特許第5950854号(P5950854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950854
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】全稈投入型コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/03 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   A01D57/03
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-55446(P2013-55446)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-180226(P2014-180226A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
(72)【発明者】
【氏名】日田 定範
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】丸山 純一
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】川田 康毅
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−097525(JP,U)
【文献】 米国特許第07650737(US,B1)
【文献】 特開2012−090569(JP,A)
【文献】 特開2011−167162(JP,A)
【文献】 特開2011−172535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00−57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掻き込みリールによって植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う全稈投入型コンバインであって、
前記掻き込みリールに、
左右のリールフレームと、
前記左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、
前記支持バーに取り付けられたタインと、
前記支持バーに対する前記タインの支持部分のうち後方側のみを覆うカバーと、が備えられ、
前記タインが、前記カバーの下端部を貫通しており、
前記カバーに、結束具を貫通させる固定孔が備えられ、
前記結束具は、前記固定孔を貫通し、
前記カバーにおける前記固定孔よりも上側の箇所が、前記結束具によって、前記支持バーに巻き付けられている全稈投入型コンバイン。
【請求項2】
前記支持バーとして、不等間隔の第一配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第一バーと、前記第一配列とは逆並びの第二配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第二バーと、が備えられている請求項1に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項3】
掻き込みリールによって植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う全稈投入型コンバインであって、
前記掻き込みリールに、
左右のリールフレームと、
前記左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、
前記支持バーに取り付けられたタインと、
前記支持バーに対する前記タインの支持部分のうち後方側のみを覆うカバーと、が備えられ、
前記タインが、前記カバーの下端部を貫通しており、
前記支持バーとして、不等間隔の第一配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第一バーと、前記第一配列とは逆並びの第二配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第二バーと、が備えられている全稈投入型コンバイン。
【請求項4】
前記支持部分のうち前記支持バーに取り付けられる被取付部が、前記支持バーの上部に取り付けられ、
前記タインは、前記被取付部から前記支持バーの後方側を通って下方に延ばされており、
前記カバーは、前記支持部分のうち前記被取付部よりも下側の部分を覆っている請求項1〜3のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項5】
前記カバーに、貫通孔又は切れ目が形成され、
前記貫通孔又は前記切れ目に、前記タインが貫通されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項6】
