特許第5950936号(P5950936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許5950936圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法
<>
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000003
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000004
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000005
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000006
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000007
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000008
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000009
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000010
  • 特許5950936-圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950936
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20160630BHJP
   A61C 7/16 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61C13/00 C
   A61C7/16
【請求項の数】4
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-547508(P2013-547508)
(86)(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公表番号】特表2014-507971(P2014-507971A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】US2011064356
(87)【国際公開番号】WO2012091902
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/428,498
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】シナデル, ディヴィッド ケー. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】アング, マ タツィン
(72)【発明者】
【氏名】イック, リー シー.
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー, ジェームス ディー.
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507682(JP,A)
【文献】 特許第4718488(JP,B2)
【文献】 特開平5−245167(JP,A)
【文献】 米国特許第6213767(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00
A61C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用アセンブリの製造方法であって、
圧縮性材料を歯科用物品の外側ベース面と接触させて配置する工程と、
第1の分量の未硬化歯科用組成物を前記圧縮性材料と前記外側ベース面の少なくとも一方に、前記未硬化歯科用組成物の少なくとも一部分が、前記外側ベース面と前記圧縮性材料との間に配置されるように塗布する工程と、
前記圧縮性材料を前記外側ベース面に固定するために、前記第1の分量の歯科用組成物の少なくとも一部分を硬化させる工程であり、前記外側ベース面の前記少なくとも一部分が、硬化した前記歯科用組成物に接していない、硬化させる工程と、
その後、第2の分量の未硬化歯科用組成物を前記圧縮性材料に塗布する工程であり、前記第2の分量が、前記外側ベース面に垂直な方向から見たときに前記第1の分量の硬化した一部分を少なくとも部分的に取り囲むようにする、塗布する工程と、を含む方法。
【請求項2】
歯科用アセンブリの製造方法であって、
歯に固着するように適応された外側ベース面を有する歯科用物品を準備する工程と、
第1の分量の未硬化歯科用組成物を、前記外側ベース面の全体より小さい前記外側ベース面の一部分に塗布する工程と、
圧縮性材料を前記第1の分量並びに前記外側ベース面と接触させて配置する工程と、
前記第1の分量を硬化させて前記圧縮性材料を前記歯科用物品に固定する工程と、
第2の分量の未硬化歯科用組成物を前記圧縮性材料に塗布して、前記外側ベース面に垂直な方向から見たときに、前記第2の分量が、硬化した前記第1の分量を少なくとも部分的に取り囲む工程と、を含む方法。
【請求項3】
歯科用アセンブリであって、
歯に固着するように適応された外側ベース面を有する歯科用物品と、
前記外側ベース面の少なくとも一部分と接触して拡がる圧縮性材料と、
前記圧縮性材料に吸収され、前記外側ベース面の全体より小さい前記外側ベース面の一部分と接触する硬化歯科用組成物と、
前記圧縮性材料に吸収され、前記外側ベース面に垂直な方向から見たときに前記硬化歯科用組成物を少なくとも部分的に取り囲む未硬化歯科用組成物と、を含む、歯科用アセンブリ。
【請求項4】
前記硬化歯科用組成物が、前記外側ベース面の全面積に対して前記外側ベース面の約2パーセント〜30パーセントに亘って拡がる、請求項3に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
歯科用のアセンブリ及び関連方法が提供される。より詳細には、歯科用物品を歯の表面に固着するアセンブリ及び関連した方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
歯科学分野における歯科用物品の歯への固着を含む応用例は、数が多く様々である。そのような1つの応用例は、特殊な歯列矯術分野にある。歯列矯正術は、患者の歪んだ歯を適切な位置に矯正し誘導する工程と関連した歯科学分野である。そのような処置の恩恵には、咬合機能、清潔さ及び審美性の改善がある。
【0003】
矯正治療は、一般に、治療中に患者の歯に一時的に固着される歯科用物品(又は、装具)を使用する。固定式装具治療として知られる一種の矯正治療では、ブラケットと呼ばれる装具が、患者の歯の表面に取り付けられる。臼歯管と呼ばれる他の装具は、一般に、患者の後方(臼歯)歯に取り付けられる。治療を行うときは、ステンレス鋼又は形状記憶合金の「U」字形アーチワイヤをブラケットのスロットに入れ、ワイヤの終端が臼歯管に収容される。最初、アーチワイヤは、ブラケット及び臼歯管と係合されたときに撓み、時間の経過により徐々に元の形状に戻る。このようにして、アーチワイヤの弛緩によって、歯が元の位置から所定の位置に動かされる。
【0004】
接着剤を使用して矯正装具を歯に固着することは一般的な手法である。接着剤は、一般に、装具の固着面に被覆される。装具を歯に取り付けた後で、接着剤を固化して強い固着を作成する。適切な歯列矯正接着剤は、2年以上続くことがある矯正治療期間中ずっと装具と歯との間に安定かつ確実な固着を維持するために高い強度を提供しなければならない。しかしながら、接着剤固着は、治療が終わったときに装具が過度に取り外しが難しくなるほど強力であってはならない。また、理想的な接着剤は、装具を歯に付けた後でずれるのを防ぎ、歯列矯正医による取り扱いを容易にする適度な粘着性と粘性を有しなければならない。
【0005】
従来の接着剤は、石英やシリカ充填材などの大量の硬質充填材が加えられた高分子樹脂である。固着手順では、通常、接着剤が隙間充填材として働く必要があるため、装具の固着面に多めの接着剤が塗布される。歯表面と装具の固着面との間にずれがあるときは、固着を維持し、食物とプラークが溜まる可能性のある隙間ができるのを防ぐため、接着剤が、装具と歯との間の空間を埋める。装具が歯に完全に取り付けられたとき、過剰な接着剤は、基部の周囲に沿って滲み出る。この過剰な接着剤は、「フラッシュ」として知られ、接着剤の硬化前に施術者によって手で除去される。
【0006】
接着剤フラッシュの存在は、有害なことがある。特に装具の不注意による乱れが固着信頼性に悪影響を及ぼすことがあるので、フラッシュの除去は、時間がかかる。更に、過剰な接着剤の不完全な除去は問題となる。不完全な除去は、特に、アクセスが制限された後方領域とフック式装具の後ろで一般的である。完全に除去されない場合、過剰な接着剤は、細菌が溜まる場所を提供する。そのような細菌は、基礎となる歯構造を侵食し劣化させ、歯の脱灰と変色の原因になる。更に、露出した接着面は、食物又は飲料で汚れがちである。最後に、硬い充填剤の存在は、硬化後に接着剤の除去を困難にし、患者を不快にする。
【0007】
圧縮性材料を使用する改善されたアセンブリ、方法、及びキットは、米国特許公開第2008/0096150号(Cinader)に開示されている。これらは、矯正装具のような歯科用物品を歯に固着する際に有利に適用することができる。例えば、矯正装具の基部の表面と歯構造との間の隙間を埋めることができる圧縮性材料を、未充填又は少し充填した硬化性歯科用組成物と組み合わせて、歯列矯正接着剤を提供することができる。この組み合わせで被覆された装具が、歯に取り付けられたとき、過剰な歯科用組成物が、圧縮性材料から横方向に押し出され、圧縮性材料が、装具と歯との間に保持される。フラッシュの掃除が不要だと好都合である。余分な歯科用組成物が充填されないか少しだけ充填されるので、歯科用組成物を歯の上に保持することができ、患者の歯ブラシによってやがて除去することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
米国特許公開第2008/0096150号(Cinader)に開示された圧縮性材料を使用する多成分系は、当該技術分野における重要な進歩を提供する。しかしながら、そのような概念を、種々様々な物品、歯科用組成物、及び圧縮性材料と共に使用できるようにすることに継続的な関心がある。特に関心があるのは、圧縮性材料と歯科用組成物との組み合わせを歯科用物品に取り付ける方法である。歯科用物品は、一般に、種々様々な状況で特定の歯科用物品への固着を可能にするアンダーカット特徴形状を有する。矯正装具は、一般に、機械的保定によって十分な固着強度を提供するアンダーカット特徴形状を有する固着基部面を有する。
【0009】
一態様では、歯科用アセンブリの製造方法が提供される。方法は、圧縮性材料を歯科用物品の外側ベース面と接触させて配置する工程と、第1の分量の未硬化歯科用組成物を圧縮性材料と外側ベース面の少なくとも一方に、未硬化歯科用組成物の少なくとも一部分が、外側ベース面と圧縮性材料との間に配置されるように塗布する工程と、第1の分量の歯科用組成物の少なくとも一部分を硬化させて、圧縮性材料を外側ベース面に固定する工程であって、外側ベース面の少なくとも一部分が、硬化した歯科用組成物に接していない工程と、第2の分量の未硬化歯科用組成物を圧縮性材料に塗布する工程であって、第2の分量が、外側ベース面に垂直な方向から見たときに第1の分量を少なくとも部分的に取り囲むようにする工程と、を含む。
【0010】
別の態様では、歯科用アセンブリの製造方法は、歯に固着するように適応された外側ベース面を有する歯科用物品を準備する工程と、第1の分量の未硬化歯科用組成物を、外側ベース面全体より小さい外側ベース面の一部分に塗布する工程と、圧縮性材料を第1の分量及び外側ベース面と接触させて配置する工程と、第1の分量を硬化させて圧縮性材料を歯科用物品に固定する工程と、第2の分量の未硬化歯科用組成物を圧縮性材料に塗布して、外側ベース面に垂直な方向から見たときに、第2の分量が、第1の分量を少なくとも部分的に取り囲む工程と、を含む。
【0011】
更に別の態様では、歯に固着するように適応された外側ベース面を有する歯科用物品を準備する工程と、
圧縮性材料を外側ベース面と接触させて配置する工程と、圧縮性材料と外側ベース面の少なくとも一部分に未硬化歯科用組成物を塗布する工程と、外側ベース面全体の面積より小さい面積を有する外側ベース面の一部分上に拡がる歯科用組成物を硬化する工程であって、外側ベース面の一部分の上に延在しない少なくとも一部分の歯科用組成物が未硬化のままになるようにする工程と、を含む、アセンブリの製造方法が提供される。
【0012】
更に別の態様では、歯に固着するように適応された外側ベース面を有する歯科用物品と、外側ベース面の少なくとも一部分と接触し全体に拡がる圧縮性材料と、圧縮性材料に吸収され、外側ベース面全体より小さい外側ベース面の一部分と接触する硬化歯科用組成物と、圧縮性材料に吸収され、外側ベース面に垂直な方向から見たときに硬化組成物を少なくとも部分的に取り囲む未硬化歯科用組成物と、を含む、歯科用アセンブリが提供される。
【0013】
歯科用物品の表面積に対する硬化歯科用組成物の被覆領域を制限することにより、いくつかの驚くべき利点が提供される。第1に、圧縮性材料の柔軟性が大きく保持され、固着中の接着アセンブリの歯表面との順応性が改善される。第2に、この構成により、歯科用組成物を使用して、未硬化歯科用組成物によって部分的又は完全に封入される歯科用物品に圧縮性材料を固定することができる。この結果、歯科用物品の表面領域の縁で破壊界面として働くことがある境界面が減少するか又はなくなり、それにより、接着信頼性が強化される。第3に、これらの方法により、表面領域全体に亘り圧縮性材料の厚さをカスタマイズすることができ、それにより、固着中の接着アセンブリの歯表面への合致が改善される。最後に、これらの方法は、これらの歯科用アセンブリの生産を著しく容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による歯科用アセンブリの特定の構成要素の側面断面図。
図2図1で参照した歯科用アセンブリの中間物を作成する際の一工程を示す側面断面図。
図3図1及び図2で参照した歯科用アセンブリの中間物を示す側面断面図。
図4図1図3で参照した完成した歯科用アセンブリを示す側面断面図。
図5】本発明の別の実施形態による歯科矯正アセンブリの構成要素の垂直断面図。
図6図5で参照した歯科用アセンブリを作成する際の一工程を示す側面断面図。
図7図5及び図6で参照された完成した歯科用アセンブリを示す側面断面図。
図8】本発明の更に別の実施形態による固着可能な矯正装具の側面図。
図9】本発明の別の実施形態によるパッケージ物品の斜視図。パッケージ物品は、部分的に開かれたカバーを有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載されるアセンブリ及び方法は、歯科用物品の表面(例えば、歯科矯正装具の基部)と歯牙構造との間の隙間を充填することができる圧縮性材料を含む。本明細書に記載されるアセンブリ及び方法は、任意に、圧縮性材料と、有利に不充填又は低充填であることができる硬化性歯科用組成物との組み合わせを含む。圧縮性材料と不充填又は低充填硬化性歯科用組成物との組み合わせは、適用のための適切な取り扱い特性と硬化の際の適切な接着剤特性とを提供することができる一方、所望に応じて、施術者が余分な歯科用組成物を簡単に除去することを可能にする。あるいは、そのような余分な不充填若しくは低充填の硬化性又は硬化した歯科用組成物は、典型的には、ブラッシングによって数日以内に除去され得る。
【0016】
本発明のアセンブリ及び方法は、歯科用物品を歯牙構造に適用し、硬化性歯科用組成物を硬化すると、固着の一部となる圧縮性材料を含む。本明細書で使用するとき、「圧縮性材料」は、典型的には、歯科用物品を歯牙構造上に置く及び/又は位置付けるのに用いられる、圧力を加えると体積が減少する材料である。歯科用物品を歯構造上に配置し及び/又は位置決めするために典型的に使用される力は、面積0.0164平方インチ(0.11cm)の固着基部に印加される0.5〜5重量ポンド(2.2〜22.2ニュートン)であり、これは、0.2〜2.0メガパスカル(MPa)の計算圧力に対応する。圧縮体積/初期体積の比率(即ち、圧縮率)は、使用される圧縮性材料により異なる。しかしながら、圧縮率は、典型的には0.9〜0.001、特定の実施形態では0.7〜0.01、他の特定の実施形態では0.5〜0.1である。
