(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950905
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】カメラ、とりわけ航空機からの航空写真を記録するためのカメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 37/00 20060101AFI20160630BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20160630BHJP
G03B 15/00 20060101ALI20160630BHJP
G02B 3/02 20060101ALI20160630BHJP
G01C 11/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
G03B37/00 A
H04N5/225 D
G03B15/00 W
G02B3/02
G01C11/00
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-508497(P2013-508497)
(86)(22)【出願日】2011年5月5日
(65)【公表番号】特表2013-532299(P2013-532299A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011057185
(87)【国際公開番号】WO2011138386
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】102010019805.6
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512287436
【氏名又は名称】ヘキサゴン テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hexagon Technology Center GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ティム
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェルツェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー シュトルト
(72)【発明者】
【氏名】イェアン ヒルデブラント
(72)【発明者】
【氏名】ディアク デーリング
【審査官】
辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−184240(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/152740(WO,A1)
【文献】
特開2008−078598(JP,A)
【文献】
特開2004−356175(JP,A)
【文献】
特開平06−013594(JP,A)
【文献】
特開2004−302095(JP,A)
【文献】
特開2004−335628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 37/00
G01C 11/00
G02B 3/02
G03B 15/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(7)、とりわけ航空機からの航空写真を記録するためのカメラ(7)であって、
レンズ(8)と、
支持体要素(2)に固定された所定の画素サイズを有する少なくとも1つのデジタル二次元画素センサ(1.4)とを有し、
前記デジタル二次元画素センサ(1.4)は、とりわけ支持体要素(2)上に固定されたことに起因する所定の許容範囲(Δl)内の湾曲(3)を有しているカメラ(7)において、
前記レンズ(8)が、前記デジタル二次元画素センサ(1.4)の湾曲(3)の光学的な補償を少なくとも部分的にもたらすように構成されており、
前記レンズ(8)の光学的な結像特性は、前記デジタル二次元画素センサ(1.4)の湾曲(3)の所定の許容範囲(Δl)に関連する所定のモデルに基づいて予め求められ、前記所定のモデルとして、モデル関数h=f(l)が適用されることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
観察光ビーム(9)が、前記デジタル二次元画素センサ(1.4)の画素サイズ内で、前記の補償によって少なくともほぼ鮮鋭に結像される、請求項1記載のカメラ。
【請求項3】
前記湾曲(3)の前記補償に対して、前記レンズ(8)の少なくとも1つの光学素子(8a)が相応の像歪みをもたらしている、請求項1または2記載のカメラ。
【請求項4】
前記デジタル二次元画素センサ(1.4)は、支持体要素(2)上に接着されている、請求項1から3いずれか1項記載のカメラ。
【請求項5】
