(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
エポキシ樹脂基材の系は、それらが硬化される時に、優れた電気絶縁性を示し、防湿性であり、耐熱性であり、はんだ付け抵抗性であり、化学抵抗性であり、耐久性で、優れた接着性と機械的強度をもつために、電気器具、電子機器並びに土木工学および建設のような様々な分野で、シール材、被覆組成物、接着剤、等として広く使用される。
【0005】
二部分(two part)エポキシ樹脂基材の系は一般に、硬化性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂のための硬化剤とを含む。硬化剤の典型的な代表的例としては例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナド酸無水物、第三級アミン、イミダゾールおよび三弗化ホウ素のアミン複合体が存在する。調製中、エポキシ樹脂と硬化剤とは双方とも一般に、粘度を低下するために、溶媒、例えば有機溶媒中に分散または溶解される。このような溶液型の系は環境汚染および健康障害の可能性を作り出すために、このような溶液型の系の使用により、重大な環境の心配が作り出される。
【0006】
環境および健康の心配に対処するために、エポキシ樹脂を硬化するために使用することができる、水中に溶解または乳化される多数の硬化剤が開発されてきた。例えば:
特許文献1は、少なくとも一つのポリエポキシ化合物を、少なくとも一つのポリアルキレン・ポリエーテル・ポリオールと反応させて付加物を形成し、それをその後ポリアミンと反応させる工程により調製される硬化剤を開示している(特許文献1参照)、
特許文献2は、モノエポキシ化合物およびポリエポキシ化合物を、ポリアミンと反応させることにより調製される水相溶性ポリアミン−エポキシ付加物および、モノエポキシ化合物を脂肪族または脂環式ポリアミンと反応させることにより調製される樹脂相溶性ポリアミンエポキシ付加物、のブレンドの水性分散液を含んでなる、二成分水性エポキシ塗膜組成物を教示している(特許文献2参照)、
特許文献3および4は、ポリ(アルキレン・オキシド)モノ−またはジアミンをポリエポキシ化合物と反応させて、中間体を形成し、それを次に、その後、過剰なポリアミンと反応させる工程により調製される、水相溶性のポリアミン−エポキシ付加物について記載しており(特許文献3、4参照)、
特許文献5は、長鎖ジカルボン酸とアミノアルキルピペラジンの反応から製造される水性(waterborne)ポリアミドの硬化剤を開示しており(特許文献5参照)、
特許文献6は、ポリオキシアルキレンジアミンをポリエポキシ化合物とポリオキシアルキレングリコール・ジグリシジルエーテルと反応させ、反応生成物を水中に乳化させる工程により調製される、アミノ−エポキシ付加物硬化剤につき記載しており(特許文献6参照)、
特許文献7は、ポリエポキシ化合物のアミンとの二段反応により得られる付加物、およびポリエポキシ化合物の連鎖伸長剤との反応から得られる乳化剤:とを含む水希釈可能な
アミンの硬化剤につき教示しており(特許文献7参照)、そして
特許文献8は、ポリアミンと水性エポキシ樹脂の反応生成物を、アミン官能性硬化剤とブレンドする工程により形成される硬化剤を開示している(特許文献8参照)。
【0007】
従来の無溶媒の硬化剤を使用する際の幾つかの課題は、それらが、適用および処理を困難にさせる、望ましい粘度に満たない低い粘度を示すこと、それらが、連続的な塗膜を形成したり、またはそれらが適用される支持体の表面に接着するために支持体を適当に湿らせることができないこと、それらがエポキシ樹脂と混合されると短いポットライフを示すこと、あるいは製造が困難であること:を含む。これらの課題並びに、溶媒の使用により引起される匂い、毒性および/または引火性から生ずるあらゆる問題を克服し、容易に製造されることができ、そして高い固形分における低い粘度と改善されたポットライフとの双方を示す、水性エポキシ樹脂組成物と一緒の使用のための、新規の低VOC硬化剤を提供することが本発明の目的である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に使用される場合は、用語「含んでなる(comprising)」およびその派生語は、それが本明細書に開示されているか否かに拘わらず、あらゆる更なる成分、工程または方法の存在を排除することは意図されない。あらゆる疑念を回避するために、用語「含んでなる(comprising)」の使用により、本明細書に請求されるすべての組成物は、反対に記述されない限り、あらゆる更なる添加物、補助剤または化合物を含むことができる。その反対に、用語「本質的にそれよりなる(consisting essentially of)」は本明細書で使用される場合は、実施可能性(operability)に本質的ではないものを除くあらゆる他の成分、工程または方法を、
