特許第5950899号(P5950899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950899
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】多層の血管チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20160630BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20160630BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20160630BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160630BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61L27/00 Q
   A61K35/33
   A61K35/44
   A61P3/10
   A61P13/12
   A61P9/00
   A61P9/10 101
   C12N5/071
【請求項の数】19
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-500188(P2013-500188)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公表番号】特表2013-538064(P2013-538064A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】US2011028713
(87)【国際公開番号】WO2011116125
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2013年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/314,238
(32)【優先日】2010年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】GB1008781.5
(32)【優先日】2010年5月26日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512240671
【氏名又は名称】オルガノボ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】カティワラ,チラグ
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,キース
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,ベンジャミン
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 The FASEB Journal,1998年,Vol.12, No.1,p.47-56
【文献】 Biomaterials,2009年,Vol.30, No.30,p.5910-5917
【文献】 Tissue Engineering : Part A,2010年 3月 8日,Vol.16, No.6,p.1901-1912
【文献】 Tissue Engineering,2006年,Vol.12, No.8,p.2151-2160
【文献】 Tissue Engineering,2005年,Vol.11, No.9/10,p.1553-1561,CAPLUS file [STN online], [retrieved on 2014.07.25] AN2005:1166221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、および分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブであって、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記人工的に作られた多層の血管チューブは、10:90から45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合を有し、前記人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがなく、少なくとも1つの層が生物印刷の使用によって形成されるという条件で、前記人工的に作られた多層の血管チューブは、以下の特徴:
(a)前記人工的に作られた多層の血管チューブが生理学的な血圧に抵抗できるように柔軟である;
(b)前記人工的に作られた多層の血管チューブの内部径が、6mmまたはそれ以下である;
(c)前記人工的に作られた多層の血管チューブの長さが30cmまでである;および
(d)前記人工的に作られた多層の血管チューブの厚さが、前記人工的に作られた多層の血管チューブの領域にわたって略均一である、
のうちの1又は2以上を有することを特徴とする、人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項2】
分化した成人の線維芽細胞の外側層、および分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの内側層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項3】
分化した成人の平滑筋細胞、分化した成人の内皮細胞、および分化した成人の線維芽細胞を含む、人工的に作られた多層の血管チューブであって、前記人工的に作られた多層の血管チューブは、10:90から45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合を有し、ここで、前記平滑筋細胞、前記内皮細胞、および前記線維芽細胞は互いに凝集し、前記人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがなく、少なくとも1つの層が生物印刷の使用によって形成されるという条件で、前記人工的に作られた多層の血管チューブは、以下の特徴:
(a)前記人工的に作られた多層の血管チューブの内部径が、6mmまたはそれ以下である;
(b)前記人工的に作られた多層の血管チューブの長さが30cmまでである;および(c)前記人工的に作られた多層の血管チューブの厚さが、前記人工的に作られた多層の血管チューブの領域にわたって略均一である、
のうちの1又は2以上を有することを特徴とする、人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項4】
前記人工的に作られた多層の血管チューブが、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である破裂強さを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項5】
内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合が、15:85から25:75までであることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項6】
前記人工的に作られた多層の血管チューブの内部径が、0.5mmまたはそれ以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項7】
前記人工的に作られた多層の血管チューブの厚さが、前記人工的に作られた多層の血管チューブの長さにわたって略均一であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項8】
前記人工的に作られた多層の血管チューブには、分化していない成人の線維芽細胞、分化していない成人の平滑筋細胞、及び/又は分化していない成人の内皮細胞が本質的になく、及び/又は前記人工的に作られた多層の血管チューブが、分枝した構造を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項9】
前記人工的に作られた多層の血管チューブが神経交配されないものであり、及び/又は前記分化した成人の線維芽細胞が、非血管性の線維芽細胞であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項10】
a)薬物検査、または随意にステントである、心血管装置の検査;又は
b)破損した血管の修復;又は
c)冠状動脈バイパスまたは末端バイパスまたは動静脈のアクセスを必要とする患者の処置;又は
d)末期腎疾患、糖尿病、動脈硬化症、または先天性の心臓疾患を有する患者の処置に使用するための、請求項4に記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項11】
前記人工的に作られた多層の血管チューブの線維芽細胞、平滑筋細胞、及び/又は内皮細胞が自己由来の細胞であることを特徴とする、請求項10に記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【請求項12】
人工的に作られた多層の血管チューブを形成する方法であって、該方法は、あらかじめ形成されたスキャフォールドがいかなる時も使用されなく、少なくとも1つの層が生物印刷の使用によって形成されるという条件で、所望の血管チューブ構造を形成するために、充填マトリックスの少なくとも1つの体、互いに凝集した平滑筋細胞の少なくとも1つの多細胞体、互いに凝集した内皮細胞の少なくとも1つの多細胞体、および互いに凝集する線維芽細胞の少なくとも1つの多細胞体を位置決めする工程を含み、人工的に作られた多層の血管チューブにおける内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合が、10:90から45:55までであり、ここで、1以上の充填マトリックス体は、前記人工的に作られた多層の血管チューブの内腔を形成し、複数の充填マトリックス体は、前記人工的に作られた多層の血管チューブを囲み、および該方法はさらに、前記人工的に作られた多層の血管チューブの多細胞体が凝集するのを可能にする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記人工的に作られた多層の血管チューブ内での内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、15:85から25:75までであり、及び/又は前記人工的に作られた多層の血管チューブの内腔の直径が6mmまたはそれ以下であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熟成チャンバーにおいて前記人工的に作られた多層の血管チューブを培養する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
細胞の多細胞体の1以上が細長いことを特徴とする、請求項12乃至14に記載の方法。
【請求項16】
加圧された腔内の液体灌流によって、凝集した人工的に作られた多層の血管チューブを調整する工程をさらに特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記腔内の液体灌流が、60mmHgから200mmHgまでの圧力で行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記腔内の液体灌流が、拍動力を含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記分化した成人の内皮細胞が、ヒト大動脈の内皮細胞であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人工的に作られた多層の血管チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2010年3月16日に出願の、米国仮特許出願第61/314,238号、および2010年5月26日に出願の、英国特許出願第1008781.5号の利益を主張し、これらの各々の開示は、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
米国において、病気にかかった動脈に関する血管または腹部器官を、特に、小さな直径の血管グラフトと置換する必要性がある。6ミリメートル未満の直径を有する小動脈は、血栓症の高い罹患率により人工材料と交換することができない(Connolly et al. (1988); Greisler et al. (1988))。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書には、人工的に作られた(engineered)多層の血管チューブ、このようなチューブを生成する方法、およびこのようなチューブのための治療上、診断上、または研究上の用途が記載される。本明細書に記載される人工的に作られた血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがなく、なぜなら、あらかじめ形成されたスキャフォールドは、本明細書に記載される人工的に作られた多層の血管チューブの生成に利用されないからである。この革新は、あらかじめ形成されたスキャフォールド材料がなく、したがって、操作さていない多層の血管チューブに対する治療上許容可能な代替物である、実現可能な人工的に作られた多層の血管チューブをとりわけ提供する。
【0004】
