特許第5951202号(P5951202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5951202
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   G02F1/1339 500
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-182022(P2011-182022)
(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公開番号】特開2013-44897(P2013-44897A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
(72)【発明者】
【氏名】片野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵介
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−083315(JP,A)
【文献】 特開2006−189857(JP,A)
【文献】 特開2009−181063(JP,A)
【文献】 特開2001−174827(JP,A)
【文献】 特開2000−066181(JP,A)
【文献】 特開2001−117103(JP,A)
【文献】 特開2005−258290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1334
G02F 1/1339 − 1/1341
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた液晶層と、
前記第1基板と前記第2基板の間に環状に設けられて前記液晶層を封止するシール材と、
それぞれが前記第1基板と前記第2基板の間であって前記シール材に囲まれた領域内に配置された複数の第1柱状スペーサー及び複数の第2柱状スペーサー、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板の重なる領域内であって前記シール材に囲まれた領域内には、前記第1電極と前記第2電極が重なる部分であって各々が異なる図案を表すセグメント表示部である複数の表示部及び前記第1電極と前記第2電極が重ならない部分若しくは前記第1電極と前記第2電極がともに存在しない部分である非表示部を有しており観察者から直接観察可能な領域である有効表示領域が設けられており、
前記複数の第1柱状スペーサーは前記複数の表示部に配置され、前記複数の第2柱状スペーサーは前記非表示部に配置され、
前記複数の第1柱状スペーサーと前記複数の第2柱状スペーサーとは、互いの配置パターンが異なり、かつ互いの平面視における単位面積当たりのスペーサー専有面積が略等しい、
前記複数の第1柱状スペーサーの各々の平面視における面積よりも前記複数の第2柱状スペーサーの各々の平面視における面積が相対的に大きい、液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶層が垂直配向しており、
前記複数の第1柱状スペーサー及び前記複数の第2柱状スペーサーは、各々、テーパー形状の側面を有する、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
少なくとも前記複数の第1柱状スペーサーは、隣り合う列及び/又は行の各第1柱状スペーサー同士が互い違いに配列している、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数の第1柱状スペーサーの前記列及び前記行の各々の延在方向は、前記有効表示領域の上下方向及び左右方向のいずれとも直交せず平行でもない、請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
少なくとも前記複数の第1柱状スペーサーは、前記有効表示領域の平面視における全方向に対しても、近接する2つの第1柱状スペーサーの位置を結ぶ仮想線上に、他の1つの第1柱状スペーサーの位置が重ならず若しくは前記近接する2つの第1柱状スペーサーの相互間距離とは異なる距離で重なる、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等で形成される柱状スペーサーを用いてセル厚を制御する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶表示装置では、上下基板の間隔(セル厚)を維持するために上下基板間にスペーサーを分散して配置する。スペーサーとしては、例えば有機材料等からなる球状スペーサーが広く用いられている。この球状スペーサーは、液晶表示装置の製造過程において、例えば特開2001−21899号公報(特許文献1)に開示されるような乾式散布法を用いて上下基板間に均等かつランダムに散布される。
【0003】
しかし、特に球状スペーサーの粒径が小さくなると、球状スペーサー同士の凝集が発生しやすくなり、複数の球状スペーサーが凝集したままの状態で散布されるようになる。一般的には、上下基板間の間隙(セル厚)を均一にするには球状スペーサーの粒径が小さいほど、すなわちセル厚が小さいほど単位面積当たりのスペーサー散布数を小さくする必要がある。ところが、球状スペーサー同士の凝集した部分があると電圧無印加時あるいは電圧印加時において液晶層の配向不良を誘発し、これに伴う表示品位の低下を招く場合がある。特に、上下基板の上下偏光板のそれぞれの間に視角補償板を配置し、暗表示時の視角特性を改善したノーマリーブラック型の液晶表示装置では、正面観察時における表示品質の低下だけでなく、基板法線方向を基準に極角方向へ観察角度を変えて観察した時における表示品質の低下(光抜け等)が発生し、視角特性の低下を招くおそれがある。
