般に別々の物質流で計量供給される。2つより多くの物質流の場合に、これらはまとめて供給することもできる。また、前記の物質流に、付加的に触媒及び/又は添加物、例えばレベリング剤、安定化剤もしくは定着剤を加えることもできる。前記物質流は、分けることもでき、こうして種々の割合で、種々の箇所で前記装置に供給することができる。このようにして、狙い通りに濃度勾配が調整される。これは、反応の完全性をもたらすことができる。連続的な物質流の流入部は、可変的にかつ時間的にずらして操作することができる。
【0047】
予備反応及び/又は反応の完全化のために、複数の装置を組み合わせてもよい。
【0048】
該反応に使用される装置は、反応の間に生ずるアルコール(使用されるカルボン酸エステルに応じる)を反応の間に除去するために、真空ドームを備えている。それは、所望のβ−ヒドロキシアルキルアミドへの化学平衡のシフトによる反応の完全化のために役立つ。
【0049】
40℃を上回る温度での1時間から4週間の間の貯蔵及び/又は生成物の再結晶化によって生成物品質を改善できる。
【0050】
コンフェクションは、前記装置もしくは後反応区間を出る生成物の粘度に応じて、まず好適な器具により好適な温度にまで更に冷却することによってなされる。次いで、所望の粒度へのパスチレーション(Pastillierung)又は粉砕は、ロールクラッシャー、ハンマーミル、切断ミル、分級ミル(Sichtermuehle)、ピンミル、フレーキングロール(Schuppwalzen)などによって行われる。
【0051】
本発明の対象は、また、1分子当たりに2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化15】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化16】
であってもよく、かつ
Aは、
【化17】
であり、
R
3は、互いに独立して、同一もしくは異なる、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ2もしくはそれより多くの置換基R
3は、互いに結合して環を形成してよい]で示される、β−ヒドロキシアルキルアミドであって、150℃未満では固体形で存在するβ−ヒドロキシアルキルアミドを、カルボキシル基を有するポリマーのための、好ましくはカルボキシル基を有するポリエステルのための架橋剤として用いる使用である。
【0052】
本発明の対象は、また、本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドを、粉末塗料において、好ましくはカルボキシル基を有するポリエステルの粉末塗料において用いる使用である。
【0053】
本発明の対象は、また、本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドを、硬化後に、60°の入射角でDIN 67530/ISO 2813による反射率計値として測定される50単位未満の光沢を有する艶消し表面を有する粉末塗料において用いる使用である。
【0054】
本発明の好ましい対象は、式XIIA
【化18】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの化合物であって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表1】
を有する前記化合物である。
【0055】
本発明の特に好ましい対象は、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、その化合物が、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する前記化合物である。
【0056】
付加的に、前記の本発明による式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピーク、つまり、約160℃の極大値を有する第一のピーク(ピーク1)と、約190℃で極大値を有する他の第二のピーク(ピーク2)を有し、それらは、実施例に対する描写である。
【0057】
好ましくは、第一のピークは、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、第二のピークは、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有する。特に好ましくは、第一のピークは、155〜170℃の範囲にあり、158〜165℃の極大値を有し、第二のピークは、170〜210℃の範囲にあり、180〜205℃の極大値を有する。
【0058】
吸熱ピーク1(約160℃)対吸熱ピーク2(約190℃)のエンタルピーの比率は、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3であってよい。
【0059】
DSC測定は、2010年3月のDIN EN ISO 11357−1に従って実施された。製造元Mettler−Toledo社のDSC 821型の熱流量差熱量計を使用した。試験は、−30℃から250℃までで10K/分で1回行われる。
【0060】
粉末状試料のXRPD測定は、X線回折計においてCu Kα線(1.541Å)を用いて実施した。
図9によれば、以下の重要で特徴的な、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの6つのピークが見出された:
【表2】
【0061】
殊に、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、92モル%以上の、好ましくは94モル%を上回る、特に好ましくは96モル%を上回る、殊に好ましくは98モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する前記ジアミドが好ましい。
【0062】
本発明による式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、175℃未満で、好ましくは180℃未満で、特に好ましくは185℃未満で固体形で存在する。