あらゆる以下の記載の範囲から排除し、また、用語「よりなる(consisting of)が使用される場合は、具体的に描写されまたはリストされていないあらゆる成分、工程または方法を排除する。用語「または(or)」は、別記されない限り、個別に、並びにあらゆる組み合わせでリストされたメンバーを表す。
【0013】
冠詞「一つの(a)」および「一つの(an)」は、本明細書では、冠詞の文法的目的の一つまたは二つ以上(すなわち、少なくとも一つ)を表すために使用される。例えば、「エポキシ(an epoxy)」は一つのエポキシまたは二つ以上のエポキシを意味する。
【0014】
用語「一つの実施形態においては」、「一つの実施形態に従うと」等は、一般に、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれ、そして本発明の二つ以上の実施形態に含まれることができる、該用語に続く具体的な特徴物、構造または特徴を意味する。重要なことには、このような用語は必ずしも同一の実施形態を表すとは限らない。
【0015】
本明細書に使用される用語「脂環式基」は、少なくとも1の価数をもち、また環式であるが、芳香族ではない原子の配列を含んでなる基を表す。従って、本明細書で「脂環式基」と定義されるものは芳香族基を含まない。「脂環式基」はまた、一つ以上の非環式成分を含んでなることができる。例えば、シクロペンチルメチル基(C
5H
9CH
2−)は、シクロペンチル環(環式であるが芳香族ではない原子の配列)およびメチレン基(非環式成分)を含んでなるC
6脂環式基である。用語「C
6−C
20脂環式基」は、少なくとも6個のしかし20個を超えない炭素原子を含む脂環式基を含む。
【0016】
用語「低VOC」は、硬化剤が液体形にある時に、総液体硬化剤の重量に基づいて約10重量%未満の揮発性有機化合物、好適には約5重量%未満の揮発性有機化合物、より好適には1重量%未満の揮発性有機化合物、そして更に、より好適には約0.1重量%未満の揮発性有機化合物を含むことを意味する。
【0017】
明細書が、成分または特徴物が含まれるまたはある特徴をもつ「ことができる(may)」、「ことができる(can)」、「ことができると考えられる(could)」、または「かもしれない(might)」と記述する場合は、その具体的な成分または特徴物は、含まれる、またはその特徴をもつことは必要とされない。
【0018】
本発明は一般的に、水性アミン硬化剤、およびこのようなアミン硬化剤を製造する方法に関する。これらの水性アミン硬化剤は硬化性樹脂を硬化し(cure)、固化し(harden)そして/または架橋(cross−link)することができる。本開示の水性アミン硬化剤は、(A)水性エポキシ分散液成分と、(B)脂環式ポリアミン化合物を含むポリアミン成分との反応から得られる反応生成物である。該反応生成物は界面活性剤の存在下または不在下のいずれでも形成することができる。本開示の水性アミン硬化剤は、製造が容易で、高い固形分において低い粘度を示し、良好な乾燥速度をもち、低いVOCをもち、比較的長期間にわたり驚くほど安定な粘度を保持し、そして透明な高い光沢の塗膜を生成するために硬化性樹脂を支持体に適用することができる。
【0019】
一つの実施形態に従うと、該水性エポキシ分散液成分は、平均1モル当り0.8を超えるエポキシド基の、そして幾つかの適用においては、1モル当り少なくとも1.5〜6.5エポキシド基の、1,2−エポキシ当量(官能価 functionality)をもつ反応性エポキシ樹脂を含む。反応性エポキシ樹脂は、飽和もしくは不飽和の、線状のもしくは分枝状の、脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式であることができ、また脂環式ポリアミン化合物との反応中に実質的に妨害しない置換基を担持することができる。このような置換基は臭素またはフッ素を含むことができる。エポキシ樹脂は単量体または重
