特許第5950904号(P5950904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5950904高い固形含有量及び優れた流動性を有する被覆剤ならびにそれから製造される多層コート及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950904
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】高い固形含有量及び優れた流動性を有する被覆剤ならびにそれから製造される多層コート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20160630BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20160630BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20160630BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D183/10
   B05D1/36 B
   B05D7/24 301B
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 302Y
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-505385(P2013-505385)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公表番号】特表2013-525528(P2013-525528A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011054943
(87)【国際公開番号】WO2011131463
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】10191890.2
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】102010015683.3
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マテイス グレーネヴォルト
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ シュテフェンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート シュテュッベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルマ ニムツ
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/156148(WO,A1)
【文献】 特表2010−513616(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/077180(WO,A1)
【文献】 特開2000−119594(JP,A)
【文献】 特開平10−287725(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/115294(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/054386(WO,A1)
【文献】 特開平11−279485(JP,A)
【文献】 特開2000−007948(JP,A)
【文献】 特開2002−167423(JP,A)
【文献】 特表2009−501244(JP,A)
【文献】 特表2010−513618(JP,A)
【文献】 特表2012−527513(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/077182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B05D1/00〜B05D7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのオリゴマー及び/又はポリマーのヒドロキシル基含有化合物(A)、及び
イソシアネート基と式(I)
−X−Si−R''x3-x (I)
[式中、
G=同じ又は異なる加水分解可能な基であり、
X=有機基であり、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、x=0〜2である]
の少なくとも1つのシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)
を含有している、非プロトン性溶剤をベースとする被覆剤において、
(i)イソシアネート基とシラン基を有している化合物(B)はウレットジオン基を有し、かつ
(ii)化合物(B)は、線状脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されており、
化合物(B)は、構造単位(II)と(III)の全体に対して、式(II)
−NR−(X−SiR''x(OR')3-x) (II)
の少なくとも1つの構造単位を2.5〜90mol%の間、及び式(III)
−N(X−SiR''x(OR')3-xn(X'−SiR''y(OR')3-ym (III)
の少なくとも1つの構造単位を10〜97.5mol%の間有し、かつ、式(I)のシラン基は、式(II)と式(III)の構造単位からなり、ここで、
R=水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
X、X'=1〜20個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝アルキレン又はシクロアルキレン基であり、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
n=0〜2、m=0〜2、m+n=2ならびにx、y=0〜2である、
ことを特徴とする、非プロトン性溶剤をベースとする被覆剤。
【請求項2】
化合物(B)は、3〜12個の炭素原子を有する線状脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されている、請求項1に記載の被覆剤。
【請求項3】
化合物(B)は、線状脂肪族ジイソシアネート(DI)のイソシアネートのオリゴマー化により生じた構造タイプの全体に対して、>50mol%のウレットジオン基含有量を有するポリイシシアネート(PI)から製造されている、請求項1又は2に記載の被覆剤。
【請求項4】
ポリイソシアネート(PI)中、反応して構造単位(II)及び/又は(III)を生じたイソシアネート基の全体の割合は、5〜95mol%の間である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項5】
化合物(B)は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのウレットジオンとビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及びN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンからの反応生成物である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項6】
ヒドロキシ含有化合物(A)は、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール及び/又はポリシロキサンポリオールのグループから選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項7】
化合物(A)として、ラクトン変性ヒドロキシル基含有オリゴマー及び/又はポリマー化合物(A)を含有している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項8】
被覆剤は、シラン基を架橋するためのリン含有触媒を含有している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項9】
被覆剤は、成分(B)とは異なる、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する1つ又は複数の化合物(BS)を更に含有している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項10】
ウレットジオン基含有成分(B):成分(BS)の混合比は、成分(B)1.0当量:成分(BS)40.0当量〜成分(B)1.0当量:成分(BS)0.01当量である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の被覆剤。
【請求項11】
多工程の被覆法において、場合により予備被覆された基材上に着色ベースコート層を設け、及びその後に請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤からの層を設けることを特徴とする、多工程の被覆法。
【請求項12】
着色ベースコート層を設けた後に、設けられたベースコートをまず室温から80℃の温度で乾燥させ、かつ請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤を設けた後に、30〜90℃の温度で1分間〜10時間の間硬化させる、請求項11に記載の多工程の被覆法。
【請求項13】
自動車補修塗装用の及び/又は自動車部材及び/又はプラスチック基材を被覆するためのクリアコートとしての、請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤の使用。
【請求項14】
自動車補修塗装用の及び/又はプラスチック基材を被覆するための、請求項11又は12に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのオリゴマー及び/又はポリマーのヒドロキシル基含有化合物(A)ならびにイソシアネート基とシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)を含有している非プロトン性溶剤をベースとする被覆剤に関する。
【0002】