前記貫通孔又は前記切れ目が複数形成され、
前記貫通孔又は前記切れ目の夫々に、前記タインが夫々貫通されている請求項5に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項7】
前記タインにおける前記タインの先端部分から前記支持部分へ向かう中途部位に、弦巻状のバネ部が備えられ、
前記カバーによって、前記バネ部が覆われ、
前記タインが、前記バネ部よりも下方位置で前記カバーを貫通している請求項1乃至6の何れか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項8】
前記タインが、前記支持バーの長手方向に間隔を空けて前記支持バーに複数並べて取り付けられ、
前記カバーによって、2つ以上の前記タインの前記支持部分が覆われている請求項1乃至7の何れか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項9】
前記タインが、前記支持バーの長手方向に間隔を空けて前記支持バーに複数並べて取り付けられ、
単一の前記カバーによって、全ての前記タインの前記支持部分が覆われている請求項1乃至8の何れか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【請求項10】
前記カバーが、前記支持バーの長手方向において前記タインとは異なる位置で前記支持バーに取り付けられている請求項1乃至9の何れか一項に記載の全稈投入型コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掻き込みリールによって植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う全稈投入型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の全稈投入型コンバインの一例が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に示された全稈投入型コンバインには、掻き込みリールに、左右のリールフレームと、左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、支持バーに取り付けられたタインと、が備えられている。このような全稈投入型コンバインでは、刈取作業の際、掻き込みリールを回転させると、支持バーに取り付けられたタインが、圃場に植えられた穀稈を引き起こして機体後方側へ掻き込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−172535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の全稈投入型コンバインでは、刈取作業中に、特に、支持バーに対するタインの支持部分に植立穀稈が引っ掛かって引きちぎられたり、また、上記支持部分に刈取穀稈が引っ掛かったり絡み付いたりして連れ回りし、正常に刈取られた刈取穀稈の搬送を阻害して搬送効率が低下したりする虞がある。
【0005】
このような実情に鑑み、支持バーに対するタインの支持部分に穀稈が引っ掛かったりするのを効率的に防止可能な全稈投入型コンバインの提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち第一発明に係る全稈投入型コンバインは、掻き込みリールによって植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う全稈投入型コンバインであって、
前記掻き込みリールに、
左右のリールフレームと、
前記左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、
前記支持バーに取り付けられたタインと、
前記支持バーに対する前記タインの支持部分のうち後方側のみを覆うカバーと、が備えられ、
前記タインが、前記カバーの下端部を貫通しており、
前記カバーに、結束具を貫通させる固定孔が備えられ、
前記結束具は、前記固定孔を貫通し、
前記カバーにおける前記固定孔よりも上側の箇所が、前記結束具によって、前記支持バーに巻き付けられているものである。
また、本発明のうち第二発明に係る全稈投入型コンバインは、掻き込みリールによって植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行う全稈投入型コンバインであって、
前記掻き込みリールに、
左右のリールフレームと、
前記左右のリールフレームに亘って設けられた支持バーと、
前記支持バーに取り付けられたタインと、
前記支持バーに対する前記タインの支持部分のうち後方側のみを覆うカバーと、が備えられ、
前記タインが、前記カバーの下端部を貫通しており、