合体の、液体または固体、例えば室温で低い融点をもつ固体であることができる。一つの実施形態においては、エポキシ樹脂は、アルカリ性反応条件下で実施される、少なくとも1.5の芳香族ヒドロキシル基を含む化合物とエピクロロヒドリンを反応させることにより調製されるグリシジルエーテルを含む。その他の実施形態においては、エポキシ樹脂はモノエポキシド化合物、二価化合物のジグリシジルエーテル、エポキシノボラックおよび脂環式エポキシ化合物を含む。エポキシ樹脂は一般に、変動する数の反復単位を含む化合物の分布を含む。更に、エポキシ樹脂はエポキシ樹脂の混合物であることができる。例えば、一つの実施形態においては、エポキシ樹脂は、モノエポキシド樹脂および0.7〜1.3および1.5〜2.5の官能価をもつジ−および/または多官能価エポキシ樹脂を含んでなることができる。
【0020】
一つの実施形態においては、反応性エポキシ樹脂は、知られた分散剤および方法を使用して、水中に予備分散されて、水性エポキシ樹脂分散液を形成する。一般に、分散される反応性エポキシ樹脂の量は、水性エポキシ樹脂分散液の総重量に基づいて約20重量%〜75重量%の範囲にある。他の実施形態においては、分散されるエポキシ樹脂の量は水性エポキシ樹脂分散液の総重量に基づいて約45重量%〜55重量%の範囲にある。
【0021】
使用することができる特定の反応性エポキシ樹脂の例は、それらに限定はされないが、式
【0023】
[式中、R
0は線状または分のC
1−22アルキル基である]、
【0025】
または−(CH
2)
3Si(OCH
3)
3[ここでDは線状または分枝状のC
1−22アルキル基である]、
【0029】
[式中、R
4は2価の脂肪族基、2価の脂環式基、2価のアリールまたは2価のアリール脂肪族基である]、
【0031】
[式中、R
5は独立して水素またはC
1−10アルキル基であり、またrは0〜6の整数である]、並びに
【0033】
[式中、R
6は、場合により1個または複数のエーテルまたはエステル基を含む2価のC
1−20脂肪族基であるか、またはR
7およびR
8と一緒になって、場合によりヘテロ原子を含むスピロ環を形成し、そしてR
7とR
8とは独立して水素であるか、またはR
6と一緒になって、場合によりヘテロ原子を含むスピロ環を形成する]、あるいは
【0036】
幾つかの実施形態においては、R
4は,式
【0038】
[式中、R
9およびR
10はそれぞれ独立してC
1−20アルキレン基、または式
【0040】
(ここでR
11はC
1−20アルキレン基である)
をもつ、2価のアリール脂肪族基である]
をもつ2価の脂環式基である。
【0041】
一つの実施形態に従うと、反応性エポキシ樹脂は、2価フェノールのジグリシジルエーテル、水素化された2価フェノールのジグリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシノボラックおよび脂環式エポキシ化合物から選択される2官能価エポキシ樹脂である。
【0042】
2価フェノールのジグリシジルエーテルは例えば、アルカリ性条件下で、またはその後のアルカリ処理を伴う酸性触媒の存在下で、2価フェノールと、適切に置換されたエピクロロヒドリンとを反応させることにより製造することができる。2価フェノールの例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−アルキルフェニル)エタン等:を含む。適切な2価フェノールはまた、ホルムアルデヒドのようなアルデヒドとのフェノールの反応から得ることができる(ビスフェノール−F)。2価フェノールのジグリシジルエーテルはまた、2価フェノールの前記のジグリシジルエーテルとビスフェノール−Aのような2価フェノールとの、更なる生成物(advancement products)を含む。
【0043】
水素化された2価フェノールのジグリシジルエーテルは例えば、2個の遊離アルコール性ヒドロキシ基をもつ化合物の水素化、次にルイス酸触媒の存在下におけるエピハロヒドリンとのグリシド化反応(glycidation)および、水酸化ナトリウムとの反応によるグリシジルエーテルのその後の形成により製造することができる。適切な2価フェノールの例は前記のものを含む。
【0044】
脂肪族グリシジルエーテルは例えば、ルイス酸触媒の存在下でエピハロヒドリンを脂肪族ジオールと反応させ、次に水酸化ナトリウムとの反応によるハロヒドリン中間体のグリシジルエーテルへの転化により製造することができる。好適な脂肪族グリシジルエーテルの例は、式
【0046】
[式中、pは2〜12、そして幾つかの実施形態においては、2〜6の整数であり、またqは4〜24、そして幾つかの実施形態においては、4〜12の整数である]
に対応するものを含む。
【0047】