【0004】
これに対して、上下基板間の意図した場所に感光性樹脂等からなる柱状スペーサーを設けることによりセル厚を維持する構造の液晶表示装置が提案されている。このような液晶表示装置では、配向不良が発現しないような位置を選んで柱状スペーサーを配置することができるため、表示品位の向上を図ることが可能となる。このような柱状スペーサーは、例えば、矩形状の画素部がマトリクス状に配置されたドットマトリクス型の液晶表示装置に用いられる場合であれば、画素間を遮光するブラックマトリクスの下に配置し、画素部には配置しないことで柱状スペーサーによる光抜けを抑制した構造が広く知られている。
【0005】
ところで、液晶表示装置の1つの形態として、任意の文字や図案を表示するセグメント表示部のみを有するものや、このセグメント表示部とドットマトリクス表示部とを混在させたものが存在する。この場合、特にセグメント表示部においては1つの文字や図案などの大きさが任意であることから、従来のように表示部外に柱状スペーサーを配置することだけではセル厚を均一にすることが困難である。このようなセル厚の不均一は液晶表示装置の表示品位の低下を招く。したがって、液晶表示装置のセル厚の均一性を確保するためには、上下基板間に柱状スペーサーをより多く設けたいという要望が生じる。このため、セグメント表示部を有する液晶表示装置においては、セグメント表示部内にも柱状スペーサーを配置せざるを得なくなる。
【0006】
しかしながら、セグメント表示部内に柱状スペーサーを配置した場合には、正面観察時において明表示としたセグメント表示部内に柱状スペーサーに起因する暗部が生じ、この暗部が外観上無視できない状態となって液晶表示装置の表示品位を低下させるおそれがある。また、暗表示としたセグメント表示部内においても、基板法線から極角方向に対して斜めから観察したときに柱状スペーサーに起因する光抜けが発生し、液晶表示装置の表示品位を低下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−21899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明に係る具体的態様は、セル厚均一性を保ちつつ表示品位を向上させることが可能な液晶表示装置を提供することを他の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、(a)対向配置された第1基板及び第2基板と、(b)前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、(c)前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、(d)前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた液晶層と、(e)前記第1基板と前記第2基板の間に環状に設けられて前記液晶層を封止するシール材と、(f)それぞれが前記第1基板と前記第2基板の間であって前記シール材に囲まれた領域内に配置された複数の第1柱状スペーサー及び複数の第2柱状スペーサーを備え、(g)前記第1基板と前記第2基板の重なる領域内であって前記シール材に囲まれた領域内には、前記第1電極と前記第2電極が重なる部分であって各々が異なる図案を表すセグメント表示部である複数の表示部及び前記第1電極と前記第2電極が重ならない部分若しくは前記第1電極と前記第2電極がともに存在しない部分である非表示部を有しており観察者から直接観察可能な領域である有効表示領域が設けられており、(h)前記複数の第1柱状スペーサーは前記複数の表示部に配置され、前記複数の第2柱状スペーサーは前記非表示部に配置され、(i)前記複数の第1柱状スペーサーと前記複数の第2柱状スペーサーとは、互いの配置パターンが異なり、かつ互いの平面視における単位面積当たりのスペーサー専有面積が略等し(j)前記複数の第1柱状スペーサーの各々の平面視における面積よりも前記複数の第2柱状スペーサーの各々の平面視における面積が相対的に大きい、ことを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
上記の液晶表示装置によれば、表示部と非表示部のそれぞれに配置される柱状スペーサーの単位面積当たりのスペーサー専有面積を略等しく保つことでセル厚均一性を保つことが可能であり、かつ表示部と非表示部のそれぞれに配置される柱状スペーサーの配置パターンを異ならせることにより柱状スペーサーに起因する暗部や光抜けの発生を抑え、表示品質を向上させることが可能となる。
【0011】
上記の液晶表示装置においては、前記液晶層が垂直配向しており、前記複数の第1柱状スペーサー及び前記複数の第2柱状スペーサーは、各々、テーパー形状の側面を有する、ことも好ましい。
【0012】
上記の液晶表示装置は、前記第1基板と前記第2基板を挟んで配置されるクロスニコル配置の一対の偏光板をさらに備えることも好ましい。
【0013】
上記の液晶表示装置においては、少なくとも前記複数の第1柱状スペーサーは、隣り合う列及び/又は行の各第1柱状スペーサー同士が互い違い(千鳥状)に配列していることも好ましい。なお、複数の第2柱状スペーサーも同様に配列していてもよい。
【0014】