【0017】
本明細書で使用するとき、圧縮性材料は弾性及び/又は非弾性材を含むことができる。弾性圧縮性材料は、例えば、室温又は口腔温で、材料を圧縮するために使用される圧力の解放後、好ましくは30秒以内に実質的に回復する(例えば、少なくとも初期体積の99%まで)材料を含む。弾性圧縮性材料の例には、ポリマーフォーム、弾性スクリム、弾性不織布、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
非弾性圧縮性材料は、実質的に回復しない材料、即ち、室温又は口腔温度で、好ましくは材料を圧縮するために使用された圧力の解放後30秒以内に、初期体積の最大でも50%、特定の実施形態では最大でも25%、10%、更には5%まで回復する材料である。非弾性圧縮性材料の例には、脆性材料(例えば、架橋ポリマーフォーム、ガラスバブル、ガラス繊維、セラミック繊維、及びこれらの組み合わせ)と、反発のない他の材料(例えば、極柔材料、即ち最も柔軟で展性がある状態の材料)が挙げられるが、これらに限定されない。実質的に回復性のない材料の例には、実質的に回復性のない発泡材、実質的に回復性のない繊維及び/又は繊維マット、圧縮時に少なくとも部分的に潰れる空所を有する材料(例えば、紙、ポリマー、及び/又はポリマーフォームから作成された折り畳み式ハニカム構造)、織物ニット構造、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態については、歯科用物品を歯牙構造上に置いた及び/又は位置付けた後(例えば、歯科用組成物を硬化(hardening)及び/又は硬化(curing)する前及び/又は最中)に、圧縮性材料を圧縮するのに使用される圧力を維持する必要がないという点で、非弾性圧縮性材料が有利であり得る。
【0019】
例えば、多孔質材料、発泡材料、及びカプセルを含む材料を含む多種多様な圧縮性材料を、本発明のアセンブリ及び方法に使用することができる。圧縮性材料は、親水性材料、疎水性材料、又はこれらの組み合わせであることができる。圧縮性材料はあらゆる色であることができ、特定の実施形態には白色又はオフホワイトの圧縮性材料が好ましい。特定の実施形態では、不透明又は有色の圧縮性材料は、装具が取り外された後で歯表面に残る物質の視覚化を支援することができる。圧縮性材料は、均一又は不均一な厚さのものでよい。圧縮性材料は、層状であってよい(例えば、単層又は多層)。多層圧縮性材料は、同じ層及び/又は互いに異なる層でよい。
【0020】
圧縮性材料を含むアセンブリは、更に、圧縮性材料と接する追加の構成要素を含むことができる。例えば、アセンブリは、圧縮性材料と接して使用中に水分許容性を高める水スカベンジャー(例えば、沈降シリカ及び/又は分子ふるい)を含むことができる。別の例では、アセンブリは、更に、圧縮性材料の物理特性と接着特性を修正するために、圧縮性材料に接して(例えば、埋め込まれるか固着された)充填材(例えば、フルオロアルミノシリケートガラス粒子)を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、圧縮性材料は、歯科用接着剤や下塗剤など、必要に応じて部分的に硬化された発泡硬化性歯科用組成物であり、又はこの組成物を含む。例えば、炭化水素発泡剤(例えば、プロパンとイソブタン重量で1:1の混合物)を使用して、メタクリルレート含有硬化性歯科用組成物を発泡させることができる。
【0022】
圧縮性材料が多孔質材料である実施形態では、多種多様な多孔質材料を、本発明のアセンブリ及び方法に使用することができる。本明細書で使用するとき、「多孔質材料」は、孔(例えば、空隙及び/又は脈管)を含む材料である。好ましい実施形態では、孔は互いに連通しているので、その中に含まれる材料(例えば、硬化性歯科用組成物)は、例えば、多孔質材料を圧縮している間、孔の間を通過する(例えば、パーコレートする)ことができる。そのような実施形態では、多孔質材料と硬化性歯科用組成物の表面エネルギーは、例えば、小さい差を有するように選択することができ、その結果、硬化性歯科用組成物が、圧縮性材料を湿らせて、硬化するまで多孔質材料中に硬化性歯科用組成物が残留するのを支援し、機械的性質と加水分解安定性を高めることができる。
【0023】
例示的な多孔質材料には、フォーム(例えば、セルロースフォーム、ガラスフォーム、ポリマーフォーム、及びこれらの組み合わせを含むポリマーフォームなど)、スポンジ、不織布、ガラス繊維(例えば、ガラスウール)、セラミック繊維、綿繊維、アセテート繊維、織マット、不織マット、スクリム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な材料は、例えば、米国特許第4,605,402号(Iskra)、同第4,865,596号(Weismanら)、同第5,614,570号(Hansenら)、同第6,027,795号(Kabraら)、同第6,645,618号(Hobbsら)、日本特許出願公開JP63170437(Sakadouら)、及びNachtナらの「The microsponge:a novel topical programmable delivery system」,Topical Drug Delivery Formulations,D.W.Osborn and A.H.Amman(Eds.),Marel Dekker,New York,pp.299〜325(1990)に記載されている。
【0024】
圧縮性材料が繊維を含む実施形態の場合、繊維は、マット又はスクリムを形成するために必要に応じて拘束されてもよい(例えば、反応性シラン、硬化性樹脂、又はコロイドシリカを使用して)。特定の実施形態では、マットは、例えば、短く切断したガラスや他の緩く束縛された繊維を使用して作成することができる。必要に応じて、例えば、水溶性又は分散性封入材(例えば、ポリビニルアルコール)を使用することにより、繊維を一時的にシート又はウェブ内に封入して切断と取り扱いを支援することができる。そのような実施形態では、マットを所望の形状に切断し、ブラケットの外側ベース面に取り付けることができ、また一時的な封入材を洗い流すことができる。特定の実施形態では、補強材(例えば、短い切断した繊維)を加える担体として不織布構造を使用して、硬化時に形成される複合物の強度を高めることができる。
【0025】
必要に応じて、圧縮性材料を調製するためにメルトブロー繊維形成法が使用される。標準のメルトブロー繊維形成法は、同一出願人による米国特許公開第2006/0096911号(Breyら)に開示されている。ブロー成形されたマイクロファイバー(BMF)は、溶融ポリマーをダイに入れてそこから流し出すことによって作製され、この流れは、ダイ空洞内のダイの幅全体に広がっており、ポリマーは、一連のオリフィスを通じてダイからフィラメントとして押出される。一実施形態では、加熱された気流は、ダイ出口(チップ)を形成する一連のポリマーオリフィスと隣接している空気分流板及びエアナイフアセンブリを通過する。この加熱された気流は、温度と速度の両方を調節することで、ポリマーフィラメントを所望の繊維直径まで細くする(延伸する)ことができる。BMF繊維は、この乱気流の中を、回転している表面に向かって運ばれ、表面で回収されるとウェブが形成される。
【0026】
従来、「ブローマイクロファイバー」は、液化した繊維形成材料を型の微細な穴から高速ガス流に押し出すことによって作成された個別のきわめて細い不連続的な繊維であり、押し出された材料は、最初に、ガス流によって希釈され、次に繊維の塊として凝固し、ガス流内で横方向に動かされるスモールメッシュワイヤスクリーン上に収集される。スクリーンの穴は、ガス流の一部分の通過を可能にするが、繊維は、スクリーン上に、平坦又は厚さが一定の凝集性ウェブとして集まる。ウェブは、最も多くの場合、収集スクリーンから除去され有用なサイズに切断された後で収集形態で使用される。
【0027】
特定の実施形態では、圧縮性材料は、硬化性歯科用組成物(例えば、フルオロアルミノシリケートガラス繊維)の全て又は一部分を含む繊維を含むことができる。
【0028】
ポリマー発泡体としては、例えば、米国特許第5,770,636号(Wernsingら)及び同第5,817,704号(Shivelyら)に記載されているような連続気泡発泡体、例えば、WestermanらのBritish Journal of Sports Medicine,36:205〜208(2002)に記載されているような独立気泡発泡体、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。あるいは、独立気泡発泡体は、例えば、米国特許第6,645,618号(Hobbsら)に記載されているように配向しマイクロファイバー化した場合に、多孔質繊維性物品に変換することができる。発泡体構造の表面における親水性/親油性の均衡は、例えば、米国特許第6,750,261号(Clearら)に記載されているように、調製中に、例えば、高分子電解質又は官能化粒子を使用して修飾することができる。いくつかの実施形態では、発泡体は、熱的手段、化学的手段(例えば、酸エッチング、コロナ処理、プラズマエッチング、グロー放電、若しくは火炎処理)、及び/又は光化学的手段(例えば、紫外線照射)によって表面修飾することができる。
【0029】
特定の実施形態では、ポリマー発泡体は、少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも70体積%、より好ましくは少なくとも85体積%、更により好ましくは少なくとも95体積%の空隙体積を有する。特定の実施形態では、ポリマー発泡体は、最大でも99.9体積%、好ましくは最大でも99.5体積%、より好ましくは最大でも99体積%、更により好ましくは最大でも98体積%の空隙体積を有する。ポリマーの嵩密度が、典型的にはほぼ1.0であるポリマー発泡体の場合、発泡体密度は空隙体積と密接に相関する。
【0030】
特定の好ましい実施形態では、アセンブリは更に、多孔質材料の小孔内に少なくとも部分的に硬化性歯科用組成物を含むことができる。そのような実施形態では、空隙体積の少なくとも80体積%、好ましくは少なくとも90体積%、より好ましくは100体積%が硬化性歯科用組成物で充填される。
【0031】
圧縮性材料が多孔質発泡体(例えば、セルロース発泡体、ガラス発泡体、セラミック発泡体、ポリマー発泡体、及びこれらの組み合わせ)である特定の実施形態では、発泡体を当該技術分野において既知の多種多様な方法によって調製することができる。例えば、多孔質発泡体は、1つ以上の起泡剤を材料に組み込み、起泡剤(1つ以上)を活性化することによって調製することができる。発泡剤とも呼ばれる起泡剤は、プラスチック、ゴム、及び熱硬化性樹脂を発泡させて、気泡質構造を材料に付与するために使用することができる。化学起泡剤は、活性化温度まで加熱されたとき、分解してガスを放出することによってセルを形成する。一方、物理的発泡剤は、通常は室温で液状であり、加熱すると揮発する。発泡体はまた、泡若しくは中空カプセルを材料中に分散することによって、又は物理的発泡剤を封入し、加熱すると泡に拡張する微小球を使用することによって調製することができる。あるいは、連続気泡発泡体は、油中水型エマルションを混合し、油相を熱的又は化学的に重合し、次に水を除去することによって作成することができる。圧縮性材料が多孔質発泡体である特定の実施形態では、多孔質発泡体は、硬化性歯科用組成物を発泡させ、必要に応じて少なくとも部分的に硬化させることによって調製することができる。例えば、メタクリルレートを含む硬化性歯科用組成物は、炭化水素発泡剤(例えば、プロパン、イソブタン、又はロパンとイソブタンとの重量で1:1の混合物などの組み合わせ)を使用して発泡されてもよい。
【0032】
圧縮性材料がカプセルを含む実施形態では、カプセルは好ましくは中空であり、歯科用装具を歯牙構造に適用する間に通常の圧力を受けることによって破裂することができる。必要に応じて、カプセルを含むアセンブリは更に、カプセルの外側面の少なくとも部分的に硬化性歯科用組成物を含むことができる。必要に応じて、中空カプセルを含むアセンブリは、更に、カプセル内に少なくとも部分的にある硬化性歯科用組成物を含むことができる。必要に応じて、中空カプセルを含むアセンブリは、更に、カプセルの少なくとも一部分の内側に液体(例えば、水性又は非水性)を含むことができる。例えば、中空カプセルを含むアセンブリは、更に、カプセルの少なくとも一部分の内側に水を含むことができ、この水は、カプセルが圧縮時に破壊されたときに放出されてもよい。圧縮時の水の放出は、例えば、圧縮性材料が、溶解及び/又は分散時に有益であり得る水溶性又は分散性材料(例えば、ポリアクリル酸)を含む場合に有用である。水の放出は、また、酸塩基硬化反応を開始することがある。あるいは、カプセルは、酸化還元対の半分を含み、放出時に硬化反応を開始することがある。例えば、マイクロカプセル(即ち、典型的には10マイクロメートル未満の直径を有するカプセル)、中空ガラスビーズ(例えば、ガラスバブル)、中空プラスチックビーズ、セラミックバブル、及びこれらの組み合わせを含む種々様々なカプセルを使用することができる。代表的な材料は、例えば、米国特許第4,303,730号(Torobin)、同第4,336,338号(Downsら)、同第5,045,569号(Delgado)、及び同第5,861,214号(Kitanoら)に開示されている。
【0033】
本発明のアセンブリ及び方法は、歯科用物品と圧縮性材料を含む。特定の実施形態では、アセンブリは、歯科用物品の表面に取り付けられた圧縮性材料層を含む。圧縮性材料がその表面に取り付けられた歯科用物品は、下塗りされた接着剤上に剥離基材(例えば、剥離ライナー)を有する歯科用物品(例えば、プレコート歯科矯正装具)とは区別すべきである。物品の使用前又は使用中に除去されるように設計された剥離基材とは対照的に、歯科用物品の表面に取り付けれた圧縮性材料は、物品を使用する間、歯科用物品上に残るように設計されており、実際には、歯科用物品と硬化性歯科用組成物を歯牙構造に適用し、硬化性歯科用組成物を硬化すると、固着の一部となる。
【0034】
外側ベース面と圧縮性材料を有する歯科用物品を含む、本発明のアセンブリ及び方法の実施形態の場合、圧縮性材料は、圧縮性材料が物品の外側ベース面に連続層を形成できるようなサイズと形状のものでよい。代替の実施形態の場合、圧縮性材料は、物品の表面に不連続層(例えば、中心の穴)を形成できるようなサイズと形状のものでよい。
【0035】
圧縮性材料は、物品の外側ベース面より大きい領域、物品の外側ベース面と同一の広がりを持つ領域、又は物品の外側ベース面より小さい領域を有する層を形成することができる。特定の実施形態の場合、物品の外側ベース面より小さい領域を有する層を、物品の外側ベース面上に配置して、圧縮時に圧縮性材料が物品の外側ベース面を越えて延在しないようにできるので有利である。
【0036】
圧縮性材料は、必要に応じて配置することができる2つ以上の異なる材料を含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、2つ以上の異なるタイプの繊維からマット又はスクリムを作成することができ、各タイプの繊維が、マット又はスクリムの全体に分散される。他の実施形態では、マット又はスクリムを2つ以上の異なるタイプの繊維で作成することができ、各タイプの繊維は、マット又はスクリムの全体に分散されない。例えば、あるタイプの繊維を実質的に1つの層で配置することができ(例えば、物品の外側ベース面と隣接した側により稠密な材料を形成する)、別のタイプの繊維を実質的に別の層で配置することができる(例えば、歯表面と隣接した側により嵩張った材料を形成する)。別の例の場合、あるタイプの繊維を実質的にマット又はスクリムの近くに配置することができ(例えば、より稠密な材料を形成し及び/又は圧縮性材料の縁を封止する)、別のタイプの繊維を実質的にマット又はスクリムの中心近くに配置することができる(例えば、より嵩張る材料を形成する)。特定の実施形態の場合、様々なマット又はスクリムを異なる歯に使用することができる。例えば、臼歯に使用されるマット又はスクリムは、切歯に使用されるマット又はスクリムより嵩が大きいことがある。特定の実施形態では、異なる歯に使用されるように意図された様々なマット又はスクリムを有する複数の装具を、例えば、米国特許出願公報第2006/0207893号(Cinaderら)に記載されたものと類似の単一パッケージ内に組み合わせることができる。
