(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950944
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】リラクタンスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/06 20060101AFI20160630BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
H02K1/06 Z
H02K19/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-552834(P2013-552834)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-507104(P2014-507104A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】DE2012000074
(87)【国際公開番号】WO2012107020
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】102011010879.3
(32)【優先日】2011年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス グラマン
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−513035(JP,A)
【文献】
特開平11−299131(JP,A)
【文献】
特開平08−047223(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0295389(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0108712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータ(2)とを備えるリラクタンスモータ(1)であって、
前記ステータ(2)は、少なくとも1つのステータコイル(9)によって巻かれている、片側で開放された巻心(5)を有し、
該巻心(5)は、周に亘って配置されていて夫々互いに離間されている脚部ペア(10,10a,10b,10c,10d,10′,10″)を形成する脚部(7,7a,7b,7c,7d,7′)を備えており、
周に亘って分配され、前記脚部(7,7a,7b,7c,7d,7′)の間で磁束を周期的に調節する、前記ロータの複数の歯(11)が、前記脚部ペア(10,10a,10b,10c,10d,10′,10″)の間に半径方向に入り込む、ロータとステータとを備えるリラクタンスモータにおいて、
前記歯(11)は、前記ロータの回転方向において、回転角に基づいて連続的に形成される、前記脚部(7,7a,7b,7c,7d,7′)との面重畳を形成しており、
前記リラクタンスモータは、横方向磁束機械(3)として形成されていて、前記歯(11)は、周方向で見て楔形に形成されていることを特徴とする、ロータとステータとを備えるリラクタンスモータ。
【請求項2】
前記歯(11)に、楔形状を形成する磁束案内部材(15)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1記載のリラクタンスモータ。
【請求項3】
前記歯は、一体に楔形に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のリラクタンスモータ。
【請求項4】
前記リラクタンスモータは、アウタロータモータ(4)として形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のリラクタンスモータ。
【請求項5】
前記リラクタンスモータは、前記ロータの回転軸線(A)に沿って配置されている複数の相から成り、該相はその夫々が1つのステータコイル(9)と、前記巻心(5)を形成し、前記ステータコイル(9)同士を区画する、周に亘って分配された脚部(7,7a,7b,7c,7d,7′)の複数の脚部面(8)とを備えた、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のリラクタンスモータ。
【請求項6】
