(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】シリカナノ粒子を酸焼結することなく形成された比較実施例のプライマー層の透過電子顕微鏡写真。
【
図1B】酸焼結されたシリカナノ粒子を使用して形成された例示的なプライマー層の透過電子顕微鏡写真。
【0011】
[詳細な説明]
疎水性コーティングを有する物品を提供する。より具体的には、本物品は、基材と、酸焼結されたシリカナノ粒子のプライマー層と、プライマー層に共有結合される疎水性フッ素化層と、を含む。プライマー層は、基材と疎水性フッ素化層との間に位置付けられる。疎水性フッ素化層は、反応性シリル基及びフッ素化基(例えば、ペルフルオロ化基)の両方を含有するフッ素化シランから形成される。フッ素化シランは、プライマー層と疎水性フッ素化層との間に−Si−O−Si−結合の形成をもたらす、反応性シリル基と、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面との反応を通してプライマー層に共有結合される。
【0012】
プライマー層及び疎水性フッ素化層の組み合わせである疎水性コーティングは、摩擦及び/又は洗浄を繰り返し受けたときでも、非常に耐久性がある傾向がある。基材がフッ素化シランのシリル基と反応することができる基に欠けるため、従来フッ素化シランと共に使用されてこなかったものを含む、様々な基材が使用され得る。基材の表面は、プライマー層を用いた処理及びフッ素化シランとプライマー層との反応を通して、疎水性又はより疎水性になるように変化され得る。疎水性コーティングは、洗浄が容易、耐汚れ性、及び耐指紋性である表面を提供する傾向がある。
【0013】
端点による数範囲の引用は、いずれも、その範囲の端点、その範囲内の全ての数、並びに述べられた範囲内の任意のより狭い範囲を含むことを意味する。
【0014】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、1つ以上の記載された要素を意味する。
【0015】
用語「及び/又は」とは、一方又は両方を意味する。例えば、表現「A及び/又はB」は、A、B、又はAとBとの組み合わせを意味する。
【0016】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせである基を含む。アルキル基は通常、1〜30個の炭素原子を有する。一部の実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。
【0017】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。アルキレン基は、典型的には、1〜30個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、このアルキレン基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0018】
用語「アルキレンオキシ」は、アルキレン基に直接結合するオキシ基である二価の基を指す。
【0019】
用語「アルコキシ」は、アルキル基に直接結合するオキシ基を有する一価の基を指す。
【0020】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和、又は飽和であってもよい。アリール基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0021】
用語「アリーレン」は、芳香族かつ炭素環式である、二価の基を指す。アリーレンは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和、又は飽和であってもよい。アリーレン基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0022】
用語「アリールオキシ」は、アリール基に直接結合するオキシ基を有する一価の基を指す。
【0023】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基である一価の基を指す。アラルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。
【0024】
用語「アラルキルオキシ」は、アラルキル基に直接結合されるオキシ基を有する一価の基を指す。同等に、それは、アリール基で置換されたアルコキシ基であることが考慮され得る。
【0025】
用語「アラルキレン」は、アリーレン基に結合されるアリール基又はアルキレン基で置換されたアルキレン基である二価の基を指す。アラルキレン基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアラルキレン部分と、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有するアリール部分又はアリーレン部分とを有する。
【0026】
用語「アシルオキシ」は、R
bが、アルキル、アリール、又はアラルキルである式−O(CO)R
bの一価の基を指す。多くの場合、R
bに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
bに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。多くの場合、R
bに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。
【0027】
用語「連結ヘテロ原子」は、炭素鎖中の少なくとも1個の炭素原子を置換するヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、又は窒素)を指す。例えば、エーテル基は、カテナリー酸素原子のそれぞれの側に少なくとも1個の炭素原子を有する1個のカテナリー酸素原子を含有し、ポリエーテル基は、2つ以上のカテナリー酸素原子のそれぞれの側に炭素原子を有する2つ以上のカテナリー酸素原子を含有する。
【0028】
用語「カルボニル」は、炭素原子が二重結合で酸素に結合される式−(CO)−の二価の基を意味する。
【0029】
用語「カルボニルイミノ」は、R
aが、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである式−(CO)NR
a−の二価の基を意味する。多くの場合、R
aに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。カルボニルイミノ基は、互換的にイミノカルボニル基とも称されてもよい。この基は、時折、アミド基とも称される。
【0030】
用語「カルボニルオキシ」は、式−(CO)O−の二価の基を意味する。カルボニルオキシ基は、互換的にオキシカルボニル基と称されてもよい。
【0031】
用語「ハロ」は、フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ等のハロゲン原子を指す。ハロ基は、反応性シリルの一部であるとき、多くの場合、クロロである。
【0032】
用語「イミノカルボニルイミノ」は、R
aが、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである式−R
aN−(CO)−NR
a−の二価の基を指す。多くの場合、R
aに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。この基は、時折、ウレイレン基と称される。
【0033】
用語「オキシカルボニルオキシ」は、式−O(CO)O−の二価の基を指す。この基は、時折、カーボネート基と称される。
【0034】
用語「オキシカルボニルイミノ」は、R
aが、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである式−O−(CO)−NR
a−の二価の基を指す。多くの場合、R
aに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。この基は、互換的にイミノカルボニルオキシ基と称されてもよい。
【0035】
用語メチンは、式
【化1】
の三価の炭素基を指す。
【0036】
メチン基は、水素以外の3つの基に結合され、多くの場合、分子鎖の分岐点として機能する。
【0037】
用語「フッ素化」は、炭素原子に結合される少なくとも1個のフッ素原子を含有する基又は化合物を指す。炭素−水素結合がないペルフルオロ化基は、フッ素化基のサブセットである。
【0038】
用語「ペルフルオロ化基」は、全てのC−H結合がC−F結合で置換された基を指す。例としては、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロエーテル、又はペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカルが挙げられる。
【0039】
用語「ペルフルオロエーテル」は、C−H結合の全てがC−F結合で置換されるエーテルを指す。それは、酸素原子と連結された2つのペルフルオロ化基(例えば、ペルフルオロアルキレン及び/又はペルフルオロアルキル)を有する基又は化合物を指す。つまり、単一の連結された酸素原子が存在する。ペルフルオロ化基は、飽和又は不飽和であってもよく、直鎖、分枝鎖、環式、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
用語「ペルフルオロポリエーテル」は、C−H結合の全てがC−F結合で置換されるポリエーテルを指す。それは、酸素原子と連結された3つ以上のペルフルオロ化基(例えば、ペルフルオロアルキレン及び/又はペルフルオロアルキル)を有する基又は化合物を指す。つまり、2つ以上の連結された酸素原子が存在する。ペルフルオロ化基は、飽和又は不飽和であってもよく、直鎖、分枝鎖、環式、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0041】
用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキルを指す。つまり、C−H結合の全てがC−F結合で置換される。
【0042】
用語「ペルフルオロアルカン」は、全てのC−H結合がC−F結合で置換されたアルカンを指す。
【0043】
用語「ペルフルオロアルキレン」は、C−H結合の全てがC−F結合と置換されたアルキレンを指す。
【0044】
用語「ペルフルオロアルキレンオキシ」は、C−H結合の全てがC−F結合で置換されたアルキレンオキシ基を指す。同様に、用語「ポリ(ペルフルオロアルキレンオキシ)」は、複数のペルフルオロアルキレンオキシ基を含有する二価の基を指す。
【0045】
用語「ペルフルオロアルコキシ」は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたアルコキシ基を指す。C−H結合の全てがC−F結合で置換される。
【0046】
用語「四級窒素」は、4つの基に結合し、正電荷を有する四価の窒素を指す。正に帯電している四級窒素基は、対イオン(アニオン)をそれと結合させた。
【0047】
用語「シリル」は、R
cが、ヒドロキシル、加水分解性基、又は非加水分解性基である式−Si(R
c)
3の一価の基を指す。多くの実施形態では、シリル基は、「反応性シリル」基であり、これは、シリル基がヒドロキシル基又は加水分解性基である少なくとも1つのR
c基を含有することを意味する。幾つかの反応性シリル基は、基R
2が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、基R
3が、それぞれ独立して、非加水分解性基である式−Si(R
2)
3−x(R
3)
xのものである。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。
【0048】
用語「加水分解性基」は、大気圧下で1〜10のpHを有する水と反応することができる基を指す。加水分解性基は、多くの場合、それが反応するとき、ヒドロキシル基に変換される。ヒドロキシル基は、多くの場合、更に反応を受ける。典型的な加水分解性基は、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシルオキシ、又はハロを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、本用語は、多くの場合、シリル基中のケイ素原子に結合された1つ以上の基に関して使用される。
【0049】
用語「非加水分解性基」は、大気圧の条件下で1〜10のpHを有する水と反応することができない基を指す。典型的な非加水分解性基は、アルキル、アリール、及びアラルキルを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、本用語は、多くの場合、シリル基中のケイ素原子に結合された1つ以上の基に関して使用される。
【0050】
用語「スルフィニル」は、式−SO−の二価の基を意味する。
【0051】
用語「スルホニル」は、式−SO
2−の二価の基を意味する。
【0052】
用語「スルホニルイミノ」は、R
aが、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである式−SO
2N(R
a)−の二価の基を意味する。多くの場合、R
aに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子を有する。多くの場合、R
aに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。用語スルホニルイミノは、互換的にイミノスルホニル基と称されてもよい。この用語は、時折、スルホンアミド基と称される。
【0053】
用語「チオ」は、式−S−の二価の基を意味する。
【0054】
用語「三級窒素」は、水素ではない3つの基に結合される窒素原子を指す。三級窒素は、多くの場合、分子鎖の分岐点として機能し、通常、3つの炭素原子に結合される。
【0055】
用語「フッ素化層」及び「疎水性フッ素化層」は、互換的に使用され、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面を、疎水性フッ素化基などの反応性シリル基及び疎水性ペルフルオロ化基を有するフッ素化シラン化合物と反応させることによりプライマー層に結合される疎水性層を指す。
【0056】
第1の態様では、(a)基材と、(b)基材の表面に結合されるプライマー層と、(c)プライマー層に結合される疎水性フッ素化層と、を含む物品を提供する。プライマー層は、基材と疎水性フッ素化層との間に位置付けられる。プライマー層は、連続する3次元多孔質ネットワークを形成するように配置された複数の酸焼結されたシリカナノ粒子を含有する。疎水性フッ素化層は、フッ素化シランと、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面との反応生成物を含有する。フッ素化シランは、反応性シリル基及びフッ素化基の両方を含有する。
【0057】
物品は、プライマー層及び疎水性フッ素化層の組み合わせ使用によって生じる疎水性表面(即ちコーティング)を有する。耐久性のあるそのようなコーティング(例えば、摩擦及び/又は洗浄の繰り返しに耐えることができるコーティング)を提供することは、当該技術分野において困難であった。酸焼結されたシリカナノ粒子を含有するプライマー層を使用することにより、フッ素化層は、様々な基材材料に間接的に結合され得る。プライマー層は、低温で(例えば、室温で、又は室温付近で)接合して3次元ネットワークになり、酸の存在下で焼結する複数のシリカナノ粒子を含有する。プライマー層は、典型的に、様々な基材表面に耐久的に密着する。フッ素化層は、典型的に、プライマー層に耐久的に密着し、フッ素化シランとプライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子との間の化学反応によって生じる。つまり、フッ素化シランは、−Si−O−Si−基を通してプライマー層に共有結合する。
【0058】
疎水性フッ素化層と基材との間にプライマー層を使用することにより、フッ素化シランが基材に直接適用される場合には耐久性のあるコーティングを形成しない多くの基材の使用が可能になる。より具体的には、疎水性フッ素化層を形成するために使用されるフッ素化シラン化合物と反応することができるヒドロキシル基を有さない基材を使用することができる。これは、典型的にフッ素化シランに基づくコーティング組成物を用いた使用に好適であると考えられてきた基材表面(即ち、基材がフッ素化シランのシリル基と反応することができる基に欠ける)より広範な基材の使用を可能にする。
【0059】
好適な基材は、可撓性若しくは剛性、不透明若しくは透明、反射性若しくは非反射性、並びに任意の所望する大きさ及び形状であってもよい。基材は、ポリマー材料、ガラス若しくはセラミック材料、金属、複合材料(例えば、無機材料を伴うポリマー材料)等である表面を有することができる。基材は、シート、フィルム、成形品、又は他の種類の表面であってもよい。
【0060】
基材に好適なポリマー材料は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート又は様々な(メタ)アクリレートのコポリマー)、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシポリマー(例えば、ホモポリマー又はポリジアミン又はポリジチオールを伴うエポキシ付加ポリマー)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びそのコポリマー又はポリプロピレン及びそのコポリマー)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、セルロース材料、それらの誘導体等を含むが、これらに限定されない。透過率の増加が所望される幾つかの実施形態では、ポリマー基材は、透明であってもよい。用語「透明」は、可視スペクトル(400〜700ナノメートルの範囲の波長)で少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の入射光を透過することを意味する。透明な基材は、有色であっても無色であってもよい。