これにより、近接する柱状スペーサー同士の相互間距離をより大きく確保することができるので、暗部や光抜けがライン状に視認される現象を抑制しやすくなる。
【0015】
上記の液晶表示装置においては、さらに、前記複数の第1柱状スペーサーの前記列及び前記行の各々の延在方向は、前記有効表示領域の上下方向及び左右方向のいずれとも直交せず平行でもないことも好ましい。
【0016】
これにより、有効表示領域の上下方向、左右方向のいずれにおいても、近接する柱状スペーサーが存在しないか、仮に存在しても相互間距離が大きくなるので、暗部や光抜けがライン状に視認される現象をさらに抑制しやすくなる。
【0017】
また、上記の液晶表示装置において、少なくとも前記複数の第1柱状スペーサーは、前記有効表示領域の平面視における全方向に対しても、近接する2つの第1柱状スペーサーの位置を結ぶ仮想線上に、他の1つの第1柱状スペーサーの位置が重ならず若しくは前記近接する2つの第1スペーサーの相互間距離とは異なる距離で重なることも好ましい。
【0018】
これにより、どのような観察角度から観察した際にも、暗部や光抜けがライン状に視認される現状を回避することができる。
【0019】
本発明に係る一態様の製造方法は、上記した液晶表示装置に用いられる柱状スペーサーの製造方法であって、(a)前記第1基板又は前記第2基板の一面に感光性樹脂膜を形成する第1工程と、(b)前記複数の第1柱状スペーサー及び前記複数の第2柱状スペーサーに対応した全体遮光パターンを有するフォトマスクを介して前記感光性樹脂膜を露光する第2工程と、(c)露光された前記感光性樹脂膜を現像する第3工程を含み、(d)前記フォトマスクは、前記複数の第1柱状スペーサーに対応する単位面積当たりの第1遮光パターンを前記有効表示領域に相当する領域内に規則的に配置して当該配置された第1遮光パターンと前記複数の表示部の平面視形状との論理積をとることにより前記複数の表示部に相当する領域内に前記第1遮光パターンを配置し、かつ、前記複数の第2柱状スペーサーに対応する単位面積当たりの第2遮光パターンを前記有効表示領域に相当する領域内に規則的に配置して当該配置された第2遮光パターンと前記表示部の平面視形状との否定論理積をとることにより前記非表示部に相当する領域内に前記第2遮光パターンを配置することによって前記全体遮光パターンが決定された、ことを特徴とする柱状スペーサーの製造方法である。
【0020】
上記の製造方法によれば、表示部と非表示部のそれぞれで異なる配置パターンとされた柱状スペーサーを容易に製造することが可能となる。また、この製造方法を用いることで上記した本発明に係る液晶表示装置の製造工程を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す正面図である。
図2】液晶表示装置の断面構造の一例を示す部分断面図である。
図3】セル厚のスペーサー配置面積依存性を示す図である。
図4】各プロットの(1)式におけるパラメータa,b,c,dを示す図である。
図5】液晶表示装置の有効表示領域1を法線方向から観察した時の柱状スペーサーの配置例を示す図である。
図6】柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。
図7】柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。
図8】柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。
図9】柱状スペーサーの単位面積当たりの遮光パターンの一例を示す平面図である。
図10】フォトマスクの設計方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す正面図(平面図)である。図1に示す本実施形態の液晶表示装置は、上下基板間に配置された液晶層内の液晶分子が電圧無印加時において各基板に対してほぼ垂直に配向する垂直配向型の液晶表示装置であり、上下基板を挟んで配置される各偏光板をクロスニコル配置としたノーマリーブラックモードを採用している。本実施形態の液晶表示装置は、任意の画像表示を行うための有効表示領域1と、この有効表示領域1内に設けられたセグメント表示部2a、ドットマトリクス表示部2bおよび非表示部2cと、上下基板の間の液晶層を封止するために上下基板の周縁に沿って環状に設けられたシール材3と、外部から駆動信号を供給するための端子部4を備えている。端子部4は、上下基板のいずれか一方の端部に設けられている。
【0024】
図2は、図1に示す液晶表示装置の断面構造の一例を示す部分断面図である。図2に示す部分断面図は上述した図1に示すII−II線に対応する断面構造を示したものである。図2に示す構成例の液晶表示装置は、対向配置された上側基板(第1基板)11および下側基板(第2基板)12と、両基板の間に配置された液晶層17を基本構成として備える。
【0025】
上側基板11および下側基板12は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、上側基板11と下側基板12は、上側電極13aと下側電極14a、上側電極13bと下側電極14bのそれぞれが対向するようにして、所定の間隙(例えば4μm程度)を設けて貼り合わされている。上側基板11と下側基板12の間隙は、両基板間に配置された複数の柱状スペーサー18a、18bおよびシール材3に混入された球状スペーサーによって保持される。
【0026】