1つの態様において、本明細書には、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブが記載され、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、ここで、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である(compliant);(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0005】
1つの実施形態において、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は自己由来の細胞である。別の実施形態において、破裂強さは、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である。さらに別の実施形態において、チューブの内腔は、除去可能な内腔を形成する充填体(filler body)から形成された。さらに別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約5:95から約25:75までである。さらに別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約0.5mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの長さにわたって略均一である。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の線維芽細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の平滑筋細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の内皮細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。さらに別の実施形態において、チューブは、磁気微粒子をさらに含む。さらに別の実施形態において、チューブは、バイパス移植術に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、動静脈へのアクセスに使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、薬物検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、心血管装置の検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、心血管装置は、ステントである。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配しないものである(non−innervated)。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0006】
別の態様において、人工的に作られた多層の血管チューブを形成する方法があり、該方法は、あらかじめ形成されたスキャフォールドがいかなる時も使用されないという条件で、充填マトリックス(filler matrix)の少なくとも1つの体、互いに凝集した平滑筋細胞の少なくとも1つの多細胞体、互いに凝集した内皮細胞の少なくとも1つの多細胞体、および所望の血管チューブ構造を形成するための互いに凝集する線維芽細胞の少なくとも1つの多細胞体を位置決めする工程を含み、ここで、1以上の充填マトリックス体は、チューブの内腔を形成し、複数の充填マトリックス体は、チューブを囲み;および該方法はさらに、人工的に作られた多層の血管チューブの多細胞体が凝集するのを可能にする。
【0007】
1つの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブ内での、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約1:99から約45:55までである。別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブ内での、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約5:95から約25:75までである。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブ内での、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、チューブの内腔は、約6mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、チューブの内腔は、約0.5mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、平滑筋細胞、内皮細胞、及び/又は線維芽細胞は、自己由来の細胞である。さらに別の実施形態において、平滑筋細胞、内皮細胞、及び/又は線維芽細胞は、ヒト成人の分化細胞である。さらに別の実施形態において、前記方法は、熟成チャンバーにおいて人工的に作られた多層の血管チューブを培養する工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、細胞の多細胞体の1以上は細長い。幾つかの実施形態において、細胞の多細胞体の1以上は略球状である。
【0008】
別の態様において、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブがあり、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約5:95から約25:75までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0009】
1つの実施形態において、破裂強さは、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である。別の実施形態において、チューブの内腔は、内腔を形成する充填体から形成された。さらに別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの全長にわたって略均一である。さらに別の実施形態において、チューブは、磁気微粒子をさらに含む。さらに別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。さらに別の実施形態において、チューブは、バイパス移植術に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、動静脈へのアクセスに使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、薬物検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、心血管装置の検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、心血管装置はステントである。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配しないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0010】
別の態様において、分化した成人の線維芽細胞の外側層、分化した成人の平滑筋細胞および分化した成人の内皮細胞の少なくとも1つの中間層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブがあり、ここで、チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(c)チューブの長さは、約30cmまでである;および(d)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0011】
1つの実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約5:95から約25:75までである。別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約0.5mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である。さらに別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。さらに別の実施形態において、チューブの長さは、約1cm〜約30cmまでである。さらに別の実施形態において、チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である。さらに別の実施形態において、チューブの厚さは、チューブの長さにわたって略均一である。さらに別の実施形態において、チューブは、外側のサポート構造を有する。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の線維芽細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の平滑筋細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の内皮細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブは、磁気微粒子を含む。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配しないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0012】
別の態様において、患者を処置するための方法であって、該方法は、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブを提供する工程を含み、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0013】
1つの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は、自己由来の細胞である。別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの破裂強さは、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内腔は、内腔を形成する充填体から形成された。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約0.5mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、チューブの長さは、約1cmから約30cmまでである。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの長さにわたって略均一である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、分枝した構造を有する。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、磁気微粒子をさらに含む。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。さらに別の実施形態において、患者は、冠状動脈バイパスまたは末梢バイパスを必要とする。さらに別の実施形態において、患者は、血液透析を必要とする。さらに別の実施形態において、必要のある患者は、末期腎疾患を有する。さらに別の実施形態において、必要のある患者は、糖尿病を有する。さらに別の実施形態において、必要のある患者は、動脈硬化症を有する。さらに別の実施形態において、必要のある患者は、先天性の心臓疾患を有する。
【0014】
別の態様において、分化した成人の線維芽細胞の外側層、分化した成人の平滑筋細胞および分化した成人の内皮細胞の少なくとも1つの内側層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブがあり、これは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約5:95から約25:75までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約1cmから約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0015】
1つの実施形態において、破裂強さは、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である。別の実施形態において、チューブは、内腔を形成する充填体から形成された。別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの全長にわたって略均一である。別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の線維芽細胞が本質的にない。別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の平滑筋細胞が本質的にない。別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の内皮細胞が本質的にない。別の実施形態において、チューブは、磁気微粒子を含む。別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。別の実施形態において、チューブは、バイパス移植術に使用するためのものである。別の実施形態において、チューブは、動静脈へのアクセスに使用するためのものである。別の実施形態において、チューブは、薬物検査に使用するためのものである。別の実施形態において、チューブは、心血管装置の検査に使用するためのものである。別の実施形態において、心血管装置はステントである。1つの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブ内での内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約5:95から約25:75までである。別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブ内での内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。別の実施形態において、チューブの内腔は、約6mmまたはそれ以下である。別の実施形態において、平滑筋細胞、内皮細胞、及び/又は線維芽細胞は、ヒト成人の分化細胞である。別の実施形態において、前記方法は、熟成チャンバーにおいて人工的に作られた多層の血管チューブを培養する工程を含む。