【0061】
好適な金属は、例えば、純金属、金属合金、金属酸化物、及び他の金属化合物を含む。金属の例としては、クロム、鉄、アルミニウム、銀、金、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、スズ、鋼(例えば、ステンレス鋼又は炭素鋼)、真鍮、それらの酸化物、それらの合金、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
幾つかの実施形態では、基材は疎水性である。用語「疎水性の」及び「疎水性」は、水又は水性溶液の液滴が少なくとも50°、少なくとも60°、少なくとも70°、少なくとも90°、又は少なくとも100°の静的水接触角を示す表面を指す。プライマー層及び/又はフッ素化層は、基材の疎水性を更に強化してもよい。多くの実施形態では、基材の疎水性は、プライマー層及び/又は疎水性フッ素化層によって更に強化される。
【0063】
プライマー層は、基材表面に適用される。プライマー層は、酸焼結されたシリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む。用語「ナノ粒子」は、大きさがサブミクロンであるシリカ粒子を指す。ナノ粒子は、典型的に、粒子の最大寸法の平均、つまり、500ナノメートル以下、200ナノメートル以下、100ナノメートル以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、25ナノメートル以下、又は20ナノメートル以下を典型的に指す、平均粒度を有する。
【0064】
平均粒度は、多くの場合、透過型電子顕微鏡を使用して決定されるが、様々な光散乱法も使用することができる。平均粒度は、プライマー層コーティングを形成するために使用される一級シリカナノ粒子の平均粒度を指す。平均粒度は、典型的に、非凝集及び/若しくは非凝結並びに/又は非焼結された単一のシリカのナノ粒子の平均寸法を指す。つまり、平均粒度は、酸性条件下で焼結する前の一級シリカナノ粒子の平均粒度を指す。
【0065】
プライマー層のシリカナノ粒子は、酸焼結される。多孔質ネットワークの少なくとも幾つかの隣接するナノ粒子は、それらを一緒に接合するシリカ「ネック」等の結合を有する傾向がある。これらのシリカネックは、典型的に、シリカナノ粒子の酸性化によって形成される。つまり、少なくとも幾つかの隣接するシリカナノ粒子は、一緒に接合して、3次元多孔質ネットワークを形成する傾向がある。
図1Bは、プライマー層の一例である透過電子顕微鏡写真である。単に焼結されたシリカナノ粒子の鎖であるヒュームドシリカ粒子と異なり、酸焼結されたプライマー層は、層を形成するように配置され得る焼結されたナノ粒子の連続するネットワークである。ヒュームドシリカの鎖は、一緒に連結されず、ポリマー結合剤等の結合剤との組み合わせによって層を形成するためだけに使用され得る。逆に、酸焼結されたシリカナノ粒子のプライマー層は、典型的に、有機結合剤を含まない。更に、ヒュームドシリカ粒子は、300℃を超える、400℃を超える、又は500℃を超える温度等の、比較的高温で形成される。逆に、酸焼結されたプライマー層は、酸の存在下、室温で又は室温付近等の比較的低温でシリカナノ粒子を焼結することによって形成される。
【0066】
用語「多孔質」は、連続するプライマー層コーティング内の個別のシリカナノ粒子間の空隙の存在を指す。好ましくは、ネットワークは、乾燥したとき、20〜50体積%、25〜45体積%、又は30〜40体積%の多孔性を有する。幾つかの実施形態では、多孔性はより高くてもよい。多孔性は、W.L.Bragg,A.B.Pippard、Acta Crystallographica,volume 6,page 865(1953)などに公表されている手順に従って、コーティングの屈折率から算出できる。多孔性は、表面の粗度と相関する傾向がある。意外にも、多孔性は、表面の疎水性とも相関する傾向がある。つまり、表面の粗度の増加は、疎水性の増加をもたらす傾向がある。表面の多孔性は、多くの場合、より大きい平均粒度のシリカナノ粒子を使用することにより、又は異なる形状のシリカナノ粒子の混合物を使用することにより増加し得る。
【0067】
用語「ネットワーク」は、シリカナノ粒子を一緒に連結することによって形成された連続する3次元構造を指す。用語「連続する」は、個別のシリカナノ粒子がプライマー層コーティングの次元にわたって連結されることを意味する。プライマー層は、典型的に、プライマー層コーティング組成物が基材に適用される領域に実質的に不連続又は隙間がない。
【0068】
プライマー層コーティング組成物を調製するために使用される一級シリカナノ粒子は、任意の所望の形状又は形状の混合物を有することができる。シリカナノ粒子は、任意の所望の縦横比を有する球状又は非球状(即ち針状)であってもよい。縦横比は、ナノ粒子の最大寸法の平均に対する針状シリカナノ粒子の最小寸法の平均の比を指す。針状シリカナノ粒子の縦横比は、多くの場合、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、又は少なくとも10:1である。幾つかの針状ナノ粒子は、棒、楕円、針等の形状である。ナノ粒子の形状は、規則的又は不規則であってもよい。コーティングの多孔性は、組成物中の規則的及び不規則な形状のナノ粒子の量を変更することによって、かつ/又は組成物中の球状及び針状のナノ粒子の量を変更することによって変動し得る。
【0069】
シリカナノ粒子が球状である場合、平均直径は、多くの場合、50ナノメートル未満、40ナノメートル未満、25ナノメートル未満、又は20ナノメートル未満である。幾つかのナノ粒子は、10ナノメートル未満又は5ナノメートル未満等の、更に小さい平均直径を有することができる。
【0070】
シリカナノ粒子が針状である場合、それらは、多くの場合、少なくとも1ナノメートル、少なくとも2ナノメートル、又は少なくとも5ナノメートルに等しい平均幅(最小寸法)を有する。針状シリカナノ粒子の平均幅は、多くの場合、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下である。針状シリカナノ粒子は、動的光散乱法によって測定される、例えば、少なくとも40ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも75ナノメートル、又は少なくとも100ナノメートルである平均長D
1を有することができる。平均長D
1(例えば、より長い寸法)は、最大200ナノメートル、最大400ナノメートル、又は最大500ナノメートルであってもよい。針状コロイド状シリカ粒子は、米国特許第5,221,497号(Watanabeら)に記載されるように、5〜30の範囲の伸び率D
1/D
2を有してもよく、D
2は、方程式D
2=2720/Sによって計算されるナノメートルでの直径を意味し、Sは、1グラム当り1平方メートル(m
2/グラム)でのナノ粒子の比表面積を意味する。
【0071】
多くの実施形態では、シリカナノ粒子は、少なくとも150m
2/グラム、少なくとも200m
2/グラム、少なくとも250m
2/グラム、少なくとも300m
2/グラム、又は少なくとも400m
2/グラムに等しい平均比表面積を有するように選択される。少なくとも150m
2/グラムに等しい平均比表面積を有する球状ナノ粒子は、多くの場合、40ナノメートル未満、30ナノメートル未満、25ナノメートル未満、又は20ナノメートル未満の平均直径を有する。
【0072】
特定の実施形態では、シリカナノ粒子は、好ましくは、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、又は25ナノメートル以下である平均粒度(即ち、最大寸法)を有する。所望する場合、より大きいシリカナノ粒子は、選択された基材上のプライマー層コーティング組成物のコーティング性を有害に減少させない、得られるプライマー層コーティングの所望の透過率を減少させない、及び/又は得られるプライマー層コーティングの所望の疎水性を減少させない、限られた量で添加される。よって、様々な大きさ及び/又は様々な形状の粒子を組み合わせて使用され得る。
【0073】
特定の実施形態では、粒径の二峰性分布を使用してもよい。例えば、少なくとも50ナノメートル(例えば、50〜200ナノメートルの範囲又は50〜100ナノメートルの範囲)の平均粒度を有するナノ粒子が、40ナノメートル以下の平均直径を有するナノ粒子と組み合わせて使用され得る。より大きいナノ粒子に対するより小さいナノ粒子の重量比は、2:98〜98:2の範囲、5:95〜95:5の範囲、10:90〜90:10の範囲、又は20:80〜80:20の範囲であってもよい。
【0074】
一般に、プライマー層コーティング組成物中のシリカナノ粒子の総重量(大きさに関わらず)は、プライマー層コーティング組成物の総重量に基づき、少なくとも0.1重量%である。例えば、プライマー層コーティング組成物は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%のシリカナノ粒子を含むことができる。プライマー層コーティング組成物は、多くの場合、最大40重量%、最大30重量%、最大25重量%、最大20重量%、又は最大10重量%のシリカナノ粒子を含有する。プライマー層コーティング組成物中のシリカナノ粒子の量は、例えば、0.1〜40重量%の範囲、1〜40重量%の範囲、1〜25重量%の範囲、1〜20重量%の範囲、5〜20重量%の範囲、1〜10重量%の範囲、5〜10重量%の範囲、又は1〜7重量%の範囲であってもよい。プライマー層コーティング組成物の幾つかの実施例では、異なる大きさのナノ粒子の混合物が使用され得る。例えば、プライマー層コーティング組成物は、40ナノメートル以下の平均粒度を有する0.1〜20重量%のシリカナノ粒子、及び50ナノメートル以上の平均粒度を有する0〜20重量%のシリカナノ粒子を含むことができる。量は、プライマー層コーティング組成物の総重量に基づく。
【0075】
シリカナノ粒子は、典型的に、シリカゾルの形態で商業的に入手可能である。幾つかの例示的な球状シリカナノ粒子は、E.I.DuPont de Nemours andCo.,Inc.(Wilmington,DE)からLUDOX(例えばLUDOX SM)の商標表記で市販されているもの等の、水性系シリカゾルの形態で入手可能である。他の例示的な水性系シリカゾルは、Nyacol Co.(Ashland,MA)からNYACOLの商標表記で市販されている。更に他の例示的な水性系シリカゾルは、Ondea Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)からNALCO(例えば、NALCO 1115、NALCO 2326、及びNALCO 1130)の商標表記で市販されている。また他の例示的な水性シリカゾルは、Remet Corporation(Utica,NY)からREMASOL(例えば、REMASOL SP30)の商標表記で市販されている、及びSilco International(Portland,OR)からSILCO(例えば、SILCO LI−518)の商標表記で市販されている。
【0076】
好適な非球状(即ち、針状)シリカナノ粒子は、Nissan Chemical Industries(Tokyo,Japan)から商品名SNOWTEXとして水性系シリカゾルの形態で入手することができる。例えば、SNOWTEX−UPは、長さが40〜300ナノメートルの範囲の約9〜15ナノメートルの範囲の直径を有するシリカナノ粒子を含有する。SNOWTEX−PS−S及びSNOWTEX−PS−Mは、ビーズ形態の鎖を有する。SNOWTEX−PS−Mの粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、長さ80〜150ナノメートルである。SNOWTEX−PS−Sは、粒径10〜15nm、長さ80〜120ナノメートルである。
【0077】
市販の水性系シリカゾルを希釈するために、水又は水混和性有機溶媒のいずれかが使用され得る。しかしながら、ナトリウム安定化シリカナノ粒子のゾルは、通常、水又はエタノール等の水混和性有機溶媒で希釈する前に酸性化される。酸性化前の希釈は、不良又は不均一なプライマー層コーティングをもたらす場合がある。アンモニウム安定化シリカナノ粒子は、一般的に、どのような順序で希釈及び酸性化してもよい。
【0078】
プライマー層コーティング組成物は、3.5未満又はそれに等しいpKa(H
2O)を有する酸を含有する。4を超えるpKa(例えば、酢酸)を有するもの等の弱酸性の使用は、典型的に、望ましい透過率及び/又は耐久性を有する均一なコーティングをもたらさない。具体的には、酢酸等の弱酸を含むコーティング組成物は、典型的には、基材の表面上でビーズ状になる。コーティング組成物に添加される酸のpKaは、多くの場合、3未満、2.5未満、2未満、1.5未満、又は1未満である。プライマー層コーティング組成物のpHを調節するために使用され得る有用な酸は、有機酸及び無機酸の両方を含む。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、H
2SO
3、H
3PO
4、CF
3CO
2H、HCl、HBr、HI、HBrO
3、HNO
3、HClO
4、H
2SO
4、CH
3SO
3H、CF
3SO
3H、CF
3CO
2H、及びCH
3SO
2OHが挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態では、酸は、HCl、HNO
3、H
2SO
4、又はH
3PO
4である。幾つかの実施形態では、有機酸及び無機酸の混合物を提供することが望ましい。市販の酸性シリカゾルが使用される場合、上記に列挙される酸のうちの1つを添加することにより、典型的に、所望の均一性を有するプライマー層が得られる。
【0079】
コーティング組成物は、一般に、5以下のpHをもたらすのに十分な酸を含有する。pHは、多くの場合、4.5以下、4以下、3.5以下、又は3以下である。例えば、pHは、多くの場合、2〜5の範囲である。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、最初にpHを5未満に減少させた後に、5〜6の範囲のpHに調節され得る。このpHの調節は、pH感応基材のコーティングを可能にする。
【0080】
通常、酸性化シリカナノ粒子を含有するプライマー層コーティング組成物を、基材の表面に適用し、その後乾燥させる。多くの実施形態では、プライマー層コーティング組成物は、(a)40ナノメートル以下の平均粒径(即ち、酸焼結される前の平均粒径)を有するシリカナノ粒子、及び(b)3.5未満又はそれと等しいpKa(H
2O)を有する酸、を含有する。プライマー層コーティング組成物のpHは、2〜5のpH範囲等の、5未満又はそれと等しいpHである。
【0081】
酸性化シリカナノ粒子は、pHが2〜4の範囲であるとき安定であるように思われる。光散乱測定は、2〜3の範囲のpH、10重量%シリカナノ粒子の濃度の酸性化シリカナノ粒子が1週間以上又は1ヶ月以上の間同じ大きさを維持できることを示した。そのような酸性化プライマー層コーティング組成物は、シリカナノ粒子の濃度が10重量%より低い場合、更に長く安定を保つと予想される。
【0082】
プライマー層コーティング組成物は、典型的に、水又は水の混合物に加え、水混和性有機溶媒を更に含む。好適な水混和性有機溶媒は、様々なアルコール(例えば、エタノール又はイソプロパノール)及びグリコール(例えば、プロピレングリコール)、エーテル(例えば、プロピレングリコールメチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン)、並びにエステル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含むが、これらに限定されない。プライマー層コーティング組成物に含まれるシリカナノ粒子は、典型的に、表面変性されない。
【0083】
幾つかの実施形態では、複数の反応性シリル基を含有する任意のシランカップリング剤が、プライマー層コーティング組成物に添加され得る。カップリング剤の幾つかの例としては、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS))及びアルキルポリケイ酸塩(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン)等のテトラアルコキシシランのオリゴマー形態が挙げられるが、これらに限定されない。これらのカップリング剤は、少なくとも幾つかの実施形態では、シリカナノ粒子間の結合を改善する。カップリング剤は、添加される場合、典型的に、コーティング組成物中のシリカナノ粒子の重量に基づき、0.1〜30重量%のレベルでプライマー層コーティング組成物に添加される。幾つかの実施例では、カップリング剤は、シリカナノ粒子の重量に基づき、0.1〜25重量%の範囲、1〜25重量%の範囲、5〜25重量%の範囲、10〜25重量%の範囲、0.1〜20重量%の範囲、1〜20重量%の範囲、1〜15重量%の範囲、1〜10重量%の範囲、又は1〜5重量%の範囲の量で存在する。しかしながら、他の実施例では、プライマー層コーティング組成物は、カップリング剤を含まない。
【0084】
多くのプライマー層コーティング組成物は、カップリング剤以外の他の種類の結合剤を含有しない。つまり、多くのプライマー層コーティング組成物は、典型的なポリマー結合剤を含有しない。
【0085】