前記支持バーとして、不等間隔の第一配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第一バーと、前記第一配列とは逆並びの第二配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第二バーと、が備えられているものである。
【0007】
本発明によれば、支持バーに対するタインの支持部分をカバーで覆っているので、カバーによって、穀稈がタインの支持部分に接触するのを防止することができる。しかも、タインがカバーを貫通しているので、カバーがある程度しっかりと位置決めされている。このように、本発明であると、カバーによって、タインの支持部分を安定した状態でしっかりと覆うことができる。したがって、本発明によれば、穀稈がタインの支持部分に引っ掛かったり、からまったりするのを効率よく防止できる。
また、本発明によれば、刈取作業の際は、特にタインの後方側の部位が植立穀稈に作用するので、タインの後方側の部位には、穀稈が特に引っ掛かりやすい。本発明によれば、タインの支持部分の後方側をカバーによって覆っているので、穀稈がタインの支持部分に引っ掛かったりするのを確実に防止できる。
本発明の第一発明において、前記支持バーとして、不等間隔の第一配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第一バーと、前記第一配列とは逆並びの第二配列で前記タインが複数並べて取り付けられている第二バーと、が備えられていると好適である。
本発明の第二発明、上記構成を備える本発明の第一発明によれば、第一バーにおけるタインの第一配列と、第二バーにおけるタインの第二配列とが逆並びであるので、第一バーに装着されるタインの支持部分を覆うカバーは、左右反対方向向けにして使用すれば、第二バーにも装着できる。つまり、第一バーと第二バーとで同じ構造のカバーを兼用できる。したがって、全ての支持バーに夫々専用のカバーを装着する場合と比較して、カバーの種類を少なくでき、コストを軽減することが可能である。
上記構成において、前記支持部分のうち前記支持バーに取り付けられる被取付部が、前記支持バーの上部に取り付けられ、
前記タインは、前記被取付部から前記支持バーの後方側を通って下方に延ばされており、
前記カバーは、前記支持部分のうち前記被取付部よりも下側の部分を覆っていると好適である
【0008】
上記構成において、前記カバーに、貫通孔又は切れ目が形成され、
前記貫通孔又は前記切れ目に、前記タインが貫通されていると好適である。
【0009】
本構成によれば、カバーに貫通孔又は切れ目を形成するという簡単な構成で、タインに対するカバーの位置決めを容易に行うことができる。
【0010】
上記構成において、前記貫通孔又は前記切れ目が複数形成され、
前記貫通孔又は前記切れ目の夫々に、前記タインが夫々貫通されていると好適である。
【0011】
本構成によれば、1つのカバーに、貫通孔又は切れ目が複数形成されており、かつ、それらの貫通孔又は切れ目に対してタインが貫通されている。つまり、カバーを、複数のタインによって、安定した状態でしっかりと支持することが可能となる。
【0014】
上記構成において、前記タインにおける前記タインの先端部分から前記支持部分へ向かう中途部位に、弦巻状のバネ部が備えられ、
前記カバーによって、前記バネ部が覆われ
前記タインが、前記バネ部よりも下方位置で前記カバーを貫通していると好適である。
【0015】
本構成によれば、タインの先端部分から支持部分へ向かう中途部位に、弦巻状のバネ部が備えられていると、タインへの衝撃が弦巻状のバネ部で吸収されるので、タインの破損が防止される。しかし、その一方で、弦巻状のバネ部に穀稈が噛み込みやすくなる虞がある。本構成であると、カバーによってバネ部が覆われているので、穀稈がバネ部に引っ掛かったりするのを未然に防止できる。
【0017】
さらに、一般的にタインは、下後方への移動時に植立穀稈を後方へ掻き込むので、穀稈は、タインに対して後方からだけでなく、下方からも接触する。即ち、穀稈は、バネ部にも後方かつ下方から接触する。本構成を採用すると、カバーはバネ部を下方から覆うことになるので、バネ部への穀稈の引っ掛かりをさらに防止することができる。
【0018】
上記構成において、前記タインが、前記支持バーの長手方向に間隔を空けて前記支持バーに複数並べて取り付けられ、
前記カバーによって、2つ以上の前記タインの前記支持部分が覆われていると好適である。
【0019】
本構成によれば、1つのタインの支持部分を1つのカバーで覆う場合に比べて、支持バーに使用されるカバーの個数を削減可能となり、製造コストを低減できる。
【0020】
上記構成において、前記タインが、前記支持バーの長手方向に間隔を空けて前記支持バーに複数並べて取り付けられ、
単一の前記カバーによって、全ての前記タインの前記支持部分が覆われていると好適である。
【0021】
