特許第5950963号(P5950963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5950963
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】粉体の除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20160630BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20160630BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H05F3/04 D
   H01T23/00
   H01T19/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-105204(P2014-105204)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-220208(P2015-220208A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年5月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年 第46回安全工学研究発表会 平成25年11月28日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】501213860
【氏名又は名称】独立行政法人労働安全衛生総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】崔 光石
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】最上 智史
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−023750(JP,A)
【文献】 特開2003−321126(JP,A)
【文献】 特公昭44−006549(JP,B1)
【文献】 国際公開第2013/128779(WO,A1)
【文献】 特開2009−199841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
H01T 19/04
H01T 23/00
B65G 65/30−65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵槽に粉体を投入するための投入配管の周囲に設けるとともに直流電源に接続した複数のイオナイザーを備え、
搬送気流によって搬送された粉体を上記投入配管から上記貯蔵槽に投入する過程で、上記イオナイザーで生成されたイオンによって上記粉体を除電する粉体の除電装置において、
上記投入配管の周方向に所定の間隔を保って配置した複数のイオナイザーからなる第1のイオナイザーグループと、
上記投入配管の周方向に所定の間隔を保って配置した複数のイオナイザーからなる第2のイオナイザーグループとを備え、
上記第2のイオナイザーグループは、上記投入配管の投入口付近に設けられるとともに、上記第1のイオナイザーグループに対して粉体の搬送方向下流側に所定の間隔を保って設けられ、かつ、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーは、それらの電極の極性が投入配管の周方向に沿って正負交互に配置された粉体の除電装置。
【請求項2】
上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーは、それらの電極の極性が投入配管の周方向に沿って正負交互に配置された請求項1に記載の粉体の除電装置。
【請求項3】
上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーと、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーとを同数にし、
上記第1のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーと、上記投入配管の周方向における位置をほぼ同じにした第2のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーとを対応させ、
これら対応するイオナイザーの電極を互いに逆極性にした請求項に記載の粉体の除電装置。
【請求項4】
上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーと、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーとを同数にし、
上記第1のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーを、上記投入配管の周方向における位置をほぼ同じにした第2のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーとを対応させ、
これら対応するイオナイザーの電極を同極性にした請求項に記載の粉体の除電装置。
【請求項5】