【0037】
図1図4に、ベース材に取り付けられた圧縮性材料を有する歯科用物品を調製する例示的な方法を示す。この方法は、1)圧縮性材料を歯科用物品へ固着し、2)圧縮性材料に適切な未硬化歯科用組成物を充填する、2つの一般的な2つの工程を含む。
【0038】
図1は、例示的な歯科用アセンブリを作成する第1の工程を示す(数字110によって広義に示され、図4で完成品が示される)。この工程では、歯科用物品100が提供される。歯科用物品100は、歯構造に固着するために適応された外側ベース面102を有する。歯科用物品100は、歯冠、ブリッジ、ベニヤ、インレー、オンレー、充填物、歯科矯正装具及び装置、並びに補綴物(例えば、部分義歯又は全体義歯)が挙げられるが、これらに限定されない、多種多様な固着可能な歯科用物品のいずれも表すことができる。非硬化硬化性歯科用組成物の第1の分量104の小滴は、表面102の一部分に選択的に塗布される。図示されたように、第1の分量104は、表面102の全体ではなく一部分の上に拡がる。必要に応じて、図示されたように、第1の分量104は、歯科用物品100の端に隣接した表面102の部分と接触することなく、表面102の中心に配置された部分と接触する。
【0039】
必要に応じて、2つ以上の分量の歯科用組成物を表面102に塗布することができる。例えば、表面102の形状が矩形の場合は、未硬化組成物の4つの個別の小滴を、表面102の各角に塗布してもよい。図示したように、第1の分量104の小滴の直径は、表面102のものより小さい。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の分量104の小滴(又は小滴)は、歯科用物品100の表面102の表面積の合計の最大でも90%、最大でも70%、最大でも50%、最大でも40%、最大でも30%、最大でも25%、最大でも20%、最大でも15%、最大でも10%、又は最大でも5%の表面102の領域上に延在する。いくつかの実施形態では、第1の分量104の小滴は、歯科用物品100の表面102の表面積の合計の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくともほとんど7%、少なくとも10%、又は少なくとも15%の被覆領域を有する。
【0041】
更に図1に示したように、第1と第2の主表面107、109を有する多孔質圧縮性材料106が、歯科用物品100の表面102上に位置決めされる。圧縮性材料106内の小孔は、圧縮性材料106の第2の主表面109に垂直な方向に沿った圧縮性材料106の少なくとも一部分を通る(相互接続する)。この実施形態では、圧縮性材料106は、圧縮性材料106が化学線を通すことを可能にする透明材料を含む。いくつかの実施形態では、またこの図で示されたように、圧縮性材料は、基礎となる表面102のものと実質的に一致する横方向のサイズ及び形状を有する。圧縮性材料106の厚さは、固着中に歯科用物品100が歯表面に設置されたときに存在する可能性のある隙間を埋めるのに十分であることが好ましい。
【0042】
図2に示された次の工程では、圧縮性材料106の第2の主表面109は、第1の分量104並びに歯科用物品100の表面102と接して配置される。圧縮性材料106の下部が、歯科用物品100と係合するとき、圧縮性材料106は、少なくとも部分的に圧縮されることが好ましい。弛緩したときに圧縮性材料106が、表面102と合致しない場合でも、この工程は、有利なことに、圧縮性材料106を表面102とほぼ相補的な形状に付勢し、それにより、これらの2つの構成要素間の接触が強化される。
【0043】
必要に応じて、図2に示したように、圧縮性材料106を第1の分量104と接触させることにより、本質的に全ての第1の分量104が、圧縮性材料106の小孔に吸収される。この構成では、第1の分量104と表面102との間に境界面111が形成され、この境界面111は、一般に、圧縮性材料106と表面102との間に形成された境界面113と共有される。代替の実施形態では、第1の分量104の一部分だけが圧縮性材料106に吸収され、第1の分量104のいくらかが、圧縮性材料106と歯科用物品100との間の界面に保持されるか、歯科用物品100の表面102にあるアンダーカット特徴形状内に保持される。いくつかの実施形態では、第1の分量104が圧縮性材料106に加えられるのは、圧縮性材料106が表面102と接触する前でも後でもよい。
【0044】
圧縮性材料106が、歯科用物品100に対して完全に設置された後で、図2に示されたように、硬化ランプ115が、第1の分量104の上に位置決めされる。次に、硬化ランプ115は、第1の分量104を硬化又は部分的に硬化させるために圧縮性材料106に透過される化学線を生成し、図3に示されたアセンブリを提供する。硬化した第1の分量104’は、圧縮性材料106と歯科用物品100を互いに接着固定する。特に、硬化した第1の分量104’は、圧縮性材料106の厚さを完全に横切っても横切らなくてもよい。
【0045】
硬化した第1の分量104’は、歯科用物品100の表面102の全表面の比較的少ない部分に拡がると有利である。いくつかの実施形態では、硬化した第1の分量104’は、歯科用物品100の表面102の全表面の最大でも90%、最大でも70%、最大でも50%、最大でも40%、最大でも30%、最大でも25%、最大でも20%、最大でも15%、最大でも10%、又は最大でも5%に拡がる。いくつかの実施形態では、硬化した第1の分量104’は、歯科用物品100の表面102の全表面の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、又は少なくとも15%に拡がる。
【0046】
硬化した第1の分量104’は、歯科用物品100と圧縮性材料106の一方又は両方に化学的に固着されてもよい。本明細書で使用されるとき、「化学的に固着された」は、化学的手段によって(共有結合などの共有電子対、配位共有結合、プレンステッド・ラウリ反応などの酸塩基相互作用、及びこれらの組み合わせなどにより)固着されるか取り付けられることを意味する。例えば、硬化性歯科用組成物(例えば、硬化性樹脂、グラスアイオノマー、樹脂変性グラスアイオノマー、及び/又はエポキシ樹脂)を硬化させて、圧縮性材料106を歯科用物品100の表面102に化学的に固着することができる。
【0047】
硬化した第1の分量104’は、圧縮性材料106と歯科用物品100の両方に機械的に固着されてもよい。本明細書で使用されるとき、「機械的に固着された」は、物理的手段(例えば、フック、ループ、突起、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、及びこれらの組み合わせなどを使用)によって、また特定の実施形態では、メッシュ(例えば、VICTORY SERIES商標のブラケット、3M Unitek(Monrovia,CA))及びガラスグリット(例えば、米国特許第5,108,285号(Tuneberg)に記載されたセラミックブラケット)によって提供されたアンダーカットを利用することにより、固着されるか取り付けられることを意味する。例えば、硬化した第1の分量104’は、歯科用物品100の表面102に配置された圧縮性材料106とアンダーカットの両方に貫入し、それにより、これらの構成要素間の機械的保持力を強化する。好ましい実施形態では、硬化した第1の分量104’が、圧縮性材料106に吸収されることにより、相互貫入網目構造が得られる。
【0048】
硬化した第1の分量104’の大部分は、圧縮性材料106内に保持されることが好ましい。この方法の驚くべき利点として、圧縮性材料106などの多孔質要素を使用することにより、圧縮性材料106が、硬化した第1の分量104’の隣りの表面102と平坦に係合することができる。そのような構成は、無充填ギャップの形成を防ぐのに役立ち、より強力でより予測可能な固着を提供するのを支援することができる。いくつかの実施形態では、圧縮性材料106内に、硬化した第1の分量104’の少なくとも50パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、又は少なくとも97パーセントが保持される。硬化した第1の分量104’の圧縮性材料106内に保持されない部分は、歯科用物品100の表面102にあるアンダーカット特徴形状内に保持されることが好ましい。
【0049】
図4に示された最終工程で、硬化していない硬化性歯科用組成物の第2の分量108が、圧縮性材料106に塗布されて、完成した歯科用アセンブリ110が提供される。図4に示されたように、硬化した第1の分量104’は、表面102に垂直な方向から見たときに表面102全体の中心にある表面102の部分と接触する。第2の分量108は、表面102に垂直な方向から見たときに、硬化した第1の分量104’を完全に取り囲む。代替として、第2の分量108は、表面102に垂直な方向から見たときに、硬化した第1の分量104’を部分的にのみ取り囲んでもよい。
【0050】
第2の分量108は、コーティング、噴霧、浸漬、ブラッシングなどを含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の方法によって、圧縮性材料106の全て又は一部分に塗布することができる。いくつかの実施形態では、圧縮性材料106は、硬化した第1の分量104’と硬化していない第2の分量108が、圧縮性材料106に含まれる空所又は小孔の本質的に全てと置き換わるように、実質的に第2の分量108で飽和される。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1と第2の分量104、108は、本質的に同じ化学組成を有する。あるいは、第1と第2の分量は、異なってもよいが、類似の組成を有してもよい。例えば、第1と第2の分量104、108は両方とも、TRANSBOND XT商標の下塗剤(3M Unitek(Monrovia,CA))などの同じ非充填硬化性樹脂から得られてもよい。あるいは、第1と第2の分量104、108は、同じ一般的な樹脂タイプから得られてもよいが、異なるレベルの充填材が添加されてもよい。例えば、一方の組成物は、TRANSBOND XT商標の下塗剤であり、他方の組成物は、TRANSBOND XT商標の光硬化接着剤(3M Unitek(Monrovia,CA))でもよい。好ましい実施形態では、第1の分量104は、第2の分量108の充填材添加物より多い充填材添加物を有する。例えば、第1の分量104は、第1の分量104の全重量を基準にして60〜90重量パーセントの範囲の充填材添加物を有することができ、第2の分量108は、第2の分量108の全重量を基準にして60重量パーセント未満の充填材添加を有してもよい。
【0052】
前述のような圧縮性材料106及び第1と第2の分量104、108の組み合わせは、歯構造からの意図しない離脱に耐えるのに十分な強度を有する固着によって歯構造に物品100を確実に固定することができる。
【0053】
他の選択肢が可能である。例えば、第2の分量108は、圧縮性材料106に実質的に均一に塗布されてもよく、又は不均一に塗布されてもよい。硬化性歯科用組成物は、圧縮性材料106上にパターン形成されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の分量108は、2液式硬化性歯科用組成物(例えば、化学的硬化下塗剤)の一方の部分であってよく、2液式硬化性歯科用組成物の第2の部分を歯表面に塗布することができる。他の実施形態では、第2の分量108は、酸化還元対の一方の部分を含むことができ、酸化還元対の他方の部分を、歯に付ける直前に第2の分量108に塗布することができる。
【0054】
特定の実施形態では、歯科用物品100の表面102への圧縮性材料106の取り付けは、例えば、Akin−Nergiz et al.,Fortschritte der Kieferorthopadie(1995)56(1):49〜55、Atsu et al.,Angle Orthodontist(2006)76(5):857〜862、Mujagic et al.,J.of Clinical Orthodontics(2005)39(6):375〜382、Newman et al.,American J.of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics(1995)108(3):237〜241、及びWiechmann,J.of Orofacial Orthopedics(2000)61(4):280〜291に記載されたサンドブラスト処理によって強化することができる。要するに、処理は、3M(St.Paul,MN)から商標Rocatec Plusで入手可能なシリカ被覆アルミナサンドブラスト媒体で表面102をサンドブラストすることを含む。サンドブラスト処理は、例えば、3M(St.Paul,MN)から商標Rocatec Jr.で入手可能なサンドブラストモジュールを用いて実施することができ、このモジュールは、1センチメートルの距離で2〜3秒間、2.8バール(280kPa)に設定される。次に、シランの溶液(例えば、3M(St.Paul,MN)から商標3M ESPE Silで入手可能なエタノール中のシラン)を表面102に塗布し、少なくとも5分間室温で乾燥させた。表面102上のシランの存在は、表面102へのメタクリルレート含有樹脂剤の固着を更に強化することができる。
【0055】
アセンブリ110は、必要に応じて、圧縮性材料106と接触させて、歯科用組成物(例えば、図4には示されない、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又はこれらの組み合わせ)の付加層を含むことができる。具体的には、そのような付加層は、表面102と圧縮性材料106との間の、表面102と反対側の圧縮性材料106上又は両方にあってもよい。そのような層は、同じ領域を覆っても覆わなくてもよく、また独立に圧縮性材料106の全て又は一部分に拡がる不連続(例えば、パターン化層)又は連続(例えば、無パターン)材料であってもよい。
【0056】
図5図7は、別の実施形態による歯科用アセンブリ210(図7に示した)を作成する例示的な方法を示す。図5に示された方法の最初の段階で、歯科用物品200と圧縮性材料206が提供される。歯科用物品200は、歯に固着するように適応された外側ベース面202を有し、露出した面201を有する圧縮性材料206は、面202に沿って歯科用物品200と接触する。
【0057】
第2の工程で、未硬化の硬化性歯科用組成物208が、圧縮性材料206に塗布され、吸収されて、図6に示した構成が提供される。必要に応じて、図示されたように、未硬化組成物208が、歯科用物品200と表面202に沿って接触するように圧縮性材料206を飽和させる。この飽和状態では、圧縮性材料206と未硬化組成物208は、互いに同一の広がりを有する。圧縮性材料206と未硬化組成物208は、概略的に構成要素と同じ空間体積を占める相互貫入網目構造を形成することが好ましい。
【0058】
図6に示された第3の工程で、硬化ランプ215は、化学線を圧縮性材料206に当てて、表面202の局所領域203の上の組成物208を選択的に硬化させる。図示されたように、局所領域203は、表面202と同一の広がりを有し、また表面202の全表面積より小さい表面積を有する。必要に応じて、図示されたように、硬化ランプ215が、圧縮性材料206を少なくとも部分的に圧縮して光散乱の分量を制限し、それにより過度に大きな面積の組成物208の硬化を防ぐ。必要に応じて、レーザーなどのコヒーレント光源である硬化ランプ215を使用することにより、組成物208の選択的硬化を、改善された精度で達成することができる。別の選択肢として、化学線は、組成物208の硬化が表面202の局所領域203全体に拡がるのを防ぐために、放射線を選択的に阻止するマスク要素を介して導かれてもよい。