【0016】
別の態様において、分化した成人の線維芽細胞の外側層、分化した成人の平滑筋細胞および分化した成人の内皮細胞の少なくとも1つの内側層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブがあり、これは、人工的に作られた多層の血管チューブが、神経交配されないものであり、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)除去可能な内腔を形成する充填体;(b)約5:95から約25:75までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約1cmから約30cmまでである;(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、略均一である;および(f)外側のサポート構造;を有する。
【0017】
1つの実施形態において、外側のサポート構造は取り除かれる。別の実施形態において、内腔を形成する充填体は取り除かれる。別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である。別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。
【0018】
別の態様において、分化した成人の平滑筋細胞、分化した成人の内皮細胞、および分化した成人の線維芽細胞を含む、人工的に作られた多層の血管チューブがあり、ここで、前記細胞は互いに凝集され、前記チューブは、人工的に作られた血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(c)チューブの長さは、約30cmまでである;および(d)人工的に作られた血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、分化した成人の平滑筋細胞、分化した成人の内皮細胞、および分化した成人の線維芽細胞は、人工的に作られた血管チューブ内に均一に分散される。他の実施形態において、分化した成人の平滑筋細胞、分化した成人の内皮細胞、および分化した成人の線維芽細胞は、人工的に作られた血管チューブ内に不均一に分散される。さらなる実施形態において、細胞は層内に分散される。またさらなる実施形態において、1以上の層は、1以上の他の層とは異なる、細胞タイプの分布によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、細胞は、人工的に作られた血管チューブが形成される時に不均一に分散される。幾つかの実施形態において、1以上の細胞タイプは、ある程度遊走または分離し、それによって、不均一の分布をもたらす。
【0020】
幾つかの実施形態において、人工的に作られた血管チューブは柔軟である。1つの実施形態において、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は、自己由来の細胞である。別の実施形態において、破裂強さは、生理学的な血圧に抵抗するのに十分である。さらに別の実施形態において、チューブの内腔は、除去可能な内腔を形成する充填体から形成された。さらに別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約5:95から約25:75までである。さらに別の実施形態において、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約15:85である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約0.5mmまたはそれ以下である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である。さらに別の実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの長さにわたって略均一である。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の線維芽細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の平滑筋細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブには、分化していない成人の内皮細胞が本質的にない。さらに別の実施形態において、チューブは、分枝した構造を有する。さらに別の実施形態において、チューブは、磁気微粒子をさらに含む。さらに別の実施形態において、チューブは、バイパス移植術に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、動静脈へのアクセスに使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、薬物検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、チューブは、心血管装置の検査に使用するためのものである。さらに別の実施形態において、心血管装置はステントである。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0021】
本明細書に使用されるような用語「凝集する(cohere)」、「凝集した(cohered)」、および「凝集(cohesion)」は、細胞、細胞集合体、多細胞体、及び/又は層に結合する細胞−細胞接着の特性を指す。該用語は、「融合する(fuse)」、「融合した(fused)」、および「融合(fusion)」と交換可能に使用される。
【0022】
本明細書に使用されるような用語「スキャフォールド」は、ポリマースキャフォールドなどの合成スキャフォールド、細胞外マトリックス層などの非合成スキャフォールド、および人工的に作られた多層の血管チューブの物理的構造に不可欠であり、チューブから取り除かれない、任意の他のタイプのあらかじめ形成されたスキャフォールドを指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の新しい特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される、具体例を明記する後述の詳細な説明を引用することによって、及び以下の添付図面によって得られる。
図1図1は、HASMC−HAEC(ヒト大動脈の平滑筋細胞−ヒト大動脈の内皮細胞)を混合した細胞シリンダーのヘマトキシリンおよびエオジンの染色を例示する。
図2図2は、HDF多細胞体およびHASMC−HAECを混合した多細胞体を使用する、HDFの外側層およびHASMC−HAECの内側層を有する血管チューブを構築するための幾何学的配置を例示する。
図3A図3Aは、分離されていない多層の血管チューブを例示する。
図3B図3Bは、インキュベーションの24時間後に、アガロースのサポート構造内にカプセル化されたシリンダー間の凝集によって形成された、分離された多層の血管チューブを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、再生医療と組織工学の領域に関する。より詳しく言うと、本発明は、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞を含み、特定の特徴を有する多層の血管チューブの生成に関する。
【0025】
組織工学は、血管を含む、移植可能臓器の不足と相まった臓器置換の高まる需要によって引き起こされた問題に対する解決策を提供する。(Langer and Vacanti (1993))。米国において、病気にかかった動脈に関する血管または腹部器官を、特に、小さな直径の血管グラフトと置換する必要性がある。研究用途のための改善された血管の必要性も認識されている。5〜6mmよりも短い直径を有する小動脈は、血栓症の高い罹患率により人工材料と交換することができない(Connolly et al.(1988); Greisler et al. (1988))。組織工学によって作製された血管グラフトは、天然の移植可能な血管の不足に対処する実現可能な方法を提供し、例えば、心血管装置の検査および薬物検査などにも適用される。
【0026】
天然の血管は3つの層:内皮細胞から成る内側層(内膜)、血管平滑筋の中心層(媒体)、および線維芽細胞の外側層(外膜)を含む。理想的な組織工学によって作製された血管グラフトは、合成スキャフォールドがないべきであり、そうでなければ、グラフトの長期的な作用に影響を与えかねない、又はその主要な生体機能を妨害しかねない。本明細書に記載される多層の血管チューブは、この結果を達成する。小径の組織工学によって作製された血管グラフトが所望され、それは、約6mmまたはそれ以下で内部径を有する。本明細書に記載される多層の血管チューブは、この結果を達成する(必要に応じてより大きな直径も同様)。他のものは、生理学的な血圧に抵抗することができる合成スキャフォールドのない柔軟なグラフトを作り出すことができていない。本明細書に記載される多層の血管チューブは、この結果を達成する。他のものは、支持する生体材料なしでは、血管組織、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞に存在する3つの主要細胞のタイプを含む血管の構成物を再び作り出すことができていない。本明細書に記載される多層の血管チューブは、この結果を達成する。
【0027】
柔軟であり、略均一であり、合成スキャフォールド材料がない、約0.5mmまたはそれ以下の内部径を有している、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞を含む多層の血管構成物のチューブのアセンブリは、まだ達成されていない。本明細書に記載される多層の血管チューブは、この結果を達成する。
【0028】
本明細書には、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む人工的に作られた多層の血管チューブが記載され、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記チューブは、人工的に作られた血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;の少なくとも1つを有する。具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも2つを有する。さらにより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも3つを有する。またより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも4つを有する。またさらにより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴のすべてを有する。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0029】
本明細書にはまた、人工的に作られた多層の血管チューブを形成する方法が記載され、該方法は、あらかじめ形成されたスキャフォールドがいかなる時も使用されないという条件で、充填マトリックスの少なくとも1つの体、互いに凝集した平滑筋細胞の少なくとも1つの多細胞体、互いに凝集した内皮細胞の少なくとも1つの多細胞体、および所望の血管チューブ構造を形成するための互いに凝集する線維芽細胞の少なくとも1つの多細胞体を位置決めする工程を含み、ここで、1以上の充填マトリックス体は、チューブの内腔を形成し、複数の充填マトリックス体は、チューブを囲み;および該方法はさらに、人工的に作られた多層の血管チューブの多細胞体が凝集するのを可能にする工程を含む。
【0030】
1つの実施形態において、多細胞体は細長い細胞体である。用語、細長い細胞体は、内容の全体にわたって使用されるように、例として単に提供され、限定する実施形態ではない。従って、本明細書の開示を使用する当業者は、任意の他の細胞体(例えば、細長くない細胞体)に細長い細胞体のための教示を適用することができるであろう。1つの実施形態において、細胞体は、略球状の細胞体である。
【0031】
本明細書にはまた、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む人工的に作られた多層の血管チューブが記載され、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約5:95から約25:75までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0032】