前記回転軸線(A)に沿った前記相の脚部(7,7a,7b,7c,7d,7′)は、周方向においてずらされていることを特徴とする、請求項5記載のリラクタンスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとを備えるリラクタンスモータであって、ステータは、少なくとも1つのステータコイルが巻かれていて、片側で開放されている巻心或いは巻鉄心と、周に亘って配置されていて夫々互いに離間されている脚部ペアを形成する脚部とを有し、脚部の間に、周に亘って分配され、脚部の間で磁束を周期的に調節するロータの複数の歯が半径方向に入り込むリラクタンスモータに関する。
【0002】
上位概念部に記載のリラクタンスモータは、例えば国際公開第1999019861号明細書において、横方向磁束機械(Transversalflussmaschine)の形式において公知になっている。ステータは、ロータの回転軸線に沿って相並んで配置されている複数のステータコイルから形成されている。これらのステータコイルによって巻心は巻かれている。巻心は、互いに離間されている脚部を備えた複数の脚部ペアを有する。これらの脚部ペアは、相を形成するためにステータコイルを軸線方向において脚部ペアの間で囲み、半径方向外側での脚部相互の離間により互いに開放型の磁気回路を形成する。複数の相を形成するために、複数のステータコイルが、回転軸線に沿って軸線方向で、周に亘って分配されている脚部により分離した状態で配置されている。脚部ペアの脚部の間の磁束は、ステータコイルの回転通電時に、周に亘って分配されたロータの歯を通じて形成される。これらの歯は、2つのエアギャップを形成した状態において、軸線方向で1つの脚部ペアの脚部の間に回動して入り込む。
【0003】
根本的に、リラクタンスモータの制御は、相に作用する通電のスイッチオン時間を介して行われる。このことは、磁界の形成を、磁気回路の変化と同期して行う必要があるということによるものである。磁気回路の変化は、脚部及び歯として構成された磁束案内部材の相対運動により行われる。この構成において、多数の磁気回路の夫々の磁気回路の閉鎖の始めには、急峻なモーメント形成が行われ、したがって磁束の急峻なピークのある特性曲線が、ロータの回動角に亘って発生する。このことは、とりわけ不都合な騒音形成に繋がることがある。これにより、特に回転数が高い場合には、ステータコイルの時間に関して正確な制御が困難になる。したがって、特に制御エラーに追加で発生する、公差に基づくエラーを最小限にするために、特に多極性のリラクタンスモータの場合には、機械的な公差に対して極めて高い要求を課す必要がある。
【0004】
したがって本発明の目的は、比較的平坦な特性曲線をもたらし、かつ特に多極性のリラクタンスモータにおいて、改良された制御を達成するようにリラクタンスモータを改良することである。特にこの構成においては、小さな騒音発生が達成されることが望ましい。
【0005】
上記目的は、ロータとステータとを備えるリラクタンスモータであって、ステータは、少なくとも1つのステータコイルが巻かれていて、片側で開放されている巻心を有し、巻心は、周に亘って配置されていて、夫々互いに離間された脚部ペアを形成する脚部を備えるリラクタンスモータにより達成され、この構成において、脚部ペアの間に、周に亘って分配され、脚部の間で磁束を周期的に調節するロータの複数の歯が半径方向に入り込む、これらの歯はロータの回転方向において、回動角に基づいて連続的に形成される脚部との面重畳部を形成する。ステータに対するロータの回動角と共に連続的に上昇する、例えば周方向で互いに角回転された重畳面の形式の面重畳により、回転軸線を通して半径方向外側に直線形の脚部及び歯における階段或いはステップ関数(Sprungfunktion)の形式の重畳を、回避することができる。これにより、より簡単に制御することができ、小さな公差感度を有する連続的に発展する磁束及びモーメントが形成されるので、ステータコイルの電気的な制御は簡略化される。
【0006】
磁束案内部材−歯及び/又は脚部−の構成の態様は、磁束の特性曲線に直接的に影響を与える。この特性曲線は、例えば重畳面の連続的な形成により、特に特性曲線の上昇側面及び下降側面はそれほど急ではなく、全体として幅広に構成されている。これにより、制御時間及び騒音特性を改良することができる。したがって、磁束案内部材の所望のジオメトリ選択により、磁気回路の閉鎖及び開放を有利に設定することが可能である。さらに、特性曲線は、ピーク最大値がより大きな回動角に向かって移動するように作用する。磁気回路が果たす役割は、回動角が増大するに連れて突発的に増大する重畳面の重畳を伴う磁気回路と同じようなレベルのままである。
【0007】