【0059】
未硬化組成物208の硬化により、硬化組成物204’(図7だけ示した)が得られ、硬化組成物204’は、まだ硬化していない歯科用組成物208の分量と区別するために影付けされている。硬化組成物204’は、表面202の局所領域203から外に拡がり、露出面201で終わる。図示されたように、未硬化組成物208の局所領域203の上に延在していない部分は、未硬化のままであり、少なくとも部分的に硬化組成物204’を取り囲む。硬化組成物204’と表面202との間に境界面211が形成され、境界面211は、概略的に、圧縮性材料206と表面202との間に形成された境界面213と共用される。
【0060】
図8は、装具11(この場合は歯列矯正ブラケット)を含むアセンブリ10の例示的な実施形態を示す。頬面管、ボタン、シース、バイトオープナ、リンガルリテーナー、バンド、クリート、及び他の取り付け具などの他の装具も意図される。装具11は、ベース材12と、ベース材12から外方に延在する本体14と共に有する。ベース材12は、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、又はこれらの組み合わせから作製されるフランジであることができる。ベース材12は、細線スクリーンなどのメッシュ状構造、又はアンダーカット特徴形状を有する成形基部を含むことができる。ベース材12は、粒子(破片、砂、球体、又は刻み目を任意で含む他の構造など)を含むことができる。あるいは、ベース材12は、少なくとも部分的に硬化された歯科用組成物層(1又は2以上)から形成された特注ベースでよい。4つのタイウィング16が、本体14に接続され、タイウィング16間の空間にアーチワイヤスロット18が通る。
【0061】
ベース材12、本体14、及びタイウィング16は、口腔内で使用するのに好適であり、治療中に適用される矯正力に耐えるのに十分な強度を有するいくつかの材料のいずれかから作成されてもよい。好適な材料としては、例えば、金属材料(ステンレス鋼など)、セラミック材料(単結晶又は多結晶アルミナなど)、及びプラスチック材料(繊維強化ポリカーボネートなど)が挙げられる。必要に応じて、ベース材12、本体14、及びタイウィング16は、単一構成要素として一体的に作成される。
【0062】
圧縮性材料306、歯科用組成物の硬化した第1の分量304’、及び歯科用組成物の硬化していない第2の分量308が、ベース材全体に拡がる。圧縮性材料306は、第1及び第2の分量304’、306との組み合わせで、治療過程で歯から間違って外れないようにするのに十分な強度を有する固着によって、器具11を患者の歯に固定する働きをする。第1と第2の分量304’、306と圧縮性材料306に関連した態様、選択肢及び利点は、歯科用アセンブリ110、210に関して既に説明されており、ここでは繰り返さない。
【0063】
必要に応じて、装具11のメーカー又は供給業者は、圧縮性材料306にあらかじめ取り付けられた硬化性歯科用組成物を提供する。好ましい実施形態では、硬化性歯科用組成物を中に有する圧縮性材料306が供給される。圧縮性材料306が、メーカーによって装具11のベース材12に取り付けられ、硬化性歯科用組成物を含むアセンブリとして供給される実施形態の場合、本明細書に記載されたように、アセンブリを物品を含むパッケージ又は容器で供給することが好ましいことがある。
【0064】
代表的な容器は当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,172,809号(Jacobsら)、5,328,363(Chesterら)及び第6,089,861号(Kellyら)に記載されている。図9を参照すると、アセンブリ10を含むパッケージアセンブリ20の例示的な実施形態が示され、このアセンブリ10は、図8に示された例示的な実施形態と同じか又は異なる矯正装具を含むことができる。パッケージ20は、容器22及びカバー26を含む。カバー26は、最初に提供されたときに容器22に取り外し可能に接続され、パッケージを開いてアセンブリ10を取り出すために容器22から剥がされる。図8では、パッケージアセンブリ20を部分的に開くために、カバー26が容器22から後方に剥がされている。
【0065】
代替の実施形態では、パッケージアセンブリは、タイウィングと接触する発泡部材を有し、それにより、装具11が、適所に保持され、横方向に過度に摺動するのを防ぐ逆さブリスターである。例えば、ブリスターウェルの底と接触する代わりに、カバー26に乗るように装具11をパッケージアセンブリ内に位置決めすることができ、発泡材を、タイウィング16と接し、また装具11を適所に保持するように、ブリスターの底に配置することができる。例示的なパッケージングの概念は、2010年6月2日に出願された同時係属米国特許出願第61/350,634号(Conley)に記載されている。
【0066】
圧縮性材料306の外側面は、必要に応じて凹形状を有し、また必要に応じて、装具11と一緒に使用するための歯の外側面の凸形状と逆に合致する複合凹形状を有する。一例として、圧縮性材料306は、概略均一な厚さを有してもよく、ベース材12の外側面は、凹形状を有してもよく、その結果、圧縮性材料の外側面は、ベース材12の外側面に取り付けられたとき、ベース材12の外側面の凹形状の概略合致する凹形状を有する。別の例として、ベース材12の外側面は、圧縮性材料306の対向面の概略平面構成と合致する概略平坦形状を有してもよく、一方、圧縮性材料306の外側面は、歯表面の凸形状と逆に合致する凹形状を有してもよい。また、例えば、圧縮性材料306の厚さが基部の異なる位置に対応して変化する構成を含む他の構成が可能である。
【0067】
以前に示唆したように、装具11を含むアセンブリは、必要に応じて、圧縮性材料306に接した歯科用組成物(例えば、歯列矯正接着剤、歯列矯正下塗剤、又はこれらの組み合わせ)の追加層を含むことができる。具体的には、そのような付加層は、ベース材12と圧縮性材料306との間、ベース材12と反対側の圧縮性材料306上、又はこれらの両方にあってもよい。そのような層は、同じ領域を覆っても覆わなくてもよく、独立に圧縮性材料306の全体又は一部分に拡がる不連続(例えば、パターン化層)又は連続(例えば、非パターン化層)材料でもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、パッケージは、必須ではない硬化性歯科用組成物(例えば、光硬化性材料)の劣化に対して、長時間経過後でさえも良好な保護を提供する。そのような容器は、特に、必須ではない硬化性歯科用組成物が、必要に応じて、色変化特性を接着剤に付与する染料を含む実施形態に有用である。そのような容器は、好ましくは、広いスペクトル範囲に亘って化学線からパッケージを遮断し、その結果、必須ではない歯科用組成物は保管中に早期に退色することがない。
【0069】
好ましい実施形態では、パッケージは、ポリマー及び金属粒子を含む容器22を含む。例として、容器22は、アルミニウム充填剤で構成されるか、又は例えば、米国特許出願公開第2003/0196914(A1)号(Tzourら)に開示されたような、アルミ粉末被覆を施されたポリプロピレンで形成されてもよい。ポリマーと金属粒子の組み合わせは、変色性色素への化学放射線の透過に対して、こうした色素が光に高感受性であることが知られている場合でも、非常に有効な遮蔽を提供する。この容器はまた、良好な蒸気バリア特性も示す。結果として、硬化性歯科用組成物(1又は2以上)の粘弾性的特性は、長時間に亘ってほとんど変化しない可能性が高い。例えば、そのような容器の改善された防湿特性は、接着剤の取扱い特性の劣化に対して十分な保護を提供するので、歯科用組成物は、早期に硬化若しくは乾燥したり、あるいは満足のいかないものになることがない。そのような容器に適したカバー26は、化学線を実質的に透過しないあらゆる材料で作ることができるので、歯科用組成物は早期に硬化しない。カバー26のために好適な材料の例には、アルミホイルとポリマーのラミネートが挙げられる。例えば、この積層体は、ポリエチレンテレフタレート、接着剤、アルミホイル、接着剤及び延伸ポリプロピレンの層を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、歯科矯正装具、圧縮性材料、及び硬化性歯科用組成物を含むパッケージアセンブリは、更に、米国特許第6,183,249号(Brennanら)に記載されたような剥離基材を含んでもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、パッケージは、矯正装具を含む1組のアセンブリを含むことができ、アセンブリの少なくとも1つは、圧縮性材料を有する装具を含む。アセンブリ(例えば、機器)及びアセンブリのセットの付加的な例は、米国特許出願第2005/0133384(A1)号(Cinaderら)に記載されている。パッケージアセンブリ(例えば、歯科矯正装具)は、例えば、米国特許公開第2003/0196914(A1)(Tzouら)、及び米国特許第4,978,007号(Jacobsら)、第5,015,180号(Randklev)、第5,328,363号(Chesterら)、及び第6,183,249号(Brennanら)に記載されている。
【0072】
歯科用組成物
本発明のアセンブリ及び方法に有用な硬化性歯科用組成物は、典型的には、1つ以上の硬化性成分及び硬化剤を含む。任意に、本明細書に記載される硬化性歯科用組成物は、例えば、反応開始剤系、エチレン系不飽和化合物、及び/又は1つ以上の充填剤を含むことができる。本明細書に記載される硬化性及び硬化された歯科用組成物は、歯牙構造に接着(例えば、固着)することができる材料を利用する、様々な歯科用途及び歯科矯正用途に使用することができる。そのような硬化性及び硬化された歯科用組成物における使用としては、例えば、接着剤(例えば、歯科用及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えば、ガラスアイオノマーセメント、樹脂変性ガラスアイオノマーセメント、及び歯科矯正用セメント)、プライマー(例えば、歯科矯正用プライマー)、修復材、ライナー、シーラント(例えば、歯科矯正用シーラント)、コーティング、及びこれらの組み合わせとしての使用が挙げられる。
【0073】
本明細書に記載される硬化性歯科用組成物(例えば、硬化性歯科用組成物)は、典型的には硬化性(例えば、重合性)成分を含み、それによって硬化性(例えば、重合性)組成物を形成する。硬化性成分としては、エチレン性不飽和化合物(酸官能基を含む又は含まない)、エポキシ(オキシラン)樹脂、ビニルエーテル、光重合系、酸化還元硬化系、ガラスアイオノマーセメント、ポリエーテル、ポリシロキサンなどのような種々多様な化学物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、硬化した歯科用組成物を適用する前に硬化する(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技術によって重合する)ことができる。他の実施形態では、歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の適用後に硬化する(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技術により重合する)ことができる。
【0074】
特定の実施形態では、歯科用組成物は光重合可能であり、即ち、歯科用組成物は、化学線を照射すると歯科用組成物の重合(又は硬化)を開始する光反応開始剤(即ち、光反応開始剤系)を含有する。そのような光重合可能組成物は、フリーラジカル重合可能又はカチオン重合可能であってもよい。他の実施形態では、歯科用組成物は化学硬化性であり、即ち、歯科用組成物は、化学線の照射に依存せずに歯科用組成物を重合、硬化、又は別の方法で硬化することができる、化学反応開始剤(即ち、反応開始剤系)を含有する。そのような化学硬化性歯科用組成物は、場合によっては「自己硬化(self-cure)」組成物と称され、ガラスアイオノマーセメント(例えば、従来の及び樹脂修飾したガラスアイオノマーセメント)、酸化還元硬化系、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0075】
本明細書に開示されるような歯科用組成物に使用することができる、好適な光重合性成分としては、例えば、エポキシ樹脂(カチオン活性のエポキシ基を含有する)、ビニルエーテル樹脂(カチオン活性ビニルエーテル基を含有する)、エチレン性不飽和化合物(フリーラジカル活性の不飽和基、例えば、アクリレート及びメタクリレートを含有する)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。同様に、単一化合物中にカチオン活性官能基とフリーラジカル活性官能基との両方を含有する重合性物質も好適である。例としては、エポキシ官能性アクリレート、エポキシ官能性メタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
エチレン性不飽和化合物
本明細書に開示される歯科用組成物は、酸官能基を有する又は有さないエチレン系不飽和化合物の形態の、1つ以上の硬化性成分を含んでもよく、それによって硬化性歯科用組成物を形成する。
【0077】
好適な硬化性歯科用組成物は、エチレン系不飽和化合物(フリーラジカル活性の不飽和基を含有する)を含む、硬化性成分(例えば、光重合性化合物)を含んでもよい。有用なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
歯科用組成物(例えば、光重合性組成物)は、1つ以上のエチレン系不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含んでもよい、フリーラジカル活性の官能基を有する化合物を含んでもよい。好適な化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和固着を含有し、付加重合を受けることが可能である。このようなフリーラジカル重合性化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[l−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[l−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートのようなモノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート(即ち、アクリレート及びメタクリレート);(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド(即ち、アクリルアミド及びメタアクリルアミド);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(好ましくは分子量200〜500)のビス−(メタ)アクリレート;米国特許第4,652,274号(Boettcherら)のもののようなアクリレート化モノマーの共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(Zadorら)のもののようなアクリレート化オリゴマー、及び米国特許第4,648,843号(Mitra)に開示されるもののようなポリ(エチレン性不飽和)カルバモイルイソシアヌレート;スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジパート、及びジビニルブタレートのようなビニル化合物が挙げられる。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、国際公開第00/38619号(Guggenbergerら)、同第01/92271号(Weinmannら)、同第01/07444号(Guggenbergerら)、同第00/42092号(Guggenbergerら)に開示されるシロキサン官能(メタ)アクリレート、並びに例えば、米国特許第5,076,844号(Fockら)、同第4,356,296号(Griffithら)、欧州特許第0373 384号(Wagenknechtら)、同第0201 031号(Reinersら)、及び同第0201 778号(Reinersら)に開示されるフルオロポリマー官能(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、2つ以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することが可能である。
