(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体のジャムの発生を検知するジャム検知手段により前記記録媒体のジャムの発生が検知された場合に、第1の移動手段によりインクを吐出するインク吐出面が設けられた記録ヘッド群と前記インク吐出面に対向させつつ記録媒体を搬送する搬送ユニットとを相対的に移動させて、前記記録ヘッド群及び前記搬送ユニットを離間させると共に、第2の移動手段により前記第1の移動手段による前記記録ヘッド群及び前記搬送ユニットの離間動作に連動して前記搬送ユニットで搬送される前記記録媒体の前記記録ヘッド群側の面に対向する位置に配置された突き出し部材と前記記録ヘッド群とを相対的に移動させて、前記突き出し部材を前記記録ヘッド群側から前記搬送ユニット側に向けて前記インク吐出面より突出した状態に変化させるインクジェット記録装置における記録媒体離脱方法であって、
前記記録ヘッド群各々は、平面視で千鳥状に配置される複数の記録ヘッドを有しており、
前記突き出し部材は、上板と、平面視で前記記録ヘッド各々の周部に存在する千鳥状の間隙に配置され前記上板の下面に接合された突出バーと、前記上板の四隅の下面に接合されて前記上板を支持する支持プレートと、前記支持プレートから突出して設けられており前記上板の下方への移動を、前記記録ヘッド群を支持する支持フレームに接触して係止するストッパとを含み、
通電により生じる磁力で前記突き出し部材の前記上板を引きつけて前記突き出し部材を前記インク吐出面より突出しない状態に維持させる電磁石への通電の有無を切り替えて、前記第1の移動手段による前記記録ヘッド群及び前記搬送ユニットの離間動作と前記突き出し部材を前記インク吐出面より突出した状態に変化させる動作との連動の有無を切り替えるインクジェット記録装置における記録媒体離脱方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
<第1実施形態>
まず、
図1〜
図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置X1(以下「記録装置X1」と略称する)について説明する。なお、
図1Aは、前記記録装置X1が印刷可能である状態を示しており、
図1Bは前記記録装置X1のジャム処理中の状態を示している。
図1に示すように、前記記録装置X1は、給紙カセット1、給紙部2、画像形成部3、インクタンク部4、搬送ユニット5、昇降機構6、排紙部7、制御ユニット8、及びこれらを収容又は支持する本体フレーム10などを備えている。
前記記録装置X1は、パソコン等の情報処理装置から入力される画像データに基づいて印刷処理を実行するプリンタ装置である。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタ装置に限らず、複写機、ファクシミリ装置、複合機などにも適用可能である。
【0014】
前記給紙カセット1には、前記記録装置X1において印刷対象となる用紙P(記録媒体の一例)が収容される。もちろん、印刷対象は、紙に限らずOHPシート又は布などの記録媒体であってもよい。
前記給紙部2は、ピックアップローラ21、搬送ローラ22、搬送路23、レジストローラ24、手差しフィーダ25、及び給紙ローラ26を備えている。前記ピックアップローラ21は、前記給紙カセット1から前記用紙Pを1枚ずつ取り出す。前記搬送ローラ22及び前記搬送路23は、前記ピックアップローラ21により取り出された前記用紙Pを前記レジストローラ24まで搬送する。前記レジストローラ24は、所定の搬送タイミング(画像の書き出しタイミング)で前記用紙Pを前記画像形成部3に搬送する。前記手差しフィーダ25及び前記給紙ローラ26は、外部から用紙Pを供給するために用いられる。
【0015】
前記画像形成部3は、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色に対応する記録ヘッド31、32、33、34と、これらを支持するヘッドフレーム35とを有している。前記ヘッドフレーム35は前記本体フレーム10に支持されている。なお、本実施の形態では、KCMYの4色に対応した4つの前記記録ヘッド31〜34を有する構成を例に挙げて説明するが記録ヘッドの数はこれに限らない。
前記記録ヘッド31〜34は、前記用紙Pの搬送方向に垂直な方向(用紙の幅方向)に長尺状を成しており、前記用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔ごとに順に固定されている。また、前記記録ヘッド31〜34の下端部には、インクを吐出する多数のノズル(吐出口)を有するインク吐出面31A〜34Aがそれぞれ設けられている。