上側電極13aおよび上側電極13bは、それぞれ上側基板11の一面側に設けられている。同様に、下側電極14aおよび下側電極14bは、下側基板12の一面側に設けられている。上側電極13a、13bおよび下側電極14a、14bは、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。これらを介して外部の駆動回路(図示省略)から液晶層17に駆動信号が供給される。
【0027】
上側電極13aと下側電極14aは、互いが重なった領域が所望の文字や図案を表すセグメント表示部2aを形作るように形成されている。また、上側電極13bは、紙面の左右方向に対応する第1方向に延在するストライプ形状に形成され、下側電極14bは、上記の第1方向と直交する第2方向に延在するストライプ形状に形成されている。そして、上側電極13bと下側電極14bが互いに交差した領域のそれぞれが矩形状のドットマトリクス表示部2bを構成する。
【0028】
配向膜15は、上側基板11の一面側に、上側電極13a、13bを覆うようにして設けられている。同様に、配向膜16は、下側基板12の一面側に、下側電極14a、14bを覆うようにして設けられている。これらの配向膜15、16は、液晶層17の配向状態を規制するものである。例えば、本実施形態では配向膜15、16として垂直配向膜を用いる。各配向膜15、16にはラビング処理等の一軸配向処理が施されており、かつその配向処理の方向が互い違い(アンチパラレル)となるように配置されている。なお、配向膜15、16のいずれか一方のみに一軸配向処理を行うようにしてもよく、その場合は、柱状スペーサー18a、18bを形成しない基板の配向膜に一軸配向処理を行うことが好ましい。
【0029】
液晶層17は、上側基板11と下側基板12の間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層17が構成される。液晶層17に図示された太線は、液晶層17における液晶分子の配向方向を模式的に示したものである。本実施形態の液晶層17は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向が上側基板11および下側基板12の各基板面に対してわずかなプレティルト角を有して略垂直に配向する垂直配向モードに設定されている。
【0030】
柱状スペーサー18a、18bの各々は、上側基板11と下側基板12のいずれか一方(例えば、上側基板11)に固着して設けられており、上側基板11と下側基板12の間隙を保つ機能を果たす。図示のように、柱状スペーサー18aは有効表示領域1のセグメント表示部2aおよびドットマトリクス表示部2bにそれぞれ複数配置され、柱状スペーサー18は非表示部2cに複数配置されている。柱状スペーサー18a、18bは、それぞれが平面視において矩形状、ひし形状、円形状、楕円形状等に形成されており、有効表示領域1内に分散配置されている。図2に示すように、柱状スペーサー18aと柱状スペーサー18bは、その大きさが相互に異なっている。これらの詳細については更に後述する。
【0031】
上側偏光板19は、上側基板11の外側に配置されている。同様に、下側偏光板21は、下側基板12の外側に配置されている。上側偏光板19と下側偏光板21は、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。また、上側偏光板19と下側偏光板21の各吸収軸は、配向処理の方向に対応して定義される液晶層17の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向に対して略45°の角度をなす位置に設定される。なお、各偏光板と各基板との間には適宜Cプレート等の光学補償板が配置されてもよい。例えば本実施形態では、上側基板11と上側偏光板19の間、下側基板12と下側偏光板22の間のそれぞれに光学補償板20、22が配置されている。
【0032】
次に、図2に示した断面構造を有する液晶表示装置の製造方法の一例を説明する。
【0033】
まず、上側電極13a等を有する上側基板11、下側電極14a等を有する下側基板12をそれぞれ作製する。具体的には、片面が研磨処理され、その表面にSiOアンダーコートが施された後、ITO(インジウム錫酸化物)からなる透明電極が成膜された一対のガラス基板を用意する。これらのガラス基板の透明電極に対してフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を行うことにより所望の形状にパターニングする。なお、本実施例では省略しているが、必要に応じて、パターニングされた透明電極の一部表面上にSiOなどによる絶縁層を形成してもよい。
【0034】
次に、上側基板11(もしくは下側基板12)の一面上に、感光性樹脂を用いて柱状スペーサー18a、18bを形成する。例えば、透明ネガ型感光性樹脂材料を上側基板11の一面上に滴下し、この上側基板11をスピンナーにて30秒間ほど回転させることにより、透明ネガ型感光性樹脂材料を基板全面に塗布する。その後、これをホットプレート上で100℃、120秒間の条件で仮焼成する。なお、樹脂膜の膜厚はスピンナーの回転数を変えることにより略0.5μm〜5μm程度まで制御できる。仮焼成した樹脂膜に対して、所望の柱状スペーサー18a、18bに対応する遮光パターン(全体遮光パターン)を有するフォトマスクを介して、高圧水銀ランプを光源とする密着露光機にて紫外線を照射する。この露光は、フォトマスクと樹脂塗布面とを略密着させた状態で行う。その後、濃度1%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に上側基板11を浸漬することにより樹脂膜の現像を行い、次いで純水にてリンスする。基板乾燥後、クリーンオーブン内にて220℃、30分間の条件で本焼成することにより、上側基板11の一面上に各柱状スペーサー18a、18bが完成する。
