特許第5951005号(P5951005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5951005電束に関する異なる二つの値によって対象物の電位を非接触式に検出するための方法並びに装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951005
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】電束に関する異なる二つの値によって対象物の電位を非接触式に検出するための方法並びに装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   G01R29/12 G
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-504176(P2014-504176)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2014-514557(P2014-514557A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2011055936
(87)【国際公開番号】WO2012139648
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2013年10月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シマー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス マクート
(72)【発明者】
【氏名】ディアク シャイプナー
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−211046(JP,A)
【文献】 特開平08−129043(JP,A)
【文献】 特開2002−318255(JP,A)
【文献】 特開2008−185428(JP,A)
【文献】 特開昭62−113072(JP,A)
【文献】 特開2009−192497(JP,A)
【文献】 特開2006−153631(JP,A)
【文献】 特開平03−167483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/00−29/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(1)の電位(Uunknown)を非接触式に検出するための方法であって、
一つの電極(2)を準備し、該電極(2)を前記対象物(1)から空間的に離隔させて配置するステップと、
前記電極(2)を基準電位(Uref)に接続するステップと、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の電束に関する第1の値において、前記電極(2)の充電状態の第1の時間的変化(I1)を検出するステップと、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の前記電束に関する第2の値において、前記電極(2)の充電状態の第2の時間的変化(I2)を検出するステップと、
少なくとも前記充電状態の第1の時間的変化(I1)及び前記充電状態の第2の時間的変化(I2)から、並びに前記電束に関する前記第1の値と前記第2の値の差から、前記対象物(1)の電位(Uunknown)を求めるステップと、
を備えている方法において、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の前記電束に関する前記第1の値の調整を、前記電極(2)を前記対象物(1)から第1の距離(d1)に固定的に位置決めし、且つ、前記基準電位を第1の電位値(Uref1)に調整することによって行うステップと、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の電束に関する前記第2の値の調整を、前記電極(2)を前記対象物(1)から前記第1の距離(d1)に固定的に位置決めし、且つ、前記基準電位を、前記第1の電位値(Uref1)とは異なる第2の電位値(Uref2)に調整することによって行うステップと、
を備えていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも一つの電極(2,2a,2b)の前記充電状態の時間的変化の検出を充電電流(I,I1,I2)の測定によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの電極(2,2a,2b)は増幅器(4)の第1の入力端(3a)と電気的に接続され、基準電位(Uref)は前記増幅器(4)の第2の入力端(3b)と電気的に接続され、前記増幅器(4)の出力端(5)は前記第1の入力端(3a)と電気的に接続される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物(1)の時間的に変化する電位(Uunknown)を検出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの電極(2,2a,2b)と前記対象物(1)との間に、回転する羽根を配置し、前記対象物(1)の時間的に一定の電位(Uunknown)を検出する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象物(1)から空間的に離隔させて配置可能な一つの電極(2)を用いて、前記対象物(1)の電位(Uunknown)を非接触式に検出するための装置であって、