プライマー層コーティング組成物は、任意の基材に直接適用され得る。基材は、有機材料(例えば、ポリマー)又は無機材料(例えば、ガラス、セラミック、又は金属)であってもよい。多くの実施形態では、基材は疎水性である。疎水性表面(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネート(PC)等の疎水性ポリマー基材)上のプライマー層コーティング組成物の湿潤特性は、プライマー層コーティング組成物のpH、及びpHを調節するために使用される酸のpKaの機能である。コーティング組成物は、2〜5の範囲のpHに酸性化されるとき、例えば、疎水性基材に適用され得る。逆に、中性又は塩基性pHの類似するプライマー層コーティング組成物は、疎水性基材上でビーズ状になる傾向がある。
【0086】
プライマー層は、酸焼結されたシリカナノ粒子の連続するネットワークである。プライマー層コーティング組成物は、基材表面に適用されるとき、ゾルである。プライマー層コーティング組成物が基材に適用された後、ゾルが乾燥するとゲル化材料が形成され、シリカナノ粒子が焼結して、連続するネットワークを形成する。顕微鏡写真は、シランカップリング剤等の他のケイ素含有材料の不在下でも酸によって作製される隣接するナノ粒子間でのシリカ「ネック」の形成を明らかにする。これらのネックの形成は、シロキサン結合の作製及び破壊における強酸の触媒作用によって生じる。
【0087】
プライマー層コーティング組成物を、疎水性基材等の基材上に均一に適用するために、基材表面の表面エネルギーを増加させ、かつ/又はプライマー層コーティング組成物の表面張力を減少させることが任意に望ましあり得る。基材表面の表面エネルギーは、コロナ放電又は火炎処理法等の方法を使用してコーティングする前に基材表面を酸化させることにより増加させることができる。これらの方法は、プライマー層コーティング組成物の基材への付着も改善してもよい。基材の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティング等の追加のプライマー層の使用が挙げられる。別の方法としては、プライマー層コーティング組成物の表面張力は、低級アルコール(例えば、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコール)の添加により減少させることができる。
【0088】
しかしながら、幾つかの場合では、所望の特性のコーティング疎水性を改善するために、及び水性又は水性系媒質(例えば、水/アルコール媒質)から物品の均一なコーティングを確実にするために、典型的に界面活性剤である湿潤剤をプライマー層コーティング組成物に添加することが有益であってもよい。界面活性剤は、親水性(極性)及び疎水性(非極性)領域の両方を有し、かつプライマー層コーティング組成物の表面張力を減少させることができる分子である。有用な界面活性剤は、例えば、米国特許第6,040,053号(Scholzら)に開示されるものを含んでもよい。所望する場合、界面活性剤は、典型的に、プライマー層コーティング組成物の総重量に基づき、最大5重量%の量で存在する。例えば、量は、最大4重量%、最大2重量%、又は最大1重量%であってもよい。界面活性剤は、典型的に、少なくとも0.001重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%に等しい量で存在する。
【0089】
プライマー層コーティング組成物に使用される幾つかの界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。有用なアニオン性界面活性剤は、多くの場合、(1)C
6〜C
20アルキル基、アルキルアリール基、及び/若しくはアルケニル基等の少なくとも1つの疎水基、(2)硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、ポリオキシエチレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩等の少なくとも1つのアニオン性基、並びに/又はそのようなアニオン性基の塩類を有する分子構造を有する。好適な塩類は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、三級アミノ塩等を含む。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な市販例としては、ラウリル硫酸ナトリウム(例えば、Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商品名TEXAPON L−100で、及びStepan Chemical Co(Northfield,IL)から商品名POLYSTEP B−3で入手可能)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(例えば、Stepan Chemical Co.(Northfield,IL)から商品名POLYSTEP B−12で入手可能)、ラウリル硫酸アンモニウム(Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商品名STANDAPOL Aで入手可能)、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhone−Poulenc,Inc.(Cranberry,NJ)から商品名SIPONATE DS−10で入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
プライマー層コーティング組成物に使用するための他の有用な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤は、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(例えば、ICI Americas,Inc.(Wilmington,DE)から商品名BRIJ 30及びBRIJ 35で、並びにDow Chemical(Midland,MI)から商品名TERGITOL TMN−6で入手可能)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(例えば、Roche(Mannheim,Germany)から商品名TRITON X−100で、及びBASF Corp.(Florham Park,NJ)からICONOL NP−70で入手可能)、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(例えば、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から商品名TETRONIC 1502、TETRONIC 908、及びPLURONIC F38で入手可能)を含むが、これらに限定されない。
【0091】
プライマー層コーティング組成物は、典型的に、例えば、棒コーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、輪転グラビア印刷コーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、又はディップコーティング法等の従来の技法を使用して、基材の表面に適用される。棒コーティング、ロールコーティング、及びナイフコーティング等のコーティング法は、多くの場合、プライマー層コーティング組成物の厚さを調節するために使用される。プライマー層コーティング組成物は、基材の1つ以上の側面にコーティングされ得る。
【0092】
プライマー層の最適な平均乾燥コーティング厚は、使用される特定のプライマー層コーティング組成物に依存する。一般に、乾燥プライマー層コーティングの平均厚は、100〜10,000オングストローム(Å)の範囲、500〜2500Åの範囲、750〜2000Åの範囲、又は1000〜1500Åの範囲である。厚さは、Gaertner Scientific Corp.のモデル番号L115C等の楕円偏光計を使用して測定され得る。実際のコーティング厚は、ある特定の点から別の点までかなり変動する場合があるが、多くの場合、基材の表面にわたって均一にプライマー層コーティング組成物を適用することが望ましい。例えば、コーティングの可視的な干渉色のバラツキを最小にするために、基材にわたってコーティング厚の平均を200Å内、150Å内、又は100Å内に制御することが望ましい場合がある。
【0093】
コーティングされたプライマー層コーティング組成物を基材に適用したら、典型的に、20℃〜150℃の範囲の温度で乾燥させる。多くの場合、空気又は窒素等の不活性ガスを循環させたオーブンが、乾燥プロセスに使用される。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてもよいが、基材への損傷を避けるために注意を払うべきである。無機基材に対して、乾燥温度は200℃超であってよい。
【0094】
本明細書で使用される、「乾燥プライマー層」は、乾燥プロセス後に残るプライマー層を指す。乾燥プライマー層は、プライマー層の、プライマー層の環境に存在する空中の水分との平衡と典型的に関連する水の量等の、ある程度の水を含有する。この水の平衡量は、典型的に、乾燥プライマー層の総重量に基づき、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下である。
【0095】
プライマー層は、典型的に、乾燥プライマー層の総重量に基づき、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%のシリカナノ粒子を含有する。乾燥プライマー層は、乾燥プライマー層の総重量に基づき、最大90重量%、最大95重量%、又は最大99%以上のシリカナノ粒子を含有することができる。例えば、乾燥プライマー層は、60〜99重量%を超える、60〜95重量%、60〜90重量%、70〜99重量%、70〜95重量%、75〜99重量%、85〜99%、85〜95重量%、80〜99重量%、又は85〜95重量%のシリカナノ粒子を含有することができる。
【0096】
幾つかの使用において、光透過を最大にすること(即ち、反射を最小にする、又は排除する)、及び基材による反射を最小にすることが望ましい場合がある。つまり、プライマー層は、反射防止性層として機能することができる。これは、プライマー層の屈折率をできる限り基材の屈折率の平方根と近づけることにより、及び入射光の光学波長の4分の1(1/4)に等しいプライマー層厚を提供することにより、達成され得る。コーティング中の空隙は、屈折率(RI)が空気の屈折率(RIは1に等しい)からシリカナノ粒子の屈折率(RIは1.44に等しい)に突然変化した場合、シリカナノ粒子間に多様なサブ波長の隙間をもたらす。多孔性を調節することにより、プライマー層の屈折率は、米国特許第4,816,333号(Langeら)に記載されるように調節され得る。所望する場合、多孔性は、基材の屈折率の平方根に非常に近い屈折率を有するプライマー層を提供するように調節され得る。
【0097】
25〜45体積%の範囲又は30〜40体積%の範囲の多孔性の乾燥プライマー層は、多くの場合、1.2〜1.4の範囲又は1.25〜1.36の範囲の屈折率を有する。屈折率がこれらの範囲のうちの1つにある場合、ポリエステル基材、ポリカーボネート基材、又はポリ(メチルメタクリレート)基材の屈折率の平方根にほぼ等しい傾向がある。例えば、1.25〜1.36の屈折率を有するプライマー層コーティングは、ポリエチレンテレフタレート基材(RIは1.64に等しい)上に1000〜2000Åの厚さでコーティングされるとき、反射防止性表面を提供することができる。反射防止が必要なコーティング特徴ではない場合、任意の所望の厚さが使用され得る。例えば、プライマー層は、最大数マイクロメートル又はミル(即ち、1ミルは0.001インチに等しい(0.025mmは0.0025cmに等しい))の厚さを有することができる。プライマー層の機械特性は、多くの場合、厚さが増加すると改善される。
【0098】
基材及びプライマー層に加え、物品は、プライマー層に結合される疎水性フッ素化層を含有する。より具体的には、疎水性フッ素化層は、フッ素化シランと、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面との反応生成物を含有する。フッ素化シランは、疎水性フッ素化基等の反応性シリル基、及び疎水性ペルフルオロ化基の両方を含有する。反応性シリル基は、酸焼結されたシリカナノ粒子と反応することができる少なくとも1つのヒドロキシル基又は加水分解性基を有する。
【0099】
多くの実施形態では、物品のフッ素化層を形成するために使用されるフッ素化シランは、式(I)のものである。
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
z
(I)
【0100】
式(I)において、基R
fは、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカン(即ち、R
fは、(a)ペルフルオロエーテルの一価又は二価のラジカル、(b)ペルフルオロポリエーテルの一価又は二価のラジカル、又は(c)ペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカル)のz価のラジカルである。基Qは、単結合、二価の連結基、又は三価の連結基である。基R
1は、それぞれ独立して、水素又はアルキルである。基R
2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。基R
3は、それぞれ独立して、非加水分解性基である。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。変数yは、1又は2に等しい整数である。変数zは、1又は2に等しい整数である。
【0101】
基R
fは、ポリエーテルのz価のラジカル、ペルフルオロポリエーテルのz価のラジカル、又はペルフルオロアルカンのz価のラジカルである。本明細書で使用される、用語「z価のラジカル」は、変数zと等しい価数を有するラジカルを指す。zは、1又は2に等しい整数にあるため、z価のラジカルは、一価又は二価のラジカルである。よって、R
fは、(a)ペルフルオロエーテルの一価又は二価のラジカル、(b)ペルフルオロポリエーテルの一価又は二価のラジカル、又は(c)ペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカル、である。
【0102】
式(I)中の変数zが1に等しい場合、フッ素化シランは、基R
fが一価の基である、式(Ia)
R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
(Ia)
のものである。そのような化合物は、式−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
yの単一の末端基が存在するため、単足性フッ素化シランと称され得る。変数yが1に等しい場合、単一のシリル基が存在し、又は変数yが2に等しい場合、2つのシリル基が存在し得る。
【0103】
式(I)中の変数zが2に等しい場合、フッ素化シランは、基R
fが二価の基である、式(Ib)
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
2
(Ib)
のものである。そのような化合物は、式−Q−[C(R
1)−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
yの2つの末端基が存在するため、二足性フッ素化シランと称され得る。各末端基は、変数yが1に等しい場合、単一のシリル基を有するか、又は変数yが2に等しい場合、2つのシリル基を有することができる。式(Ib)は、R
f基の二価の性質を強調する以下の同等の式として書くことができる。
[(R
3)
x(R
2)
3−xSi−C(R
1)
2]
y−Q−R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
【0104】
任意の適切なペルフルオロ化基がR
fに使用され得る。ペルフルオロ化基は、典型的に、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカルである。この基は、単一の炭素原子を有することができるが、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも12個の炭素原子を有する。R
f基は、多くの場合、最大300個又はそれ以上の炭素原子、最大200個の炭素原子、最大100個の炭素原子、最大80個の炭素原子、最大60の炭素原子、最大50の炭素原子、最大40の炭素原子、最大20の炭素原子、又は最大10の炭素原子を有する。R
f基は、通常、飽和であり、直鎖、分枝鎖、環式(例えば、脂環式)、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0105】
ペルフルオロエーテル若しくはペルフルオロポリエーテルの一価又は二価であるR
f基は、多くの場合、−C
bF
2bO−、−CF(Z)O−、−CF(Z)C
bF
2bO−、−C
bF
2bCF(Z)O−、−CF
2CF(Z)O−、又はそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのペルフルオロ化単位を含有する。変数bは、少なくとも1に等しい整数である。例えば、変数bは、1〜10の範囲、1〜8の範囲、1〜4の範囲、又は1〜3の範囲の整数であってもよい。基Zは、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロエーテル基、又はペルフルオロポリエーテル基である。これらのZ基のいずれかは、直鎖、分枝鎖、環式、又はそれらの組み合わせであってもよい。例示的なペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロエーテル、及びペルフルオロポリエーテルZ基は、多くの場合、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。Zのペルフルオロポリエーテル基は、例えば、最大10個の酸素原子、最大8個の酸素原子、最大6個の酸素原子、最大4個の酸素原子、又は最大3個の酸素原子を有することができる。幾つかの実施形態では、Zは、−CF