脂肪族グリシジルエーテルの例は例えば、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、等のジオールおよびグリコールのジグリシジルエーテル、並びにトリメチロールエタンとトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルを含む。
【0048】
モノエポキシ化合物の例は、フェノール、t−ブチルフェノール、クレゾール、ノニルフェノールおよび脂肪族アルコールのグリシジルエーテル;並びにアルファ−オレフィインとグリシドキシアルキルアルコキシシランから形成されるグリシド化一酸およびエポキシ化合物を含む。
【0049】
エポキシノボラックはホルムアルデヒドとフェノールの縮合、次にアルカリの存在下でのエピハロヒドリンの反応によるグリシド化により製造することができる。フェノールは例えば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノールおよびt−ブチルフェノールであることができる。好適なエポキシノボラックの例は、式
【0051】
[式中、R
5は独立して水素またC
1−10アルキル基であり、またrは0〜6の整数である]
に対応するものを含む。エポキシノボラックは一般に、グリシド化フェノキシメチレン単位、rの変動する数を伴う化合物の分布を含む。一般に、引用される単位数は統計的平均および分布のピークに最も近い数である。
【0052】
脂環式エポキシ化合物は2個以上のオレフィン結合をもつシクロアルケン含有化合物を、過酢酸でエポキシ化することにより製造することができる。脂環式エポキシ化合物の例は、式
【0054】
[式中、R
6は、場合により1個または複数のエーテルもしくはエステル基を含む2価のC
1−20脂肪族基であるか、またはR
7およびR
8が一緒に、場合によりヘテロ原子を含むスピロ環を形成し、そしてR
7とR
8は独立して水素であるか、またはR
6と一緒になって、場合によりヘテロ原子を含むスピロ環を形成する]、または
【0057】
脂環式エポキシ化合物の例は例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン・カルボキシレート、二脂環式ジエーテルジエポキシ [2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−m−ジオキサン]、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートおよびビニルシクロヘキセン・ジオキシド [4−(1,2−エポキシエチル)−1,2−エポキシシクロヘキサン]を含む。脂環式エポキシ化合物はまた、式
【0060】
一つの実施形態に従うと、水性エポキシ樹脂分散液は450g/当量以上のエポキシ当量重量(an epoxy equivalent weight)を有する。他の実施形態においては、水性エポキシ樹脂分散液は約2000g/当量未満のエポキシ当量重量を有する。更に他の実施形態においては、水性エポキシ樹脂分散液は450g/当量〜2000g/当量の間、そしてある場合には475g/当量〜600g/当量の間、そして更に幾つかの場合には、490g/当量〜550g/当量重量の間のエポキシ当量を有する。本明細書で使用される用語「エポキシ当量重量」は、エポキシ化合物1グラム当りに含まれるエポキシ基の当量の逆数を表し、またあらゆる知られた決定法により測定することができる。このような方法の例は、赤外線(IR)分光分析法または、ピリジン中の過
剰HClとの反応およびナトリウム・メトキシドによる残りのHClの滴定によるHCl−ピリジン滴定法、あるいは過剰テトラエチルアンモニウム・ブロミドと氷酢酸の存在下でクリスタル・バイオレット(ヘキサメチルパラローザニリン・クロリド)の撹拌器を使用する過塩酸によるクロロホルム中の滴定、またはテトラブチルアンモニウム・ヨージドと過塩酸との反応生成物のサンプルを滴定することによる方法を含む。
【0061】
他の実施形態に従うと、水性エポキシ樹脂分散液は、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、改質ビスフェノールAグリシジルエーテル、改質ビスフェノールFグリシジルエーテルおよびそれらの混合物の群から選択されるビスフェノール基剤の樹脂を含んでなる反応性エポキシ樹脂を含み、また450g/当量〜2000g/当量間のエポキシ当量重量を有する。
【0062】
一つの実施形態においては、ポリアミン成分は式(1)
【0064】
