【実施例】
【0070】
以下の具体的な例は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、方法はどうであれ、開示の残りを限定するものとして、解釈されるべきではない。さらなる精錬なしで、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明をその十分な程度まで利用することができると考えられる。本明細書に引用されるすべての公報は、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれる。それらに対する引用によって、このような情報の利用可能性及び一般的な普及が確証される。
【0071】
(実施例1:HASMC−HAECを混合した細胞シリンダー)
材料および方法
【0072】
1.細胞培養
【0073】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCO
2で、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO
4(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0074】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 200(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCO
2で、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養において処理されたフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0075】
2.アガロースのモールド
【0076】
2.1 2%のw/vアガロース溶液の調製:1gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0077】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作る。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌する。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付ける。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注ぐ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にする。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリント(print)を取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄する。その後、17.5mlのHASMC培地を、アガロースのモールドに加える。
【0078】
3.HASMC−HAECシリンダー
【0079】
3.1 HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを組み立てるために、HASMCおよびHAECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cm
2の増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cm
2の増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。HASMCおよびHAECの適切な容積を混合し、5、7.5、10、12.5、および15%のHAEC(総細胞集団の%として)を含む、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCO
2で、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウン(pipetted up and down)することで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCO
2で、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間および48時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートした。
【0080】
4.混合した細胞シリンダーでの生存率および取り扱いの容易性の評価
【0081】
4.1 細胞生存率の評価:24、48および72時間のインキュベーションの終わりに混合した細胞シリンダー中の細胞生存率を評価するために、日常的な組織学的検査を行った。簡潔に言うと、各時点で、混合した細胞シリンダーを、吸収してキャピラリーチューブに戻し(手でプランジャーを使用して)、マルチウェルプレートに移動させた。シリンダーを、パラフィンが埋め込まれる前に、10%の中性緩衝ホルマリンを少なくとも24時間使用して固定した。埋め込まれたシリンダーを区分し(横方向)、H&E染色を行った。
【0082】
4.2 取り扱いの容易性の評価:混合した細胞シリンダーの取り扱いの容易性を評価するために、2つの別々のパラメーターを評価した。最初に、シリンダーが各々のインキュベーション時点の終わりにカールした量を評価した。主観的プリファレンスのスコアリングシステムを使用した。次に、細胞シリンダーの完全性も、第2の主観的スコアを使用して、各々のインキュベーション時点の終わりに評価した。組み合わせた、これらの2つのスコアは、シリンダーを調製するための好ましい条件の選択を可能にし、後の工程中の取り扱いの容易性を確かなものとした。
【0083】
結果
【0084】
1.HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーの細胞生存率および取り扱いの容易性
【0085】
HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを、上に記載の方法によって5、7.5、10、12.5および15%のHAECを含むように作った。シリンダーを、24時間および48時間、アガロースのモールド中にインキュベートした。各時点で、シリンダーに、カーリングおよび凝集のスコアを割り当てた。表1および2はその結果を要約する。参照され得るように、インキュベーション時間が24時間から48時間に増加するにつれ、取り扱いの容易性は、すべての混合した細胞シリンダーに関して低下する。15%のHAECおよび残りの85%−HASMCを含むシリンダーは、アガロースのモールド中の24時間のインキュベーション後に取り扱うのが最も容易である。さらに、5%のHAECおよび95%のHASMCを含むシリンダーは、両方の時点で取り扱うのが最も難しい。
【0086】
H&E染色(
図1)を、すべての時点で各条件に対する細胞生存率に関して評価するために利用した。染色によって、アガロースのモールド中で24時間インキュベートされたすべてのシリンダーが、最も生存可能である細胞を含み(ピンク染色の最小量によって証拠づけられるように)、細胞生存率が、増加するインキュベーション時間とともに減少することが明らかになった。さらに、アガロースのモールド中の24時間のインキュベーション後に、15%のHAECおよび85%のHASMCを含むシリンダー中の細胞生存率は最も高かった。
【0087】
「カーリングスコア」を、10点ベースで各シリンダーに割り当て、ここで、1のスコアは、シリンダーがカーリングを示さなかったことを意味し、10のスコアは、シリンダーが螺旋状の構造を形成するためにカールしたことを意味した。
【0088】
「凝集スコア」を、10点ベースで各シリンダーに割り当て、ここで、1のスコアは、シリンダーがそれらの平滑な円筒状の構造を完全に維持したことを意味し、10の凝集スコアは、円筒状の構造が完全に失われたことを意味した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
(実施例2:多層の血管チューブ)
材料および方法
【0092】
1.細胞培養
【0093】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCO
2で、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO
4(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0094】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 200(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCO
2で、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養で処理したフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0095】
1.3 線維芽細胞:主要なヒトの皮膚線維芽細胞(HDF;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCO
2で、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシン(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 106(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHDFのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0096】
2.アガロース溶液およびモールド
【0097】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0098】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アガロースの完全なゲル化を可能にするために、アセンブリを1時間室温で横に置いた。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えるか、または、17.5mlのHDF培地を、HDF細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加える。