本構成によれば、1つの支持バーに対するカバーの個数が1つとなる。よって、1つの支持バーに複数のカバーを使用する場合に比べて、掻き込みリールに使用されるカバーの個数を削減可能となり、製造コストを低減できる。
【0022】
上記構成において、前記カバーが、前記支持バーの長手方向において前記タインとは異なる位置で前記支持バーに取り付けられていると好適である。
【0023】
本構成によれば、カバーは、タインだけでなく、支持バーにも支持されていることになり、カバーはしっかりと支持される。また、本構成によると、カバーは、支持バーの長手方向においてタインとは異なる位置で支持バーに取り付けられている。したがって、カバーの支持バーへの取付時に、タインが邪魔になりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】全稈投入型コンバインの全体側面図である。
図2】全稈投入型コンバインの全体平面図である。
図3】掻き込みリールの正面図である。
図4】掻き込みリールの左側面図である。
図5】タイン及びカバーの取付状態を示す左側面断面図である。
図6図5とは異なる断面においてタイン及びカバーの取付状態を示す左側面断面図である。
図7】タイン及びカバーの取付状態を示す正面図である。
図8】カバーの全体を示す説明図である。
図9】サイドデバイダの付近を示す左側面図である。
図10】サイドデバイダの付近を示す平面図である。
図11】別実施形態のカバーを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[全稈投入型コンバインの基本構成]
図1図2に示すように、全稈投入型コンバインには、左右一対のクローラ式走行装置11と、クローラ式走行装置11によって自走可能な走行機体12と、走行機体12の前部側に配置された刈取部13と、走行機体12における機体フレーム14の後部側に設けられた脱穀部15と、脱穀部15の横側に配置された穀粒貯留部16と、穀粒貯留部16の前方に配備された運転操縦部17と、が備えられている。
【0028】
刈取部13は、横向きの第一支点X1周りに上下揺動自在で、脱穀部15の前部に連結されたフィーダ18に連結されている。刈取部13には、掻き込みリール20と、左右一対の刈取フレーム19と、刈刃装置21と、オーガ22と、が備えられている。
【0029】
刈刃装置21には、走行機体12の横幅に略等しい刈幅を有するバリカン型の刈刃が左右の刈取フレーム19に亘って備えられている。オーガ22は、刈刃装置21の後方に配置され、刈刃装置21によって刈り取った刈取穀稈を刈幅の左右中央側に寄せてフィーダ18へ送り込むように構成されている。オーガ22には、送り込み用の螺旋羽根23と、螺旋羽根23により横送りされた刈取穀稈をフィーダ18の始端に送り込むフィンガー24と、が備えられている。
【0030】
フィーダ18には、刈取穀稈を後方側へ掻き揚げ搬送して脱穀部15の前端部へ投入供給する搬送コンベア28が備えられている。搬送コンベア28には、縦回りに巻回された左右のチェーン29と、左右のチェーン29に亘って横掛されてチェーン29に立設された搬送バー30と、が備えられている。オーガ22のフィンガー24で刈取穀稈が搬送コンベア28に送り込まれ、搬送コンベア28により刈取穀稈は脱穀部15へ搬送されて投入される。
【0031】
機体フレーム14の前部とフィーダ18の下部との間には油圧シリンダ31が架設されている。刈取部13は、油圧シリンダ31の伸縮動によってフィーダ18と一体に第一支点X1周りに揺動昇降されるようになっている。刈取部13の前部の上方には、圃場に植立した穀稈を後方に引き起こして掻き込む掻き込みリール20が配置されている。全稈投入型コンバインは、この掻き込みリール20によって圃場の植立穀稈を掻き込みながら刈取作業を行うように構成されている。
【0032】
なお、この全稈投入型コンバインは、回り刈り等する際に未刈側が左側に位置するように、各構成が設定されている。
【0033】
[掻き込みリール]
図1図4に示すように、掻き込みリール20は、側面視四角形状であり、機体フレーム14に固定された横向きの第二支点X2周りに上下揺動自在な左右一対のアーム32の前部にブラケットを介して取り付けられている。アーム32と、刈取フレーム19との間には、油圧シリンダ34が取り付けられ、油圧シリンダ34の伸縮動によって、掻き込みリール20は上下揺動する。掻き込みリール20の横外側には、掻き込みリール20を回転させる駆動機構35が備えられている。駆動機構35の横外側には、駆動機構35を覆う駆動カバー36が備えられている。
【0034】
掻き込みリール20には、左右のリールフレーム37と、左右のリールフレーム37に亘って設けられた4つの支持バー39と、支持バー39に取り付けられた複数のタイン40と、が備えられている。4つの支持バー39は、中空のパイプ状であり、左右のリールフレーム37に亘って架設されている。4つの支持バー39は、リールフレーム37の周方向に均等な間隔を隔てて備えられている。
【0035】