このような被覆剤は、例えば、WO08/74491、WO08/74490及びWO08/74489から公知である。これらの被覆剤で使用されるイソシアネート基とシラン基を有する化合物(B)は、公知のイソシアネート基、有利にはジイソシアネート基の、特にヘキサメチレンジイソシアネート基のビウレット−二量体及びイソシアヌレート−三量体をベースとする。WO08/074489の被覆剤は、通常のポリウレタン被覆剤に対して、著しく改善された耐引っ掻き性と同時に優れた耐候性を有する。そこに記載されている被覆剤は特に自動車系列塗装で使用されているが、自動車補修塗装における使用も記載されている。しかし、この被覆剤の場合の欠点は、溶剤のフラクションの減少、すなわち非揮発性フラクションの増大が、流動性の悪化及びそれにより結果として得られる被覆の光学品質の著しい悪影響と関連することである。
【0003】
自動車補修分野に使用される被覆剤は、静止発光ガイドライン(例えば、ドイツ連邦Airborne Pollutants Ordinance 31)により影響される。現在のヨーロッパガイドラインは、クリアコート系には420g/lのVOC値("揮発性有機含有量")を記載しているが、これは使用される系の密度に応じて、約60質量%の不揮発性フラクションを生じる。高い不揮発性フラクションを有する系を開発する際の題点は、一般に粘度の増大であり、かつそれにより系の流動性が減少し、流動性及びトップコートの保持に不利な影響を及ぼす。これを抑えるために、同じ粘度を保持しながら不揮発性フラクションを増大する必要がある。これは、一般に硬化剤及び/又は結合剤の粘度の減少により達成される。しかし、これはしばしば悪化した物理的フィルム形成を平行して生じ、より長い乾燥時間を伴う。自動車補修塗装分野で使用される被覆剤には、この条件は欠点である。それというのも、修理塗装分野で使用される被覆剤は、いずれにしても長い反応時間を生じるからである。
【0004】
US−A−5691439からは、ヒドロキシル−含有バインダー(A)の他に、架橋剤としてのイソシアネート基を有する化合物(B)を含む被覆剤が公知である。その際、この発明に重要であるのは、化合物(B)が表面エネルギーを下げるために更にシラン基又はシロキサン基を有し、また透明な被覆を得るためにアロファネート基を有することであり、その結果改善された表面特性を有する被覆が得られる。しかし、この明細書では、自動車補修塗装の条件下でさえも優れた硬化速度を保証しながら被覆剤の溶剤フラクションをどのように下げられるのかについての言及が欠けている。
【0005】
更に、EP−A−1273640には、ポリオール成分と架橋成分を含有している2K(2成分)被覆剤が記載されていて、これは脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートから、又はこれらからアロファネート、ビウレット又はウレタン形成により誘導されるポリイソシアネートから成り、その際、元々遊離して存在するイソシアネート基の0.1〜95mol%がビスアルコキシシリルアミンと反応する。これらの被覆剤は、自動車分野においてクリアコート又はトップコート被覆を製造するために使用でき、かつこれらが完全に硬化した後に、環境の影響に対する高い耐性と同時に、優れた耐引っ掻き性を有する。しかし、この明細書では、自動車補修塗装の条件下でさえも優れた硬化速度を保証しながら、かつ得られた被覆の表面特性を悪化させることなく被覆剤の溶剤フラクションをどのように下げられるかについての言及が欠けている。
【0006】
WO2001/98393には、バインダー成分としてのポリマーならびに架橋成分としてアルコキシシリルアミン、有利にはビスアルコキシシリルアミンと低い割合で官能化されたポリイソシアネートを含んでいる2K(2成分)被覆剤が記載されている。この被覆剤は特にプライマーとして使用され、かつ金属下地、有利にはアルミニウム下地に接着するために最適化される。
【0007】
なお未公開の国際特許明細書PCT/US2010/028308には、ヒドロキシル基含有成分(A)及びイソシアネート基含有成分(B)の他に、ウレットジオンとビスアルコキシシリルアミン又はモノアルコキシシリルアミンとの反応生成物を含むが、その際、ウレットジオンとアルコキシシリルアミンの反応生成物は、残りのイソシアネート基をもはや有さない被覆剤が記載されている。
【0008】
EP−B−864575には、アルコキシシラン基とウレア基を有する化合物が記載されていて、これはポリイソシアネート、例えば、ウレットジオン及び/又はイソシアヌレートと、例えば、エステル基を有する第二級モノアルコキシシリルアミン、特にN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルエステルの反応により得られることが記載されている。アルコキシシラン基とウレア基を有する化合物は、もはや残りのイソシアネート基を有することができず、かつEP−B−864575によれば、シラン重縮合により専ら硬化する被覆剤において、場合により更なるシラン基含有成分と一緒に使用される。ヒドロキシル基含有成分とイソシアネート基含有成分と一緒にアルコキシシラン基とウレア基を有するこれらの化合物の使用は、それとは反対にEP−B−864575には記載されていない。
【0009】
最後に、EP−A−1426393からは、ウレットジオン基を有する低モノマーであるポリイソシアネートが公知であり、更に以前に使用されたウレットジオンに対して改善された逆行する開裂安定性の利点を有する。改善された逆行する開裂安定性は、トリアルキルホスフィンの存在で≦40℃の温度でウレットジオンを二量体化し、かつ引き続きトリアルキルホスフィンを分離することにより得られる。ウレットジオンは例えば被覆剤において硬化剤として使用される。しかし、この明細書では、生じた被覆の表面特性にどのような影響を与え得るのかについての言及ならびに修理塗装の条件下でさえも、どのように良好な硬化を保証するのかについての言及が欠けている。
【0010】
課題
従って本発明の課題は、修理塗装の条件下でも良好な硬化が保証され、高い固体含有量ひいては出来るだけ低い溶剤含有量を有し、良好な流動性もしくはトップコート耐久性を示し、かつ優れた表面特性を有する被覆を生じる被覆剤、特に自動車補修塗装用の被覆剤を提供することである。
【0011】
光学的な全体の印象を判定するために、塗布され焼き付けられた塗料フィルムの表面プロフィールの測定がウェブスキャン法により使用され、これは塗料フィルム表面の可視プロフィールの測定を可能にする。このために、反射の強さ("Welligkeit")はByk−Gardner社の装置"Wave Scan"を用いて測定され、その際、10cmの距離で1250個の測定点をプロットした。反射は、長波("Long Wave")、すなわち0.6mm〜10mmの範囲内の構造の光強さの分散ならびに短波("Short Wave")、すなわち0.1mm〜0.6mmの範囲内の構造の光強さの分散に分けられる。良好な視覚的印象には、出来るだけ僅かな層厚で生じる被覆が特に低い長波測定値を有することが極めて重要である。
【0012】
更に高レベルの耐候性のネットワークを生じると同時に高い酸耐性を保証する被覆剤を提供するべきである。その他に、該被覆剤は高レベルの耐引っ掻き性であり、かつ引っ掻きを与えた後に特に高い光沢保持性を有する被覆を提供すべきである。更に、被覆及びコート、特にクリアコートは、応力亀裂を生じることなく>40μmの層厚で製造できるのがよい。更に、該被覆剤は通常は自動車系列塗装及び自動車補修塗装においてクリア層に課される要求を満たさなくてはならない。
【0013】
最終的に、新規被覆剤は簡単にかつ極めて良好な生産性で製造可能であるべきであり、かつ塗料塗布の間に生態学的問題を生じてはならない。
【0014】
課題の解決
上記課題の見地から、少なくとも1つのオリゴマー及び/又はポリマーのヒドロキシル基含有化合物(A)、及びイソシアネート基と式(I)
−X−Si−R''x3-x (I)
[式中、
G=同じ又は異なる加水分解可能な基、
特にG=アルコキシ基(OR')、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基により中断されていてもよく、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利にはR'=エチル及び/又はメチルであり、
X=有機基、特に1〜20個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝アルキレン基又はシクロアルキレン基であり、とりわけ有利にはX=1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここでRa=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、有利にはR''=アルキル基、特に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、x=0〜2、有利には0〜1、特に有利にはx=0である]
の少なくとも1つのシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)を含有する非プロトン性溶剤をベースとする被覆剤が見出され、該被覆剤は、
(i)イソシアネート基及びシラン基含有化合物(B)はウレットジオン基を有し、かつ
(ii)化合物(B)は線状脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されたこと
を特徴とする。
【0015】
本発明の対象は、更にこの被覆剤の使用下の多工程の被覆方法ならびにクリアコートとしての被覆剤の使用もしくは自動車部材及び/又はプラスチック基材を塗装するための及び自動車補修塗装のための被覆方法の使用である。
【0016】
従来技術に鑑み、本発明に基づく課題を本発明による被覆剤を用いて解決できたことは意外であり、かつ当業者に予想できなかった。
【0017】
特に、本発明による被覆剤は、修理塗装の条件下でさえも良好な硬化を保証し、高い固体含有量ひいては出来るだけ少ない溶剤含有量を有し、良好な流動性もしくはトップコート耐久性を示し、かつ良好な表面特性を有する被覆を生じることは特に意外である。従って、結果として得られる被覆は、できるだけ僅かな層厚で特に良好な視覚的印象にとって重要な低い長波測定値を有する。
【0018】
更に、該被覆は高レベルの耐候性のネットワークを生じると同時に高い耐酸性を保証する。その他に、該被覆剤は、高レベルの耐引っ掻き性であり、かつ特に引っ掻きを負荷した後でも高い光沢保持性を有する被覆を生じる。更に、該被覆及びコート、特にクリアコートは>40μmの層厚でも応力亀裂を生じることなく製造することができる。更に、該被覆剤は、通常自動車塗装及び自動車補修塗装の際に透明層に課せられる要求を満たす。
【0019】
最終的に、新規被覆剤は簡単かつ極めて良好な再現性で製造可能であり、かつ塗料塗布の間に生態学的な問題を何も生じない。
【0020】
本発明の説明
本発明による被覆剤
本発明による被覆剤は、特に熱硬化性被覆剤、すなわち実質的に放射線硬化性不飽和化合物不含の被覆剤、特に完全に放射線硬化性不飽和化合物不含の被覆剤であるのが有利である。