[式中、RおよびR
1はどの場合にも、相互と独立して、水素または線状もしくは分枝状のC
1−C
5アルキル基であり、XはC
6−C
20脂環式基であり、aは1〜5の整数であり、そしてbは1〜5の整数である]
をもつ脂環式ポリアミン化合物を含む。
【0065】
式(1)の脂環式ポリアミン化合物は、当業者に知られた方法により調製することができる。例えばそれは、アルコキシル化反応域に充填される出発原料として開始剤を使用して調製することができる。開始剤は2〜4個のヒドロキシル基を含むあらゆるオキシアルキル化感受性多価アルコールであることができる。開始剤の例は、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヘキシレンジオールを含む1,3−ジオール、トリメチロールプロパンおよびトリエチロールプロパンのようなトリオール並びにペンタエリスリトールのようなテトラオール:を含む。
【0066】
次に、充填後、開始剤を前駆体ポリオールを提供するのに十分な期間にわたりアルコキシル化反応域内でアルキレン・オキシドと接触させる。アルキレン・オキシドは式:
【0068】
[式中、ZおよびWは相互に独立して、水素または線状もしくは分枝状のC
1−C
5アルキル基である]
をもつアルキレン・オキシドであることができる。アルキレン・オキシドは好適には、エチレン・オキシド、プロピレン・オキシド、イソブチレン・オキシド、1,2−ブチレン・オキシド、2,3−ブチレン・オキシド、ペンチレン・オキシドまたはスチレン・オキシドである。開始剤と接触されるアルキレン・オキシドの量は、開始剤1モル当り、約1.2〜1.8モル、そしてある場合には約1.4〜1.6モルのアルキレン・オキシドの範囲にあることができる。更に、開始剤がアルキレン・オキシドと接触される期間は、前駆体ポリオールを形成するのに十分な期間であり、またある場合には約0.5時間〜約24時間の範囲にあることができる。
【0069】
アルコキシル化反応域は、アルコキシル化が高温高圧下、塩基触媒の存在下で実施される閉鎖反応容器であることができる。例えば、アルコキシル化は、約50℃〜約150℃の範囲の温度で、約40psi〜100psiの範囲の圧力下で実施することができる。塩基触媒は、塩基触媒反応のために通常使用されるあらゆるアルカリ性化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムのような水酸化アルカリ金属、あるいはジメチルシクロヘキシルアミンまたは1,1,3,3−テトラメチルグアニジンのような第三級アミンであることができる。アルコキシル化後に、生成される生成物は真空ストリッピング処理されて、生成される前駆体ポリオールを残しながら、過剰な未反応のアルキレン・オキシド、水および/または塩基触媒のようなあらゆる不要な成分を除去することができる。
【0070】
次に、前駆体ポリオールは還元アミノ化工程における供給原料として使用される。ある場合には、前駆体ポリオールは、還元アミノ化の前に、例えば蓚酸または珪酸マグネシウムのような酸または化学吸着剤で中和され、そして不溶性物質の除去のために濾過される。前駆体ポリオールは還元アミノ化領域に充填されて、そこで、時々、水素化−脱水素化触媒と呼ばれる還元アミノ化触媒と接触させられ、そして還元アミノ化条件下で、アンモニアと水素の存在下で、還元的にアミノ化される。還元アミノ化条件は例えば、約150℃〜約275℃の範囲内の温度および約500psi〜約5000psiの範囲内の圧力を含むことができ、多数の実施形態においては、約180℃〜約220℃の範囲内の温度および約1500psi〜約2500psiの範囲内の圧力が使用される。
【0071】
その内容が参照により本明細書に引用されたこととされる、米国特許第3,654,370号明細書に記載されたもののような、あらゆる適切な水素化触媒を使用することができる。幾つかの実施形態においては、水素化触媒は、クロム、モリブデンまたはタングステンのような周期表の第VIB群の1種以上の金属と混合された、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金のような周期表の第VIIIB群の1種以上の金属を含むことができる。銅のような周期表の第IB群からの反応促進剤も含むことができる。一例としては、米国特許第3,152,998号明細書に開示されたタイプの触媒のような、約60モルパーセント〜約85モルパーセントのニッケル、約14モルパ