【0063】
本発明による特徴1.〜4.を有する式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、単結晶のX線構造解析によって調査された。測定のための詳しい記載は、補足1にまとめられている。単結晶のX線構造解析により、以下の構造についての結果が得られた:
【表3】
【0064】
括弧内の値は、測定精度を、相応する最後の桁もしくは最後の2つの桁について、それぞれプラスマイナスで示す。
【0065】
本発明の対象は、また、式XIIA
【化19】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの化合物であって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表4】
を有し、かつ
5. 単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表5】
を有する前記化合物である。
【0066】
製造
特に好ましい、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、種々の方法によって得られる:
まず、まさしく上記のように、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、好ましくは押出機において、好ましくは溶剤不含で製造される。その際、100〜180℃の温度が使用される。それに引き続き、好適な溶剤、好ましくは水中で再結晶化が行われる。20〜100℃の温度で溶解し、晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。これは、次いで引き続き、アルコール、好ましくはメタノールで洗浄され、乾燥させることができる。好ましくは、乾燥は、20〜90℃で行われ、真空で行ってもよい。
【0067】
製造の一つの更なる別形は、まさしく上記のように、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、好ましくは押出機において、好ましくは溶剤不含で製造することによって行われる。その際、100〜180℃の温度が使用される。引き続き、熱処理は、50〜100℃の温度で、好ましくは70〜85℃の温度で行われる。時間は、6時間を上回り、好ましくは12時間を上回る。熱処理は、真空中で行ってよい。
【0068】
従ってまた、本発明の対象は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレート及びジエタノールアミンから、1分子当たり4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表6】
を有する前記化合物を、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、溶剤を用いずに連続的に製造し、
こうして得られた生成物を、
a)再結晶化させるか、又は
b)50〜100℃の温度で熱処理(その際、時間は、6時間を上回る)する、前記化合物の製造方法である。
【0069】
特に好ましい、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、溶剤中で断続的に、つまり回分法で行ってもよい。
【0070】
該反応は、通常の反応器において実施される。その際、無圧で、還流冷却器を使用しつつ、又は圧力下に閉じた反応器で作業してよい。
【0071】
合成は、溶剤中、好ましくはアルコール中、有利にはメタノール中で行われる。添加される溶剤の量は、全ての使用される出発物質(出発物)の全量に対して、10質量%超、好ましくは15質量%超である。その際、還流下で、又はより低い温度でも、より高い温度でも、圧力下に作業することができる。
【0072】
その製造は、20〜120℃の温度で、好ましくは60〜90℃の温度で、特に好ましくは70〜85℃の温度で行われる。
【0073】
晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。
【0074】
本発明は、更に、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレート及びジエタノールアミンから、1分子当たり4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表7】
を有する前記化合物を溶剤中で断続的に製造する方法に関する。
【0075】
更に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造は、閉じた装置内で圧力下で60〜140℃の温度で溶剤を添加せずに行うことができる。これは、同様に、本発明の対象である。
【0076】
こうして回分法で製造された式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、好適な溶剤中で、好ましくは水もしくはアルコール中で、有利にはメタノール中で再結晶化させることができる。
【0077】
更に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造は、断続的に溶剤を用いずにも行うことができる。該反応は、通常の反応器において実施される。その際、還流冷却器を使用して作業することができる。好ましくは、その製造は、20〜140℃の温度で、好ましくは60〜90℃の温度で、特に好ましくは70〜85℃の温度で行われる。こうして回分法で得られるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、次いで、好適な溶剤中で、好ましくは水もしくはアルコール中で、有利にはメタノール中で再結晶化される。晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。この方法は、同様に本発明の対象である。
【0078】