3基である。
【0106】
一価のペルフルオロエーテル基は、R
f1が、ペルフルオロアルキルであり、R
f2が、ペルフルオロアルキレンである、一般式R
f1−O−R
f2−のものである。R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子を有し、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。基R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、最大50個の炭素原子、最大40個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大25個の炭素原子、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大4個の炭素原子、又は最大3個の炭素原子を有することができる。多くの実施形態では、ペルフルオロアルキレン基及び/又はペルフルオロアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。
【0107】
一価のペルフルオロエーテル基は、多くの場合、式C
bF
2b+1O−、CF
2(Z
1)O−、CF
2(Z
1)C
bF
2bO−、C
bF
2b+1CF(Z
1)O−、又はCF
3CF(Z
1)O−の末端基(即ち、R
f1−O−基)を有し、式中、bは、上に定義されるのと同じである。基Z
1は、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大6個の炭素原子、最大4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルである。幾つかの実施形態では、Z
1は、−CF
3基である。末端基は、ペルフルオロアルキレン基に直接結合される。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、多くの場合、最大20個の個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。ペルフルオロエーテル基の具体的な例としては、CF
3CF
2OCF
2CF
2CF
2−、CF
3OCF
2CF
2CF
2−、C
3F
7OCF
2CF
2CF
2−、CF
3CF
2OCF(CF
3)CF
2−、CF
3OCF(CF
3)CF
2−、及びC
3F
7O CF(CF
3)CF
2−が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
二価のペルフルオロエーテル基は、一般式−R
f2−O−R
f3−のものであり、式中、R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、ペルフルオロアルキレンである。ペルフルオロアルキレンは、それぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。基R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、最大50個の炭素原子、最大40個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大25個の炭素原子、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大4個の炭素原子、又は最大3個の炭素原子を有することができる。多くの実施形態では、ペルフルオロアルキレン基は、それぞれ、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、又は1〜2個の炭素原子を有する。
【0109】
一価のペルフルオロポリエーテル基は、一般式R
f1−O−(R
f2−O)
a−R
f3−のものであり、式中、R
f1は、ペルフルオロアルキルであり、R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、ペルフルオロアルキレンであり、変数aは、少なくとも1に等しい整数である。基R
f1、R
f2、及びR
f3は、ペルフルオロエーテル基について上に定義されるのと同じである。変数aは、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、又は1〜10の範囲の、任意の整数である。
【0110】
一価のペルフルオロポリエーテル基は、多くの場合、式C
bF
2b+1O−、CF
2(Z)O−、CF
2(Z)C
bF
2bO−、C
bF
2b+1CF(Z)O−、又はCF
3CF(Z)O−の末端基(即ち、R
f1−O−基)を有し、式中、b及びZは、上に定義されるのと同じである。末端基は、少なくとも1つのペルフルオロアルキレンオキシ基又はポリ(ペルフルオロアルキレンオキシ)基(即ち−(R
f2−O)
a−基)に直接結合される。各ペルフルオロアルキレンオキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。ペルフルオロアルキレンオキシ基又はポリ(ペルフルオロアルキレンオキシ)基は、ペルフルオロアルキレン基(即ち、−R
f3−)に直接結合される。
【0111】
有用な一価のペルフルオロポリエーテル基又は一価のペルフルオロポリエーテル基の末端基の代表的な例としては、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、CF
3O(C
2F
4O)
nCF
2−、CF
3O(CF
2O)
m(C
2F
4O)
qCF
2−、F(CF
2)
3O(C
3F
6O)
n(CF
2)
3−、及びCF
3O(CF
2CF(CF
3)O)
n(CF
2O)X−が挙げられるが、これらに限定されない。基Xは、通常、−CF
2−、−C
2F
4−、−C
3F
6−、又は−C
4F
8−である。変数nは、多くの場合、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、3〜30の範囲、1〜20の範囲、3〜20の範囲、1〜10の範囲、又は3〜10の範囲である整数である。但し、合計(m+q)が少なくとも1に等しいという条件で、変数m及びqは、それぞれ独立して、0〜50の範囲、0〜40の範囲、0〜30の範囲、1〜30の範囲、3〜20の範囲、又は3〜10の範囲であってもよい。合計(m+q)は、多くの場合、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、3〜20の範囲、1〜20の範囲、3〜20の範囲、1〜10の範囲、又は3〜10の範囲である。
【0112】
二価のペルフルオロポリエーテル基又はセグメントの代表的な例としては、−CF
2O(CF
2O)
m(C
2F
4O)
qCF
2−、−CF
2O(C
2F
4O)
nCF
2−、−(CF
2)
3O(C
4F
8O)
n(CF
2)
3−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、−(CF
2)
3O(C
3F
6O)
n(CF
2)
3−、及び−CF(CF
3)(OCF
2CF(CF
3))
mOC
tF
2tO(CF(CF
3)CF
2O)
qCF(CF
3)−が挙げられるが、それらに限定されない。変数n、m、及びqは、上に定義されるのと同じである。変数tは、2〜8の範囲、2〜6の範囲、2〜4の範囲、又は3〜4の範囲の整数である。
【0113】
多くの実施形態では、ペルフルオロポリエーテル(一価又は二価に関わらず)は、少なくとも1つの二価のヘキサフルオロプロピレンオキシ基(−CF(CF
3)−CF
2O−又は−CF
2CF
2CF
2O−)を含む。−CF(CF
3)−CF
2O−を有するセグメントは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができ、比較的環境に優しい特性のために好ましい場合がある。−CF
2CF
2CF
2O−を有するセグメントは、テトラフルオロオキセタンのアニオン性オリゴマー化の後、直接フッ素化により得ることができる。ヘキサフルオロプロピレンオキシ基の例としては、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、−CF(CF
3)O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、−CF(CF
3)O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、及び−CF(CF
3)(OCF
2CF(CF
3))
mOC
tF
2tO(CF(CF
3)CF
2O)
qCF(CF
3)−が挙げられるが、これらに限定されない。変数n、m、q、及びtは、上に定義されるのと同じである。
【0114】
頻繁に、式(I)の化合物は、同じ塩基構造であるが、炭素原子の数が異なるR
f基を有する材料の混合物として存在する。例えば、式(I)の化合物は、上の一価及び二価のペルフルオロポリエーテル基の例の異なる変数m、n、及び/又はqを有する材料の混合物であってもよい。そのようなものとして、反復基の数は、多くの場合、整数でなくてもよい平均数として報告される。
【0115】
式(I)の基Qは、単一の共有結合、二価の連結基、又は三価の連結基である。Qが単結合である場合、変数yは、1に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが単一の共有結合であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ia−1)のものである。
R
f−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x
(Ia−1)
【0116】
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが単一の共有結合であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ib−1)のものである。
R
f−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ib−1)
【0117】
基Qが、二価の連結基である場合、変数yは、1に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが二価の基であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ia−2)のものである。
R
f−Q−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x
(Ia−2)
【0118】
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが二価の基であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ib−2)のものである。
R
f−[Q−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ib−2)
【0119】
基Qが三価の連結基である場合、変数yは、通常、2に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが三価の基であり、yが2に等しい場合、化合物は、式(Ia−3)のものである。式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの2つの基が存在する。
R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ia−3)
【0120】
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが三価の基であり、yが2に等しい場合、化合物は、式(Ib−3)のものである。
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2]
2
(Ib−3)
【0121】
基Qは、典型的に、少なくとも1つのアルキレン基(例えば、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)に加えて、オキシ、チオ、−NR
4−、メチン、三級窒素、四級窒素、カルボニル、スルホニル、スルフィリル(sulfiryl)、カルボニルオキシ、カルボニルチオ、カルボニルイミノ、スルホニルイミノ、オキシカルボニルオキシ、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、又はそれらの組み合わせから選択される任意の基を含む。基R
4は、水素、アルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アリール(例えば、フェニル又はビフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール)、又はアラルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有するアラルキル)である。式(I)の化合物が複数のQ基を有する場合、Q基は、同じであるか、又は異なってもよい。複数のQ基を有する多くの実施形態では、これらの基は同じである。
【0122】
幾つかの実施形態では、基Qは、式(I)の−C(R
1)−基に直接結合される少なくとも1個又は少なくとも2個の炭素原子を有するアルキレンを含む。そのようなアルキレン基の存在は、加水分解及び求核攻撃等の他の化学変換に対して安定性をもたらす傾向がある。
【0123】
幾つかの二価のQ基は、式−(CH
2)
k−のアルキレン基であり、式中、各変数kは、独立して、1を超える、2を超える、又は5を超える整数である。例えば、kは、1〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、1〜15の範囲、2〜15の範囲、2〜12の範囲、1〜10の範囲、1〜6の範囲、1〜4の範囲の整数であってもよい。具体的な例としては、−CH
2−及び−CH
2CH
2−が挙げられるが、これらに限定されない。R
fがペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカルであるとき、そのような基は、Qに典型的である。
【0124】
幾つかの二価のQ基は、任意の基のうちの1つ以上に直接結合される単一のアルキレン基を含む。そのような基は、アルキレンがカルボニルイミノ基に結合される式−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−、アルキレンがオキシカルボニルイミノ基に結合される式−O(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−、アルキレンがカルボニルチオに連結される式−(CO)S−(CH
2)
k−、又はアルキレンがスルホニルイミノ基に連結される式−S(O)
2N(R
4)−(CH
2)
k−のものであってもよい。変数k及び基R
4は、上述と同じである。幾つかのより具体的な基は、例えば、−(CO)NH(CH
2)
2−又は−O(CO)NH(CH
2)
2−を含む。これらのQ基において、アルキレン基は、−C(R
1)
2−基にも結合される。
【0125】
他の二価のQ基は、任意の基のうちの1つ以上によって接合される2つのアルキレン基を含む。そのような基は、例えば、チオ基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
k−S−(
2)
k−、オキシ基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
k−O−(CH
2)
k−、スルホニル基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
k−S(O)
2−(CH
2)
k−、オキシカルボニルイミノ基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
kO(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−、オキシカルボニルオキシ基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
kO(CO)O−(CH
2)
k−、四級窒素基が2つのアルキレン基を連結する式−(CH
2)
kN(R
4)
2+−(CH
2)
k−、及び四級窒素基が2つのアルキレン基を連結し、かつアルキレン基のうちの1つがカルボニルイミノ基に更に結合される式−(CO)NR
4−(CH
2)
k−N(R
4)
2+−(CH
2)
k−のものであってもよい。正に帯電している四級窒素基は、式に示されないアニオンで平衡が保たれる。これらの基のいずれかの変数k及び基R
4は、上述と同じである。より具体的な二価のQ基は、例えば、−CH
2O(CH
2)
2−、−CH
2−O(CO)NH−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−S−(CH
2)
3−、−(CH
2)
2−N(CH
3)
2+−(CH
2)
2−、及び−(CO)NH−(CH
2)
3−N(CH
3)
2+−(CH
2)
2−を含む。
【0126】