回動角に基づいて連続的に重畳する重畳面の、横方向磁束機械における使用は、特に好ましい。この構成において、歯として形成されていて、互いに軸線方向に離間している脚部の脚部ペアの脚部の間において磁束を形成する磁束案内金属薄板が、周方向で見て楔状に形成されていてよい。楔の角度により、脚部及び歯はまず半径方向外側において重畳する。この構成において、脚部に対するロータの回動角が増大するに伴い、重畳面は連続的に増加し、これにより、可能な限り大きな磁束を伴う最大の重畳面を超えた後に再び連続的に降下する。
【0008】
歯における楔形状の構成は、実質的に周方向において元々の方形の横断面を備えた歯に付加的に、追加で取り付けられた磁束案内部材により設けられていてよい。択一的には、歯の楔形状は、周に亘って分配された歯を備えた、ロータに固定されたリング形状に対して互いに並置している金属薄板から形成されている磁束案内部材に形成されていてよい。この構成において、歯における楔形状は、一体の部材として設けられていてよい。各歯自体は、楔状の形状を備える並置している複数の金属薄板部分から形成されていてよい。
【0009】
本発明の思想によれば、リラクタンスモータは、インナ又はアウタロータとして設けられていてよく、有利なアウタロータにおいては、巻心は、半径方向外側でU字形に形成された脚部の脚部ペアを有する。半径方向内側にロータにおいて拡幅されていて、かつ周に亘って好ましくは脚部ペアと同数で分配され、周において楔状に形成された歯が、脚部の間に半径方向外側から半径方向に入り込む。歯及び脚部は夫々、回動角が増大するに伴い連続的に増大しまた再び減少する、互いに軸線方向に向かい合った重畳面を形成する。
【0010】
特に好ましい構成によれば、リラクタンスモータは多相に形成されている。例えば横方向磁束機械は、ロータの回転軸線に沿って配置されている、夫々1つのステータコイルを備える複数の相を有する。これらの相は夫々、一平面を通じて周に亘って分配されている、巻心に属する脚部により形成される。脚部は、半径方向内側において互いに結合されているので、ステータコイルの接続に応じて、夫々軸線方向に相対している、通電されるコイルを囲む脚部が夫々脚部ペアを形成し、この脚部ペアの磁気回路は、半径方向外側において、脚部ペアの脚部に作用する歯により閉鎖される。巻心の脚部が、回転軸線に沿って周方向にずらされていると有利であると認識された。この脚部は、軸線方向で前方及び軸線方向で後方の巻心の脚部の間の角度距離が、回転軸線に沿って軸線方向に配置された脚部により均等に補償されているように、互いにずらされていてよい。これにより、ロータの一回転を超えて均等なモーメント発生は、個々の相のステータコイルに軸線方向で周期的に絶えず通電する場合に、磁束の形成によりもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】横方向磁束機械として形成されているリラクタンスモータのステータの3D図である。
【
図2】
図1に示したステータの正面図であって、ロータの歯と共に示す図である。
【
図4】
図4a〜
図4cは、
図1〜
図3に示したステータの詳細図であって、ロータの歯と共に示す図である。
【0012】
本発明を、
図1〜
図4に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1に、アウタロータ4の形式の横方向磁束機械3として形成されたリラクタンスモータ1(完全に図示せず)のステータ2の立体図を示す。ステータ2は、図示していない形式において、ハウジング構成部材又はこれに類似する部材に相対回動不能に結合されている。巻心5は、好ましくは複数の互いに結合された、弱磁性の磁束案内金属薄板6から形成されていて、周に亘って分配されて、互いに軸線方向に離間された弱磁性の脚部7を有する。この弱磁性の脚部7は、周に亘って分配されて夫々互いに軸線方向に離間されている脚部面(Schenkelebene)8を形成し、これらの脚部面8の間には夫々、軸線方向においてステータコイル9が配置されている。夫々同じ周方向位置に配置されていて、軸線方向でその間にステータコイル9を囲んでいる2つの脚部7′は、脚部ペア10を形成する。
【0014】
ステータ2の周囲に配置されていて、ロータ軸線Aを中心に回動するロータ(図示せず)は、半径方向内側に向けられている、複数の歯の形状の弱磁性の磁束案内金属薄板を有する。複数の歯は、周に亘って分配されていて、歯平面(Zahnebene)を形成しつつ、ロータ軸線Aに沿ってかつ周に亘って分配されている脚部ペア10の脚部7′の間に夫々入り込む。この実施の形態において、1つの歯が夫々、ロータの角回転に応じて、脚部ペア10の脚部7′と共に閉じた磁気回路を形成する。この磁気回路において、所属のステータコイル9の通電時には磁束が形成される。図示の実施の形態において、脚部7は、回転軸線Aに沿って線状に配置されている。脚部7は、回転軸線Aに沿って個々の脚部面8の脚部7が、互いに均等にずらされて回動されていて、かつ脚部7が、分配された脚部7の周に亘るピッチ円の所定のピッチ区画の間の位置を占めるように、周に亘って回動させられていてもよい。