N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造後の最終生成物中のその全ての異性体の濃度は、75質量%、好ましくは80質量%、特に好ましくは85質量%である。
【0079】
この本願で記載されかつ特徴付けられた式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、実施例に示すことができたように、60°の角度で50を下回る目盛の光沢を有する粉末塗料において大幅な艶消しをもたらす。この式XIIAの生成物は、従って、公開公報KR10−2009−0111720により開示されたβ−ヒドロキシアルキルアミド(及びKorean Ind.Eng.Chem.,Vol.20,No.2,April 2009,195−200からのβ−ヒドロキシアルキルアミド)とは明らかに異なり、前記公開公報では第15頁の
図2で、それが約190°でDSC分析による1つだけのピークしか有さないことが裏付けられており、かつ比較例4cは、艶消し表面を有するコーティングをもたらさないことを示している。
【0080】
本発明の対象は、また、式XIIA
【化20】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表8】
を有する前記化合物を、艶消し表面を有するコーティングの製造のために、特に粉末塗料において、好ましくはカルボキシル基を有するポリエステル粉末塗料において用いる使用である。
【0081】
本発明の対象は、また、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、60°の入射角でDIN 67530/ISO 2813に従って反射率計値として測定される50単位未満の光沢を有する艶消し表面を有するコーティングの製造のために用いる使用である。
【0082】
本発明の対象は、また、式XIIA
【化21】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表9】
を有し、かつ
5. 単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表10】
を有する前記化合物の使用である。
【0083】
以下に、本発明の対象を、実施例をもとに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】
図1は、製造されたトランス−N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(式XII)のNMRスペクトルを示している。
【
図2】
図2は、製造されたトランス−N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(式XII)のNMRスペクトルを示している。
【
図3】
図3は、製造されたトランス−N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(式XII)のNMRスペクトルを示している。
【
図4】
図4は、製造されたトランス−N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(式XII)のNMRスペクトルを示している。
【
図5】
図5は、例3aに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示している。
【
図6】
図6は、例3bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示している。
【
図7】
図7は、例4bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示している。
【
図8】
図8は、例4cに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示している。
【
図9】
図9は、例3aに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)のXRPD(X線粉末回折)分析を示している。
【
図10】
図10は、例4cに記載されるβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)のXRPD(非X線粉末回折)分析を示している。
【
図11】
図11は、例4bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)のXRPD(X線粉末回折)分析を示している。
【
図12】
図12は、ナンバリングスキームを有するOrtepプロット(50%)を示している。
【
図13】
図13は、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(試料vesta)の単結晶構造測定を基礎とする計算された粉末回折図を示している。
【0085】
実施例
例1: 本発明による方法による、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレート及びジエタノールアミンからのβ−ヒドロキシアルキルアミドの製造
【表11】
【0086】
3種の物質流で実施した:
物質流1は、DMCDからなる。
物質流2は、DEAからなる。
物質流3は、メタノール性のナトリウムメチレート溶液である触媒からなる。
【0087】
それらの物質流は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンとのモル比が1:1.95であるように計量供給した。
【0088】
全配合に対する触媒の全量(ナトリウムメチレートのみ、溶剤不含で計算した)は、0.50〜3.0%であった。
【0089】
物質流1は、10.0kg/hの量で、二軸スクリュー押出機(ZSK30、32d)の第一のハウジングに供給した(該物質流の温度 80〜130℃)。
【0090】
物質流2は、9.9kg/hの量で供給した(物質流の温度 65〜145℃)。
【0091】