上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーの電極を全て同極性にした請求項1に記載の粉体の除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気流によって搬送される粉体を除電するための除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置内を気流によって搬送される粉体が、搬送管の壁面との摩擦や、粉体同士の相互摩擦によって帯電する。帯電した粉体が貯蔵槽内に大量に堆積すると、着火性放電が起こる可能性がある。そこで、帯電した粉体を除電する様々な除電装置が知られている。
例えば、特許文献1の除電装置は、粉体の貯蔵槽に接続された絶縁性の投入配管の周囲を一周するように複数のノズル型のイオナイザーを配置したものである。
上記特許文献1における各ノズル型のイオナイザーは、絶縁性の投入配管の帯電を利用してイオンを生成することによって粉体を除電する自己放電型である。
また、上記イオナイザーとして自己放電型ではなく、帯電した粉体を中和するためのイオンを交流高電圧によって生成する交流式イオン生成型のイオナイザーを用いたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−055317号公報
【特許文献2】特開2003−267484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように投入配管を一周するように放電電極針を配置した従来の除電装置では、投入配管から投入される粉体の除電が不十分で、貯蔵槽内に高い帯電量の粉体が堆積してしまうことがあった。このように、従来の除電装置で、粉体の除電が十分にできなかった原因は、次のように考えられる。
投入配管の終端付近で生成されたイオンによって、搬送過程で帯電した粉体の表面電荷は中和して除電されるはずである。しかし、自己放電型では、帯電粉体からの誘導よりも、絶縁性投入配管と粉体との衝突帯電により投入配管の帯電が左右されるため、粉体の搬送速度が速い場合には、絶縁性投入配管と粉体との衝突帯電による投入配管の帯電が高くなることでイオン生成量が多くなり粉体を逆帯電(過除電)させることがあり、反対に搬送速度が遅い場合は、粉体との衝突帯電が小さく投入配管の帯電も低くなりイオン生成量も少なくなるので除電不足となることがあった。このように自己放電型は、イオン生成量の制御ができないため、帯電粉体の帯電量に見合った除電ができないことがあった。
【0005】
一方、交流式イオン生成型では、正負イオンが交互に生成される。この時、粉体と同極性のイオンでは除電ができず、異極性のイオンのみが除電に寄与することになるので、搬送された粉体には、交流の周波数に同期した除電された部分と未除電の部分が交互に発生するため、未除電の粉体がイオナイザーを通過してしまい、除電不足を生じてしまうことがあった。
また、一旦除電された粉体は投入配管から落下して貯蔵槽内に堆積するが、その過程でも搬送気流によって舞い上がり、貯蔵槽の内壁との摩擦や、粉体同士の摩擦によって再帯電してしまうことがある。さらに、堆積した粉体が舞い上がり、再帯電してしまうこともある。
このように、粉体が投入配管を通過する過程でのみ除電する従来の除電装置では、堆積した粉体の帯電量を十分に下げることは難しかった。
【0006】
一方で、貯蔵槽の下部壁面に放電電極針やエア吹き込み口を設けて、貯蔵槽に堆積した粉体にイオン化したエアを供給する装置が知られている(特許文献2)。
しかし、このように、粉体が堆積している部分でイオン化したエアを供給する装置は、堆積した粉体を底部から舞い上がらせなければならないので、多くの風量が必要になり、装置が大型化してしまうという問題がある。また、粉体の噴出を防止しながらエアを吹き込む吹き込み口の構造などが複雑になってしまう。
この発明の目的は、搬送気流によって投入配管を介して貯蔵槽に貯蔵される粉体を効率よく除電でき、貯蔵槽に堆積した粉体からの着火性静電気放電を防止できる粉体の除電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、貯蔵槽に粉体を投入するための投入配管の周囲に設けるとともに直流電源に接続した複数のイオナイザーを備え、搬送気流によって搬送された粉体を上記投入配管から上記貯蔵槽に投入する過程で、上記イオナイザーで生成されたイオンによって上記粉体を除電する粉体の除電装置を前提とする。
【0008】
第1の発明は、上記装置を前提とし、上記投入配管の周方向に所定の間隔を保って配置した複数のイオナイザーからなる第1のイオナイザーグループと、上記投入配管の周方向に所定の間隔を保って配置した複数のイオナイザーからなる第2のイオナイザーグループとを備え、上記第2のイオナイザーグループは、上記投入配管の投入口付近に設けられるとともに、上記第1のイオナイザーグループに対して粉体の搬送方向下流側に所定の間隔を保って設けられ、かつ、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーは、それらの電極の極性が投入配管の周方向に沿って正負交互に配置されたことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーは、それらの電極の極性が投入配管の周方向に沿って正負交互に配置されたことを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーと、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーとを同数にし、上記第1のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーと、上記投入配管の周方向における位置をほぼ同じにした第2のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーとを対応させ、これら対応するイオナイザーの電極を互いに逆極性にしたことを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーと、上記第2のイオナイザーグループを構成するイオナイザーとを同数にし、上記第1のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーを、上記投入配管の周方向における位置をほぼ同じにした第2のイオナイザーグループを構成する各イオナイザーとを対応させ、これら対応するイオナイザーの電極を同極性にしたことを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、上記第1のイオナイザーグループを構成するイオナイザーの電極を全て同極性にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、第1のイオナイザーグループの内側を通過する粉体を、第1のイオナイザーグループで生成されたイオンによって除電し、粉体の帯電量をある程度下げ、帯電量が下がった粉体をさらに第2のイオナイザーグループで生成されるイオンによって除電することができる。また、第1のイオナイザーグループで除電しきれなかった粉体を第2のイオナイザーグループで生成されるイオンによって除電することもできる。
【0014】
さらに、第2のイオナイザーグループを通過する粉体は、全体としては帯電量が低くなっているため、第2のイオナイザーグループで生成されたイオンのうち粉体の除電に使われなかったイオンはフリーイオンとなって、搬送気流とともに貯蔵槽内に噴射される。このフリーイオンは、投入配管から排出された後に再帯電した粉体や、投入配管で除電しきれなかった粉体を除電することができる。
特に、第2イオナイザーグループでは、正負両極性のイオンが生成されるので、正負の両方の帯電粉体を除電することができる。例えば、粉体同士の相互摩擦では、粉体は正にも負にも帯電することがあるが、このような粉体も除電することができる。
しかも、この発明のイオナイザーは直流電源に接続されているため、交流電圧を印加する場合と比べて、多くのイオンを生成することができる。また、上記フリーイオンは、投入配管から吹き出す搬送気流によって粉体と混合されるので、効率よく除電に寄与する。
その結果、投入配管に取り付けるという簡単な構成で、貯蔵槽に堆積した粉体から着火性静電気放電が起こることを防止できる。
【0015】
第2〜4の発明によれば、第1のイオナイザーグループのイオナイザーが、正イオンと負イオンとを同時に生成できる。そのため、単極性のイオンを生成している時に発生しやすい逆帯電を防止でき粉体の除電を効率よく行うことが可能である。例えば、粉体同士の相互摩擦によって帯電した両極性の粉体も効率的に除電することができる。
また、搬送される粉体が、全体として正負どちらに帯電しているのかが不明な場合にも、正負両極性のイオンを生成することによってどちらの極性の粉体に対しても、第1及び第2のイオナイザーグループによる2段階の除電によって帯電量を十分に下げることができる。
【0016】
また、第3の発明によれば、投入配管の周方向にも、搬送気流の流れ方向にもイオナイザーの極性が正負交互になるように配置され、第1,2イオナイザーグループ周辺に形成されるイオン空間内の極性の偏りが少なくなる。そのため、逆帯電しにくく、より均一な除電が可能になる。
第4の発明によれば、投入配管の周方向の位置がほぼ等しく対応する第1,2イオナイザーグループの電極を同一電源に接続することができる。
【0017】
第5の発明によれば、第1イオナイザーグループを構成するイオナイザーの電極の極性と逆極性の粉体をよりよく除電することができる。例えば、搬送過程で帯電する粉体の平均帯電量が、正負いずれかに大きく偏っていることが分かっている場合には、上記第1イオナイザーグループの電極の極性を、粉体と逆極性に設定すれば、第1イオナイザーグループで生成されるイオンによって、帯電した粉体をより効率的に除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はこの発明の除電装置を用いる粉体の貯蔵槽の断面を示した模式図である。
図2図2は実施形態の除電装置の取付け状態を示す、投入配管の軸方向断面図である。
図3図3は実施形態の除電装置の取付け状態を示す、投入配管の軸方向に直交する方向の断面図である。
図4図4は第1、第2イオナイザーグループにおけるイオナイザーの電極配置を示した概念図であり、(a)は第1イオナイザーグループを、(b)は第2イオナイザーグループを示している。
図5図5は実施形態の除電装置を用いた除電実験を行った実験設備の概略図である。
図6図6は除電実験の各イオナイザーの電極針の極性と実験結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜6を用いての発明の実施形態を説明する。
