(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルム側軌道とリターン側軌道とを有し、搬送方向に沿って可撓性を有する2つの無端状の搬送部材であって、それぞれのフィルム側軌道は互いに向かい合って配置される2つの搬送部材と、
搬送部材の搬送方向に沿って搬送部材に等ピッチで取付けられ、延伸対象のフィルムの端部を挟むことができる複数のクリップと、
互いに向かい合う2つのフィルム側軌道の中心軌跡に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡の曲率を部分的に変更する軌道曲げ機構と、
延伸対象のフィルムの延伸倍率を変更する延伸倍率変更機構と、
を備え、
軌道曲げ機構は、
基台の上に配置され、向かい合う2つのフィルム側軌道の曲率変更部分が搭載される回転台部と、
基台の所定の位置に設けられ、回転台部の一方端部を回転自在に支持する回転中心軸と、
基台上で回転台部の他方端部を回転中心軸周りに回転させながら基台上で回転台部を移動させる移動機構と、
を有し、
曲率変更部分における延伸倍率変更機構は、回転台部上に配置されることを特徴とするフィルム延伸装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係るフィルム延伸装置が解決しようとする課題について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1から
図3は、フィルム延伸装置において、延伸を行う部分を抜き出した模式図である。最初に、
図1から
図3に共通する部分を説明する。
図1から
図3について、各図の(a)は、構成を示す図である。
【0008】
これらの構成において、フィルムの端部を挟むクリップとして、フィルム側軌道とリターン側軌道とを有し、搬送方向に沿って可撓性を有する2つの無端状の搬送部材が用いられる。無端状の搬送部材の例は、無端ループ状のチェーンである。これらの図において、2つの無端状の搬送部材のそれぞれのフィルム側軌道10,12が示される。フィルム側軌道10,12は互いに軌道幅Wで向かい合う。フィルム側軌道10の全長は、フィルム側軌道12の全長よりも長くなるようにフィルム側軌道10,12の配置形状が設定されている。フィルム側軌道10,12にはそれぞれ、等ピッチでクリップ14,16が取り付けられる。
【0009】
搬送方向18の上流側がフィルム延伸装置の入口側で下流側が出口側である。入口側で延伸前のフィルム20の両端がそれぞれクリップ14,16に挟まれて取り付けられる。ここで無端状の搬送部材が駆動されると、搬送方向18の方向にクリップ14,16はそれぞれフィルム側軌道10,12に沿って移動する。フィルム側軌道10の全長は、フィルム側軌道12の全長よりも長く、クリップ14,16は等ピッチで取り付けられているので、入口側から出口側までの間において、フィルム側軌道10上にあるクリップ14の総数はフィルム側軌道12上にあるクリップ16の総数よりも多い。したがって、向かい合うフィルム側軌道10,12において対応するクリップ14,16を結ぶ線は、搬送方向18に対し傾斜しながら出口側に向かい、延伸後のフィルムとなる。以下では、向かい合うフィルム側軌道10,12において対応するクリップ14,16を結ぶ線を、フィルム引張方向線と呼ぶ。
【0010】
フィルム引張方向線の方向に平行な方向がフィルムの主光軸であるので、出口側における延伸後のフィルムの主光軸の方向は、入口側における延伸前のフィルム20の主光軸の方向に対し、斜めになる。このようにして、フィルムの延伸が行われる。
【0011】
フィルムの主光軸方向を斜めにするには、搬送部材の搬送方向18を、入口側に対し出口側を斜めにすればよい。
図1はそのような場合を示す図である。ここでは、
図1(a)に示すように、フィルム側軌道10,12の幅Wについて、入口側の幅W
1=出口側の幅W
2とし、搬送方向18について、入口側に対し出口側を傾き角度θ
R=θ
1傾けた。延伸フィルムについて所望の主光軸方向の変化量が設定されると、その変化量と同じ値にθ
Rが設定される。例えば、所望の主光軸方向の変化量が45度のときは、θ
R=θ
1=45度に設定される。
【0012】
延伸前のフィルム20は基本的に配向していない。延伸前のフィルム20のフィルム引張方向線30の方向θ
F20を
図1(b)に示す。延伸前では、フィルム20の主光軸方向は搬送方向18に平行な方向であるので、θ
F20=90度である。したがって、所望の主光軸方向の変化量が45度のときは、延伸によって、(90度−45度)=45度だけ、主光軸方向を変化させる必要がある。そこで、
図1では、θ
R=45度に設定する。
【0013】
図1(a)に示すように、フィルム側軌道10,12において、入口側と出口側の間で、傾き角度θ
R=θ
1=45度折り曲げると、クリップ16に対しクリップ14の位置が遅れて、フィルム側軌道10,12の延びる方向に対しフィルム引張線が45度傾く状態になる。フィルム側軌道10,12の延びる方向は搬送方向18に平行な方向であるので、折れ曲がりを過ぎると、フィルム引張方向線32は、搬送方向18に対し45度傾く。延伸後のフィルム22のフィルム引張方向線32の方向θ
F22を
図1(c)に示す。上記のように、θ
F22は、搬送方向18に対し45度、すなわち、θ
1だけ傾く。
【0014】
このように、 フィルムの主光軸方向を斜めにするだけであれば、延伸倍率=1のままで、すなわちW
2=W
1として、搬送部材の搬送方向18を、入口側に対し出口側を斜めにすればよい。すなわち、フィルムの主光軸方向を45度傾けたいときは、θ
R=θ
1=45度とすればよい。
【0015】
主光軸の方向を傾斜させることに加えて、リタデーション等の光学特性を向上させるために、延伸倍率を変更することが行われる。例えば、W
2をW
1より大きくすることが行われる。
図2はそのような場合を示す図である。ここでは、θ
R=θ
1のままでW
2>W
2とした。なお、参考のため、W
2=W