[タイン]
タイン40は、線状の金属材料又は樹脂材料で構成されており、図3に示すように、オーガ22のフィンガー24を避ける位置となるように支持バー39の長手方向に間隔を空けて支持バー39に複数並べて取り付けられている。本実施形態では、1つの支持バー39につき、9つの取付孔42が形成されている。これに対応して、支持バー39には、複数の取付孔42が形成されている。図3図7に示すように、各タイン40は、支持部分43において支持バー39に取り付け支持されている。支持部分43は、タイン40が支持バー39に密接される部分である。タイン40には、支持部分43の一部として被取付部40Bが形成されている。被取付部40Bは、「U」字形状に形成されている。この「U」溝内にボルト44等の締結部材を挿通させた状態で、取付孔42にボルト44を締め付け、ボルト44の頭部と支持バー39とで被取付部40Bを挟持し、タイン40を支持バー39に支持固定している。
【0036】
図5に示すように、タイン40には、タイン40の先端部分40Aから支持部分43へ向かう中途部位に、弦巻状のバネ部45が備えられている。バネ部45の巻き数は例えば2回とされている。タイン40には、バネ部45よりも下方に屈曲部46が備えられている。タイン40は、屈曲部46よりも下部分がエルボー状に後方に向けて屈曲されている。
【0037】
[ハンプカバー]
図3図8に示すように、支持バー39に対するタイン40の支持部分43を覆うハンプカバー41(「カバー」に相当)が備えられている。ハンプカバー41は、可撓性を有しており、支持バー39の長手方向に沿った方向を長辺とする長方形状のシートとして形成され、1つの支持バー39につき1つ備えられている。ハンプカバー41は、支持バー39の長手方向の略全長を覆う長さに形成されている。ハンプカバー41には、タイン40の断面形状に対応した円形状の貫通孔47が複数形成されている。ハンプカバー41のこれら貫通孔47の夫々に、タイン40が夫々貫通されている。つまり、1つの貫通孔47に対して1つのタイン40が貫通されている。本実施形態では、ハンプカバー41に9つの貫通孔47が形成されている。貫通孔47の断面積は、タイン40の断面積よりも大きく形成されており、貫通孔47にタイン40を通しやすい。
【0038】
また、図3図6図8に示すように、ハンプカバー41には、複数の固定孔48が形成されている。本実施形態では、ハンプカバー41には、5つの固定孔48が形成されている。左右両端の2つの固定孔48は、ハンプカバー41の長手方向において、左右両端の2つの貫通孔47と同じ位置に形成されている。そして、それ以外の3つの固定孔48は、ハンプカバー41の長手方向において、貫通孔47とは異なる位置(タイン40とは異なる位置)に形成されており、具体的には、2つの貫通孔47を挟む中間位置の中央部位に形成されている。
【0039】
結束バンド49(「結束具」に相当)等のような固定具によってハンプカバー41を支持バー39側に取り付け可能とするために、固定孔48が、ハンプカバー41に形成されている。固定孔48を利用して結束バンド49によりハンプカバー41を支持バー39側に取り付けるには、まず、結束バンド49を固定孔48に挿通する。そして、固定孔48に結束バンド49が挿通された状態で結束バンド49を支持バー39につき一周して巻きつけて締め付ける。これにより、ハンプカバー41が固定孔48の部位で支持バー39に密着して固定される。このようにして、全ての固定孔48について、結束バンド49等の固定具による支持バー39に対するハンプカバー41の固定がなされている。
【0040】
このように、単一のハンプカバー41によって、全てのタイン40の支持部分43が覆われている。そして、タイン40は、バネ部45よりも下方位置で、ハンプカバー41を貫通し、タイン40への取付状態において、ハンプカバー41は、貫通孔47よりも下方の部位が、タイン40の前側に位置する。つまり、ハンプカバー41によって、タイン40の支持部分43の後方側と、バネ部45の後方側及び下方側が覆われている。
【0041】
ハンプカバー41は、1つの支持バー39につき1つずつ用いられるため、単一のハンプカバー41によって、2つ以上のタイン40の支持部分43が覆われている。さらには、単一のハンプカバー41によって、全てのタイン40の支持部分43が覆われている。
【0042】
[支持バー]
そして、支持バー39としては、不等間隔の第一配列でタイン40が複数並べて取り付けられている第一バー50と、第一配列とは逆並びの第二配列でタイン40が複数並べて取り付けられている第二バー51と、が備えられている。第一バー50と、第二バー51とは、リールフレーム37の周方向に隣接して交互に配置されている。つまり、本実施形態の掻き込みリール20には、2つの第一バー50と、2つの第二バー51との2種類からなる4つの支持バー39が備えられている。ハンプカバー41における貫通孔47の配列は、第一配列に適合するようにされている。すなわち、ハンプカバー41を左右反対に使用すれば、貫通孔47の配列は、第一配列とは逆並びの第二配列に適合する。つまり、第一バー50と第二バー51とで、同一構造のハンプカバー41を兼用できる。