前記デジタル二次元画素センサ(1.4)は、7.2μm以下の画素サイズを有している、請求項1から4いずれか1項記載のカメラ。
【請求項6】
前記デジタル二次元画素センサ(1.4)は、CCDセンサ又はCMOSセンサとして構成されている、請求項1から5いずれか1項記載のカメラ。
【請求項7】
前記支持体要素(2)は、ガラス、セラミック、又はプラスチックを含む、請求項1から6いずれか1項記載のカメラ。
【請求項8】
複数のカメラを備えた写真測量用カメラシステムにおいて、
前記複数のカメラのうちの少なくとも1つが請求項1から7いずれか1項記載のカメラ(7)であることを特徴とする写真測量用カメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、とりわけ航空機からの航空写真を記録するためのカメラであって、レンズと、支持体要素に固定され所定の画素サイズを有する少なくとも1つのデジタル二次元画像センサとを備え、前記画像センサは、特に支持体要素への固定によって引き起こされる、所定の許容範囲内で湾曲を有している、カメラに関している。
【背景技術】
【0002】
実際の現場において、デジタル画像センサ、とりわけCCD(charge coupled Device;電荷結合素子)タイプの画像センサは、市場での需要やコスト的な理由から、同じ大きさのもとで、ないしは、使用するシリコンの量を変えることなく、より微細な画素パターン、ないしはより小さな画素サイズを有することが絶えず求められている。例えば、140メガ画素以上の非常に大型のCCDセンサは既に製造されている。その結果として7.2μm以下、特に例えば5.6μm以下の画素サイズとなる。この要求は、所定の被写界深度のもとでの光の集束結像に対する要求も高める。
【0003】
ここで問題となるのは、CCDセンサのシリコンプレートが通常は支持体要素、例えばケーシングに、少なくとも接着剤によって接着されなければならないことである。接着剤は、シリコンプレートのすみの方がより強い接着力を発揮する。なぜならシリコン材料は2つのフォースベクトルを介して引っ張られるからである。それにより、シリコンプレートは測定可能な湾曲を生じる。
【0004】
図1には、35μmまでの湾曲3を有するシリコンないしCCDセンサ1.1からなる、デジタル二次元画像センサが示されている。このCCDセンサ1.1の種々の高さは、
図1中の当該画像センサ1.1の右隣に種々の陰影線でもって示されたスケールに応じて描写されている。CCDセンサ1.1の角の領域はゼロ地点とみなされ、そこからCCDセンサ1.1の中央に向けて35μmまでの厚みの湾曲3が存在している。この湾曲3は、CCDセンサ1.1を、ガラス、セラミック又はプラスチックからなり得る支持体要素2に接着する際に、以下のフォースベクトル、
をかけた結果として生じている。
【0005】
図2には、CCDセンサ1.2が示されており、このCCDセンサ1.2も支持体要素2に接着されている。
【0006】
製造プロセスにおいて、シリコンプレートないしCCDセンサ1.2がまだ接着されず、そのためまだ湾曲3を有していない状態のときには、個々の画素は、少なくとも小さな四角形若しくは矩形状の感光領域4とみなすことができる。これらの感光領域4は、格子5としてシリコンプレートないしCCDセンサ1.2の表面に配設される。
図2では、従来のレンズを用いても、湾曲3全体をカバーするのに十分な被写界深度が得られる。それにより光が個々の環境領域4に届いて鮮鋭な結像がなされ画像品質が損なわれることはない。このことは、
図2に概略的に示されているように個々の画素サイズが十分に大きいケースに当てはまり、光点6が個々の光ビームとして感光領域4内で鮮鋭に結像されている。
【0007】
図3には、さらに別のCCDセンサ1.3が示されており、このCCDセンサ1.3も、支持体要素2に接着されているが、感光領域4のサイズは、湾曲3全体で鮮鋭に結像するのには不十分な被写界深度しか得られない大きさである。すなわち、ここでは個々の光点6′がもはや鮮鋭には結像されず、光が周辺の隣接する感光領域4′内に入り込み、その結果画像品質はとりわけ解像度とコントラストに関して悪い影響を受ける。
【0008】
しかしながらこのようなCCDセンサ1.1〜1.3を、特に航空機からの航空写真の撮影に使うようなカメラに用いる場合には、わずかな画素サイズで大型のCCDセンサ1.1〜1.3であっても、良好な画像品質が保証されなければならない。
【0009】
そこで本発明の課題は、従来技術の欠点に鑑み、特に冒頭に述べたような種類のカメラにおいて、わずかな画素サイズで大型の画像センサのもとでも、十分な画像品質が保証されるように改善を行うことである。
【0010】
上記課題は本発明により、カメラ、特に航空機からの航空写真を記録するためのカメラであって、レンズと、支持体要素に固定された所定の画素サイズを有する少なくとも1つのデジタル二次元画素センサとを有し、前記デジタル二次元画素センサは、とりわけ支持体要素上に固定されたことに起因する所定の許容範囲内の湾曲を有しているカメラにおいて、前記レンズが、前記デジタル二次元画素センサの湾曲の光学的な補償を少なくとも部分的にもたらすように構成されて解決される。