1の場合を破線で示した。
【0016】
図2(a)に示すように、フィルム側軌道10,12において、入口側と出口側の間で、傾き角度θ
R=θ
1=45度折り曲げたまま、幅WがW
1からW
2に広がると、クリップ16に対しクリップ14の位置が遅れるが、その遅れ量は、幅が広がった分、破線で示す
図1(a)の場合よりも小さくなる。すなわち、フィルム側軌道10,12の延びる方向に対しフィルム引張線が45度よりも大きい角度で傾く状態になる。したがって、折れ曲がりを過ぎると、フィルム引張方向線32は、搬送方向18に対し45度よりも大きい角度で傾き、延伸前の配向していないθ
F20の方に近くなる。延伸後のフィルム24のフィルム引張方向線34の方向θ
F24を
図2(b)に示す。上記のように、θ
F24はθ
F22よりも大きい角度となる。
【0017】
このように、光学特性の向上のために、延伸倍率を変更してW
2>W
1とすると、θ
Rがフィルムの主光軸の所望の傾き角度=45度のままでは、延伸後のフィルム24において、主光軸方向について所望の傾き角度=45度が得られない。延伸後のフィルム24において、主光軸についての所望の傾き角度=45度を得るためには、θ
Rをもっと大きくしなければならない。すなわち、θ
Rを45度より大きくする必要がある。
図3はそのような場合を示す図である。ここでは、W
2>W
2の下で、θ
R=90度とした。
【0018】
図3(a)に示すように、フィルム側軌道10,12において、入口側と出口側の間で、幅WがW
1からW
2に広がった状態で、傾き角度θ
R=θ
2=90度にして折り曲げると、クリップ16に対しクリップ14の位置が遅れるが、その遅れ量は、傾き角度が大きくなった分、
図2(a)の場合よりも大きくなる。すなわち、フィルム側軌道10,12の延びる方向に対しフィルム引張線θ
F26がθ
F24よりも小さい角度で傾く状態になる。したがって、折れ曲がりを過ぎると、フィルム引張方向線36は、搬送方向18に対し
F24よりも小さい角度で傾き、いまの場合、45度に戻る。延伸後のフィルム26のフィルム引張方向線36の方向θ
F26を
図3(b)に示す。上記のように、θ
F26は、θ
F24よりも小さい角度となり、いまの場合θ
F24=45度となる。
【0019】
このように、延伸後のフィルムについて、所望の主光軸方向と、所望のリタデーション等の光学特性を得るには、フィルム側軌道10,12について、延伸倍率を変更しながら、傾き角度θ
Rを所望の主光軸方向の傾き角度よりも大きくしなければならない。
図1から
図3のモデルではフィルム側軌道10,12の傾き角度θ
Rの変更を1点で行うものとしたが、このように傾き角度θ
Rを急変させると延伸後のフィルムに大きな皺が発生する。また、フィルム側軌道10,12の傾き角度θ
Rを大きくするにつれて、延伸後のフィルムに皺が発生する可能性が増える。延伸後のフィルムに皺が発生すると、位相差板等としての使用に耐えないことが生じ得る。
【0020】
本発明の目的は、皺の発生を抑制しながら、所望の主光軸方向とリタデーション等の光学特性を有するフィルムを得ることができるフィルム延伸装置を提供することである。他の目的は、フィルムの両端を挟むクリップの搬送軌道を滑らかに変更できるフィルム延伸装置を提供することである。さらに他の目的は、多様な仕様の光学フィルムを製造可能なフィルム延伸装置を提供することである。以下の手段は、上記目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るフィルム延伸装置は、フィルム側軌道とリターン側軌道とを有し、搬送方向に沿って可撓性を有する2つの無端状の搬送部材であって、それぞれのフィルム側軌道は互いに向かい合って配置される2つの搬送部材と、搬送部材の搬送方向に沿って搬送部材に等ピッチで取付けられ、延伸対象のフィルムの端部を挟むことができる複数のクリップと、互いに向かい合う2つのフィルム側軌道の中心軌跡に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡の曲率を部分的に変更する軌道曲げ機構と、延伸対象のフィルムの延伸倍率を変更する延伸倍率変更機構と、を備え、軌道曲げ機構は、基台の上に配置され、向かい合う2つのフィルム側軌道の曲率変更部分が搭載される回転台部と、基台の所定の位置に設けられ、回転台部の一方端部を回転自在に支持する回転中心軸と、基台上で回転台部の他方端部を回転中心軸周りに回転させながら基台上で回転台部を移動させる移動機構と、を有し、曲率変更部分における延伸倍率変更機構は、回転台部上に配置されることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るフィルム延伸装置において、回転台部は、一方端部と他方端部の間で互いに相対的な回転が可能なように接続される複数の移動台を有し、隣接する移動台は、一方側の移動台の上に設けられる移動台回転軸の周りに他方側の移動台が回転して、各移動台はそれぞれの回転量に応じて基台上を移動し、これによって、2つのフィルム側軌道の中心軌跡の曲率を部分的に変更することが好ましい。
【0023】
本発明に係るフィルム延伸装置において、隣接する移動台の一方の移動台に複数の位置決め穴が設けられ、他方の移動台に1つの位置決め穴が設けられ、他方の移動台の位置決め穴に一方の移動台の複数の位置決め穴の1つを合わせて固定することで、隣接する動台の間の相対的回転量が設定されることが好ましい。
【0024】
本発明に係るフィルム延伸装置において、延伸倍率変更機構は、2つのフィルム側軌道のそれぞれに独立に設けられ、搬送部材の搬送方向を案内する案内部材と、2つのフィルム側軌道の中心軌跡からそれぞれの案内部材までの距離を変更する案内部材移動部と、を有することが好ましい。
【0025】
本発明に係るフィルム延伸装置において、回転台部に設けられる延伸倍率変更機構は、移動台ごとに設けられ、2つのフィルム側軌道のそれぞれに独立に設けられ、搬送部材の搬送方向を案内する案内部材と、2つのフィルム側軌道の中心軌跡から案内部材までの距離を変更する案内部材移動部と、を有することが好ましい。