この発明の除電装置1は、搬送気流によって搬送される過程で帯電し、図1の投入配管2から貯蔵槽3内に投入され堆積する粉体を除電するための装置である。
そして、除電装置1を、上記投入配管2の開口の付近である投入配管2の終端部に取り付けている。
【0020】
図2,3に示すように、投入配管2の終端に取り付けた実施形態の除電装置1は、投入配管2と同径の取付け用短管4の外周に一定の間隔を保って4つのイオナイザー本体A,B,C,Dを取り付けたものである。なお、この実施形態では上記取付け用短管4は、上記投入配管2と一体となってこの発明の投入配管の開口付近を構成している。
上記イオナイザー本体A,B,C,Dは全て同じ構成で、金属製の略直方体のケーシング5と、その一側面から突出した一対のノズル部6,7を備えている。そして、上記ノズル部6,7の内部には、それぞれ放電電極針8,9が設けられるとともに、先端には多数の小孔10が形成された多孔部6a、7aが形成され、それぞれ放電電極針8,9の先端を対向させている。
また、ケーシング5内には、上記放電電極針8,9に、それぞれ独立して正又は負の直流高電圧を印加するための高電圧発生回路11を設けている。
【0021】
上記ケーシング5であって、上記ノズル部6,7と反対側の側面には、圧縮エアを供給するためのエア供給口12を形成している。このエア供給口12を、図示しない圧縮エア源に接続し、ケーシング5内に圧縮エアを供給可能にしている。
このようなイオナイザー本体A〜Dでは、上記放電電極針8,9に直流高圧電圧を印加するとともに、エア供給口12から圧縮エアを供給すれば、放電電極針8,9の周囲に生成されたイオンが圧縮エアによって多孔部6a,7aの小孔10から噴出して、搬送される粉体を除電する。
【0022】
また、図3に示すように、上記取付け用短管4の外周には、外方に向かって伸びる取付け用板13を4枚溶接し、各取付け用板13に各イオナイザー本体A〜Dをねじ部材14で固定している。なお、ケーシング5において上記取付け用板13に対向する面には、ケーシング5の側壁の厚み内に、上記ねじ部材14を結合するためのねじ孔5aを形成している(図2参照)。
さらに、取付け用短管4の側面には、各イオナイザー本体A〜Dのノズル部6,7の先端をはめ込むためのはめ込み孔を開口させ、ノズル部6,7の先端面が取付け用短管4の内壁とほぼ面一になるようにしている。
【0023】
また、図2おいて取付け用短管4の上端と、投入配管2の下端とのそれぞれの対応位置には、連結片15,16を設け、これらをボルト17及びナット18で連結している。
このように、イオナイザー本体A〜Dを設けた取付け用短管4を投入配管2に取り付けた状態で、各イオナイザー本体A〜D内の一方の放電電極針8よりも、もう一方の放電電極針9が、粉体の搬送方向下流側に位置するようにしている。なお、粉体の搬送方向は、図2における上から下へ向かう方向である。
【0024】
そして、図4(a)、(b)に示すように、上記搬送方向上流側に位置する各放電電極針8a〜8dは、上記取付け用短管4に沿った円周上に等間隔で配置され、搬送方向下流側に位置する各放電電極針9a〜9dは上記取付け用短管4に沿った円周上に等間隔で配置される。
なお、図4では、各放電電極針8,9の周方向の位置を区別するため、符号8,9にそれを備えたイオナイザー本体A,B,C,Dの符号を小文字にしたa〜dをつけて示している。ただし、各放電電極針の周方向の位置を区別する必要がない場合には、上記小文字のa〜dを省略することにする。
上記のように配置された図4(a)に示す放電電極針8a〜8dが、この発明の第1イオナイザーグループを構成するイオナイザーの電極であり、図4(b)に示す放電電極針9a〜9dが、この発明の第2イオナイザーグループを構成するイオナイザーの電極である。
【0025】
そして、上記第2イオナイザーグループの電極9a〜9dは、周方向に隣り合う放電電極針が正負逆極性となるように電圧を印加するようにしている。つまり、放電電極針9a,9cには正の高電圧を印加し、放電電極針9b,9dには負の高電圧を印加する。
これに対し、第1イオナイザーグループの各放電電極針8a〜8dの極性の配置には、次の3通りのタイプがある。
【0026】
第1タイプは、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性が周方向に正負が交互になるように配置するとともに、周方向位置を等しくした上下の放電電極針の極性を逆極性にするものである。これは、後で説明する図6に示す実験1に相当する配置で、一つのイオナイザー本体A〜D内の一対の放電電極針8,9の極性が逆極性になる。
第2タイプは、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性が周方向に正負が交互になるように配置するとともに、周方向位置を等しくした上下の放電電極針の極性を同極性にするものである。これは、一つのイオナイザー本体A〜D内の一対の放電電極針8,9の極性が同極性になる(図6の実験2参照)。
【0027】
第3タイプは、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性が全て同じになるように配置するもので、図6の実験3に相当する。ただし、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dを正負どちらの極性にするかは、除電対象である粉体の帯電極性によって設定することが好ましい。