更に他の二価のQ基は、任意の基のうちの2つ以上によって接合される3つ以上のアルキレン基を含む。そのような基は、例えば、オキシ及びチオ基によって連結される3つのアルキレン基を有する式−CH
2O−(CH
2)
k−S−(CH
2)
k−、オキシ及びスルフィニルによって連結される3つのアルキレン基を有する式−CH
2O−(CH
2)
k−SO−(CH
2)
k−、オキシ及びスルホニルによって連結される3つのアルキレン基を有する式−CH
2O−(CH
2)
k−SO
2−(CH
2)
k−のものであってもよい。変数kは、上述と同じである。より具体的な例としては、−CH
2O−CH
2CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−及び−CH
2O−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−が挙げられるが、これらに限定されない。他のそのような基は、例えば、R
4及びkが上述と同じである式−(CO)−NR
4−(CH
2)
k−NR
4−(CH
2)
k−(CO)O−(CH
2)
k−のものであってもよい。カルボニルイミノ基は、イミノ基で第2のアルキレン基に連結される第1のアルキレン基に連結される。第2のアルキレン基は、カルボニルオキシ基で第3のアルキレン基に連結される。この式において、カルボニルイミノ基は、R
f基に連結される。変数k及び基R
aは、上述と同じである。このQ基の具体的な例は、−(CO)−NH−(CH
2)
3−N(CH
3)−(CH
2)
2−(CO)O−(CH
2)
2−である。
【0127】
三価のQ基は、典型的に、分岐部位としてメチン基又は三級窒素原子を含む。三価のQ基の例としては、
【化2】
等のメチン含有基、
及び
【化3】
等の三級窒素原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
三級窒素原子含有基は、多くの場合、この最後の基Qに示されるように、3つのアルキレン基に直接結合される。
【0129】
幾つかのQ基は、フッ素化シランに正の電荷を付与する四級窒素原子を含む。この正電荷を伴っても、フッ素化層は、疎水性である傾向がある。四級窒素は、多くの場合、2つのアルキレン基に直接結合される。四級窒素に結合される残りの2つの基のそれぞれは、多くの場合、独立して、水素、アルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アリール(例えば、フェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール)、又はアラルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有するアラルキル)である。Qが四級窒素原子を含む場合、四級窒素原子の正電荷を平衡するために、アニオンが存在する。好適なアニオンは、無機又は有機であってもよく、例えば、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、又はヨウ化物)、カルボン酸塩アニオン(例えば、酢酸塩)、スルホン酸塩(例えば、CH
3OSO
2−)、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩等を含む。
【0130】
基Qのそれぞれに共有結合される式(I)の各フッ素化シランに、式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの少なくとも1つの基が存在する。R
fが一価であり、Qが単結合又は二価の基のいずれかである場合、式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの単一の基が存在する。R
fが一価であり、Qが三価である場合、式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの2つの基が存在する。R
fが二価であり、Qが単結合又は二価の基のいずれかである場合、式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの2つの基が存在する。R
fが二価であり、Qが三価である場合、式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの4つの基が存在する。基R
1は、それぞれ独立して、水素又はアルキルである。R
1に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。多くの実施形態では、各R
1は、水素である。基R
2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。基R
3は、それぞれ独立して、非加水分解性基である。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。
【0131】
式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの各基において、1つ、2つ、又は3つのR
2基が存在してもよい。R
2基は、プライマー層に含まれる酸焼結されたシリカナノ粒子と反応するための反応部位である。つまり、加水分解性基又はヒドロキシル基は、酸焼結されたシリカナノ粒子の表面と反応して、フッ素化シランをプライマー層に共有結合させ、その結果、−Si−O−Si−結合を形成する。好適な加水分解性R
2基は、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロ基を含む。好適なアルコキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。好適なアリールオキシ基は、多くの場合、例えばフェノキシ等の、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキルオキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリール基を有する。例示的なアラルキルオキシ基は、アルコキシ基に共有結合されるフェニル基を有する、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を有する。好適なハロ基は、クロロ、ブロモ、又はヨードであってもよいが、多くの場合、クロロである。好適なアシルオキシ基は、R
bがアルキル、アリール、又はアラルキルである、式−O(CO)R
bのものである。多くの場合、R
bに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、R
bに好適なアリール基は、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。多くの場合、R
bに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
2基が存在するとき、それらは、同じであるか、又は異なってもよい。多くの実施形態では、R
2は、それぞれアルコキシ基である。
【0132】
式−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
xのそれぞれの基に、3つ未満のR
2しか存在しない場合、少なくとも1つのR
3基が存在する。R
3基は、非加水分解性基である。多くの非加水分解性基は、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基である。好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するものを含む。好適なアリール基は、多くの場合、例えばフェニル又はビフェニル等の、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキル基は、多くの場合、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
3基が存在するとき、それらの基は、同じであるか、又は異なってもよい。多くの実施形態では、R
3は、それぞれアルキル基である。
【0133】
R
fがペルフルオロエーテル又はペルフルオロポリエーテルの一価又は二価のラジカルである幾つかの特定のフッ素化シランは、式R
f−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3のもの、式R
f−[(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はそれらの混合物である。変数kは、上に定義されるのと同じである。幾つかの実施形態では、kは、1〜10の範囲、1〜6の範囲、又は1〜4の範囲である。幾つかのより具体的な、式R
f−(CO)N(R
4)−CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3のフッ素化シランは、aが4〜20の範囲であるF(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−CONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3、及びCF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3を含むが、これらに限定されない。より具体的な式R
f−[(CO)N(R
4)−CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2の例は、式
【化4】
の化合物であり、n及びmは、それぞれ、約9〜10の範囲の変数である。
【0134】
R
fがペルフルオロアルカンの一価又は二価のラジカルである幾つかの特定のフッ素化シランは、式R
f−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3、若しくは式R
f−[(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はそれらの混合物である。変数kは、上に定義されるのと同じである。より具体的なフッ素化シランは、式R
f−(CH
2)
2−Si(R
2)
3、若しくは式R
f−[(CH
2)
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はそれらの組み合わせのものである。
【0135】
上述のフッ素化シラン化合物は、標準的な技法を使用して合成され得る。例えば、市販の、又は容易に合成されるペルフルオロポリエーテルエステル又はペルフルオロエーテルエステル(又はそれらの官能性誘導体)を3−アミノプロピルアルコキシシラン等の官能化されたアルコキシシランと組み合わせることができる。好適な合成法は、例えば、米国特許第3,250,808号(Moore)、米国特許第3,646,085号(Barlett)、米国特許第3,810,874号(Mitsch et al.)、米国特許第7,294,731号(Flynnら)、及びカナダ特許第725747号(Moore)に記載されている。本方法は、記載される通りに使用されるか、又は上の説明に従い化合物を調製するために適合され得る。ペルフルオロポリエーテル又はペルフルオロエーテルにシラン基を組み込むために、エステル以外の官能基が等しい容易性で使用され得ることが理解されるであろう。
【0136】
ペルフルオロポリエーテルジエステル及びペルフルオロエーテルジエステルは、例えば、炭化水素エーテルジエステル又はポリエーテルジエステルの直接フッ素化により調製され得る。直接フッ素化は、炭化水素エーテルジエステル又はポリエーテルジエステルを、希釈形態のフッ素(F
2)と接触させることを伴う。炭化水素エーテルジエステル又はポリエーテルジエステルの水素原子は、フッ素原子と置換され、それによって、一般に、対応するペルフルオロエーテルジエステル又はペルフルオロポリエーテルジエステルを生じる。ジエステルは、典型的に、直接使用されないが、式CH
3O−(CO)−R
f−(CO)−OCH
3のジエステルに変換される。直接フッ素化法は、例えば、米国特許第5,578,278号(フォール(Fall)ら)及び第5,658,962号(ムーア(Moore)ら)に開示されている。
【0137】
特定の実施形態において、フッ素化シラン化合物のR
f基の数量平均分子量は、少なくとも750グラム/モル、少なくとも800グラム/モル、少なくとも900グラム/モル、又は少なくとも1000グラム/モルであってもよい。幾つかの実施形態では、高数量平均分子量は、耐久性を更に強化することができる。高重量フッ素化シランは、例えば、水分及び加水分解から表面を保護することができる。一般に、使用及び適用の容易さにおいて、R
f基の数量平均分子量は、多くの場合、10,000グラム/モル以下、7,500グラム/モル以下、6000グラム/モル以下、5000グラム/モル以下、4000グラム/モル以下、3000グラム/モル以下である。幾つかの実施形態では、数量平均分子量は、1000〜6000グラム/モルの範囲、2000〜5000グラム/モルの範囲、又は3000〜4000グラム/モルの範囲である。
【0138】
ペルフルオロポリエーテルシランは、典型的に、オリゴマー及び/又はポリマーの分布を含む。約750未満の数量平均分子量を有するペルフルオロポリエーテルセグメントを有するペルフルオロポリエーテルシランの量(そのような分布において)は、分布のペルフルオロポリエーテルシランの総量に基づき、約10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、又は0.01重量%以下である。
【0139】
プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面と反応するフッ素化シランは、単一のフッ素化シラン又はフッ素化シランの混合物であってもよい。例えば、一価のR
f基を有する第1のフッ素化シラン及び二価のR
f基を有する第2のフッ素化シランの混合物が使用され得る。混合物は、少なくとも10:90、少なくとも20:80、少なくとも30:70、少なくとも40:60、又は少なくとも50:50である、一価のR
f基を有する第1のフッ素化シランに対する、二価のR
f基を有する第2のフッ素化シランの重量比を、含むことができる。この重量比は、多くの場合、99:1以下、97:3以下、95:5以下、90:10以下、又は80:20以下である。
【0140】
フッ素化シランは、典型的に、水分の不在下で、比較的長い貯蔵寿命を有する。フッ素化シランは、多くの場合、純形態でプライマー層の表面処理に使用され得る(例えば、フッ素化シランは、化学的気相成長によって適用され得る)比較的粘稠な液体の形態である。別の方法としては、フッ素化シランは、1つ以上の有機溶媒及び/又は1つ以上の他の任意の化合物と混合され得る。プライマー層の表面に適用されるフッ素化シランを含有する組成物は、「フッ素化層コーティング組成物」と称される。フッ素化層コーティング組成物は、フッ素化層を形成するために使用される。
【0141】
フッ素化層コーティング組成物の使用に好適な有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール等の脂肪族アルコール類、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、例えば、酢酸エチル及びギ酸メチル等のエステル類、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)等のエーテル類、例えば、ヘプタン、デカン、及び他のパラフィン系(即ち、オレフィン系)溶媒等のアルカン類、例えば、ペルフルオロヘキサン及びペルフルオロオクタン等のペルフルオロ化炭化水素類、例えば、ペンタフルオロブタン等のフッ素化炭化水素類、例えば、メチルペルフルオロブチルエーテル及びエチルペルフルオロブチルエーテル等のヒドロフルオロエーテル類等、並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、多くの場合、脂肪族アルコール類、ペルフルオロ化炭化水素類、フッ素化炭化水素類、ヒドロフルオロエーテル類、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、表面処理組成物は、脂肪族アルコール類、ヒドロフルオロエーテル類、又はそれらの組み合わせを含有する。他の実施形態では、フッ素化層コーティング組成物は、ヒドロフルオロエーテル類又はそれらの組み合わせを含有する。
【0142】
市販の幾つかの好適なフッ素化溶媒は、例えば、3M Company(Saint Paul,MN)から商品名3M NOVEC ENGINEERED FLUID(例えば、3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100、7200DL、及び7500)で市販されているものを含む。
【0143】
有機溶媒が使用される場合、フッ素化層コーティング組成物は、多くの場合、フッ素化層コーティング組成物の総重量に基づき、少なくとも約0.01重量%のフッ素化シランを溶解又は懸濁することができる量の有機溶媒の量を含有する。幾つかの実施形態では、有機溶媒又は有機溶媒の混合物は、少なくとも約0.1重量%に等しい水溶性、そしてこれらの特定の実施形態では、少なくとも約0.01重量%に等しい酸可溶性を有することが望ましくてもよい。
【0144】
有機溶媒が使用されるとき、フッ素化層コーティング組成物中の有用なフッ素化シランの濃度は、広範囲にわたって変動し得る。例えば、フッ素化層コーティング組成物は、フッ素化層コーティング組成物の総重量に基づき、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%のフッ素化シランを含むことができる。その量は、多くの場合、フッ素化シランの粘度、利用される適用法、基材の性質、及び所望の表面特徴に依存する。
【0145】