【0026】
本発明に係るフィルム延伸装置において、搬送部材は、2つの穴を有する複数の上連結板と、上連結板と同じ形状を有する複数の下連結板と、上連結板の各穴とこれに対応する下連結板の各穴の間に挿入され、上連結板と下連結板のそれぞれを回転自在に接続する複数の軸部材と、を組み合わせて形成され、隣接する軸部材の間の間隔が搬送の1ピッチである無端状のチェーンであり、案内部材は、複数の送り歯を有する従動型スプロケットで、送り歯の円周ピッチがチェーンの隣接する2つの軸部材の間のピッチであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
上記構成のフィルム延伸装置は、延伸対象のフィルムの延伸倍率を変更する延伸倍率変更機構と共に、互いに向かい合う2つのフィルム側軌道の中心軌跡に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡の曲率を部分的に変更する軌道曲げ機構として、フィルム側軌道の曲率変更部分が搭載される回転台部の一方端部が基台の所定の位置に設けられる回転中心軸の周りに回転するように、回転台部の他方端部を移動させる。延伸倍率の変更と中心軌跡の曲率の部分的変更が可能であるので、多様な仕様の光学フィルムを製造可能となる。
【0028】
また、本発明に係るフィルム延伸装置において、回転台部は、一方端部と他方端部の間で互いに相対的な回転が可能なように接続される複数の移動台を有するので、フィルム側軌道の中心軌跡の曲率変更部分の曲率を複数の移動台ごとにきめ細かく変更できる。これによって、フィルムの両端を挟むクリップの搬送軌道を滑らかに変更でき、皺の発生を抑制しながら、所望の光学特性を有するフィルムを得ることができる。
【0029】
また、本発明に係るフィルム延伸装置において、複数の移動台についてそれぞれ複数の位置決め穴を有するので、隣接する移動台の間の相対的回転量をきめ細かく設定できる。これによって、フィルムの両端を挟むクリップの搬送軌道をさらに滑らかに変更でき、皺の発生を抑制しながら、所望の光学特性を有するフィルムを得ることができる。
【0030】
また、本発明に係るフィルム延伸装置において、延伸倍率変更機構は、搬送部材の搬送方向を案内しながら、2つのフィルム側軌道の中心軌跡から案内部材までの距離を変更できる。これにより、無端状の搬送部材の位置を案内部材によって直接的に移動させることができる。回転台部が複数の移動台で構成されるときは各移動台について無端状の搬送部材の位置を案内部材によって直接的に移動させることができるので、曲率の変更と共に延伸倍率を複数の区間ごとにきめ細かく変更できる。これによって、フィルムの両端を挟むクリップの搬送軌道を滑らかなものにでき、皺の発生を抑制しながら、所望の光学特性を有するフィルムを得ることができる。
【0031】
また、本発明に係るフィルム延伸装置において、搬送部材は無端状のチェーンであり、案内部材は、複数の送り歯を有する従動型スプロケットであるので、スプロケットの位置を移動させるだけで延伸倍率の変更ができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べる寸法、形状、角度値、移動台の個数等は説明のための例示であって、フィルム延伸装置の仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
図4は、フィルム延伸装置40の初期状態における構成を示す図である。このフィルム延伸装置40は、延伸対象のフィルムの両端を挟むクリップを搬送する2つの搬送部材の搬送方向を4つの曲率変更区間ごとに段階的にきめ細かく変更し、最大で45度の角度で変更できる。初期状態とは、搬送方向の変更を行う前の状態である。
図4(a)は平面図、(b)は搬送方向に沿った断面図である。(b)では一部の構成要素の図示を省略した。
図4に、互いに直交するX方向とY方向とZ方向を示した。また、搬送方向の傾斜角度θの方向を示した。
【0035】
フィルム延伸装置40は、全体ベース41の上に、第1基台ベース42と第2基台ベース44が搭載され、第1基台ベース42の上に第1基台46が設けられ、第2基台ベース44の上に第2基台48が設けられて全体の骨格が形成される。フィルム延伸装置40は、適当な支持手段によって床面に支持されて設置される。第1基台46と第2基台48を分けたのは、Z方向の高さ位置が異なるためで、この高さ差を有する段差部を設けることで1の基台とすることができる。以下では、段差部を設けずに、平坦面である第1基台46と第2基台48に分けて説明する。
【0036】
フィルム延伸装置40は、延伸対象のフィルムの両端部を挟む複数のクリップを搬送方向に沿って搬送する2つの無端状の搬送部材50,54と、無端状の2つの搬送部材50,54のうち、フィルムを挟んで搬送する側で互いに向かい合って配置される部分であるフィルム側軌道52,56の中心軌跡58の曲率を部分的に変更する機構であって、回転台部140と回転台部140を移動駆動する移動機構180を含む軌道曲げ機構、搬送部材フィルムの延伸倍率を変更する延伸倍率変更機構70,72を備える。
【0037】
搬送部材50,54の構成と、搬送部材50,54に取り付けられるクリップと、延伸倍率変更機構70の詳細は、
図5で後述する。軌道曲げ機構のうち回転台部140の詳細は
図6で、移動機構180の詳細は
図7で、それぞれ詳述する。
図4では、無端状の搬送部材50,54の配置について説明する。
【0038】
無端状の搬送部材50,54は、無端状のチェーン110(
図5参照)である。無端状の搬送部材50,54の配置状態を軌道と呼ぶことにすると、搬送部材50は、フィルム側軌道52とリターン側軌道53を有する。同様に、搬送部材54は、フィルム側軌道56とリターン側軌道57を有する。搬送部材50の全軌道に沿った全長と搬送部材54の全軌道に沿った全長は等しくなるように設定してもよく、等しくしなくてもよい。
【0039】