【0035】
次に、上側基板11および下側基板12をそれぞれ弱アルカリ溶液および純水にてブラシ洗浄後、基板乾燥し、低圧水銀ランプまたは酸素キャリアを用いた大気圧プラズマ等によるドライ洗浄を行う。次に、各基板にフレキソ印刷法にて所望パターンの配向膜を塗布し、クリーンオーブン内にて90℃で約5分間の条件で仮焼成し、さらに160℃〜280℃で30〜60分間の条件で本焼成する。その後、配向膜に対して一軸配向処理の1つであるラビング処理を行う。液晶層の動作モード等により、ラビング処理は上側基板11と下側基板12のいずれか一方、または双方に対して行われる。一方のみにラビング処理を行う場合には、柱状スペーサー18a、18bが存在しない下側基板12の配向膜に対して行うことが好ましい。
【0036】
次いで、一方の基板(例えば上側基板11)に、例えばスクリーン印刷法によってシール材3を形成する。シール材3は、液晶表示装置の外形よりわずかに小さい枠状に形成される。このシール材3には、柱状スペーサー18a、18bの高さよりも小さい径の球状またはファイバー状のスペーサーと、両基板間を導通させるための柱状スペーサー18a、18bの高さよりも大きい径の球状導電性粒子が混入されている。シール材3を形成した後、上側基板11と下側基板12を貼り合わせて熱圧着することによりシール材3を固着させる。熱圧着の条件は、例えば120℃で1時間とする。
【0037】
次いで、真空注入法等の方法によって、上側基板11と下側基板12の間隙に液晶材料(誘電率異方性Δε<0のもの)を注入し、当該注入に用いた注入口を紫外線硬化樹脂等によって封止した後に、焼成する(例えば120℃、60分間)。これにより液晶層17が形成される。
【0038】
その後、上側基板11および下側基板12を貼り合わせて得られたセルを中性洗剤等で浸漬洗浄し、さらに純水でリンスし、乾燥させる。そして、上側基板11の外側に上側偏光板19および光学補償板20を貼り合わせ、かつ下側基板12の外側に下側偏光板21および光学補償板22を貼り合わせる。上側偏光板19と下側偏光板21のそれぞれは、例えば、液晶層17の略中央における液晶分子の配向方向に対して略45°の角度を有し、かつ互いの吸収軸が直交配置とされる。光学補償板20、22としては、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板が用いられる。最後に、端子部4にフレキシブル基板またはリードフレームを適宜に取り付けることにより液晶表示装置が完成する。
【0039】
次に、上側基板11と下側基板12の相互間距離(すなわちセル厚)と柱状スペーサーの配置面積との関係(面積依存性)について説明する。
【0040】
本実施形態の液晶表示装置では、上側基板11と下側基板12の間隙を保つために両基板間に柱状スペーサー18a、18bが設けられる。このとき、各柱状スペーサー18a、18bの配置方法によりセル厚の大きさやその均一性が影響を受けると考えられる。そこで本願発明者らは、柱状スペーサーの高さを略4.5μmの設定値として液晶表示装置を作製した場合における、基板面全体面積に対するスペーサー配置面積の割合を変化させた場合のセル厚を評価した。なお、セル厚については基板面内の複数のポイントで測定し、その平均値、及びばらつきを評価した。また、基板面やスペーサーについての「面積」とは基板面を平面視において計測した面積である(以降も同様)。
【0041】
柱状スペーサーを形成するためのフォトマスクは矩形状の開口部が周期的に配置されたパターンを有しており、周期間隔や矩形状開口部の上下左右アスペクト比を変化させることにより配置面積の割合を変化させた。液晶表示装置のサイズは、上側基板11と下側基板12の重なり合う領域が60mm×42mmであり、シール枠内は約58mm×40mmである。本測定においてはシール枠内に配置されたスペーサーの総面積をシール枠内の面積で割った(除算した)ものをスペーサー配置面積の割合とした。配向膜としては垂直配向膜を用い、プレティルト角が略89.9°のアンチパラレル配向になるよう各基板に対してラビング処理を行った。液晶層17を構成する液晶材料としてはΔnが略0.22でΔεが負の値のものを用いた。シール枠内の面内の複数の個所を周期的間隔で測定スポットとし、法線を基準にして極角±30°観察時のリタデーション測定によりセル厚を算出した。
【0042】
図3は、セル厚のスペーサー配置面積依存性を示す図である。図3において、1つの面積比条件におけるセル厚ばらつきより分散σを算出し、その平均セル厚dと3σの半分を加算、減算したプロットの3種類が示されている。図3を見てみると、セル厚は面積比0.01以下(スペーサー配置面積の割合1%以下)では急激に変化しており、略0.03(3%)程度まで緩やかな変化が続き、それ以上ではさらに緩やかな変化が続き、やがてある値へ漸近する傾向がみられる。各プロットは以下の(1)式によって近似することが可能であり、3種類のプロットに対する近似曲線を図中に示した。
セル厚=d+alog(面積比)+blog(面積比)+clog(面積比) …(1)
【0043】