ーセント〜約37モルパーセントの銅および約1モルパーセント〜約5モルパーセントのクロム(クロミア触媒として)を含んでなる触媒を使用することができる。その他の例として、約70重量%〜約95重量%のコバルトとニッケルの混合物、および約5重量%〜約30重量%の鉄を含む、米国特許第4,014,933号明細書に開示されたタイプの触媒を使用することができる。その他の例として、ニッケル、銅および、鉄、亜鉛、ジルコニウムまたはそれらの混合物であることができる第3の成分を含んでなる、米国特許第4,152,353号明細書に開示のタイプの触媒、例えば、約20重量%〜約49重量%のニッケル、約36重量%〜約79重量%の銅および約1重量%〜約15重量%の鉄、亜鉛、ジルコニウムまたはそれらの混合物を含む触媒を使用することができる。まだその他の例として、約60重量%〜約75重量%のニッケルおよび約25重量%〜約40重量%のアルミニウムを含んでなる、米国特許第4,766,245号明細書に記載のタイプの触媒を使用することができる。
【0072】
還元アミノ化は好適には、前駆体ポリオール、アンモニアおよび水素が、還元アミノ化触媒の固定床を含む反応器に連続的に充填され、また生成物が連続的に吸引されながら、連続的な方法で実施される。
【0073】
生成物は、過剰な水素とアンモニアを再利用に回収するように適切に減圧され、次に分溜されて、反応副産物の水を除去し、所望されるポリアミンを提供する。
【0074】
還元アミノ化中、使用することができる還元アミノ化条件は、前駆体ポリオールの供給原料の1ヒドロキシル当量当り、約4モル〜約150モルのアンモニアの使用を含む。水素は好適には、前駆体ポリオールの供給原料の1ヒドロキシル等量当り、約0.5モル当量〜約10モル当量の範囲の量で使用される。反応がバッチ方式で実施される時の反応域内の接触時間は、約0.1時間〜約6時間、そしてより好適には約0.15時間〜約2時間の範囲内にあることができる。
【0075】
反応が触媒ペレットを使用して連続的な方法で実施される時は、反応時間は触媒1立法センチメーター当り1時間に約0.1グラム〜約2グラムの供給原料、そしてより好適には、触媒1立法センチメーター当り1時間に約0.3グラム〜約1.6グラムの供給原料であることができる。
【0076】
更に、還元アミノ化は、前駆体ポリオール1モル当り約1モル〜約200モルのアンモニア、そしてより好適には、前駆体ポリオール1モル当り約4モル〜約130モルのアンモニアの存在下で実施することができる。前駆体ポリオール1モル当り約0.1モル〜約50モルの水素を使用することができ、また好適には、前駆体ポリオール1モル当り約1モル〜約25モルの水素を使用することができる。
【0077】
水性エポキシ樹脂分散液中に含まれる水の存在下で、水性エポキシ樹脂分散液とポリアミン成分との反応生成物の形成が起る。更に、幾つかの実施形態においては、所望の固体樹脂レベル、例えば、20重量%以上、好適には40重量%以上、そして更により好適には50重量%以上の固体樹脂レベルが得られるように、反応生成物の形成中そして/または形成後に、水を添加することができる。他の実施形態においては、80重量%以下、好適には75重量%以下、そして更により好適には70重量%以下の固体樹脂レベルが得られるように、反応生成物の形成中そして/または形成後に水が添加される。
【0078】
反応生成物の形成はまた、1種以上の界面活性剤の存在下で起ることができる。あらゆる知られた界面活性剤を使用することができる。例えば、使用することができる市販の界面活性剤は、Disponil(登録商標)ブランド界面活性剤のようなエトキシル化脂肪酸、Tergitol(登録商標)ブランド界面活性剤のようなポリオキシエチレン化
アルキルフェノール、Disperbyk(登録商標)ブランド界面活性剤のような酸性基を含む共重合体の溶液、およびSurfynol(登録商標)ブランド界面活性剤のようなエトキシル化アセチレンジオールを含む。更に、界面活性剤は(i)200〜20,000g/モルの平均分子量をもつ脂肪族ポリオールおよび(ii)90〜3000g/モルの当量重量(equivalent weight)をもつジエポキシド化合物、の縮合生成物に基づくことができ、ここで、エポキシ基に対するOH基の当量比は1:0.85〜1:3.0であり、また縮合生成物のエポキシ当量重量は500〜400,000g/当量の間である。これらの界面活性剤は、その内容が参照により本明細書に引用されていることとされる、米国特許第5,236,974号明細書の第1欄32行〜第9欄30行に記載されている。
【0079】