無端状の搬送部材50,54の軌道は、複数のスプロケットによって用いて案内され、軌道を形成する。スプロケットは、円板の外周側に沿って円周状に複数の送り歯を配置したもので、この送り歯が搬送部材であるチェーン110に噛み合うことで、搬送部材50,54が案内される。スプロケットについては、
図5の延伸倍率変更機構70に関連してさらに詳細に説明する。
【0040】
各スプロケットは、搬送部材50,54に張力を与えるように、無端状の軌道を広げる方向の位置に配置される。
図4に示すように、無端状の軌道が曲げられている場合には、曲げられている曲率中心側の位置に各スプロケットが配置される。
【0041】
図4においてRと図示されるスプロケットは、リターン側軌道53,57を案内するもので、第1基台46または第2基台48上の予め定められた所定の位置に配置される位置固定型スプロケットである。
【0042】
図4においてSと図示されるスプロケットは、フィルム側軌道52,56を案内するもので、第1基台46または第2基台48上に設けられ、第1基台46または第2基台48に対して位置を移動できる位置移動型スプロケットである。位置移動型スプロケットは、その位置移動の機能によって、延伸倍率を変更できるので、
図5で説明する延伸倍率変更機構70,72の一部を構成する。
【0043】
スプロケット60,62は、フィルム側軌道52,56の入口側に配置され、搬送部材50,54をフィルム側軌道52,56に案内する。入口側では、延伸前のフィルムの両端が搬送部材50,54にそれぞれ搭載されるクリップ130(
図5参照)によって挟んで取り付けられる。
【0044】
スプロケット64,66は、フィルム側軌道52,56の出口側に配置され、搬送部材50,54を駆動スプロケット74,76の側に案内する。出口側では、延伸後のフィルムが搬出される。
【0045】
初期状態では、入口側におけるフィルム側軌道52,56の間の間隔である入口側間隔W
INはW
1に設定され、出口側におけるフィルム側軌道52,56の間の間隔である出口側間隔W
OUTもW
1に設定される。スプロケット60,62,64,66はSと示されるように、位置移動型スプロケットであるので、実際の使用状態において延伸倍率変更機構70,72によって延伸倍率が変更されると、その延伸倍率の変更に応じてスプロケット60,62,64,66の位置が変更される。スプロケット60,62,64,66の位置の変更によって、W
IN及びW
OUTがW
1から変更される。
【0046】
図4においてMと図示される駆動スプロケット74,76は、それぞれ搬送部材50,54を駆動する電動機の出力軸に接続されたスプロケットである。搬送部材50は駆動スプロケット74によって駆動され、フィルム側軌道52とリターン側軌道53に示した矢印の方向に沿って移動する。
【0047】
張力調整機構78,80は、リターン側軌道53,57において設けられ、搬送部材50,54の搬送方向に沿った張力の大きさを適切な範囲内に調整する。かかる張力調整機構78,80としては、適当なエアシリンダを用いることができる。
【0048】
このようにして、無端状の搬送部材50,54は、複数のスプロケットによって軌道の配置が設定され、張力調整機構78,80によって適当な張力が与えられて、駆動スプロケット74,76によって駆動される。これによって無端状の搬送部材50,54は、
図4の矢印に沿って搬送される。
【0049】
初期状態のフィルム側軌道52,56の傾き角度θ
Rは、
図1で説明したものと同様で、45度である。
【0050】
次に、
図5を用いて、延伸倍率変更機構70,72と、搬送部材50,54を構成するチェーン110と、クリップ130について説明する。
【0051】
図4に示すように、延伸倍率変更機構70は、フィルム側軌道52に対して設けられ、延伸倍率変更機構72は、フィルム側軌道56に対して設けられるもので、基本的構成は同じである。相違するのは、延伸倍率変更機構72が向かい合うフィルム側軌道52,56の間に配置されるので、より小型に設定されている点である。そのため、延伸倍率変更機構72に含まれるスプロケットの直径は、延伸倍率変更機構70に含まれるスプロケットの直径より小さく設定される。その他の構成は同じであるので、以下では、特に断らない限り、延伸倍率変更機構70について説明する。
【0052】
また、
図4に示されるように、Sとして示されるスプロケットは全て位置移動型で、延伸倍率変更機構70,72の構成要素であるが、第1基台46上に設けられるものと、第2基台上48に配置される回転台部140に設けられるものがある。これらは共通化が図られ、同一の構成であるので、以下では、第1基台46上に設けられるものについて説明する。
【0053】
図5(a)〜(c)は延伸倍率変更機構70を示す図で、(a)はX方向から見た断面図、(b)はY方向から見た断面図、(c)は上面図である。なお、(a)においては、案内部材移動部100を断面ではなく、そのままX方向から見た外形を示した。
図5(d),(e)はチェーン110を示す図で、(a)は上面図、(e)は側面図である。
図5(f)はクリップ130を示す図である、
【0054】
延伸倍率変更機構70は、フィルム側軌道52に設けられ、搬送部材50の搬送方向を案内する案内部材であるスプロケット90と、スプロケット90を回転自在に支持する支持軸94と、支持軸94の下端部に一体化されて取り付けられる下端板部材96と、下端板部材96を第1基台46との間で摺動自在に保持する保持部材98と、保持部材98に案内させながら下端板部材96をX方向に移動させる案内部材移動部100とを含んで構成される。
【0055】
スプロケット90は、円板の外周側に沿って円周状に複数の送り歯92を配置したもので、送り歯92は、チェーン110を構成する複数の軸部材120の間の隙間に噛み合う。送り歯92の円周ピッチP
Sは、チェーン110におけるピッチP