【0079】
硬化性成分はまた、単一分子内にヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基も含有することもできる。そのような材料の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−、ジ−、及びトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−(メタ)アクリレート;2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−エタアクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が挙げられる。好適なエチレン性不飽和化合物はまた、多種多様な供給元、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis)から入手可能である。必要に応じて、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用することが可能である。
【0080】
特定の実施形態では、硬化性成分としては、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、ビスGMA、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(Holmes)に記載されるビスEMA6、及びNPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。所望の場合、様々な組み合わせの硬化性成分を使用することができる。
【0081】
好ましくは、本明細書に開示される歯科用組成物は、不充填組成物の総重量を基準として、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のエチレン系不飽和化合物(例えば、酸官能基を有する及び/又は有さない)を含む。本明細書に開示されるような特定の歯科用組成物(例えば、1つ以上のエチレン系不飽和化合物及び反応開始剤系からなる不充填歯科用組成物)は、不充填組成物の総重量を基準として、99重量%、又は更にはそれ以上のエチレン系不飽和化合物(例えば、酸官能基を有する及び/又は有さない)を含むことができる。本明細書に開示されるような他の特定の歯科用組成物は、不充填化合物の総重量を基準として、最大でも99重量%、好ましくは最大でも98重量%、より好ましくは最大でも95重量%のエチレン系不飽和化合物(例えば、酸官能基を有する及び/又は有さない)を含む。
【0082】
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物
本明細書に開示される歯科用組成物は、酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物の形態の、1つ以上の硬化性成分を含んでもよく、それによって硬化性歯科用組成物を形成する。
【0083】
本明細書で使用する時、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和、並びに酸官能基及び/又は酸前駆体官能基を有する、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを含むことを意味する。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。酸性官能基としては、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、スルホン酸官能基、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0084】
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリセロールリン酸モノ(メタ)アクリレート、グリセロールリン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシエチル)リン酸、((メタ)アクリロキシプロピル)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)リン酸、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)プロピルオキシリン酸、(メタ)アクリロキシヘキシルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシヘキシル)リン酸、(メタ)アクリロキシオクチルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシヘキシル)クチルリン酸、(メタ)アクリロキシデシルリン酸、ビス((メタ)アクリロキシデシル)リン酸、カプロラクトンメタクリレートリン酸、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などのα,β−不飽和酸性化合物が、硬化性成分系の成分として用いられてよい。(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリル化酸(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)等の不飽和炭酸のモノマー、オリゴマー、及びポリマー、並びにこれらの無水物を使用することも可能である。本発明の好適な方法において用いられる特定の組成物としては、少なくとも1つのP−OH部分を有する酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0085】
特定のこれら化合物は、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との反応生成物として得られる。酸官能性及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種類の更なる化合物は、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び同第5,130,347号(Mitra)に記載されている。エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様のこのような化合物を使用することが可能である。必要に応じて、このような化合物の混合物を使用することが可能である。
【0086】
例えば、酸官能基を有する更なるエチレン性不飽和化合物としては、例えば、米国特許公開第2004/0206932号(Abuelyamanら)に記載の重合性ビスホスホン酸;AA:ITA:IEM(例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra)の実施例11に記載される、アクリル酸:イタコン酸のコポリマーを十分な2−イソシアナトエチルメタクリレートと反応させて、このコポリマーの酸基の一部分をペンダントのメタクリレート基に変化させることによって作製される、ペンダントのメタクリレートを有するAA:ITAコポリマー);並びに米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、同第4,499,251号(Omuraら)、同第4,537,940号(Omuraら)、同第4,539,382号(Omuraら)、同第5,530,038号(Yamamotoら)、同第6,458,868号(Okadaら)、並びに欧州特許出願公開第712,622号(Tokuyama Corp.)及び同第1,051,961号(Kuraray Co.,Ltd.)に記載のものが挙げられる。
【0087】
本明細書に開示される歯科用組成物はまた、エチレン性不飽和化合物と酸官能基の組み合わせを含む組成物を含むことができる。好ましくは、歯科用組成物は自己接着性及び非水性である。例えば、かかる組成物は、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC1〜C4の炭化水素基によって接着し合っている第1の化合物と、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC5〜12の炭化水素基によって接着し合っている第2の化合物と、酸性官能基を有しないエチレン性不飽和化合物と、反応開始剤系と、充填剤を含むことができる。そのような組成物は、例えば、米国特許出願公開第2007/0248927号(Luchterhandtら)に記載されている。また、米国特許第7,449,499(Bradleyら)と同第7,452,924号(Aasenら)、並びに米国特許出願第2005/0175966号(Falsafiら)、同第2009/0011388号(Bradleyら)、及び同第2009/0035728号(Aasenら)を参照されたい。
【0088】
好ましくは、本明細書に開示される歯科用組成物は、不充填組成物の総重量を基準として、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物を含む。本明細書に開示される特定の歯科用組成物(例えば、1つ以上のエチレン性不飽和化合物及び反応開始剤系からなる不充填歯科用組成物)は、不充填組成物の総重量を基準として、99重量%、更にはそれ以上の酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物を含むことができる。本明細書に開示される他の特定の歯科用組成物は、不充填組成物の総重量を基準として、最大99重量%、好ましくは最大98重量%、より好ましくは最大95重量%の酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物を含む。
【0089】
エポキシ(オキシラン)化合物又はビニルエーテル化合物
本明細書に開示される硬化性歯科用組成物は、エポキシ(オキシラン)化合物(カチオン活性エポキシ基を含む)又はビニルエーテル化合物(カチオン活性ビニルエーテル基を含む)の形態の1つ以上の硬化性成分を含んでもよく、それによって硬化性歯科用組成物を形成する。
【0090】
エポキシ又はビニルエーテルモノマーは、硬化性成分として歯科用組成物で単独で使用することができるか、又は他の種類のモノマー(例えば、本明細書に記載されるようなエチレン系不飽和化合物)と組み合わせて使用することができ、化学構造の一部として、芳香族基、脂肪族基、脂環式基、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0091】
エポキシ(オキシラン)化合物の例としては、開環により重合できるオキシラン環を有する有機化合物が挙げられる。これらの材料としては、モノマー性のエポキシ化合物、及びポリマー型のエポキシドが挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であってもよい。これらの化合物は、一般に平均で1分子当たり少なくとも1つの重合性エポキシ基を有し、一部の実施形態では、1分子当たり少なくとも1.5の、また他の実施形態では、1分子当たり少なくとも2つの重合性エポキシ基を有する。ポリマー性のエポキシドとしては、末端エポキシ基を有する直鎖状のポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格にオキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントのエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシドは、純粋な化合物であってもよく、又は1分子当たり1つ、2つ、若しくはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。分子当たりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有物質中のエポキシ基の総数を、存在する、エポキシ含有分子の総数で割って決定される。
【0092】
これらのエポキシ含有材料は、低分子量のモノマー材料から高分子量のポリマーまで様々であり、それらの主鎖及び置換基の性質において大きく異なってもよい。許容できる置換基の例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、カルボシラン基、ニトロ基、ホスフェート基などが挙げられる。エポキシ含有材料の分子量は、58〜100,000以上と様々であってもよい。
【0093】
本発明の方法に使用する樹脂系反応性成分として有用な好適なエポキシ含有材料は、米国特許第6,187,836号(Oxmanら)及び同第6,084,004号(Weinmannら)に列挙されている。
【0094】
樹脂系反応成分として有用な他の好適なエポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル)アジパートにより代表されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのシクロヘキセンオキシド基を含有するものが挙げられる。この性質を有する有用なエポキシドの、より詳細なリストに関しては、米国特許第6,245,828号(Weinmannら)、同第5,037,861号(Crivelloら)、及び同第6,779,656号(Klettkeら)を参照されたい。
【0095】
本明細書に開示される歯科用組成物に有用であり得る他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルモノマーが挙げられる。例は、多価フェノールをエピクロロヒドリン(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)プロパンのジグリシジルエーテル)などの過剰のクロロヒドリンと反応させることにより得られる多価フェノールのグリシジルエーテルである。このタイプのエポキシドの更に他の例は、米国特許第3,018,262(Schroeder)及び「Handbook of Epoxy Resins」by Lee and Neville,McGraw−Hill Book Co.,New York(1967)に記載されている。
【0096】
樹脂系反応成分として有用な他の好適なエポキシドは、シリコンを含有するものであり、その有用な例は、国際特許出願公開第01/51540号(Klettkeら)に記載されている。
【0097】
樹脂系反応成分として有用な更なる好適なエポキシドとしては、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジフリシジルエーテル、及び米国特許第7,262,228号(Oxmanら)に記載の、その他の市販のエポキシドが挙げられる。
【0098】
様々なエポキシ含有材料のブレンドも想到される。このようなブレンドの例は、低分子量(200未満)、中間分子量(200〜10,000)、及び高分子量(10,000超)のような、エポキシ含有化合物重量平均分子量分布を2つ以上含む。あるいは又は更に、エポキシ樹脂は、脂肪族及び芳香族のような異なる化学的性質、あるいは極性及び非極性のような異なる官能性基を有する、エポキシ含有材料のブレンドを含有してもよい。
【0099】
カチオン活性官能基を有する、他の種類の有用な硬化性成分としては、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルトカーボネート、スピロ−オルトエステルなどが挙げられる。
【0100】