フッ素化層コーティング組成物は、他の任意の化合物を含むことができる。例えば、架橋剤が添加され得る。架橋剤は、典型的に、式(I)のフッ素化シラン上に複数のシリル基が存在するときに添加される。架橋剤は、プライマー層の表面と反応しなかったフッ素化シランのいずれかの反応性シリル基と反応することができる。フッ素化シランと反応することができるあらゆる架橋剤が使用され得る。架橋剤は、例えば、残りの反応性シリル基を有する複数のフッ素化シランと反応することができる。別の方法としては、架橋剤の第1の基が酸焼結されたシリカナノ粒子の表面と反応し、架橋剤の第2の基がフッ素化シランと反応して、フッ素化シランをプライマー層に共有結合させることができる。この代替え反応において、架橋剤は、フッ素化シランとプライマー層との間でリンカーとして機能する。
【0146】
幾つかの架橋剤は、複数の反応性シリル基(少なくとも1つのヒドロキシル基又は加水分解性基を有するシリル基)を有する。これらの架橋剤は、複数の反応性シリル基を有するポリマーであってもよい。別の方法としては、これらの架橋剤は、式(II)又は式(III)のものであってもよい。
Si(R
5)
4−d(R
6)
d
(II)
R
7−[Si(R
8)
3−e(R
9)
e]
2
(III)
【0147】
式(II)又は(III)において、R
5基又はR
8基は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、R
6基又はR
9基は、それぞれ独立して、非加水分解性基である。式(II)の変数dは、0、1、2、又は3に等しい整数である。式(III)の変数eは、0、1、又は2に等しい整数である。式(III)の基R
7は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するアルキレンである。
【0148】
式(II)又は(III)の各R
5基又はR
8基は、それぞれ、加水分解性基又はヒドロキシル基である。この基は、フッ素化シラン中の残りの反応性シリルと反応することができる。複数のそのようなR
5基又はR
8基を複数のフッ素化シランと反応させることにより、フッ素化シランを架橋することができる。別の方法としては、そのような基の1つは、シリカナノ粒子の表面とも反応することができ、別のそのような基は、フッ素化シランと反応して、フッ素化シランをプライマー層に共有結合させることができる。R
5又はR
8に好適な加水分解性基は、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロ基を含む。好適なアルコキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。好適なアリールオキシ基は、多くの場合、例えばフェノキシ等の、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキルオキシ基は、多くの場合、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリール基と置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を有する。例示的なアラルキルオキシ基は、アルコキシ基に共有結合されるフェニル基を有する、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を有する。好適なハロ基は、クロロ、ブロモ、又はヨードであってもよいが、多くの場合、クロロである。好適なアシルオキシ基は、R
bがアルキル、アリール、又はアラルキルである、式−O(CO)R
bのものである。多くの場合、R
bに好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。R
bに好適なアリール基は、多くの場合、例えばフェニル等の、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。多くの場合、R
bに好適なアラルキル基は、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
5基又はR
8基が存在するとき、これらの基は、同じであるか、又は異なってもよい。多くの実施形態ではR
5基又はR
8基は、それぞれアルコキシ基である。
【0149】
式(II)又は(III)の各R
6基又はR
9基は、それぞれ、非加水分解性基である。多くの非加水分解性基は、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基である。好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するものを含む。好適な、多くの場合、例えばフェニル又はビフェニルのように、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキル基は、多くの場合、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
6基又はR
9基が存在するとき、それらは、同じであるか、又は異なってもよい。多くの実施形態では、R
6基又はR
9基は、それぞれアルキル基である。
【0150】
架橋剤の例としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、ビス(トリエトキシシリル)エタン、及びポリ(ジエトキシシラン)等のテトラアルコキシシラン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
フッ素化層コーティング組成物中に含まれる架橋剤の量は、例えば特定の用途及び所望の特性によって、任意の好適な量であってもよい。多くの実施形態では、フッ素化層コーティング組成物は、フッ素化層コーティング組成物の総重量に基づき、最大75重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、又は最大10重量%の架橋剤を含むことができる。例えば、架橋剤は、1〜75重量%、1〜70重量%、1〜60重量%、1〜50重量%、1〜40重量%、1〜30重量%、1〜20重量%、1〜10重量%の範囲であってもよい。
【0152】
特定の硬化方法若しくは条件に望ましい場合がある、又は特定の表面処理用途に望ましい場合がある、望ましい特性を付与してもよい少量の他の任意の構成成分がフッ素化層コーティング組成物に添加され得る。他の任意の構成成分の例としては、触媒(以下に記載される水分硬化触媒を含む)、反応開始剤、界面活性剤、安定剤、抗酸化剤、難燃剤、紫外線(UV)吸収剤、ラジカル消光剤等、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
第2の態様では、物品の製造方法を提供する。本方法は、基材を提供することと、プライマー層を基材の表面上に形成することとを含む。プライマー層は、連続する3次元多孔質ネットワークを形成するように配置された複数の酸焼結されたシリカナノ粒子を含有する。本方法は、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面をフッ素化シランと反応させることにより、疎水性フッ素化層をプライマー層に共有結合することを更に含む。フッ素化シランは、フッ素化基等の反応性シリル基、及びペルフルオロ化基の両方を含有する。多くの実施形態では、疎水性フッ素化層を形成するために使用されるフッ素化シランは、式(I)のものである。
【0154】
フッ素化シランは、プライマー層中に含まれる酸焼結されたシリカナノ粒子の表面と反応して、プライマー層と疎水性フッ素化層との間に−Si−O−Si−結合を形成する。得られた疎水性フッ素化層は、プライマー層を通して基材に結合される。プライマー層及び疎水性フッ素化層の組み合わせは、様々な基材に疎水性及び/又は疎油性の度合いを付与するために、又は様々な基材の疎水性及び/又は疎油性を更に強化するために使用され得る。
【0155】
フッ素化シランは、フッ素化層コーティング組成物としてプライマー層に適用される。フッ素化層コーティング組成物は、任意の適切な適用方法を使用してプライマー層に適用され得る。適用方法は、多くの場合、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、払拭、ロールコーティング、はけ塗り、散布、フローコーティング、蒸着等、又はそれらの組み合わせによってコーティング層を形成することを伴う。
【0156】
典型的に、フッ素化層コーティング組成物は、硬化後、フッ素化層がプライマー層にわたって形成されるように、基材上のプライマー層に適用され得る。つまり、プライマー層は、基材とフッ素化層との間に位置付けられる。フッ素化層は、厚さが単層以上であってもよい。フッ素化層の厚さは、例えば、0.001〜1マイクロメートルの範囲、0.001〜0.10マイクロメートルの範囲、又は0.01〜0.1マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0157】
プライマー層の適用後、フッ素化層コーティング組成物は、熱及び/又は水分に曝露されることによって硬化され得る。硬化は、フッ素化シランをプライマー層に結合する。硬化は、フッ素化シランとプライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子との間に−Si−O−Si−結合の形成をもたらす。架橋剤がフッ素化層コーティング組成物に含まれる場合、これらの材料は、フッ素化シラン上のいずれの残りの反応性シリル基と反応することができる。水分硬化は、室温(例えば、20℃〜25℃)から最大約80℃又はそれ以上の範囲の温度で影響を受け得る。水分硬化時間は、数分(例えば、80℃以上等の高温で)〜数時間(例えば、室温等の低温で)の範囲であってもよい。
【0158】
耐久性のあるコーティングを調製するために、−Si−O−Si−基を形成するための縮合が生じることができる(それによって、硬化が達成され得る)ように、上述の加水分解性基の加水分解が生じるように、十分な量の水が典型的に存在し得る。水は、例えば、基材表面上に吸収されたフッ素化層コーティング組成物中、又は周囲雰囲気中に存在し得る。典型的には、コーティング方法が、室温にて、含水雰囲気中(例えば、相対湿度が約30%〜約50%の雰囲気)で実行される場合、耐久性のあるコーティングの調製に十分な水が存在し得る。フッ素化シランは、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面との化学反応を受け、共有結合(−Si−O−Si−基の結合を含む)の形成を通して耐久性のあるコーティングを形成することができる。
【0159】
一部の実施形態では、水分硬化触媒が使用される。適切な水分硬化触媒は、当該技術分野において周知であり、例えば、アンモニア、N−複素環式化合物、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、又はトリアルキルアミン、有機酸又は無機酸、金属カルボン酸塩、金属アセチルアセトン複合体、金属粉末、ペルオキシド、金属塩化物、有機金属化合物等、及びそれらの組み合わせを含む。水分硬化触媒は、使用されるとき、フッ素化層コーティング組成物の総重量に基づき、0.1〜10重量%の範囲、0.1〜約5重量%の範囲、又は0.1〜約2重量%の範囲の量で存在し得る。
【0160】
水分硬化触媒として機能することができるN−複素環式化合物の例としては、1−メチルピペラジン、1−メチルピペリジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−トリメチレン−ビス(1−メチルピペリジン)、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン、シス−2,6−ジメチルピペラジン等、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
水分硬化触媒として機能することができるモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、及びトリアルキルアミンの例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、DBU(つまり、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(つまり、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,7−トリアザシクロノナン等、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
水分硬化触媒として機能することができる有機酸又は無機酸の例としては、酢酸、ギ酸、トリフリン酸、ペルフルオロ酪酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸、クエン酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、塩素酸、次亜塩素酸等、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
フッ素化層コーティング組成物は、典型的に、室温(典型的に、15℃〜30℃の範囲、又は20℃〜25℃の範囲)でプライマー層に適用される。別の方法としては、フッ素化層コーティング組成物は、例えば、40℃〜300℃の範囲、50℃〜200℃の範囲、又は60℃〜150℃の範囲等の、高温で予め加熱されたプライマー層に適用され得る。フッ素化層コーティング組成物の適用後、得られたコーティングを乾燥させ、その後、硬化が生じるのに十分な時間の間、周囲温度(例えば、15℃〜30℃の範囲、20℃〜25℃の範囲)又は高温(例えば、40℃〜300℃の範囲、50℃〜200℃の範囲、又は50℃〜100℃の範囲)で硬化させる。
【0164】
得られる物品は、疎水性コーティングを有する。水の接触角は、多くの場合、少なくとも85°、少なくとも90°、少なくとも95°、少なくとも100°、少なくとも105°、少なくとも110°、又は少なくとも115°に等しい。コーティングは、耐久性があり、摩擦又は摩耗を繰り返し受けることができ、同時に同じ水の接触角を保持することができる。コーティングは、摩擦及び/又は洗浄を繰り返し受け、かつ/又はそれらの疎水性特徴を保持することができる。
【0165】
得られる物品の疎水性特徴は、プライマー層を形成するために使用されるシリカナノ粒子の大きさの選択によって、及びフッ素化層を形成するために使用される特定のフッ素化シランの選択によって、変動し得る。例えば、疎水性特徴は、多くの場合、粗いプライマー層表面を調製することによって増加させることができる。粗面は、異なる大きさ、形状、又はそれらの混合物のシリカ粒子の混合物に起因する傾向がある。加えて、疎水性特徴は、多くの場合、フッ素化シランの選択によって増加させることができる。得られる物品の疎水性特徴を増加させるために、より多くの疎水性フッ素化基(例えば、より多くの疎水性ペルフルオロ化基)が使用され得る。
【0166】
フッ素化シランは、−Si−O−Si−結合を通してプライマー層に共有結合される。プライマー層の使用は、他の疎水性基材上のフッ素化材料の耐久性のあるコーティングを可能にする。つまり、フッ素化シランは、通常フッ素化シランに適合しない基材(即ち、フッ素化シランと−Si−O−Si−結合を形成することができない基材)に結合することができる。フッ素化シランに基づくコーティングは、表面にヒドロキシル基を有するガラス及びセラミック材料等の基材を超えて拡大することができる。より具体的には、フッ素化シランは、プライマー層を通して、フッ素化シランと反応することができる表面基を有さない様々な金属類(例えば、アルミニウム及びステンレススチール)及び様々なポリマー材料(例えば、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ABS等)の表面に結合され得る。フッ素化シランとプライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子との間の−Si−O−Si−の形成は、フッ素化コーティングの耐久性を強化する。フッ素化コーティングは、洗浄が容易、耐汚れ性、及び耐指紋性である表面を提供する傾向がある。
【0167】
物品又は物品の作製方法である様々な項目が記載される。
【0168】
項目1は、(a)基材と、(b)基材の表面に結合されるプライマー層と、(c)プライマー層に結合される疎水性フッ素化層と、を含む物品である。プライマー層は、連続する3次元多孔質ネットワークを形成するように配置された複数の酸焼結されたシリカナノ粒子を含有する。疎水性フッ素化層は、フッ素化シランと、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面との反応生成物を含有する。フッ素化シランは、反応性シリル基及びフッ素化基の両方を含有する。
【0169】
項目2は、フッ素化基が、ペルフルオロ化基である、項目1に記載の物品である。
【0170】
項目3は、フッ素化シランが、式(I)
R
f−[Q−[C(R
1)−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
z
(I)
(式中(I)において、基R
fは、ポリフルオロエーテル、ポリフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカンのz価のラジカルであり、Qは、二価又は三価の連結基であり、各R
1は、独立して、水素又はアルキルであり、各R
2は、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R
3は、独立して、非加水分解性基であり、各xは、0、1、又は2に等しい整数であり、yは、1又は2に等しい整数であり、zは、1又は2に等しい整数である)のものである、項目1又は2に記載の物品である。