幾つかの実施形態においては、反応生成物を形成する際に使用される水性エポキシ樹脂分散液(A)に対するポリアミン成分(B)の当量比は、約2:1〜約12:1の範囲にあることができる。その他の実施形態においては、水性エポキシ樹脂分散液(A)に対するポリアミン成分(B)の当量比は約4:1〜約8:1の範囲にあることができる。
【0080】
本開示は更に、水性アミン硬化剤の調製法を提供する。前記の通りに、水性エポキシ樹脂分散液は界面活性剤の存在下または不在下でポリアミン成分と接触させられる。反応は周囲温度以上の温度で実施することができる。一つの実施形態においては、反応は約20℃〜100℃の間の制御温度で、また幾つかの実施形態においては、約40℃〜70℃の間の制御温度で実施される。反応中の温度はアミン活性水素を含む反応生成物を形成するのに十分な時間にわたり維持される。
【0081】
水性アミン硬化剤は塗膜、特に水性塗膜における使用のために硬化性エポキシ樹脂とともに配合することができる。従って、更にその他の実施形態においては、(1)本開示に従う水性アミン硬化剤および(2)硬化性エポキシ樹脂組成物、よりなる二部分塗膜系が提供される。塗膜系に使用される水性アミン硬化剤の量は、エポキシ樹脂組成物を硬化させ、また連続的塗膜を形成するのに十分な量である。一つの実施形態においては、塗膜系中の水性アミン硬化剤と硬化性エポキシ樹脂組成物の量は、水性アミン硬化剤中のアミン当量に対する、硬化性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ当量の比率が0.5:1〜2:1であり、ある場合には、0.6:1.4〜1.4:0.6、そしてより多くの場合には、0.8:1.2〜1.2:0.8、そして更により多くの場合には、0.9:1〜1.1:0.9であるようなものである。
【0082】
硬化性エポキシ樹脂組成物は、あらゆる知られた硬化性エポキシ樹脂、例えばそれらに限定はされないが、前記の反応性エポキシ樹脂を含む、モノおよび/またはポリエポキシ樹脂を含む。一つの実施形態においては、硬化性エポキシ樹脂は、ビスフェノールまたはビスフェノールFのグリシジルエーテル、ビスフェノールAまたはビスフェノールFの更なる(advanced)グリシジルエーテル、ノボラック樹脂の液体ジエポキシ化合物またはそれらの混合物である。
【0083】
所望される場合には、水性アミン硬化剤と硬化性エポキシ樹脂組成物の一方または両方を、硬化の前に、1種以上の従来の添加剤、例えば、安定剤、増量剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、可塑化剤、粘着付与剤、ゴム、反応促進剤、希釈剤またはあらゆるそれらの混合物、と混合することができる。
【0084】
使用することができる安定剤は、フェノチアジン自体、または1〜3置換基をもつC−置換フェノチアジン、または1個の置換基をもつN−置換フェノチアジン、例えば3−メチル−フェノチアジン、3−エチル−フェノチアジン、10−メチル−フェノチアジン、3−フェニル−フェノチアジン、3,7−ジフェニル−フェノチアジン、3−クロロフェ
ノチアジン、2−クロロフェノチアジン、3−ブロモフェノチアジン、3−ニトロフェノチアジン、3−アミノフェノチアジン、3,7−ジアミノフェノチアジン、3−スルホニル−フェノチアジン、3,7−ジスルホニル−フェノチアジン、3,7−ジチオシアナトフェノチアジン;置換キニンおよびカテコール、銅ナフテネート、亜鉛−ジメチルジチオカルボネートおよびリンタングステン酸水和物:を含む。使用することができる増量剤、強化剤、充填剤、反応促進剤および顔料は、例えばコールタール、ビチューミン、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、雲母、アスベスト、石英粉末、石膏、アンチモン・トリオキシド、ベントン、シリカエアロゲル(「aerosil」)、リトポン、重晶石、チタン・ジオキシド、オイゲノール、ジクミル・ペルオキシド、イソオイゲノール、炭素黒、黒鉛および鉄粉を含む。更に、その他の添加剤、例えば、難燃剤、シリコーンのような流れ調整剤、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルブチレート、ワックス、ステアレート等(一部は更に離型剤としても使用される)を添加することもできる。
【0085】