Cと同じに設定される。これによって、搬送部材50であるチェーン110が駆動スプロケット74によって駆動されて搬送方向に搬送されてくると、スプロケット90の送り歯92と噛み合い、その搬送方向がスプロケット90の送り歯92の位置で規定される。これがスプロケット90における搬送部材50の案内機能である。
【0056】
支持軸94は、上端部において軸受を介してスプロケット90を回転自在に保持し、下端部で下端板部材96に嵌め込まれて固定される軸部材である。
【0057】
下端板部材96は、直方体状の形状を有し、上面側に支持軸94の下端部が嵌め込まれ、支持軸94と一体に移動する板部材である。下端板部材96の高さ寸法をH、Y方向に沿った幅寸法をW
Yとして示した。
【0058】
保持部材98は、庇部を有する逆L字形の2つの部材97
L,97
Rとこれらを連結する正面板部99で構成される。連結によって3つの部材が一体化された保持部材98は、第1基台46に固定される。2つの部材97
L,97
Rは、互いに向かいあって配置され、連結された状態における逆L字形の庇部の内側の高さは、下端板部材96の高さ寸法Hよりもやや大きく設定される。また、連結された状態における逆L字形の庇部を支える壁部の向かい合う間隔は、下端板部材96の幅寸法W
Yよりもやや大きめに設定される。これによって、保持部材98は、第1基台46との間で、下端板部材96をX方向に摺動自在に保持する。
【0059】
案内部材移動部100は、ハンドル部102と、ハンドル部102に一体化して取り付けられるネジ軸104と、保持部材98の正面板部99に設けられネジ軸104のネジ部と噛み合うメネジ部106と、下端板部材96に取り付けられ、ネジ軸104の先端部を回転自在に保持し、X方向には移動しないようにするネジ軸保持板108を含んで構成される。ネジ軸104のネジ部は、メネジ部106に対応する中間部に設けられるが先端部には設けられない。なお、適当な控えナットを必要な個所に設けることができる。
【0060】
上記構成において、ハンドル部102を回転させると、ネジ軸104がメネジ部106と噛み合うが、メネジ部106は正面板部99を介して第1基台46に固定されているので、結局、下端板部材96が保持部材98に案内されてX方向に移動する。これによって、支持軸94がX方向に移動し、支持軸94に回転自在に支持されるスプロケット90がX方向に移動する。
【0061】
上記のように、ハンドル部102の操作で、フィルム側軌道52,56の中心軌跡58から、案内部材であるスプロケット90の中心位置までの距離が変更される。スプロケット90の位置が変更されると、向かい合うフィルム側軌道52,56の軌道間間隔が変更され、フィルムの延伸倍率が変更される。これが延伸倍率変更機構70の延伸倍率変更機能である。
【0062】
図5(d),(e)は、搬送部材50である無端状のチェーン110を示す図である。チェーン110は、2つの穴を有する複数の上連結板112,114と、上連結板と同じ形状を有する複数の下連結板116,118と、上連結板112,114の各穴とこれに対応する下連結板116,118の各穴の間に挿入され、上連結板112,114と下連結板116,118のそれぞれを回転自在に接続する複数の軸部材120を組み合わせて形成される。
【0063】
すなわち
図5(d)に示すように、1つの軸部材120の一方端部には、上連結板114の一方側の穴と、上連結板112の他方側の穴をこの順序に重ね合わせて嵌め込み、その軸部材120の他方端部には、下連結板118の一方側の穴と、下連結板116の他方側の穴をこの順序で重ね合わせて嵌め込む。その軸部材120に隣接する他の軸部材120の一方側端部には、上連結板114の他方側の穴と、上連結板112の一方側の穴をこの順序で重ね合わせて嵌め込み、その軸部材120の他方端部には、下連結板118の他方側の穴と、下連結板116の一方側の穴をこの順序で重ね合わせて嵌め込む。これを順次繰り返して、無端状のチェーン110が形成される。
【0064】
無端状のチェーン110において2つの軸部材120の間のピッチP
Cは、スプロケット90の送り歯92の円周ピッチP
Sと同じである。
【0065】
図5(f)は、クリップ130を示す図である。クリップ130は、チェーン110の各上連結板112,114に1つずつ取り付けられる。
図5(f)は、上連結板112に取り付けられるクリップ130が示される。クリップ130は、チェーン110の上連結板112に固定して取り付けられる取付台132と、取付台132と一体化して設けられフィルムの端部を挟み込むための下挟み部を有するクリップ台134と、クリップ台134から下挟み部の上方まで延びるアーム部に設けられる回転中心136と、回転中心136に中間部が回転自在に支持され、先端にフィルムの端部を挟み込むための上挟み部を有するクリップハンドル138を含んで構成される。
【0066】
クリップハンドル138の操作で、まず、クリップハンドル138の先端の上挟み部とクリップ台の上挟み部との間に隙間があるようにして、その隙間にフィルムの端部を挿入し、次にクリップハンドル138を操作して、クリップハンドル138の先端の上挟み部とクリップ台の上挟み部との間に隙間がなくなる方向に回転中心136の周りに回転させることで、フィルムの端部が下挟み部と上挟み部とで挟み込まれる。このようにして、フィルムの端部の挟み込みが行われる。
【0067】
図4のSマークに示すように、延伸倍率変更機構70,72は、2つのフィルム側軌道52,56の入口側から出口側の間で、11組設けられる。それぞれの延伸倍率変更機構70,72は独立に設定可能であるので、2つのフィルム側軌道52,56の入口側から出口側の間で、11組のスプロケット90の配置位置を変更できる。
【0068】
延伸対象のフィルムについて所望の延伸倍率が設定されると、フィルムにおける皺の発生を抑制しながらその延伸倍率を達成するために、2つのフィルム側軌道52,56の中心軌跡に対する11組のスプロケット90の位置を滑らかに変更する。これによって、延伸倍率が変更されても、2つのフィルム側軌道52,56は、入口側と出口側の間で滑らかに変更することができる。
【0069】