本明細書にはまた、分化した成人の線維芽細胞の外側層、分化した成人の平滑筋細胞および分化した成人の内皮細胞の少なくとも1つの内側層を含む、人工的に作られた多層の血管チューブが記載され、ここで、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(c)チューブの長さは、約30cmまでである;および(d)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;の少なくとも1つを有する。具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも2つを有する。さらにより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも3つを有する。またより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴の少なくとも4つを有する。またさらにより具体的な実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、これらの特徴のすべてを有する。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、前記分化した成人の線維芽細胞は、非血管性の線維芽細胞である。
【0033】
さらに本明細書には、分化した成人の線維芽細胞の少なくとも1つの層、分化した成人の平滑筋細胞の少なくとも1つの層を含む人工的に作られた多層の血管チューブを提供する工程を含む、患者を処置するための方法が記載され、ここで、任意の層は、分化した成人の内皮細胞をさらに含み、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた多層の血管チューブは柔軟である;(c)人工的に作られた多層の血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(d)チューブの長さは、約30cmまでである;および(e)人工的に作られた多層の血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0034】
本明細書にはまた、分化した成人の平滑筋細胞、分化した成人の内皮細胞、および分化した成人の線維芽細胞を含む、人工的に作られた血管チューブが記載され、ここで、前記細胞は、互いに凝集し、前記チューブは、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがないという条件で、以下の特徴:(a)約1:99から約45:55までの内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合;(b)人工的に作られた血管チューブの内部径は、約6mmまたはそれ以下である;(c)チューブの長さは、約30cmまでである;および(d)人工的に作られた血管チューブの厚さは、チューブの領域にわたって略均一である;を有する。
【0035】
人工的に作られた多層の血管チューブ中で使用される細胞タイプは、同種異型の組織(レシピエントと同じ種類のドナーから始まる、またはドナーに由来する細胞または組織)から、または自己移植(レシピエントから始まる、またはレシピエントに由来する細胞または組織)から随意に供給され、随意に新鮮であるか、または凍結保存される。細胞は、幹細胞、例えば、1以上の特異的な機能を行ない、自分で再生する能力を有する、様々な他の細胞タイプへ分化する可能性を有する分化多能性の新生細胞、または始原細胞、例えば、少なくとも1つの細胞タイプへ分化する可能性を有し、自己再生する能力が限られている又はその能力のない、分化単能か分化多能性の新生細胞から分化し得る。細胞はまた、例えば、ヒト大動脈細胞、ヒト臍帯細胞、ヒト脂肪組織、ヒト骨髄、ヒト胎盤またはヒト分化細胞が得られ得る他のソースから供給され得る。好ましくは、本明細書に記載される人工的に作られた多層の血管チューブ中で使用される細胞タイプは、成人の分化細胞である。
【0036】
人工的に作られた多層の血管チューブ中で使用される細胞タイプは、当該技術分野に既知の任意の方法で培養され得る。細胞および組織の培養の方法は、当該技術分野に公知であり、例えば、Cell & Tissue Culture: Laboratory Procedures; Freshney (1987), Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Techniquesに記載され、それらの内容は、このような情報のための引用によって本明細書に組み込まれる。本発明と併用して使用され得る、一般的な哺乳動物の細胞培養技術、細胞株、および細胞培養システムはまた、Doyle, A., Griffiths, J. B., Newell, D. G., (eds.) Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures, Wiley (1998)に記載され、それらの内容は、このような情報のための引用によって本明細書に組み込まれる。
【0037】
培養中の哺乳動物細胞のための適切な増殖条件は、当該技術分野に周知である。細胞培地は、一般に、必須栄養素を含み、随意に、増殖因子、塩、無機質、ビタミンなどの、追加の要素を含み、これらは培養されている細胞タイプに従って選択され得る。特定の成分は、細胞の増殖、分化、特異タンパク質の分泌などを高めるために選択され得る。一般に、標準的な増殖培地は、110mg/Lのピルベートおよびグルタミンとともに、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含み、それらは、10−20%のウシ胎児血清(FBS)または子ウシ血清および100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシンで補われ、当業者に周知の様々な他の標準的な培地のように適切である。好ましくは、細胞は、細胞の起源の動物の体温で、またはその体温に近い体温で、3−15%のCO、好ましくは、5%のCOの雰囲気の中での無菌条件下で培養される。例えば、ヒト細胞は、好ましくは、約37℃で培養される。
【0038】
細胞はまた、所望の株にわたって細胞の分化を誘発する細胞の分化剤によって培養され得る。例えば、細胞は、増殖因子、サイトカインなどによって培養され得る。本明細書に使用されるような用語「増殖因子」は、タンパク質、ポリペプチド、または細胞によって生成され、それ自体に及び/又は様々な他の隣接する又は離れた細胞に影響を与え得る、サイトカインを含むポリペプチドの複合体を指す。典型的に、増殖因子は、特異的なタイプの細胞の増殖及び/又は分化に対して、発達上、または多くの生理学的または環境上の刺激に反応してかのいずれかで影響を与える。すべてではないが、いくつかの増殖因子は、ホルモンである。典型的な増殖因子は、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、神経増殖因子(NGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、角化細胞増殖因子(KGF)、塩基性のFGF(bFGF)を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)、PDGF−AAおよびPDGF−ABを含む血小板由来増殖因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、形質転換増殖因子アルファ(TGF−α)、TGFβ1およびTGFβ3を含む形質転換増殖因子ベータ(TGF−β)、表皮増殖因子(EGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン6(IL−6)、IL−8などである。増殖因子は、中でも、Molecular Cell Biology, Scientific American Books, Darnell et al., eds., 1986; Principles of Tissue Engineering, 2d ed., Lanza et al., eds., Academic Press, 2000において考察される。当業者は、本明細書に記載される調整培地中の任意の及び全ての培養由来の増殖因子が本発明の範囲内であると理解するであろう。
【0039】
本発明の線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は、血管チューブへの形成のために、多細胞体へ組み合わせられる前に別々に培養され得る。例えば、線維芽細胞、平滑筋細胞および内皮細胞は、組織培養フラスコ中の培養物において別々に増殖され、コンフルエントであるときに、1つの培養物へと一緒に継代および混合されることで、混合した細胞懸濁液を形成するために遠心分離にかけられ、上清が取り除かれることで、混合した細胞ペーストのための高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成し得る。適切な混合した細胞懸濁液は、線維芽細胞と平滑筋細胞、線維芽細胞と内皮細胞、および平滑筋細胞と内皮細胞の組み合わせを含む。混合した細胞懸濁液中の細胞は、例えば、オービタルシェーカー上のインキュベーションによって、互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。混合した細胞ペーストは、例えば、キャピラリーチューブへの吸収によって、多細胞体へと形成され得る。その後、細胞シリンダーは、例えば、プランジャーを使用することによって、キャピラリーチューブからモールドの溝へと押し出され得る。あるいは、線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は、例えば、細長い細胞体を含む多細胞体に、別々に組み込まれ得る。細長い細胞体は、細胞とあらかじめ混合された1つより多くの細胞外マトリックス成分を含み得る。その後、多細胞体は、生物印刷機の使用を介する血管チューブへの後の取り込みのために37℃および5%のCO2で、インキュベートされ得る。
【0040】
本発明の多細胞体はまた、複数の細胞に加えて、1以上の細胞外マトリックス(ECM)成分または1以上のECM成分の1以上の誘導体を含み得る。例えば、細長い細胞体は、様々なECMタンパク質(例えば、ゼラチン、フィブリノゲン、フィブリン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、及び/又はプロテオグリカン)を含み得る。ECM成分またはECM成分の誘導体は、細長い細胞体を形成するために使用される細胞ペーストに加えられ得る。細胞ペーストに加えられたECM成分またはECM成分の誘導体は、ヒトまたは動物のソースから精製され得るか、または当該技術分野に既知の組換え方法によって生成され得る。あるいは、ECM成分またはECM成分の誘導体は、細長い細胞体中の細胞によって自然に分泌され得るか、または細長い細胞体を作るために使用される細胞は、当該技術分野に公知の任意の適切な方法によって遺伝子操作され得ることで、1以上のECM成分またはECM成分の誘導体及び/又は1以上の細胞接着分子または細胞基質接着分子(例えば、セレクチン、インテグリン、免疫グロブリンおよびカドヘリン)の発現レベルを変化させることができる。ECM成分またはECM成分の誘導体は、細長い細胞体中の細胞の凝集を促進し得る。例えば、ゼラチン及び/又はフィブリノゲンは、細長い細胞体を形成するために使用される細胞ペーストに適切に加えられ得る。その後、フィブリノゲンは、トロンビンの付加によってフィブリンに転換され得る。
【0041】
内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、多細胞体中の約1:99から約45:55の内皮細胞対平滑筋細胞の間の任意の割合であり得る。例えば、人工的に作られた多層の血管チューブ内の内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合は、約1:99、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、または約1:99から約45:55の内皮細胞対平滑筋細胞の間の任意の割合であり得る。
【0042】
幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブには、分化していない成人の線維芽細胞が本質的にない。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブには、分化していない成人の平滑筋細胞が本質的にない。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブには、分化していない成人の内皮細胞が本質的にない。
【0043】
本発明の線維芽細胞は、例えば、組織培養フラスコ中で培養され得る。コンフルエントであるときに、線維芽細胞は、継代される且つ遠心分離にかけられることで、上清が取り除かれ、単細胞ペーストを形成し得る。線維芽細胞ペーストは、例えば、キャピラリーチューブへの吸収によって、細長い細胞体へと形成され得る。その後、細長い細胞体は、例えば、プランジャーを使用することによって、キャピラリーチューブからモールドの溝へと押し出され得る。その後、細長い細胞体は、生物印刷機の使用を介する血管チューブへの後の取り込みのために37℃および5%のCO2で、インキュベートされ得る。
【0044】
本発明の平滑筋細胞も、例えば、組織培養フラスコ中で培養され得る。コンフルエントであるときに、平滑筋細胞は、継代される且つ遠心分離にかけられることで、上清が取り除かれ、単細胞ペーストを形成する。平滑筋細胞ペーストは、例えば、キャピラリーチューブへの吸収によって、細長い細胞体へと形成され得る。その後、細長い細胞体は、例えば、プランジャーを使用することによって、キャピラリーチューブからモールドの溝へと押し出され得る。その後、細長い細胞体は、生物印刷機の使用を介する血管チューブへの後の取り込みのために37℃および5%のCO2で、インキュベートされ得る。