そして、前記画像形成部3では,前記搬送ユニット5によって搬送される前記用紙Pに対して前記インク吐出面31A〜34Aからインクが吐出されることにより前記用紙Pに画像が記録される。即ち、前記記録装置X1は、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。なお、前記記録ヘッド31〜34のインクの吐出方式には、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
また、前記インクタンク部4は、K、C、M、Yの各色に対応するインクが収容されたインクタンク41、42、43、44を備えている。前記インクタンク41〜44は、不図示のインクチューブにより同色の前記記録ヘッド31〜34にそれぞれ接続されており、前記記録ヘッド31〜34にインクを補給する。なお、インクタンク41〜44内ではインクの上部に空気が存在しており、前記インクタンク41〜44内のインクの液面は、前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aよりも低くなるように調整されている。
【0016】
前記搬送ユニット5は、前記記録ヘッド31〜34の下方に配置されており、前記用紙Pを前記インク吐出面31A〜34Aに対向させつつ搬送する。具体的に、前記搬送ユニット5は、前記用紙Pが載置される用紙搬送ベルト51、前記用紙搬送ベルト51を張架する張架ローラ52〜54、及びこれらを支持する搬送フレーム55などを備えている。なお、前記用紙搬送ベルト51と前記インク吐出面31A〜34Aとの間隙は、前記用紙Pの表面と前記インク吐出面31A〜34Aとの間隙が例えば1mmとなるように定められる。
また、前記張架ローラ52は、不図示のモータの回転軸に連結されている。そして、前記張架ローラ52は、前記モータの駆動により反時計回りに回転して前記用紙搬送ベルト51を図示する矢印方向(
図1において右から左に進む方向)に走行させる。これにより、前記給紙部2から供給された前記用紙Pは、前記用紙搬送ベルト51の走行によって前記画像形成部3を経て前記排紙部7に搬送される。
なお、前記搬送ユニット5には、前記用紙Pを前記用紙搬送ベルト51に吸着させるべく、前記搬送ベルト51に形成された多数の貫通孔から吸気を行う吸引ユニット(不図示)なども設けられている。また、前記張架ローラ53の対向位置には、前記用紙Pを前記用紙搬送ベルト51に押しつけて搬送させるためのローラ56が設けられている。
【0017】
前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5を下方から支持しており、前記搬送ユニット5を前記記録ヘッド31〜34に対して上下に昇降させる。即ち、前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を相対的に移動させることにより、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を離間及び接近させる。ここに、前記昇降機構6が第1の移動手段の一例である。
具体的に、前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5の底面の四隅に対応する四組の偏心カム61、回転軸62、及びベアリング群63を備えている。前記偏心カム61は前記回転軸62により回転可能に軸支されており、前記回転軸62は不図示のモータの回転軸に連結されている。前記ベアリング群63は、その一部が前記偏心カム61の外周縁部よりも外側に突出した状態で前記偏心カム61に支持された複数のベアリングを含む。前記搬送ユニット5は、前記ベアリング群63に設けられた複数のベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングによって下方から支持される。
【0018】
そして、前記昇降機構6では、不図示のモータで前記回転軸62が回転駆動されることにより前記偏心カム61が回転する。このとき、前記偏心カム61の回転に伴って、前記ベアリング群63に設けられたベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングが順に入れ替わる。これにより、前記搬送ユニット5を下方から支持するベアリングが入れ替わり、前記搬送ユニット5が鉛直方向に昇降することとなる。
例えば、
図1において左側の前記偏心カム61が時計回りに、右側の前記偏心カム61が反時計回りに回転されることにより、前記搬送ユニット5は徐々に下降する。また、