前記電極(2)と電気的に接続されている電位発生器(6)と、評価ユニットとが設けられており、
前記評価ユニットは、前記電極(2)と前記対象物(1)との間の電束に関する第1の値において前記電極(2)の充電状態の第1の時間的変化(I1)を検出し、前記電極(2)と前記対象物(1)との間の前記電束に関する第2の値において前記電極(2)の充電状態の第2の時間的変化(I2)を検出し、且つ、前記対象物(1)の前記電位(Uunknown)を、少なくとも前記充電状態の第1の時間的変化(I1)及び前記充電状態の第2の時間的変化(I2)から、並びに前記電束に関する前記第1の値と前記第2の値の差から検出するように構成されている、装置において、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の前記電束に関する前記第1の値は、前記電極(2)を前記対象物(1)から第1の距離(d1)に固定的に位置決めし、且つ、前記電極(2)が接続されている基準電位を第1の電位値(Uref1)に調整することによって調整可能であり、
前記電極(2)と前記対象物(1)との間の前記電束に関する前記第2の値は、前記電極(2)を前記対象物(1)から前記第1の距離(d1)に固定的に位置決めし、且つ、前記基準電位を、前記第1の電位値(Uref1)とは異なる第2の電位値(Uref2)に調整することによって調整可能である、
ことを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ただ一つの電極を使用して、又は一つの第1の電極及び一つの第2の電極を使用して、対象物の電位を非接触式に検出するための方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を流れる電流を非接触式に測定することが公知である。そのような測定は誘導結合、ホール効果又はGMR(Giant Magneto Resistance)効果を介して実施することができる。しかしながら非接触式に電力を測定できるようにするためには、非接触式の電流測定の他に、非接触式に電位を測定するための方法も必要である。特に高電圧の非接触式の電位測定は、とりわけスマートメータリング(Smart Metering)、スマートグリッド(Smart Grid)及び応答要求(Response-Demand)ストラテジの分野においては非常に重要である。
【0003】
そのような非接触式の電位測定に関する可能性の一つとして、いわゆる電界計が挙げられる。それらの電界計は、求められた電界強度を介して、検出すべき電圧を推定できるようにするために、静電誘導の効果を利用する。しかしながらそのためには、電位を検出すべき対象物から電界計の測定電極迄の距離、並びに測定容積内での対象物と測定電極との間にある物質(誘電体)が正確に既知でなければならない。電界計を用いて直流電圧も測定できるようにするためには、通常の場合、測定電極と対象物との間に、チョッパ(羽根)の形態のシャッタ(視野絞り)が使用される。
【0004】
純粋な交流電圧の検出に関しては、容量性分圧器も使用することができ、その場合にもやはり、基準電極と測定すべき電位との間の結合容量が既知でなければならない。
【0005】
いずれの方法又は装置(電界計及び容量性分圧器)も、測定すべき電圧との結合、特に測定電極から測定対象物迄の距離についての正確な知識を前提としている。その限りにおいて、それらの公知の方法は一時的な測定プロセス又は事後的に設けられる測定設備には適していない。電界計及び容量性分圧器は正確な測定のために固定的に設置されており、また取り付け環境において較正される。手持式の測定器では、測定セットアップの材料に関する特性(電線絶縁、空気、気体、圧縮等)及び幾何学的配置の正確な知識が必要とされる。このために、市販の電界計では例えば特別なスペーサが利用される。しかしながらスペーサは、特に絶縁性の線路の電位検出に関しては、導電性の材料に直接的に載置されず、従って、距離を十分正確には調整できないという欠点を有している。更に、絶縁材料の種類を考慮することができない。それらの公知の非接触式の電位測定方法の精度が十分でない場合には、通常の場合、接触式の測定を実施しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、結合容量が差し当たり未知であっても、非接触式の電位測定を実現することができる、方法並びに装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えている方法、請求項4の特徴を備えている方法、請求項12の特徴を備えている装置、並びに、請求項13の特徴を備えている装置によって解決される。
【0008】
本発明による第1の方法は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、以下のステップを備えている:
−電極を準備し、その電極を対象物から空間的に離隔させて配置するステップ;
−電極を基準電位に接続するステップ;
−電極と対象物との間の電束に関する第1の値において、電極の充電状態の第1の時間的変化を検出するステップ;
−電極と対象物との間の電束に関する第2の値において、電極の充電状態の第2の時間的変化を検出するステップ;
−少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から、対象物の電位を求めるステップ。
【0009】