物質流3は、押出機への入口から物質流2に噴入させた(0.5〜2.0kg/h)。
【0092】
使用された押出機は、個別に加熱と冷却が可能な8つのハウジングからなる。ハウジング1〜5:160℃、ハウジング6〜8:120〜160℃。
【0093】
ハウジング3、5及び8は、真空ドームを備えていた(100〜600ミリバール)。
【0094】
押出機スクリューは、搬送エレメントを備えていた。真空ドームの前方に混練ブロックが取り付けられていた。
【0095】
全ての温度は、目標温度である。その調節は、電気加熱もしくは水冷によって行った。押出機ヘッドは、同様に電気的に加熱した(100〜160℃)。
【0096】
スクリュー回転数は、300rpmであった。反応生成物は、歯車ポンプによって押出機から搬出された。全流量は、20kg/hであった。
【0097】
最終生成物は、管路を介してもしくは押出機を介して冷却され、冷却ベルトに案内され、再び冷却される。その生成物を、引き続き100℃で脱塩水中で再結晶化させ、室温に冷却した。母液を濾別し、濾過ケークを後に3回にわたりメタノール中で室温で洗浄し、次いで真空乾燥キャビネットにおいて約20ミリバール及び50℃で乾燥させた。引き続きそれを粉砕した。
【0098】
【表12】
【0099】
製造されたトランス−N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(式XII)は、
図1〜4のNMRスペクトルによって特徴付けられた。
【0100】
例2: 粉末塗料及びコーティング
例1からの本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し硬化剤)を用いた粉末塗料の製造は、溶融物において、第2表による全成分を温度(ハウジング)90℃(約130℃の材料温度)で一緒に押し出すことによって行った。原料の組成を、第2表に挙げる。ポリエステルの酸基対硬化剤のOH基の比率は、1:1であった。
【0101】
押出物を引き続き冷却し、粉砕し、100μm未満の粒度に篩別する。こうして製造された粉末塗料を、静電式粉末吹き付け装置を用いて60KVで脱脂した鋼板(Krueppel社製のTiefzieh−St 210×70×0.8mm)及び/又はアルミニウム板(Q−panel AL−36 5005 H 14/08 0.8mm)上に適用し、循環空気乾燥キャビネットにおいて160〜220℃で焼き付けた。硬化された塗膜は、約65μmの層厚を有している。実施例のデータは、200℃での20分の焼き付け時間に関するものである。
【0102】
使用物質:
1)架橋剤:
例1による本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド架橋剤
2)非晶質ポリエステル:
CRYLCOAT(登録商標)2617−3,酸価:32.7mg KOH/g、T
g:61℃、(Cytec Inc.,米国)
3)更なる配合成分:
二酸化チタン KRONOS(登録商標)2160,(Kronos GmbH社,ドイツ)
RESIFLOW(登録商標)PV 88(Worlee−Chemie GmbH,ドイツ)
ベンゾイン,(Merck−Schuchard OHG,ドイツ)
【0103】
【表13】
【0104】
コーティングの特性:
焼き付け条件:200℃で20分
光沢:60°の角度で33の目盛
光沢:85°の角度で42の目盛
エリクセンへこみ:>8mm
球衝撃(直接):>80in・lb
光沢度:DIN 67530/ISO 2813
エリクセンへこみ:DIN ISO 1520
球衝撃:DIN EN ISO 6272
【0105】
DSC測定
DSC測定は、2010年3月のDIN EN ISO 11357−1に従って実施された。
【0106】
製造元Mettler−Toledo社のDSC 821型の熱流量差熱量計(シリアル番号:5116131417)を使用した。試験は、−30℃から250℃までで10K/分で1回行われる。
【0107】
測定方法の詳細な説明:
1. 使用されるDSC機器の型(熱流示差熱量計もしくは熱量補償形熱量計)、モデル及び製造元;
2. 使用される坩堝の材質、種類及び型並びに必要であれば質量;
3. 使用されるパージガスの種類、純度及び流量;
4. 較正法の種類並びに、起源、質量及び較正のために重要な他の特性を含む使用される較正物質の詳細;
5. 試料採取、試験体準備及びコンディショニングの詳細
【0108】
1: 熱流示差熱量計
製造元:Mettler−Toledo
モデル:DSC 821
シリアル番号:5116131417
2: 坩堝材料:超純粋アルミニウム
大きさ:40μl、ピンなし
Mettler注文番号:ME−26763
蓋を含んだ質量:約48mg
3: パージガス:窒素
純度:5.0(>99.999体積%)
流量:40ml/分
4: 較正法:簡易
材料1:インジウム
Mettler−Calibrier−Set ME−51119991
質量:正味重量あたり約6mg
温度(開始)及び熱流の較正
材料2:脱塩水
ハウスシステムから取り出す
質量:正味重量あたり約1mg
温度(開始)の較正
5: 試料採取:供給された試料小瓶から
試料正味重量:8〜10mg
試料準備:坩堝の底でスタンプにより押しつける
坩堝蓋:穴あき
測定プログラム:−30℃〜250℃ 10K/分 1×
【0109】
XRPD測定の説明:
粉末状の試料を、粉末ホルダ中に押圧し、Philips社のX線回折計PW1800においてCu Kα線(1.541Å)で以下の条件:
励起:40kV、45mA
測定範囲:3°≦2θ≦40°
ステップサイズ:0.1°(2θ)
ステップ当たりの時間:20秒
回転:1/4回転/秒
受光スリット:粗い
発散スリット:自動
で測定する。
【0110】
【表14】
【0111】
例3a
還流冷却器及びガラス撹拌機を有する3つ口フラスコにおいて、92.24gのジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートを、96.91gのジエタノールアミン、10.84gのメタノール中30%ナトリウムメチレート及び52gのメタノールを装入する。均質な溶液が生じる。