図1において左側の前記偏心カム61が反時計回りに、右側の前記偏心カム61が時計回りに回転されることにより、前記搬送ユニット5は徐々に上昇する。なお、前記ベアリング群63において前記搬送ユニット5を支持するベアリングの切り替わり時は、隣接する二つのベアリングで前記搬送ユニット5を同時に支持した状態を経由する。
【0019】
ここに、
図1Aには、前記搬送ユニット5が前記ベアリング群63のうち前記回転軸62から最も離れたベアリングで支持された状態が示されている。この状態は、前記搬送ユニット5の鉛直方向の位置が最も高く、前記搬送ユニット5が前記記録ヘッド31〜34に最も接近した状態(以下「通常位置」と称する)である。前記搬送ユニット5がこの通常位置にあるとき、前記記録装置X1では印刷動作が可能である。
また、
図1Bには、前記搬送ユニット5が前記ベアリング群63のうち前記回転軸62に最も近いベアリングで支持された状態が示されている。この状態は、前記搬送ユニット5の鉛直方向の位置が最も低く、前記搬送ユニット5が前記記録ヘッド31〜34から最も離間した状態(以下「退避位置」と称する)である。前記搬送ユニット5がこの退避位置にあるとき、ユーザは、前記搬送ユニット5に残った前記用紙Pを取り除くジャム処理を行うことが可能である。
なお、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を離間及び接近させることができれば、前記搬送ユニット5を前記記録ヘッド31〜34に対して昇降させる構成に限らない。例えば、前記記録ヘッド31〜34を昇降させる構成、或いは前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を共に昇降させる構成も他の実施例として考えられる。また、前記昇降機構6の構成についてもここで説明したものに限らない。例えば、前記昇降機構6が、ボールねじ又はラックとピニオン等を利用して前記搬送ユニット5を昇降させる構成が考えられる。
【0020】
前記排紙部7は、前記画像形成部3の用紙搬送方向下流側に設けられており、乾燥装置71、搬送路72、排紙ローラ73、及び排紙トレイ74などを有している。前記乾燥装置71は、例えば前記用紙Pに送風することにより、前記用紙Pに付着したインクを乾燥させる。そして、前記乾燥装置71で乾燥された前記用紙Pは、前記搬送路72を介して前記排紙ローラ73により前記排紙トレイ74に排出される。
前記制御ユニット8は、演算装置であるCPU、一時記憶領域として用いられるRAM、及び各種の制御プログラムが予め記憶されたROMなどの制御機器を有している。そして、前記制御ユニット8は、外部から入力される画像データに基づいて前記記録装置X1の各構成要素を統括的に制御することにより、前記画像データに対応する画像を前記用紙Pに記録させる。また、前記制御ユニット8は、後述のジャム発生時処理(
図4参照)などを実行する。
【0021】
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、前記記録装置X1に設けられた用紙離脱機構について説明する。ここに、
図2A及び
図3Aは前記画像形成部3を用紙搬送方向上流側から見た要部模式図であって、
図2Aは前記搬送ユニット5が前記通常位置にある状態、
図3Aは前記搬送ユニット5が前記退避位置にある状態を示している。また、
図2Bは
図2AにおけるE−E矢視断面を示す模式図、
図3Bは
図3AにおけるF−F矢視断面を示す模式図、
図3Cは
図3AにおけるG−G矢視断面を示す模式図である。
【0022】
図2及び
図3に示すように、前記画像形成部3の前記記録ヘッド31〜34の周部であって、前記搬送ユニット5で搬送される用紙Pの前記記録ヘッド31〜34側の面に対向する位置には、前記インク吐出面31A〜34A各々から前記用紙Pを引き離すための突き出し部材36が設けられている。前記突き出し部材36は外形が平板矩形状の樹脂部材である。そして、前記突き出し部材36には、前記記録ヘッド31〜34各々の用紙搬送方向の上流側及び下流側に位置するブレード37A〜37Eと、前記記録ヘッド31〜34各々の位置に対応する開口部38A〜38Dとが設けられている。
また、前記突き出し部材36は、用紙搬送方向に垂直な方向の両端部が前記搬送ユニット5の搬送フレーム55の上端部に載置され、前記搬送フレーム55(支持部の一例)により下方から支持されている(
図2A参照)。従って、前記搬送ユニット5が鉛直方向に昇降すると、前記搬送ユニット5に支持された前記突き出し部材36は前記搬送ユニット5の昇降動作に連動して昇降することとなる。ここに、前記突き出し部材36を下方から支持する前記搬送フレーム55が第2の移動手段の一例である。なお、前記突き出し部材36の移動を、前記昇降機構6による前記搬送ユニット5の昇降動作に連動するボールねじ又はラックとピニオン等を利用して行うことも他の実施例として考えられる。