図4に、各プロットの(1)式におけるパラメータa,b,c,dを示す。ここで、dは面積比が増大した際に漸近する目安になる数値である。本検討においては、柱状スペーサーの単体を触針式段差計で測定した場合は略4.5μm±0.1μmであったが、近似式からはこれよりも低い略4.29μm±0.06μm程度であることが分かった。分散σの大きさは面積比が低い、すなわちセル厚が薄い領域ではかなり大きく、面積比0.02程度で3σは0.6以下、面積比0.03程度で3σは0.3以下程度になる傾向が観察された。したがって良好なセル厚均一性が得られるのは面積比0.02(2%)以上より好ましくは0.03(3%)以上の領域であると考えられる。
【0044】
次に、上記した評価結果に基づく各柱状スペーサー18a、18bの好適な配置方法について説明する。
【0045】
従来のドットマトリクス表示部を備えた液晶表示装置に対する柱状スペーサーの配置は液晶表示装置の左右上下の各方向に対して規則的に配置された複数の画素間に配置することにより、明表示時における画素部内の配向均一性向上や実効開口率向上に貢献する。しかし、セグメント表示部を備えた液晶表示装置の場合、各画素部は表示意匠に対応して大きさや面積が異なり、画素部内に柱状スペーサーを配置しなければセル厚均一性が確保できない場合が考えられる。例えば図2に示すような意匠(図案)「AUTO」を表示するセグメント表示部2aを備えた液晶表示装置の場合、液晶表示装置の面内に観察者から直接観察可能な領域である有効表示領域1の内部において、セグメント表示部2a(「AUTO」の文字内部)およびドットマトリクス表示部2bとそれ以外の非表示部2cが存在する。明暗表示が電気的にスイッチングできるのはセグメント表示部2aおよびドットマトリクス表示部2bのみであり、非表示部2cはノーマリーブラックの場合、常時暗表示となる。
【0046】
図5は、液晶表示装置の有効表示領域1を法線方向から観察した時の柱状スペーサーの配置例を示す図である。一例として図5(A)では上記したセグメント表示部2aの図案「AUTO」の文字のうちの「T」の部分が示されている。また、図5(B)では「T」のさらに一部が拡大して示されている。ここで、図案「AUTO」の文字の線幅(太さ)は例えば0.65mmである。
【0047】
図5に示したスペーサー配置例においては、例えば、各柱状スペーサー18aの平面視形状を一辺の長さが0.01mmの略正方形とし、各柱状スペーサー18aの重心同士が略0.06mm周期で配置されているとする。0.06mm四方の単一領域に一辺が0.01mmの略正方形のスペーサーが1つ含まれていると考えると、単位面積当たりのスペーサー配置面積の割合は略2.8%になる。図案「AUTO」の「T」の縦棒部分には、左右方向(X方向)に関して略11個の柱状スペーサー18aが配置されている。また、非表示部2cに配置される各柱状スペーサー18bは、各柱状スペーサー18aに比べて平面視での大きさ(すなわち面積)を大きく設定されている。なお、その他の条件については上記したスペーサー面積依存性の検討に用いた液晶表示装置と同様にした。この条件で作製された液晶表示装置を「実施例」という。
【0048】
ここで、実施例に対する比較例として、各柱状スペーサー18aの平面視形状を一辺の長さが0.03mmの略正方形とし、各柱状スペーサー18aの重心同士が略0.17mm周期で配置されている場合も検討する。この比較例では、0.17mm四方の単一面積に一辺が0.03mmの略正方形のスペーサーが1つ含まれていると考えると、単位面積当たりのスペーサー配置面積の割合は略3.1%となり、図案「AUTO」の「T」の縦棒部分には、左右方向(X方向)に関して略4個の柱状スペーサー18aが配置される。
【0049】
上記したように、各柱状スペーサー18aの配置条件が異なる2種類の液晶表示装置において、セグメント表示部2aを明表示にしたときの外観を観察した。このとき、液晶層17内の各柱状スペーサー18aが存在する部分には液晶分子が存在しないことから、各柱状スペーサー18aと重なる部分は暗表示のままとなるので、セグメント表示部2a内に周期的な暗点が観察されることになる。比較例の液晶表示装置を外観から観察すると周期的に黒点が観察され表示品位が低下することが確認された。これに対して実施例の液晶表示装置を外観から観察すると、各柱状スペーサー18aのサイズが小さいことから、比較例に比べて大幅に黒点が認識しにくくなることが明らかになった。
【0050】
なお、上記はノーマリーブラック型かつ垂直配向型の液晶表示装置の場合であるが、例えば位相差板として色補償板を用いるSTN型の液晶表示装置の場合は、暗表示時において、スペーサー部が白点となり、柱状スペーサー18aのサイズによっては外観から認識可能になる。
【0051】
ここで、法線方向から液晶表示装置を観察したとき、平面視において略矩形状の各柱状スペーサー18aの一辺が0.03mmであり、高さが4.5μmであるとすると、各柱状スペーサー18aの断面形状は、側面がテーパー状であることから台形である。この台形の上底は5μm程度である場合が多いことから、底辺と側辺間の角度、すなわちテーパー角度は略20°以下となる場合が多く観察される。垂直配向型の液晶表示装置の場合、基板表面に対して液晶分子が略垂直に配向していることから、正面観察時においてはクロスニコル配置とした偏光板の特性がほぼ観察できるが、上記のように柱状スペーサーの側面がテーパー形状である場合には電圧無印加時においてもそのテーパー形状の側面から光りぬけが生じ、それが外観からも視認される場合がある。
【0052】