粉体全体として、正に帯電している場合には、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dを負極性にし、粉体が負に帯電している場合には、放電電極針8a〜8dを正極性に設定することによって、第1イオナイザーグループでの除電効率が上がることを期待できる。
【0028】
上記したこの実施形態の除電装置の性能を確認するための除電実験を行なった。
この実験は、直径が約2[mm]のポリプロピレン(PP)の粉体を搬送気流で搬送する過程で摩擦帯電させ、それを上記除電装置によって除電する実験である。この除電実験には、図5に示す設備を用いた。
【0029】
図5の実験設備は、貯蔵槽3を備え、この貯蔵槽3の底部排出口3aから、天井面3bの投入口3cに接続した上記投入配管2まで連続して上記粉体を搬送する搬送管19と、貯蔵槽3の天井面3bの排気口3dから上記搬送管19に、連続して搬送気流であるエアを供給するエア配管20とを備えている。上記エア配管20にはエアを供給するブロア21を接続するとともに、このブロア21と貯蔵槽3の排気口3dとの間にはバグフィルタ22を設けている。このバグフィルタ22はサイロ内の粉体がエア配管20内へ引き込まれることを防止するためのものである。
図中、粉体の移動経路を実線の矢印で示し、気体の流れを破線の矢印で示している。
【0030】
さらに、貯蔵槽3の下方には、底部排出口3aを開閉するためのロータリーバルブ23を設けている。また、符号24はエア配管20及び搬送管19に供給する気体の温湿度を調整するエアコンである。
また、図示していないが、貯蔵槽3の内部には、貯蔵槽3内を落下する粉体を採取してその電荷量Q[C]を検出するカバー付きファラデーケージを設けている。このファラデーケージによる検出電荷量Qを粉体重量で除して、粉体の単位重量当たりの電荷量である比電荷量q[C/kg]を求めることができる。
なお、上記貯蔵槽3は、直径1.5[m]、長さ3.3[m]、容量3.8[m]のステンレス製、搬送管19は、直径0.1[m]、全長約30[m]のステンレス製である。
【0031】
実験は、上記貯蔵槽3内に300[kg]の粉体を充填し、底部排出口3aに設けたロータリーバルブ23を開くとともに、搬送エアを供給して粉体を搬送して行なう。
粉体の搬送条件は、搬送エアの風量が10[m/min]、粉体流量が23[kg/min]、搬送エア温度が30±5[℃]、搬送エア湿度が30±5[%]である。
さらに、各イオナイザー本体A〜Dのケーシング5へのエア供給圧力は0.15[MPa]である。
また、上記取付け用短管4は直径0.1[m]、長さ0.2[m]のステンレス製である。
【0032】
上記の実験設備を用い、上記第1イオナイザーグループを構成する放電電極針8a〜8dに印加する電圧の極性を変化させて図6に示す実験1〜3及び比較実験1,2を行なった。
<実験1>
実験1の除電装置は、上記したこの発明の第1タイプのもので、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性は、周方向に正負が交互になり、周方向の位置が同じ第2イオナイザーグループの放電電極針9a〜9dとは逆極性になるようにしている。すなわち、放電電極針8a,8c、9b,9dは負極性、放電電極針8b,8d、9a,9cが正極性になる。
【0033】
<実験2>
実験2の除電装置は、上記したこの発明の第2タイプのもので、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性が、周方向の位置を等しくした第2イオナイザーグループの放電電極針9a〜9dの極性と等しくなるようにしたものである。すなわち、放電電極針8a,8c、9a,9cが正極性、放電電極針8b,8d、9b,9dが負極性になる。
【0034】
<実験3>
実験3の除電装置は、上記したこの発明の第3タイプのもので、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dの極性を全て同じ、正極性にしたものである。
上記放電電極針8a〜8dの極性を正にしたのは、この実験に用いるPPの粉体が、ステンレス製の配管等との摩擦によって負に帯電し易く、粉体が全体として負極性側に偏っていることを確認したからである。
【0035】
<比較実験1>
比較実験1の除電装置は、第1イオナイザーグループの放電電極針8a〜8dには電圧を印加せず、第2イオナイザーグループの放電電極針9a〜9dに正の電圧を印加するものである。つまり、周方向に間隔を保って複数のイオナイザーを配置したイオナイザーグループを一つだけ備えた装置になる。
<比較実験2>
比較実験2の除電装置は、第1、2イオナイザーグループのすべての放電電極針8a〜8d、9a〜9dすべてに23[kHz]の高周波電圧を印加するものである。
そして、上記実験1〜3及び比較実験1では、正の電圧としてDC+7[kV]を用い、負の電圧としてDC−7[kV]を用い、比較実験2の高周波電圧は、3.5[kV](実効値)を用いている。
【0036】
<実験結果>
上記した各実験を行ない、貯蔵槽3内の図示しないファラデーケージで測定した電荷量に基づいて、粉体の比電荷量q[nC/g]を求めた。
その結果は、図6に示す通りであり、この発明の除電装置を置用いた実験1〜3では、それぞれ、除電後の比電荷量qが−1.59[nC/g]、−1.07[nC/g]、+0.80[nC/g]とほぼ同程度であった。