【0015】
図2に、周に亘って分配して配置されているロータの複数の歯のうちの1つの個別の歯11と共に、
図1に示したステータ2の正面図を示す。歯11は、周方向において楔状に形成されていて、
図2において、周方向において隣接している脚部ペア10a,10bの2つの脚部7a,7bの周方向の間に配置されているので、脚部ペア10a,10bのいずれの磁気回路も閉鎖されておらず、したがって、磁束は発生しないか又は単に無視できる磁束しか発生しない。ロータ、ひいては歯11を、回転軸線Aを中心として矢印12の方向でさらに回動すると、歯11は脚部ペア10b内に回動し、脚部ペア10bの磁気回路を閉鎖する。所属のステータコイル9が通電されていると、磁束が流れる。
【0016】
図3に、歯11と、この歯11の後方に位置する脚部7との重畳面13,14を示す。方形の基本面13aを備えた歯11の方形の構成に、周方向において歯11の両側に取り付けられている付加的な磁束案内部材15を用いて、追加面13bが提供されることで、歯11の楔形の構成により重畳面13は台形状に形成されている。脚部7及び軸線方向において相対する、脚部ペアを形成する脚部(図示せず)の重畳面14は、変わらないままである。方形の基本面13aを備えた歯11の元々の状態において、軸線方向に相対している脚部の基本面13a及び重畳面14は突発的(sprungfoermig)に重畳する。これにより、閉鎖される磁気回路の特性曲線は、回転角に亘って重畳部に沿って変化する磁束の形式においては急上昇するようにかつ次いで急下降するように形成される。したがって、ステータコイル9に通電されている場合には、これに応じて、周に亘って分配された複数の歯11を介して、発生する磁気的なモーメントに基づく強力な加速がロータに作用する。この強力な加速は、ロータ、ひいては回転角に基づくステータコイルの通電の劣悪な制御可能性によるものであり、不都合な騒音発生に繋がることになる。追加面13bの付加により、回転が増大する場合には、歯11の楔形により重畳面13,14の間に設定された角度αに基づき、重畳面の連続的で突発的でない構成が、実質的に平らな磁気的なモーメントの特性曲線を形成する。この磁気的なモーメントは、ロータを急に加速することはほとんどないので、ステータコイル9の通電の角制御が、簡単かつ正確に、例えば1°〜2°の範囲で正確に行うことができ、小さな騒音負荷しか発生しない。
【0017】
図4a〜
図4cには夫々、
図1のリラクタンスモータ1の一部分を詳細に示す。
図4aに歯11の斜視図を示す。この歯11は、歯11を楔形に拡幅する磁束案内部材15を、周方向において、矢印16の回動方向で互いに続く脚部ペア10c、10dの間に有する。
図4bに、回転軸線A(
図1)に沿って相前後して配置されている、リラクタンスモータ1の種々異なる相を形成する脚部ペア10′,10″の通路18を見た図を示す。この実施の形態において、回転軸線Aに従う矢印16の方向において歯11は運動する。
図4cに、周方向に配置されていて、一方で脚部7a,7b、他方で7c,7dから形成された脚部ペア10c,10dを上から見た図を示す。脚部7a,7b,7c,7dはその間に、ステータコイル9、及び周に亘って分配されているロータの楔状の複数の歯を受容する。これらの歯のうち1つの歯11を例示している。歯11のような複数の歯と、脚部7a,7b,7c,7dとの間に、ロータの回転角に基づいて、周に亘って連続して、脚部ペア10c,10dの磁気回路が、エアギャップ17を保持した状態でかつ重畳面13,14を形成した状態で形成される。
【符号の説明】
【0018】
1 リラクタンスモータ
2 ステータ
3 横方向磁束機械
4 アウタロータ
5 巻心
6 磁束案内金属薄板
7 脚部
7a 脚部
7b 脚部
7c 脚部
7d 脚部
7′ 脚部
8 脚部面
9 ステータコイル
10 脚部ペア
10a 脚部ペア
10b 脚部ペア
10c 脚部ペア
10d 脚部ペア
10′ 脚部ペア
10″ 脚部ペア
11 歯
12 矢印
13 重畳面
13a 基本面
13b 追加面
14 重畳面
15 磁束案内部材
16 矢印
17 エアギャップ
18 通路
A 回転軸線
α 角度