この方法により、対象物の電位を検出するために、電極から対象物迄の距離に関する事前知識、及び/又は、電極と対象物との間の誘電定数(例えばケーブル絶縁部の材料の誘電定数)に関する事前知識は必要とされなくなる。特にこの方法は、自動較正のステップと解することができる複数の部分ステップを備えている。これによって、正確な機械的位置調整、又は、対象物に対する測定装置の所定の固定的な設置を省略することができる。測定セットアップにおける動的な変化(温度の影響、圧力変化、湿度等、またそれらの変化に起因する距離又は誘電定数の変化)も補償することができる。汎用的に使用することができる、非接触式に電位を測定するためのロバストな方法が提供される。
【0010】
電極と対象物との間の電束に関する第1の値及び第2の値は、電束を特徴付けることに適している値であればいかなる値であっても良い。特に、この値は、基準電位に対する電極の電圧の値であって良い。値として、例えば電界強度も使用することができる。電極と基準電位との間に流れる充電電流の値によっても、電極と対象物との間の電束を推定することができる。例えば、電極に印加される基準電位は、電束に関する値を特徴付けるパラメータを表す。特に、電束に関する第1の値での第1の基準電圧から、電束に関する第2の値での第2の基準電圧を減算することによって、電束を特徴付ける値の差を形成することができる。電極と対象物との間の電束に関する値を、特に、電極から対象物迄の距離の変化、及び/又は、電極と対象物との間の物質の誘電定数の変化、及び/又は、基準電位による電極の能動的な充電によって形成することができる。
【0011】
有利には、電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整が、電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行なわれる。続いて、電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整が、電極を対象物から前述の第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値とは異なる第2の電位値に調整することによって行なわれる。同一の距離における異なる電位値によって異なる二つの電界強度が生じるので、それらの電界強度の差を形成することによって、未知の電界強度が計算から除外される。これによって、電極から対象物迄の距離についての明確な知識、及び/又は、電極と対象物との間の媒体の誘電定数についての明確な知識が無くとも、対象物と電極とから成る装置の容量を計算することができる。総じて、測定シーケンスは非常に簡潔であり、また未知の容量は基準電位を変化させることにより検出することができる。
【0012】
択一的に、電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整を、電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行い、更に、電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整を、電極を対象物から第2の距離に位置決めし、且つ、基準電位を第1の電位値に調整することによって行うこともできる。即ち、同一の電極が対象物から異なる二つの距離に連続的に位置決めされるが、電極の基準電位は一定に維持される。これによってもやはり二つの適切な値が供給され、それらの値によってコンデンサ装置の未知の容量を求めることができ、またそれに続いて未知の電位を求めることができる。
【0013】
本発明による第2の方法は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、以下のステップを備えている:
−第1電極及び第2の電極を準備し、それら二つの電極を対象物から空間的に離隔させて配置するステップ;
−第1の電極を第1の基準電極に接続し、且つ、第2の電極を第2の基準電極に接続するステップ;
−第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値において、第1の電極の充電状態の第1の時間的変化を検出するステップ;
−第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値において、第2の電極の充電状態の第2の時間的変化を検出するステップ;
−少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から、対象物の電位を求めるステップ。
【0014】
本発明による第1の方法とは異なり、この本発明による第2の方法では、第1の電極及び第2の電極が使用される。第1の電極と対象物との間の電束に関して異なる値を調整するために、単一の電極においてパラメータを変化させることはもはや必要無い。むしろ、第1の電極と、対象物に対する第1の電極の相対的な配置によって、第1のパラメータを調整することができ、また第2の電極によって第2のパラメータを調整することができ、それらのパラメータによって共通して電極と対象物との間の結合容量を推定することができる。この第2の方法によれば、対象物の電位の検出を場合によっては第1の方法による検出よりも高速に実行することができる。この方法の実施に関して、ロバストで高速に動作する装置が提供される。
【0015】
有利には、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整が、第1の電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、第1の基準電位を第1の電位値に調整することによって行なわれる。続いて、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整が、第2の電極を対象物から前述の第1の距離に位置決めし、且つ、第2の基準電位を第1の電位値とは異なる第2の電位値に調整することによって行なわれる。
【0016】