【0043】
[サイドデバイダ]
上述したが、図1図9図10に示すように、掻き込みリール20の駆動機構35の左横外側には、駆動機構35を覆う駆動カバー36が備えられている。また、刈取フレーム19の左横外側には、オーガ22の駆動機構22Aを覆うサイドカバー25が備えられている。機体左側の側面視において、駆動カバー36とサイドカバー25との間の空間Sは、第二支点X2に近づくほど狭くなっている。このため、刈取作業時において、未刈側の植立穀稈の穂先側がこの空間Sに倒れ込んで、駆動カバー36とサイドカバー25との間に詰まり、引きちぎられ、正当に刈取られた刈取穀稈の搬送を阻害する虞がある。
【0044】
そこで、空間Sへの未刈側の植立穀稈の倒れ込みを防止するサイドデバイダ26が備えられている。サイドデバイダ26は、サイドカバー25及び駆動カバー36よりも機体外側に位置する状態で、刈取フレーム19に固定され、空間Sを適度に塞いでいる。
【0045】
サイドデバイダ26には、後上方に向けて延びる棒状のガイド部材52と、「L」の字形状に屈曲された棒状のL字部材53と、が備えられている。ガイド部材52は、下端部側が左側の刈取フレーム19の前端部に連結されている。ガイド部材52のうち、その下端部側から上端部側へ至る中途部位に、L字部材53の一端部が連結されている。
【0046】
ガイド部材52は、少なくとも掻き込みリール20が通常の刈取位置のときに、左側の刈取フレーム19から空間Sを横切り、駆動カバー36左横外側の位置に至るように延出されている。そして、ガイド部材52は、下端部から上端部に向かうにつれて機体の左側の横外側へ離れるように傾斜している。
【0047】
L字部材53には、ガイド部材52の中途部位に連結されて後方下がりの傾斜状態で後方へ延びる縦部位と、縦部位から機体内向きに屈曲されて、端部が機体フレーム14の左側面に連結される横部位と、が備えられている。
【0048】
このようなサイドデバイダ26によると、刈取作業時に、機体左側に位置する未刈穀稈が、ガイド部材52によって機体外側へ離れるように案内される。これにより、未刈穀稈の穂先が空間Sに入り込みにくくなる。したがって、刈取部13における刈取穀稈の搬送乱れ等が生じることも軽減される。また、サイドデバイダ26は、棒状のガイド部材52とL字部材53とを組み合わせた簡易な構造であるので、コストの増加を最少に抑えられると共に、運転操縦部17から機体左側への操縦者の視界を妨げることもない。
【0049】
[分草杆]
図1図9図10に示すように、サイドカバー25は、その最下部近傍が最も機体左横外側に膨出している。刈取作業中に、この膨出部25Aへ植立穀稈が衝突するのを防止する分草杆27が、刈取フレーム19に取り付けられている。分草杆27は、刈取フレーム19よりも機体外側へ植立穀稈を案内するものであり、分草杆27には、連結部材54と、案内部材55と、が備えられている。連結部材54は、水平状のプレートであり、左側の刈取フレーム19の左側面における後部下側位置に内端部が接合されている。案内部材55は、前後に長く形成された棒状の部材であり、連結部材54の外端部に、その中途部位が連結されている。案内部材55は、前部から後部へ向かうにつれて機体外側に位置するように構成されており、その後端部は、膨出部25Aの前端部近傍まで延びている。
【0050】
このような分草杆27によると、刈取作業を行う際に、案内部材55によって未刈穀稈が膨出部25Aよりも機体外側へ案内される。これにより、膨出部25Aに未刈穀稈が衝突することが防止される。
【0051】
[別実施形態]
(1)上記実施形態では、ハンプカバー41に貫通孔47が複数形成されている例を示したがこれに限られない。例えば、図11に示すように、貫通孔47の代わりに、ハンプカバー41に横一文字状の切れ目56が9つ形成されていてもよい。この場合、切れ目56の夫々に、対応するタイン40が夫々貫通されている。
【0052】
このようにハンプカバー41の切れ目56にタイン40を貫通させることにより、ハンプカバー41の可撓性によってタイン40が切れ目56に保持される。このため、ハンプカバー41をタイン40に対して安定して位置保持できる。この際、切れ目56の形状は、図11に示したような横一文字状に限られず、縦一文字状、十字状等種々の形状であってよい。そして、切れ目56がハンプカバー41の端部には至らずにハンプカバー41内で閉じられていると好適である。
【0053】