【0171】
項目4は、Qが、アルキレンを含む、項目3に記載の物品である。
【0172】
項目5は、Qが、少なくとも1つのアルキレンを含み、少なくとも1つのオキシ、チオ、−NR
4−、メチン、三級窒素、四級窒素、カルボニル、スルホニル、スルフィリル、カルボニルオキシ、カルボニルチオ、カルボニルイミノ、スルホニルイミノ、オキシカルボニルオキシ、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、又はそれらの組み合わせを更に含む、項目3又は4に記載の物品である。基R
4は、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである。
【0173】
項目6は、基材が、ポリマー材料又は金属である、項目1〜5のいずれか一項目に記載の物品である。
【0174】
項目7は、シリカナノ粒子が、球状ナノ粒子及び針状ナノ粒子の混合物である、項目1〜6のいずれか一項目に記載の物品である。
【0175】
項目8は、プライマー層が、酸焼結されたシリカナノ粒子と少なくとも2つの反応性シリル基を有する架橋剤との反応生成物を含む、項目1〜7のいずれか一項目に記載の物品である。
【0176】
項目9は、プライマー層が、3.5未満のpKaを有する酸で2〜5の範囲のpHに酸性化されたシリカゾルから形成される、項目1〜8のいずれか一項目に記載の物品である。
【0177】
項目10は、フッ素化シランが、式(Ia)
R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
(Ia)
のものである、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0178】
項目11は、フッ素化シランが、式(Ib)
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
2
(Ib)
のものである、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0179】
項目12は、物品が、反射防止性である、項目1〜11のいずれか一項目に記載の物品である。
【0180】
項目13は、Qが、−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−であり、式中、kが、1〜10の範囲の整数であり、R
4が水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである、項目3〜12のいずれか一項目に記載の物品である。
【0181】
項目14は、フッ素化シランが、kが1〜10の範囲の整数である、式R
f−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3の化合物を含む、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0182】
項目15は、フッ素化シランが、aが4〜20の範囲の変数である、式F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−CONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3の化合物の混合物である、項目14に記載の物品である。
【0183】
項目16は、フッ素化シランが、CF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3を含む、項目14に記載の物品である。
【0184】
項目17は、フッ素化シランが、kが1〜10の範囲の整数である、式R
f−[(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2の化合物を含む、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0185】
項目18は、フッ素化シランが、式
【化5】
(式中、n及びmは、それぞれ、約9〜10の範囲の変数である)の化合物であり、項目17に記載の物品である。
【0186】
項目19は、フッ素化シランが、kが1〜10の範囲の整数である式R
f−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3の第1の化合物と、式R
f−[(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2の第2の化合物とを含む、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0187】
項目20は、フッ素化シランが、架橋される、項目3〜9のいずれか一項目に記載の物品である。
【0188】
項目21は、物品の作製方法である。本方法は、基材を提供することと、プライマー層を基材の表面上に形成することとを含む。プライマー層は、連続する3次元多孔質ネットワークを形成するように配置された複数の酸焼結されたシリカナノ粒子を含有する。本方法は、プライマー層の酸焼結されたシリカナノ粒子の表面をフッ素化シランと反応させることにより、疎水性フッ素化層をプライマー層に結合することを更に含む。フッ素化シランは、反応性シリル基及びフッ素化基の両方を含有する。
【0189】
項目22は、フッ素化基が、ペルフルオロ化基である、項目21に記載の方法である。
【0190】
項目23は、フッ素化シランが、式(I)
R
f−[Q−[C(R
1)−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
z
(I)
(式(I)において、R
fは、ポリフルオロエーテル、ポリフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカンのz価のラジカルであり、Qは、二価又は三価の連結基であり、各R
1は、独立して、水素又はアルキルであり、各R
2は、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R
3は、独立して、非加水分解性基であり、各xは、0、1、又は2に等しい整数であり、yは、1又は2に等しい整数であり、zは、1又は2に等しい整数である)のものである、項目21又は22に記載の方法である。
【0191】
項目24は、Qが、アルキレンを含む、項目23に記載の方法である。
【0192】
項目25は、Qが、少なくとも1つのアルキレンを含み、少なくとも1つのオキシ、チオ、−NR
4−、メチン、三級窒素、四級窒素、カルボニル、スルホニル、スルフィリル、カルボニルオキシ、カルボニルチオ、カルボニルイミノ、スルホニルイミノ、オキシカルボニルオキシ、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、又はそれらの組み合わせを更に含む、項目23に記載の方法である。基R
4は、水素、アルキル、アリール、又はアラルキルである。
【実施例】
【0193】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、例示のためだけのものであり、及び添付の特許請求の範囲を限定することを意味しない。
【0194】
材料用語集
「NALCO 1115」は、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)から市販されている16.5重量%固体(公称16重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約4ナノメートルである。
【0195】
「NALCO 1050」は、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)から市販されている50.4重量%固体(公称50重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約20ナノメートルである。
【0196】
「NALCO TX11561」は、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)から市販されている41.5重量%固体(公称41重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約75ナノメートルである。
【0197】
「NALCO DVSZN004」は、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)から市販されている41.2重量%固体(公称41重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約42ナノメートルである。
【0198】
「NALCO 2329」は、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)から市販されている39.5重量%固体(公称40重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約92ナノメートルである。
【0199】
「NALCO 2326」は、Nissan Chemical Company(Houston,TX)から市販されている39.5重量%固体(公称40重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約5ナノメートルである。
【0200】
「SNOWTEX ST−UP」は、Nissan Chemical Company(Houston,TX)から市販されている重量%固体(公称21重量%固体)を含む水性コロイド状非球状シリカ分散液を指す。粒子は、約9〜15ナノメートルの平均幅及び約80〜150ナノメートルの平均長を有する。
【0201】
「SNOWTEX ST−PS−M」は、Nissan Chemical Company(Houston,TX)から市販されている21.2重量%固体(公称21重量%固体)を含む水性コロイド状非球状シリカ分散液を指す。粒子は、約18〜25ナノメートルの平均幅及び約80〜150ナノメートルの平均長を有する。
【0202】
「SILCO LI518」は、Silco International Inc(Portland,OR)から市販されている18.8重量%固体(公称18重量%固体)を含む水性コロイド状球状シリカ分散液を指す。平均粒度は、約5ナノメートルである。
【0203】
「3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100」は、3M Company(Saint Paul,MN)から市販されているヒドロフルオロエーテル溶媒を指す。
【0204】
「3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7200DL」は、3M Company(Saint Paul,MN)から市販されているヒドロフルオロエーテル溶媒を指す。
【0205】
「3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7500」は、3M Company(Saint Paul,MN)から市販されているヒドロフルオロエーテル溶媒を指す。
【0206】
「HFPO−(CO)OCH
3」は、変数aが4〜20の範囲の平均値を有する式F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−(CO)OCH
3の化合物を指す。異なる変数aの値を有する化合物の混合物であるこの材料は、分別蒸留によって精製される、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に記載される方法に従い調製することができ、その記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0207】
「HFPO−Silane」は、変数aが4〜20の範囲である式F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−CONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3の化合物を指す。この材料は、N
2雰囲気下で、HFPO−COOCH
3(20グラム、0.01579モル)及びNH
2CH
2CH
2CH
2−Si(OCH
3)
3(2.82グラム、0.01579モル)を、電磁攪拌棒、窒素(N
2)注入口、及び還流冷却器で装備された100mLの3首の丸底フラスコに充填することによって調製された。反応混合物を75℃で12時間加熱した。赤外(IR)分光法により反応物を監視し、エステルピークが消失した後、得られた透明で粘稠な油状物を更に8時間真空下で保持し、そのようなものとして使用した。
【0208】
「PPFO−Disilane」は、基本的に米国特許第3,950,588号(McDougalら)に記載されるように調製された、α,ω−ポリ(ペルフルオロオキシアルキレン)ジシランを指す。
【化6】
変数n及びmは、約9〜10の範囲である。
【0209】
「CF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3」は、米国特許出願公開第2003/0226818号(Dunbarら)の段落[0128]に記載されるものに類似する手順を使用して、初めに中間体CF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2COOCH
3を調製することによって調製されるフルオロシランを指す。この中間体は、米国特許第6,277,485号(Invieら)に記載されるように、NH
2(CH
2)
3Si(OEt)
3と反応させることによってシランに変換された。
【0210】
「BTEOSE」は、Gelest(Morrisville,PA)から入手したビス(トリエトキシシリル)エタンを指す。
【0211】
「PDES」は、Gelest(Morrisville,PA)から入手したポリ(ジエトキシシロキサン)を指す。
【0212】
(ヘプタフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシランは、Gelest(Morrisville,PA)から入手した。
【0213】
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシランは、Gelest(Morrisville,PA)から入手した。
【0214】
(ヘプタフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシランは、Gelest(Morrisville,PA)から入手した。
【0215】
「ステンレススチールクーポン」は、Metal Depot(La Mirada,CA)から購入したステンレススチール(304、#8研磨済)のクーポンを指す。
【0216】
「ガラスプレート」は、Cardinal Glass Industries(Eden Prairie,MN)から入手したフロートガラス板を指す。
【0217】
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムは、3M Company(Saint Paul,MN)のSCOTHPAR POLYESTERであった。フィルムの厚さは、50マイクロメートルであった。
【0218】
全ての溶媒は商用源から入手された標準の試薬グレードであり、特記しない限り更に精製せずに使用された。
【0219】
試験方法
接触角の測定方法
以下の実施例及び比較実施例に記載されるように調製されたコーティングされた基材試料を、手動攪拌によりイソプロピルアルコール(IPA)中で1分間すすいだ。水(H
2O)接触角(湿潤液体として水を使用)を測定する前にIPAを蒸発させた。
【0220】
濾過システム(Millipore Corporation,Billerica,MAから入手)を通して濾過した脱イオン水を用い、ビデオ接触角分析計(Billerica,MAのAST Productsから製品番号VCA−2500XEとして入手可能)により水接触角の測定を行った。報告する値は、各液滴の右側と左側で測定した少なくとも3滴の測定値の平均であった。液滴体積は、静的接触角測定の場合1マイクロリットル、前進及び後退接触角測定の場合1〜3マイクロリットルであった。
【0221】
ヘキサデカン(HD)接触角を測定するために、類似するプロセスを使用した。
【0222】
摩耗試験−方法1
TABER 5900ライナー摩耗試験機(North Tonawanda,NYのTaber Industriesから入手)に、KIMBERLY−CLARK L−30 WYPALLタオル(Roswell,GAのKimberly Clarkから入手)及び5.1cm×5.1cmのクロック布(Taber Industries,North Tonawanda,NYから入手)で覆われた2.5センチメートル(cm)のボタンを取り付けた。10ニュートン(N)の力及び5.1cmのストローク長の、75サイクル/分(1サイクルは、前方払拭に続く後方払拭からなる)の速度で、5,000又は10,000サイクルの間、試料を摩耗した。
【0223】
摩耗試験−方法2
TABER 5750ライナー摩耗試験機(North Tonawanda,NYのTaber Industriesから入手)に、KIMBERLY−CLARK L−30 WYPALLタオル(Roswell,GAのKimberly Clarkから入手)及び5.1cm×5.1cmのクロック布(Taber Industries,North Tonawanda,NYから入手)を有する2.5cmのボタンを取り付けた。10Nの力及び6.4cmのストローク長の、30サイクル/分(1サイクルは、前方払拭に続く後方払拭からなる)の速度で、300サイクルの間、試料を摩耗した。
【0224】
プライマー層コーティング組成物1(PLC1)