【0021】
イソシアネート基含有化合物(B)
成分(B)として、本発明による被覆剤は、遊離の、すなわちブロックされていない及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する1つ又は複数の化合物(B)を含有する。有利には、本発明による被覆剤は、遊離イソシアネート基を有する化合物(B)を含有する。しかし、イソシアネート基含有化合物(B)の遊離イソシアネート基は、ブロックされた形で使用することもできる。よって本発明による被覆剤が1成分系として使用される場合には、これは有利である。
【0022】
成分(B)として被覆剤中で使用されるイソシアネート基含有化合物は、少なくとも1つの線状脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されたことが本発明にとって重要である。これにより、結果として得られる化合物(B)が固体に富む溶剤の形(70質量%よりも多く、特に少なくとも75質量%の固体含有量を有する)で本発明による被覆剤中で使用でき、かつ同時に、得られた被覆は例えば、特に流動性のような表面特性も極めて優れていることが保証される。
【0023】
成分(B)として、被覆剤中で使用されるイソシアネート基含有化合物は、3〜12個の炭素原子、特に4〜10個の炭素原子、及びとりわけ有利には5〜6個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されるのが有利である。
【0024】
成分(B)を製造するために適切である線状脂肪族ジイソシアネート(DI)の例は、ブタジエンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート及び特にヘキサンジイソシアネートである。
【0025】
更に、イソシアネート基含有化合物(B)は、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基の他にウレットジオン基を有することが本発明にとって重要である。ウレットジオン基を有するイソシアネート基含有化合物のこの使用により、イソシアヌレートの使用とは異なり、かつ同じジイソシアネートのビウレット及び/又はアロファネートの使用とは異なり、実質的に良好な表面特性、特に低い長波値を有する被覆が得られる。塗布され及び焼き付けされたコーティングフィルムの長波値は、ウェブスキャン法により測定され、これはコーティングフィルム表面の可視プロフィールの測定を可能にする。このために、反射の強さ("waviness")はByk−Gardner社の装置"Wave Scan"を用いて測定され、その際、10cmの距離で1250個の測定点がプロットされる。装置によって反射は、長波("Long Wave")、すなわち0.6mm〜10mmの範囲内の構造の光強度の分散、ならびに短波("Short Wave")、すなわち0.1mm〜0.6mmの範囲内の構造の光強度の分散に分けられる。
【0026】
有利には、化合物(B)は、それぞれの場合に線状脂肪族ジイソシアネート(DI)のイソシアネートのオリゴマー化により生じた構造タイプの全体に対して、>50mol%、有利には50mol%超から90mol%までの、特に有利には65〜80molのウレットジオン基の含有量を有するポリイシシアネート(PI)から製造されたものである。成分(B)を製造するために適切なウレットジオンは、例えば、EP−A−1426393、2頁の[0012]段落〜4頁の[0030]段落にも記載されている。
【0027】
市販のウレットジオンは、それぞれ市販製品の全質量に対して、各ジイソシアネートの相応するイソシアヌレート5〜30質量%を含有していてもよいことが公知である。このイソシアヌレートの割合は必ずしも有利ではないが、一般に引き続き以下に記載するシラン基含有化合物(IIa)及び(IIIa)との反応に関連して何も問題を生じない。しかし、この場合には、市販のウレットジオンと下記のシラン基含有化合物(IIa)及び(IIIa)の反応の際に、本発明のウレットジオン基含有化合物(B)の他に、相応して官能化されたイソシアヌレートも得られる。これらの官能化されたイソシアヌレートは、形式的にウレットジオン基含有成分(B)ではなく、下記に詳しく説明する成分(BS)に加算することにする。
【0028】
成分(B)として被覆剤中で使用されるイソシアネート基含有化合物は、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基の他に、及びウレットジオン基の他に、更に式(I)
−X−Si−R''x−G3-x (I)
[式中、
G=同じ又は異なる加水分解可能な基であり、特にG=アルコキシ基(OR')であり、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利にはR'=エチル及び/又はメチルであり、
X=有機基、特に1〜20個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝アルキレン基又はシクロアルキレン基であり、特に有利にはX=1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利にはR''=アルキル基、特に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、x=0〜2、有利には0〜1、特に有利にはx=0である]
の少なくとも1つのシラン基を有する。
【0029】
該被覆剤は、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基の他に、及びウレットジオン基の他に、式(II)
−NR−(X−SiR''x(OR')3-x) (II)
の少なくとも1つの構造単位(II)、及び式(III)
−N(X−SiR''x(OR')3-xn(X'−SiR''y(OR')3-ym (III)
の少なくとも1つの構造単位(III)
を有する少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物(B)を含有するのが有利である。前記式中、R=水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、
Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、有利にはR'=エチル及び/又はメチルであり、
X、X'=1〜20個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝アルキレン又はシクロアルキレン基であり、有利にはX,X'=1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、有利にはR'=アルキル基、特に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、n=0〜2、m=0〜2、m+n=2ならびにx、y=0〜2である。
【0030】
それぞれ有利なアルコキシ基(OR')は、同じ又は異なっていてよいが、しかし加水分解可能なシラン基の反応性にどの程度の影響を与えるかによって基の構成に重要である。R'がアルキル基、特に1〜6個の炭素原子を有するものが有利である。シラン基の反応性を高める、すなわち、良好な脱離基である基R'が特に有利である。メトキシ基がエトキシ基に対して及び更にプロポキシ基に対して有利である。従ってR'=エチル及び/又はメチル、特にメチルであるのが特に有利である。
【0031】
オルガノ官能性シランの反応性は、変性成分との反応に使用されるシラン官能基と有機官能基の間のスペーサーX、X'の長さにより更に影響させることもできる。この例は、Wacker社から得られる"α"−シランと称され、かつその際、"γ"シランの場合に存在するプロピレン基の代わりにメチレン基がSi原子と官能基の間に存在する。
【0032】
本発明により使用され、かつ構造単位(II)と(III)で官能化されるイソシアネート基含有化合物(B)は、有利には線状脂肪族ジイソシアネート(DI)のオリゴマー化により製造されたウレットジオン基含有ポリイソシアネート(PI)と、式(IIa)
H−NR−(X−SiR''x(OR')3-x) (IIa)
の少なくとも1つの化合物及び式(IIIa)
HN(X−SiR''x(OR')3-xn(X'−SiR''y(OR')3-ym (IIIa)
の少なくとも1つの化合物の反応により得られるのが特に有利である(置換基は上記の意味を有する)。
【0033】
本発明により有利な化合物(IIIa)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。
【0034】
とりわけ有利であるのは、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンである。このようなアミノシランは、例えば、DEGUSSA社の商標名DYNASYLAN(登録商標)で又はOSI社のSilquest(登録商標)で市販されている。
【0035】
本発明による有利な化合物(IIa)は、アミノアルキル−トリアルコキシシラン、例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシランである。特に有利な化合物(Ia)は、N−(2−トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン及び/又はN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。特に有利であるのは、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンである。このようなアミノシランは、例えば、DEGUSSA社の商標名DYNASYLAN(登録商標)で又はOSI社のSilquest(登録商標)で市販されている。
【0036】
イソシアネート基含有化合物(B)は、それぞれ構造単位(II)と(III)の全体に対して、式(II)の少なくとも1つの構造単位を2.5〜90mol%の間、特に有利には5〜85mol%の間、極めて有利には7.5〜80mol%の間、及び式(III)の少なくとも1つの構造単位を10.0〜97.5mol%、特に有利には15〜95mol%、及び極めて有利には20〜92.5mol%含有する。
【0037】
反応して構造単位(II)及び/又は(III)になるポリイソシアネート(PI)中のイソシアネート基の全体の割合は、5〜95mol%の間、有利には10〜85mol%及び特に有利には15〜70mol%の間であるのが特に有利である。
【0038】