また、特に図示はしないが、ハンプカバー41に貫通孔47と切れ目56の両方が形成されており、貫通孔47と切れ目56の夫々に、対応するタイン40が夫々貫通されていてもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態においては、貫通孔47の断面積が、タイン40の断面積よりも大きく形成されていたが、これに限られるものではない。例えば、貫通孔47の断面積が、タイン40の断面積よりも小さく形成されていても良く、この場合は、ハンプカバー41の可撓性によって、タイン40が貫通孔47にしっかりと保持されやすくなる。
【0055】
(2)上記実施形態では、ハンプカバー41に貫通孔47や切れ目56が例えば9つ形成されている例を示したがこれに限られない。例えば、貫通孔47や切れ目56の個数は、1つ〜8つ、10以上であってもよい。この際、貫通孔47や切れ目56の個数は、タイン40の個数や取付孔42の個数と同数又はそれ以上の個数が備えられていてよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、1つの貫通孔47に1つのタイン40が貫通されている例を示したがこれに限られない。例えば、1つの貫通孔47に2つ以上のタイン40が貫通されていてもよい。また、貫通孔47の形状は、円形状に限られることはなく、長孔形状、繭形状、1つの孔の径方向に孔の径を超える切れ目が入った形状、2つの孔の径方向に連なる切れ目が入った形状等でもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、ハンプカバー41に固定孔48が5つ形成されている例を示したがこれに限られない。例えば、固定孔48の個数は、1つ〜4つ、6つ以上であってもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、ハンプカバー41に固定孔48が形成されている例を示したが、これに限られない。特に固定孔48が形成されていなくてもよく、例えば、ハンプカバー41が支持バー39に一周して巻き付けられてハンプカバー41の上端部をハンプカバー41の一部に接合されることにより、ハンプカバー41が支持バー39に支持されていてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、単一のハンプカバー41によって、全てのタイン40の支持部分43が覆われている例を示したがこれに限られない。例えば、1つの支持バー39につき、2以上の複数の分割カバーを支持バー39の長手方向に並べて、全てのタイン40の支持部分43が覆われていてもよい。
【0060】
(7)上記実施形態では、固定具として結束バンド49を一例に示したが、これに限られず、単なる紐状部材を結ぶ形式の固定具であってもよい。この場合、固定孔48に紐状部材を挿通させて、支持バー39に一周して巻き付け、紐状部材の端部同士を結ぶことにより、ハンプカバー41が支持バー39側に固定される。
【0061】
(8)上記実施形態では、バネ部45の巻き数を一例として2回として説明したが、これに限られない。バネ部45の巻き数は、1回や3回以上でもよい。また、タイン40にバネ部45が備えられていなくてもよい。
【0062】
(9)上記実施形態では、支持バー39として、第一配列でタイン40が複数取り付けられている第一バー50と、第一配列とは逆並びの第二配列でタイン40が複数取り付けられている第二バー51と、が備えられている例を示したがこれに限られない。即ち、例えば、掻き込みリール20が側面視で四角形以外(五角形以上の多角形)の形状であり、支持バー39が五本以上備えられているような場合に、例えば、支持バー39として、第一バー50や第二バー51に加えて、第一バー50及び第二バー51とはタイン40の配列が全く異なる別のバーが備えられていてもよい。また、支持バー39として、不等間隔の第一配列でタイン40が複数並べて取り付けられている第一バー50のみが複数備えられていてもよい。また、支持バー39として、等間隔の配列でタイン40が複数並べて取り付けられている別のバーが備えられていてもよい。これらの場合は、支持バー39の種類に応じたハンプカバー41を備えればよい。
【0063】
(10)上記実施形態では、回り刈り等する際に未刈側が左側に位置するように、各構成が設定された例を示したが、未刈側が右側に位置するように設定されていてもよい。この場合は、サイドデバイダ26や分草杆27を機体右側に設けると好適である。
【0064】
(10)上記実施形態では、左や右という表現を用いたが、上記実施形態とは左右の位置関係が反対であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
20 :掻き込みリール
37 :リールフレーム
39 :支持バー
40 :タイン
40A :先端部分
40B :被取付部
41 :ハンプカバー(「カバー」)
43 :支持部分
45 :バネ部
47 :貫通孔
48 :固定孔
49 :結束バンド(結束具)
50 :第一バー
51 :第二バー
56 :切れ目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11