【0112】
該バッチを、オイル加熱浴中で6時間にわたり撹拌しながら還流下に沸騰させる(浴温度80℃)。その際、約0.5時間後に生成物が沈殿し始める。
【0113】
該反応バッチを冷却させ、その際、他の生成物が晶出する。引き続き、沈殿した生成物を濾別によりメタノールと分離し、引き続いて乾燥させる。収率は、理論値の80%超である(第3表)。
【0114】
従って、
図5によるDSCにおける2つの吸熱ピーク(第一のピークは、約160℃で、第二のピークは、約190℃である)を有し、かつ
図9及び第5表によるXRPDスペクトルを有する式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが得られる。こうして製造された生成物は、60°の角度で50を下回る目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第3表)。
【0115】
例3b
例3aで製造された生成物を、沸騰した水に溶かし、次いでゆっくりと再び冷やし、晶出が行われた後に、かるくメタノールで後洗浄する(第3表)。
【0116】
この生成物は、
図6に見られる2つの吸熱ピークを示し、得られた粉末塗料における60度の角度で29の目盛の艶消し効果が存在する(第3表)。
【0117】
【表15】
【0118】
【表16】
【0119】
例4a及び例4b
4a
例1に記載と同様の生成物データ4aを有するN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機(Werner und Pfleiderer ZSK 30,32d)において製造する(第4表)。
【0120】
4b
例4aに記載されるように製造された前記の生成物が再結晶化される。このために、例4aからの生成物は、脱塩水中に沸騰させつつ溶解させ、次いでゆっくりと冷やし、晶出させ、ここで再び固体形に変換する。後に、メタノールで洗浄し、そして約20ミリバール及び50℃で真空乾燥キャビネットにおいて乾燥させる(第4表)。
【0121】
従って、DSCにおける2つの吸熱ピーク(第一のピークは、約160℃で、第二のピークは、約190℃である)を有するN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが得られる。
図7によるDSCにおける2つのピークを有し、かつ
図11によるXRPDスペクトルを有するこの生成物は、60°の角度で30の目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第4表)。
【0122】
比較例4c
図8によるDSCを有する本発明によるものではないN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを製造した。この生成物は、
図8による約190℃での1つだけの吸熱ピークしか示さず、
図10及び第6表によるXRPDスペクトルを示す。そこから製造された粉末塗料は、大幅な艶消しを示さず、60度の角度で95の目盛の光沢を示す(第4表)。
【0123】
例4d
例1に記載と同様の生成物データ4dを有する式XIIAのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機(Werner und Pfleiderer ZSK 30,32d)において製造する(第4表)。
【0124】
こうして製造された生成物は、冷却ベルト上を進み、収集される。この材料を、次いで乾燥キャビネットにおいて80℃で24時間にわたり真空下で熱処理し、こうして得られた生成物を引き続き粉砕する。
【0125】
この生成物は、60°の角度で40の目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第4表)。
【0126】
【表17】
【0127】
【表18】
【0128】
【表19】
【0129】
【表20】
【0130】
例5
式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドを、例3aと同様に製造した。この化合物から、単結晶を成長させた。式XIIAの本発明による化合物を、単結晶のX線構造解析によって調査した。測定のための詳しい記載は、補足1にまとめられている。
【0131】
補足1
単結晶X線構造解析
解析方法 単結晶X線構造解析"2012−0573602−06D"
報告: WHC 11/11 EKS
試料入荷: 2011−02−22
報告日: 2011−02−25
設題: 単結晶構造の決定
化合物: 式XIIAのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド
【化22】
結晶化: 化学者による
結晶サイズ: 無色のブロック、0.50×0.40×0.40mm
3
コード: Vesta
コメント: 半分の分子が不斉単位を含む
図12: ナンバリングスキームを有するOrtepプロット(50%)
【0132】
実験部
単結晶構造の決定は、CCD検出器(Rubyモデル)、Cu
Kα線に関する慣用のX線管、モノクロメータとしてのOsmic Spiegel及びCryojet型の低温装置(T=100K)を備えたOxfor Diffraction社の機器を用いて行った。データ収集は、φスキャン及びωスキャンにおいて実施した。データ収集及びデータ整理は、Crysalis(Oxford Diffraction 2007)で行った。
【0133】
構造解析と精密化は、SHELXTL(V.6.10、Sheldrick、ゲッティンゲン大学、2000)で行った。全ての非水素原子は、異方性で精密化した。水素原子は、ライディングの基として精密化した。
【0134】
【表21】
【0135】
【表22】
【0136】
【表23】
【0137】
図13:
N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの単結晶構造測定に基づく計算された粉末回折図(試験vesta)
【0138】
【表24】
【0139】
【表25】