次に、軌道曲げ機構を説明する。軌道曲げ機構は、互いに向かい合う2つのフィルム側軌道52,56の中心軌跡58に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡58の曲率を部分的に変更する機能を有する機構である。軌道曲げ機構は、第2基台48の上に配置され、向かい合う2つのフィルム側軌道52,56の曲率変更部分が搭載される回転台部140と、第2基台48の所定の位置に設けられ、回転台部140の一方端部を回転自在に支持する回転中心軸150と、第2基台48上で回転台部140の他方端部を回転中心軸150周りに回転させながら第2基台48上で回転台部140を移動させる移動機構180を含んで構成される。
【0070】
図6は、回転台部140を示す図である。
図6(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(b)における転動部160の拡大図、(d)は、位置決め部166の拡大図である。
【0071】
回転台部140は、回転動作における一方端部である回転中心軸150と、他方端部である移動機構180の間で互いに相対的な回転が可能なように接続される4つの移動台142,144,146,148を有する。移動台142,144,146,148は、この順序で、回転中心軸150側から移動機構180の側に順次配置される。
【0072】
移動台142は、第2基台48に固定して取り付けられる回転中心軸150の周りに回転自在である。移動台144は、位置決め部168を介して移動台142と接続され、移動台回転軸152の周りに回転自在である。移動台146は、位置決め部170を介して移動台144と接続され、移動台回転軸154の周りに回転自在である。移動台148は、位置決め部172を介して移動台146と接続され、移動台回転軸156の周りに回転自在である。回転中心軸150と、移動台回転軸152,154,156は、いずれもZ方向に延びる軸であるので、移動台142,144,146,148は、これらのZ方向軸の周りに回転する。
【0073】
移動台142の回転中心軸150周りの回転の範囲は、第1基台46の外形と移動台142自身の外形によって規制される。すなわち、XY平面内で、第1基台46と移動台142は、回転中心軸150を境に、−X方向では互いに平行で、+X方向には11.25度の傾斜角度θを有する。これによって、移動台142は、回転中心軸150の周りに最大11.25度の傾斜角度の範囲で時計方向に回転できる。11.25度は、45度を移動台の数=4で除した角度である。
【0074】
移動台144の移動台回転軸152周りの回転の範囲は、移動台142の外形と移動台144自身の外形によって規制される。すなわち、移動台142と移動台144は、移動台回転軸152の周りに互いに四半円周状形状で向かい合う。この四半円周状形状を境に、−X方向では互いに平行で、+X方向には11.25度の傾斜角度θを有する。これによって、移動台144は、移動台142に対し、移動台回転軸152の周りに最大11.25度の傾斜角度の範囲で時計方向に回転できる。
【0075】
同様に、移動台144と移動台146は、移動台回転軸154の周りに互いに四半円周状形状で向かい合う。この四半円周状形状を境に、−X方向では互いに平行で、+X方向には11.25度の傾斜角度θを有する。これによって、移動台146は、移動台144に対し、移動台回転軸154の周りに最大11.25度の傾斜角度の範囲で時計方向に回転できる。
【0076】
移動台146と移動台148は、移動台回転軸156の周りに互いに半円周状形状で向かい合う。この半円周状形状を境に、−X方向では互いに平行で、+X方向には11.25度の傾斜角度θを有する。これによって、移動台148は、移動台146に対し、移動台回転軸156の周りに最大11.25度の傾斜角度の範囲で時計方向に回転できる。
【0077】
図6(c)は、転動部160の詳細を示す図である。ここでは、移動台回転軸156に設けられる転動部160の断面図が示される。転動部160は、移動台回転軸156を回転自在に保持する軸受部162と軸受部162の外周に設けられる2つのコロ車164を含んで構成される。コロ車164は、第2基台48の上面に接触して転動可能である。このように、移動台148は、移動台回転軸156の周りに回転しながら第2基台48の上面を移動できる。回転中心軸150、移動台回転軸152,154も同様にコロ車164を有する転動部160に回転自在に支持されるので、移動台142,144,146も第2基台48の上面を移動できる。
【0078】
第1基台46と4つの移動台142,144,146,148とは、4つの位置決め部166,168,170,172によって接続される。各位置決め部166,168,170,172は、それぞれ、隣接する移動台の一方の移動台に複数の位置決め穴が設けられ、他方の移動台に1つの位置決め穴が設けられ、他方の移動台の位置決め穴に一方の移動台の複数の位置決め穴の1つを合わせて位置決めピンを用いて固定することで、隣接する動台の間の相対的回転量を設定する機能を有する。
【0079】
位置決め部166は第1基台46と移動台142との間に設けられ、位置決め部168は移動台142と移動台144の間に設けられ、位置決め部170は移動台144と移動台146の間に設けられ、位置決め部172は移動台146と移動台148の間に設けられる。
【0080】
4つの位置決め部166,168,170,172の構造はほぼ同じであるので、位置決め部166について説明する。位置決め部166は、移動台142に設けられ第1基台46の側に張り出す張出部174と、張出部174に設けられる4つの位置決め穴176と、第1基台46に設けられる1つの位置決め穴と、位置決めピン178を含んで構成される。ここで、第1基台46の位置決め穴に、移動台142側の4つの位置決め穴176の1つを合わせて位置決めピン178を用いて固定することで、第1基台46と移動台142の間の相対的回転量が設定できる。
【0081】
