【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えている方法、請求項4の特徴を備えている方法、請求項12の特徴を備えている装置、並びに、請求項13の特徴を備えている装置によって解決される。
【0008】
本発明による第1の方法は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、以下のステップを備えている:
−電極を準備し、その電極を対象物から空間的に離隔させて配置するステップ;
−電極を基準電位に接続するステップ;
−電極と対象物との間の電束に関する第1の値において、電極の充電状態の第1の時間的変化を検出するステップ;
−電極と対象物との間の電束に関する第2の値において、電極の充電状態の第2の時間的変化を検出するステップ;
−少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から、対象物の電位を求めるステップ。
【0009】
この方法により、対象物の電位を検出するために、電極から対象物迄の距離に関する事前知識、及び/又は、電極と対象物との間の誘電定数(例えばケーブル絶縁部の材料の誘電定数)に関する事前知識は必要とされなくなる。特にこの方法は、自動較正のステップと解することができる複数の部分ステップを備えている。これによって、正確な機械的位置調整、又は、対象物に対する測定装置の所定の固定的な設置を省略することができる。測定セットアップにおける動的な変化(温度の影響、圧力変化、湿度等、またそれらの変化に起因する距離又は誘電定数の変化)も補償することができる。汎用的に使用することができる、非接触式に電位を測定するためのロバストな方法が提供される。
【0010】
電極と対象物との間の電束に関する第1の値及び第2の値は、電束を特徴付けることに適している値であればいかなる値であっても良い。特に、この値は、基準電位に対する電極の電圧の値であって良い。値として、例えば電界強度も使用することができる。電極と基準電位との間に流れる充電電流の値によっても、電極と対象物との間の電束を推定することができる。例えば、電極に印加される基準電位は、電束に関する値を特徴付けるパラメータを表す。特に、電束に関する第1の値での第1の基準電圧から、電束に関する第2の値での第2の基準電圧を減算することによって、電束を特徴付ける値の差を形成することができる。電極と対象物との間の電束に関する値を、特に、電極から対象物迄の距離の変化、及び/又は、電極と対象物との間の物質の誘電定数の変化、及び/又は、基準電位による電極の能動的な充電によって形成することができる。
【0011】
有利には、電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整が、電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行なわれる。続いて、電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整が、電極を対象物から前述の第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値とは異なる第2の電位値に調整することによって行なわれる。同一の距離における異なる電位値によって異なる二つの電界強度が生じるので、それらの電界強度の差を形成することによって、未知の電界強度が計算から除外される。これによって、電極から対象物迄の距離についての明確な知識、及び/又は、電極と対象物との間の媒体の誘電定数についての明確な知識が無くとも、対象物と電極とから成る装置の容量を計算することができる。総じて、測定シーケンスは非常に簡潔であり、また未知の容量は基準電位を変化させることにより検出することができる。
【0012】
択一的に、電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整を、電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行い、更に、電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整を、電極を対象物から第2の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行うこともできる。即ち、同一の電極が対象物から異なる二つの距離に連続的に位置決めされるが、電極の基準電位は一定に維持される。これによってもやはり二つの適切な値が供給され、それらの値によってコンデンサ装置の未知の容量を求めることができ、またそれに続いて未知の電位を求めることができる。
【0013】
本発明による第2の方法は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、以下のステップを備えている:
−第1電極及び第2の電極を準備し、それら二つの電極を対象物から空間的に離隔させて配置するステップ;
−第1の電極を第1の基準電極に接続し、且つ、第2の電極を第2の基準電極に接続するステップ;
−第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値において、第1の電極の充電状態の第1の時間的変化を検出するステップ;
−第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値において、第2の電極の充電状態の第2の時間的変化を検出するステップ;
−少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から、対象物の電位を求めるステップ。
【0014】
本発明による第1の方法とは異なり、この本発明による第2の方法では、第1の電極及び第2の電極が使用される。第1の電極と対象物との間の電束に関して異なる値を調整するために、単一の電極においてパラメータを変化させることはもはや必要無い。むしろ、第1の電極と、対象物に対する第1の電極の相対的な配置によって、第1のパラメータを調整することができ、また第2の電極によって第2のパラメータを調整することができ、それらのパラメータによって共通して電極と対象物との間の結合容量を推定することができる。この第2の方法によれば、対象物の電位の検出を場合によっては第1の方法による検出よりも高速に実行することができる。この方法の実施に関して、ロバストで高速に動作する装置が提供される。