とりわけ有利なイソシアネート基含有化合物(B)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートのウレットジオンと、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及びN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンの反応生成物である。
【0039】
本発明により使用されるポリイソシアネート硬化剤(B)の固体含有量は、有利には70質量%よりも多く、有利には少なくとも75質量%である。
【0040】
本発明による成分(B)の他に、該被覆剤は、なお1つ又は複数の成分(B)とは異なる遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する化合物(BS)を含有することができる。本発明による被覆剤は、遊離イソシアネート基を有する化合物(BS)を含有する。イソシアネート基含有化合物(BS)の遊離イソシアネート基は、ブロックされた形で使用することもできる。これは、本発明による被覆剤が一成分系として使用される場合には有利である。
【0041】
化合物(BS)として、公知の置換又は非置換芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は複素環式ジ−及び/又はポリイソシアネートを使用することもできる。有利なポリイソシアネート基の例は、次のものである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG社のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社のTMXDI(登録商標))及び前記ポリイソシアネートの混合物である。更に有利なポリイソシアネートは、ビウレット二量体及び前記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体である。
【0042】
特に有利な化合物(BS)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソアネート及び4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、それらのビウレット二量体及び/又はイソシアヌレート三量体である。
【0043】
本発明の更なる実施態様では、該化合物(BS)は、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネート−プレポリマーであり、これは、ポリオールと化学量論的過剰量の前記ポリイソシアネートの反応により得られる。このようなポリイソシアネートプレポリマーは、例えば、US−A−4598131に記載されている。
【0044】
成分(BS)として、構造単位(I)、(II)及び/又は(III)で官能化されたイソシアネート基含有化合物(BS)を使用することもできる。一般的に化合物(BS)は、ウレットジオン基を何も有さないか又はいずれにせよ僅かな量しか有さない点が成分(B)とは異なる。
【0045】
構造単位(II)と(III)で官能化されたイソシアネート基含有化合物(BS)は、前記ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートと、前記化合物(IIa)及び(IIIa)の反応により製造されるのが特に有利であり、その際、ポリイソシアネート基本構造中のイソシアネート基の2.5〜90mol%、有利には5〜85mol%、特に有利には7.5〜80mol%と、化合物(IIa)
H−NR−(X−SiR''x(OR')3-x) (IIa)
の少なくとも1つを反応させ、かつ
ポリイソシアネート基本構造中のイソシアネート基2.5〜90mol%、有利には5〜85mol%、特に有利には7.5〜80mol%と、化合物(IIIa)
HN(X−SiR''x(OR')3-xn(X'−SiR''y(OR')3-ym (IIIa)
の少なくとも1つを反応させる(置換基は前記の意味を有する)。
【0046】
化合物(IIa)及び(IIIa)と反応するイソシアネート基の全体の割合は、ポリイソシアネート化合物(BS)中では、ポリイソシアネート基本構造中のイソシアネート基の5〜95mol%、有利には10〜90mol%の間、特に有利には15〜85mol%の間である。
【0047】
シラン基で官能化されたイソシアネート基含有化合物(BS)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート及び/又はそれらのイソシアヌレート三量体と、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及び/又はN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンの反応生成物であるのが特に有利である。
【0048】
本発明の被覆剤に別々に添加される前記化合物(BS)の他に、成分(BS)には、シラン基で官能化されたイソシアネート基含有化合物のフラクションも含まれ、該化合物は、市販のウレットジオン中に頻繁に含有されるイソシアヌレート及び/又はより高い同族体のフラクションによって被覆剤に導入される。
【0049】
被覆剤が成分(B)の他に、化合物(B)とは異なり、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する1つ又は複数の化合物(BS)も含有する場合には、反応してシラン構造単位(I)、(II)及び(III)になるイソシアネート基の全体のフラクションは、それぞれ成分(B)と成分(BS)中に元々存在する全てのイソシアネート基に対して、5〜95mol%の間、有利には10〜90mol%の間、特に有利には15〜85mol%の間である。
【0050】
成分(B)の他に、該被覆剤が成分(B)とは異なり、遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する1つ又は複数の化合物(BS)を含む場合には、ウレットジオン基含有成分(B):成分(BS)の混合比は、有利には成分(B)1.0当量:成分(BS)40.0当量、及び成分(B)1.0当量:成分(BS)0.01当量、特に有利には成分(B)1.0当量:成分(BS)30.0当量、及び成分(B)1.0当量:成分(BS)0.02当量、及び極めて有利には成分(B)1.0当量:成分(BS)25.0当量、及び成分(B)1.0当量:成分(BS)0.05当量である。
【0051】
化合物(B)と(BS)の当量は、グラムでの使用量を、グラムでの化合物(B)又は(BS)の当量で割る方法で通常は算出される。場合により、市販のウレットジオン基含有化合物(B)に含有され得るイソシアヌレート基含有化合物のフラクションは、当量で混合比を計算する際に簡略化するために成分(B)を代入して計算する。すなわち、以下に挙げる計算では、理想的な化合物(B)が仮定される。なぜならば、(B)中のイソシアヌレート基含有化合物のフラクションは存在したとしても僅かであるので、当量比に極めて僅かな影響しか与えないと考えられるからである。
【0052】
化合物(B)の当量を計算するために、まずグラムでのシラン基不含化合物(B)の当量EEWを公知の方法によりDIN−EN−ISO3219/A.3により測定されたイソシアネート基含有量(質量%)を以下のように計算により算出した:
EEW(Bシラン不含)=(100質量%*42g)/イソシアネート含有量(質量%)。
【0053】
グラムでのシラン化化合物(B)の当量EEWも同様に、シラン化されていない化合物(B)の上記当量EEWにより、シラン化イソシアネート基cのフラクション、シラン単位(I)のフラクションas1、シラン単位(II)のフラクションas2、シラン単位(III)のフラクションas3ならびにシラン単位(I)、(II)及び(III)の理論的当量により以下の計算により算出した。
【0054】
EEW(Bシラン化)=EEW(Bシラン不含)+c*[(as1*EEW(I))+(as2*EEW(II)+(as3*EEW(III))]
前記式中、
c=B中に元々存在するイソシアネート基の式(I)+(II)+(III)のシラン単位への転化率(mol%)、100mol%で割る、
as1=B中で構造単位(I)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
as2=B中で構造単位(II)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
as3=B中で構造単位(III)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
EEW(I)=構造単位(I):−X−Si−R''x3-x(式中、X、R''、G及びxは、上記式(I)に記載されている意味を有する)の構造式から決定、
EEW(II)=構造単位(II):−NR−(X−SiR''(OR')3-x(式中、X、R、R''、R'及びxは、上記式(II)に記載されている意味を)の構造式から計算により算出した当量、
EEW(III)=構造単位(III):−N(X−SiR''x(OR')3-xn(X'−SiR''y(OR')3-ym(式中、X、R''、R'及びxは、上記式(III)に記載されている意味を有する)の構造式から計算により算出した当量。
【0055】
化合物(BS)の当量を計算するために、更にまずグラムでのシラン基不含化合物(BS)の当量EEWを公知の方法によりDIN−EN−ISO3219/A.3により測定されたイソシアネート基含有量(質量%)から計算により算出した:
EEW(BSシラン不含)=(100質量%*42g)/イソシアネート含有量(質量%)。
【0056】
グラムでのシラン化化合物(BS)の当量EEWも同様に、シラン化されていない化合物(BS)の当量EEWにより、イソシアネート基のシラン化フラクションc'、シラン単位(I)のフラクションas'1、シラン単位(II)のフラクションas'2、シラン単位(III)のフラクションas'3によりならびにシラン単位(I)、(II)及び(III)の理論的当量により以下のように計算により算出した。
【0057】
EEW(BSシラン化)=EEW(BSシラン不含)+c'*[(as'1*EEW(I))+(as'2*EEW(II)+(as'3*EEW(III))]
前記式中、
c'=(BS)中で元々存在するイソシアネート基の式(I)+(II)+(III)のシラン単位への転化率(mol%)、100mol%で割る、
as'1=BS中で構造単位(I)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
as'2=BS中で構造単位(II)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