択一的に、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値の調整を、第1の電極を対象物から第1の距離に位置決めし、且つ、第1の基準電位を第1の電位値に調整することによって行ない、続いて、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値の調整を、第2の電極を対象物から、第1の距離とは異なる第2の距離に位置決めし、且つ、第2の基準電位を第1の電位値に調整することによって行うことができる。択一的に別の組み合わせも可能であり、例えば、第1の電極及び第2の電極が対象物に対して異なる距離を取り、更には異なる基準電位を印加することもできる。以上のことから、測定方法の構成に関して多数の自由度が得られる。いずれの測定方法においても、いずれかの電極の対象物迄の絶対的な距離に関する知識は必要無い。
【0017】
第1の電極と第2の電極を同一に構成する必要は無い。特に、二つの電極の間において容量の影響を受ける複数のパラメータの関係が既知であることのみが必要とされる。例えば、第1の電極が第2の電極とは異なる電極表面を有している場合には、必要に応じて、一方の電極の電極表面が絶対的に既知であること、また第1の電極の面積に対する第2の電極の面積の比率がどの程度であるかが明確であれば良い。もっとも、第1の電極と第2の電極が同一に構成されている場合には特に有利である。同一の時点にそれぞれ異なるパラメータ値を有している二つの電極を用いる測定方法は、二つの異なる時点にそれぞれ異なるパラメータ値を有しているただ一つの電極しか用いない測定方法の実施と同等のものである。但し、二つの電極を用いる測定の方がより高速に実施することができ、また場合によっては、時間的に変化する成分及び可動の構成部材は必要とされない。
【0018】
有利には、充電電流の測定によって、少なくとも一つの電極における充電状態の時間的変化が検出される。充電電流を特に、電極と基準電位との間に配置されている電流測定器によって測定することができる。測定を非常に精確に実施することができる。
【0019】
有利には、少なくとも一つの電極は増幅器の第1の入力端と電気的に接続されており、基準電位は増幅器の第2の入力端と電気的に接続されており、また増幅器の出力端は第1の入力端と電気的に接続されている。この測定装置は、電極において所定の基準電位を調整するためには非常に有利である。
【0020】
有利には、この方法を用いて、対象物の時間的に変化する電位が検出される。この場合、視野絞り又はチョッパを省略することができる。
【0021】
しかしながら択一的に、少なくとも一つの電極と対象物との間に、回転する羽根(チョッパ)及び/又は視野絞り及び/又はシャッタを配置し、対象物の時間的に一定の電位を検出することもできる。羽根を用いることにより無電界の基準状態を周期的に発生させることができ、それにより静的な電位においても静電誘導の原理により測定を実現することができる。このようにして、本方法を非常に汎用的に使用することができる。
【0022】
本発明による第1の装置は、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、また、対象物から空間的に離隔させて配置することができる電極を含んでいる。この装置は更に、電極と電気的に接続されている電位発生器と評価ユニットとを備えており、この評価ユニットは、電極と対象物との間の電束に関する第1の値において電極の充電状態の第1の時間的変化を検出し、電極と対象物との間の電束に関する第2の値において電極の充電状態の第2の時間的変化を検出し、また対象物の電位を少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また電束に関する第1の値と第2の値の差から検出するように構成されている。
【0023】
本発明による第2の装置は同様に、対象物の電位を非接触式に検出するために使用されるものであり、また、対象物から空間的に離隔させて配置することができる第1の電極及び第2の電極を含んでいる。この装置は更に、第1の電極と電気的に接続されている第1の電位発生器と、第2の電極と電気的に接続されている第2の電位発生器と、評価ユニットとを備えており、この評価ユニットは、第1の電極と対象物との間の電束に関する第1の値において第1の電極の充電状態の第1の時間的変化を検出し、第2の電極と対象物との間の電束に関する第2の値において第2の電極の充電状態の第2の時間的変化を検出し、また対象物の電位を少なくとも、充電状態の第1の時間的変化及び充電状態の第2の時間的変化から、また、電束に関する第1の値と第2の値の差から検出するように構成されている。
【0024】
本発明による方法に関して説明した有利な実施の形態及びそれらの利点は、相応に本発明による装置にも当てはまる。
【0025】
以下では複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施例による、電位を非接触式に検出するための装置の概略図を示す。
図2】第2の実施例による、電位を非接触式に検出するための装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図中、同一の構成要素及び機能が等しい構成要素には同一の参照番号を付している。
【0028】
図1には、未知の電位Uunknownが検出されるべき線路1が示されている。これに関して、(未知の)距離dを空けて測定電極2が配置されている。線路1は測定電極2と共に容量Cを有するコンデンサを形成する。この実施例においては、電界Eが生じている内部空間を有している単純なプレートコンデンサを前提とする。更に、未知の電位Uunknownは、この実施例において時間的に変化する交流電位である。プレート距離dも、測定電極2と線路1との間に存在する媒体の誘電定数εも正確に既知ではない。従って、それらのパラメータの知識が無くても未知の電位Uunknownを検出することができる方法が適用される。