コロイド状シリカ分散液NALCO 1115を水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0225】
プライマー層コーティング組成物2(PLC2)
コロイド状シリカ分散液NALCO 1050を水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
図1Aは、酸を添加することなく形成された、プライマー層の透過電子顕微鏡写真である。
図1Bは、酸を添加した後に形成された、プライマー層の透過電子顕微鏡写真である。
【0226】
プライマー層コーティング組成物3(PLC3)
コロイド状シリカ分散液NALCO TX11561を水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0227】
プライマー層コーティング組成物4(PLC4)
重量に基づき、コロイド状シリカ分散液NALCO 2329及びNALCO 2326を4:1の比率(w/w)で混合し、水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0228】
プライマー層コーティング組成物5(PLC5)
コロイド状シリカ分散液SNOWTEX ST−UPを水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0229】
プライマー層コーティング組成物6(PLC6)
コロイド状シリカ分散液SNOWTEX ST−PS−Mを水で2.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0230】
プライマー層コーティング組成物7(PLC7)
コロイド状シリカ分散液NALCO 1115を水で0.75重量%固体に希釈し、1.5M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0231】
プライマー層コーティング組成物8(PLC8)
コロイド状シリカ分散液SILCO LI518を水で0.75重量%固体に希釈し、1.5M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0232】
プライマー層コーティング組成物9(PLC9)
コロイド状シリカ分散液NALCO 1115を水で0.5重量%固体に希釈し、1.5M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0233】
プライマー層コーティング組成物10(PLC10)
重量に基づき、コロイド状シリカ分散液NISSAN ST−UP及びSILCO Li−518を7:3の比率(w/w)で混合し、水で3重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2に酸性化した。
【0234】
プライマー層コーティング組成物11(PLC11)
重量に基づき、コロイド状シリカ分散液NISSAN ST−UP及びSILCO Li−518を7:3の比率(w/w)で混合し、水で5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2に酸性化した。
【0235】
プライマー層コーティング組成物12(PLC12)
コロイド状シリカ分散液NALCO 1115を水で0.5重量%固体に希釈し、3M HNO
3でpH 2に酸性化した。
【0236】
プライマー層コーティング組成物13(PLC13)
50:50の重量比(w/w)でNALCO 1115及びNALCO DVSZN004を混合し、水で3重量%固体に希釈することにより、混合物を調製した。分散液を1.5M HNO
3でpH 2.5に酸性化した。
【0237】
フッ素化層コーティング組成物1(FLC1)
PPFO−disilaneを3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100で希釈して、0.5重量%のフッ素化シラン溶液を調製した。
【0238】
フッ素化層コーティング組成物2(FLC2)
フッ素化シランHFPO−Silane及びPFPO−Disilaneを90:10の重量比(w/w)で混合し、3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100で希釈して、0.5重量%のフッ素化シラン溶液を調製した。
【0239】
フッ素化層コーティング組成物3(FLC3)
PPFO−Disilaneを3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7200DLで希釈して、0.5重量%のフッ素化シラン溶液を調製した。
【0240】
フッ素化層コーティング組成物4(FLC4)
フッ素化シランCF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3を3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100に溶解して、0.5重量%のフッ素化シランを含有する溶液を調製した。
【0241】
フッ素化層コーティング組成物5(FLC5)
10重量部のPPFO−Disilane、60重量部のテトラエトキシシラン(TEOS)、及び30重量部のエタノールを混合することにより、混合物を調製した。次いで、0.5重量部の混合物を99.5重量部の3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7500で希釈した。
【0242】
フッ素化層コーティング組成物6(FLC6)
フッ素化シランCF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3及び架橋剤BTEOSEを88:12の重量比(w/w)で混合し、3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100で希釈して、0.5重量%のフッ素化シラン及び架橋剤の混合溶液を調製した。
【0243】
フッ素化層コーティング組成物7(FLC7)
フッ素化シランPPFO−disilane及び架橋剤PDESを70:30の重量比(w/w)で混合し、3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100で希釈して、0.5重量%のフッ素化シラン及び架橋剤の混合溶液を調製した。
【0244】
フッ素化層コーティング組成物8(FLC8)
(ヘプタフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシランを3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7200DLで希釈して、0.2重量%の炭化水素シランの溶液を調製した。
【0245】
フッ素化層コーティング組成物9(FLC9)
(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシランを3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7200DLで希釈し、0.2重量%の炭化水素シランの溶液を調製した。
【0246】
フッ素化層コーティング組成物10(FLC10)
(ヘプタフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシランを3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7200DLで希釈して、0.2重量%の炭化水素シランの溶液を調製した。
【0247】
実施例1〜6及び比較実施例A
実施例1〜6のそれぞれにおいて、5.1cm×7.6cmの寸法の別個のガラスプレートを、30分間、硫酸及び過酸化水素洗浄溶液(硫酸に対する過酸化水素の体積比(v/v)は3:1であった)に浸した。その後、ガラスプレートを脱イオン水ですすぎ、窒素ガス流で乾燥させた。各ガラスプレートを、1分当り10.8センチメートル(cm/分)の速度でプライマー層コーティング組成物(PLC)に浸漬し、20秒間、プライマー層コーティング組成物中に保持し、10.8cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物から取り出した。実施例1〜6を、それぞれ、PLC1〜PLC6に浸漬した。各プライマー層を室温で乾燥させ、次に200℃で30分間加熱した。続いて、プライマー層コーティング組成物に使用した同じコーティングプロセスを使用して、各試料をフッ素化層コーティング組成物(FLC1)中に浸した。次に、120℃で30分間最終加熱処理を行う前に、各試料を室温で乾燥させた。
【0248】
比較実施例Aにおいて、ガラスプレートを実施例1〜6について上述するように洗浄した。ガラスプレートは、FLC1のみ以外、プライマー層コーティング組成物に浸さなかった。
【0249】
実施例1〜6及び比較実施例Aにおいて、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)及びヘキサデカン(HD)接触角を、上述の測定方法を使用して測定した。結果を以下の表1にまとめる。
【0250】
【表1】
【0251】
実施例7〜12及び比較実施例B
実施例7〜10のそれぞれにおいて、5.1cm×7.6cmの寸法の別個のステンレススチールクーポンを、120分間、硫酸及び過酸化水素洗浄溶液(硫酸に対する過酸化水素の体積比(v/v)は3:1であった)に浸した。その後、各ステンレススチールクーポンを脱イオン水ですすぎ、窒素ガス流で乾燥させた。各ステンレススチールクーポンを、1分当り11.5センチメートル(cm/分)の速度でプライマー層コーティング組成物(PLC)に浸漬し、30秒間、プライマー層コーティング組成物中に保持した後、11.5cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物から取り出した。実施例7、8、10、11、及び12をPLC9に浸漬し、実施例9をPLC7に浸漬した。各プライマー層を室温で乾燥させ、次に150℃で10分間加熱した。続いて、表2に示すように、各試料をフッ素化層コーティング組成物中に浸した。プライマー層コーティング組成物に使用した同じコーティングプロセスをフッ素化層コーティング組成物に使用した。次に、120℃で10分間最終加熱処理する前に、各試料を室温で乾燥させた。室温に冷却する時に、試料の表面を3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7100で湿らせたペーパータオルで洗浄した。
【0252】
比較実施例Bにおいて、ステンレススチールクーポンを類似する様式で洗浄したが、プライマー層コーティングは適用されなかった。ステンレススチールクーポンをフッ素化層コーティング組成物(FLC2)にのみ浸した。
【0253】
実施例7〜12及び比較実施例Bにおいて、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)接触角を、上述の接触角を測定するための方法を使用して測定した。初期接触角として結果を以下の表2に報告する。実施例7〜12及び比較実施例Bの試料は、次に、上述の摩耗試験−方法1を使用して、200、2000、5000、又は10000サイクルの摩耗試験を受けた。実施例7〜12及び比較実施例Bにおいて、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)接触角を、上述の接触角を測定するための方法を使用して、摩耗試験を行った試料上で測定した。各摩耗試験後の接触角の結果を以下の表2に報告する。比較実施例Bの接触角データは、200回の摩耗サイクル後のみに得た。
【0254】
【表2】
【0255】
実施例13及び比較実施例C
#6 Meyer棒を使用して、幾つかの50マイクロメートル厚のPETフィルムをプライマー層コーティング組成物(PLC13)でコーティングした。典型的な乾燥コーティング厚は、0.15〜0.20マイクロメートルの範囲であった。120℃で5分間加熱する前に、プライマー層コーティングを室温で乾燥させた。
【0256】
実施例13において、#6 Meyer棒を使用して、プライマー層コーティングされたPETフィルムをフッ素化層コーティング組成物(FLC3)でコーティングした。120℃ 10分間の最終加熱処理を行う前に、コーティングされたフィルムを室温で乾燥させた。オーブンから取り出すときに、フィルムをペーパータオルとHFE 7200DLで3回拭いた。
【0257】
比較実施例Cにおいて、FLC3を除き、PETフィルムをプライマー層コーティング(PCL13)でコーティングした。
【0258】
実施例13及び比較実施例Cは、摩耗試験−方法2に従い、摩耗試験を行った。以下の表3に示すように、摩耗の前と後の水接触角を測定した。
【0259】
【表3】
【0260】
実施例14〜20及び比較実施例D〜F
実施例14〜16のそれぞれにおいて、2.5cm×7.5cmの寸法の別個のガラススライドをALCONOX粉末のスラリーで洗浄した。その後、ガラスプレートを脱イオン水ですすぎ、窒素ガス流で乾燥させた。各ガラスプレートを、40cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物(PLC10)に浸漬し、60秒間、プライマー層コーティング組成物中に保持した後、40cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物から取り出した。各プライマー層を室温で乾燥させ、次に120℃で10分間加熱した。続いて、各試料をフッ素化層コーティング組成物(表4に示されるようにFLC8〜FLC10)中に浸し、5分間フッ素化層コーティング組成物中に保持した後、フッ素化層コーティング組成物から取り出した。次に、メタノールですすぐ前に、各試料を10分間室温で乾燥させた。試料を室温で再び乾燥させた後、それらを120℃で15分間、最終加熱処理で処理した。
【0261】
比較実施例D〜Fにおいて、実施例14〜16について上述されるように、ガラスプレートを洗浄した。ガラスプレートは、表4に示されるように、FLC8〜FLC10のみ以外、プライマー層コーティング組成物に浸されなかった。
【0262】
実施例17〜19において、120℃に設定したオーブン(それぞれ1メートルの長さの3つのオーブン)、1分当り10フィートのライン速度のグラビアロール塗布機(#110ロール)を用いて、PETフィルムをプライマー層コーティング組成物(PLC11)でコーティングした。下塗りされたPETを5.0cm×10cmの寸法の小片に切断した。続いて、各試料をフッ素化層コーティング組成物(表4に示されるようにFLC8〜FLC10)の中に浸し、5分間フッ素化層コーティング組成物中に保持した後、フッ素化層コーティング組成物から取り出した。次に、メタノールですすぐ前に、各試料を10分間室温で乾燥させた。試料を室温で再び乾燥させた後、それらを120℃で15分間最終加熱処理で処理した。
【0263】
実施例20において、5cm×10cmの寸法のステンレススチールクーポンをALCONOX粉末のスラリーで洗浄した。その後、ステンレススチールクーポンを脱イオン水ですすぎ、窒素ガス流で乾燥させた。各クーポンを、40cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物(PLC10)に浸漬し、60秒間、プライマー層コーティング組成物中に保持した後、40cm/分の速度でプライマー層コーティング組成物から取り出した。プライマー層を室温で乾燥させ、次に120℃で10分間加熱した。続いて、試料をフッ素化層コーティング組成物(FLC9)中に浸し、5分間フッ素化層コーティング組成物中に保持した後、フッ素化層コーティング組成物から取り出した。次に、メタノールですすぐ前に、試料を10分間室温で乾燥させた。試料を室温で再び乾燥させた後、120℃で15分間、最終加熱処理で処理した。
【0264】
実施例14〜20及び比較実施例D〜Fにおいて、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)接触角を、上述の測定方法を使用して測定した。結果を以下の表4にまとめる。
【0265】
【表4】
【0266】
実施例21
実施例21において、5.1cm×7.6cmの寸法のステンレススチールクーポンを、120分間、硫酸及び過酸化水素洗浄溶液(硫酸に対する過酸化水素の体積比(v/v)は3:1であった)に浸した。その後、ステンレススチールクーポンを脱イオン水ですすぎ、窒素ガス流で乾燥させた。ステンレススチールクーポンを、1分当り11.5センチメートル(cm/分)の速度でプライマー層組成物(PLC12)に浸漬し、30秒間、プライマー層組成物中に保持した後、11.5cm/分の速度でプライマー層組成物から取り出した。プライマー層を室温で乾燥させ、次に150℃で10分間加熱した。続いて、試料をフッ素化層コーティング組成物(表5に示されるように、FLC10)中に浸し、5分間フッ素化コーティング層組成物中に保持した後、フッ素化層コーティング組成物から取り出した。次に、メタノールですすぐ前に、試料を10分間室温で乾燥させた。室温で再び乾燥させた後、同等物を120℃で15分間加熱した。
【0267】
実施例21において、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)接触角を、上述の接触角を測定するための方法を使用して測定した。初期接触角として結果を以下の表5に報告する。試料は、次に、上述の摩耗試験−方法1を使用して、5,000又は10,000サイクルの摩耗試験を受けた。実施例21において、静的、前進(adv.)、及び後退(rec.)の水(H
2O)接触角を、上述の接触角を測定するための方法を使用して、摩耗試験を行った試料上で測定した。各摩耗試験後の接触角の結果を以下の表5に報告する。
【0268】
【表5】