【0045】
本発明の内皮細胞も、例えば、組織培養フラスコ中で培養され得る。コンフルエントであるときに、内皮細胞は、継代される且つ遠心分離にかけられることで、上清が取り除かれ、単細胞ペーストを形成する。内皮細胞ペーストは、例えば、キャピラリーチューブへの吸収によって、細長い細胞体へと形成され得る。その後、細長い細胞体は、例えば、プランジャーを使用することによって、キャピラリーチューブからモールドの溝へと押し出され得る。その後、細長い細胞体は、生物印刷機の使用を介する血管チューブへの後の取り込みのために37℃および5%のCO2で、インキュベートされ得る。
【0046】
ゲルマトリックスのモールドは、平滑筋/内皮および線維芽の細胞シリンダーのインキュベーションのために作られ得る。ゲルマトリックスのモールドは、アガロース、寒天などの、任意の生体適合性のゲルマトリックス、またはポリエチレングリコール(PEG)などの、他の生体適合性のヒドロゲルから成り得る。ゲルマトリックス材料は、栄養培地に対して透過性があるが、細胞の内部増殖、遊走、および接着に抵抗する。ゲルマトリックスのモールドは、殺菌され得る。ゲルマトリックスのモールドは、ゲルマトリックスの上に置かれ、ゲルをゲルマトリックスのモールドの形態へ形作ることが可能となる陰性モールドを使用して作製され得る。例えば、テフロン(登録商標)の陰性モールドが使用され得る。細長い細胞体は、例えば、血管構造物への形成のためにキャピラリーチューブへ再吸収される前に、24時間ゲルマトリックスのモールド中でインキュベートされ得る。幾つかの実施形態において、ゲルマトリックスのモールドは、筒状体によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、ゲルマトリックスのモールドは、半筒状体によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、ゲルマトリックスのモールドは、長方形状によって特徴付けられる。
【0047】
細長い細胞体中の細胞は、例えば日常的な組織学的検査、例えば、H&E染色によって、細胞の生存率のために評価され得る。細長い細胞体中の細胞はまた、取り扱いの容易性に関して評価され得る。例えば、シリンダーがインキュベーションの時点の終わりでカールする(curl)(例えば、カーリング)量が評価され得る。例えば、主観的プリファレンスのスコアリングシステムが使用され得る。例えば、カーリングスコアは、1−10点ベースで細長い細胞体に割り当てられ得、ここで、1のスコアは、細長い細胞体がカーリングを示さないことを意味し、10のスコアは、細長い細胞体が螺旋状の構造を形成するためにカールしたことを意味する。さらに、細長い細胞体の統合性、例えば、凝集は、主観的スコアを使用することによって、インキュベーションの時点の終わりで評価され得る。例えば、これらの2つのスコアは、細長い細胞体を調製するための好ましい条件の選択を可能にし、多層の血管チューブの形成中の取り扱いの容易性を確かなものとする。例えば、凝集スコアは、10点ベースで細長い細胞体に割り当てられ得、ここで、1のスコアは、シリンダーがその平滑な円筒状の構造を完全に維持したことを意味し、10の凝集スコアは、円筒状の構造が失われたことを意味する。
【0048】
多層の血管グラフトは、例えば、複数の多細胞体を集め、多細胞体の凝集を可能にすることによって形成され得る。幾つかの実施形態において、細胞、細胞集合体、多細胞体、及び/又は層は、細胞-細胞接着によって凝集する。他の実施形態において、細胞、細胞集合体、多細胞体、及び/又は層は、融合する。幾つかの実施形態において、多層の血管グラフトは、弾性の一貫性を有する所望のチューブ形状において複数の細長い細胞体を集め、細長い細胞体の凝集を可能にすることによって形成される。さらなる実施形態において、細長い細胞体中の細胞及び/又は細胞集合体は、一緒に凝集し、容易な操作および取り扱いのための、弾性の一貫性、所望の細胞密度および十分な統合性を有する血管チューブの構成物を形成する。
【0049】
細長い細胞体を生成する方法は、1)所望の細胞の密度および粘度を有する複数のあらかじめ選択された細胞または細胞集合体を含む細胞ペーストを提供する工程、2)細胞ペーストを所望のチューブ形状へと操作する工程、および3)細長い細胞体を熟成を介して形成する工程を含む。
【0050】
単独のまたは細長い細胞体と組み合わせた、略球状の細胞体は、本明細書に記載されるタイプの血管チューブを造るのにも適している。略球状の細胞体を生成する方法は、1)所望の細胞の密度および粘度を有する複数のあらかじめ選択された細胞または細胞集合体を含む細胞ペーストを提供する工程、2)細胞ペーストを筒状体へと操作する工程、3)シリンダーを等しいフラグメントへ切断する工程、4)フラグメントを旋回シェーカー上に一晩かき集めさせる工程、および5)略球状の細胞体を熟成を介して形成する工程を含む。
【0051】
細長い充填体は、血管チューブを造るために、前述の細長い細胞体と組み合わせて使用され得る。細長い充填体は、ロッドまたは他のモールドなどの、前もって決められた形状中に材料を含み、一方で、材料は、栄養培地に対して透過性があるが、細胞の内部増殖、遊走、および接着を防ぐ。充填体ユニットは、アガロース、寒天などの材料、またはポリエチレングリコール(PEG)などの、他の生体適合性のヒドロゲルで作られ得る。人工的に作られた多層の血管チューブの構築の間に、細長い充填体は、血管チューブのためのサポート構造を定義するために、前もって決められたパターンに従って、利用され得る。細長い充填体は、多層の血管グラフトの内腔を形成するために使用され得る。内腔を形成する充填体は、チューブの内腔を形成するために除去可能であり得る。細長い充填体および細長い細胞体の例、およびそれらを形成する方法は、米国特許出願第12/491,228号において見られ得る。
【0052】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、幾つかの実施形態において、層を含む。さらなる実施形態において、層は、1以上の細胞タイプの存在によって特徴付けられる。またさらなる実施形態において、層は、人工的に作られた多層の血管チューブ内の位置によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、層は、1以上の成分、要素、または化合物の濃度及び/又は柔軟性、強度、または弾性などの物理的性質によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、1以上の層は異なる。さらなる実施形態において、1以上の層は別々である。幾つかの実施形態において、1以上の層は隣接している。さらなる実施形態において、1以上の層は分離できない。またさらなる実施形態において、1以上の層は、人工的に作られた多層の血管チューブの領域にわたって連続的な勾配が変化する性質によって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、1以上の層は、時間をかけて変化する性質によって特徴付けられる。
【0053】
人工的に作られた多層の血管チューブは、平滑筋細胞および内皮細胞の細長い細胞体の内側層、および線維芽細胞の細長い細胞体の外側層を使用して作られ得る。図2に示されるような幾何学的配置が使用され得、ここで、平滑筋細胞および内皮細胞の細長い細胞体、線維芽細胞の細長い細胞体、および充填マトリックスの細長い体の幾何学パターンは、三次元の血管構造物を形成するように配され得る。多層の血管チューブは、アガロースなどの、ゲルマトリックスを有するベースプレート上で形成され得る。例えば、ゲルマトリックスは、キャピラリーチューブへ吸収され、例えば、冷たい(4℃)PBS溶液中でゲル化され、キャピラリーから押し出され、ゲルマトリックスのベースプレート上に直接置かれ得ることで、充填マトリックスの細長い体を形成する。充填マトリックスの第2の細長い体は、第1の細長い体に近接され得、そのプロセスを、所望のサポート構造が形成されるまで、繰り返した。充填マトリックスの細長い体が、湿潤性を維持し、且つ体間の接着を可能にするために堆積されるとともに、PBSなどの、湿潤性溶液は、充填マトリックスの細長い体上に分配され得る。線維芽細胞の細長い体は、多層の血管チューブの外側層を形成するために、ゲルマトリックスの細長い体上の隣りの層に堆積され得、平滑筋細胞および内皮細胞の細長い体は、層ごとに、内側層を形成し続けるためにさらに押し出され得る。各々の細長い細胞体を押し出した後に、培地などの湿潤性溶液は、続く細長い細胞体の堆積を助け、既に堆積した細長い細胞体の脱水を防ぐために、堆積した体の上部に分配され得る。所望の血管構造物が形成されるまで、このプロセスを繰り返した。さらに、人工的に作られた多層の血管チューブは、略球状の細胞体の層を、単独でまたは細長い細胞体と組み合わせて使用することで作られ得る。所望の血管構造物は、真っすぐなチューブであり得るか、または1以上の分枝を有するチューブ(例えば、分枝した構造)であり得る。一旦全体的な血管の構成物が完成すれば、ゲルマトリックスは、構成物の各端部上に分配され得、ゲル化が可能と成り得る。ゲル化に続いて、全体的な構成物は、培地などの湿潤性溶液中に沈められ得、インキュベートされ得ることで、例えば、37℃および5%のCOで24時間、細胞シリンダー間の凝集を可能にする。
【0054】
人工的に作られた多層の血管チューブは、当該技術分野で既知の任意の方法によって形成され得る。例えば、人工的に作られた多層の血管チューブは、微量ピペットによるなどの手動で、または特殊目的の生物印刷機(米国特許出願第10/590,446号に記載されるものなど)によるなどの自動で、ゲルマトリックスの細長い及び/又は略球状の細胞体および細長い体を置くことによって形成され得る。
【0055】
あるいは、多層の血管チューブは、細胞播種および複数の細長い細胞体及び/又は複数の細長い充填体のアセンブリングなどの、様々な方法の組み合わせを使用することによって形成され得る。例えば、内皮細胞は、平滑筋細胞の細長い細胞体および線維芽細胞の細長い細胞体から形成された血管チューブの内腔に播種され得る(例えば、内腔を通って流され得る)。別の例として、線維芽細胞の層は、平滑筋細胞および内皮細胞の細長い細胞体から形成された血管チューブのまわりを包み得る。また別の例として、血管チューブを形成するために使用されるあらかじめ形成された細胞体は、1つより多くの細胞タイプを含む。また別の例として、血管チューブを形成するために使用される層は、1つより多くの細胞タイプを含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、血管チューブを形成するために使用されるあらかじめ形成された細胞体は、3つの細胞タイプ(内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞)すべてを含み;そのような例において、各細胞タイプは、人工的に作られた多層の血管チューブを形成するために、(例えば、熟成チャンバー内での時間の間)適切な位置へ遊走する。他の実施形態において、血管チューブを形成するために使用されるあらかじめ形成された細胞体は、(内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞から選択される)2つの細胞タイプを含み、両方の細胞タイプは、人工的に作られた多層の血管チューブを形成するために、(例えば、熟成チャンバー内での時間の間)適切な位置へ遊走する。幾つかの実施形態において、各タイプの細胞は、血管チューブの細胞体または層内に均一に分散される。他の実施形態において、各タイプの細胞は、血管チューブの細胞体または層内の特定の領域に集中する。
【0057】
幾つかの実施形態において、本発明の多層の血管チューブは、神経交配されないものである。幾つかの実施形態において、本発明の多層の血管チューブは、非血管性の線維芽細胞である分化した成人の線維芽細胞を含む。
【0058】
インキュベーション期間の終わりに、取り囲むゲルマトリックスのサポート構造は取り除かれ得、凝集した多層の血管チューブは、増殖のために、および細胞外マトリックスの形成のために、熟成チャンバー(例えば、バイオリアクター)内に置かれ得る。サポート構造/充填体は、血管チューブの内腔及び/又は充填体を引き抜くことによって、または熱可逆性又は光感受性の方法などの他の方法によって血管チューブを囲む内腔から取り除かれ得る。
【0059】
腔内の液体灌流は、人工的に作られた多層の血管チューブの熟成中に使用され得る。例えば、腔内灌流は、多層の血管チューブが熟成チャンバー(例えば、バイオリアクター)内に置かれるときに使用され得る。腔内灌流は、比較的低い圧力で始まり、人工的に作られた多層チューブの熟成の進行中に増加され得る。例えば、腔内灌流は、天然組織中で圧力および剪断力を模倣する又は超過するレベルまで増加され得る。例えば、動脈および静脈の多層チューブのための内圧は、正常な及び/又は高い血圧を模倣するために、60mm Hg未満、60−150mm Hg、150−200mm Hg、または200mm Hg以上の圧力にさらされ得る。より低い圧力は、組織の破壊を回避するために、人工的に作られた多層チューブの熟成の初期段階中にあるのが望ましい。同様に、人工的に作られた多層チューブは、循環系において正常な及び/又は高い剪断力を模倣するために、5dynes/cm未満、5−30dynes/cm、30−60dynes/cm、または60dynes/cm以上の剪断力にさらされ得、好ましくは、より低いレベルが最初に使用される。腔内灌流用のためのこのような技術は、当該技術分野に公知である。
【0060】