【0023】
そして、前記突き出し部材36が前記記録ヘッド31〜34に対して昇降すると、前記記録ヘッド31〜34及び前記突き出し部材36はその位置関係が相対的に移動することとなる。これにより、前記突き出し部材36の前記ブレード37A〜37Eは、前記記録ヘッド31〜34側から前記搬送ユニット5に向けて前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態(
図3参照)と突出しない状態(
図2参照)との間で移動することになる。
また、前記本体フレーム10には、前記突き出し部材36の下限位置を設定するためのストッパ39が設けられている。これにより、前記突き出し部材36は、その下方への移動が前記ストッパ39により係止される(
図3A参照)。なお、前記ストッパ39は、少なくとも前記突き出し部材36の前記ブレード37A〜37Dが前記記録ヘッド31〜34側から前記搬送ユニット5側に向けて前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態となる位置に設けられている。
ところで、前記突き出し部材36の前記ブレード37A〜37Eを前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態と突出しない状態とに変化させることができれば、前記突き出し部材36を前記記録ヘッド31〜34に対して昇降させる構成に限らない。例えば、前記記録ヘッド31〜34を昇降させる構成、或いは前記突き出し部材36及び前記記録ヘッド31〜34を共に昇降させる構成も他の実施例として考えられる。
【0024】
続いて、前記記録装置X1において前記制御ユニット8により実行されるジャム発生時処理(
図4参照)について説明する。ここに、図示するS11、S12、・・・は処理手順(ステップ)の番号を示すものである。なお、以下のジャム発生時処理を実行するときの前記制御ユニット8が移動制御手段に相当する。また、以下のジャム発生時処理の各工程を実行することにより前記用紙Pを前記インク吐出面31A〜34Aから引き離す方法が、本発明に係るインクジェット記録装置における記録媒体離脱方法に相当する。
【0025】
(ステップS11)
まず、ステップS11において、前記制御ユニット8は、前記記録装置X1における前記用紙Pのジャムの発生を待ち受ける(S11のNo側)。なお、前記制御ユニット8は、前記用紙Pの搬送経路上に配置された複数の用紙検知センサ(不図示)の検知結果に基づいて前記用紙Pのジャムの発生を検知する。
例えば、前記制御ユニット8は、前記用紙Pの搬送経路上の複数の箇所に設けられた用紙検知センサ(不図示)で前記用紙Pの幅を検出し、その幅が異なる場合にジャムの発生を検知することが考えられる。また、前記制御ユニット8は、前記用紙Pの搬送経路上の複数の箇所に設けられた用紙検知センサ(不図示)で前記用紙Pの通過を検出し、その通過の検出タイミングが所定のタイミングからずれている場合にジャムの発生を検知することが考えられる。ここに、前記用紙Pのジャムの発生を検知するときの前記制御ユニット8がジャム検知手段に相当する。
【0026】
(ステップS12)
そして、前記ステップS11において、前記用紙Pのジャムの発生が検知されると(S11のYes側)、処理はステップS12に移行する。ステップS12において、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6を駆動させて前記搬送ユニット5の下降動作を開始させ、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を離間させる。具体的に、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6の回転軸62に連結された不図示のモータを駆動させることにより前記昇降機構6を駆動させる。
このとき、前記突き出し部材36は、前述したように前記搬送ユニット5の下降動作に伴って、前記搬送ユニット5の搬送フレーム55に支持されたまま自重で下降することになる。そして、前記突き出し部材36の下降は、前記ストッパ39で係止されるまで継続する。これにより、前記突き出し部材36のブレード37A〜37E各々は、少なくとも前記記録ヘッド31〜34側から前記搬送ユニット5側に向けて前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態となる。