as'3=BS中で構造単位(III)に反応したイソシアネート基の割合(mol%)、100mol%で割るが、但し、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は、常に100mol%である。
【0058】
ヒドロキシル基含有化合物(A)
ヒドロキシ基含有化合物(A)として少なくとも1つのオリゴマー及び/又はポリマーポリオールを使用する。
【0059】
有利なオリゴマー及び/又はポリマーポリオール(A)は、ポリスチレン標準物に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、500ダルトンを上回る、有利には800〜100000ダルトンの間、特に1000〜50000ダルトンの間の質量平均分子量Mwを有する。
【0060】
特に有利であるのは、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオールならびにそれらの混合ポリマーであり、以下にポリアクリレートポリオールと称する。
【0061】
ポリオールは、有利には30〜400mgKOH/gのOH価、特に100〜300KOH/gの間のOH価を有する。ヒドロキシル数(OH−数)は、アセチル化の際に、何ミリグラムの水酸化カリウムが物質1gにより結合される酢酸の量に等しいかを示す。測定の際に無水酢酸−ピリジンと一緒にプローブを沸騰させ、かつ得られた酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN53240−2)。
【0062】
DIN−EN−ISO11357−2によるDSC−測定法を用いて測定したガラス遷移温度は、ポリオールに関して有利には−150〜100℃の間、特に有利には−120℃〜80℃の間である。
【0063】
適切なポリエステルポリオールは、例えば、EP−A−0994117及びEP−A−1273640に記載されている。ポリウレタンポリオールは、有利にはポリエステルポリオール−プレポリマーと適切なジイソシアネート又はポリイソシアネートの反応により製造され、かつ例えばEP−A−1273640に記載されている。適切なポリシロキサンポリオールは、例えば、WO−A−01/09269に記載されていて、その際、そこに挙げられているポリシロキサンポリマーは有利には更なるポリオールと組み合わせて、特に高いガラス遷移温度を有するものと組み合わせて使用できる。
【0064】
本発明により極めて特に有利なポリ(メタ)アクリレートポリオールは、通常はコポリマーであり、かつそれぞれポリスチレン標準物に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、有利には1000〜20000ダルトンの間、特に1500〜10000ダルトンの数平均分子量Mwを有する。
【0065】
コポリマーのガラス遷移温度は、通常−100〜100℃の間、特に−50〜80℃の間(DIN−EN−ISO11357−2によりDSC測定法により測定して)である。
【0066】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、有利には60〜250mgKOH/g、特に有利には70〜200KOH/gのOH−数ならびに0〜30mgKOH/gの間の酸価を有する。
【0067】
ヒドロキシル数(OH−数)は、アセチル化の際に、何ミリグラムの水酸化カリウムが物質1gにより結合される酢酸の量に等しいかを示す。測定の際に無水酢酸−ピリジンと一緒にプローブを沸騰させ、かつ得られた酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN 53240−2)。この場合に、それぞれの化合物1gを中和するために消費された水酸化カリウムのmgを示す(DIN−EN−ISO2114)。
【0068】
ヒドロキシル基含有モノマー成分として、有利にはヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば、特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートならびに特に4−ヒドロキシブチルアクリレート及び/又は4−ヒドロキシブチルメタクリレートが使用される。
【0069】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールの更なるモノマー成分として、有利にはアルキルメタアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレート、例えば、有利にはエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート又はラクリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレート及び/又はシクロアルキルメタクリレート、例えば、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート又は特にシクロヘキシルアクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートが使用される。
【0070】
ポリ(メタ)アクリレートポリオール用の更なるモノマー成分として、ビニル芳香族炭化水素、例えば、ビニルトルエン、α−メチルスチレン又は特にスチレン、アクリル酸又はメタクリル酸のアミド又はニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテル、ならびに少量で、特にアクリル酸及び/又はメタクリル酸を使用することもできる。
【0071】
本発明による被覆剤の固体含有量を更に高めるため、及び表面品質(低い長波値)を更に改善するために、特に化合物(B)の僅かなシラン化度の場合には、特に、ラクトン変性ヒドロキシ基含有オリゴマー及び/又はポリマー化合物(A)が使用される。ε−カプロラクトン変性ヒドロキシル基含有オリゴマー及び/又はポリマー化合物(A)及びとりわけ有利にはε−カプロラクトン変性ヒドロキシル基含有ポリアクリレートポリオール及び/又はε−カプロラクトン変性ヒドロキシル基含有ポリメタクリレートポリオールを使用するのが特に有利である。
【0072】
ラクトン変性、特にε−カプロラクトン変性ヒドロキシル基含有オリゴマー及び/又はポリマー化合物(A)は、当業者に公知の方法で、まずヒドロキシル基含有オリゴマー及び/又はポリマー化合物を製造し、かつ引き続きラクトン又はε−カプロラクトンと反応させることにより製造される。しかし、まずモノマー構成成分の一部、特にヒドロキシル基含有モノマー構成成分の一部を、ラクトン又はε−カプロラクトンと反応させ、かつ引き続きラクトン変性又はε−カプロラクトン変性オリゴマー又はポリマーを構成することもできる。ラクトン又はε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有化合物(A)は、例えば、US−A−4546046、4段落目の24行目〜7段落目の6行目にも記載されている。
【0073】
本発明のもう1つの実施態様では、ヒドロキシル基含有化合物(A)は、ヒドロキシル基の他にシラン基(I)を有することができる。
【0074】
成分(A)と(B)ならびに被覆剤の更なる成分の組み合わせ
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の質量割合は、イソシアネート含有化合物(B)の反応していないイソシアネート基:ヒドロキシル基含有化合物(A)のヒドロキシル基のモル当量比が0.8:1〜1:1.2の間、有利には0.9:1〜1.1:1の間、特に有利には0.95:1〜1.05:1の間であるように有利に選択される。
【0075】
それぞれ被覆剤の固体含有量に対して、少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)を20〜80質量%、有利には30〜70質量%含有する本発明による被覆剤を使用するのが有利である。
【0076】
それぞれ被覆剤の固体含有量に対して、少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物(B)を20〜80質量%、有利には30〜70質量%含有する本発明による被覆剤を使用するのが有利である。
【0077】
成分(B)の他に、該被覆剤が成分(B)とは異なり遊離及び/又はブロックされたイソシアネート基を有する1つ又は複数の化合物(BS)を更に含有する場合には、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)及びポリイソシアネート(BS)の全体の割合は、イソシアネート含有化合物(B)+(BS)の反応していないイソシアネート基:ヒドロキシル基含有化合物(A)のヒドロキシル基のモル当量比が0.8:1〜1:1.2の間、有利には0.9:1〜1.1:1の間、特に有利には0.95:1〜1.05:1の間であるように有利に選択される。
【0078】
これが1成分の被覆剤である場合には、イソシアネート基含有化合物(B)及び場合により(BS)は、それらの遊離イソシアネート基がブロック剤でブロックされるように選択される。例えば、イソシアネート基は置換ピラゾールで、特にアルキル置換ピラゾールで、例えば、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールで、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾールで、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾールなどでブロックすることができる。成分(B1)及び(B2)のイソシアネート基を3,5−ジメチルピラゾールでブロックすることが特に有利である。
【0079】
本発明による有利な2成分(2K)被覆剤の場合に、被覆剤で塗布する直前に、ヒドロキシル基含有化合物(A)ならびに以下に記載する更なる成分を含有する塗装成分を、イソシアネート基含有化合物(B)、場合により(BS)を含有する塗装成分と、かつ場合により更に以下に記載する成分と自体公知の方法で混合する。その際、通常は化合物(A)を含有する塗装成分は、触媒ならびに溶剤の一部を含有する。
【0080】
本発明による被覆剤は、場合によりヒドロキシル基含有成分(A)の他に、成分(A)とは異なる更なる1つ又は複数のヒドロキシル基含有化合物(C)を含有してもよい。有利には、この化合物(C)は、ポリオール成分(A)+(C)の不揮発性成分フラクションに対して、10〜50質量%、特に有利には20〜40質量%のフラクションをとる。
【0081】
ヒドロキシル基含有化合物(C)として、低分子ポリオール及び成分(A)とは異なるオリゴマー及び/又はポリマーポリオールの両方が使用される。
【0082】