このとき、例えば単位面積を0.65mm×0.65mmであるとし、実施例として示したように矩形の一辺が0.01mmの各柱状スペーサー18aを左右上下方向にそれぞれ0.06mm周期で配置した場合を考えると、単位面積当たり、上下方向、左右方向に各11個の柱状スペーサー18aが配置されることになる。このとき、単位面積内の各柱状スペーサー18aの周囲長さの合計は4.84mm(=11×11×0.01mm×4)である。一方、比較例として示したように矩形の一辺が0.03mmの各柱状スペーサー18aを左右上下方向にそれぞれ0.17mm周期で配置した場合を考えると、単位面積当たり、上下方向、左右方向に各4個の柱状スペーサー18aが配置されることになる。このとき、単位面積内の各柱状スペーサー18aの周囲長さの合計は1.92mm(=4×4×0.03mm×4)である。したがって、後者(比較例)の方が光りぬけを生じるスペーサー周囲長さが短いことが分かる。単位面積当たりのスペーサー配置面積の割合は実施例が略2.8%、比較例が略3.1%であり、両者ともほぼ3%で等しくなる。よって、スペーサー配置面積の割合がほぼ同等であることから、セル厚もほぼ同等でありながら暗領域の透過率をより低くできると考えられる。
【0053】
以上のことから、明表示時における黒点を目立たなくし、暗部の光りぬけを抑制するには、有効表示領域1内のセグメント表示部2a(あるいはドットマトリクス表示部2b)における各柱状スペーサー18aの1つ当たりの法線観察時面積(平面視での面積)を相対的に小さくし、非表示部2cにおける各柱状スペーサー18bの1つ当たりの法線観察時面積を相対的に大きくすることが有効であると考えられる。これは、明表示が存在しない非表示部2cではある程度面積が大きい柱状スペーサーを配置することは問題がないためである。したがって、各柱状スペーサーの1つ当たりの面積はセグメント表示部2a(あるいはドットマトリクス表示部2b)よりも非表示部2cの方が大きいことが好ましい。さらに、単位面積当たりのスペーサー配置面積の割合は、セル厚を均一化する観点からセグメント表示部2a(あるいはドットマトリクス表示部2b)と非表示部2cで略等しいことが好ましく、その面積比が2%以上、さらに3%以上であることが好ましい。別言すれば、セグメント表示部2a(あるいはドットマトリクス表示部2b)のほうが非表示部2cに比べて柱状スペーサーの配置数が多いことが好ましい。
【0054】
次に、各柱状スペーサー18aの配置方法に関する別の実施形態を説明する。
【0055】
図6は、柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。図6に示す各柱状スペーサー18aは、Y方向に沿った1列おきに半ピッチずらした千鳥状(市松状)のパターンで配置されている。すなわち、隣り合う列の各第1柱状スペーサー18a同士が互い違いに配列している。このような配置パターンとすることで、X方向に沿った1行に配置される柱状スペーサー18aの相互間距離をY方向に比べて2倍にすることができる。Y方向に沿った1列おきに各柱状スペーサー18aをずらすピッチを変えることにより、X方向において同一列上に並ぶ柱状スペーサー18a同士の相互間距離をさらに長くすることが可能となる。すなわちX方向およびY方向に対して規則的に配置されたスペーサー配置において、X方向において最も近接した柱状スペーサー18a同士は同一列上にないことが有効であると考えられる。液晶表示装置の左右方向で極角の深い観察角度から暗表示状態を観察したときに、元々法線観察時には点状の光抜けであったものが線状(ライン状)の光りぬけに視認され、光りぬけがより目立つようになる場合があるが、図6に示したような柱状スペーサーの配置を用いることによりこの不都合を回避することができる。同じく、明表示状態においても点状の黒点が線状にシフトする可能性があるが、このような不都合も回避することができる。なお、図6に示したスペーサー配置を90°回転されれば、液晶表示装置の上下方向における線状の光抜けを回避することができる。
【0056】
図7は、柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。図7に示す各柱状スペーサー18aは、Y方向から所定角度θ(例えば20°)だけ傾いた方向に沿って列をなして配置されており、かつX方向から所定角度θだけ傾いた方向に沿って1列おきに半ピッチずらした市松状のパターンで配置されている。別言すれば、図7に示した配置例は、図6に示した配置例をY方向から所定角度θだけ回転させることにより、各第1柱状スペーサー18aの列及び行の各々の延在方向をY方向(有効表示領域1の上下方向)およびX方向(有効表示領域1の左右方向)のいずれとも直交せず平行でもない状態とした配置例といえる。このような配置を採ることで、X方向、Y方向のいずれにも近接する柱状スペーサー18aが存在しない状態となるので、液晶表示装置の上下左右のいずれの方向についても上記のような線状の光抜けや黒点の線状化を回避することが可能となる。
【0057】
図8は、柱状スペーサーの配置例を示す模式的な平面図である。図8に示す各柱状スペーサー18aは、隣接する2つの柱状スペーサー18aのそれぞれの重心(図中、黒点で示す)の相互間に仮想直線(一例を図中の右上側および右下側にそれぞれ点線で示す)を引いてその仮想直線を外挿したときに、それら隣接する2つの柱状スペーサー18a以外の柱状スペーサー18aの重心は仮想直線上に配置されないか、仮に配置されるとしても、隣接する2つの柱状スペーサー18aと同じ間隔では配置されず、より長い間隔で配置される状態となっている。このような配置を採ると、深い極角観察時における光りぬけが抑制されるとともに正面観察時においても規則的に配置した時に比べ明表示時の黒点が観察されにくくなる。
【0058】