図6(d)は、4つの位置決め穴176の各穴の位置を示す図である。4つの位置決め穴176のそれぞれを区別して、以下では、各位置決め穴の位置を、張出部174の根元側から先端側に向かって、P
0,P
1,P
2,P
3と呼ぶ。この張出部174の位置決め穴に合わせられる第1基台46に設けられる位置決め穴の位置は、フィルム延伸装置40の初期状態でP
0の位置の位置決め穴と合うように設定される。したがって、初期状態では、位置決めピン178は、P
0の位置の位置決め穴に挿入される。
【0082】
回転中心軸150の周りの第1基台46に対する移動台142の回転角度θの最大量は11.25度であるので、4つの位置決め穴176の1つの位置決め穴の選択によって、第1基台46と移動台142の間の相対的回転量は、11.25度を3分割した3.75度の間隔で設定できる。このように、位置決め部166によって、移動台142の回転角度θは、3.75度ごとに細かく設定できる。
【0083】
他の位置決め部168,170,172も同様である。例えば、位置決め部168は、移動台144に4つの位置決め穴176を有する張出部174が移動台142側に張り出し、移動台142には1つの位置決め穴が設けられ、移動台142の位置決め穴の位置は、初期状態において、その位置決め穴が移動台144側の4つの位置決め穴176の中で張出部174の根元に最も近いP
0の位置にある位置決め穴に合うように設定される。
図6では、位置決めピン178がP
0の位置の位置決め穴に挿入される状態が示される。
【0084】
このようにして、各移動台142,144,146,148は、隣接する移動台の間の回転角度を、それぞれ、3.75度単位で、きめ細かく設定できる。
【0085】
図7は、回転台部140を回転中心軸150の周りに回転させながら第2基台48上で回転台部140を構成する各移動台142,144,146,148を移動させる移動機構180を示す図である。移動機構180は、第2基台48の端部と移動台148の端部との間に設けられる。ここで端部とは、第2基台48については、フィルム側軌道52,56の入口側の方の端部である。移動台148については、回転中心軸150側の端部を一方側端部として、その反対側の他方側端部である。
図7(a)は第2基台48の端部側から見た図、(b)は平面図、(c)は(a)に対しその側面側から見た図である。
【0086】
移動機構180は、移動台148の上面に設けられるスプロケット部182と、第2基台48の上面に設けられるチェーン部184と、第2基台48の上面に設けられ、移動台148の下面を摺動自在に支持する支持台186と、移動台148の下面に設けられるコロ車188で構成される。
【0087】
スプロケット部182は、ハンドル部190と、ハンドル部190に一体化して取り付けられる軸部192と、軸部192に一体化して取り付けられるスプロケット板194と、移動台148に設けられ軸部192を回転自在に保持する2つの保持台196,198を含んで構成される。
【0088】
スプロケット板194は、
図5で説明したスプロケットと同様に、円板の外周側に沿って円周状に複数の送り歯を配置したものである。チェーン部184は、
図5で説明した無端状のチェーン110の一単位、すなわち、2つの軸部材を連結板で連結したものを、第2基台48の上面に所定の配置ピッチで並べたものである。配置ピッチは、スプロケット板194の送り歯の円周ピッチと同じに設定される。チェーン部184は、回転中心軸150を中心とする円弧状に配置される。
【0089】
ハンドル部190を回転させると、スプロケット板194が回転し、その送り歯がチェーン部184に噛み合う。移動台148は、回転台部140の他の移動台146,144,142を介して回転中心軸150の周りに回転可能であり、支持台186によって下面が支持され、コロ車188によって第2基台48の上を移動できる。
【0090】
したがって、ハンドル部190の回転によって、移動台148が回転中心軸150の周りに回転する。移動台148の回転によって、回転台部140を構成する各移動台146,144,142も回転中心軸150周りにそれぞれ回転する。このようにして、移動機構180によって、回転台部140を回転中心軸150周りに回転させながら、第2基台48の上を移動させることができる。
【0091】
上記構成の作用、特に、4つの移動台142,144,146,148の間の相対的回転量を細かく設定することで、互いに向かい合う2つのフィルム側軌道52,56の中心軌跡58に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡58の曲率を部分的に変更する軌道曲げ機能について、詳細に説明する。
【0092】
図8から
図10は、4つの移動台142,144,146,148の間の相対的回転量を位置決め部166,168,170,172の機能によって、各移動台単位で、3.75度の単位で、細かく設定できることを示す図である。ここでは、移動台142と移動台144の回転角度の設定を例として説明する。
【0093】
図8は初期状態を示す図である。初期状態では、第1基台46と移動台142との間の位置決め部166において、位置決めピン178は、P
0の位置の位置決め穴に挿入される。また、移動台142と移動台142との間の位置決め部168において、位置決めピン200は、P
0の位置の位置決め穴に挿入される。これによって、回転中心軸150と移動台回転軸152は、初期状態における2つのフィルム側軌道52,56の中心軌跡58上にある。
【0094】
図9は、第1基台46と移動台142との間の位置決め部166において、位置決めピン178を、P
1の位置の位置決め穴に挿入された場合である。移動台142と移動台142との間の位置決め部168における位置決めピン200は、初期状態と同じP
0の位置の位置決め穴に挿入される。この場合、移動台142は、回転中心軸150の周りに初期状態に比べて、時計方向に3.75度回転する。移動台144は、位置決めピン200によって移動台142と一体化しているので、回転中心軸150の周りに初期状態に比べて、時計方向に3.75度回転する。これによって、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ中心軌跡202は、初期の中心軌跡58から時計方向に3.75度傾く。