所望の場合、カチオン活性官能基及びフリーラジカル活性官能基の双方が単一分子内に含有されてもよい。そのような分子は、例えば、ジ−又はポリ−エポキシドをエチレン性不飽和カルボン酸の1当量以上と反応させることにより得ることができる。こうした物質の例は、UVR−6105(Union Carbideから入手可能)と1当量のメタクリル酸との反応生成物である。エポキシ及び遊離活性官能基を有する市販材料としては、Daicel Chemical(日本)から入手可能なCYCLOMER M−100、M−101、又はA−200のようなCYCLOMERシリーズ、及びRadcure Specialties(Atlanta,GA)、UCB Chemicalsから入手可能なEBACRYL−3605が挙げられる。
【0101】
カチオン硬化性成分としては、ヒドロキシル含有有機材料を更に挙げることができる。好適なヒドロキシル含有材料は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有するいずれかの有機材料であってもよい。好ましくは、ヒドロキシル含有材料は、一級又は二級脂肪族ヒドロキシル基(即ち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接固着している)を2つ以上含有する。ヒドロキシル基は、末端に位置してもよく、又はポリマー若しくはコポリマーから懸垂(terminally situated)してもよい。ヒドロキシル含有有機材料の分子量は、非常に低い(例えば、32)から非常に高い(例えば、100万以上)まで、様々であってもよい。好適なヒドロキシル含有材料は、低分子量(即ち、32〜200)、中間分子量(即ち、200〜10,000)、又は高分子量(即ち、10,000超)を有することができる。本明細書で使用する時、全ての分子量は、重量平均分子量である。
【0102】
ヒドロキシル含有材料は、その性質において非芳香族であってもよく、又は芳香族官能基を含有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、所望により分子の主鎖内に窒素、酸素、硫黄などのような、へテロ原子を含有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、例えば、天然起源のセルロース系材料、又は合成的に調製されるセルロース系材料から選択することができる。ヒドロキシル含有材料は、熱的に又は光分解的に不安定であり得る基を実質的に含まないものとするべきであり、即ち、その材料は、100℃未満の温度で、又は重合性組成物に関して所望の光重合条件時に発生し得る化学線の存在下で、揮発性成分を分解又は遊離してはならない。
【0103】
本発明の方法に有用な好適なヒドロキシル含有物質は、米国特許第6,187,836号(Oxmanら)に列挙されている。
【0104】
硬化性成分はまた、単一分子内にヒドロキシル基及びカチオン活性官能基を含有してもよい。一例は、ヒドロキシル基及びエポキシ基の双方を含む単一分子である。
【0105】
ガラスアイオノマー
本明細書に記載される硬化性歯科用組成物は、典型的にはその主成分として、エチレン系不飽和カルボキシル酸(例えば、ポリアクリル酸、コポリ(アクリル、イタコン酸)など)ホモポリマー又はコポリマーを用いる従来のガラスアイオノマーセメント、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラス、水、及び酒石酸などのキレート化剤など、ガラスアイオノマーセメントを含んでもよい。従来のガラスアイオノマー(即ち、ガラスアイオノマーセメント)は、一般に、使用直前に混合される粉末/液体処方で供給される。この混合物は、ポリカルボン酸の酸性反復単位と、ガラスから浸出するカチオンとのイオン反応によって、暗所で自己硬化する。
【0106】
ガラスアイオノマーセメントは、更に樹脂修飾ガラスアイオノマー(「RMGI」)セメントも含むことができる。従来のガラスアイオノマーのように、RMGIセメントは、FASガラスを使用する。しかしながら、RMGIの有機部分が異なる。RMGIの1つの種類では、例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra)に記載されるように、ポリカルボン酸は、その酸性反復単位の一部が、ペンダント硬化性基によって置換されるか、又はエンドキャップされるように変性され、また光開始剤が添加されて第2の硬化メカニズムが提供される。アクリレート基又はメタクリレート基が、ペンダント硬化性基として通常使用される。別の種類のRMGIでは、セメントは、例えば、Mathisらの「Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative」(Abstract No.51,J.Dent Res.,66:113(1987))、並びに米国特許第5,063,257号(Akahaneら)、同第5,520,725号(Katoら)、同第5,859,089号(Qian)、同第5,925,715号(Mitra)、及び同第5,962,550号(Akahaneら)に記載されるように、ポリカルボン酸、アクリレート官能性モノマー若しくはメタクリレート官能性モノマー、及び光開始剤を含む。別の種類のRMGIでは、セメントは、例えば、米国特許第5,154,762号(Mitraら)、同第5,520,725号(Katoら)、及び同第5,871,360号(Katoら)に記載されるように、ポリカルボン酸、アクリレート官能性モノマー若しくはメタクリレート官能性モノマー、及び酸化還元硬化系若しくは他の化学硬化系を含むことができる。別の種類のRMGIでは、セメントは、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)、同第5,227,413号(Mitra)、同第5,367,002号(Huangら)、及び同第5,965,632号(Orlowski)に記載されるような、様々なモノマー含有成分又は樹脂含有成分を含むことができる。そのようなセメントを含む歯科用合成物は、ポリカルボン酸の酸性反復単位とガラスから浸出するカチオンとの間におけるイオン性反応に起因して、歯科用混合物は暗所で硬化することができ、市販のRMGI生成物も、典型的には、歯科用硬化ランプからの光にセメントを曝露すると硬化する。酸化還元硬化系を含有し、化学線を使用せずとも暗所で硬化可能なRMGIセメントは、米国特許第6,765,038号(Mitra)に記載されている。
【0107】
特定の実施形態では、RMGIセメントは、好ましくは粉末/液体系、又はペースト/ペースト系として配合され、混合及び塗布時に水を含有する。アセンブリが、硬化性材料が塗布された圧縮性材料を有する実施形態の場合、水は、樹脂及び充填材から分離されてもよい。他の特定の実施形態では、乳化剤を使用して樹脂中に水を浮遊させて油中水マイクロエマルジョンを作成することによって、良好な貯蔵性を有するセメントを調製することができる。硬化性材料が水を含まない他の実施形態の場合、歯にある余分な水が、接着処理のための水を提供することができる。追加の微粒子充填材又は繊維質圧縮性材料として、フルオロアルミノシリケートガラスを混入してもよい。
【0108】
光反応開始剤系
特定の実施形態では、本発明の歯科用組成物は光硬化性であり、即ち、歯科用組成物は、光硬化性成分と、化学線を照射すると歯科用組成物の重合(又は硬化)を開始する光反応開始剤(即ち、光反応開始剤系)と、を含有する。そのような光重合可能組成物は、フリーラジカル重合可能又はカチオン重合可能であってもよい。
【0109】
フリーラジカル光重合性組成物を重合するのに好適な光開始剤(即ち、1つ以上の化合物を含む光開始剤系)としては、二成分及び三成分系が挙げられる。典型的な三成分系光開始剤には、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載される、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物が挙げられる。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、及びトリクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。好ましい光増感剤は、400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の光の一部を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好ましい化合物は、400nm〜520nm(更により好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の光の一部を吸収するαジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及び他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、並びに環状αジケトンである。カンファーキノンが最も好ましい。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。カチオン的に重合可能な樹脂を光重合させるために有用な他の好適な三成分系光開始剤は、例えば、米国特許第6,765,036号(Dedeら)に記載されている。
【0110】
フリーラジカル光重合性組成物の重合に好適な他の光開始剤としては、380nm〜1200nmの機能波長範囲を一般に有するホスフィンオキシドのクラスが挙げられる。380nm〜450nmの機能波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤は、米国特許第4,298,738号(Lechtkenら)、同第4,324,744号(Lechtkenら)、同第4,385,109号(Lechtkenら)、同第4,710,523号(Lechtkenら)、及び同第4,737,593号(Ellrichら)、同第6,251,963号(Kohlerら)、並びに欧州特許出願第0 173 567(A2)号(Ying)に記載されるもののような、アシルホスフィンオキシド又はビスアシルホスフィンオキシドである。
【0111】
380nm超〜450nmの波長範囲で照射されたときにフリーラジカル反応を開始することができる、市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403、Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンと重量比25:75の混合物(IRGACURE1700、Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンと重量比1:1の混合物(DAROCUR 4265、Ciba Specialty Chemicals)、及びエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィナート(LUCIRIN LR8894X、BASF Corp.(Charlotte,NC))が挙げられる。
【0112】
典型的には、ホスフィンオキシド反応開始剤は、歯科用組成物の総重量を基準として、0.1重量%〜5.0重量%など、触媒的に有効な量で光重合性組成物中に存在する。
【0113】
三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明で有用な三級アミンの具体例としては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。アミン還元剤が存在する場合、それは、歯科用組成物の総重量を基準として、0.1重量%〜5.0重量%の量で光重合性組成物中に存在する。他の反応開始剤の有用な量は、当業者には周知である。
【0114】
カチオン光重合性組成物の重合に好適な光開始剤としては、二成分系、及び三成分系が挙げられる。典型的な三成分光開始剤は、欧州特許第0 897 710号(Weinmannら)、米国特許第5,856,373号(Kaisakiら)、同第6,084,004号(Weinmannら)、同第6,187,833号(Oxmanら)、及び同第6,187,836号(Oxmanら)、並びに同第6,765,036号(Dedeら)に記載されるように、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物を含む。本発明の歯科用組成物は、電子供与体として1つ以上のアントラセン系化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、複数の置換アントラセン化合物、又は置換アントラセン化合物と非置換アントラセンの組み合わせを含む。光開始剤系の部分としてのこれらの混合アントラセン電子供与体の組み合わせは、同一のマトリックスにおける同等の単一供与体光開始剤系と比較した場合、有意に増強された硬化深さ、硬化速度、及び温度不感応性をもたらす。アントラセン系電子供与体を有するこのような組成物は、米国特許第7,262,228号(Oxmanら)に記載されている。
【0115】
好適なヨードニウム塩としては、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル−フェニル)ボレート)、及び例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなどのジアリールヨードニウム塩が挙げられる。好適な光増感剤は、450nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好適な化合物は、450nm〜520nm(更により好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の光の一部を吸収するαジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、及び他の環状αジケトンである。カンファーキノンが最も好ましい。好適な電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、並びに多縮合芳香族化合物(例えば、アントラセン)が挙げられる。
【0116】
反応開始剤系は、所望の硬化(例えば、重合及び/又は架橋)速度を提供するために十分な量で存在する。光開始剤に関しては、この量は、光源、放射エネルギーに曝露される層の厚さ、及び光開始剤の吸光係数にある程度依存することになる。好ましくは、開始剤系は、歯科用組成物重量を基準として、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%、最も好ましくは少なくとも0.05重量%の総量で存在する。好ましくは、開始剤系は、歯科用組成物重量を基準として、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2.5重量%以下の総量で存在する。
【0117】
酸化還元反応開始剤系
特定の実施形態では、本発明の歯科用組成物は化学硬化性であり、即ち、歯科用組成物は、化学硬化性成分と、化学線による照射に依存することなく歯科用組成物を重合、硬化、又は別の方法で硬化することができる化学反応開始剤(即ち、反応開始剤系)と、を含有する。そのような化学硬化性歯科用組成物は、場合によっては「自己硬化性」組成物と称され、ガラスアイオノマーセメント、樹脂修飾ガラスアイオノマーセメント、酸化還元硬化系、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0118】
化学硬化性歯科用組成物は、硬化性成分(例えば、エチレン系不飽和重合性成分)と、酸化剤及び還元剤を含む酸化還元剤と、を含む酸化還元硬化系を含んでもよい。本発明に有用な硬化性成分、酸化還元剤、任意の酸官能性成分、及び任意の充填剤は、米国特許第7,173,074号(Mitraら)及び同第6,982,288号(Mitraら)に記載されている。
【0119】
樹脂系(例えば、エチレン性不飽和構成要素)の重合を開始することが可能なフリーラジカルを製造するために、還元剤及び酸化剤は、互いに反応するか、ないしは別の方法で協働すべきである。この種の硬化は、暗反応である、即ち、光の存在に依存せず光が存在しない状態下で進行可能である。還元剤及び酸化剤は、好ましくは十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がなく、典型的な歯科条件下においての保存及び使用を可能にする。これらは、硬化性歯科組成物の他の構成要素に容易に溶解する(及び、硬化性組成物の他の構成要素からの分離を阻止する)ことを可能にするために、樹脂系と十分に混和性があるべきである。