低分子ポリオールとして、例えば、ジオール、有利にはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,2−シクロヘキサンジメタノールならびにポリオール、有利にはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールが使用される。
【0083】
このような低分子ポリオールが僅かなフラクションのポリオール成分(A)と混合されるのが有利である。
【0084】
オリゴ及び/又はポリマーポリオール(C)として、成分(A)が専らポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオールから成る場合には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリシロキサンポリオールが使用される。
【0085】
触媒(D)
本発明による被覆剤は、シラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(D)を有利に含有する。例えば、亜鉛又はアルミニウムをベースとするキレート配位子を有する金属錯体である(例えば、WO05/03340に記載されているチタネート又はルイス酸)。しかし、触媒を選択する際に、触媒が被覆剤の黄変を生じないように留意すべきである。更に、公知の方法で使用される幾つかの触媒は、毒性の観点からあまり望ましくない。
【0086】
従って、触媒(D)としてリン含有、特にリン含有及び窒素含有触媒を使用するのが有利である。この場合に、2つ以上の異なる触媒(D)の混合物を使用することができる。
【0087】
適切なリン含有触媒(D)の例は、置換リン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステル、有利には、非環式リン酸ジエステル、環式リン酸ジエステル、環式ジリン酸ジエステル及び環式ジリン酸ジエステルから成るグループである。このような触媒は、例えば、ドイツ国特許明細書DE−A−102005045228に記載されている。
【0088】
しかし、特に置換リン酸モノエステル及びリン酸ジエステル、有利には非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステル、特に有利にはリン酸モノエステルとジエステルのアミン付加物から成るグループが使用される。
【0089】
触媒(D)として、相応のアミンブロックされたリン酸エステル、及びここでは特にアミンブロックされたリン酸エチルヘキシルエステル及びアミンブロックされたリン酸フェニルエステル、とりわけ有利にはアミンブロックされたリン酸−ビス(2−エチルヘキシル)エステルを使用するのが極めて有利である。
【0090】
リン酸エステルをブロックするアミンの例として、特に第三級アミン、例えば、二環式アミン、例えば、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジメチルドデシルアミン又はトリエチルアミンが挙げられる。リン酸エステルをブロックするために第三級アミンを使用するのが特に有利であり、これは140℃の硬化条件で触媒の作用を保証する。
【0091】
アミンでブロックされたリン酸触媒も市販されている(例えば、King Industries社のNacureタイプ)。例えば、King Industries社からのNacure4167は、アミンブロックされたリン酸部分エステルをベースにした特に適切な触媒として挙げられる。
【0092】
触媒は、本発明による被覆剤の不揮発性成分に対して、0.01質量%〜20質量%、特に有利には0.1質量%〜10質量%のフラクションで使用される。この場合に、触媒のより低い活性は、相応してより多くの使用量により補償できる。
【0093】
本発明による被覆剤は、更に二環式アミン、特に不飽和二環式アミンをベースとするもう1つのアミン触媒を含有していてもよい。適切なアミンの例は、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンである。
【0094】
これらのアミン触媒は、本発明による被覆剤の不揮発性成分に対して、有利には0.01〜20質量%のフラクションで、特に有利には0.1〜10質量%のフラクションで使用される。
【0095】
本発明による被覆剤用の溶剤として、特に被覆剤中で化合物(A)、(B)及び場合により(C)に対して化学的に不活性であり、かつ被覆剤の硬化の際にも(A)および(B)と反応しないものが適切である。このような溶剤の例は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、溶剤ナフサ、Solvesso 100又はHydrosol(登録商標)(ARAL社)、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば、エチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート又はエチルエトキシプロピオネート、エーテル又は前記溶剤から成る混合物である。有利には、非プロトン性溶剤又は溶剤混合物は、溶剤に対して、最大1質量%、特に有利には最大0.5質量%の水含有量を有する。
【0096】
化合物(A)、(B)及び場合により(C)の他に、更なる結合剤(E)を使用することもでき、これは有利にはポリ(メタ)アクリレート(A)のヒドロキシル基及び/又は化合物(B)の遊離イソシアネート基及び/又は化合物(B)及び/又は(C)のアルコキシシリル基と反応し、かつ架橋点を形成することができる。
【0097】
例えば成分(E)として、アミノプラスト樹脂及び/又はエポキシ樹脂が使用可能である。通常及び公知のアミのプラスト樹脂を使用でき、それらのメチロール基及び/又はメトキシメチル基を部分的にカルバメート基又はアロファネート基により脱官能化することができる。このような種類の架橋剤は、特許文献US−A−4710542及びEP−B−0245700ならびにB.Sihgh及び共著者による文献"Carbamylmethylated Melamines, Novel Crosslinkers for the Coathings Industy"、Advanced Organic Coatings Science and Technology Series, 1991、第3巻、193〜207頁に記載されている。
【0098】
通常、このような成分(E)は被覆剤の不揮発性成分に対して40質量%までのフラクション、有利には30質量%まで、特に有利には25質量%までのフラクションで使用される。
【0099】
更に、本発明によるバインダー混合物又は本発明による被覆剤は、少なくとも1つの通常かつ公知の塗料添加剤(F)を有効量で、すなわち、それぞれ被覆剤の不揮発性成分に対して、有利には30質量%までの量、特に有利には25質量%までの量、及び特に20質量%までの量で含有していてもよい。
【0100】
適切な塗料添加剤(F)の例は、以下のものである:
− 特にUV吸収剤;
− 特に、光安定剤、例えば、HALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサルアニリド;
− ラジカルスカベンジャー;
− スリップ添加剤;
− 重合阻害剤;
− 消泡剤;
− 従来技術から一般に公知であるような反応性希釈剤、有利には−Si(OR)3−基に不活性であるもの;
− 湿潤剤、例えば、シロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びそれらのコポリマー又はポリウレタン;
− 接着促進剤、例えば、トリシクロデカンジメタノール;
− 流動調整剤;
− フィルム形成助剤、例えば、セルロース誘導体;
− 充填剤、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;更なる詳細については、Roempp Lexikon"Lacke und Druckfarben", Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998、250〜252頁を参照のこと;
− レオロジー調整添加剤、例えば、特許明細書WO94/22968、EP−A−0276501、EP−A−0249201またはWO97/12945から公知の添加剤;例えば、EP−A−0008127に開示されているような架橋ポリマー微粒子;無機層状ケイ酸塩、例えば、アルミニウム−マグネシウム−シリケート、ナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩、及びモンモリロナイトのタイプのナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム−層状ケイ酸塩;シリカ、例えば、Aerosile(登録商標);又はイオン性及び/又は会合作用基を有する合成ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸コポリマー又はエチレン−無水マレイン酸コポリマー及びそれらの誘導体、又は疎水性に変性されたエトキシル化ウレタン又はポリアクリレート;
− 難燃剤;及び/又は
− ウォータースカベンジャー。
【0101】
本発明のもう1つの実施態様では、本発明によるバインダー混合物又は本発明による被覆剤は、更なる顔料及び/又は充填剤を含んでいてもよく、かつ着色されたトップコートの製造にも使用される。このために使用される顔料及び/又は充填剤は当業者から公知である。
【0102】
本発明による被覆剤から製造される本発明による被覆は、既に硬化された電気コート、充填剤コート、ベースコート又は通常かつ公知のクリアコートにも著しく接着するので、自動車系列(OEM)塗装における使用の他に、自動車補修塗装及び/又は自動車部材の被覆、又は既に塗装した車体のモジュラー耐引っ掻き性仕上げに使用するためにも著しく適切である。
【0103】
本発明による被覆剤の塗布は、通常の全ての塗布方法、例えば、スプレー塗り、ナイフ塗り、延ばし塗り、流し込み、浸し塗、含浸、トリックリング又はローラー塗りにより行うことができる。この場合に、被覆すべき基材は、それ自体を静止させてもよく、その際、塗布装置又は設備が動く。被覆すべき基材、特にコイルを動かしてもよく、その際、塗布設備は基材に対して静止するか、又は適切な方法で動かされる。
【0104】
有利には、スプレー塗布法、例えば、圧縮空気スプレー、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー塗装(ESTA)を、場合によりホットスプレー塗装と組み合わせて、例えば、ホットエアスプレー塗装が使用される。
【0105】