その他の実施形態においては、本開示は二部分塗膜系を使用して支持体上に塗膜を形成する方法を提供する。該方法は、水性アミン硬化剤を硬化性エポキシ樹脂組成物と接触させ、それを、大部分の場合には、水中に分散させる工程および、合わせた材料を支持体上に適用する工程を含む。次に塗膜を硬化条件に曝露して、塗膜を硬化させ、そのような条件は周囲条件または加熱下を含む。その他の実施形態においては、水性アミン硬化剤を固体形態の硬化性エポキシ樹脂組成物と接触させ、混合物をブレンドし、水中に分散させ、支持体上に適用し、次に塗膜を前記の通りの硬化条件に曝露する。
【0086】
適用される塗膜は、例えば1分〜約10日のような、塗膜を硬化させるために十分なあらゆる期間にわたり硬化させることができる。その他の実施形態においては、より急速なそして/または、より完全な硬化を達成するために、本開示に従う水性アミン硬化剤と硬化性エポキシ樹脂組成物から得られる塗膜は50℃〜120℃で約1分〜約24時間のような期間にわたり加熱される。従って、更にその他の実施形態においては、本開示の二部分塗膜系で塗布された製品または支持体が提供される。
【0087】
本開示の二部分塗膜系は、下塗り剤、ワニス、充填剤、透明な下地塗料、保護塗料、被層、封緘、薄いモルタル等のような様々な適用に使用することができる。それらはまた、セメントで固めた床、壁、水泳プール、化粧タイル、等のような様々な張り合わせ支持体のために使用することができる。
【0088】
一つの実施形態に従うと、二部分塗膜系は支持体の保護塗膜として使用される。水性アミン硬化剤は噴霧、浸漬、ハケ塗り、塗布、ローラー被覆、等のような当業者に周知の方法により、所望の厚さで、硬化性エポキシ樹脂組成物適用の前に、後に、または同時に支持体の1種以上の表面に適用することができる。適用後に、塗膜を周囲条件下でそして/または熱の適用により硬化する。支持体はそれに限定はされないが、セメント、金属、コンクリート、レンガ、セメント板または石膏ボード(sheetrock)であることができる。二部分塗膜系は下塗り、中間または上塗塗膜または表面保護材のいずれかとして使用することができる。
【実施例】
【0089】
実施例1. 本実施例は、本開示に従う水性アミン硬化剤の調製を説明する。機械撹拌器、熱電対および滴下漏斗を備えた500mLの4首丸底フラスコに、米国特許第5,236,974号明細書の実施例1−1に示された通りの調製に基づいた、45グラム(0.672当量)の脂環式ポリアミン化合物(Jeffamine(登録商標) RFD270ポリアミン)、41グラムの水および、11グラムの界面活性剤(PEG4000界面活性剤)を充填した。フラスコの内容物を60℃に加熱し、60℃のフラスコ内の反応温度を維持しながら、数分以内に100グラムの水性エポキシ樹脂分散液(Araldite(登録商標) PZ3961樹脂)を添加した。添加完了後、混合物の温度を更に60分間60℃に保持し、反応生成物を適当な容器に移した。得られた反応生成物は54重量%の固形分、348g/当量のアミン水素当量重量(AHEW)および25℃で328mPa・sの粘度を有する白色分散物であった。
【0090】
実施例2〜4. 本開示には従わない、更なる水性アミン硬化剤を実施例1に概説された方法に従って調製した。実施例2はポリ(オキシプロピレン)ジアミン(Jeffamine(登録商標) D230アミン)から調製し、実施例3はイソフォロンジアミンから調製し、実施例4は1,2−ジアミノシクロヘキサンから調製した。実施例2の反応生成物は51重量%の固形分、350g/当量のAHEWおよび25℃で141mPa・sの粘度を有した。実施例3の反応生成物は53重量%の固形分、347g/当量のAHEWおよび25℃で513mPa・sの粘度を有した。実施例4の反応生成物は52重量%の固形分、347g/当量のAHEWおよび25℃で141mPa・sの粘度を有した。
表1は実施例1〜4の特性を更に要約する。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例5. 塗膜を実施例1〜4の水性アミン硬化剤と液体硬化性エポキシ樹脂組成物(Araldite(登録商標) GY6010樹脂)から調製した。塗膜は以下の特性を示した。
【0093】
【表2】
【0094】
前記に開示された主題は、具体的に示しそして制約的ではないものと考えることができ、また添付の請求の範囲は、本発明の真の範囲内に入るすべてのこのような変更物、増強物およびその他の実施形態を網羅することが意図される。従って、本発明の範囲は、法律により許される最大程度まで、以下の請求の範囲およびそれらの同等物の最も広く許容され得る解釈により決定されることができ、また以上の詳細な説明により制約または限定されるべきではない。