【0120】
有用な還元剤としては、米国特許第5,501,727号(Wangら)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体アスコルビン酸化合物;アミン、特に4−t−ブチルジメチルアニリンのような三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩のような、芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素のような、チオ尿素;並びにこれらの混合物が挙げられる。他の二級還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩、及びこれらの混合物を挙げてもよい。好ましくは、還元剤はアミンである。
【0121】
好適な酸化剤はまた、当業者によく知られており、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩などの過硫酸及びその塩が挙げられるが、これらに限定されない。更なる酸化剤としては、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド(例えば、クミルヒドロペルオキシド)、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシド、並びに遷移金属の塩、例えば、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0122】
1以上の酸化剤又は1以上の還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、レドックス硬化速度を速めてもよい。一部の実施形態では、米国特許第6,982,288号(Mitraら)に記載されているように、重合性組成物の安定性を増強するために、二次的なイオン性塩を含むことが好ましい場合がある。
【0123】
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。これは、任意の充填剤を除く硬化性歯科用組成物の成分を全て組み合わせ、硬化した質量が得られるか否かを観察することによって評価することができる。
【0124】
好ましくは、還元剤は、硬化性歯科用組成物の成分の総重量(水を含む)を基準として、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。好ましくは、還元剤は、硬化性歯科用組成物の成分の総重量(水を含む)を基準として、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0125】
好ましくは、酸化剤は、硬化性歯科用組成物の成分の総重量(水を含む)を基準として、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、硬化性歯科用組成物の成分の総重量(水を含む)を基準として、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0126】
還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(Mitraら)に記載されるように、マイクロカプセル化することができる。これは、一般に、硬化性歯科用組成物の貯蔵安定性を向上し、必要であれば、還元剤及び酸化剤をともにパッケージ化することを可能にする。例えば、封入剤を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤を酸官能基成分及び任意の充填剤と組み合わせて、貯蔵安定状態に維持することができる。同様に、非水溶性封入剤を適切に選択することにより、還元剤及び酸化剤をFASガラス及び水と組み合わせて、貯蔵安定状態に維持することができる。
【0127】
酸化還元硬化系は、他の硬化系と、例えば、米国特許第5,154,762号(Mitraら)に記載されているような硬化性歯科用組成物と組み合わせることができる。
【0128】
充填剤
特定の好ましい実施形態では、硬化性歯科用組成物は不充填である。他の特定の実施形態では、硬化性歯科用組成物は充填剤を更に含む。充填剤は、歯科用修復組成物に現在使用されている充填剤など、歯科用途に使用される組成物に組み込むのに適した多種多様な材料の1つ以上から選択することができる。
【0129】
充填剤は、好ましくは超微粒子状である。充填剤は、単峰性又は複峰性(例えば、二峰性)の粒径分布を有することができる。好ましくは、充填剤の最大粒径(粒子の最大寸法、典型的には直径)は、30マイクロメートル未満、より好ましくは20マイクロメートル未満、最も好ましくは10マイクロメートル未満である。好ましくは、充填剤の平均粒径は、0.1マイクロメートル未満、より好ましくは0.075マイクロメートル未満である。
【0130】
充填剤は、無機物質であり得る。それはまた、樹脂系(即ち、硬化性成分)に不溶性の架橋型有機物質であり得、所望により無機充填剤で充填することもできる。充填剤は、いかなる場合においても無毒性であり、口内での使用に適したものでなければならない。充填剤は、放射線不透過性又は放射線透過性とすることができる。充填剤は典型的には、実質的に水に不溶性である。
【0131】
適切な無機充填剤の例は、石英(即ち、シリカ、SiO);窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlから得られたガラス及び充填材;長石;ホウケイ酸塩ガラス;カオリン;滑石;ジルコニア;チタニア;米国特許第4,695,251号に記載されたものなどの低モース硬度充填材(Randklev);及びサブミクロンシリカ粒子(例えば、Degussa Corp.(Akron,OH)から「OX 50」、「130」、「150」及び「200」シリカと、Cabot Corp.(Tuscola,IL)からのCAB−O−SIL M5シリカを含む商標名AEROSILで入手可能なものなどの発熱性シリカ)を含むが、これらに限定されない自然発生又は合成材料である。好適な有機充填剤粒子の例としては、充填又は未充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシドなどが挙げられる。充填材の更に他の例には、例えば、国際出願公開第2010/039395号(Amosら)及び同第2009/045752号(Kalgutkarら)に記載された柔軟な充填材を含む。
【0132】
好適な非酸反応性充填剤粒子としては、石英(即ち、シリカ)、サブマイクロメートルのシリカ、ジルコニア、サブマイクロメートルのジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されている種類の非ガラス質微小粒子が挙げられる。これら非酸反応性充填剤の混合物、並びに有機及び無機の物質から調製される混合充填剤も検討される。
【0133】
充填剤はまた、酸反応性充填剤であってもよい。好適な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス、及び金属塩が挙げられる。典型的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。典型的なガラスとしては、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、及びフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスは、典型的には、十分な溶出性のカチオンを含有するので、ガラスが硬化性歯科用組成物の成分と混合されるとき、硬化した歯科用組成物が形成される。ガラスはまた、典型的には、十分な溶出性のフッ化物イオンを含有するので、硬化した歯科用組成物は抗う食性を有するようになる。このガラスは、フッ化物、アルミナ、及び他のガラス形成成分を含有する溶解物から、FASガラス製造技術における当業者に周知の技術を使用して作製することができる。FASガラスは、典型的には、十分に超微粒子状の粒子の形態であるので、他のセメント構成成分と都合よく混合することができ、得られた混合物が口内に使用される時に良好に機能する。
【0134】
一般に、FASガラスの平均粒径(典型的には、直径)は、例えば、沈殿分析器を使用して測定した場合、12マイクロメートル以下、典型的には10マイクロメートル以下、より典型的には5マイクロメートル以下である。好適なFASガラスは、当業者によく知られており、多種多様な供給元から入手可能であり、多くは、商品名VITREMER、VITREBOND、RELY X LUTING CEMENT、RELY X LUTING PLUS CEMENT、PHOTAC−FIL QUICK、KETAC−MOLAR、及びKETAC−FIL PLUS(3M ESPE Dental Products(St.Paul,MN))、FUJI II LC及びFUJI IX(G−C Dental Industrial Corp.,Tokyo,Japan)、及びCHEMFIL Superior(Dentsply International,York,PA)として市販されているもの等、現在入手可能なガラスアイオノマーセメント内に見出される。必要に応じて、充填剤の混合物を使用することが可能である。
【0135】
充填剤及び樹脂間の固着を高めるために、充填剤粒子の表面を更に、カップリング剤で処理することができる。好適なカップリング剤の使用は、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を含む。特定の実施形態では、シラン処理ジルコニア−シリカ(ZrO−SiO)充填剤、シラン処理シリカ充填剤、シラン処理ジルコニア充填剤、及びこれらの組み合わせが、特に好ましい。
【0136】
他の好適な充填剤は、米国特許第6,387,981号(Zhangら)及び同第6,572,693号(Wuら)、並びに国際特許出願公開第01/30305号(Zhangら)、同第01/30306号(Windischら)、同第01/30307号(Zhangら)、及び同第03/063804号(Wuら)に記載されている。これらの参考文献に記載された充填剤構成要素としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、ナノ充填剤は、米国特許第7,090,721号(Craigら)、同第7,090,722号(Buddら)、及び同第7,156,911号(Kangasら)、並びに米国特許出願公開第2005/0256223 A1号(Kolbら)に記載されている。
【0137】
硬化性歯科用組成物が1つ以上の充填剤を含む実施形態では、硬化性歯科用組成物は、好ましくは、少なくとも1重量%の充填剤、より好ましくは少なくとも2重量%の充填剤、最も好ましくは少なくとも5重量%の充填剤を含む。硬化性歯科用組成物が1つ以上の充填剤を含む実施形態では、硬化性歯科用組成物は、好ましくは、最大でも85重量%の充填剤、より好ましくは最大でも50重量%の充填剤、最も好ましくは最大でも25重量%の充填剤を含む。
【0138】
特定の好ましい実施形態では、不充填又は低充填硬化性歯科用組成物は、余分な硬化性及び/又は硬化した歯科用組成物の容易な掃除を提供する。低充填硬化性歯科用組成物は、最大で35重量%の充填剤、より好ましくは最大で20重量%の充填剤、最も好ましくは最大で10重量%の充填剤を含む。不充填及び/又は低充填硬化性歯科用組成物の例としては、プライマー及び/又はセルフエッチングプライマーが挙げられる。
【0139】
特定の好ましい実施形態では、硬化性歯科用組成物(例えば、充填又は不充填)は、本明細書に記載される方法では、例えば、口腔温度(例えば、37℃)で適用の間流動性である。本明細書で使用するとき、「流動性」の硬化性歯科用組成物は、歯科用組成物が口腔温度(例えば、37℃)においてその自重で変形又は流動することを意味する。特定の「流動性」硬化性歯科用組成物は、室温(例えば、20〜25℃)においてそれらの自重で変形又は流動する。
【0140】
任意の光退色性及び/又は示温性染料
いくつかの実施形態では、本発明の硬化性歯科用組成物は、好ましくは、歯牙構造とは著しく異なる初期色を有する。色は、好ましくは、光退色性又は示温性染料を使用することによって歯科用組成物に付与される。歯科用組成物は、好ましくは、歯科用組成物の総重量を基準として、少なくとも0.001重量%の光退色性又は示温性染料、より好ましくは少なくとも0.002重量%の光退色性又は示温性染料を含む。歯科用組成物は、好ましくは、歯科用組成物の総重量を基準として、最大1重量%の光退色性又は示温性染料、より好ましくは最大0.1重量%の光退色性又は示温性染料を含む。光退色性及び/又は示温性染料の量は、その吸光係数、人間の目が初期色を識別する能力、及び所望の色変化に応じて変えることができる。好適な示温性染料は、例えば、米国特許第6,670,436号(Burgathら)に開示されている。
【0141】
光退色性染料を含む実施形態において、光退色性染料の色形成及び退色特性は、例えば、酸強度、誘電率、極性、酸素量、及び大気の湿分含量を含む様々な要因によって変動する。しかしながら、染料の退色特性は、歯科用組成物に光を照射し、色の変化を評価することによって、容易に決定することができる。好ましくは、少なくとも1つの光退色性染料は、硬化性樹脂に少なくとも部分的に可溶性である。
【0142】
光退色性染料の代表的な型は、例えば、米国特許第6,331,080号(Coleら)、同6,444,725号(Tromら)、及び同6,528,555号(Nikutowskiら)に記載されている。好ましい色素としては、例えば、ローズベンガル(Rose Bengal)、メチレンバイオレット(Methylene Violet)、メチレンブルー(Methylene Blue)、フルオレセイン(Fluorescein)、エオシンイエロー(Eosin Yellow)、エオシンY(Eosin Y)、エチルエオシン(Ethyl Eosin)、エオシンブルイッシュ(Eosin bluish)、エオシンB(Eosin B)、エリスロシンB(Erythrosin B)、エリスロシンイエロー調ブレンド(Erythrosin Yellowish Blend)、トルイジンブルー(ToluidineBlue)、4’,5’−ジブロモフルオレセイン(4’, 5’-Dibromofluorescein)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
本発明の組成物における色変化は、光によって開始する。好ましくは、歯科用組成物の色変化は、例えば、十分な時間可視光又は近赤外(IR)光を放射する歯科用硬化灯を使用して、化学線を使用して開始される。本発明の歯科用組成物の色変化を開始するメカニズムは、硬化メカニズムが樹脂を硬化するのとは別々であっても、又はほぼ同時であってもよい。例えば、化学的(例えば、酸化還元開始)又は熱的に重合が開始されると組成物は硬化し、初期色から最終色への色変化は、この硬化プロセスの後に化学線に曝露されて発生してもよい。
【0144】
組成物における初期色から最終色までの色変化は、好ましくはカラーテストによって定量化される。比色試験を用いて、3次元の色空間における全体的な色変化を示すΔEの値を決定する。人の目では、通常の照明条件下で約3 ΔEの単位の変色を検出することができる。本発明の歯科用組成物は、好ましくは少なくとも20のΔE、より好ましくは少なくとも30のΔE、最も好ましくは少なくとも40のΔEの変色を有することができる。
【0145】
種々の任意の添加物
所望により、本発明の組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリジノン))、及び水を含有してもよい。
【0146】