当該技術分野に公知であるように、拍動力も腔内灌流に含まれ得る。拍動力は、例えば、動脈および静脈内で循環する血液の天然のパルシングを模倣するために使用され得る。例えば、成人または胎児の休息時の脈拍を模倣するために、60/分未満、60−90/分、75/分、90/分以上、または140−160/分、または160/分以上の脈拍数、または任意の他の脈拍数が使用され得る。拍動力の使用は、最初は比較的低くなり得、該拍動力は、組織構成物がより十分に成熟するにつれ、生理学的レベルまで増加する。
【0061】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、例えば、血管チューブの任意の層の形成、またはチューブ形状の形成のために、あらかじめ形成されたスキャフォールドを利用しない。限定しない例として、本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、ポリマースキャフォールド、細胞外マトリックス層、または任意の他のタイプのあらかじめ形成されたスキャフォールドなどの、あらかじめ形成された、合成のスキャフォールドを利用しない。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブには、あらかじめ形成されたスキャフォールドがない。幾つかの実施形態において、人工的に作られた多層の血管チューブは、例えば、全組成物の0.5%未満の、検知可能な量であるが、微量または取るに足らない量のスキャフォールドを含む。さらなる実施形態において、微量または取るに足らない量のスキャフォールドは、グラフトの長期的な作用に影響を与える又はその主要な生体機能を妨害するには不十分である。
【0062】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、血管チューブを形成するために、細胞のシート、例えば、線維芽細胞のシートの形成のみを利用しない。
【0063】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、約6mm、約5mm、約4mm、約3mm、約2mm、約1mm、または約0.5mmまたはそれ以下の内部径、またはそれらの間の内部径、好ましくは、約6mmまたはそれ以下の内部径を有し得る。人工的に作られた多層の血管チューブは、約1cmまたはそれ以下から約30cmまたはそれ以上までの範囲の長さを有し得る。好ましくは、血管チューブは、約1cmから約30cmの範囲の長さを有する。
【0064】
人工的に作られた多層チューブが、例えば、約4日またはそれ以上灌流にさらされた後に、線維芽細胞の外側層と関連させた、混合した平滑筋細胞および内皮細胞の内側層は、内膜、培地、および外膜の天然構造を形成させる細胞の接着、再生および遊走を可能にし、内皮細胞は内側に遊走し、平滑筋細胞は内側部に遊走し、および線維芽細胞は外側層上にとどまる。
【0065】
あるいは、磁界は、人工的に作られた多層チューブにおいて様々な細胞タイプの細胞の再生および遊走を誘導するために使用され得る。例えば、人工的に作られた多層チューブは、磁気微粒子(例えば、強磁性のナノ粒子など)を含み得、細胞の再生および遊走を誘導するために磁界にさらされる。
【0066】
血管チューブの3つの層の厚さは、例えば、±20%またはそれ以下の、少なくとも血管チューブの長さの領域に対して略均一である。幾つかの実施形態において、血管チューブの厚さは、±10%またはそれ以下、または±5%またはそれ以下である。血管チューブの厚さはまた、血管チューブの長さにわたって略均一であり得る。血管チューブの各々の層の厚さはまた、天然の血管組織の厚さに類似し得る。
【0067】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブはまた、柔軟であり得、天然の生理学的な血圧に匹敵する圧力に耐えるための厚さであり得る。例えば、人工的に作られた多層の血管チューブの破裂強さは、生理学的な血圧に耐えるのに十分であり得る。人工的に作られた多層の血管チューブの生体力学的特性を試験するために、様々な方法が利用され得る。血管チューブの生体力学的特性を試験するための適切な方法は、破裂強さ及び柔軟性の測定を含む。また、単一荷重対伸長の試験(single load versus elongation test)、リラクセーション試験、および引張破断試験などの、応力歪み解析も適切であり、適用され得る。当業者に既知の追加の試験も使用され得る。
【0068】
本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、いくつかの適用に使用され得;例えば、血管チューブは、動静脈のアクセスのために、バイパス移植術において、薬物検査の適用において、または心血管装置の検査の適用において使用され得る。血管チューブが使用され得る心血管装置の例は、ステントを含む。
【0069】
さらに本明細書には、本発明の少なくとも1本の人工的に作られた多層の血管チューブを提供する工程を含む、患者を処置するための方法が記載される。人工的に作られた多層の血管チューブを必要とする患者は、例えば、冠状動脈バイパスまたは末梢バイパスを必要とする患者、または、血液透析を必要とする患者であり得る。必要のある患者は、破損した血管を有し得る。必要のある患者は、例えば、末期腎疾患、糖尿病、動脈硬化症、または先天性の心臓疾患を有する患者であり得る。本発明の人工的に作られた多層の血管チューブは、血管の置換を必要とする任意の患者を処置するために使用され得る。本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され記載されているが、このような実施形態が、ほんの一例として提供されることは当業者に明白となるであろう。ここで、本発明から逸脱することなく、多数の変更、変化、及び置換がなされることが、当業者によって理解される。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明を実行する際に利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、これらの特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造が、それによって包含されることが意図される。
【実施例】
【0070】
以下の具体的な例は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、方法はどうであれ、開示の残りを限定するものとして、解釈されるべきではない。さらなる精錬なしで、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明をその十分な程度まで利用することができると考えられる。本明細書に引用されるすべての公報は、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれる。それらに対する引用によって、このような情報の利用可能性及び一般的な普及が確証される。
【0071】
(実施例1:HASMC−HAECを混合した細胞シリンダー)
材料および方法
【0072】
1.細胞培養
【0073】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCOで、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0074】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 200(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCOで、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養において処理されたフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0075】
2.アガロースのモールド
【0076】
2.1 2%のw/vアガロース溶液の調製:1gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0077】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作る。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌する。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付ける。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注ぐ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にする。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリント(print)を取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄する。その後、17.5mlのHASMC培地を、アガロースのモールドに加える。
【0078】
3.HASMC−HAECシリンダー
【0079】
3.1 HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを組み立てるために、HASMCおよびHAECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cmの増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cmの増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。HASMCおよびHAECの適切な容積を混合し、5、7.5、10、12.5、および15%のHAEC(総細胞集団の%として)を含む、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCOで、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウン(pipetted up and down)することで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCOで、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間および48時間、37℃および5%のCOでインキュベートした。
【0080】
4.混合した細胞シリンダーでの生存率および取り扱いの容易性の評価
【0081】
4.1 細胞生存率の評価:24、48および72時間のインキュベーションの終わりに混合した細胞シリンダー中の細胞生存率を評価するために、日常的な組織学的検査を行った。簡潔に言うと、各時点で、混合した細胞シリンダーを、吸収してキャピラリーチューブに戻し(手でプランジャーを使用して)、マルチウェルプレートに移動させた。シリンダーを、パラフィンが埋め込まれる前に、10%の中性緩衝ホルマリンを少なくとも24時間使用して固定した。埋め込まれたシリンダーを区分し(横方向)、H&E染色を行った。
【0082】
4.2 取り扱いの容易性の評価:混合した細胞シリンダーの取り扱いの容易性を評価するために、2つの別々のパラメーターを評価した。最初に、シリンダーが各々のインキュベーション時点の終わりにカールした量を評価した。主観的プリファレンスのスコアリングシステムを使用した。次に、細胞シリンダーの完全性も、第2の主観的スコアを使用して、各々のインキュベーション時点の終わりに評価した。組み合わせた、これらの2つのスコアは、シリンダーを調製するための好ましい条件の選択を可能にし、後の工程中の取り扱いの容易性を確かなものとした。
【0083】
結果
【0084】
1.HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーの細胞生存率および取り扱いの容易性
【0085】
HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを、上に記載の方法によって5、7.5、10、12.5および15%のHAECを含むように作った。シリンダーを、24時間および48時間、アガロースのモールド中にインキュベートした。各時点で、シリンダーに、カーリングおよび凝集のスコアを割り当てた。表1および2はその結果を要約する。参照され得るように、インキュベーション時間が24時間から48時間に増加するにつれ、取り扱いの容易性は、すべての混合した細胞シリンダーに関して低下する。15%のHAECおよび残りの85%−HASMCを含むシリンダーは、アガロースのモールド中の24時間のインキュベーション後に取り扱うのが最も容易である。さらに、5%のHAECおよび95%のHASMCを含むシリンダーは、両方の時点で取り扱うのが最も難しい。
【0086】
H&E染色(図1)を、すべての時点で各条件に対する細胞生存率に関して評価するために利用した。染色によって、アガロースのモールド中で24時間インキュベートされたすべてのシリンダーが、最も生存可能である細胞を含み(ピンク染色の最小量によって証拠づけられるように)、細胞生存率が、増加するインキュベーション時間とともに減少することが明らかになった。さらに、アガロースのモールド中の24時間のインキュベーション後に、15%のHAECおよび85%のHASMCを含むシリンダー中の細胞生存率は最も高かった。
【0087】
「カーリングスコア」を、10点ベースで各シリンダーに割り当て、ここで、1のスコアは、シリンダーがカーリングを示さなかったことを意味し、10のスコアは、シリンダーが螺旋状の構造を形成するためにカールしたことを意味した。
【0088】