塗布された本発明による被覆剤の硬化は、一定の休息時間の後に行ってもよい。この休息時間は、例えば、コート層を流動化し、かつ脱気するために、又は溶剤のような揮発性成分を蒸発させるために使用される。休息時間は、高温の使用により、及び/又は低い大気湿度の使用により補助及び/又は短縮させることができるが、但し例えば早まった完全架橋のような損害又は変化をコート層に全く与えない場合である。
【0106】
被覆剤の熱硬化は、方法的な特徴を有さず、通常及び公知の方法、例えば、循環空気オーブン中での加熱又はIRランプでの照射により行われる。この場合に、熱硬化は段階的に行ってもよい。更に有利な硬化法は、近赤外(NIR照射)での硬化である。
【0107】
熱硬化は、30〜200℃、特に有利には40〜190℃、及び特に50〜180℃の温度で1分〜10時間、特に有利には2分〜5時間、及び特に3分〜3時間の間行われ、その際、自動車補修塗装及びプラスチック部材の塗装に使用される温度(有利には30〜90℃の温度である)、またより長い硬化時間を使用することもできる。
【0108】
本発明による被覆剤は、高い固体含有量を有し、かつ新規硬化被覆、特に高い耐引っ掻き性であるコート、とりわけクリアコート、成形物、特に光学成形物及び自己支持型フィルムを提供し、その際に、高い耐引っ掻き性は長く暴露された後でさえも保持されるままである。同時に、本発明により得られる被覆は、極めて良好な光学的な全体の印象を有する。最終的に、本発明の被覆及びコート、特にクリアコートは、>40μmのフィルム厚さでさえも応力亀裂を生じることなく製造できる。
【0109】
従って、本発明による被覆剤は、輸送媒体の車体(特にモーター車輌、例えばバイク、バス、トラック又は自動車)又はこの部分;内部及び外部領域の建物;家具、窓及びドア;プラスチック成形物、特にCD及び窓;小型の工業部材、コイル、コンテナ及びパッキング;白色物品;フィルム;光学、電気及び機械部材ならびに中空ガラス製品及び日用品の修飾、保護及び/又は効果を付与する、高い耐引っ掻き性被覆及びコートとして著しく適切である。
【0110】
特に、本発明による被覆剤及びコート、特にクリアコートは、自動車系列塗装(OEM)の工業的及び美的に高度な要求のある分野の塗装ならびに自動車の車体の内部又は外部に設置するプラスチック部材を被覆するために、特に上等クラスの自動車ボディーの被覆、例えば、屋根、テイルゲート、エンジンボンネット、フェンダー、バンパー、スポイラー、シル、保護ストリップ、サイドトリムなどの製造ならびに自動車補修塗装に用いられる。
【0111】
プラスチック部材は、通常ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート又は衝撃変性ポリメチルメタクリレートからの配合物、特にASAとポリカーボネートから成る配合物から成り、有利には>40%、特に>50%のポリカーボネート割合を有するものが使用される。
【0112】
ASAとは、一般に衝撃変性スチレン/アクリロニトリルポリマーを意味すると解釈され、その際、ポリアルキルアクリレートゴム上のビニル芳香族化合物、特にスチレン、及びビニルシアニド、特にアクリロニトリルのグラフトコポリマーは、特にスチレンとアクリロニトリルからのコポリマーマトリックス中に存在する。
【0113】
本発明による被覆剤は多工程の被覆法で使用されるのが特に有利であり、場合により予備被覆された基材上にまず着色ベースコート層を設け、この後に前記層に本発明による被覆剤を設ける方法で使用されるのが特に有利である。従って、本発明の対象は、少なくとも1つの着色ベースコート層及びその上に設けられた少なくとも1つのクリアコート層から成る効果及び/又は色を付与する多層コートを提供し、これは該クリアコート層が本発明による被覆剤から製造されたことに特徴づけられる。
【0114】
水で希釈可能なベースコート及び有機溶剤をベースとするベースコートの両方を使用できる。適切なベース塗料は、例えば、EP−A−0692007、かつその3段落、50頁以降に挙げられている文献にも記載されている。有利には、設けられたベースコートをまず乾燥させる。すなわち、ベースコートフィルムは蒸発相で少なくとも有機溶剤又は水の一部が取り除かれる。乾燥は、通常は室温から80℃の温度で行われる。乾燥後に、本発明による被覆剤が塗布される。引き続き、2層のコートは有利には自動車系列塗装で使用される条件下に30〜200℃、特に有利には40〜190℃、及び特に50〜180℃の温度で、1分〜10時間、特に有利には2分〜5時間、及び特に3分〜3時間の間焼き付けられ、その際、自動車補修塗装に使用される温度(30〜90℃の間の温度が有利である)、またより長い硬化時間を使用することもできる。
【0115】
本発明のもう1つの有利な実施態様では、本発明による被覆剤はプラスチック基材、特に自動車に搭載するプラスチック部材を被覆するための透明なクリアコートとして使用される。これらのプラスチック部材は、有利には多工程の被覆法において被覆され、その際、場合により予備被覆されたか、又は接着性を改善するために被覆後に前処理された基材(例えば、基材のフレーム、コロナ又はプラズマ処理)上に、まず着色ベースコート層を、かつその後に本発明による被覆剤を有する層が設けられる。
【0116】
最終的に、本発明による被覆剤は透明なクリアコートとして透明なプラスチック基材を被覆するために使用される。この場合に、被覆剤はUV吸収剤を含有していてもよく、量と種類はプラスチック基材の作用的なUV保護に合わせられる。
【0117】
実施例
ヒドロキシル基(A1)を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂の製造
オイル循環サーモスタットにより加熱可能である、サーモメター、アンカー撹拌機、2個の滴下漏斗及び還流冷却器を備えた二重壁の4リットル−ステンレス容器に、重合用の溶剤を予め装入した。滴下漏斗のうちの1つをモノマー混合物で充填し、二番目の滴下漏斗に、適切な開始剤(通常は、過酸化物)を含有している開始溶液を予め装入した。初期充填物を140℃の重合温度まで加熱した。重合温度に達した後に、まず開始剤の供給を始めた。開始剤供給の15分後に、モノマー供給(240分の間)を開始した。開始剤供給は、モノマー供給が終わった後に更に30分間続くように設定した。開始剤供給が終わった後に、混合物を140℃で更に2時間撹拌し、かつ引き続き室温まで冷却した。引き続き、この反応混合物を表2に記載された固体含有量になるまで溶剤で調節した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
ヒドロキシル基を有する低粘性のカプロラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート樹脂(A2)の製造
アンカー撹拌器及び還流冷却器を備えたステンレス撹拌容器中に、酢酸ブチル290gと溶剤ナフサ290gを予め装入し、かつ撹拌下に窒素雰囲気中3.5バールの絶対圧力で167℃に加熱した。ジ−t−アミルペルオキシド288.8g及び酢酸ブチル10.7g及び溶剤ナフサ10.8gの溶液を275分間にわたり滴加した。スチレン400g、ブチルメタクリレート550g、ヒドロキシエチルアクリレート803.3g、エチルヘキシルアクリレート550g、及びアクリル酸102.9gのモノマー混合物を240分以内に一定に滴加した。この場合に、モノマー供給は開始剤供給の5分後に開始した。供給を開始した後に、反応内容物を167℃で更に20分間保持し、かつ引き続きカプロラクトン993gを1時間以内に供給し、その際、反応温度を150℃まで一定に下げた。供給の終了後150℃で1.5時間更に撹拌した。引き続き、反応器の内容物を冷却し、121℃を下回る温度で圧力を下げ、かつ80℃で反応器を空にした。生じたポリマー溶液は、2400mPasの粘度で81.2%の固体を有した。結合剤は、3.0の多分散度(ポリスチレンキャリブレーションに対するGPCにより決定)で5300g/molの数平均モル質量を有した。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
HDIベースの二量体ウレットジオンをベースとする本発明による硬化剤(B1)(10mol%モノシラン構造IIaと90mol%ビスシラン構造IIIa:イソシアネート基の転化率c=40mol%)の製造
還流冷却器とサーモメターを備えたステンレス反応器中に、ウレットジオン基を有する二量体化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)48.3部(Bayer社製のDesmoudur N3600)、酢酸ブチル12.1部及びトリエチルオルトホルメート2.4部を予め装入した。引き続き滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124, EVONIK, Rheinfelden)30.7部及びトリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミン2.4部(Dynasylan 1189, EVONIK, Rheinfelden)から成る混合物を窒素ブランケット及び撹拌下に滴加した。約40℃までの僅かな温度上昇が観察された。2時間撹拌した後に、NCO−値を滴定により試験した:NCO−含有量:6.6%(溶液)。不揮発性のフラクション(1時間、150℃)は85%である。
【0124】
狭域分布のHDIベースのイソシアヌレートをベースとする本発明によらない硬化剤(BV1)(10mol%モノシラン構造IIaと90mol%ビスシラン構造IIIa:イソシアネート基の転化率c=40mol%)の製造
還流冷却器とサーモメターを備えたステンレス反応器中に、三量体化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)57.6部(Bayer社製のDesmoudur N3600)、酢酸ブチル14.8部及びトリエチルオルトホルメート2.8部を予め装入した。引き続き滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124, EVONIK, Rheinfelden)39.4部及びトリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミン3.0部(Dynasylan 1189, EVONIK, Rheinfelden)から成る混合物を窒素ブランケット及び撹拌下に滴加した。約40℃までの僅かな温度上昇が観察された。2時間撹拌した後に、NCO−値を滴定により試験した:NCO−含有量:6.6%(溶液);不揮発性のフラクション(1時間、150℃)は85%である。
【0125】
広域分布のHDIベースのイソシアヌレートをベースとする本発明によらない硬化剤(BV2)の製造(10mol%モノシラン構造IIaと90mol%ビスシラン構造IIIa:イソシアネート基の転化率c=40mol%)