そのため、前記インク吐出面31A〜34Aに前記用紙Pが付着している場合、前記突き出し部材36のブレード37A〜37Dは、前記インク吐出面31A〜34Aよりも下方に移動する際に前記用紙Pに接触して前記用紙Pを鉛直下方向に移動させる。これにより、前記用紙Pは前記インク吐出面31A〜34Aから確実に引き離される。なお、前記用紙Pの引き離しが鉛直下方向への移動によって行われるため、その引き離しの際に前記用紙Pが前記インク吐出面31A〜34Aに擦れることも防止される。
なお、本実施の形態では、前記搬送ユニット5の昇降動作と前記突き出し部材36の昇降動作とが同時に行われる。一方、前記搬送ユニット5の昇降動作と前記突き出し部材36の昇降動作とを個別の駆動手段によって行う構成も考えられる。この場合には、前記搬送ユニット5の降下動作と前記突き出し部材36の降下動作とがこの順で個別に実行されてもよい。
【0027】
(ステップS13〜S14)
そして、前記昇降機構6の下降動作は、続くステップS13において、前記制御ユニット8により前記搬送ユニット5が前記退避位置(
図1B参照)に到達したと検知されるまで継続する(S13のNo側)。なお、前記制御ユニット8は、例えば不図示の光学式センサ(フォトセンサ)の検知結果又は下降動作の経過時間などに基づいて前記搬送ユニット5が前記退避位置に到達したことを検知する。
ここで、前記搬送ユニット5が前記退避位置に到達したと検知されると(S13のYes側)、処理はステップS14に移行する。ステップS14において、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6を制御することにより前記搬送ユニット5の下降動作を停止させる。具体的に、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6の回転軸62に連結された不図示のモータを停止させることにより前記昇降機構6の駆動を停止させる。
なお、前記搬送ユニット5の下降動作が停止すると、前記制御ユニット8は、ジャム処理に際して開閉される前記本体フレーム10のメンテナンス扉(不図示)のロックを解除する。これにより、ユーザは前記メンテナンス扉(不図示)を開いてジャム処理を行うことができる。その後、ジャム処理が終了して前記メンテナンス扉(不図示)が閉じられたことを検知すると、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6により前記搬送ユニット5を前記通常位置まで上昇させる(
図1A参照)。
【0028】
以上説明したように、前記記録装置X1では、ジャム発生時に前記突き出し部材36によって前記用紙Pが前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aから鉛直下方向に引き離される。これにより、その後にユーザによって行われるジャム処理中に前記用紙Pが前記インク吐出面31A〜34Aに擦れることを防止することができる。また、ジャム処理中は、前記突き出し部材36が前記インク吐出面31A〜34Aの外周から突出した状態となる。そのため、ジャム処理を行うユーザの手が直接前記インク吐出面31A〜34Aに接触することが防止され、前記インク吐出面31A〜34Aを保護すると共にユーザの手の汚れを防止することができる。さらに、前記用紙Pの前記インク吐出面31A〜34Aへの付着状態の継続が回避されるため、毛細管現象などによる前記インク吐出面31A〜34Aからのインクの無駄な流れ出しも防止される。
【0029】
<第2実施形態>
次に、
図5〜
図8を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置X2(以下「記録装置X2」と略称する)について説明する。なお、前記記録装置X1と同様の構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。ここに、
図5Aは前記記録装置X2が印刷可能である状態を示しており、
図5Bは前記記録装置X2のパージ動作中の状態を示している。
【0030】
図5に示すように、前記記録装置X2は、前記記録ヘッド31〜34各々のインク吐出面31A〜34Aの機能を回復させるパージ装置9を備えている。前記パージ装置9は、不図示の水平移動機構により水平方向(
図5における左右方向)に移動可能に支持されている。前記水平移動機構(不図示)は、例えばモータの回転軸に連結されたギアの回転運動を直線運動に変換するボールねじ又はラックとピニオン等の駆動機構を利用して前記パージ装置9を水平方向に移動させる従来周知の駆動機構である。