【0015】
有利には、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整が、第1の電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、第1の基準電位を第1の電位値に調整することによって行なわれる。続いて、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整が、第2の電極を対象物から前述の第1の距離に位置決めし、且つ、第2の基準電位を第1の電位値とは異なる第2の電位値に調整することによって行なわれる。
【0016】
択一的に、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整を、第1の電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、第1の基準電位を第1の電位値に調整することによって行ない、続いて、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整を、第2の電極を対象物から、第1の距離とは異なる第2の距離に位置決めし、且つ、第2の基準電位を第1の電位値に調整することによって行うことができる。択一的に別の組み合わせも可能であり、例えば、第1の電極及び第2の電極が対象物に対して異なる距離を取り、更には異なる基準電位を印加することもできる。以上のことから、測定方法の構成に関して多数の自由度が得られる。いずれの測定方法においても、いずれかの電極の対象物迄の絶対的な距離に関する知識は必要無い。
【0017】
第1の電極と第2の電極を同一に構成する必要は無い。特に、二つの電極の間において容量の影響を受ける複数のパラメータの関係が既知であることのみが必要とされる。例えば、第1の電極が第2の電極とは異なる電極表面を有している場合には、必要に応じて、一方の電極の電極表面が絶対的に既知であること、また第1の電極の面積に対する第2の電極の面積の比率がどの程度であるかが明確であれば良い。もっとも、第1の電極と第2の電極が同一に構成されている場合には特に有利である。同一の時点にそれぞれ異なるパラメータ値を有している二つの電極を用いる測定方法は、二つの異なる時点にそれぞれ異なるパラメータ値を有しているただ一つの電極しか用いない測定方法の実施と同等のものである。但し、二つの電極を用いる測定の方がより高速に実施することができ、また場合によっては、時間的に変化する成分及び可動の構成部材は必要とされない。
【0018】
有利には、充電電流の測定によって、少なくとも一つの電極における充電状態の時間的変化が検出される。充電電流を特に、電極と基準電位との間に配置されている電流測定器によって測定することができる。測定を非常に精確に実施することができる。
【0019】
有利には、少なくとも一つの電極は増幅器の第1の入力端と電気的に接続されており、基準電位は増幅器の第2の入力端と電気的に接続されており、また増幅器の出力端は第1の入力端と電気的に接続されている。この測定装置は、電極において所定の基準電位を調整するためには非常に有利である。
【0020】
有利には、この方法を用いて、対象物の時間的に変化する電位が検出される。この場合、視野絞り又はチョッパを省略することができる。
【0021】
しかしながら択一的に、少なくとも一つの電極と対象物との間に、回転する羽根(チョッパ)及び/又は視野絞り及び/又はシャッタを配置し、対象物の時間的に一定の電位を検出することもできる。羽根を用いることにより無電界の基準状態を周期的に発生させることができ、それにより静的な電位においても静電誘導の原理により測定を実現することができる。このようにして、本方法を非常に汎用的に使用することができる。
【0022】
本発明による第1の装置は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、また、対象物から空間的に離隔させて配置することができる電極を含んでいる。この装置は更に、電極と電気的に接続されている電位発生器と評価ユニットとを備えており、この評価ユニットは、電極と対象物との間の電束に関する第1の値において電極の充電状態の第1の時間的変化を検出し、電極と対象物との間の電束に関する第2の値において電極の充電状態の第2の時間的変化を検出し、また対象物の電位を少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また電束に関する第1の値と第2の値の差から検出するように構成されている。
【0023】
本発明による第2の装置は同様に、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、また、対象物から空間的に離隔させて配置することができる第1の電極及び第2の電極を含んでいる。この装置は更に、第1の電極と電気的に接続されている第1の電位発生器と、第2の電極と電気的に接続されている第2の電位発生器と、評価ユニットとを備えており、この評価ユニットは、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値において第1の電極の充電状態の第1の時間的変化を検出し、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値において第2の電極の充電状態の第2の時間的変化を検出し、また対象物の電位を少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から検出するように構成されている。
【0024】
本発明による方法に関して説明した有利な実施の形態及びそれらの利点は、相応に本発明による装置にも当てはまる。
【0025】
以下では複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。