「凝集スコア」を、10点ベースで各シリンダーに割り当て、ここで、1のスコアは、シリンダーがそれらの平滑な円筒状の構造を完全に維持したことを意味し、10の凝集スコアは、円筒状の構造が完全に失われたことを意味した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
(実施例2:多層の血管チューブ)
材料および方法
【0092】
1.細胞培養
【0093】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCOで、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0094】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 200(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCOで、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養で処理したフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0095】
1.3 線維芽細胞:主要なヒトの皮膚線維芽細胞(HDF;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCOで、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシン(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 106(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHDFのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0096】
2.アガロース溶液およびモールド
【0097】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0098】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アガロースの完全なゲル化を可能にするために、アセンブリを1時間室温で横に置いた。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えるか、または、17.5mlのHDF培地を、HDF細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加える。
【0099】
3.細胞シリンダー
【0100】
3.1 HASMC−HAECを混合した細胞のシリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、HASMCおよびHAECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cmの増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cmの増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。適切な容積のHASMCおよびHAECを組み合わせ、15%のHAECおよび残りの85%のHASMC(総細胞集団の%として)を含む、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCOで、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。
上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCOで、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間、37℃および5%のCOでインキュベートした。
【0101】
3.2 HDF細胞シリンダーの作製:HDFシリンダーを、HASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを調製する方法に類似した方法を使用して調製した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントなHDF培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cmの増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(0.1%;1ml/15cmの増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。インキュベーション後に、HDF培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、6mlのHDF培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、75分間150rpmで、および37℃および5%のCOで、オービタルシェーカー上でインキュベートした。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHDF培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.5mm, ID 0.5mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCOで、HDF培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーチューブから(HDF培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、24時間、37℃および5%のCOでインキュベートした。
【0102】
4.多層の血管チューブの作製
【0103】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:アガロースのベースプレートを、10mlのあらかじめ暖められた(>40℃)アガロース(2%w/v)を10cmのペトリ皿に分配することによって生成した。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0104】
4.2 多層の血管チューブ:HDFの外側層およびHASMC−HAECの内側層から成る血管チューブを、HDFシリンダー、およびHASMC−HAECを混合した細胞シリンダーを利用して作った。図2に示されるような幾何学的配置を利用した。簡潔に言うと、24時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したHDFおよびHASMC−HAECのシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBSの溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、10のアガロースシリンダーが堆積し、第1の層を形成するまで、そのプロセスを繰り返した。この時点で、20μlのPBSを、アガロースシリンダー上に分配し、それらが湿るのを維持した。さらなる6のアガロースシリンダーを、図2に示されるような位置で層1の上に堆積させた(層2)。その後、3つのHDFシリンダーを、位置4、5および6で堆積させ、層2を完成させた。各々のHDFシリンダーを押し出した後に、40μlのHDF培地を、堆積したシリンダー上に分配することで、続くシリンダーの堆積を助け、且つ細胞シリンダーの脱水を防いだ。層3に対する次のアガロースシリンダーを堆積させ、その後、位置3および6でHDFシリンダーを堆積させた。HDF培地で構造を再び湿らせた後、HASMC−HAECを混合したシリンダーを、位置4および5に置いた。続いて、40μlのHASMC培地および40μlのHDF培地を、細胞シリンダー上に分配した。位置1および7でアガロースシリンダーを、位置2および6でHDFシリンダーを、位置3および5でHASMC−HAECを混合したシリンダーを、および最終的に位置4で4%のアガロースシリンダーを堆積させることによって、層4を完成させた。図2に示される位置で、アガロースシリンダーを、続いてHDFシリンダーを、および最終的にHASMC−HAECシリンダーを置くことによって、層5、6および7を同様に完成させた。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのHASMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、24時間、37℃および5%のCOでインキュベートし、細胞シリンダー間の凝集を可能にした。24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した多層の血管チューブを得た(図3)。
【0105】
(実施例3:脂肪組織のSVFからの細胞を有する血管構成物(Blood Vessels Constructs))
材料および方法
【0106】
1.細胞培養
【0107】
1.1 SVFからのSMC様の細胞:SMC様の細胞を、リポアスピレート(lipoaspirates)のコラゲナーゼ消化の後に分離した細胞の付着する切片から作り出した。この消化は、間質血管細胞群(SVF)として知られる細胞の集団を生み出す。SVFの細胞を、標準的な組織培養のプラスチック上に平板培養することができ、付着細胞を、適切な培養条件でさらに選択することができる。脂肪組織リポアスピレートのSVFからのSMC様の細胞を、37℃および5%のCOで、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、高グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代3と8の間のSVF−SMCのコンフルエントな副次培養物を、すべての研究において使用した。
【0108】
1.2 SVF−EC:間質血管細胞群(SVF)からの内皮細胞を、本物の内皮細胞(EC)の主要な分離物を増殖させるために一般に使用される増殖培地中で維持し拡張した。特に、10%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシンによって補われた、M199中で、SVF−ECを維持した。細胞を、37℃および5%のCOで、組織培養で処理したフラスコ上で増殖させた。継代3と8の間のSVF−ECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0109】
2.アガロース溶液およびモールド
【0110】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0111】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、100mmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、100mmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にした。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えるか、または17.5mlのHDF培地を、HDF細胞シリンダーをインキュベートするためにアガロースのモールドに加えた。
【0112】
3.細胞シリンダー
【0113】
3.1 SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、SVF−SMCおよびSVF−ECを個別に集め、その後、前もって決められた割合で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/5cmの増殖領域)で洗浄した。細胞を、5〜10分間、TrypLE(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加え、酵素活性をクエンチした。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。SVF−SMCおよびSVF−ECの適切な容積を組み合わせ、15%のSVF−ECおよび残りの85%のSVF−SMC(総細胞集団の%として)を含む混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。混合した細胞ペレットを、6mlのSVF−SMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCOで、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのSVF−SMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.25mm, ID 0.266mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーチューブの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCOで、SVF−SMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(SVF−SMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、6〜12時間、37℃および5%のCOでインキュベートした。
【0114】
4.血管チューブの作製
【0115】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:12mlのあらかじめ暖められた(>60℃)アガロース(2%w/v)を、10cmのペトリ皿へ分配することによって、アガロースのベースプレートを作った。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0116】