前記パージ装置9は、前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34A各々から吐出されるインクを受ける複数のキャップ部材(不図示)、及び前記インク吐出面31A〜34A各々を清掃する複数のワイパー部材(不図示)を有している。
【0031】
そして、前記パージ装置9は、前記搬送ユニット5が前記昇降機構6により前記退避位置に移動された後、前記記録ヘッド31〜34の対向箇所に生じたスペースに移動する(
図5B参照)。
前記パージ装置9が前記記録ヘッド31〜34の対向箇所に移動すると、前記インク吐出面31A〜34A各々から前記キャップ部材(不図示)各々に通常よりも強い圧力でインクが吐出され、前記インク吐出面31A〜34Aにおける目詰まりが解消される。なお、前記キャップ部材に吐出されたインクは、前記キャップ部材の底部に設けられた排出口から所定の廃棄インク貯留部に排出される。
その後、前記パージ装置9は、前記ワイパー部材(不図示)各々をモータなどの駆動手段によって駆動して前記インク吐出面31A〜34Aに弾性的に接触させることにより、前記インク吐出面31A〜34Aを清掃する。なお、前記ワイパー部材(不図示)は、前記記録ヘッド31〜34の短手方向に移動することにより前記インク吐出面31A〜34Aを清掃する。もちろん、前記パージ装置9の構成はこれに限らず、従来周知の各種のパージ装置又はクリーニング装置を用いればよい。
【0032】
続いて、
図6〜
図7を参照しつつ、前記記録装置X2に設けられた用紙離脱機構について説明する。ここに、
図6Aは前記画像形成部3を用紙搬送方向上流側から見た要部模式図であって、
図6Bは
図6AにおけるH−H矢視断面を示す模式図である。また、
図7Aは前記搬送ユニット5が前記通常位置にある状態、
図7Bは前記搬送ユニット5が前記退避位置にある状態を示している。
図6A及び
図6Bに示すように、前記記録装置X2の前記画像形成部3では、前記記録ヘッド31、32、33、34が、それぞれ3つの記録ヘッド311〜313、314〜316、317〜319、320〜322を有している。前記記録ヘッド311〜322は、平面視で千鳥状に配置されており、前記ヘッドフレーム35に支持されている。
以下では、説明の便宜上、前記記録ヘッド311〜313、314〜316、317〜319、320〜322を、それぞれ記録ヘッド31、32、33、34と総称し、これらのインク吐出面をインク吐出面31A、32A、33A、34Aと称する。
そして、前記記録装置X2は、
図6A及び
図6Bに示すように、突き出し部材36A及び電磁石365を備えている。前記突き出し部材36Aは、前記記録ヘッド311〜322の周部であって、前記搬送ユニット5で搬送される用紙Pの前記記録ヘッド31〜34側の面に対向する位置に配置されており、上板361、突出バー362、支持プレート363、及びストッパ364などを有している。前記電磁石365は、前記本体フレーム10に支持されている。
【0033】
前記上板361は、前記電磁石365の磁力により引きつけられる金属製の平板部材である。なお、前記上板361は、前記電磁石365に対応する位置のみに金属板が接合された樹脂部材などであってもよい。
前記突出バー362は、
図6Bに示すように、前記記録ヘッド31〜34各々の記録ヘッド311〜322の間隙に対応してそれぞれ設けられている。前記突出バー362各々は、前記上板361の下面に接合された有底円柱状の樹脂部材である。なお、前記突出バー362はその底面が前記上板361にネジにより螺着されている。また、前記突出バー362の前記搬送ユニット5側の先端は半球状に形成されている。
前記支持プレート363は、前記上板361の四隅にそれぞれ設けられている。前記支持プレート363各々は、前記突出バー362と同様に前記上板361の下面に接合された有底矩形筒状の樹脂部材である。ここで、前記支持プレート363は、前記突出バー362よりも長尺状であって、その下端部が前記搬送ユニット5の搬送フレーム55の上端に当接している。これにより、前記突き出し部材36A全体が前記搬送ユニット5の搬送フレーム55により下方から支持されている。
前記ストッパ364は、前記支持プレート363の外周面に形成された突起部であり、前記突き出し部材36Aの下限位置を定めるものである。前記ストッパ364は、前記突き出し部材36Aが下方に移動する際に前記ヘッドフレーム35に接触する。これにより、前記突き出し部材36Aの下方への移動は、前記ストッパ364の位置で前記ストッパ364及び前記ヘッドフレーム35の接触により係止される。
前記電磁石365は、通電の有無に応じて磁力の有無が切り替わる。具体的に、前記電磁石365は、通電されることにより一時的に磁力を発生させて前記突き出し部材36Aの上板361を吸着する。なお、前記電磁石365への通電の有無は前記制御ユニット8によって制御され、初期状態において前記電磁石365への通電は行われない。