【0011】
本発明の手段によれば、有利には、湾曲と、該湾曲に関連して悪化した画像品質とが、とりわけ僅かな画素サイズのもとでも、光学的に補償される。このことは、レンズないしは光学系の設計仕様によってもたらされる。これについては、光学系を相応に定めるためにも、製造の際にデジタル二次元画素センサの湾曲に対する許容範囲を設定した方がよい。この許容範囲は、製造過程においてできるだけ一定に維持されるべきである。
【0012】
特に有利には、観測される光ビームないし光が、前記補償によって、前記デジタル二次元画素センサの画素サイズ内ないしは画素構造内で少なくともほぼ鮮鋭に結像される。
【0013】
前記レンズの光学的な結像特性は、デジタル二次元画素センサの湾曲の所定の許容範囲に関連する所定のモデルに基づいて予め求めることが可能である。
【0014】
前記湾曲の補償に対しては、前記レンズの少なくとも1つの光学素子が相応の像歪みをもたらす。
【0015】
前記デジタル二次元画素センサは、支持体要素上に接着させることができ、有利には、7.2μm以下の画素サイズ、特に有利には5.6μm以下の画素サイズを有し得る。この場合、画素サイズと、レンズの結像点のサイズと、デジタル二次元画素センサの曲率との間で所定の関係が生じる。そのため画素サイズは必ずしも絶対的に定められるわけではない。
【0016】
前記デジタル二次元画素センサないしフレームセンサは、CCDセンサ、CMOSセンサ若しくはそれらに類似のセンサとして構成され得る。前記デジタル二次元画素センサの画素は、矩形状のマトリックス形態で配置されていてもよい。
【0017】
前記支持体要素は、ガラス、セラミック、又はプラスチックを含んでいてもよいし、それらから形成されていてもよい。
【0018】
請求項9には、複数のカメラを備えた写真測量用カメラシステムが開示されている。
【0019】
本発明の有利な構成例及び改善例は、従属請求項にも記載されている。
【0020】
以下では本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技法による支持体要素上に接着されたデジタル二次元画素センサの概略図
【
図2】従来技法による第1の画素サイズを有する接着されたCCD画素センサの概略図
【
図3】従来技法による第2の画素サイズを柚須売る接着されたCCD画素センサの概略図
【
図5】
図4の本発明によるカメラのCCD画素センサの概略的な断面図
【実施例】
【0022】
図4には本発明によるカメラ7,とりわけ航空機(図示せず)からの航空写真を記録するためのカメラ7が示されている。このカメラ7は、レンズ8と、支持体要素2上に接着された所定の画素サイズないし画素領域4′を有するデジタル二次元画素センサないしCCDセンサ1.4とを有している。また前記デジタル二次元画素センサ1.4は、支持体要素2に固定されたことに起因する所定の許容範囲内の湾曲3を有している。前記レンズ8は、前記CCDセンサ1.4の湾曲3の光学的補償を少なくとも部分的にもたらしている。破線9によって示されている観察光ビームの画素点ないし光点6は、感光領域ないし画素領域4′内では、前記補償によって少なくともほぼ鮮鋭に結像されている。湾曲3の補償に対しては、前記レンズ8の光学素子8aが相応の像歪みを有している。
【0023】
CCD画素センサ1.4は、支持体要素2に接着されている。有利な実施例によれば、このCCD画素センサ1.4は、7.2μm以下の画素サイズを有し、特に有利には5.6μm以下の画素サイズを有している。前記支持体要素2は、ガラス、セラミック又はプラスチックから形成されていてもよいし、この種の材料を含んでいてもよい。
【0024】
また前記カメラ7は、統合的な写真測量用カメラシステムの複数のカメラのうちの1つであってもよい。
【0025】
前記レンズ8の光学的結像特性は、所定のモデルに基づいて事前に求められる。それについては各CCD結像センサ1.4の表面測定が行われる。レンズ8の光学的結像特性は、この表面測定に基づいてCCD結像センサ1.4に整合される。さらに、CCD画像センサ1.4が大量生産において一定に維持される一般的な許容範囲Δ1が特定される。モデルは、CCDが層センサ1.4の湾曲の3の所定の許容範囲Δ1に関連している。より詳細な説明のために、
図5では、
図4のCCD画像センサ1.4のラインA−Bに沿った断面図が示されている。ここではモデル関数、h=f(1)の適用と、CCD画像センサ1.4の最大高さhmaxの特定と、許容範囲Δ1の特定とによって、CCD画像センサ1.4に対するレンズ8の光学的結像特性のマッチングが可能となる。前記許容範囲Δ1は、製造許容偏差と周辺環境の変化とを補償する。この場合は、CCD画像センサ1.4の表面ないし湾曲が前記許容範囲Δ1内で変化している限り、レンズ8の光学的設計仕様ないし光学的結像特性によって、光点6が感光領域ないし画素領域4′内に留まることが保証される。