【0095】
同様に、位置決め部168における位置決めピン200を初期状態と同じP
0の位置の位置決め穴に挿入したままで、位置決め部166において、位置決めピン178を、P
2の位置の位置決め穴に挿入すると、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ中心軌跡202は、初期の中心軌跡58から時計方向に7.5度傾く。位置決めピン178をP
2の位置の位置決め穴に挿入すると、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ中心軌跡202は、初期の中心軌跡58から時計方向に11.25度傾く。
【0096】
このように、他の位置決め部168,170,172における位置決めピンの挿入位置を初期状態のままとして、位置決め部166における位置決めピン178の挿入位置を変更することで、移動台142のみを3.75度単位で回転させることができる。
【0097】
図10は、位置決め部166において、位置決めピン178を、P
1の位置の位置決め穴に挿入し、位置決め部168における位置決めピン200をP
1の位置の位置決め穴に挿入した場合である。この場合には、移動台144は、移動台142に対して時計方向に3.75度回転する。これによって、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ中心軌跡204は、
図9の中心軌跡202からさらに時計方向に3.75度傾き、
図8の初期状態の中心軌跡58からは、合計で時計方向に7.5度傾く。
【0098】
中心軌跡を初期状態から7.5度傾けるのは、移動台142のみを7.5度傾けることでも可能で、上記のように、移動台142,144を3.75度ずつ傾けることでもできる。このように中心軌跡を所定の傾き角度に傾かせて曲率を変更するのは、1つの移動台のみを傾けて、その移動台のみの局部的な曲率変更で行うことも、複数の移動台に分散して傾け、なだらかな曲率変更とすることもできる。
【0099】
上記において、位置決め部168における位置決めピン200をP
2の位置の位置決め穴に挿入すると、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ線は、初期の中心軌跡58から時計方向に11.25度傾く。位置決めピン200をP
3の位置の位置決め穴に挿入すると、回転中心軸150と移動台回転軸152を結ぶ線は、初期の中心軌跡58から時計方向に15度傾く。
【0100】
このように、他の位置決め部166,170,172における位置決めピンの挿入位置を変更せず、位置決め部168における位置決めピン200の挿入位置を変更することで、移動台144のみを3.75度単位で回転させることができる。
【0101】
図8、
図9で説明した例を組み合わせることで、各移動体について、それぞれを傾き角度11.25度の単位として、中心軌跡を所望の傾き角度に傾かせることができる。さらに各移動体毎の位置決め部の作用によって、各移動体ごとに3.75度単位で傾き角度を変更できる。このようにして、互いに向かい合う2つのフィルム側軌道52,56の中心軌跡に沿った一部を曲率変更部分として、曲率変更部分を他の部分に対して曲げて中心軌跡58の曲率を部分的に変更することができる。曲率変更部分は、4つの移動台を全て傾かせる場合は回転台部140の全体になり、一部の移動台のみを傾かせるときは、その移動体となる。
【0102】
図11は、延伸倍率の変更に伴って、フィルム側軌道52,56の傾き角度を初期状態の45度からさらに傾けることになったときの様子を模式的に示す図である。破線が初期状態である。フィルム側軌道52,56の間の間隔である幅寸法は、11組の延伸倍率変更機構70,72によって入口側から出口側の間で滑らかに変更される。そして、延伸倍率の変更で必要となったフィルム側軌道52,56の傾き角度の変更は、軌跡曲げ機構の機能で、4つの移動台のそれぞれの傾き角度を変更することで、移動台単位で曲率を滑らかに変更される。
図11は、4つの移動体のそれぞれの傾き角度の範囲である11.25度の最大値を組み合わせて、初期状態からさらに45度傾かせた様子が示される。4つの移動体のそれぞれの傾き角度は、3.75度単位で細かく調整できる。
【0103】
図11に示されるように、フィルム側軌道52,56は入口側から出口側に向かって、4つの区間に分けることができる。区間210は、入口側から移動台148の一方側の端部までの区間で、直線的軌道の部分である。区間212は、移動台148の一方側の端部から回転中心軸150までの区間で、部分的な曲率変更が行われる部分である。区間214は、4組のスプロケットを円弧状に配置して初期状態の傾き角度45度を形成する区間である。区間216は区間214の先で出口側までの区間である。
【0104】
図4では図示しなかったが、フィルム側軌道52,56には、加熱機構が設けられる。加熱機構の観点からは、区間210は予熱区間で、区間212は所定の延伸を効率的に行うために所定の延伸温度とされる第1加熱区間、区間214は第2加熱区間であり、区間216は延伸状態を定着させる徐冷区間である。
【0105】
図12は、延伸倍率の設定によって、フィルム側軌道52,56の軌道間の間隔である幅寸法が、入口側でW
1、出口側でW
2と設定され、これに対応して、初期状態の中心軌跡58から45度傾けた中心軌跡59となったときのフィルム延伸装置40を示す図である。入口側から出口側に向かって、フィルム側軌道52,56の軌道間の幅寸法は、複数の延伸倍率変更機構の作用によって、滑らかに変化し、中心軌跡59の曲率は、軌跡曲げ機構の機能によって、滑らかに変化する。これにより、皺の発生を抑制しながら、所望の主光軸方向とリタデーション等の光学特性を有するフィルムを得ることができる。