【0034】
ここに、
図7は、前記搬送ユニット5を下降させて前記退避位置に移動させた状態を示しており、
図7Aは前記電磁石365に通電していない場合、
図7Bは前記電磁石365に通電している場合を示している。
図7Aに示すように、前記電磁石365に通電していなければ、前記突き出し部材36Aは、前記搬送ユニット5の下降動作に連動して自重で下降することとなる。
一方、
図7Bに示すように、前記電磁石365に通電されていれば、前記電磁石365に磁力が生じて前記上板361が前記電磁石365に引きつけられた状態となる。これにより、前記突き出し部材36Aは、前記電磁石365によって前記インク吐出面31A〜34Aから突出しない状態に維持され、前記搬送ユニット5の下降動作に連動して下降しない。即ち、前記突き出し部材36Aの移動は、前記電磁石365によって制限(禁止)される。このように、前記電磁石365は、前記昇降機構6による前記記録ヘッド31〜34及び前記搬送ユニット5の離間動作と前記突き出し部材36Aを前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態に変化させる動作との連動の有無を切り替える。ここに、前記電磁石365が連動切替手段の一例である。
従って、前記記録装置X2では、前記制御ユニット8が前記電磁石365への通電の有無を切り替えることにより、前記突き出し部材36Aの下降の可否を任意に切り替えることが可能である。ここに、前記電磁石365への通電の有無を切り替えるときの前記制御ユニット8が通電制御手段に相当する。
【0035】
具体的に、前記記録装置X2においても、前記制御ユニット8によって前記ジャム発生時処理(
図4参照)が実行される。このとき、前記ジャム発生時処理においてジャムが検知された場合、前記制御ユニット8は、前記電磁石365への通電を行わない。そのため、ジャム発生時には、前記昇降機構6による前記記録ヘッド31〜34及び前記搬送ユニット5の離間動作と前記突き出し部材36Aを前記インク吐出面31A〜34Aより突出した状態に変化させる動作との連動が有効となる。従って、前記突き出し部材36Aの下降に伴って前記突出バー362で前記インク吐出面31A〜34Aから前記用紙Pを確実に引き離すことができる。このとき、前記突出バー362と前記用紙Pとの接触は、前記突出バー362の先端である半球状の頂部において点接触により行われることになる。そのため、前記突出バー362と前記用紙Pとの接触面積が小さく、前記用紙Pから前記突出バー362へのインクの付着などを防止することができる。また、前記用紙Pが前記突出バー362の先端である半球状の頂部だけでなくその頂部の周辺にも接触することが考えられるが、その接触は前記突出バー362の先端である半球状の球面部において行われることになる。そのため、前記用紙Pに圧迫痕や傷が付くことや前記用紙Pが破れることも防止される。
一方、前記制御ユニット8は、以下のパージ開始処理(
図8参照)を実行することにより、前記パージ装置9によるパージ動作などのメンテナンスの開始時には、前記電磁石365への通電を行った後で前記搬送ユニット5を下降させる。以下、
図8を参照しつつ、前記制御ユニット8によって実行されるパージ開始処理について説明する。ここに、図示するS21、S22、・・・は処理手順(ステップ)の番号を示すものである。
【0036】
(ステップS21〜S22)
図8に示すように、前記制御ユニット8は、まずステップS21において、前記パージ装置9のパージ動作の開始を待ち受ける(S21のNo側)。ここで、前記制御ユニット8は、予め設定された所定期間ごとに、或いはユーザ操作に応じて前記パージ装置9によるパージ動作を実行させる。
なお、ここでは、前記パージ装置9によるパージ動作の開始を前記記録ヘッド31〜34のメンテナンスの開始の一例として挙げるが、これに限らず例えば前記記録ヘッド31〜34又は前記インク吐出面31A〜34Aなどの交換や修理などのメンテナンスの開始時も同様である。なお、前記パージ装置9の前記ワイパー部材(不図示)による前記記録ヘッド31〜34の清掃のみを行うワイプ動作も前記記録ヘッド31〜34のメンテナンスの一例である。
そして、前記ステップS21においてパージ動作の開始と判断されると(S21のYes側)、処理はステップS22に移行する。ステップS22において、前記制御ユニット8は、前記電磁石365への通電を開始する。これにより、前記電磁石365は、磁力を発生させて前記突き出し部材36Aの前記上板361を吸着し、前記突き出し部材36Aを前記インク吐出面31A〜34Aから突出しない状態に維持させる。