なお、いずれの放電電極針8a〜8d、9a〜9dにも電圧を印加しないで、他の実験と同様に粉体を搬送した場合、すなわち除電をしないときの粉体の比電荷量qは約−9[nC/g]であった。
このことから、この発明の除電装置が、搬送過程で帯電した粉体を十分に除電できることが確認できた。
【0037】
一方、比較実験1では、除電後の比電荷量qは+3.44[nC/g]であった。
この実験に用いた粉体は負に帯電しているため、第2イオナイザーグループの放電電極針9a〜9dに正の電圧を印加したが、粉体が逆帯電してしまった。
このような結果になったのは、第2イオナイザーグループで生成される正イオンの量が、粉体の帯電量に比べて多く、その正イオンを搬送気流によって強制的に貯蔵槽内の粉体に混合させたためと考えられる。生成されるイオン量は、放電電極針への印加電圧等で制御可能であるが、厳密な制御は難しく、除電していない時の粉体の比電荷量に左右されて除電後の比電荷量が変動してしまう。
これに対し、上記実験1〜3の除電装置では、第2イオナイザーグループで正負のフリーイオンをバランスよく生成できるので、イオンの生成量を厳密に制御しなくても、逆帯電を少なくできる。また、逆帯電した粉体を、負イオンによって再除電することもできるので、常に、除電後の粉体の比電荷を小さな値に維持できる。
【0038】
比較実験2では、除電後の粉体の比電荷量qは−3.82[nC/g]であった。
これは、除電不足である。高周波電圧は、正弦波であるためイオンが生成される放電開始電圧になるまでのイオンを生成していない時間が発生する。さらに、半周期は除電に寄与しない同極性のイオン生成をしている。このため上記実験1〜3の除電装置のように直流電圧を印加した場合と比べて、除電に寄与するイオン生成時間が短くなってしまう。そのため、総イオン生成量が少なくなるだけでなく、時間的にイオン濃度が低くなる部分ができてしまい、除電不足になってしまったものと考えられる。
【0039】
以上の実験結果から、上記実験1〜3で用いたこの発明の除電装置が、搬送気流で搬送される粉体の除電に有効であることがわかった。その理由は、次のように考えられる。
帯電した粉体は、上記投入配管2の開口付近の第1のイオナイザーグループで生成されるイオン雰囲気を通過中に上記イオンによって除電され、その電荷量が下がる。その後、粉体は、第2イオナイザーグループで生成された正負のイオンによって再度除電されるが、第2のイオナイザーグループを通過する粉体は、全体としては帯電量が低くなっているため、第2のイオナイザーグループで生成されたイオンで、常に、粉体の比電荷の絶対値が小さな値になるように除電するとともに、第2のイオナイザーグループで生成されたイオンのうち粉体の除電に使われなかったイオンの一部はフリーイオンとなって、搬送気流とともに貯蔵槽内に噴射される。
【0040】
上記フリーイオンは、投入配管から排出された後に再帯電した粉体や、第1イオナイザーグループで除電しきれなかった粉体を除電することができる。
特に、第2イオナイザーグループでは、正負両極性のイオンが生成されるので、単極性のイオンを生成している場合に発生する逆帯電を防止することも可能である。例えば、粉体同士の相互摩擦で帯電した正負両方の帯電粉体を除電することもできる。
しかも、各放電電極針には直流電圧を印加しているため、常時イオンを生成することができるうえ、生成されたフリーイオンは、投入配管から吹き出す搬送気流によって粉体と混合されるので、効率のよい除電ができると考えられる。
【0041】
なお、上記実施形態では、第1イオナイザーグループのイオナイザーと第2イオナイザーグループのイオナイザーとを一つのイオナイザー本体A〜Dで構成しているが、各イオナイザーは個別に構成されてもよいし、イオナイザーの構成も上記実施形態に限らない。各イオナイザーは、必要な極性の直流電圧によって生成したイオンを放出できるものならばどのようなものでもよい。
また、上記実施形態では、第1イオナイザーグループを構成するイオナイザーと第2イオナイザーグループを構成するイオナイザーとを同数にしているが、必ずしも同数でなくてもよいし、各グループを構成するイオナイザーの数も特に限定されない。
イオナイザーの数が多ければ多いほど、高濃度でかつ均一なイオン空間を生成することが可能になるが、その分、大きな取付け部が必要なる。したがって、イオナイザーの数は装置の大きさや粉体の搬送速度などに応じて設定すればよい。ただし、第2イオナイザーグループにおいて同時に生成する正負のイオンのイオンバランスを保つためには、第2イオナイザーグループを構成するイオナイザーの数は偶数が好ましい。
【0042】
また、各第1,2イオナイザーグループの取付け方法も、上記したものに限らず、例えば、各イオナイザーを投入配管2に直接取り付けるようにしてもよい。
ただし、上記取付け用短管4やその他のホルダーなどを用いれば、複数のイオナイザーを一体的に取り扱うことができて取付け作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
粉体を取り扱う現場での、静電気による着火性放電の発生を防止できるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 除電装置
2 投入配管
3 貯蔵槽
8、8a〜8d (第1イオナイザーグループの)放電電極針
9、9a〜9d (第2イオナイザーグループの)放電電極針
図1
図2
図3
図4
図5
図6