【0099】
3.細胞シリンダー
【0100】
3.1 HASMC−HAECを混合した細胞のシリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、HASMCおよびHAECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cm
2の増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cm
2の増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。適切な容積のHASMCおよびHAECを組み合わせ、15%のHAECおよび残りの85%のHASMC(総細胞集団の%として)を含む、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCO
2で、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。
上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCO
2で、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートした。
【0101】
3.2 HDF細胞シリンダーの作製:HDFシリンダーを、HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを調製する方法に類似した方法を使用して調製した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントなHDF培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cm
2の増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(0.1%;1ml/15cm
2の増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。インキュベーション後に、HDF培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、6mlのHDF培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、75分間150rpmで、および37℃および5%のCO
2で、オービタルシェーカー上でインキュベートした。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHDF培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCO
2で、HDF培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーチューブから(HDF培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートした。
【0102】
4.多層の血管チューブの作製
【0103】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:アガロースのベースプレートを、10mlのあらかじめ暖められた(>40℃)アガロース(2%w/v)を10cmのペトリ皿に分配することによって生成した。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0104】
4.2 多層の血管チューブ:HDFの外側層およびHASMC−HAECの内側層から成る血管チューブを、HDFシリンダー、およびHASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを利用して作った。
図2に示されるような幾何学的配置を利用した。簡潔に言うと、24時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したHDFおよびHASMC−HAECのシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBSの溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、10のアガロースシリンダーが堆積し、第1の層を形成するまで、そのプロセスを繰り返した。この時点で、20μlのPBSを、アガロースシリンダー上に分配し、それらが湿るのを維持した。さらなる6のアガロースシリンダーを、
図2に示されるような位置で層1の上に堆積させた(層2)。その後、3つのHDFシリンダーを、位置4、5および6で堆積させ、層2を完成させた。各々のHDFシリンダーを押し出した後に、40μlのHDF培地を、堆積したシリンダー上に分配することで、続くシリンダーの堆積を助け、且つ細胞シリンダーの脱水を防いだ。層3に対する次のアガロースシリンダーを堆積させ、その後、位置3および6でHDFシリンダーを堆積させた。HDF培地で構造を再び湿らせた後、HASMC−HAECを混合したシリンダーを、位置4および5に置いた。続いて、40μlのHASMC培地および40μlのHDF培地を、細胞シリンダー上に分配した。位置1および7でアガロースシリンダーを、位置2および6でHDFシリンダーを、位置3および5でHASMC−HAECを混合したシリンダーを、および最終的に位置4で4%のアガロースシリンダーを堆積させることによって、層4を完成させた。
図2に示される位置で、アガロースシリンダーを、続いてHDFシリンダーを、および最終的にHASMC−HAECシリンダーを置くことによって、層5、6および7を同様に完成させた。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのHASMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートし、細胞シリンダー間の凝集を可能にした。24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した多層の血管チューブを得た(
図3)。
【0105】
(実施例3:脂肪組織のSVFからの細胞を有する血管構成物(Blood Vessels Constructs))
材料および方法
【0106】
1.細胞培養
【0107】
1.1 SVFからのSMC様の細胞:SMC様の細胞を、リポアスピレート(lipoaspirates)のコラゲナーゼ消化の後に分離した細胞の付着する切片から作り出した。この消化は、間質血管細胞群(SVF)として知られる細胞の集団を生み出す。SVFの細胞を、標準的な組織培養のプラスチック上に平板培養することができ、付着細胞を、適切な培養条件でさらに選択することができる。脂肪組織リポアスピレートのSVFからのSMC様の細胞を、37℃および5%のCO
2で、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO
4(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、高グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代3と8の間のSVF−SMCのコンフルエントな副次培養物を、すべての研究において使用した。
【0108】
1.2 SVF−EC:間質血管細胞群(SVF)からの内皮細胞を、本物の内皮細胞(EC)の主要な分離物を増殖させるために一般に使用される増殖培地中で維持し拡張した。特に、10%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシンによって補われた、M199中で、SVF−ECを維持した。細胞を、37℃および5%のCO
2で、組織培養で処理したフラスコ上で増殖させた。継代3と8の間のSVF−ECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0109】
2.アガロース溶液およびモールド
【0110】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0111】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、100mmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、100mmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にした。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えるか、または17.5mlのHDF培地を、HDF細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えた。
【0112】
3.細胞シリンダー
【0113】
3.1 SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、SVF−SMCおよびSVF−ECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cm
2の増殖領域)で洗浄した。細胞を、5〜10分間、TrypLE(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加え、酵素活性をクエンチした。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。SVF−SMCおよびSVF−ECの適切な容積を組み合わせ、15%のSVF−ECおよび残りの85%のSVF−SMC(総細胞集団の%として)を含む混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのSVF−SMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCO
2で、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのSVF−SMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.25mm, ID 0.266mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCO
2で、SVF−SMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(SVF−SMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、6〜12時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートした。
【0114】
4.血管チューブの作製
【0115】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:12mlのあらかじめ暖められた(>60℃)アガロース(2%w/v)を、10cmのペトリ皿へ分配することによって、アガロースのベースプレートを作った。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0116】
4.2 血管チューブ:SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーから成る血管チューブを作った。簡潔に言うと、6時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したSVF−SMCおよびSVF−ECのシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBS溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、適切な数のアガロースシリンダーが押し出され、最終的なチューブ形状が組み込まれるまで、そのプロセスを繰り返した。SVF−SMCおよびSVF−ECの多細胞シリンダーを含むチューブ状の血管構成物を、層ごとの印刷プロセス(layer−by−layer printing process)を使用して作り、ここで、チューブ状の細胞構成物の中心にあるアガロースシリンダーは、4%のアガロースから成る。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのSVF−SMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、12〜24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートし、隣接する細胞シリンダー間の凝集を可能にした。12〜24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した血管チューブを分離した。
【0117】
(実施例4.HASMC−HDF−HAECの多細胞シリンダーを有する血管構成物)
材料および方法
【0118】
1.細胞培養
【0119】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCO
2で、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO
4(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0120】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、10%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 199(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCO
2で、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養において処理されたフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0121】
1.3 線維芽細胞:主要なヒトの皮膚線維芽細胞(HDF;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCO
2で、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシン(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 106(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHDFのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0122】
2.アガロースの溶液およびモールド
【0123】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0124】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にした。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、混合した細胞シリンダーをインキュベートするために、アガロースのモールドに加えた。
【0125】
3.HASMC−HDF−HAECシリンダー
【0126】
3.1 HASMC−HDF−HAECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、HASMC、HDF、HAECを個々に集め、その後、前もって決められた割合(例えば、70:25:5のHASMC:HDF:HAECの割合)で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/10cm
2の増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cm
2の増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCおよびHDFを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。適切な容積のHASMC、HDFおよびHAECを組み合わせ、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を吸収した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCO
2で、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.25mm, ID 0.266mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCO
2で、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、6〜24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートした。
【0127】
4.多細胞シリンダー(HASMC:HDF:HAEC)を有する血管チューブの作製
【0128】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:10mlのあらかじめ暖められた(>40℃)アガロース(2%w/v)を、10cmのペトリ皿へ分配することによって、アガロースのベースプレートを作った。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0129】
4.2 多細胞の血管チューブ:すべての3つの細胞タイプ、HASMC:HDF:HAECを含むシリンダーから成る血管チューブを、多細胞シリンダーを利用して作った。6または12の細胞シリンダーおよび1または7の中心のアガロースシリンダーをそれぞれ有する幾何学的配置を利用した。簡潔に言うと、6〜12時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したHASMC−HDF−HAECシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBS溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、7または10のアガロースシリンダーが堆積し、第1の層を形成するまで、そのプロセスを繰り返した。6の多細胞のシリンダーおよび1の中心のアガロースシリンダーを有する血管チューブの作製が、さらに詳細に記載される。この時点で、20μlのPBSを、アガロースシリンダー上に分配し、それらが水和するのを維持した。さらなる2つのアガロースシリンダーを、層1の上に堆積させ、第1のアガロースシリンダーを、最左端で堆積させ、および第2のアガロースシリンダーを、その右に堆積させた。その後、2つの多細胞のHASMC−HDF−HAECシリンダーを、層2において2つのアガロースシリンダーの右に堆積させた。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。その後、もう2つのアガロースシリンダーを、2つの多細胞シリンダーの右に堆積させた。層3を、層の最左端でアガロースシリンダーによって構築した。多細胞シリンダーを、そのシリンダーの右に堆積させた。その後、4%のアガロースシリンダーを、多細胞シリンダーの右に堆積させた。別の多細胞シリンダーを、4%のアガロースシリンダーの右に堆積させた。最終的に、別の2%のアガロースシリンダーを、第2の多細胞シリンダーの右に堆積させた。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。層4は、最右端で2%のアガロースシリンダーとともに始まり、その後、2つの細胞シリンダーをアガロースシリンダーの右に堆積させた。層4は、2つの多細胞シリンダーの右への最終的なアガロースシリンダーとともに終了した。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。層4の上に3つのアガロースシリンダーを堆積させることによって、層5を構築した。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのHASMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、12〜24時間、37℃および5%のCO
2でインキュベートし、隣接する細胞シリンダー間の凝集を可能にした。12〜24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した多層の血管チューブを得た(
図3)。