4.2 血管チューブ:SVF−SMC:SVF−ECを混合した細胞シリンダーから成る血管チューブを作った。簡潔に言うと、6時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したSVF−SMCおよびSVF−ECのシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBS溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、適切な数のアガロースシリンダーが押し出され、最終的なチューブ形状が組み込まれるまで、そのプロセスを繰り返した。SVF−SMCおよびSVF−ECの多細胞シリンダーを含むチューブ状の血管構成物を、層ごとの印刷プロセス(layer−by−layer printing process)を使用して作り、ここで、チューブ状の細胞構成物の中心にあるアガロースシリンダーは、4%のアガロースから成る。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのSVF−SMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、12〜24時間、37℃および5%のCOでインキュベートし、隣接する細胞シリンダー間の凝集を可能にした。12〜24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した血管チューブを分離した。
【0117】
(実施例4.HASMC−HDF−HAECの多細胞シリンダーを有する血管構成物)
材料および方法
【0118】
1.細胞培養
【0119】
1.1 平滑筋細胞:主要なヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCOで、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアムホテリシンB、0.01MのHEPES(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)、50mg/Lのプロリン、50mg/Lのグリシン、20mg/Lのアラニン、50mg/Lのアスコルビン酸、および3μg/LのCuSO(すべてSigma, St. Louis, MOから)によって補われた、低グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHASMCのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0120】
1.2 内皮細胞:主要なヒト大動脈の内皮細胞(HAEC;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、10%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 199(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。細胞を、37℃および5%のCOで、ゼラチン(ブタの血清から;Sigma, St. Louis, MO)でコーティングした組織培養において処理されたフラスコ上で増殖させた。継代4と8の間のHAECのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0121】
1.3 線維芽細胞:主要なヒトの皮膚線維芽細胞(HDF;GIBCO/Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、37℃および5%のCOで、2%のFBS、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10ng/mlのヒト表皮増殖因子、3ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子、10μg/mlのヘパリン、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシン(すべてInvitrogen Corp., Carlsbad, CAから)によって補われた、Medium 106(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)において維持し拡張した。継代4と8の間のHDFのコンフルエントな培養物を、すべての研究において使用した。
【0122】
2.アガロースの溶液およびモールド
【0123】
2.1 2%および4%(w/v)のアガロース溶液の調製:(それぞれ、2%または4%に対する)1gまたは2gの低融点アガロース(Ultrapure LMP; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を、50mlのダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS; Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)中に溶解した。簡潔に言うと、アガロースが完全に溶解するまで、DPBSおよびアガロースを、持続的に撹拌しながら、ホットプレート上で85℃まで加熱する。アガロース溶液を、125℃で25分間、蒸気滅菌によって殺菌する。温度が36.5℃を超えて維持される限り、アガロース溶液は液相にとどまる。この温度以下で、相転移が生じ、アガロース溶液の粘度が増加し、およびアガロースが固形ゲルを形成する。
【0124】
2.2 アガロースのモールドの調製:アガロースのモールドを、10cmのペトリ皿に合うテフロン(登録商標)のモールドを使用して、細胞シリンダーのインキュベーションのために作った。簡潔に言うと、テフロン(登録商標)のモールドを、70%のエタノール溶液を使用して、および45分間モールドを紫外線にさらして、あらかじめ殺菌した。殺菌したモールドを、10cmのペトリ皿(VWR International LLC, West Chester, PA)の上に置き、安全に取り付けた。このアセンブリ(テフロン(登録商標)のモールド+ペトリ皿)を、縦に維持し、45mlのあらかじめ暖められた、無菌の2%のアガロース溶液を、テフロン(登録商標)のモールドとペトリ皿の間の空間に注いだ。その後、アセンブリを1時間室温で横に置き、アガロースの完全なゲル化を可能にした。ゲル化の後、テフロン(登録商標)のプリントを取り除き、アガロースのモールドを、DPBSを使用して2回洗浄した。その後、17.5mlのHASMC培地を、混合した細胞シリンダーをインキュベートするために、アガロースのモールドに加えた。
【0125】
3.HASMC−HDF−HAECシリンダー
【0126】
3.1 HASMC−HDF−HAECを混合した細胞シリンダーの作製:混合した細胞シリンダーを調製するために、HASMC、HDF、HAECを個々に集め、その後、前もって決められた割合(例えば、70:25:5のHASMC:HDF:HAECの割合)で混合した。簡潔に言うと、培地を、コンフルエントな培養フラスコから取り除き、細胞を、DPBS(1ml/10cmの増殖領域)で洗浄した。細胞を、10分間、トリプシン(1ml/15cmの増殖領域;Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の存在下でインキュベーションによって培養フラスコの表面から分離した。HASMCおよびHDFを0.15%のトリプシンを使用して分離し、一方で、HAECを0.1%のトリプシンを使用して分離した。インキュベーション後に、適切な培地をフラスコに加えた(トリプシンの容積に対して2Xの容積)。細胞懸濁液を、6分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を完全に除去した。細胞ペレットを、それぞれの培地中に再懸濁し、血球計を使用して数えた。適切な容積のHASMC、HDFおよびHAECを組み合わせ、混合した細胞懸濁液を産出した。混合した細胞懸濁液を、5分間200gで遠心分離にかけ、その後、上清溶液を吸収した。混合した細胞ペレットを、6mlのHASMC培地中に再懸濁し、20mlのガラスバイアル(VWR International LLC, West Chester, PA)に移動させ、その後、60分間150rpmで、および37℃および5%のCOで、オービタルシェーカー上でインキュベートした。これによって、細胞が互いに凝集し、細胞−細胞接着を開始することが可能となる。インキュベーション後に、細胞懸濁液を、15mlの遠心分離チューブに移動させ、5分間200gで遠心分離にかけた。上清培地の除去後、細胞ペレットを、400μlのHASMC培地中に再懸濁し、数回ピペットアップおよびピペットダウンすることで、すべての細胞塊が壊れたことを確かなものとした。細胞懸濁液を、15mlの遠心チューブの内部に置いた0.5mlのマイクロチューブ(VWR International LLC, West Chester, PA)へ移動させ、その後、4分間2000gで遠心分離にかけ、高密度の及びコンパクトな細胞ペレットを形成した。上清培地を吸収し、50mmの長さの細胞シリンダーを生み出すように、細胞を、吸収によってキャピラリーチューブ(OD 1.25mm, ID 0.266mm, L 75mm; Drummond Scientific Co., Broomall, PA)へ移動させた。キャピラリーの内部の細胞ペーストを、20分間、37℃および5%のCOで、HASMC培地中にインキュベートした。その後、細胞シリンダーを、キャピラリーが供給されたプランジャーを使用して、キャピラリーチューブから(HASMC培地によって覆われた)アガロースのモールドの溝へと押し出した。細胞シリンダーを、6〜24時間、37℃および5%のCOでインキュベートした。
【0127】
4.多細胞シリンダー(HASMC:HDF:HAEC)を有する血管チューブの作製
【0128】
4.1 アガロースのベースプレートの調製:10mlのあらかじめ暖められた(>40℃)アガロース(2%w/v)を、10cmのペトリ皿へ分配することによって、アガロースのベースプレートを作った。分配直後に、アガロースを、皿の全ベースをカバーし、均一な層を形成するように、等しく広げる。ペトリ皿を、20分間室温でインキュベートし、アガロースが完全にゲル化することを可能にする。
【0129】
4.2 多細胞の血管チューブ:すべての3つの細胞タイプ、HASMC:HDF:HAECを含むシリンダーから成る血管チューブを、多細胞シリンダーを利用して作った。6または12の細胞シリンダーおよび1または7の中心のアガロースシリンダーをそれぞれ有する幾何学的配置を利用した。簡潔に言うと、6〜12時間のインキュベーション期間の終わりに、熟成したHASMC−HDF−HAECシリンダーを吸収し、キャピラリーチューブへと戻し、さらに使用するまで適切な培地中に置いた。アガロースのロッドから成るサポート構造を、以下のように調製した。あらかじめ暖められた2%のアガロースを、キャピラリーチューブ(L=50mm)へ吸収し、冷たいPBS溶液(4℃)中で急速に冷却した。5cmの長さのゲル化したアガロースシリンダーを、キャピラリーから押し出し(プランジャーを使用して)、アガロースのベースプレート上に真っすぐに置いた。第2のアガロースシリンダーを、第1のシリンダーに隣接させ、7または10のアガロースシリンダーが堆積し、第1の層を形成するまで、そのプロセスを繰り返した。6の多細胞のシリンダーおよび1の中心のアガロースシリンダーを有する血管チューブの作製が、さらに詳細に記載される。この時点で、20μlのPBSを、アガロースシリンダー上に分配し、それらが水和するのを維持した。さらなる2つのアガロースシリンダーを、層1の上に堆積させ、第1のアガロースシリンダーを、最左端で堆積させ、および第2のアガロースシリンダーを、その右に堆積させた。その後、2つの多細胞のHASMC−HDF−HAECシリンダーを、層2において2つのアガロースシリンダーの右に堆積させた。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。その後、もう2つのアガロースシリンダーを、2つの多細胞シリンダーの右に堆積させた。層3を、層の最左端でアガロースシリンダーによって構築した。多細胞シリンダーを、そのシリンダーの右に堆積させた。その後、4%のアガロースシリンダーを、多細胞シリンダーの右に堆積させた。別の多細胞シリンダーを、4%のアガロースシリンダーの右に堆積させた。最終的に、別の2%のアガロースシリンダーを、第2の多細胞シリンダーの右に堆積させた。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。層4は、最右端で2%のアガロースシリンダーとともに始まり、その後、2つの細胞シリンダーをアガロースシリンダーの右に堆積させた。層4は、2つの多細胞シリンダーの右への最終的なアガロースシリンダーとともに終了した。続いて、20μlのHASMC培地を、細胞シリンダーの上に分配した。層4の上に3つのアガロースシリンダーを堆積させることによって、層5を構築した。一旦全体的な構成物が完成すると、0.5mlの暖かいアガロースを、構成物の各端部上に分配し、5分間室温でのゲル化を可能にした。そのアガロースのゲル化の後に、30mlのHASMC培地をペトリ皿に加えた(それによって、全体的な構成物が完全に沈んだことを確かなものにした)。構成物を、12〜24時間、37℃および5%のCOでインキュベートし、隣接する細胞シリンダー間の凝集を可能にした。12〜24時間の終わりに、取り囲むアガロースのサポート構造を取り除き、凝集した多層の血管チューブを得た(図3)。
図1
図2
図3A
図3B