【0029】
測定電極2は絶縁性ではなく、測定装置と電気的に接続されている。それにより、静電誘導の効果に基づき測定電極2に惹起された充電電流Iを測定することができる。択一的に、出力電圧Uoutを求めることもできる。このために増幅器4を備えた測定装置が設けられている。増幅器4は第1の入力端3aと、第2の入力端3bと、出力端5とを有している。測定電極2は増幅器4の第1の入力端3aと電気的に接続されており、他方では電位発生器6が第2の入力端3bと電気的に接続されている。更に出力端5は電気抵抗Rを介して第1の入力端3aと電気的に接続されている。電位発生器6を介して、測定電極2における基準電位Urefを調整することができる。調整された基準電位Urefの大きさに応じて、コンデンサ内に生じている電界Eを少なくとも部分的に補償することができるか、又は増幅することができる。このようにして、コンデンサは可変の容量Cを有している。
【0030】
図1の実施例によれば、未知の電位Uunknownの測定が、電位発生器6を用いた異なる二つの基準電位Uref1及びUref2を調整することによって行なわれる。ここでは距離dが変化されずに維持される。これにより以下の物理的な関係が得られる:
−コンデンサのプレート間の電位差については次式が当てはまる:
【数1】
−その都度流れる充電電流Iの値は次式により得られる:
【数2】
−充電電流I1と充電電流I2の差については次式が当てはまる:
【数3】
−上記式から、二つの測定点より結合容量Cを推定することができる:
【数4】
【0031】
この導出においては、Iに関してUrefの位相を追従させることによって達成できる厳密な位相関係を前提としている。ハット記号(^)が付されているパラメータは、充電電流又は基準電位Urefの振幅を表す。
【0032】
この導出は、基準値測定の評価の考えられる一つのヴァリエーションを表しているに過ぎない。これは特に、正弦波状の電圧経過に適している。より複雑な信号では、完全に分離された基準信号(例えばノイズ)も考えられる。この場合、評価を例えば相互相関を介して行うことができる。
【0033】
図1に関して、本質的な物理関係を再度まとめて示す:
【数5】
εは線路1及び測定電極2から成るコンデンサ装置内の誘電定数を表す。Aは測定電極2の面積である。
【0034】
図1に示されている実施の形態によれば、異なる基準電位Uref1及びUref2を用いて、同一の測定電極2において少なくとも2回の測定が連続的に実施される。その都度生じる出力信号を計算することにより、線路1の未知の電位Uunknown及び未知の測定容量を推定することができる。
【0035】
しかしながら択一的に、Urefを一定に維持し、異なる二つの距離dにおいて測定を実施することも考えられる。
【0036】
類似する方式を、図2による実施例に基づき説明する。この図2による実施例では、同一に構成されている二つの測定電極2a及び2bが設けられており、それらの二つの電極2a,2bは線路1に対して距離d1又はd2を空けて配置されている。各測定電極2a及び2bはそれぞれ評価回路と接続されており、各評価回路は特に、基準電位Uref1又はUref2をそれぞれ調整するための第1の電位発生器6a及び第2の電位発生器6bをそれぞれ一つずつ含んでいる。この場合、上述の式に応じた結合容量Cの検出に必要とされる入力パラメータを得るために、二つの測定電極2a及び2bにおいて同時に測定を実施することができる。
【0037】
図2に示した実施例によれば、基準電位Uref1及びUref2は同一の値を有している。即ち、Uref1=Uref2。異なる測定パラメータの必要な調整は、相互に異なる距離d1及びd2を介して行なわれる。しかしながら択一的に、同一の距離(d1=d2)並びに異なる基準電位Uref1及びUref2で、異なる二つの測定電極2a及び2bにおいて少なくとも2回の測定を必要に応じて同時に実施することも可能である。二つの方式を組み合わせることも可能である。その場合、測定電極2a及び2bは図2に示されているように、線路1に対して異なる距離d1又はd2を空けて設けられ、また、測定電極2a又は2bにおいて相互に異なる基準電位Uref1及びUref2が調整される。この場合においても、必要とされる2回の測定を同時に実施することができる。
【0038】
つまり要約すると、少なくとも2回の基準値測定又は較正測定に関して、基準電位Uref又は距離dが変化される。それぞれの基準電位Uref又は距離dにおける静電誘導の効果を測定することによって、その都度、所属の出力信号(測定電極2における充電電流I又は出力電圧Uout)が得られる。その種の少なくとも二つの出力信号の計算から、測定すべき電位Uunknown又は結合容量Cを推定することができ、その際に、結合容量Cの正確な知識又はコンデンサ内の装置の幾何学的配置及び材料に関する特性の正確な知識は必要無い。
【符号の説明】
【0039】
1 線路、 2,2a,2b 測定電極、 3a,3b 入力端、 4 増幅器、 5 出力端、 6,6a,6b 電位発生器、 Uunknwon 電位、 U^unknwon 電位の振幅、 d,d1,d2 距離、 Uref,Uref1,Uref2 基準電位、 U^ref,U^ref1,U^ref2 基準電位の振幅、 I,I1,I2 充電電流、 I^,I^1,I^2 充電電流の振幅、 Uout,Uout1,Uout2 出力電圧、 R 電気抵抗、 E 電界、 C 容量、 A 面積、 ε 誘電定数、 ΔU1,ΔU2 電位差
※上記の符号中、U^は
を表し、I^は
を表す。
図1
図2