還流冷却器とサーモメターを備えたステンレス反応器中に、三量体化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)67.6部(Bayer社製のDesmoudur N3600)、酢酸ブチル16.9部及びトリエチルオルトホルメート3.4部を予め装入した。引き続き滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124, EVONIK, Rheinfelden)43.0部及びトリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミン3.3部(Dynasylan 1189, EVONIK, Rheinfelden)から成る混合物を窒素ブランケット及び撹拌下に滴加した。約40℃までの僅かな温度上昇が観察された。2時間撹拌した後に、NCO−値を滴定により試験した:NCO−含有量:6.6%(溶液);不揮発性のフラクション(1時間、150℃)は85%である。
【0126】
本発明による被覆剤B1とB2の調製物、及び本発明による例1と2の被覆、及び比較例V1〜V4の被覆剤VB1〜VB4、及び比較例V1〜V4までの被覆
挙げられた順番で(上から開始)、表5と表6に挙げられている成分を適切な容器中で互いによく混合し、かつその直後に黒いベースコートで被覆したミラープレート上に被覆した(ベースコート乾燥80℃で30分、10分間の脱気時間)。引き続き、プレートを60℃で30分間オーブン中で乾燥させた。得られた被覆を室温で24時間貯蔵し、かつBYK−Gardner社製のWave-Scan(登録商標)で測定した。試験結果は表7と表8に記載されている。
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
全ての被覆は、記載した乾燥後(60℃で30分)に指触乾燥していた。異なる光学実験条件下に粘着性フィルムが生じた場合には、僅かに高めた触媒量及び/又は作用的な触媒により簡単に取り除くことができる。
【0132】
試験結果のまとめ:
本発明による例1の表7中の長波値(LW)及び短波値(SW)と、比較例V1とV2の比較は、両方とも本発明による例1が、比較例V1とV2よりも実質的に優れた値を有することを示した。すなわち、本発明による被覆剤B1は、比較例V1とV2の被覆剤よりも実質的に良好な流動性を有することが示された。
【0133】
同様に、本発明による例2の表8中の長波値(LW)及び短波値(SW)と、比較例V3と比較例V4の比較も、本発明による例2が比較例V3とV4よりも実質的に優れた値を有することを示した。すなわち、本発明による被覆剤B2は、比較例V3とV4の被覆剤よりも実質的に良好な流動性を有することが示された。
【0134】
更に、本発明による被覆剤B1と本発明による被覆剤B2の比較により、カプロラクトン変性結合剤(A2)で、被覆剤の不揮発性フラクションを更に高めることができ、かつ結果として得られる例B2の被覆は、被覆剤B2の高い不揮発性フラクションにもかかわらず、例1の被覆と比べて同様に相応する光学品質を有することが分かる。
【0135】
HDIベースの二量体ウレットジオンをベースとする本発明による硬化剤(B2)(20mol%モノシラン構造IIaと80mol%ビスシラン構造IIIa:イソシアネート基の転化率c=40mol%)の製造
還流冷却器とサーモメターを備えたステンレス反応器中に、ウレットジオン基を有する二量体化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)50部(Bayer社製のDesmoudur N3400)、酢酸ブチル16部及びトリエチルオルトホルメート3部を予め装入した。引き続き滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124, EVONIK, Rheinfelden)24部とトリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミン8部(Dynasylan 1189, EVONIK, Rheinfelden)から成る混合物を窒素ブランケット及び撹拌下に滴加した。約40℃までの僅かな温度上昇が観察された。2時間撹拌した後に、NCO−値を滴定により試験した:不揮発性フラクション(1時間、150℃):80%、NCO−含有量:6.1%(溶液)。
【0136】
イソシアヌレート基含有イソシアネート硬化剤(BS1)の製造
ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする、イソシアヌレート基を有する市販の三量体化ポリイソシアネート40質量部(Bayer社製のDesmoudur N3600)及び酢酸ブチル10部を撹拌により互いに混合することにより、固体含有量80.0質量%を有する溶液が得られた。
【0137】
HDIベースの三量体イソシアヌレートをベースとするイソシアヌレート基含有硬化剤(BS2)(20mol%モノシラン構造IIaと80mol%ビスシラン構造IIIa:イソシアネート基の転化率c=40mol%)の製造
還流冷却器とサーモメターを備えたステンレス反応器中に、イソシアヌレート基を有する三量体化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)50部(Bayer社製のDesmoudur N3600)、酢酸ブチル16部及びトリエチルオルトホルメート3部を予め装入した。引き続き滴下漏斗を介して、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124, EVONIK, Rheinfelden)24部とトリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミン8部(Dynasylan 1189, EVONIK, Rheinfelden)から成る混合物を窒素ブランケット及び撹拌下に滴加した。約40℃までの僅かな温度上昇が観察された。2時間撹拌した後に、NCO−値を滴定により試験した:不揮発性フラクション(1時間、150℃):80%、NCO−含有量:6.3%(溶液)。
【0138】
表9に挙げられたシラン化ウレットジオン(B2)ならびにイソシアヌレート基含有イソシアネート(BS1)又は(BS2)の量をそれぞれ混合することにより、表9に記載されている硬化剤混合物H1とH2が製造された。
【0139】
【表9】
【0140】
ウレットジオン基含有化合物B2:イソシアヌレート基含有化合物BS1もしくはBS2の混合比の計算(硬化剤混合物H1とH2に当量)
工業的データシートによるDesmodur(登録商標)N3400の当量の計算:
(100*42g)/21.8=193g
工業的データシートによるDesmodur(登録商標)N3600の当量の計算:
(100*42g)/23=183g
ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミンの計算された当量:341g
トリメトキシシリルプロピル−n−ブチルアミンの計算された当量:234g。
【0141】
ウレットジオン基含有化合物B2の当量の計算:
B2におけるシラン単位への転化率c:40mol%。
B2におけるモノシランと反応したイソシアネート基のフラクションas2:
(モノシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0.2。
B2におけるビスシランと反応したイソシアネート基のフラクションas3:
(ビスシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0.8。
ウレットジオン基含有化合物B2の当量:
[193g(Desmodur(登録商標)N3400の当量)]+0.4*[(0.2*234g)+(0.8*341g)]=321g。
【0142】
イソシアヌレート基含有化合物BS1の当量の計算:
BS1におけるシラン単位への転化率c':0mol%。
BS1におけるモノシランと反応したイソシアネート基のフラクションas'2:
(モノシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0
BS1におけるビスシランと反応したイソシアネート基のフラクションas'3:
(ビスシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0
イソシアヌレート基含有化合物BS1の当量:
[183g(Desmodur(登録商標)N3600の当量)]+0*[(0*234g)+(0*341g)]=183g
【0143】
イソシアヌレート基含有化合物BS2の当量の計算:
BS2におけるシラン単位への転化率c':40mol%。
BS2におけるモノシランと反応したイソシアネート基のフラクションas'2:
(モノシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0.2
BS2におけるビスシランと反応したイソシアネート基のフラクションas'3:
(ビスシランの量、mol%)/[全体のフラクション(モノシラン+ビスシラン)=100mol%]=0.8
イソシアヌレート基含有化合物BS2の当量:
[183g(Desmodur(登録商標)N3600の当量)]+0.4*[(0.2*234g)+(0.8*341g)]=311g
【0144】
硬化剤混合物H1(化合物B2、50質量部と化合物BS1、50質量部)の混合比の計算;B2の当量:BS1の当量=1.0:1.75
【数1】
【0145】
硬化剤混合物H2(化合物B2、50質量部と化合物BS2、50質量部)の混合比の計算;B2の当量:BS2の当量=1.0:1.03
【数2】
【0146】
本発明による被覆剤B3とB4の調製物と本発明による例3と4の被覆
記載された順番(上から下)で、表10に示された成分を適切な容器中で互いによく混合し、かつその直後に黒いベースコートで被覆したミラープレート上に被覆した(ベースコート乾燥:80℃で30分、10分間のフラッシュオフ時間)。引き続き、プレートをオーブン中60℃で30分間乾燥させた。得られた被覆を室温で24時間乾燥させ、かつBYK−Gardner社のWave Scan(登録商標)で測定した。試験結果は表11に記載されている。
【0147】
【表10】
【0148】
【表11】
【0149】
全ての被覆は、記載した乾燥後に指触乾燥していた(60℃で30分)。異なる光学実験条件下に生じる粘着性フィルムは、触媒の量を僅かに上げるか及び/又はより効果的な触媒により簡単に取り除くことができる。
【0150】
試験結果のまとめ:
従って、本発明による硬化剤混合物H1とH2では、高い固体含有量を有している場合でも目的とする40μmのフィルム厚で極めて良好な流動性を達成できる。更に、本発明による被覆剤は、修理塗装の条件下でさえも迅速な硬化が保証される。すなわち、被覆は60℃で30分間の乾燥後に指触乾燥していた。