次に、上記したようにセグメント表示部2a等と非表示部2cとで互いに大きさの異なる柱状スペーサーを形成する際に用いるフォトマスクの好適な設計手法について説明する。
【0059】
元々複雑な形状を有する場合の多いセグメント表示部2aの形状パターンに対し、セグメント表示部2aと非表示部2cで異なる大きさおよび配置パターンの柱状スペーサーを配置するためのフォトマスクの設計は困難を生じ、著しい労力をかけると同時に、設計ミスを誘発しやすい。したがって簡略化したフォトマスク設計方法を考案する必要があると考える。その方法について、図9および図10を用いて説明する。
【0060】
まず、セグメント表示部2a等に配置したい柱状スペーサーの単位面積当たりの遮光パターンを用意する。例えば、図9に示すように、各柱状スペーサーの形状が任意の多角形(例えば八角形)で構成された、400μm×400μmの遮光パターンを用意する。このような遮光パターンは、柱状スペーサー18aに対応するものと柱状スペーサー18bに対応するものが用意される。
【0061】
次に、図10(B)に示すように、上記した柱状スペーサー18aの単位面積当たりの遮光パターンを、有効表示領域1に相当する領域内の全体にリピートして規則的に配置する。
【0062】
次に、図10(A)に例示したセグメント表示部2aの平面視形状(文字「ABC」の形状パターン)と上記した図10(B)に示した柱状スペーサー18aの遮光パターンの論理積(AND)をとる。これにより、図10(C)に示すように、セグメント表示部2aの平面視形状に重なる領域のみに柱状スペーサー18aの遮光パターンが配置される。
【0063】
また、図10(D)に示すように、上記した柱状スペーサー18bの単位面積当たりの遮光パターンを、有効表示領域1に相当する領域内の全体にリピートして規則的に配置する。
【0064】
次に、図10(A)に例示したセグメント表示部2bの平面視形状と上記した図10(D)に示した柱状スペーサー18bの遮光パターンの否定論理積(NAND)をとる。これにより、図10(E)に示すように、セグメント表示部2aの平面視形状と重なる領域を除いた残りの領域のみに柱状スペーサー18bの遮光パターンが配置される。
【0065】
以上の手順により形成した図10(C)、図10(E)の各遮光パターンを重ね合わせることにより、図10(F)に示すようなフォトマスクの全体遮光パターンが得られる。このフォトマスクを用いることにより、上記したセグメント表示部2a等と非表示部2cのそれぞれで異なる形状パターンの柱状スペーサーを備えた液晶表示装置を容易に作製することができる。ただし、上記説明においてはポジ型レジストを用いて柱状スペーサーを設けた場合である。これに限らず、ネガ型レジストを用いて柱状スペーサーを設けることもできる。この場合では図10(C)、図10(D)の遮光と透過を反転させたマスクを使用する。
【0066】
このように本実施形態によれば、セグメント表示部等と非表示部のそれぞれに配置される柱状スペーサーの単位面積当たりのスペーサー専有面積の割合を略等しく保つことでセル厚均一性を保つことが可能であり、かつセグメント表示部等と非表示部のそれぞれに配置される柱状スペーサーの配置パターンを異ならせることにより柱状スペーサーに起因する暗部や光抜けの発生を抑え、表示品質を向上させることが可能となる。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上述した実施形態では垂直配向型の液晶表示装置を例示していたが、液晶層の動作モードはこれに限定されない。具体的には、例えばTN(Twisted Nematic)型液晶表示装置、STN(Super Twisted Nematic)型液晶表示装置、これらを2層重ねあるいは光学フィルムにより光学補償したもの、視角補償板を有するIPS(In-Plane switching)型液晶表示装置、ブラックマトリクスを用いないモノクロの液晶表示装置に対しても本発明を適用可能である。
【0068】
また、上述した実施形態では一方の基板に柱状スペーサーを形成していたが、この限りではない。例えば、双方の基板に柱状スペーサーを形成してもよい。ただしこの場合は、一方の基板の柱状スペーサーと他方の基板の柱状スペーサーが互いに接触しないように配置することが好ましい。例えば、セグメント表示部2aの1つの図案ごとに柱状スペーサーの形成される基板が異なっていてもよいし、有効表示領域1を複数の領域に分割し、それぞれの領域において柱状スペーサーの形成される基板が異なってもよい。また、セグメント表示部2a等の柱状スペーサーを一方の基板に形成し、非表示部2cの柱状スペーサーを他方の基板に形成してもよい。さらに、上記した実施形態ではセグメント表示部2aとドットマトリクス表示部2bで同じ配置パターンの柱状スペーサーを設けていたが、両者の柱状スペーサーを互いに異なる配置パターンとしてもよい。すなわち、有効表示領域1内において3種類またはそれ以上の配置パターンで柱状スペーサーが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:有効表示領域
2a:セグメント表示部
2b:ドットマトリクス表示部
2c:非表示部
3:シール材
4:端子部
11:上側基板
12:下側基板
13:上側電極
14:下側電極
15、16:配向膜
17:液晶層
18a、18b:柱状スペーサー
19:上側偏光板
20、22:光学補償板(視角補償板)
21:下側偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10