【0037】
(ステップS23〜25)
続くステップS23において、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6を駆動させることにより前記搬送ユニット5の下降動作を開始させる。このとき、前記突き出し部材36Aの下降は、前記電磁石365によって禁止されているため、前記搬送ユニット5だけが下降することになる。
その後、前記昇降機構6の下降動作は、続くステップS24において、前記制御ユニット8により前記搬送ユニット5が前記退避位置(
図5B参照)に到達したと検知されるまで継続する(S24のNo側)。そして、前記搬送ユニット5が前記退避位置に到達したと検知されると(S24のYes側)、処理はステップS25に移行する。ステップS25において、前記制御ユニット8は、前記昇降機構6の駆動を停止させることにより前記搬送ユニット5の下降動作を停止させる。
【0038】
(ステップS26)
そして、ステップS26において、前記制御ユニット8は、前記パージ装置9によるパージ動作を実行させる。具体的に、前記制御ユニット8は、前記搬送ユニット5の退避により生じた前記記録ヘッド31〜34の対向箇所のスペースに前記パージ装置9を移動させた後、前記パージ装置9によるパージ動作を開始させる。このとき、前記突き出し部材36Aの突出バー362は前記インク吐出面31A〜34Aよりも上方に位置しているため、前記パージ装置9によるパージ動作の妨げとならない。
なお、前記パージ動作が終了すると、前記制御ユニット8は、前記パージ装置9を元の位置まで移動させ、その後、前記昇降機構6により前記搬送ユニット5を前記通常位置まで上昇させる(
図5A参照)。また、前記搬送ユニット5が前記通常位置に到達すると、前記制御ユニット8は前記電磁石365への通電を停止する。
【0039】
以上説明したように、前記記録装置X2では、前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aのパージ(クリーニング)などのメンテナンスが行われる際には、前記突き出し部材36Aの移動が前記電磁石365によって禁止される。そのため、前記突き出し部材36Aの突出バー362が前記インク吐出面31A〜34Aから突出せず、前記突出バー362がメンテナンスの邪魔にならない。
一方、ジャム発生時には、前記突き出し部材36Aの突出バー362によって前記用紙Pが前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aから確実に引き離される。これにより、その後にユーザによって行われるジャム処理中に前記用紙Pが前記インク吐出面31A〜34Aに擦れることを防止することができる。また、ジャム処理中は、前記突き出し部材36Aの突出バー362が前記インク吐出面31A〜34Aの外周から突出した状態となる。そのため、ジャム処理を行うユーザの手が直接前記インク吐出面31A〜34Aに接触することが防止され、前記インク吐出面31A〜34Aを保護すると共にユーザの手の汚れを防止することができる。さらに、前記用紙Pの前記インク吐出面31A〜34Aへの付着状態の継続が回避されるため、毛細管現象などによる前記インク吐出面31A〜34Aからのインクの無駄な流れ出しも防止される。
【0040】
なお、本第2実施形態では、前記突き出し部材36Aの移動可否の切り替えに前記電磁石365を用いる場合を例に挙げて説明したが、同様の機能を発揮する他の構成を採用してもよい。
例えば、ソレノイドなどの駆動手段に連結された係合部を、前記突き出し部材36Aの一部に係合・離脱させることにより前記突き出し部材36Aの移動可否を切り替える構成も考えられる。この場合、前記駆動手段及び前記係合部が連動切替手段の一例である。
また、前記昇降機構6のモータ(不図示)から伝達される駆動力で回転するギアを利用して前記突き出し部材36Aを昇降させる構成では、そのモータからギアへの動力伝達の有無をクラッチで切り替えることが考えられる。この場合、前記クラッチが連動切替手段の一例である。
もちろん、本第2実施形態で説明したように前記電磁石365などの連動切替手段によって前記突き出し部材36の移動の可否を制御し得る構成を前記第1実施形態に係る前記記録装置X1に採用することも他の実施例として考えられる。
ところで、
図6及び
図7に示したように、前記インクジェット記録装置X2に設けられた前記突出バー362はその先端が半球状に形成されている。一方、前記突出バー362の先端形状は半球状に限らず他の形状であってもよい。例えば、
図9に示すように、前記突出バー362に代えて、先端が平坦状に形成された突出バー362Aを用いることが考えられる。