所望の場合、本発明の歯科用組成物は、指示薬、染料、色素、阻害物質、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、安定剤、及び当業者には明白であろう他の類似の成分などの添加物を含有することができる。粘度調整剤は、熱感応性粘度調整剤(例えば、BASF Wyandotte Corporation(Parsippany,NJ)から入手可能なPLURONIC F−127及びF−108など)を含み、調整剤上の重合性部分又は調整剤と異なる重合性成分を任意に含んでもよい。このような熱感応性粘度調整剤は、米国特許第6,669,927号(Tromら)、及び米国特許出願公開第2004/0151691号(Oxmanら)に記載されている。
【0147】
更に、薬剤又は他の治療用物質を、所望により歯科用組成物に添加することができる。例としては、歯科用組成物に使用されることが多い種類の、フッ化物源、増白剤、抗う歯剤(例えば、キシリトール)、カルシウム源、リン源、無機成分補給剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応変性剤、チキソトロピー剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤(抗菌性脂質成分に加えて)、抗真菌剤、口腔乾燥症治療剤、減感剤などが挙げられるが、これらに限定されない。上述のいずれかの添加剤の組み合わせを用いてもよい。このような添加剤のどれか1つの選択及び量は、過度な実験なしで所望の結果を達成するために、当業者によって選択することができる。
【0148】
固着方法
圧縮性材料がその表面に固着される歯科用物品(例えば、歯科矯正装具)は、当該技術分野において周知の方法(例えば、直接又は間接固着方法)を使用して歯牙構造に固着されてもよい。
【0149】
圧縮性材料306は、メーカーから提供される硬化性歯科用組成物308を含有することが好ましい。別の実施形態では、施術者が硬化性歯科用組成物308を圧縮性材料306に添加することができる。例えば、施術者は、硬化性歯科用組成物308を圧縮性材料306に適用することができ、又は圧縮性材料306を硬化性歯科用組成物308に浸漬若しくは液浸することができる。
【0150】
歯科用物品(例えば、歯科矯正装具)は、本明細書に記載される圧縮性材料及び硬化性歯科用組成物を使用して、直接的及び/又は間接的方法を用いて歯牙構造に固着することができる。図8に示された実施形態に従って、アセンブリ10は、装具11のベース材12が歯構造に実質的に固着されるまで歯構造に付勢される。次に、硬化性歯科用組成物308が硬化される。この処置の間、歯科矯正装具は、装具と歯牙構造との間のあらゆる間隙を実質的に充填するのに十分な圧力で、歯牙構造に適用される。
【0151】
歯構造表面の輪郭が、ベース材12の外側面の輪郭と正確に合致しない場合があるので、圧縮性材料306は、ある領域では本質的に完全に圧縮され(例えば、元の細孔体積の10%以下が残っている)、また本質的に圧縮されず(例えば、元の細孔容積の90%以下が残っている)、又は他の領域ではある程度圧縮されてもよい。特定の実施形態では、圧縮性材料306を可能な限り完全に圧縮して装具11と歯牙構造との間の距離を最小限にすることは、装具の処方を正確に表現するのに有利である。特定の実施形態では、圧縮性材料306は、0.8ミリメートル(mm)(0.03インチ)〜2.5mm(0.1インチ)の初期(非圧縮)厚さと、少なくともいくつかの部分において0.12mm(0.005インチ)〜0.25mm(0.01インチ)の圧縮厚さ(例えば、非圧縮厚さの0.1倍の圧縮厚さ)と、を有することができる。圧縮性材料306を圧縮することで、余分な硬化性歯科用組成物24が、圧縮された圧縮性材料306から、装具11の周辺又はその付近の歯牙構造50内に滲出する。
【0152】
いくつかの実施形態では、硬化中に圧縮性材料に圧力を加えて、圧縮性材料の反発を防ぐことができる。他の実施形態では、圧縮性材料は、圧力が緩和された後であっても圧縮されたままとなる。
【0153】
歯牙構造は未治療又は治療済みであることができる。いくつかの実施形態では、歯牙構造は、圧縮性材料306が歯牙構造と接触する前にセルフエッチングプライマーで処理される。そのような実施形態では、硬化性歯科用組成物は、典型的には、圧縮性材料を圧縮している間、又はその直後に硬化させることができる。いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、セルフエッチング性であり、歯牙構造は、装具11を適用する前は未処理でよい。そのような実施形態では、硬化性歯科用組成物は、好ましくは、硬化性歯科用組成物を硬化させる前のある期間(例えば、15秒以上)歯牙構造に接触する。代替案として、歯構造を、リン酸エッチングによって処理し、その後で、TRANSBOND XT商標の下塗剤やTRANSBOND MIP商標の下塗剤(両方とも3M Unitek(Monrovia,CA)より)などの適切な歯列矯正下塗剤で下塗りすることができる。
【0154】
装具11を歯構造に適用する際、硬化性歯科用組成物及び/又は圧縮性材料(例えば、圧縮性材料が、例えば、発泡され必要に応じて部分的に硬化された歯科用組成物)を硬化させて、矯正装具を歯構造に接着することができる。歯科用組成物を硬化させる様々な適切な方法が、当該技術分野において既知である。例えば、ある実施形態では、硬化性歯科用組成物は、紫外線又は可視光への曝露によって硬化することができる。他の実施形態において、硬化性歯科用組成物は、2つ以上の部分を固着する際に硬化する多部分組成物として提供することができる。
【0155】
本明細書に記載される圧縮性材料は、間接的固着方法に使用することができる。間接的固着方法の場合、歯科矯正装具を、例えば、一般に配置装置を使用して、患者の歯列弓の型(例えば、複製の石膏又は「石材」型)上に置き、後で患者の歯牙構造上に取り付けるための特注基部を提供することができる。一実施形態では、歯科矯正装具は、複製の石膏又は「石材」型に固着するための、その基部に固着される圧縮性材料を有する。したがって、例えば、硬化性歯科用組成物を硬化する際に、圧縮性材料を圧縮して特注基部を形成することができる。例示的な間接的接着方法は、例えば、米国特許第7,137,812号(Clearyら)に記載されている。別の実施形態では、ブラケットは、洗い流すことができる一時的接着剤を使用して、配置装置の形成中にモデル上の適所に保持される。
【0156】
別の実施形態では、間接的固着配置用デバイスを、装具が取り付けられた患者の歯の迅速プロトタイプ作成型(rapid prototyping model)(例えば、ステレオリソグラフィ、選択的レーザー焼結、溶融付着モデリングなど、又はこれらの組み合わせによって調製される)の周りに形成することができる。そのような迅速プロトタイプ作成型は、患者の歯の印象材、患者の歯の型、又は直接歯を走査することによって供給されたデータから製造することができる。ブラケットは、配置装置を形成する間、例えば、一時的接着剤によって、又は例えば、米国特許出願公開第2006/0257821(Cinaderら)に記載されたようなガイドとの摩擦嵌めによって適所に保持することができる。圧縮性材料は、ステレオリソグラフィ型から取り外した後にブラケット基部に付加することができる。ブラケットが配置ガイドとの摩擦嵌めによって適所で保持される実施形態では、圧縮性材料は、ガイド内に配置する前にブラケットに固着することができる。既に存在していない場合、硬化性歯科用組成物を、迅速プロトタイプ作成型から取り外した直後から患者の口に配置する直前までの任意のときに、圧縮性材料に付加することができる。
【0157】
間接的固着方法の他の実施形態では、配置装置に提供された歯科矯正装具は、患者の歯に固着するために特注舌用装具などの特注基部(必要に応じて、圧縮された圧縮性材料から形成することができる)に固着された圧縮性材料を含むことができる。そのような実施形態は、米国特許公開第2009/0233252号(Cinader)に詳細に記載されている。
【0158】
有利なことに、硬化性歯科用組成物が不充填又は低充填である実施形態では、施術者は、余分な歯科用組成物(例えば、硬化した又は未硬化の)を歯牙構造から除去する必要がないことがある。余分な歯科用組成物を除去することが望ましい場合、不充填又は低充填歯科用組成物(例えば、硬化した又は未硬化)の除去は、典型的には、施術者若しくは患者による、水でのすすぎ、練り歯磨きの適用、ブラッシング、又はこれらの組み合わせによって行うことができ、そのことが、過剰に(excess highly)充填された硬化した歯科用組成物を除去する間に起こり得る、装具の移動及び/又はエナメルの損傷のリスクを低減することができる。別の実施形態では、そのような余分な不充填若しくは低充填の硬化性又は硬化した歯科用組成物は、例えば、好ましくは歯牙構造を付加的に保護することができるシーラントとして歯の上に残ることができる。
【0159】
本発明の目的及び利点を以下の実施例で更に例示する。ただし、これらの実施例に列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に限定するものと解釈すべきではないことに留意されたい。別段の指定がない限り、全ての部分及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量であり、全ての化学物質及び試薬は、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から得たものである。
【実施例】
【0160】
本明細書で使用する場合、「TBSLV」は、3M Unitek(Monrovia,CA)から商標名TRANSBOND Supreme LV商標の低粘性光硬化接着剤で入手可能な歯科矯正接着剤を指す。
「TBXT下塗剤」は、3M Unitek(Monrovia,CA)から商標名TRANSBOND XT商標の下塗剤で入手可能な非充填歯列矯正下塗剤を指す。
「TBXTペースト」は、3M Unitek(Monrovia,CA)から商標名TRANSBOND XT商標の接着剤で入手可能な充填歯列矯正接着剤を指す。
【0161】
繊維パッドの調製
BASF SE(Ludwigshafen,Germany)によるB24ナイロン樹脂を使用してメルトブローウェブを作成した。以下のような条件で、公称20インチ(50.8センチメートル)幅のウェブのサンプルロールを収集した。約320℃の溶融温度で22ポンド/時間(10キログラム/時間)で動作する1.5インチの一軸式スクリュー押出機を使用して、ポリマーを幅20インチ(50.8センチメートル)の穿孔オリフィスダイに通した。ダイからコレクターまでの距離は6インチ(15.0センチメートル)であった。ウェブの試料は、坪量44グラム/平方メートル(g/m)で回収し、Davies,C.N.の「The Separation of Airborne Dust and Particles」(Institution of Mechanical Engineers,London Proceedings IB,1952)に記載の方法に従って有効繊維径を評価した。空気の温度及び速度を調整して、5.5マイクロメートルの標的有効繊維径を達成した。
【0162】
基材の調製
全ての試験試料は、洗浄し円形ポリメチルメタクリレートディスク内に舌側の歯表面を露出させて部分的に埋め込んだ未切断の牛歯で行なわれた。全ての歯を微粉末のItalian軽石(Servalab,Inc.(Maywood,NJ)から得た)で磨き、次に水で濯ぎ、エアシリンジを使って乾かした。次に、固着する前に、37%リン酸(3M Unitek(Monrovia,CA))とTBXT下塗剤をそれぞれ使用して、歯をエッチングし、下塗りした。
【0163】
せん断剥離固着強度の試験手順
せん断剥離固着強度を、次の標準化された方法を使用して決定した。最初に、それぞれの固着された試験片を、QTEST/5商標の試験機(MTS Systems Corporation(Eden Prairie,MN))に取り付けられた試験治具に歯肉タイウィングが上向きにされた状態で取り付けた。直径0.20インチ(0.051センチメートル)の標準的な円形ワイヤを、咬合側タイウィングの下でループにし、試験機のクロスヘッドに取り付けた。初期のクロスヘッド位置を調節してワイヤを張った後、ブラケットが剥離するまで毎分0.2インチ(毎分5ミリメートル)で上向きに移動させた。最大抵抗力を記録し、ブラケット基部の測定表面積で割って、固着強度測定を行った。報告された固着強度値はそれぞれ、15回繰り返した測定の平均を表す。
【0164】
顕微鏡で観察した破壊面に基づいて残りの被覆率を決定した。この被覆率は、パーセントとして表され、固着基部に固着された硬化樹脂の面積を全体の固着ベース面積で割ったものを表す。
【0165】
実施例1〜2と比較例A及びBのRocatec処理
実施例1〜2並びに比較例A及びBは、Rocatec法を使用して処理された歯列矯正ブラケット固着基部を使用した。各固着基部を、3M(St.Paul,MN)から商標名Rocatec Plusで入手可能なシリカ被覆アルミナサンドブラスト媒体でサンドブラストした。サンドブラスト処理は、3M(St.Paul,MN)から商標名Rocatec Jr.で入手可能なブラストモジュールを使用して、約1センチメートルの距離で2〜3秒間実行した。次に、シランの溶液(例えば、3M(St.Paul,MN)から商標名3M ESPE Silで入手可能なエタノール中のシラン)を、処理した基部面に塗布し、室温で少なくとも5分間乾燥させた。
【0166】
(実施例1〜2)
実施例1〜2は、以下の手順によって調整された。最初に、直径約1.3ミリメートルを有する結合樹脂の球形液滴(約1ミリグラムの結合樹脂に相当)を、VICTORY SERIES商標ステンレス鋼歯列矯正ブラケット(3M Unitek(Monrovia,CA)による左上中央のブラケット、部品番号017−401)の固着面の中心に正確に配置した。実施例1は、結合接着剤としてTBSLVを使用し、実施例2は、結合接着剤としてTBXTペーストを使用した。第2に、固着面より少し大きい横寸法を有するナイロン繊維パッドを固着面に押し付け、繊維パッドとブラケットのメッシュベースとの間の結合接着剤を搾り出した。次に、結合接着剤を、ORTHOLUX商標LED硬化ランプ(3M Unitek(Monrovia,CA))からの化学線に10秒間晒して硬化させた。次に、はさみを使用して、繊維パッドをボンディングパッドの周囲に沿って切り取って、繊維パッドがボンディングパッドと同じサイズと形状になるようにした。第3に、TBXT下塗剤を多孔質繊維パッドに、繊維パッドが完全に飽和するまで塗布した。
【0167】
ブラケット接着アセンブリが歯表面に完全に固着するまでブラケット接着アセンブリを歯表面に押し付けて各試験片を固着した。次に、接着剤をORTHOLUX商標LED硬化ランプからの化学線に10秒間(ブラケットの近心側と遠位側のそれぞれ5秒)晒して硬化させた。
【0168】
比較例A〜C
実施例1及び2で使用したものと同じ結合接着剤とVICTORY SERIES商標ブラケットをそれぞれ使用して、比較例A及びBを調製した。ただし、実施例1及び2と異なり、比較例A及びBの結合接着剤は、固着面に選択的に塗布されなかった。その代わりに、過剰な結合接着剤を固着面全体に均一に塗布し、次に、結合接着剤がメッシュベースの上面とほぼ同じ高さになるように直線定規を使って拭き取った。繊維パッドのTBXT下塗剤による飽和と歯への固着を含むこの後の工程は、実施例1及び2で使用されたものと同一であった。
【0169】
比較例Cは、繊維パッドも他の圧縮性材料も含んでいなかった。その代わりに、比較例Cは、従来通りTBXTペーストで被覆されたVICTORY SERIES商標ブラケットを使用した。各ブラケットをそれぞれの牛歯に取り付けたとき、TBXTペーストが、固着面全体を覆い、過剰なTBXTペーストが、各ブラケットベースの周囲に押し出された。この過剰な接着剤をTBXTペーストの硬化前に除去した。固着が、実施例1及び2並びに比較例A及びBに関して前述したように進んだ。
【0170】
実施例1〜2と比較例A〜Cのせん断剥離固着強度及び残りの被覆率の割合を下の表1に示す。2標本T検定(MINITAB商標14ソフトウェア、State College,PAで行なわれた)で、実施例2と比較例Bのせん断剥離固着強度の有意差を決定した。この有意差は、これらの2つの試料間の0.041のP値によって実証された。
【0171】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9